JP2002034555A - 足場依存性動物細胞の凍結保存方法 - Google Patents
足場依存性動物細胞の凍結保存方法Info
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- JP2002034555A JP2002034555A JP2000217146A JP2000217146A JP2002034555A JP 2002034555 A JP2002034555 A JP 2002034555A JP 2000217146 A JP2000217146 A JP 2000217146A JP 2000217146 A JP2000217146 A JP 2000217146A JP 2002034555 A JP2002034555 A JP 2002034555A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 培養器に足場依存性性細胞が培養形態を保っ
たまま凍結保存する際、凍結保存中のウェル内の乾燥の
防止、凍結時の徐冷、およびディープフリーザーから取
り出し解凍作業に移行するまでの凍結状態の保持を可能
とする。 【解決手段】 培養器ウェル開口部に水蒸気バリア性フ
ィルムをおきその上から蓋をし、綿状あるいはエアーキ
ャップなどの断熱材で培養器を覆い、袋中におさめシー
ルを施し気密状態とし、冷却し凍結保存を行う。
たまま凍結保存する際、凍結保存中のウェル内の乾燥の
防止、凍結時の徐冷、およびディープフリーザーから取
り出し解凍作業に移行するまでの凍結状態の保持を可能
とする。 【解決手段】 培養器ウェル開口部に水蒸気バリア性フ
ィルムをおきその上から蓋をし、綿状あるいはエアーキ
ャップなどの断熱材で培養器を覆い、袋中におさめシー
ルを施し気密状態とし、冷却し凍結保存を行う。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細胞毒性評価等に
使用される足場依存性の動物細胞の凍結保存方法に関す
るものである。
使用される足場依存性の動物細胞の凍結保存方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】細胞は一般に−80℃以下のディープフ
リーザーや液体窒素中に凍結された状態で保存されてい
る。細胞の凍結保存の形態は一般的にはアンプルや凍結
保存用のチューブに凍結用培地とともに細胞浮遊液の形
で凍結されている。
リーザーや液体窒素中に凍結された状態で保存されてい
る。細胞の凍結保存の形態は一般的にはアンプルや凍結
保存用のチューブに凍結用培地とともに細胞浮遊液の形
で凍結されている。
【0003】細胞凍結用のチューブやアンプルに細胞が
浮遊した状態で凍結される場合は、容器の構造が密封状
態又は、密封に近い状態になるため、凍結保存中での培
地の水分の蒸発はない。そのため細胞の凍結保存におい
て特別に容器中の蒸発を防止するための特別な処置を施
す必要はなかった。また、細胞の解凍においては、容器
を温水中に浸漬して加温されるが、温水浸漬後の付着し
た水滴による菌のコンタミの恐れを除いて特に不都合は
なかった。
浮遊した状態で凍結される場合は、容器の構造が密封状
態又は、密封に近い状態になるため、凍結保存中での培
地の水分の蒸発はない。そのため細胞の凍結保存におい
て特別に容器中の蒸発を防止するための特別な処置を施
す必要はなかった。また、細胞の解凍においては、容器
を温水中に浸漬して加温されるが、温水浸漬後の付着し
た水滴による菌のコンタミの恐れを除いて特に不都合は
なかった。
【0004】しかし、最近になって、特公平5-77389号
公報に記載されているように培養用容器に足場依存性動
物細胞が培養された状態で培養器とともに細胞を凍結す
る形態(細胞付培養器)が提案されている。このよう
に、培養器に細胞を接着した状態で凍結する場合は、細
胞凍結用チューブやアンプルとは異なり、容器中の水分
の蒸発を防止するための処置を新たに施さなくてはなら
ない。なぜならば、培養器は、空気の流入を確保できる
構造となっているからである。
公報に記載されているように培養用容器に足場依存性動
物細胞が培養された状態で培養器とともに細胞を凍結す
る形態(細胞付培養器)が提案されている。このよう
に、培養器に細胞を接着した状態で凍結する場合は、細
胞凍結用チューブやアンプルとは異なり、容器中の水分
の蒸発を防止するための処置を新たに施さなくてはなら
ない。なぜならば、培養器は、空気の流入を確保できる
構造となっているからである。
【0005】インキュベーターの中は湿度100%の雰
囲気下におかれるため、少々の空気の流入をゆるした構
造でも培養器中の水分の蒸発は防止できる。しかし細胞
の凍結保存においては、乾燥し易い状態におかれること
になる。細胞の凍結保存においては約−80℃以下で、
温度変化がない状態で保存されるため、一般の冷凍保存
と比較すると乾燥しにくいが、長期にわたり保存される
場合、培養器のままでは培養器内の内容物の一部が蒸発
し凍結されている細胞に影響を与える可能性がある。
囲気下におかれるため、少々の空気の流入をゆるした構
造でも培養器中の水分の蒸発は防止できる。しかし細胞
の凍結保存においては、乾燥し易い状態におかれること
になる。細胞の凍結保存においては約−80℃以下で、
温度変化がない状態で保存されるため、一般の冷凍保存
と比較すると乾燥しにくいが、長期にわたり保存される
場合、培養器のままでは培養器内の内容物の一部が蒸発
し凍結されている細胞に影響を与える可能性がある。
【0006】また、本発明者は細胞付培養器の製造にお
いて凍結時の培地量が極力少ない方が、解凍時の細胞の
状態が良好であることを見出しているが、培地量を少な
くする場合、凍結過程および凍結保存において培養面上
の細胞の乾燥をどのように防止するかが課題であった。
いて凍結時の培地量が極力少ない方が、解凍時の細胞の
状態が良好であることを見出しているが、培地量を少な
くする場合、凍結過程および凍結保存において培養面上
の細胞の乾燥をどのように防止するかが課題であった。
【0007】容器中の水分の防止には、食品の分野など
では、容器開口部に透湿性や通気性の低いフィルムをヒ
ートシールしたものが多く見られる。このような方法は
常温や冷蔵においては有効な方法であるが、培養器のウ
ェル中での細胞への適用は難しい。なぜならば、ウェル
内は空気が殆どであり、凍結前にフィルムをヒートシー
ルすれば、フィルムがほとんど変形できない状態である
ために冷却によりウェル内が陰圧となり、培養器内の水
分の蒸発を促し、培地量が少ない場合は細胞の乾燥を招
くことになるし、細胞が凍結される前に陰圧にさらされ
ることも細胞には悪影響を与えることになるからであ
る。
では、容器開口部に透湿性や通気性の低いフィルムをヒ
ートシールしたものが多く見られる。このような方法は
常温や冷蔵においては有効な方法であるが、培養器のウ
ェル中での細胞への適用は難しい。なぜならば、ウェル
内は空気が殆どであり、凍結前にフィルムをヒートシー
ルすれば、フィルムがほとんど変形できない状態である
ために冷却によりウェル内が陰圧となり、培養器内の水
分の蒸発を促し、培地量が少ない場合は細胞の乾燥を招
くことになるし、細胞が凍結される前に陰圧にさらされ
ることも細胞には悪影響を与えることになるからであ
る。
【0008】細胞の凍結後、フィルムをウェル開口部に
貼り付ければウェル内の気圧の低下は防止できるが、実
現は難しい、なぜなら、フィルムの貼り付けは、一般に
ヒートシールにより行われるが、凍結後は培養器には結
露が生じこの露が妨げとなるからである。このように、
培養器ウェル開口部にフィルムをシールするという方法
は、細胞付培養器の凍結保存に適用することは難しい。
貼り付ければウェル内の気圧の低下は防止できるが、実
現は難しい、なぜなら、フィルムの貼り付けは、一般に
ヒートシールにより行われるが、凍結後は培養器には結
露が生じこの露が妨げとなるからである。このように、
培養器ウェル開口部にフィルムをシールするという方法
は、細胞付培養器の凍結保存に適用することは難しい。
【0009】実験室では、複数のウェルをもつプレート
のウェル内の水の蒸発を防止する目的で、ウェル開口部
を粘着材を塗布したフィルムを貼付する方法がとられる
が、粘着材は室温から−20℃あたりでは粘着性を有し
ているが、細胞が凍結保存される温度の−80℃以下で
は粘着性を失ってしまい、フィルムがウェル開口部に接
着した状態は保てなくなる。極低温でも粘着性を失わな
い粘着シートが開発されたとしても、ヒートシールの場
合と同様に冷却時のウェル内の気圧の低下は免れない。
のウェル内の水の蒸発を防止する目的で、ウェル開口部
を粘着材を塗布したフィルムを貼付する方法がとられる
が、粘着材は室温から−20℃あたりでは粘着性を有し
ているが、細胞が凍結保存される温度の−80℃以下で
は粘着性を失ってしまい、フィルムがウェル開口部に接
着した状態は保てなくなる。極低温でも粘着性を失わな
い粘着シートが開発されたとしても、ヒートシールの場
合と同様に冷却時のウェル内の気圧の低下は免れない。
【0010】また、エラストマーシートをウェル上面に
敷設する方法もあるが、これらは室温ではエラストマー
としての性質を有していてある冷却温度まではエラスト
マーの性質により、ウェル内の気圧の低下に追随し伸び
ることができ、ウェル内の気圧を保つ作用があるが、−
80℃以下のような低温ではエラストマーの柔軟性は失
われてしまい、またウェルに密着することもできなくな
る。
敷設する方法もあるが、これらは室温ではエラストマー
としての性質を有していてある冷却温度まではエラスト
マーの性質により、ウェル内の気圧の低下に追随し伸び
ることができ、ウェル内の気圧を保つ作用があるが、−
80℃以下のような低温ではエラストマーの柔軟性は失
われてしまい、またウェルに密着することもできなくな
る。
【0011】以上のように、培養器に細胞を培養した状
態で培養器ごと凍結する細胞付培養器は、−80℃以下
という極低温で凍結や保存が行われることと、細胞とい
う生きたものの保存であるということから、内容物の乾
燥を防ぐための手段として、従来の食品や試薬に用いら
れている方法をそのまま適用することはできない。
態で培養器ごと凍結する細胞付培養器は、−80℃以下
という極低温で凍結や保存が行われることと、細胞とい
う生きたものの保存であるということから、内容物の乾
燥を防ぐための手段として、従来の食品や試薬に用いら
れている方法をそのまま適用することはできない。
【0012】さらに、細胞の凍結および解凍時の温度勾
配が細胞の生存率に大きく影響を与え、凍結時は温度を
徐々に下げ、一方解凍時は速やかに温度を上昇させ解凍
することが必要である。特に、足場依存性動物細胞が培
養器に接着した状態で凍結されている細胞付培養器にお
いては、従来の細胞が浮遊した状態での凍結および解凍
に比較し、細胞の温度感受性が高い。即ち、凍結時はよ
りゆっくりとした温度勾配での凍結が必要であり、解凍
時はより速やかな解凍が求められる。
配が細胞の生存率に大きく影響を与え、凍結時は温度を
徐々に下げ、一方解凍時は速やかに温度を上昇させ解凍
することが必要である。特に、足場依存性動物細胞が培
養器に接着した状態で凍結されている細胞付培養器にお
いては、従来の細胞が浮遊した状態での凍結および解凍
に比較し、細胞の温度感受性が高い。即ち、凍結時はよ
りゆっくりとした温度勾配での凍結が必要であり、解凍
時はより速やかな解凍が求められる。
【0013】上記のような要求を満たすため、凍結にお
いて、発泡スチロール製の箱の中に培養器を収納し、箱
ごとディープフリーザー中で凍結することによりゆっく
りとした除冷が可能となり、解凍時の細胞生存率が従来
の方法による凍結に比べ高いことが報告されている。し
かし、嵩の高い発泡スチロール箱をディープフリーザー
中に入れることは、ディープフリーザーの容量から収納
数に制限があり工業的見地からは生産効率を下げること
になり、あまり好ましいことではない。冷却時の温度勾
配を制御できるプログラムフリーザーも市販されている
が,高価な装置である。
いて、発泡スチロール製の箱の中に培養器を収納し、箱
ごとディープフリーザー中で凍結することによりゆっく
りとした除冷が可能となり、解凍時の細胞生存率が従来
の方法による凍結に比べ高いことが報告されている。し
かし、嵩の高い発泡スチロール箱をディープフリーザー
中に入れることは、ディープフリーザーの容量から収納
数に制限があり工業的見地からは生産効率を下げること
になり、あまり好ましいことではない。冷却時の温度勾
配を制御できるプログラムフリーザーも市販されている
が,高価な装置である。
【0014】さらに、解凍においてはより速やかな解凍
が要求されるため、解凍スピードを上げるため、培養器
のウェルの肉厚がより肉薄な培養器が用いられる。ウェ
ルの肉厚が薄い培養器を用いることにより、37℃の温
水に漬ける解凍においては速やかな解凍が可能となり、
解凍時の細胞生存率も高く確保できる。しかしながら、
ウェルの肉厚を薄くすることにより、上述した凍結にお
いては、培養器中の凍結スピードを速めることになり、
より緩慢な冷却が要求されることになる。
が要求されるため、解凍スピードを上げるため、培養器
のウェルの肉厚がより肉薄な培養器が用いられる。ウェ
ルの肉厚が薄い培養器を用いることにより、37℃の温
水に漬ける解凍においては速やかな解凍が可能となり、
解凍時の細胞生存率も高く確保できる。しかしながら、
ウェルの肉厚を薄くすることにより、上述した凍結にお
いては、培養器中の凍結スピードを速めることになり、
より緩慢な冷却が要求されることになる。
【0015】また、解凍作業においては、ディープフリ
ーザーより取り出した際、外気の温度の影響をより多く
受け、この時点から細胞の解凍が始まることととなり、
ディープフリーザーから取り出し速やかに解凍工程に移
行しないと、解凍の工程に時間がかかったのと同じ解凍
をしたこととなり、解凍時の細胞生存率を下げることに
なる。そのため、ディープフリーザーから取り出してか
ら解凍を始めるまでに時間的余裕をもつことができず、
実験者の心的ストレスをまねく。また、解凍における細
胞の生存率のばらつきをもまねくこととなる。
ーザーより取り出した際、外気の温度の影響をより多く
受け、この時点から細胞の解凍が始まることととなり、
ディープフリーザーから取り出し速やかに解凍工程に移
行しないと、解凍の工程に時間がかかったのと同じ解凍
をしたこととなり、解凍時の細胞生存率を下げることに
なる。そのため、ディープフリーザーから取り出してか
ら解凍を始めるまでに時間的余裕をもつことができず、
実験者の心的ストレスをまねく。また、解凍における細
胞の生存率のばらつきをもまねくこととなる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、シャ
ーレやプレートなどの培養器に細胞が培養された状態で
凍結する過程および凍結状態での保存において、培養器
中の培養面の乾燥を防止でき、かつ凍結においては、プ
ログラムフリーザーのような特別な設備を必要とするこ
となくただディープフリーザー中に納めるだけで徐冷に
よる細胞の凍結を行うことができ、さらに凍結保存時の
形態をコンパクトにすることができ、解凍時において
は、フリーザーから取り出してから解凍作業に移る際、
作業者が時間的余裕のもてる足場依存性動物細胞の凍結
保存方法を提供することにある。
ーレやプレートなどの培養器に細胞が培養された状態で
凍結する過程および凍結状態での保存において、培養器
中の培養面の乾燥を防止でき、かつ凍結においては、プ
ログラムフリーザーのような特別な設備を必要とするこ
となくただディープフリーザー中に納めるだけで徐冷に
よる細胞の凍結を行うことができ、さらに凍結保存時の
形態をコンパクトにすることができ、解凍時において
は、フリーザーから取り出してから解凍作業に移る際、
作業者が時間的余裕のもてる足場依存性動物細胞の凍結
保存方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明は上記のような問
題点を解決するため鋭意検討した結果、機密性のある袋
中に培養器をおさめ冷却することにより、冷却過程で袋
内のエアーの体積が減り、袋が変形することにより袋内
の気圧は保たれること、および袋が変形することにより
培養器本体に蓋が押さえられ、培養器本体と蓋の間にフ
ィルムをはさむと、フィルムはウェル開口部に密着され
ること、さらに、このフィルムに水蒸気透過性の低いも
のを用いることにより、長期にわたる凍結保存におい
て、ウェル培養面の乾燥が防止でき、解凍後の細胞の状
態も良好である。
題点を解決するため鋭意検討した結果、機密性のある袋
中に培養器をおさめ冷却することにより、冷却過程で袋
内のエアーの体積が減り、袋が変形することにより袋内
の気圧は保たれること、および袋が変形することにより
培養器本体に蓋が押さえられ、培養器本体と蓋の間にフ
ィルムをはさむと、フィルムはウェル開口部に密着され
ること、さらに、このフィルムに水蒸気透過性の低いも
のを用いることにより、長期にわたる凍結保存におい
て、ウェル培養面の乾燥が防止でき、解凍後の細胞の状
態も良好である。
【0018】さらに、培養器のウェル部分の培養面側を
断熱材で覆うだけで、発泡スチロール製の箱の中に培養
器全体を納めて凍結した時と同等の細胞生存率を得るこ
とができること、断熱材に綿状のものまたはエアーキャ
ップを用い空気不透過性の袋中に納めてシールし冷却す
ることにより、冷却の進行にともない袋内のエアーの体
積が減少し最終包装体積が小さくなりコンパクトにおさ
まること、さらに、解凍時ディープフリーザーから取り
出し、外気中に放置しても包装から取り出さない間はし
ばらく、ウェル中が凍結された状態を保つことができる
ことなどを見出し本発明を完成するに至った。
断熱材で覆うだけで、発泡スチロール製の箱の中に培養
器全体を納めて凍結した時と同等の細胞生存率を得るこ
とができること、断熱材に綿状のものまたはエアーキャ
ップを用い空気不透過性の袋中に納めてシールし冷却す
ることにより、冷却の進行にともない袋内のエアーの体
積が減少し最終包装体積が小さくなりコンパクトにおさ
まること、さらに、解凍時ディープフリーザーから取り
出し、外気中に放置しても包装から取り出さない間はし
ばらく、ウェル中が凍結された状態を保つことができる
ことなどを見出し本発明を完成するに至った。
【0019】即ち本発明は、1つ以上のウェルを有する
培養容器本体と蓋よりなる培養容器中に足場依存性動物
細胞を凍結する過程において、1)ウェル開口部をフィ
ルムで覆う、2)その上を蓋で覆う、3)培養器全体ま
たはウェル部分を断熱材で覆う、4)培養器全体をフィ
ルムよりなる袋に納めシールし気密状態とする、5)冷
却して細胞を凍結する工程から少なくとも構成されるこ
とを特徴とする足場依存性動物細胞の凍結保存方法であ
る。
培養容器本体と蓋よりなる培養容器中に足場依存性動物
細胞を凍結する過程において、1)ウェル開口部をフィ
ルムで覆う、2)その上を蓋で覆う、3)培養器全体ま
たはウェル部分を断熱材で覆う、4)培養器全体をフィ
ルムよりなる袋に納めシールし気密状態とする、5)冷
却して細胞を凍結する工程から少なくとも構成されるこ
とを特徴とする足場依存性動物細胞の凍結保存方法であ
る。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明について詳細に説明する。
用いる培養器は、従来のシャーレやマルチウェルプレー
トなどがそのまま用いることができるが、ウェルは肉厚
が薄く、ウェルが複数存在するプレートの場合は、各々
のウェルの外壁がお互いに分離したもの、あるいはそれ
に近い形状、例えば成形上の都合で一部外壁がリブ状の
ものでつながった構造のものを用いる。
用いる培養器は、従来のシャーレやマルチウェルプレー
トなどがそのまま用いることができるが、ウェルは肉厚
が薄く、ウェルが複数存在するプレートの場合は、各々
のウェルの外壁がお互いに分離したもの、あるいはそれ
に近い形状、例えば成形上の都合で一部外壁がリブ状の
ものでつながった構造のものを用いる。
【0021】ウェル開口部を覆うフィルムは、通気性が
なく水蒸気バリア性を有していれば何を用いてもよい。
さらに、強い粘着性を有しない方が望ましい、なぜな
ら、フィルムが冷却前にウェル開口部に密着してしまう
とフィルムが変形しにくくなり、冷却開始時からウェル
内の気圧が減少し、細胞が凍結前に陰圧に細胞がさらさ
れることになり、細胞への悪影響が懸念される。特に、
培地量が細胞表面が培地の表面張力で濡れている程度ま
で除去されている場合はウェル内の気圧の低下はより大
きく細胞に悪影響を与えることになる、またウェル内の
陰圧の状態が凍結後も保持されると細胞表面の乾燥を促
進することにもなる。
なく水蒸気バリア性を有していれば何を用いてもよい。
さらに、強い粘着性を有しない方が望ましい、なぜな
ら、フィルムが冷却前にウェル開口部に密着してしまう
とフィルムが変形しにくくなり、冷却開始時からウェル
内の気圧が減少し、細胞が凍結前に陰圧に細胞がさらさ
れることになり、細胞への悪影響が懸念される。特に、
培地量が細胞表面が培地の表面張力で濡れている程度ま
で除去されている場合はウェル内の気圧の低下はより大
きく細胞に悪影響を与えることになる、またウェル内の
陰圧の状態が凍結後も保持されると細胞表面の乾燥を促
進することにもなる。
【0022】ウェルプレートのウェル上面におかれるフ
ィルムが粘着性を有していなくても、最終的に蓋がプレ
ート本体に押さえられることによりウェルの気密性を保
持することができるようになる。さらに、シャーレや複
数のウェルを有したプレートは、一般に培養時の培養器
中の水分の蒸発を防ぐ目的や、近隣のウェルからのコン
タミを防止するため、ウェル開口部および蓋にリブが設
けられている。このプレートの開口部のリブおよび蓋の
リブにより水蒸気バリア性フィルムはより確実にウェル
の気密性を保持することができるようになるからであ
る。
ィルムが粘着性を有していなくても、最終的に蓋がプレ
ート本体に押さえられることによりウェルの気密性を保
持することができるようになる。さらに、シャーレや複
数のウェルを有したプレートは、一般に培養時の培養器
中の水分の蒸発を防ぐ目的や、近隣のウェルからのコン
タミを防止するため、ウェル開口部および蓋にリブが設
けられている。このプレートの開口部のリブおよび蓋の
リブにより水蒸気バリア性フィルムはより確実にウェル
の気密性を保持することができるようになるからであ
る。
【0023】ウェル開口部を覆う水蒸気バリア性フィル
ムは、−80℃以下の例えば−120℃程度の極低温に
おいても高い水蒸気バリア性を保つことが必要である。
このような特性を有していれば何を用いてもよいが、プ
ラスチックフィルム単体では極低温で脆性破壊等の劣化
によりピンホール等が生じて、水蒸気バリア性が失われ
る可能性もある。上記の様な現象を考慮すると、アルミ
箔とプラスチックフィルムのラミネート構造のフィルム
が好ましい。
ムは、−80℃以下の例えば−120℃程度の極低温に
おいても高い水蒸気バリア性を保つことが必要である。
このような特性を有していれば何を用いてもよいが、プ
ラスチックフィルム単体では極低温で脆性破壊等の劣化
によりピンホール等が生じて、水蒸気バリア性が失われ
る可能性もある。上記の様な現象を考慮すると、アルミ
箔とプラスチックフィルムのラミネート構造のフィルム
が好ましい。
【0024】さらに培養器本体を納める袋であるが、培
養器を納めたのち容易にシールができ袋内部が気密状態
に保たれ、さらに−80℃以下から−120℃という極
低温でも気密性を長期にわたり保持できるものであれば
特に制限はないが、上記のような要求を満たすものとし
ては、上述した水蒸気バリア性フィルムと同様にアルミ
箔とプラスチックフィルムのラミネート構造のフィルム
が好ましい。
養器を納めたのち容易にシールができ袋内部が気密状態
に保たれ、さらに−80℃以下から−120℃という極
低温でも気密性を長期にわたり保持できるものであれば
特に制限はないが、上記のような要求を満たすものとし
ては、上述した水蒸気バリア性フィルムと同様にアルミ
箔とプラスチックフィルムのラミネート構造のフィルム
が好ましい。
【0025】本発明における足場依存性動物細胞の凍結
保存方法について複数のウェルを有するプレートの場合
を例に述べる。細胞が培養された状態で培養器ごと凍結
する際、まず培地に凍結保護剤を添加し、凍結時の細胞
のダメージを軽減するための処理を行ったのち、必要に
応じて培養面が濡れている状態になるまでウェル内の培
地を除去する。その後、プレートのウェル開口部に滅菌
済みのフィルムをのせたのち、プレート本体とセットに
なっている蓋をする。さらにプレート全体あるいは一部
を断熱材で覆い、プレートを袋中に納め、ヒートシール
などによりシールする。その後、プログラムディープフ
リーザー中などで徐冷し凍結する。
保存方法について複数のウェルを有するプレートの場合
を例に述べる。細胞が培養された状態で培養器ごと凍結
する際、まず培地に凍結保護剤を添加し、凍結時の細胞
のダメージを軽減するための処理を行ったのち、必要に
応じて培養面が濡れている状態になるまでウェル内の培
地を除去する。その後、プレートのウェル開口部に滅菌
済みのフィルムをのせたのち、プレート本体とセットに
なっている蓋をする。さらにプレート全体あるいは一部
を断熱材で覆い、プレートを袋中に納め、ヒートシール
などによりシールする。その後、プログラムディープフ
リーザー中などで徐冷し凍結する。
【0026】冷却と同時に袋内の空気の体積が減少しは
じめる、それに従い袋はしぼんでいく、その間袋内及び
プレート内は大気圧を保持する、このように細胞が凍結
する過程で大気圧を保持できるので、陰圧により細胞が
ダメージを受けることがない。やがて冷却が進むとさら
に袋はしぼみ、細胞が凍結されると同時に、プレート本
体と蓋がしっかりと固定されるようになる。この時点
で、ウェル開口部にのせた水蒸気バリア性フィルムはウ
ェル開口部に密着しウェルの気密性を保てるようにな
る。さらに、断熱材として綿状のものあるいは、エアー
キャップを用いれば、袋が変形すると同時に全体の体積
が減少し、全体としてコンパクトな形態におさまるよう
になり、保存においてディープフリーザー中により多く
のプレートを保存することができる。
じめる、それに従い袋はしぼんでいく、その間袋内及び
プレート内は大気圧を保持する、このように細胞が凍結
する過程で大気圧を保持できるので、陰圧により細胞が
ダメージを受けることがない。やがて冷却が進むとさら
に袋はしぼみ、細胞が凍結されると同時に、プレート本
体と蓋がしっかりと固定されるようになる。この時点
で、ウェル開口部にのせた水蒸気バリア性フィルムはウ
ェル開口部に密着しウェルの気密性を保てるようにな
る。さらに、断熱材として綿状のものあるいは、エアー
キャップを用いれば、袋が変形すると同時に全体の体積
が減少し、全体としてコンパクトな形態におさまるよう
になり、保存においてディープフリーザー中により多く
のプレートを保存することができる。
【0027】凍結開始前の袋内の空気量を調節すること
により、凍結保存時の温度で大気圧より若干低い気圧に
設定されるのが理想であるが、本細胞付培養器が最も頻
繁に保存される温度は、−80〜−120℃の範囲であ
り、この温度の範囲における凍結および保存であれば、
フィルムを三方シールした袋を用いる場合、培養器およ
び断熱材全体が丁度袋に収まり、容易にシールができる
大きさであれば、空気量を調整しなくとも培養器を袋内
に納め、袋開口部末端をシールすれば、凍結保存時袋内
が過度な陰圧に置かれることはなくウェル培養面の細胞
や培地が昇華したり乾燥することはない。
により、凍結保存時の温度で大気圧より若干低い気圧に
設定されるのが理想であるが、本細胞付培養器が最も頻
繁に保存される温度は、−80〜−120℃の範囲であ
り、この温度の範囲における凍結および保存であれば、
フィルムを三方シールした袋を用いる場合、培養器およ
び断熱材全体が丁度袋に収まり、容易にシールができる
大きさであれば、空気量を調整しなくとも培養器を袋内
に納め、袋開口部末端をシールすれば、凍結保存時袋内
が過度な陰圧に置かれることはなくウェル培養面の細胞
や培地が昇華したり乾燥することはない。
【0028】細胞の培養を開始する際は、袋を開封し培
養器を取り出し、加温し細胞を解凍する、解凍後のウェ
ルへの培地の交換および分注をする際は、蓋をはずし、
水蒸気バリア性フィルムをピンセットなどで取り除けば
よい。フィルムは溶着されていないので、特別な力を加
える必要がなく容易にフィルムを取り除くことができ、
実験者への負担は全くない。
養器を取り出し、加温し細胞を解凍する、解凍後のウェ
ルへの培地の交換および分注をする際は、蓋をはずし、
水蒸気バリア性フィルムをピンセットなどで取り除けば
よい。フィルムは溶着されていないので、特別な力を加
える必要がなく容易にフィルムを取り除くことができ、
実験者への負担は全くない。
【0029】
【発明の効果】本発明は、シャーレや複数のウェルをも
った培養器中に足場依存性動物細胞を培養した状態で凍
結保存する際において、培養器のウェル内の乾燥を防止
でき、凍結過程において緩やかな冷却スピードを実現
し、さらに、解凍作業においてディープフリーザーから
取り出し解凍作業に移るまで時間的余裕がもてるように
なる、さらには、保存および輸送において必要なスペー
スを最小限に抑えることができ、かつ簡便であり、足場
依存性動物細胞の凍結保存方法として有用である。
った培養器中に足場依存性動物細胞を培養した状態で凍
結保存する際において、培養器のウェル内の乾燥を防止
でき、凍結過程において緩やかな冷却スピードを実現
し、さらに、解凍作業においてディープフリーザーから
取り出し解凍作業に移るまで時間的余裕がもてるように
なる、さらには、保存および輸送において必要なスペー
スを最小限に抑えることができ、かつ簡便であり、足場
依存性動物細胞の凍結保存方法として有用である。
Claims (7)
- 【請求項1】 1つ以上のウェルを有する培養容器本体
と蓋よりなる培養容器中に足場依存性動物細胞を凍結す
る過程において、 1)ウェル開口部をフィルムで覆う 2)その上を蓋で覆う 3)培養器全体またはウェル部分を断熱材で覆う 4)培養器全体をフィルムよりなる袋に納めシールし気
密状態とする 5)冷却して細胞を凍結する 工程から少なくとも構成されることを特徴とする足場依
存性動物細胞の凍結保存方法。 - 【請求項2】 ウェル開口部を覆うフィルム及び培養器
を収納するための袋を構成するフィルムが0℃〜−12
0℃の範囲内において水蒸気バリア性を有する請求項1
記載の足場依存性動物細胞の凍結保存方法。 - 【請求項3】 ウェル開口部を覆うフィルム及び培養器
を収納する袋を構成するフィルムがアルミ箔と樹脂がラ
ミネートされたフィルムよりなる請求項1又は2記載の
足場依存性動物細胞の凍結保存方法。 - 【請求項4】 断熱材が綿状のものである請求項1〜3
記載のいずれかの足場依存性動物細胞の凍結保存方法。 - 【請求項5】 断熱材がエアーキャップである請求項1
〜3記載のいずれかの足場依存性動物細胞の凍結保存方
法。 - 【請求項6】 断熱材が凹みを有した発泡体であり培養
器のウェルと隙間なく勘合している請求項1〜3記載の
いずれかの足場依存性動物細胞の凍結保存方法。 - 【請求項7】 発泡体の材質がポリスチレン、ポリウレ
タン、ポリエチレン塩化ビニル樹脂及びエポキシ樹脂の
中の少なくとも1種である請求項6記載の足場依存性動
物細胞の凍結保存方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000217146A JP2002034555A (ja) | 2000-07-18 | 2000-07-18 | 足場依存性動物細胞の凍結保存方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000217146A JP2002034555A (ja) | 2000-07-18 | 2000-07-18 | 足場依存性動物細胞の凍結保存方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002034555A true JP2002034555A (ja) | 2002-02-05 |
Family
ID=18712300
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000217146A Pending JP2002034555A (ja) | 2000-07-18 | 2000-07-18 | 足場依存性動物細胞の凍結保存方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2002034555A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015089363A (ja) * | 2013-11-07 | 2015-05-11 | 大日本印刷株式会社 | 細胞培養容器および細胞培養方法 |
KR20210036675A (ko) * | 2019-09-26 | 2021-04-05 | 한국생산기술연구원 | 단열 및 충격 흡수를 위한 세포 배양 용기 및 이의 제조 방법 |
CN115968867A (zh) * | 2023-03-21 | 2023-04-18 | 天津外泌体科技有限公司 | 外泌体冻干保护剂和外泌体冻干制剂的制备方法 |
-
2000
- 2000-07-18 JP JP2000217146A patent/JP2002034555A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015089363A (ja) * | 2013-11-07 | 2015-05-11 | 大日本印刷株式会社 | 細胞培養容器および細胞培養方法 |
KR20210036675A (ko) * | 2019-09-26 | 2021-04-05 | 한국생산기술연구원 | 단열 및 충격 흡수를 위한 세포 배양 용기 및 이의 제조 방법 |
KR102279335B1 (ko) * | 2019-09-26 | 2021-07-21 | 한국생산기술연구원 | 단열 및 충격 흡수를 위한 세포 배양 용기 및 이의 제조 방법 |
CN115968867A (zh) * | 2023-03-21 | 2023-04-18 | 天津外泌体科技有限公司 | 外泌体冻干保护剂和外泌体冻干制剂的制备方法 |
CN115968867B (zh) * | 2023-03-21 | 2023-07-14 | 天津外泌体科技有限公司 | 外泌体冻干保护剂和外泌体冻干制剂的制备方法 |
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