JP4832911B2 - 室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の調製方法 - Google Patents

室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の調製方法 Download PDF

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Description

本発明は、室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の調製方法に係り、さらに詳しくは、空気中の水分により常温で硬化する一成分系の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の調製方法に関する。
従来から、空気中の水分と接触して常温で硬化しゴム弾性体となるポリオルガノシロキサン組成物は、建築、機械、電気など各種の分野において、シーリング材、工業用接着剤、ポッティング材などに広く用いられている。
このようなシーリング材や工業用接着剤などに用いられるポリオルガノシロキサン組成物には、近年の電化製品をはじめとする安全性の要求に伴い、自己消炎性、耐熱性など安全性に関連する諸性質のさらなる向上が望まれている。そのため、補強性に加えて自己消炎性などを付与するために、粉砕シリカ、二酸化チタン、炭酸亜鉛、水酸化アルミニウムなどの吸湿水(吸着水)量の大きい無機充填剤が用いられている。
このような無機充填剤を、水分と接触して硬化するポリオルガノシロキサン組成物に配合すると、吸着水の影響により組成物の硬化性、貯蔵安定性が低下する。そのため、予め表面をオルガノシラザン、オルガノシクロシロキサン、オルガノクロロシラン、オルガノアルコキシシランなどで疎水化処理した無機充填剤を用いる提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。また、予めベースポリマーと無機充填剤を減圧加熱下で混合した後、架橋剤と硬化触媒を配合して均一に混合することによって、硬化性や貯蔵安定性の低下を防止している。
特公平5−88866号公報
しかしながら、予め表面処理された無機充填剤を用いても十分な効果が得られず、さらに材料コストが高くなるという問題があった。また、ベースポリマーと無機充填剤を減圧下で加熱する方法では、加熱による脱水効果が十分でなく、硬化性、貯蔵安定性に劣るという問題があった。
本発明は、このような課題に対処するためになされたもので、硬化性、貯蔵安定性を大幅に改善し、例えばシーリング材などに好適な室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を安価にかつ容易に得ることを可能にした調製方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を調製するにあたり、ベースポリマー単独のものに無機充填剤を配合するのではなく、特定の成分を配合した後あるいはその配合と同時に無機充填剤を配合することによって、硬化性、貯蔵安定性が大幅に改善された組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の調製方法は、(A)一般式:
Figure 0004832911
(式中、Rは置換または非置換の1価の炭化水素基、Xは加水分解性基、aは0、1または2の整数、nは正の整数である。)で表され、23℃における粘度が20〜1,000,000mPa・sであるポリオルガノシロキサン100重量部と、(B)平均組成式:R Si(OR4−b(式中、R、Rは互いに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基であり、bは0、1または2の整数である。)で表されるオルガノシランまたはその部分加水分解縮合物0.1〜20重量部と、(C)無機充填剤1〜500重量部、および(D)硬化触媒0.01〜10重量部をそれぞれ含有する室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を調製するにあたり、前記(A)成分に前記(B)成分の一部または全量を配合した後あるいは配合すると同時に、前記(A)成分と前記(B)成分との混合物に前記(C)成分を配合し、次いで前記(D)成分を配合する工程を備え、前記(C)成分が、粉砕シリカ、重質炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、二酸化チタン、水酸化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種であり、かつこの(C)成分を、予め60cmHg以下の減圧下50〜200℃の温度で1〜6時間加熱する加熱処理工程を備えることを特徴とする。
本発明によれば、(C)成分である無機充填剤を(A)成分である反応性ポリオルガノシロキサンに配合するにあたり、予め(A)成分に反応性のより高い(B)オルガノシラン(アルコキシシラン)を配合するか、あるいは(A)成分に(C)成分を配合すると同時に(B)成分を配合することによって、硬化性および貯蔵安定性が大幅に改善された室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を得ることができる。
また、本発明の調製方法によれば、硬化性および貯蔵安定性に優れた室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を安価にかつ容易に得ることが可能である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施形態は、(A)分子鎖末端が加水分解性基で封鎖されたポリオルガノシロキサン100重量部と、(B)ケイ素原子に結合した加水分解性基を有するオルガノシランまたはその部分加水分解縮合物0.1〜20重量部と、(C)無機充填剤1〜500重量部、および(D)硬化触媒0.01〜10重量部をそれぞれ含有する室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を調製する方法である。
(A)成分は、本発明によって得られる組成物のベースポリマーとなるものであり、下記一般式で示されるポリオルガノシロキサンが用いられる。
Figure 0004832911
上記一般式において、Rは置換または非置換の1価の炭化水素基である。炭化水素基としては、炭素数が1〜10のものが好ましく、特に炭素数1〜8のものが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ベンジル基、2−フェニルエチル基などのアラルキル基;またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した基、例えばクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられる。メチル基、フェニル基、ビニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。aは0、1または2の整数であり、0または1が特に好ましい。
Xは加水分解性基である。加水分解性基であるXとしては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基などのアルコキシ基;プロペノキシ基、イソブテニルオキシ基、1−エチル−2−メチルビニルオキシ基などのアルケニルオキシ基;ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、メチルブチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、シクロペンタノオキシム基、シクロヘキサノオキシム基などのケトオキシム基;アセトキシ基、プロピオノキシ基、ブチロイロキシ基、ベンゾイル基などのアシルオキシ基;N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基などのアミノ基;N−メチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基などのアミド基;N,N−ジメチルアミノキシ基、N,N−ジエチルアミノキシ基などのアミノキシ基;イソシアナート基;α−シリルエステル基;プロピレングリコールモノメチルエーテル基、および塩素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。これらの中では、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、ケトオキシム基、アシルオキシ基、α−シリルエステル基、プロピレングリコールモノメチルエーテル基が好ましく、特に、メトキシ基、エトキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、メチルブチルケトオキシム基、α−シリルエステル基、プロピレングリコールモノメチルエーテル基が好ましい。
また、上記一般式において、nは重合度に相当する数であって、取扱いの容易さ、組成物の流動性、硬化後の物性などから、(A)成分の23℃における粘度を20〜1,000,000mPa・s、より好ましくは100〜200,000mPa・sにするように選ばれる。
上記一般式で表される(A)成分として、例えば下記構造式を有するものを挙げることができる。なお、Rは上述した置換または非置換の1価炭化水素基を示し、Xは上述した加水分解性基を示す。
Figure 0004832911
Figure 0004832911
具体的には、(A)成分として下記のものを挙げることができる。
Figure 0004832911
Figure 0004832911
Figure 0004832911
Figure 0004832911
本発明の実施形態に用いられる(B)成分は、前記(A)成分を架橋して網状構造を与えるための架橋剤としての機能を有する。(B)成分としては、平均組成式:R Si(OR4−bで表されるオルガノシランまたはその部分加水分解縮合物が用いられる。式中、RおよびRは、互いに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基であり、bは0、1または2の整数である。
としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、フェニル基などの1価の炭化水素基、クロロメチル基、シアノエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などの1価の置換炭化水素基などを挙げることができる。Rとしても、これらの置換または非置換の1価の炭化水素基を挙げることができるが、アルキル基であることが好ましい。
(B)成分としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリ(エトキシメトキシ)シラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラメトキシシランなどが挙げられる。
本発明の実施形態では、第1の配合工程で、(B)成分の少なくとも一部(一部または全量)を予め(A)成分に配合して混合した後、あるいは(B)成分の少なくとも一部を(A)成分に配合すると同時に、(C)成分である無機充填剤を配合し、次いで第2の配合工程で、(D)成分である硬化触媒と(B)成分の残量を配合することを特徴としている。なお、第1の配合工程で(B)成分の全量を配合した場合は、第2の配合工程において(B)成分が配合されないのはもちろんである。また、第1の配合工程で(A)成分に配合される(B)成分のアルコキシシランと、第2の配合工程で(D)硬化触媒とともに配合される(B)成分のアルコキシシランとは、同一種類のものでも異なる種類のものでもよい。
第1の配合工程で(A)成分に配合される(B)成分は、その後に配合される(C)成分である無機充填剤の含有する吸着水分と反応するため、吸着水が(A)成分に与える影響を排除する働きをする。したがって、(C)無機充填剤の含有する吸着水を脱離・除去するに十分な量の(B)成分(アルコキシシラン)を、第1の配合工程で配合することが好ましい。第1の配合工程で配合される(B)成分であるアルコキシシランも、第2の配合工程で(D)硬化触媒とともに配合される(B)成分のアルコキシシランと同様に、(A)成分の架橋剤として機能する。
架橋剤としての使用の観点からは、トリアルコキシシラン類の使用が好ましく、特に硬化物のモジュラスを下げたい場合には、ジアルコキシシラン類の使用が好ましい。
(B)成分の配合量は、前記(A)成分100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲とする。0.1重量部未満では、機械的特性に優れた硬化物を得ることができず、20重量部を超えると得られる硬化物が脆いものとなる。
本発明の実施形態に用いられる(C)成分の無機充填剤は、硬化後のゴム弾性体に機械的強度を与える補強性の充填剤である。平均粒径が0.1〜50μmより好ましくは0.1〜30μmの範囲のものの使用が望ましい。このような無機充填剤としては、例えば、粉砕シリカ、重質炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、二酸化チタン、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。このような無機充填剤は、組み合わせにより十分な耐久性を得ることができる場合があるので、1種を単独で使用してもよいが複数種を組み合わせて使用してもよい。
(C)成分である無機充填剤は、予め減圧状態で加熱脱水処理することができる。加熱脱水処理を行うかどうかは、無機充填剤の含有する結晶水および吸着水の量により決められ、結晶水および吸着水量の目安となる加熱減量(105℃−3時間の条件)の値は、0.3〜0.5重量%である。すなわち、吸着水量が多く、0.3〜0.5重量%以上の加熱減量を有する無機充填剤については、前記(A)成分に配合する前に減圧状態で加熱脱水処理を行い、105℃−3時間の条件下での加熱減量の値を0.2重量%以下に減少させることが好ましい。
加熱脱水処理は、60cmHg以下より好ましくは30cmHg以下の減圧下、50〜200℃の温度で1〜6時間加熱することにより行う。
また、補強性の観点から、炭酸カルシウムの表面を脂肪酸、脂肪酸エステル、オルガノシランなどの有機物で処理したものを用いることができる。このような有機物で表面処理された炭酸カルシウムなどの無機充填剤に対しては、表面処理剤が変質するおそれがあるため、前記した加熱処理を施すことができない。また、脂肪酸エステルで処理したものは、表面処理に供された脂肪酸エステルが、加熱により溶融してしまうことがある。そのため、(A)成分の硬化性を著しく低下させるばかりか、組成物の保存中に液分離を生じたり、硬化物の表面に溶出するなどの問題を生じる。したがって、加熱処理することなくそのまま(C)成分を、予め(B)成分の少なくとも一部(一部または全量)が(A)成分に配合されたものに、あるいは(B)成分の少なくとも一部を(A)成分に配合すると同時に配合する。(第1の配合工程)
(C)成分の配合量は、前記(A)成分100重量部に対して1〜500重量部、より好ましくは5〜300重量部の範囲とする。(C)成分の配合量が1重量部未満では、得られる硬化物の機械的強度が不十分となる。また、500重量部を超えると混合が難しくなる。また、組成物の吐出性や、組成物の施工の際にへらで形状を整えたりする作業性が悪くなるため好ましくない。
本発明の実施形態に用いられる(D)成分の硬化触媒は、(A)成分同士および(A)成分と(B)成分との縮合反応を促進させる触媒である。
このような(D)硬化触媒としては、鉄オクトエート、コバルトオクトエート、マンガンオクトエート、亜鉛オクトエート、スズナフテネート、スズカプリレート、スズオレエートのようなカルボン酸金属塩;ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオレエート、ジフェニルスズジアセテート、酸化ジブチルスズ、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ、ジオクチルスズジラウレートのような有機スズ化合物;テトラブチルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネート、トリエタノールアミンチタネート、テトラ(イソプロペニルオキシ)チタネート、ジイソプロポキシビス(アセト酢酸エチル)チタン、ジイソプロポキシビス(アセト酢酸メチル)チタン、ジイソプロポキシビス(アセルアセトン)チタン、ジブトキシビス(アセト酢酸エチル)チタン、ジメトキシビス(アセト酢酸エチル)チタンなどの有機チタン化合物;アルコキシアルミニウム化合物などが例示される。少量でも十分な硬化性が得られることや、得られる組成物の特性の観点から、これらの中でも有機スズ化合物、有機チタン化合物がより好ましい。
(D)成分の配合量は、前記(A)成分100重量部に対して0.01〜10重量部より好ましくは0.1〜10重量部の範囲とする。(D)硬化触媒の配合量が10重量部を超えると、硬化が速くなりすぎるばかりでなく、硬化物の黄変などの変色が生じ、また機械的特性に悪影響を及ぼし好ましくない。
本発明の実施形態における室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、前記(A)〜(D)の各成分を基本成分とするが、必要に応じて、公知の粘度調整剤、可塑剤、顔料、耐熱向上剤、難燃性付与剤、防カビ剤、接着付与剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
本発明の実施形態においては、前記(A)〜(D)の基本成分と上述した任意成分が、湿気を絶った状態で以下に示すように配合され混合される。
まず、105℃−3時間の加熱減量が0.3〜0.5重量%以上である(C)無機充填剤を、ミキサー、ニーダーなどに投入し、60cmHg以下好ましくは30cmHg以下の減圧状態で50〜200℃で1〜6時間加熱撹拌する。このような減圧下での加熱処理により、(C)成分の含有する結晶水および吸着水量の目安となる加熱減量の値を、0.2重量%以下より好ましくは0.1重量%以下に低減することができる。
次いで、加熱処理がなされた(C)無機充填剤に、予め(A)成分のポリオルガノシロキサンに(B)成分である架橋剤の少なくとも一部を混合したものを配合し、均一になるように混合する。その後、60cmHg以下好ましくは30cmHg以下の減圧下50〜200℃の温度で1〜6時間加熱撹拌してもよい。このような加熱撹拌により、よりいっそう貯蔵安定性に優れた組成物を得ることができる。
なお、予め(A)成分に(B)成分の少なくとも一部を配合した混合物を(C)成分と混合するのではなく、(C)成分に(A)成分を配合すると同時に(B)成分の少なくとも一部を配合することもできる。要するに、(C)成分単独で(A)成分に配合されることがなく、(C)成分と(A)成分との混合時には必ず(B)成分が存在するようにすることが望ましい。
次いで、この混合物に(B)成分の残りを架橋剤として加えるとともに、(D)成分である硬化触媒および上述した任意成分を配合し、均一になるように混合する。
こうして、まず(C)成分である無機充填剤を加熱脱水した後、この無機充填剤に、予め(A)成分に(B)成分を混合した混合物を配合するか、もしくは(C)成分の配合と同時に(B)成分を配合することにより、(A)成分の劣化を低減し、無機充填剤を加熱脱水したことによる効果を向上させることができる。そして、硬化性および貯蔵安定性に優れた室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物が得ることができる。
(C)成分である無機充填剤が、脂肪酸、脂肪酸エステル、オルガノシランなどの有機物により表面処理されたもの(例えば、コロイダル炭酸カルシウム)の場合には、表面処理剤の変質などが懸念されるため、加熱処理を施すことができない。このような(C)無機充填剤を使用する場合には、加熱脱水処理を施すことなくそのまま(A)成分と(B)成分とを混合したものに配合し、均一になるように混合する。その後、より貯蔵安定性に優れた組成物が得られることから、60cmHg以下好ましくは30cmHg以下の減圧下、50〜200℃の温度で1〜6時間加熱撹拌してもよい。
次いで、この混合物に(B)成分の残りを架橋剤として加えるとともに、(D)成分である硬化触媒および上述した任意成分を配合し、均一になるように混合する。こうして、(A)成分の劣化などを低減することができ、硬化性および貯蔵安定性に優れた室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物が得ることができる。
本発明の調製方法において、予め(B)成分の少なくとも一部を(A)成分に混合した後、この混合物に(C)成分を配合することにより、あるいは(A)成分に(C)成分を配合して混合する際に同時に(B)成分の少なくとも一部を配合することにより、硬化性および貯蔵安定性を大幅に改善することができるのは、以下に示す理由による。
すなわち、(C)成分である無機充填剤が結晶水や吸着水を多く含む場合は、これをそのまま使用したのでは、得られる組成物が極めて貯蔵安定性の悪いものとなる。保管中に著しい増粘が生じたり、内部で硬化したり、あるいは硬化が不十分となり、十分な機械的特性が得られないばかりでなく、ゴム状にならないなどの現象を引き起こす。そのため、予め(C)成分を減圧下で加熱し十分に水分を除去する必要がある。
こうして減圧下での加熱により水分を除去した後、(C)成分を十分に(例えば、40℃以下に)冷却してから(A)成分に配合するのであれば、加熱処理による影響は少なく、所望の特性および貯蔵安定性を有する組成物が得られる。しかし、(C)成分の冷却が不十分な場合には、(A)成分の加水分解性基の劣化(残存する水分あるいは結露水による加水分解)を引き起こし、組成物の硬化性および機械的特性が低下するなどの問題が生じる。また、加熱処理後(C)成分を十分に冷却した場合でも、冷却による結露水などの影響で水分を再度吸着してしまい、この吸着水が(A)成分の劣化を引き起こすおそれがある。さらに、加熱後すぐに冷却することにより、熱源などにかかる経済的損失および工程時間の延長などの問題がある。
本発明の実施形態では、(C)成分である無機充填剤を加熱脱水した後、この無機充填剤を、予め(A)成分に(B)成分を配合した混合物に配合するか、もしくは(A)成分に(B)成分を配合すると同時に(C)成分である無機充填剤を配合しているので、(C)無機充填剤の含有する吸着水による影響が、(B)成分の一部に加水分解が生じるだけにとどまる。したがって、(A)成分の加水分解性基の劣化を防止することができる。また、(C)成分の冷却が不十分な場合にも、(B)成分が気化するときの気化熱により冷却が促進されるため、(A)成分の劣化が防止される。
さらに、(C)成分である無機充填剤が有機物により表面処理されたものである場合、(A)成分単独のものに(C)成分を配合すると、表面処理剤である有機物から生じる遊離物などが(A)成分の加水分解性基と反応しもしくは交換反応を引き起こし、硬化性の低下が生じる。また、遊離の有機物が(D)成分である硬化触媒と反応し、触媒活性を低下させるなどの問題が生じる。しかし、有機物により表面処理された無機充填剤を、予め(A)成分に(B)成分を配合した混合物に配合するか、もしくは(A)成分に(B)成分を配合すると同時に配合することにより、表面処理剤から遊離する有機物を(B)成分の加水分解性基により捕捉することができるので、硬化性の低下ならびに触媒活性の低下を防ぐことができる。
本発明の調製方法によって得られる室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、例えば、電気・電子工業などにおける接着剤やコーティング材として、また建築用シーリング材などとして好適に使用することができる。
本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、特に断らない限り、「部」とあるのは「重量部」を、「%」とあるのは「重量部」を表す。また、粘度などの物性値は23℃、相対湿度(RH)50%での値である。
実施例1
湿気を遮断した混合機に、105℃−3時間の加熱減量が0.51%、平均粒径が4.0μmの粉砕シリカ150部と、105℃−3時間の加熱減量が0.5%、平均粒径が0.15μmの二酸化チタン30部を投入し、30cmHg、130℃で3時間加熱撹拌した。この加熱処理後の粉砕シリカおよび二酸化チタンについて、105℃−3時間の加熱減量を測定した。
次いでこの混合機に、粘度15Pa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部にメチルトリメトキシシラン2部を混合したものを投入し、均一になるまで混合した(第1の配合工程)。このときの混合物の温度は88℃であった。その後、メチルトリメトキシシラン1部、N−トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン2部、およびジブチルスズジラウレート0.5部をそれぞれ配合し(第2の配合工程)、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
実施例2
実施例1と同じ粉砕シリカおよび二酸化チタンを同様に加熱処理した後、混合機に、実施例1と同様に、粘度15Pa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部にメチルトリメトキシシラン2部を混合したものを投入し、均一になるまで混合した(第1の配合工程)。
次いで、30cmHgの減圧下110℃で2時間加熱混合した。その後、メチルトリメトキシシラン1部、N−トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン2部、およびジブチルスズジラウレート0.5部をそれぞれ配合し(第2の配合工程)、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
実施例3
湿気を遮断した混合機に、105℃−3時間の加熱減量が0.3%、平均粒径が1.5μmの粉砕シリカ30部と、105℃−3時間の加熱減量が0.4%、平均粒径が4.5μmの炭酸亜鉛10部を投入し、30cmHg、120℃で3時間加熱撹拌した。この加熱処理後の粉砕シリカおよび炭酸亜鉛について、105℃−3時間の加熱減量を測定した。
次いでこの混合機に、粘度15Pa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキキサン100部にメチルトリメトキシシラン3部を混合したものを投入し、均一になるまで混合した(第1の配合工程)。その後、メチルトリメトキシシラン2部と、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)2.5部をそれぞれ配合し(第2の配合工程)、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
実施例4
実施例3と同じ粉砕シリカおよび炭酸亜鉛を同様に加熱処理した後、混合機に、実施例3と同様に、粘度15Pa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部にメチルトリメトキシシラン3部を混合したものを投入し、均一になるまで混合した(第1の配合工程)。
次いで、30cmHgの減圧下110℃で2時間加熱混合した。その後、メチルトリメトキシシラン2部と、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)2.5部をそれぞれ配合し(第2の配合工程)、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
比較例1
湿気を遮断した混合機に、105℃−3時間の加熱減量が0.51%、平均粒径が4.0μmの粉砕シリカ150部と、105℃−3時間の加熱減量が0.5%、平均粒径が0.15μmの二酸化チタン30部を投入し、30cmHg、130℃で3時間加熱撹拌した。この加熱処理後の粉砕シリカおよび二酸化チタンについて、105℃−3時間の加熱減量を測定した。
次いでこの混合機に、粘度15Pa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部を投入し、均一になるまで混合した(第1の配合工程)。その後、メチルトリメトキシシラン3部、N−トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン2部、およびジブチルスズジラウレート0.5部をそれぞれ配合し(第2の配合工程)、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
比較例2
湿気を遮断した混合機に、105℃−3時間の加熱減量が0.51%、平均粒径が4.0μmの粉砕シリカ150部と、105℃−3時間の加熱減量が0.5%、平均粒径が0.15μmの二酸化チタン30部を投入した後、これにさらに、粘度15Pa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部にメチルトリメトキシシラン2部を混合した(第1の配合工程)ものを投入し、均一になるまで混合した。その後、メチルトリメトキシシラン1部、N−トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン2部、およびジブチルスズジラウレート0.5部をそれぞれ配合し(第2の配合工程)、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
比較例3
湿気を遮断した混合機に、105℃−3時間の加熱減量が0.51%、平均粒径が4.0μmの粉砕シリカ150部と、105℃−3時間の加熱減量が0.5%、平均粒径が0.15μmの二酸化チタン30部を投入した後、これにさらに、粘度15Pa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部を投入し、均一になるまで混合した(第1の配合工程)。その後、メチルトリメトキシシラン3部、N−トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン2部、およびジブチルスズジラウレート0.5部をそれぞれ配合し(第2の配合工程)、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
比較例4
湿気を遮断した混合機に、105℃−3時間の加熱減量が0.3%、平均粒径が1.5μmの粉砕シリカ30部と、105℃−3時間の加熱減量が0.4%、平均粒径が4.5μmの炭酸亜鉛10部を投入し、30cmHg、120℃で3時間加熱撹拌した。
次いでこの混合機に、粘度15Pa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキキサン100部を投入し、均一になるまで混合した(第1の配合工程)。その後、メチルトリメトキシシラン5部と、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)2.5部をそれぞれ配合し(第2の配合工程)、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
参考例5
湿気を遮断した混合機で、粘度40Pa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキキサン100部にメチルトリメトキシシラン3部を配合したものを混合した(第1の配合工程)。次いでこの混合機に、105℃−3時間の加熱減量が0.3%、平均粒径が0.05μmの脂肪酸エステルで表面処理したコロイダル炭酸カルシウム120部を投入し、30cmHgの減圧下で3時間撹拌した。
次いで、作業性調整のための希釈剤として粘度100mPa・sのα,ω−ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキキサン45部を投入し、均一になるまで混合した後、メチルトリメトキシシラン5部と、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)4部を配合し(第2の配合工程)、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
参考例6
湿気を遮断した混合機で、粘度20Pa・sのα,ω−ビス(トリメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキキサン100部にテトラエトキシシラン3部を配合したものを混合した(第1の配合工程)。次いでこの混合機に、105℃−3時間の加熱減量が0.3%、平均粒径が0.05μmのステアリン酸で表面処理したコロイダル炭酸カルシウム120部を投入し、30cmHgの減圧下で3時間撹拌した。
次いで、粘度100mPa・sのα,ω−ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキキサン45部を投入し、均一になるまで混合した後、メチルトリメトキシシラン5部、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)4部を配合し(第2の配合工程)、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
参考例7
湿気を遮断した混合機で、粘度20Pa・sのα,ω−ビス(トリメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキキサン100部にテトラエトキシシラン3部を配合したものを混合した(第1の配合工程)。次いでこの混合機に、105℃−3時間の加熱減量が0.3%、平均粒径が0.05μmの脂肪酸エステルで表面処理したコロイダル炭酸カルシウム120部を投入し、30cmHgの減圧下で3時間撹拌した。
次いで、粘度100mPa・sのα,ω−ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキキサン45部を投入し、均一になるまで混合した後、メチルトリメトキシシラン5部、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)4部を配合し(第2の配合工程)、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
参考比較例5
湿気を遮断した混合機に、粘度40Pa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキキサン100部と、105℃−3時間の加熱減量が0.3%、平均粒径が0.05μmの脂肪酸エステルで表面処理したコロイダル炭酸カルシウム120部を投入し(第1の配合工程)、30cmHgの減圧下で3時間撹拌した。
次いで、粘度100mPa・sのα,ω−ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキキサン45部を投入し、均一になるまで混合した後、メチルトリメトキシシラン8部と、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)4部を配合し(第2の配合工程)、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
参考比較例6
湿気を遮断した混合機に、粘度20Pa・sのα,ω−ビス(トリメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキキサン100部と、105℃−3時間の加熱減量が0.3%、平均粒径が0.05μmのステアリン酸で表面処理したコロイダル炭酸カルシウム120部を投入し(第1の配合工程)、30cmHgの減圧下で3時間撹拌した。
次いで、粘度100mPa・sのα,ω−ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキキサン30部を投入し、均一になるまで混合した後、テトラエトキシシラン3部、メチルトリメトキシシラン5部、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)4部を配合し(第2の配合工程)、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
次に、実施例1〜4、参考例5〜7、比較例1〜4、および参考比較例5〜6でそれぞれ得られた組成物を、以下に示すようにして評価した。結果を表1および表2に示す。
[タックフリータイム]
組成物を23℃、50%RHの雰囲気中に押し出した後、指で押出し物の表面に接触して乾燥状態にあることを確認するに至る時間を測定した。
[物理的特性]
組成物をシート成型用金型に押し出し、温度23℃、湿度50%の条件下で7日間放置して硬化させ、厚さ2mmのシートを作成した。このシートの物理的特性をJIS K 6249に拠り測定した。
[貯蔵安定性]
湿気を遮断した容器に組成物を入れ、70℃で168時間加熱した後、23℃、50%RHの雰囲気下でタックフリータイムを測定した。その後、厚さ2mmのシート状になるように調整し、7日間放置して空気中の湿気により硬化させ、硬化物の物理的特性をJIS K 6249に拠り測定した。
Figure 0004832911
Figure 0004832911
表1からも明らかなように、実施例1〜で得られたポリオルガノシロキサン組成物は、比較例1〜で得られたポリオルガノシロキサン組成物に比べて、硬化性および貯蔵安定性が大幅に改善されている。

Claims (4)

  1. (A)一般式:
    Figure 0004832911
    (式中、Rは置換または非置換の1価の炭化水素基、Xは加水分解性基、aは0、1または2の整数、nは正の整数である。)で表され、23℃における粘度が20〜1,000,000mPa・sであるポリオルガノシロキサン100重量部と、
    (B)平均組成式:R Si(OR4−b
    (式中、R、Rは互いに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基であり、bは0、1または2の整数である。)で表されるオルガノシランまたはその部分加水分解縮合物0.1〜20重量部と、
    (C)無機充填剤1〜500重量部、および
    (D)硬化触媒0.01〜10重量部をそれぞれ含有する室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を調製するにあたり、
    前記(A)成分に前記(B)成分の一部または全量を配合した後あるいは配合すると同時に、前記(A)成分と前記(B)成分との混合物に前記(C)成分を配合し、次いで前記(D)成分を配合する工程を備え、
    前記(C)成分が、粉砕シリカ、重質炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、二酸化チタン、水酸化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種であり、かつこの(C)成分を、予め60cmHg以下の減圧下50〜200℃の温度で1〜6時間加熱する加熱処理工程を備えることを特徴とする室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の調製方法。
  2. 前記(C)成分の平均粒径が0.1〜50μmであることを特徴とする請求項記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の調製方法。
  3. 前記加熱処理工程で、前記(C)成分の105℃−3時間での加熱減量を0.2重量%以下まで低減させることを特徴とする請求項1または2記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の調製方法。
  4. 前記(A)成分に前記(C)成分を配合して混合した後、これらの混合物を60cmHg以下の減圧下50〜200℃の温度で1〜6時間加熱する工程を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の調製方法。
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