JP4214746B2 - 細胞培養基板及びその製造方法 - Google Patents

細胞培養基板及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞を用いた実験や細胞毒性評価などに使用される、動物細胞が付与された細胞培養基板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、動物細胞を細胞実験に使用するには、細胞が増殖する性質を有する場合は、アンプルなどの容器中に細胞浮遊液の形で凍結保存された細胞を解凍し、培養用フラスコなどに細胞を播種し、培養し増殖させたあと、実験目的に応じた培養器の形態に最終的に細胞を播種し増殖させ細胞条件を整えた後、実験評価に用いる。
【0003】
近年になって、薬物などの毒性試験などに培養細胞が用いられるようになり、
しかも一度に多くのサンプルを試験したいという要望および検出系の発達により、少量の細胞での評価が行なわれるようになってきた。その代表例としては96ウェルプレートを用いた培養細胞での評価が挙げられる。96ウェルプレートは、従来からELISAに用いられてきた経緯から、専用の吸光度、蛍光および発光測定用のプレートリーダーが普及しており、培養細胞を用いた各種スクリーニング試験に広く使用されている。さらには同じプレートの中に384ウェルさらには1536ウェルといったプレートも使用されている。
【0004】
このような、プレートの多ウェル化の一方、バイオテクノロジーの分野では、DNAチップを始めとして分析評価系のチップ化が進んでおり、迅速かつコンパクト、簡便な操作へと進化している、培養細胞においても例外ではなく、細胞毒性評価方法などでは、基板上に細胞を配列させたものを用いる方法が提案され、例えば、特開2000−189191号公報に開示されている。
【0005】
チップ基板上での培養細胞の評価は、基板上に細胞をパターン状に配列したものが使用され、チップ基板上に細胞が集積され、ごく微小なパターン上に細胞を載せたものが必要になってくる。
チップ基板上への細胞のパターン化は細かい作業となり、一般の実験室において、細胞パターンをのせたチップを調製することは困難であり煩わしい作業となる。従って今後、生きた細胞をパターン形成したチップ基板のニーズが高くなる。
基板上に、組織や細胞が載ったものとしては、基板上に細胞パターンを形成した後、ホルマリンなどにより固定化されたものが市販されている。この場合、細胞はすでに死んでおり、細胞毒性のような細胞応答性についての評価は行なうことはできない。
【0006】
細胞の応答性をみるには、細胞は生きている必要があり、さらに長期保存性も加味すると、基板上に細胞が凍結保存された、いわゆる、細胞付培養基板が必要となる。
培養容器に足場依存性動物細胞が培養された形態で培養用培地と共に培養器ごと凍結保存する方法が特開平1−16581号公報に開示されている。同様に本発明者も着脱可能なシート状での細胞の凍結方法を特開平6−335385号公報に開示している。
しかしこれらの方法を、基板上に細胞をパターン化したものに適用することは難しかった。その理由は細胞解凍時の細胞の剥離にある。上記の公開公報に開示されている凍結方法では細胞が剥離してしまい、微細な細胞のパターンを保持することは出来なかった。
以上のような理由から、足場依存性細胞が培養基板にパターンを形成して接着し凍結保存された細胞付の培養基板を実現することはできなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−189191号公報
【特許文献2】
特開平1−16581号公報
【特許文献3】
特開平6−335385号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、培養表面に動物細胞が培養面に伸展している培養された状態でチップ状の培養基板とともに凍結されていて、解凍時に細胞が剥離することなく培養形態を保っている、動物細胞が付与された細胞培養基板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、
(1)(1)動物細胞を培養基板の表面上に形成された培養面で培養し、培養基板の培養面に接着した細胞層を形成、
(2)培養基板の培養面から培養液の除去、
(3)培養基板の培養面に、粘性付与物質および凍結保護剤を含有する培養液を接触、
(4)培養基板の培養面から粘性付与物質および凍結保護剤を含有する培養液を、10〜20μl/cm2の範囲で残留させて除去、
(5)冷却して培養基板ごと細胞を凍結する、
工程から少なくとも構成される細胞培養基板の製造方法であって、凍結保護剤がDMSO(ジメチルスルホキシド)であり、DMSO(ジメチルスルホキシド)の培養液中の含有量が5〜15体積%であり、粘性付与物質が水溶性高分子であり、粘性付与物質および凍結保護剤を含有する培養液の粘度が1〜37℃において10〜100センチポイズである細胞培養基板の製造方法、
(2)水溶性高分子がメチルセルロース、カルボキシセルロース、及びゼラチンのいずれかより選ばれる(1)記載の細胞培養基板の製造方法。
(3)動物細胞が基板上でパターンを形成して接着している(1)又は(2)記載の細胞培養基板の製造方法、
である。
【0010】
即ち、本発明は、
(1) 動物細胞が培養基板の細胞培養領域に接着し、粘性付与物質および凍結保護剤を含有する培養液が基板の培養面に10〜20μl/cm2の範囲で残留した状態で動物細胞が培養基板ごと凍結されていることを特徴とする細胞培養基板、
(2) 培養液の粘度が1〜37℃において10〜100センチポイズである(1)の細胞培養基板、
(3) 凍結保護剤としてDMSO(ジメチルスルホキシド)を成分として含む(1)又は(2)の細胞培養基板、
(4) 粘性付与物質が水溶性高分子である(1)〜(3)いずれかの細胞培養基板、
(5) 水溶性高分子がメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びゼラチンのいずれかより選ばれる(1)〜(4)いずれかの細胞培養基板、
(6) 動物細胞が基板上でパターンを形成して接着している(1)〜(5)いずれかの細胞培養基板、
(7) パターンが、少なくとも1つ以上のスポットより形成されている(6)の細胞培養基板、
(8) 複数のスポットが規則的に配列されている(7)の細胞培養基板、
(9) ▲1▼動物細胞を培養基板培養面で培養し、培養基板の培養面に接着した細胞層を形成、
▲2▼養基板の培養面から培養液の除去、
▲3▼養基板の培養面に、粘性付与物質および凍結保護剤を含有する培養液を接触、
▲4▼培養基板表面から粘性付与物質および凍結保護剤を含有する培養液を、10〜20μl/cm2の範囲で残留させて除去、
▲5▼冷却して培養基板ごと細胞を凍結する、
工程から少なくとも構成されることを特徴とする細胞培養基板の製造方法。
(10)粘性付与物質および凍結保護剤を含有する培養液の粘度が1〜37℃において10〜100センチポイズである(9)の細胞培養基板の製造方法、
(11) 粘性付与物質および凍結保護剤を含有する培養液中の凍結保護剤がDMSO(ジメチルスルホキシド)又はその混合物である(9)又は(10)の細胞付培養基板の製造方法、
(12) DMSO(ジメチルスルホキシド)の含有量が5〜15体積%である(11)の細胞培養基板の製造方法、
(13) 粘性付与物質が水溶性高分子である(9)〜(12)いずれかの細胞培養基板の製造方法、
(14) 水溶性高分子がメチルセルロース、カルボキシセルロース、及びゼラチンのいずれかより選ばれる(9)〜(13)いずれかの細胞培養基板の製造方法、
である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いることができる動物細胞は、上皮系や繊維芽細胞系の株化細胞および初代培養された血管内皮細胞や肝細胞、皮膚上皮細胞など、培養面に接着し伸展する細胞である。株化細胞の代表例として、HeLa、Hep G2、A-431、V79、Vero等があげられる。
本発明の培養器に使用する培養基板の形態には特に制限はない。一般的な形態としては、顕微鏡観察などでのプレパラート作製に使用されるスライドガラスやカバーガラスに似た形態のものであるが、大きさや厚さについて過度に大きかったり小さかったりしなければ特に指定はないが、長さ1〜10cm 幅1〜10cm及び厚さ0.1〜2mm程度が最も扱い易いと思われる。また、一般に市販されている培養器は円形のものが多く円形の形状でも良い、その大きさは直径1〜5cm程度が扱い易く好ましい。
【0012】
培養基板の材質としては特に制限はないが、われにくいことを考慮するとプラスチックが好ましく、顕微鏡での観察が必要な場合は透明性が必要であり、適した樹脂としてはポリスチレンなどが挙げられ、さらに蛍光観察が必要な場合は透明性があり蛍光を発しない材質であることが必要であり、そのような樹脂としてETFEやFEPなどのフッ素樹脂などが挙げられる。
【0013】
培養基板上の培養表面であるが、一般の培養器は動物細胞用に培養表面に親水化処理が施されており、親水化処理の度合いは接触角で60度程度である。本発明の細胞付培養基板についても、細胞培養領域に上記と同程度の親水化処理を施し、細胞の接着性を付与するのが好ましい。また、剥離しやすい細胞の場合は解凍後の細胞の伸展状態をより良好に保つために培養面をさらに親水化しておくのが好ましく、親水化処理の度合いは接触角で20〜40度にすると効果的である。
株化細胞の場合は、上記のごとく特に細胞外マトリックスをコーティングする必要はないが、初代培養の血管内皮細胞等のように、細胞機能の発現に細胞外マトリックスのコーティングが必要な場合は、適宜コ−ティングを行なってもよい。
【0014】
細胞のパターンを培養基板面に形成する場合は、基板上の親水化領域をパターン化すればよい。細胞によっては親水化処理を施しても基板表面に接着したパターンの境界が不鮮明になることもあるが、そのような場合は、親水化処理後に細胞のパターン領域外に非細胞接着性処理を施せば良く、その方法としては、ポリ−HEMAをコートする等が挙げられる。
細胞のスポットの配列についてはランダムにではなく、評価分析の方法や目的に合わせて規則をもって配置して方がよい。一般的には行方向、列方向に碁盤の目状に配列されるが、このように配列すれば、各々のスポット位置の識別が容易となり好適である。
【0015】
次に、細胞の凍結の際に用いる培養液について記載する。細胞培養の分野では細胞凍結の際、細胞のダメージを抑える目的で凍結保護剤が添加される。凍結保護剤として種々のものが用いられているが、安価で凍結保護剤としての効果が高いのはDMSO(ジメチルスルホキシド)である、凍結保護剤としてDMSOを主成分として加えた場合、DMSOの最終的な培地中の濃度は約5〜20体積%(V/V)の濃度が好ましく、さらに好ましくは8〜15体積%(V/V)である。
凍結保護剤としてDMSOを添加した培養液を培養面に接着している細胞に接触させると細胞は剥離してしまう。細胞が剥離しない濃度までDMSOの濃度を下げると、凍結および解凍での細胞保護の作用はなくなり、解凍時の細胞の生存を確保することはできない。
本発明者は、培養液に粘性を付与することによりDMSOによる細胞剥離の作用が軽減され、培養面に10〜20μl/cm2の範囲の培養液の残留であれば細胞の剥離が起こらないことを発見し本発明を完成させるに至った。
【0016】
増粘性物質としては、細胞に毒性やダメージを与えないものであれば特に制限はないが、水溶性の高分子が好ましく、中でもメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン等の生物由来物が好適であり、中でもメチルセルロースは添加することにより増粘性を付与した際の温度による粘性の変化が小さく好適である。
培養液の粘度は、1〜37℃の温度範囲において10〜100センチポイズが好適である。この粘度範囲に培養液の粘性を調製することにより、培養液をピペット等により軽く除くだけで培養面に10〜20μl/cm2の範囲で培養液を残留させることができる。10センチポイズ未満では粘性を付与することによる細胞の剥離を防止する効果が無くなる。一方100センチポイズを超えると20μl/cm2以上の培養液の残留量となり、この場合細胞へのダメージが認められるようになり、解凍時の細胞生存率の低下が認められるようになる。
【0017】
本発明の細胞培養基板の作製手順について説明する。まず目的とする培養基板を培養器中で固定する。固定の方法は種々あるが、シリコーンゴムなどを用いれば、硬化後容易に剥がすことができ、また細胞への毒性がなく好適と思われる。培養基板の固定後、滅菌処理をして細胞培養ができる状態とした後、細胞を播種し培養を行って細胞を増殖させる。
凍結の際細胞の密度は、使用される実験の目的にもよるが、培養表面上の培養領域の約50%〜コンフルエントな状態(個々の細胞が相互に密着し、細胞間の間隙がほぼなくなる状態)が望ましい。この状態を越すと細胞は増殖性が低下することがあるため、実験の目的によって使用が制限されることにもなるので注意を要する。
【0018】
次に、凍結工程に移る。まず培養していた培養器から培養液を除去する。培養液の除去は、一般に培養実験で行なわれているようにピペットなどで吸引すればよい。
次に、凍結保護剤および粘性付与物質を付与した培養液を培養器中に分注し、ピペットなどにより吸引除去する。この操作だけで、培養面に10〜20μl/cm2の凍結用培養液が保持される。この後包装を施し冷却して凍結を行なう。
【0019】
凍結および凍結保存のための包装について記載する。包装形態も、培養液を除去した後の細胞の乾燥を防止し、細胞の凍結保存性を高める手段として重要である。包装において重要なのは、凍結から解凍までの間、培養器内を過度に陰圧にしない必要がある。
本発明においては、凍結用培養液が少ないため基板が納められた培養器が気密状態に置かれると、凍結工程での温度の低下にともない培養器内の陰圧化が起こり、培養液の蒸発による濃縮が起こる可能性がある。
そこで、適度なガス透過性をもったシートを培養容器器本体と蓋の間に介在させて培養容器を覆うことにより、凍結時培養器内の陰圧化が起こらず、かつ培養器内に気流が生じることなく凍結保存時の細胞の乾燥を防ぐことができる。
【0020】
その際、適度なガス透過性を有するシートと蓋の間に発泡体のシート等のクッション材を挟むなどして、通気性のシートを培養器開口部と密着させるかあるいは、ヒートシールなどによりシールする。適度なガス透過性をもつシートとしては、ろ紙、デュポン社のタイベックの商標で広く知られており医療用具の包装や建材として用いられている高密度ポリエチレン繊維を熱と圧力によって結合したスパンボンド不繊布又は最近の野菜の保存用にポリエチレンやポリプロピレン等のシートにミクロな穴を開口させたシート等が挙げられる。耐水性やヒートシールのしやすさを考慮すると、高密度ポリエチレン繊維を熱と圧力によって結合したスパンボンド不繊布が好ましい。
【0021】
長期の凍結保存性を得るためには、さらに包装を施すと効果的である。包装の材質および形態としては、基板の培養面乾燥の防止の観点から、空気の透過性の低いシートからなる袋中に納めシールするのが最適である。この際、注意しなければならないのは、包装に使用する袋の容量が大きく、シールした際の包装中に空気が蓄えられていることが必要である。その理由は、袋の容量および空気量に余裕がないと、冷却した際に袋の中が陰圧となり、さらに培養器内も陰圧になって、培養面の乾燥を惹起することになるからである。
【0022】
袋の容量としては、納められる培養器の外形容量の1.5〜5倍が適当である。1.5倍の容量であれば、室温でフル容量で空気を蓄えシールし凍結した場合、−80℃においても1気圧を保持することができ、培養器内の陰圧化を防止することができる。包装作業における効率を考慮すると上記のような袋の容量が適当である。袋の容量が培養器の容量の3〜4倍の袋を用いれば、特に空気を注入することなく、培養器を中に納めて袋の端をシールすれば、室温で培養器の容量の1.5〜3倍のエアーを袋内に留めることができる。
【0023】
この袋の材質としては、水分の透過性が小さければ特に問題はなく、ポリエチレン製の袋で十分である。
さらに、外装として、ガス透過性の小さい袋、例えばアルミ箔とプラスチックシートとのラミネートシートからなる外袋中に納めることによって、液体窒素中での保存が可能となり、より長期にわたる凍結保存が可能になる。
【0024】
包装が終了したら、最後に凍結工程に移る。凍結は徐々に温度を下げて行なう必要があり、少量の凍結であればプログラムフリーザーを用いるのが良いが、現在市販されているプログラムフリーザーは高価であり、また大容量のものはなく、一度に凍結できる培養器の数にも制限があるため、販売のための生産手段に多量に凍結するのには適さない。徐々に温度を下げる手段として、発泡スチロール中に納めて凍結する方法を用いても良い。
【0025】
最後に本発明の細胞付培養基板の解凍方法について説明する。アンプルなどの中に細胞が凍結されている場合、37℃温水中にアンプルなどを浸漬し、速やかに解凍することが解凍時の細胞の生存率を確保するために必要とされており、確かに、細胞の解凍時間に時間を要すると、解凍時の細胞の生存率は悪くなる。この傾向は、培養面に多量の凍結用培養液とともに足場依存性動物細胞が接着した状態で凍結されている場合はより顕著に表れる。
この要因は、細胞の周りに大量に存在する培養液によるものであり、速やかに全体が解凍されないと、細胞内および細胞の周りは培養液が溶けるまでの間、最も不安定な状態で長時間とどまることになり、それが細胞への損傷を招くことになると思われる。
【0026】
一方、本発明の細胞付培養基板では、細胞の周りの培地が少ないさため、解凍における細胞の温度上昇が滞ることなく、最も不安定な温度領域を一気に通過できること、さらに細胞が扁平なことにより細胞内全体が均一に解凍されるため、室温放置でも、高い細胞の生存性を保持した解凍が可能となっていると考えられる。解凍は包装から取り出さず、袋中に納めたままで解凍したほうがよい。もし解凍において、フリーザーから取り出した培養器を包装材等からすぐに取り出して直接外気に触れさせると、瞬時に培養器に霜が付着し、その霜が解けるまでの間、温度上昇が滞ることになる。また培養器全体が均一に温度上昇することを妨げるため、局所的に細胞の死滅が認められることもある。また、霜が解けることにより生ずる結露のため、菌の混入の危険性が高まるこことになるからである。
培養基板が、シャーレのような1つの容器部よりなる容器に納められている場合は、袋ごと温水中に浸漬し加温する方法でも容器全体が均一に加温することが可能であり、解凍時の細胞生存率も高く維持することができる。
【0027】
本発明の細胞培養基板では、培養基板全体が培養液の分注作業を行なう作業場所での温度にほぼ等しくなるまで培養器の蓋をあけない方が好ましい、なぜなら、培養器、特に培養面が冷たい状態で蓋を開けると、培養器に較べ暖かい空気が、培養面と接し、培養面に結露を生じ、細胞にダメージを与える可能性があるからである。
上記のように培養器中に培養液が分注できるようになるまでに必要な解凍時間であるが、100mmφのシャーレ中にシリコーンゴムで固定されたスライドガラスの細胞付培養基板の場合には−80℃のディープフリーザーより取り出してから室温解凍で約20分である。この時間は実験者が、培養液の準備等を行なうのに適度な時間である。また、細胞付培養基板を袋ごと37℃の温水中に浸漬する場合の解凍時間は1分〜2分程度であり、待つのに支障のない時間である。
【0028】
【実施例】
以下実施例により本発明について、具体的に説明する。
(実施例1)
厚さ1mmのポリスチレン製の板を幅2cm、長さ3.5cmに裁断し、その上に直径1mmの穴を2mm間隔でたて5つ、よこ5つ合計25個の穴を設けた厚さ1mmのシリコーンゴム製のシートで覆い密着させ、シリコーンゴムで覆った面をコロナ放電処理を行なったのち、直径60mmの浮遊細胞培養用シャーレ(住友ベークライト製 品番MS−1060R)の底面に親水化処理を施していない面を未硬化の液状シリコーンゴムで固定し硬化させたのち、ガンマ線滅菌を施した。
滅菌の後、シリコーンゴムシートの穴の部分に、1つの穴あたり20個のHeLa細胞を播種し室温で10分程放置したのち、シャーレ全体に培養液を静かに分注した、培養液の量は7ml/シャーレとした。培養液には5%の仔牛血清を含むMEM培地を用いた。炭酸ガスインキュベーター中で培養をおこない、顕微鏡観察により細胞密度がコンフルエントに達したところでポリスチレンの板および培養器ごと凍結した。
凍結の手順は次の通り行った。ポリスチレンの板を覆っているシリコーンゴムのシートを滅菌したピンセットで除き、シャーレ内の培養してきた培地をピペットで除去し、DMSOを10%(V/V)、メチルセルロースを2%(W/V)の濃度で上記培養用の培地に添加し凍結用培養液として調製した。この凍結用培養液の20℃における粘度は20センチポイズであった。この凍結用培養液をシャーレに5mlを分注し、直ちにピペットで除去した。このとき培養基板の培養面に残存している培地量は、以下の測定方法で約15μl/cm2であった。
培地量測定方法;基板と同じ大きさのろ紙を準備し秤量(A)し、培地除去後の基板上にろ紙を置き、残留している培地を吸い取り、秤量(B)する。両者の差から、残留していた培地量を求め、基板面積で割って、単位面積あたりの残留培地量を求めた。
基板をシャーレごとポリエチレン製の袋中に納め、ポリエチレン製の袋の上からシャーレの底面側を発泡ポリエチレン製のシートで覆い、ポリエチレン袋の余分な部分を底面側に発泡ポリエチレンシートを挟むようにして折り曲げ、アルミ箔とPETのラミネートシートよりなる外袋(大きさ13cm×13cm)に納め、シールしディープフリーザー中で1分間あたり約1℃の割合で−80℃まで冷却し凍結した。−80℃で保存し下記に示す確認試験に供した。
【0029】
(実施例2)
HepG2細胞について、培養液として10%牛胎児血清を添加したダルベッコ変法MEM培地を用いた。残存している培地量は、約15μl/cm2であった以下実施例1と同様の条件で 細胞培養基板を製作し、下記に示す確認試験に供した。
【0030】
(比較例1)
厚さ1mmのポリスチレン製の板を幅2cm、長さ3.5cmに裁断し、その上に直径1mmの穴を2mm間隔でたて5つ、よこ5つ合計25個の穴を設けた厚さ1mmのシリコーンゴム製のシートで覆い密着させ、シリコーンゴムで覆った面をコロナ放電処理を行なったのち、直径60mmの浮遊細胞培養用シャーレ(住友ベークライト製 品番MS−1060R)の底面に親水化処理を施していない面を未硬化の液状シリコーンゴムで固定し硬化させたのち、ガンマ線滅菌を施した。滅菌の後、シリコーンゴムシートの穴の部分に、1つの穴あたり20個のHeLa細胞を播種し室温で10分程放置したのち、シャーレ全体に培養液を静かに分注した、培養液の量は7ml/シャーレとした。
培養液には5%の仔牛血清を含むMEM培地を用いた。炭酸ガスインキュベーター中で培養をおこない、顕微鏡観察により細胞密度がコンフルエントに達したところでポリスチレンの板および培養器ごと凍結した。
凍結の手順は次の通り行った。ポリスチレンの板を覆っているシリコーンゴムのシートを滅菌したピンセットで除き、シャーレ培養してきた培地をシャーレから除去し、DMSOを10%(V/V)の濃度で含有する上記培養用の培地に添加した凍結用培養液を5ml/シャーレ分注し、ポリエチレン製の袋(大きさ10cm×10cm)に納め、袋の端をシールした。残存している培地量は、約100μl/cm2であった
ポリエチレン製の袋の上からシャーレの底面側を発泡ポリエチレン製のシートで覆い、ポリエチレン袋の余分な部分を底面側に発泡ポリエチレンシートを挟むようにして折り曲げ、アルミ箔とPETのラミネートシートよりなる外袋(大きさ13cm×13cm)に納め、シールしディープフリーザー中で1分間あたり1℃の割合で−80℃まで冷却し凍結した。−80℃で保存し下記に示す確認試験に供した。
【0031】
(比較例2)
HepG2細胞について、培養液として10%牛胎児血清を添加したダルベッコ変法MEM培地を用いた。以下比較例1と同様の条件で 細胞培養基板の製作を行い、下記に示す確認試験に供した。残存している培地量は、約100μl/cm2であった。
【0032】
(細胞培養基板の解凍)
ポリエチレン袋ごと37℃の温水中に浸漬し解凍を行なった。実施例1および2は温水中に3分浸漬した後各々の細胞の培養用培養液を5mlをシャーレに分注した。比較例1および2は37℃温水中に5分間浸漬した。シャーレ内の凍結用の培養液は完全に溶け、シャーレ全体も室温以上に加温されていることを確認し、凍結用培地をピペットにより除去し各々の細胞の培養用培養液を5mlをシャーレに分注した。
【0033】
(解凍時の細胞の剥離性の検証)
培地を分注したのち、各実施例および比較例の培養基板をシャーレごと振とう器上にのせ、ストローク5cm、1秒あたり1回の割合で、1分間振とうしたのち、培地を除去し、メタノールで固定しクリスタルバイオレットで細胞を染色し、各細胞スポットを写真に撮ったのち、写真を画像処理に施し、各スポットにおける細胞の占める面積を割り出した。
各実施例および比較例について3枚ずつ合計75個のスポットについて観察を行い、細胞占有率の平均値およびCV値を算出した。結果を表1に示す。
【0034】
(解凍後の細胞の生存性の検証)
培地分注したのち、静かに、実施例および比較例の培養基板をシャーレから外し、取り出し、トリプシン溶液を1滴基板上の細胞スポット上にたらし、上からカバーグラスを施し、37℃で3分間加温したのち、培養用基板上およびカバーグラス上の細胞をPBS(−)で洗い出し、容量1.5mlのサンプリングチューブに回収し、遠心により細胞を回収し、トリパンブルー排除法により生存細胞率を算出した。培養基板は各実施例および比較例について5枚用い平均を算出した。結果を表2に示す。
【0035】
【表1】
Figure 0004214746
【0036】
【表2】
Figure 0004214746
【0037】
【発明の効果】
本発明の細胞付培養基板は、細胞解凍時の細胞生存率が高くさらに、培養面からの細胞の剥離がなく、細かい細胞のパターンを形成させた細胞培養基板の供給手段として有益である。

Claims (3)

  1. (1)動物細胞を培養基板の表面上に形成された培養面で培養し、培養基板の培養面に接着した細胞層を形成、
    (2)培養基板の培養面から培養液の除去、
    (3)培養基板の培養面に、粘性付与物質および凍結保護剤を含有する培養液を接触、
    (4)培養基板の培養面から粘性付与物質および凍結保護剤を含有する培養液を、10〜20μl/cm2の範囲で残留させて除去、
    (5)冷却して培養基板ごと細胞を凍結する、
    工程から少なくとも構成される細胞培養基板の製造方法であって、凍結保護剤がDMSO(ジメチルスルホキシド)であり、DMSO(ジメチルスルホキシド)の培養液中の含有量が5〜15体積%であり、粘性付与物質が水溶性高分子であり、粘性付与物質および凍結保護剤を含有する培養液の粘度が1〜37℃において10〜100センチポイズである細胞培養基板の製造方法。
  2. 水溶性高分子がメチルセルロース、カルボキシセルロース、及びゼラチンのいずれかより選ばれる請求項記載の細胞培養基板の製造方法。
  3. 動物細胞が基板上でパターンを形成して接着している請求項1又は2記載の細胞培養基板の製造方法
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