JP4837158B2 - 光学材料用樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、光学フィルム、フィルターなど光学材料そのものに成形体として用いられたり、前記光学材料の接着、コーティング用途、発光素子、光センサーなどの封止に好適に使用される光学材料用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学用素材として透明樹脂が注目され、その軽量性、耐衝撃性、易成形性などの利点ゆえに光学レンズ、フィルム、プリズム、光ディスク基板などに利用されている。更には、光学特性を利用する光ファイバーや、光ディスク、発光素子、光センサーなどの封止材、コーティング材、接着材などの加工用にも積極的に利用されている。
【0003】
現在光学用レンズとして実用化されている樹脂は、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等があり、視力矯正用の樹脂レンズとしてはポリメタクリル酸メチル樹脂とポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂がよく用いられている。
しかしながら、ポリメタクリル酸メチル樹脂とポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂は、共に屈折率が1.50前後と低いため、この樹脂を視力矯正用レンズとした場合、無機ガラスに比較してレンズの端厚みが大きくなるという欠点がある。また、これらは吸湿しやすく、変形や屈折率変化が起こりやすく、耐熱性も100℃以下で難点とされている。一方、ポリカーボネートは屈折率並びに耐熱性は高いが、これも吸湿変形をおこしやすい欠点を有している。
【0004】
光ディスク、光ファイバー、液晶ディスプレイ用光学フィルム、発光素子など光を利用する素子においては、それらを張り合わせたり、接合したり、また封止したりするのに透明樹脂が接着剤、コーティング剤、封止材として用いられている。これら光学材料には透明性はもとより、低複屈折性、低吸湿性、高耐熱性、精密成型性、接合部材との屈折率適合性などの特性が求められている(例えば、特開平10-67977号公報、ポリファイル1999年7月号28頁など)。
【0005】
これらの点から、熱架橋型の透明樹脂が提案されており、更にこの透明樹脂の高屈折率化を目的にハロゲン原子や硫黄原子、芳香族基の導入が試みられている。例えば、クロル、ブロム原子を含むメタクリレート化合物の重合体、ブロム原子を含むヒドロキシ化合物とイソシアネート化合物との反応により得られるウレタン構造を有する熱硬化型光学材料(特開昭58-164615号公報等)が提案されている。しかしながら、ハロゲン原子を用いた場合は比重が大きくなり、軽量性が損なわれる結果となる。このため、ポリチオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応により得られるチオウレタン構造を有する熱硬化型光学材料が、特公平4-58489号、特開平5-148340号、特開平10-120676公報に提案されている。しかしながら、これらは樹脂成分の混合後から成型までの可使時間が短い欠点を有し、また低吸水率化に関する言及もみられない。
【0006】
エポキシ樹脂を用いた熱架橋型樹脂組成物の提案も見られる。組成物の易加工性からビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等の液状エポキシ樹脂を用いて酸無水物硬化剤で硬化を行う。この場合、最もガラス転移温度を高く、最も吸水率を小さくするエポキシ樹脂/酸無水物硬化剤の最適組成が決まっており(例えば3級アミン触媒を用いた場合はエポキシ基/酸無水物基=1.0/0.75〜0.9当量比)、したがって硬化物の耐熱性や吸水率を維持しすると、屈折率は決まったものとなって他部材との屈折率整合性をとることができない。また、この方法においても依然吸水率が2%を超えて高く、屈折率も1.55以下と十分なものではない(例えば、エポキシ樹脂ハンドブック、日刊工業新聞社発行、III-3章、VI-2章など)。
【0007】
硬化物の高屈折率化を目的に、エポキシ化合物のエポキシ基の一部又は全部をエピスルフィド基に変換した化合物を用いた光学材料の提案が特開平1-98615号公報、特開平3-81320号公報に見られるが、多官能チオール化合物の具体例は見られるがエピスルフィド基を有する具体的な化合物を用いた組成物並びに硬化物の特性について記載されていない。また、特開平9-71580号公報、特開平9-110979号公報には、新規なアルキルスルフィド型エピスルフィド化合物とその組成物及び硬化物が提案されている。アミン触媒を用いたアルキルスルフィド型エピスルフィド化合物の硬化物は、100℃以上の軟化点、1.69以上の屈折率、35以上のアッベ数を持つ好適な光学材料となる。硬化剤として1級アミン若しくは酸無水物を硬化剤とした組成物の説明はあるが、1級アミンを用いた実施例では軟化点が100℃以下と低く、また酸無水物との硬化物に関して、屈折率、吸水率などの具体的記載がなく、効果は明らかでない。更に、エポキシ基とエピスルフィド基とが混在する化合物から得た硬化物は耐熱性並びに/若しくは強度が低いという課題があり、また、それらと酸無水物を硬化剤として用いた組成物並びに硬化物特性に関する具体的な記載はない。
【0008】
更に、エピスルフィド化合物の重合において、西久保らはチオエステル開始剤と4級アンモニウム塩触媒の組み合わせが最も重合活性であることを報告している(例えば、Polymer Journal, 28(1), pp68-75, 1996又はPrpg. Polym.Sci. Vol.18, pp963-995, 1993)。また、J.P.Bellらは、エピスルフィド化合物と一級アミンとの硬化反応について検討している。これらのいずれの公知の文献においてもエピスルフィド化合物と酸無水物硬化剤との硬化反応に関して言及していない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、透明性はもとより、低吸湿性、高耐熱性、精密成型性、接合部材との屈折率適合性などの特性に優れた硬化型樹脂組成物並びにその硬化物を用いた光学材料を提供することにある。具体的にはエポキシ化合物の自己硬化物に比較して耐熱性に優れ、同種のエポキシ化合物を用いても酸無水物硬化物及びアミン硬化物に比較して低吸水率かつ高屈折率であり、従来のエピスルフィド化合物の硬化物に比較して耐熱性及び屈折率適合性に優れた材料を提供する。
【0010】
【課題を達成するための手段】
前記諸物性をバランスよく達成する光学用材料として、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の樹脂組成物並びにその硬化物が目的を達成することを明らかにした。すなわち、本発明は、式(1)で表される反応性基を1分子中に2つ以上もつ芳香族エピスルフィド化合物(A成分)、
【化2】
Figure 0004837158
(ここで、Xは硫黄原子である。また、R1〜R4は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基を示し、同じであってもよい)、グリシジル基を1分子中に2つ以上持つ芳香族グリシジルエーテル化合物(B1)及び/又はグリシジル基を1分子中に2つ以上持つグリシジルエステル化合物(B2)からなるグリシジル化合物(B成分)、酸無水物(C成分)並びに硬化触媒(D成分)を必須成分として含有し、更にA、B及びC成分中の官能基の比率が、酸無水物基1当量に対して、グリシジル基とβ-エピチオプロピル基の総計が1.35〜3.5倍当量であり、β-エピチオプロピル基が0.5〜2.2倍当量であり、グリシジル基が0.5〜1.9倍当量であり、また硬化触媒(D成分)がA、B及びC成分の総重量を100重量部としたとき、0.01〜5重量部であることを特徴とする光学材料用樹脂組成物である。また、本発明は、前記の樹脂組成物を重合硬化して得られる硬化物であり、屈折率が1.5以上、吸水率(85℃、85RHにおける飽和吸水率)が1%以下であることを特徴とする光学材料である。
【0011】
式(1)で表される反応性基を持つ芳香族エピスルフィド化合物(A成分)は、1分子中にグリシジルエーテル基をもつ公知の芳香族グリシジルエーテル化合物(エポキシ樹脂ともいう)から公知の手法により得られる。公知の芳香族グリシジルエーテル化合物としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキフェニル)フルオレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、4,4'-ビフェノール、テトラメチル-4,4'-ビフェノール等のビスフェノール類、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ナフトール若しくはナフタレンジオールと1、4-ビスキシレノールとの縮合化合物等の多官能フェノール類、又は芳香環の一部若しくは全ての水素原子をハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基で置換したものを、エピクロロヒドリンと反応させて得られる1分子中にグリシジルエーテル基を2つ以上有するものが挙げられる。これらは単独で用いても、併用してもかまわない。
【0012】
エピスルフィド基を有する化合物は、これらグリシジルエーテル化合物をチオシアン酸塩、チオ尿素、トリフェニルフォスフィンスルフィド、3-メチルベンゾチアゾール-2-チオン等のチオ化合物と、好ましくはチオシアン酸塩、チオ尿素と反応させて、グリシジル基の一部若しくは全てをチイロニウム塩に変換して製造される。これらチオ化合物は量論的にエポキシ基に対して等当量以上使用するが、生成物の純度、反応速度から考えて、幾分の過剰量の使用が好ましい。一方、グリシジルエーテル化合物中のグリシジル基の一部をエピチオプロピル基に変換する目的であれば、等当量以下で差し支えない。一方、本発明の目的を達成する組成物を勘案すればエポキシ基からエピスルフィド基への変換は50モル%以上が必要であるので、1/2倍当量以上のチオ化合物は必要である。
【0013】
反応は、無溶媒あるいは溶媒中のいずれでもよいが、溶媒を使用するときは、チオ化合物あるいは芳香族グリシジルエーテル化合物を溶媒中に細かく分散して不均一系で行うか、又はいずれかが可溶のものを使用することが目的物の収率向上に望ましい。具体例としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジグライム等のエーテル類、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のヒドロキシエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられ、これらの併用、例えば水と芳香族炭化水素類との組み合わせで2相で行うことも可能で、この場合は、未反応のグリシジルエーテル化合物を同時に洗浄除去することが可能である。また、反応液中に酸を反応促進剤として添加することが好ましい。酸の具体例としては、硝酸、硫酸、塩酸、燐酸、酢酸、プロピオン酸等があげられ、これらを併用してもかまわない。添加量は、反応総液量に対して0.1〜20wt%である。
反応温度は、通常20〜100℃で行われ、反応時間は通常20時間以下である。ここで得られる反応中間生成物は通常固体で得られるので、ろ別後、必要に応じて原料芳香族グリシルエーテル化合物が溶解可能なトルエンなどの溶媒で洗浄して未反応原料化合物を除去し、更に水にて洗浄液のpHが3〜5になるまで洗浄する。得られた中間体を粉砕し、過剰の炭酸ナトリウム水溶液若しくは炭酸カリウム水溶液中に20〜70℃にて2〜20時間分散させる。得られた反応固形物を水洗、乾燥後、トルエン等の有機溶剤に溶解し、不溶の未反応塩をろ別して、目的の芳香族エピスルフィド化合物溶液を得る。この溶液から溶剤を除去して芳香族エピスルフィド化合物を得る。
【0014】
本発明で用いられるグリシジル化合物(B成分)は、グリシジル基を1分子中に2つ以上持つ芳香族グリシジルエーテル化合物(B1)及び/又はグリシジルエステル化合物(B2)から選択される少なくとも1種である。芳香族グリシジルエーテル化合物(B1)は、前述したA成分の原料となる同様のものを使用できる。
また、グリシジル基を1分子中に2つ以上持つグリシジルエステル化合物(B2)としては公知のものが使用でき、具体的にはジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、グリシジルテトラヒドロフタレートを例示できる。より低い吸水率を得る目的にはグリシジルエーテル化合物が好ましい。また、これらは単独でも2種類以上を混合して用いてもよい。
【0015】
本発明で用いられる酸無水物(C成分)には、硬化剤として用いられる公知の酸無水物が使用でき、具体例としてはメチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などの脂環式酸無水物類、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリテート無水物、グリセロールトリストリメリテート無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などの芳香族酸無水物類、無水ヘット酸、テトラブロモ無水フタル酸などのハロゲン系酸無水物類などを例示できる。透明性と易成型性の観点から液状の脂環式酸無水物類が好ましい。また、これらは単独でも2種類以上を混合して用いてもよい。
【0016】
本発明では、硬化物が低吸水率と耐熱性とを両立しながら高い屈折率を任意に調整可能であり、そのような効果を発揮する組成物は、A、B及びC成分中の官能基比率が、酸無水物基1当量に対して、グリシジル基とβ-エピチオプロピル基の総計が1.35〜3.5倍当量、好ましくは1.5〜3.2倍当量であり、β-エピチオプロピル基が0.5〜2.2倍当量、好ましくは0.5〜2.0倍当量であり、かつグリシジル基が0.5〜1.9倍当量、好ましくは0.5〜1.5倍当量となるように、A,B並びにC成分の組成比を決定する。なお、酸無水物基(=(CO)2O)、グリシジル基及びβ-エピチオプロピル基は、それぞれ1モルを1当量として計算される。
【0017】
例えば、β-エピチオプロピル基をもつ化合物は一般的には室温で固体状態でありあるために単独では無溶剤組成物として扱いにくく、またコーティング後の造膜性も脆いものとなる。一方、グリシジル基の単独硬化では十分な架橋構造をもった硬化物を得られない。また、硬化物の屈折率を任意に調整する目的で、β-エピチオプロピル基及びグリシジル基を持つ化合物の混合系で触媒共存下における硬化を行うと、β-エピチオプロピル基の硬化速度がグリシジル基のそれよりも早く、また硬化物の未反応グリシジル基が残存して相分離による白濁やガラス転移点の低下が生じる。そこで、本発明では、この系に酸無水物硬化剤を共存させると、硬化触媒が酸無水物基を活性化して硬化反応を開始するために、β-エピチオプロピル基とグリシジル基と共に硬化反応に関与して、均一な透明硬化物を得ることを可能とした。
【0018】
更に、本発明ではグリシジル基とβ-エピチオプロピル基及び酸無水物基の3成分が共存することで組成物の粘度調整範囲が広範になると同時に、前述の官能基比率の範囲となるようにA、B、C成分の配合量を調製することで、目的の特性を得られることを見いだした。すなわち、酸無水物基1当量に対して、グリシジル基とβ-エピチオプロピル基の総当量が1.35倍当量以上とすることで、まず硬化物中の未反応酸無水物基の残存をなくし、吸水率を低くすることが可能となった。また、β-エピチオプロピル基を0.5倍当量以上とすることで硬化物の高屈折率を1.5以上に、かつ硬化物中のエステル結合の比率を下げて吸水率を1%以下(85℃、85RHに於ける飽和吸水率)と低くした。一方、グリシジル基を0.5倍当量以上共存させることで架橋点がチオエステル結合主体となることによるガラス転移点の低下を抑制した。更に、本発明の大きな特徴は、3つの官能基が共存することで、グリシジル基を1.9倍当量まで、またβ-エピチオプロピル基を2.2倍当量までの組成物においても、硬化物中に未反応官能基を残すことなくガラス転移点を維持しながら、さらなる高屈折率化と低吸水率化が可能となったことにある。
【0019】
一方で酸無水物基1当量に対して、グリシジル基とβ-エピチオプロピル基の総当量が1.35倍当量を下回ると硬化物の吸水率が高くなり、3.5倍当量を越えると硬化物中に未反応のグリシジル基が残存してガラス転移点が低下する。グリシジル基が0.5倍当量を下回ると硬化物のガラス転移点が低下し、1.9倍当量を越えると硬化物中に未反応のグリシジル基が残存してガラス転移点が低下し、更に屈折率を高くする効果が薄れる。またβ-エピチオプロピル基が0.5倍当量を下回ると、β-エピチオプロピル基の添加によるところの硬化物の低吸水率化、高屈折率化が十分に達成されず、2.2倍当量を越えると硬化物がもろくなる。
【0020】
グリシジル基のみをもつエポキシ化合物を硬化触媒の共存下で酸無水物により硬化させた場合は、酸無水物基1当量に対してグリシジル基を1.1〜1.25倍当量では最も高いガラス転移点、最も低い吸水率を示すが吸水率は2%を越え、この範囲をはずれると未反応基が多く残存してガラス転移点が低下する。β-エピチオプロピル基のみの化合物を酸無水物で硬化させた場合は、硬化物中のチオエステル結合が多くなり、満足する高いガラス転移点が得られない。更に、これら硬化物はβ-エピチオプロピル基及びグリシジル基を持つ化合物の混合系でないので屈折率の調整範囲が狭い。
【0021】
このように本発明では、前記3成分を必須とすることにより組成物の広範な粘度調製範囲を達成し、得られる硬化物が低吸水率と耐熱性とを両立しながら高い屈折率で任意に調整可能なことを見いだした。そして、本発明の樹脂組成物では前記3成分の他に、硬化触媒(D成分)を必須とする。
【0022】
本発明における樹脂組成物を加熱により硬化させる目的で使用される硬化触媒(D成分)は、エポキシ樹脂/酸無水物硬化系に用いられる公知のものを使用することが可能で、前記A〜C成分を含む組成物に混合して、50〜200℃、好ましくは80〜180℃で加熱して目的の硬化物を与える。硬化触媒の例としては、3級アミン類、ホスフィン類、4級アンモニウム塩類、ルイス酸類が使用される。具体例としては、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、トリ-n-ブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジンなどの3級アミン類、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール等の各種イミダゾール類、1、8-ジアザビシクロ(5、4、0)ウンデセン-7、1、5-ジアザビシクロ(4、3、0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1、8-ジアザビシクロ(5、4、0)ウンデセン-7等のアミジン類等に代表される3級アミン系化合物及びこれらと有機酸等との付加物、前記アミン類とハロゲン、ルイス酸、有機酸、鉱酸、四フッ化ホウ素酸等との4級アンモニウム塩、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン等のホスフィン類、並びに3フッ化ホウ素、3フッ化ホウ素のエーテラート等に代表されるルイス酸類などである。これらの中で硬化物の着色が少ないことから、イミダゾール類、4級アンモニウム塩類の使用が好ましく、4級アンモニウム塩の使用がより好ましい。また、これらは単独でも2種類以上を混合して用いてもよい。以上のような硬化触媒(D成分)の使用量は、A〜C成分の総量100重量部に対して、通常0.01〜5重量部であり、好ましくは0.05〜3重量部、より好ましくは0.1〜2重量部である。硬化触媒の量が5重量部より多いと、硬化物の吸水率並びに着色が増加し、またこれより少ないと十分に硬化せずに耐熱性が不十分となる。
【0023】
更に、本発明の樹脂組成物には開始剤としてチオエステル化合物若しくはメルカプタン化合物を加えてもよく、組成物のポットライフが長いこと、硬化物の着色が少ないことから沸点が100℃以上のチオエステル化合物が好ましい。メルカプタン化合物の具体例としては、2-メルカプトエタノールや、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、3-メルカプトプロピオン酸-2-エチルヘキシルなどの含エステル脂肪族メルカプタン化合物類、トリメチロールプロパントリス(β-チオプロピオネート)、ペンタエリストールテトラキス(β-チオグリコレート)などのポリメルカプト化合物が挙げられる。チオエステル化合物の具体例としては、 S-フェニルチオアセテート、前記メルカプトン化合物の酢酸チオエステルや安息香酸チオエステル類などが挙げられる。以上のような開始剤は、A〜C成分の総量100重量部に対して、通常0.01〜5重量部であり、好ましくは0.05〜2重量部、より好ましくは0.05〜1重量部である。開始剤の量が5重量部より多いと、組成物のポットライフが短くなり、また硬化物の耐熱性が損なわれる。
【0024】
本発明の光学材料用樹脂組成物には、光学材料としての特性を阻害しない範囲で、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を加えて、得られる材料の実用性を向上せしめることは可能である。また、公知の外部及び/又は内部離型剤を使用又は添加して、得られる硬化材料の型から離型性を向上せしめることも可能である。更に、接着剤やコーティング剤と使用する際は、粘度調整の目的で加える溶剤や希釈剤、また基材との密着性を高める目的でγ-グリシジルプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、トリアジンチオールなどの密着付与剤を添加することもできる。また、コーティング時の平滑性や蒸発ムラを抑制する目的で、シリコン系やフッ素系の界面活性剤を加えることができる。
【0025】
本発明における組成物を硬化して光学材料を得るに際して、原料となる芳香族エピスルフィド化合物(A成分)とグリシジル化合物(B成分)をあらかじめ室温若しくは加熱して混合し、一方酸無水物(C成分)並びに硬化触媒(D成分)を別途混合しておき、酸化防止剤、紫外線吸収剤又は離型剤などの添加剤を溶解するに好ましいどちらかに溶解し、使用する直前に両者を混合することが好ましい。混合後の組成物をガラスや金属製の型に注入し、加熱により硬化反応を進めた後、型から外して光学材料を得る。各原料、添加剤の混合前若しくは混合後に減圧下に脱ガス操作を行うことは、注型重合硬化中の気泡発生を防止する観点から好ましい方法である。硬化時間は、通常1〜60時間であり、硬化温度は50〜200℃、好ましくは80〜180℃である。また、硬化終了後、材料を硬化温度より低い50〜160℃の温度で10分〜5時間程度のアニール処理を行うことは、本材料の歪みを除くために好ましい処理である。
【0026】
液晶ディスプレイでは様々な透明光学材料が使用されており、例えば光拡散板、導光板、プリズムシートにはプリズムやマイクロレンズがスクリーン印刷により形成されているが、本発明の組成物又は材料をこれに適用することもできる。
また、光学レンズ、プリズム、光ファイバー、光学フィルムなどの接着剤やコーティング剤用途にも好適に使用できる。通常用いられる光学材料は屈折率が1.5〜1.62の範囲にあるものが多く(例えばポリカーボネートでは1.586、MS樹脂では1.51〜1.57、ポリアリレート1.61)、これらの屈折率に合わせて接着剤やコーティング剤を調整して用いることができ、界面の屈折率差による反射や写り込みを防止することに優れる。
【0027】
本発明の組成物を接着剤やコーティング剤として使用する際は、基材に屈折率を合わせた組成となるようにA、B及びC成分を配合し、更に粘度調整の目的で加える溶剤や希釈剤、また基材との密着性を高める目的でγ-グリシジルプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、トリアジンチオールなどの密着付与剤や、コーティング時の平滑性や蒸発ムラを抑制する目的で、シリコン系やフッ素系の界面活性剤を加え、均一な樹脂組成物を調製し、必要に応じて表面処理を施した基板に塗布し、適当な乾燥方法により溶剤の一部又は全てを除いた後、接着剤の場合は加圧しながら、コーティング材の場合はそのまま、50〜200℃に加熱して硬化させる。
更には、本発明の材料は透明性、低吸湿、耐熱性であることから、発光ダイオード(LED)封止用材料としても好適に用いることができる。LEDの封止は、金属、セラミックなどのステム又はメタルフレーム上にマウントされたLEDデバイスをキャスティング又はトランスファーモールド成形方法によって被い、加熱封止する。
【0028】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
合成例1
水2630mlに機械攪拌しなが325g(6.49eq)の特級硫酸、次にチオ尿素494g(6.49eq)を懸濁させた。次に、機械攪拌しながらエピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、油化シェル製、エポキシ当量)1.00kg(5.41eq)を少しづつ加え、完了したら、50℃にて6時間撹拌を行った。生成した塩(白色固体)をガラスフィルターで濾過し、濾液のPHが3〜5程度になるまで粉砕水洗後に室温で減圧乾燥した。更に、塩中の未反応原料エポキシを除くため2kgのジクロロメタン溶媒中で粉砕攪拌した。固体をろ別後、更に同量のジクロロメタンで洗浄し、室温にて真空乾燥を行った。
水5300mlにNa2CO3 416gを溶解し、これによく粉砕した前記塩1.00kg(3.27eq)を加えて、60℃にて6時間の撹拌を行った。生成物(白色固体)をガラスフィルターで濾過し、濾液のpHが8程度になるまで粉砕、水洗後に室温で減圧乾燥を行った。更に、6倍量のトルエン中にて目的物を溶解し、不溶物をろ別し、硫酸マグネシウムにて乾燥後、トルエン溶液をシリカゲルショートカラム中にとおし、トルエン溶媒を減圧除去してエピスルフィド化合物(A1)を580g得た。
【0029】
得られたエピスルフィド化合物(A1)100mgを重クロロホルム溶媒に溶解し、270MHzのプロトンNMR分析を行った。エポキシ環中のメチレンに対応する2.7ppm、2.9ppmがほとんど消失し、チイラン環中のメチレンに対応する2.3ppm、2.6ppmが見られたことで、グリシジル基からβ-エピスルフィドプロピル基に変換されていることを確認した。また、このものの融点は85℃であった。
【0030】
組成物及び硬化物の物性測定は、以下の測定法で行った。
<液比重>比重びんを用いて25℃にて測定を行った。
<硬化物比重>25mm角x3mm厚みの硬化物を用いて、水中浮力法にて比重を求めた。
<硬化収縮率>前記手法で求めた液比重(dL)並びに硬化物比重(ds)を用いて次式により算出した。
硬化収縮率(%)= 100x(ds−dL)/dL
<屈折率nD及びアッベ数>25℃でアッベ屈折計を用いた。
<全光線透過率>厚み3mmの硬化物を用い、C光源基準の透過率を求めた。
<外観>肉眼により曇りがないか観察した。
<吸水率1>50mm角x3mm厚みの硬化物を用いて、23℃、24時間の水中浸漬より求めた(JIS7209)。
<吸水率2>25mm角x3mm厚みの硬化物を用いて85℃、85RHにおける飽和吸水率を求めた。ただし、後に述べるガラス転移温度Tgが110℃以下の硬化物については測定しなかった。
<吸水率3>25mm角x3mm厚みの硬化物を用いて、121℃、100RH下で48時間保持したときの吸水率を求めた。ただし、後に述べるガラス転移温度Tgが130℃以下の硬化物については測定しなかった。
<HDT(℃)> 12.5mm幅x120mm長さx3mm厚みの硬化物を用いて、JIS-K7207に従って求めた。
<動的粘弾性測定によるガラス転移点Tg1>5mm幅x15mm長さx1mm厚みの硬化物を用いて、周波数1Hz引っ張りモードに於いて2℃/分の昇温で室温から250℃まで動的粘弾性測定を行い、tanδのピーク温度をTg1(℃)とした。
<熱量測定(DSC)によるガラス転移温度Tg2>硬化物約20mgを用い、室温から250℃まで10℃/分の昇温に於いて熱流曲線の偏曲点よりガラス転移温度Tg2(℃)を求めた。また、いずれの硬化物に於いても偏曲点を1つしか観測されなかった。
【0031】
<赤外吸収(IR)スペクトル測定>ベンゼン環に起因する1510cm-1吸収ピークを基準にして、硬化前のエポキシ環915cm-1、チイラン環620cm-1並びに酸無水物基1780cm-1の吸収ピークの強度比を1として、硬化後の吸収ピーク強度比より各反応基の残存率を推定した。吸収ピークがスペクトルのベースラインのばらつき以内であるときは、検出限度以下(*)、若干見られる場合はtr.と表中に示した。
また、硬化物中に生成するエステル結合1735cm-1の吸収ピークに対するチオエステル結合1705cm-1の吸収ピーク比より架橋点構造を推定した。ただし、両吸収とも近いために分離できたチオエステル結合の定量は0.3以上であった。それ以下は、検出限度以下(*)として表中に記載した。
【0032】
実施例1
合成例1で得たエピスルフィド化合物(A1)25gとエピコート828(B成分、油化シェル製、エポキシ当量187)(b1)75gとをビーカー中で80℃にて加熱混合して均一な粘調液体を得た。一方、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(C1)36.1g中にテトラ-n-ブチルアンモニウムクロライド(D1)1.37gを溶解して均一溶液とした後、前述の粘調液体とS-フェニルチオアセテート(S1)0.75gと50℃にて混合して目的の組成物を得た。これをシリコンゴムシート型中をアルミ箔で被ったものを型として、これに目的の組成物を注型し、100℃にて1時間、160℃にて2時間加熱し、厚み1〜3mmの透明な成型体を得て、物性を測定した。
【0033】
実施例2〜3
また、表1に示すように酸無水物基当量に対してグリシジル基とβ-エピスルフィド基との総当量比を一定(2.44)とし、グリシジル基とβ-エピスルフィド基との当量比を変えて組成物を調製し、実施例1と同様にして硬化物を作成、物性を測定した。
【0034】
比較例1〜2
更に、比較例1〜2として表1に示すように酸無水物基当量に対してグリシジル基単独又はβ-エピスルフィド基単独で当量比を同等にして組成物を調製し、実施例1と同様にして硬化物を作成、物性を測定した。
【0035】
配合組成及び物性測定値を表1に示す。なお、表1〜6において、官能基当量比及び重量比におけるA〜Dは、A〜D成分に対応し、Aは実質的に全てがエピチオプロピル基であると計算され、IR分析のチオエステル/エステルは、吸収強度比を示す。また、略号は次のとおりである。
A1:合成例1で得たエピスルフィド化合物
b1:エピコート828
b2:YDF-8170C
b3:CY-184
C1:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸
D1:テトラ-n-ブチルアンモニウムクロライド
S1:S-フェニル酢酸
【0036】
【表1】
Figure 0004837158
【0037】
実施例1〜3は、いずれも吸水率1が0.2%未満、吸水率2が1%以下であり、また耐熱性の指標であるHDTも100℃以上、ガラス転移温度Tg1は130℃以上、Tg2は110℃以上を示した。更に、屈折率は1.55以上であり、A成分の配合割合が増えるとともに大きくすることが可能であった。
一方、比較例1は、未反応エポキシ基の残存が見られ、HDTが50℃、ガラス転移温度が100℃以下と耐熱性に劣っていた。また、比較例2においても未反応チイラン環が残存しており、同様にHDTが51℃、ガラス転移温度が90℃と耐熱性に劣っていた。
【0038】
実施例4〜5及び比較例3
酸無水物基1当量に対してグリシジル基が1.27倍当量になるように、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(C1)35.4gとエピコート828(b1)50gとし、更にA成分として化合物(A1)を酸無水物基1当量に対して0.58〜1.76倍当量となるようにした他は実施例2と同様に行った。また、A成分を加えずに同様に行ったものを比較例3とした。結果を表2に示す。実施例は、いずれも吸水率2(85℃、85RHにおける飽和吸水率)が1%以下、吸水率3(121℃、100RH、48時間後)が1.5%以下となり、比較例3の1.3%、2.3%と較べても低いことが明らかになった。また、耐熱性は、A成分の含有量が増しても、Tg1が170℃、Tg2が140℃とほとんどかわらず、比較例3の160℃、130℃に較べて高かった。また、 A成分の含有量が増すと共に屈折率を1.56〜1.6まで調整可能であった。一方、一連の硬化物中にはエポキシ環、チイラン環、酸無水物基の残存は赤外スペクトルの検出限界以下であった。
【0039】
実施例6
酸無水物基1当量に対してβ-エピスルフィド基が1.17倍当量になるように、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(C1)35.4gとA成分となる化合物(A1)50gとし、更にB成分としてエピコート828(b1)を酸無水物基1当量に対して0.635倍当量となるようにした他は実施例2と同様に行った。結果を表2に示す。吸水率2(85℃、85RHにおける飽和吸水率)が1%以下、吸水率3(121℃、100RH、48時間後)が1.5%以下となり、耐熱性は、B成分の含有量が減少しても、Tg1及びTg2ともPCT試験温度以上であった。一方、硬化物中にはエポキシ環、チイラン環、酸無水物基の残存は赤外スペクトルの検出限界以下であった。
【0040】
実施例7〜8及び比較例4
表2に示すように酸無水物基1当量に対してグリシジル基とβ-エピスルフィド基との総当量比を2.98、1.63、1.08倍当量となるように、実施例2におけるメチルヘキサヒドロ無水フタル酸量を変え、他は同様に行った。結果を表2に示す。
酸無水物基1当量に対してグリシジル基とβ-エピスルフィド基との総当量比を2.98〜1.63倍当量(実施例2、6及び7)はいずれもTg1が160℃以上を示し、また吸水率2も1%以下と低かった。それに対して総当量比が1.08倍当量の比較例4ではガラス転移温度が低く、吸水率が高くなった。
【0041】
比較例5〜7
酸無水物(C成分)を用いずにその他は実施例2若しくは比較例1、2と同様に行った。結果を表2に示す。
比較例5はB成分の硬化物であり、160℃で2時間処理後も粘調な液体であった。比較例6はA成分の硬化物であるが、A成分は融点が85℃の固体であり、また組成物にテトラ-n-ブチルアンモニウムクロライドを100℃で加熱混合した後も室温では固体であった。硬化物は、Tg1が140℃、吸水率2が0.56%、屈折率1.628の淡黄色透明な成形体が得られた。比較例7はA成分とB成分との硬化物であるが、室温では透明な成形体であるがDSC測定で求めたガラス転移温度Tg2が100℃未満と低いことがわかった。
【0042】
実施例9
S-フェニル酢酸を除いた他は実施例2と同様に行ったところ、硬化物物性はほとんど変わらなかった。実施例4〜9及び比較例3〜7の組成及び測定結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
Figure 0004837158
【0044】
実施例10〜12
硬化触媒(D成分)を、テトラ-n-ブチルアンモニウムクロライド(実施例10)、1,8-ジアザビシクロ(5、4、0)ウンデセン-7(DBU、実施例11)又はトリフェニルホスフィン(実施例12)と変えて、A、B、Cの3成分を実施例2と同様の組成物を調製した。但し、実施例11及び12では、開始剤に相当するS-フェニル酢酸は用いなかった。この組成物をそれぞれ表3及び表4に示す熱硬化条件で硬化反応を行い、硬化物のガラス転移温度Tg2(℃)をDSCで測定した。テトラ-n-ブチルアンモニウムクロライド触媒(実施例10)並びにDBU触媒(実施例11)では120℃〜160℃硬化でほぼ140℃のガラス転移温度Tg2に達した。一方、トリフェニルホスフィン触媒(実施例12)では、実施例10及び11に比較して同一硬化条件で硬化物のTg2が10℃ほど低く観測された。
一方、120℃にて22時間さらに160℃にて2時間加熱した各硬化物を空気中にて室温から260℃へ10℃/分で昇温し、260℃にて2分間保持したときの熱重量減少を調べた(TGA測定)。いずれも99%以上の重量保持率であった。また、TGA測定後の硬化物は260℃の熱履歴を受けるが、熱履歴後の硬化物の着色度合いを比較すると、テトラ-n-ブチルアンモニウムクロライド触媒の場合は、透明淡黄色でほとんど着色が見られなかったが、DBU、トリフェニルホスフィンの順に着色が強くなった。測定結果を表3及び表4に示す。
【0045】
【表3】
Figure 0004837158
【表4】
Figure 0004837158
【0046】
実施例13、比較例8〜9
ホットプレート上で組成物を加熱し、流動性を失うまでの時間をゲル化時間として測定した。結果を表5に示す。
化合物(A1)/エピコート828/酸無水物の3元系(実施例2の組成物、実施例13)は、従来のエピコート828/酸無水物硬化系(比較例3の組成物.比較例8)ほぼ同等のゲル化時間を示し、硬化速度が速いことがわかった。一方、化合物(I)単独系(比較例6の組成物、比較例9)は実施例に比較して遅かった。
【0047】
【表5】
Figure 0004837158
【0048】
実施例14〜15、比較例10〜11
B成分をYDF-8170C(ビスF型エポキシ樹脂、東都化成(株)製、エポキシ当量156)(b2)若しくはCY184(ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、チバスペシャリティケミカルズ社製、エポキシ当量170)(b3)と換えた他は、実施例2と同様な官能基比にして組成物を調製し、硬化物の特性を測定した。また、比較例3と同様にして、エポキシ化合物を変えて調製した硬化物の特性も比較例として測定した。配合組成及び結果を表6に示す。実施例ではエピスルフィド化合物の添加により、ガラス転移温度が20〜30℃上昇した。また、吸水率2が1%以下であった。
【0049】
【表6】
Figure 0004837158
【0050】
【発明の効果】
本発明の硬化型樹脂組成物は、透明性はもとより、低吸湿性、高耐熱性、精密成型性、接合部材との屈折率適合性などの特性に優れた硬化物を与える。また、本発明の光学材料は、透明性、低吸湿性、高耐熱性、高屈折率を有するためレンズ、フィルター、光学フィルム等の用途に適する。

Claims (2)

  1. 式(1)で表される反応性基を1分子中に2つ以上もつ芳香族エピスルフィド化合物(A成分)、
    Figure 0004837158
    (ここで、Xは硫黄原子である。また、R1〜R4は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基を示し、同じであってもよい)、グリシジル基を1分子中に2つ以上持つ芳香族グリシジルエーテル化合物(B1)及びグリシジル基を1分子中に2つ以上持つグリシジルエステル化合物(B2)から選ばれる少なくとも1種のグリシジル化合物(B成分)、酸無水物(C成分)並びに硬化触媒(D成分)を必須成分として含有し、更に3成分中の官能基の比率が、酸無水物基1当量に対して、グリシジル基とβ-エピチオプロピル基の総計が1.35〜3.5当量であり、β-エピチオプロピル基が0.5〜2.2当量であり、グリシジル基が0.5〜1.9当量であり、また硬化触媒(D成分)がA、B及びC成分の総重量を100重量部としたとき、0.01〜5重量部であることを特徴とする光学材料用樹脂組成物。
  2. 請求項1記載の樹脂組成物を重合硬化して得られる硬化物であり、屈折率が1.5以上、吸水率(85℃、85RHにおける飽和吸水率)が1%以下であることを特徴とする光学材料。
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