JP4831896B2 - ポリプロピレン被覆鋼材用エポキシ粉体プライマー組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリプロピレン被覆鋼材用粉体プライマー組成物に関する。詳しくは鋼材外面にエポキシ粉体プライマーを塗布し、その上に熱可塑性接着剤を塗布し、更にポリプロピレン被覆材を被覆する鋼材外面の防食被覆システムにおけるエポキシ粉体プライマー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼材はしばしば周囲の環境に対する防食手段を講ずることなく、大気中や地中、海水中に暴露されると腐食する。そのため、石油、ガス、上下水道、電線ケーブル等の各種配管や鋼管杭、鋼矢板等の土木用建材では、鋼材外面をポリエチレンやポリプロピレン等で被覆したポリオレフィン被覆鋼材が多用されている。
【0003】
一般に、ポリオレフィンはその化学的安定性のために、鋼材との接着性に乏しい。そのため、ポリオレフィン被覆鋼材は鋼材とポリオレフィン被覆層との間に変性ポリオレフィンからなる熱可塑性接着剤層を介在させることにより、ポリオレフィンの鋼材からの剥離を防止している。だが、接着剤層を介在させたのみのポリオレフィン被覆鋼材は、地中や海中、海底等の湿潤・接水環境下で使用されると接着強度の低下を起こし、被覆層が鋼材から剥離する場合がある。また、電気防食を併用するような環境では、過防食電流によって被覆欠陥を起点にして容易に被覆が剥離する(この現象を陰極剥離と称す)等の問題点がある。そのため、湿潤・接水環境下や電気防食が併用されるような環境下で使用されるポリオレフィン被覆鋼材は、鋼材にまずエポキシ系プライマーを塗布してその上に変性ポリオレフィン層とポリオレフィン層を順次積層することによって、長期にわたる優れた接着強度を付与されている。エポキシ系プライマーとしては液体エポキシ、固形エポキシを有機溶剤で希釈したもの、粉体エポキシ等が使用されているが、近年、環境問題対策の見地から粉体エポキシへの移行が進んできている。
【0004】
鋼材外面にエポキシ粉体プライマー層/熱可塑性接着剤層/ポリオレフィン被覆層を施す被覆システムとしては、ドイツ特許(DE−A)第1965802号、同第2257135号、同第2944809号および同第3230955号、英国特許(GB)第1542333号、欧州特許(EP−A)第57823号の明細書に記載されている。また、このような被覆システム中のエポキシ粉体プライマーとして、エポキシ樹脂の硬化剤にジシアンジアミドを用い、充填材に結晶または、無定形珪酸を配合した粉体プライマーを適用することは公知である。
【0005】
近年、エネルギー需要の増大による海底や極地の石油、天然ガス等の資源開発が活性化するに伴い、鋼構造物やラインパイプに被覆したポリオレフィン被覆、特にポリプロピレン被覆の高温接水環境下での長期耐久性が問題になっている。しかし、エポキシ粉体プライマーを用いた被覆システムの欠点は、熱水浸漬後の接着強度の低下であり、これにより熱水浸漬後にポリプロピレン層が容易に剥離してしまい、防食性が損なわれてしまう。また耐陰極剥離性においても、60℃以上の高温で長期にわたり剥離を防止することは困難であった。更に、−30〜−45℃といった極低温環境でパイプラインの敷設工事等が行われると被覆鋼材と重機との接触や被覆鋼材同士のぶつかり合い等の衝撃により被覆に亀裂が生じ、ポリプロピレン層が鋼材から剥離して防食性が損なわれることがあった。
【0006】
更に、パイプラインの延長化により原油などをより高温高圧で輸送されることも生じ被覆材の耐熱性が要求されるようになった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような従来の問題を解決するものであり耐熱水密着性、耐高温陰極剥離性、耐低温衝撃性の優れたポリプロピレン被覆鋼材用エポキシ粉体プライマー組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリプロピレン被覆鋼材用エポキシ粉体プライマー組成物は、軟化点75〜128℃でエポキシ当量が600〜2200g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(A)と、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)との混合物であって、その割合が質量比で97/3〜50/50である混合エポキシ樹脂成分、平均フェノール水酸基当量200〜800g/eqの下記一般式(1)(式中、mは1〜4)で表されるフェノール性硬化剤(C)、トリアジン環を有するイミダゾール系硬化促進剤またはトリメリット酸塩であるイミダゾール系硬化促進剤(D)、および、無機質充填材(E)からなる。
【0009】
上記硬化剤(C)のフェノール水酸基の量は上記混合エポキシ樹脂成分のエポキシ基1当量に対して0.4〜0.9当量であり上記硬化促進剤(D)の配合量は、上記硬化剤(C)の配合量に対して0.1〜15.0質量%であり、かつ、上記無機質充填材(E)の配合量はビスフェノールA型エポキシ樹脂(A)、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)、硬化剤(C)、および硬化促進剤(D)の合計量に対して無機質充填材(E)が10〜100質量%含有するように配合する。上記無機質充填材(E)は、ホウ酸亜鉛であることが好ましい。
【0010】
【化2】
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、先に硬化促進剤(D)としてイミダゾール系硬化促進剤および(または)イミダゾリン系硬化促進剤を使用した発明を行った(特許公開2000−191954号公報)。上記イミダゾール系硬化促進剤および(または)イミダゾリン系硬化促進剤は特にポリエチレン被覆材に対して効果を発揮する。今般、発明者らは、ポリオレフィン全般に使用可能ではあるが、特にポリプロピレン被覆材に対して効果の著しい既述の硬化促進剤(D)を開発し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明の第1の特徴はエポキシ樹脂成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(A)とo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)とを混合することでビスフェノールA型エポキシ樹脂(A)の鋼材基材との優れた密着性とo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)添加による優れた耐熱安定性の両方を兼ね備えることができる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A)とo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)の混合割合は質量比で97/3〜50/50が好ましい。o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)の混合割合が3質量%より少ないと十分な耐熱安定性を得ることができない。また、50質量%より多いと得られる硬化体の弾性率が高くなりすぎて耐衝撃性が低下する。
【0013】
第2の特徴はプライマー塗膜の耐低温衝撃性を改善するために可撓性に優れた上述の一般式(1)(式中mは1〜4)で表させるフェノール性硬化剤(C)を用いることであり、しかも混合エポキシ樹脂成分のエポキシ基1当量に対してフェノール性硬化剤(C)のフェノール性水酸基を0.4〜0.9当量とすることである。フェノール性水酸基当量が0.4未満では硬化剤が少なすぎるためエポキシ樹脂の高分子化が不十分となり、当該プライマー組成物としての性能が発揮できない。また、0.9を超えると混合エポキシ樹脂のエポキシ基がほとんど反応し、プライマー組成物中の反応活性点が減少することにより、プライマー上に積層される熱可塑性接着剤とプライマー組成物間の接着性が低下し、ピール強度が低下する。
【0014】
当該プライマー組成物はトリアジン環を有するイミダゾール系硬化促進剤またはトリメリット酸塩であるイミダゾール系硬化促進剤(D)を硬化剤(C)の量に対して0.1〜15.0質量%含有することを特徴とする。予熱された鋼材に当該プライマー組成物を塗布し、迅速に硬化させるために硬化促進剤は必須である。硬化促進剤(D)の量は0.1質量%未満では硬化が促進されず、15.0質量%を超えるとプライマー組成物の反応性が高くなりすぎ、常温域においてもブロッキングが発生しやすくなり、貯蔵安定性が不良となる。
【0015】
当該プライマー組成物は、更にビスフェノールA型エポキシ樹脂(A)、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)、フェノール性硬化剤(C)および硬化促進剤(D)の合計量に対して無機質充填材(E)を10〜100質量%含有することを特徴とする。無機質充填材は当該プライマー塗膜の応力緩和に寄与し、鋼材基材との密着性を向上させるとともに、腐食因子の遮断にも寄与することで耐陰極剥離性も向上させる。特に、無機質充填材としてホウ酸亜鉛の適用は、ホウ酸イオンのpH緩衝作用により良好な耐陰極剥離性を示す。無機質充填材(E)の量は10%未満では十分な効果が得られず100質量%を越すと、当該プライマー組成物の溶融粘度が高くなり鋼材基材との濡れ性が悪くなり、密着性が低下する(耐陰極剥離性が低下する)。
【0016】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A)としては、軟化点が75〜128℃であり、エポキシ当量が600〜2200g/eqの範囲であるものが望ましい。軟化点が75℃未満であるとプライマー組成物の貯蔵中に粉体粒子間で融着が起こりやすく、128℃を超えると、溶融粘度が高くなり、鋼材基材との濡れ性が悪くなり密着性が低下する(陰極剥離性が低下する)。軟化点は好ましくは、90〜110℃である。また、エポキシ当量が600g/eq未満であると、一般に分子量が小さくなり、軟化温度が低くなりすぎ、2200g/eqを超えると、一般に分子量が大きくなり、軟化温度が高くなりすぎるので、上記範囲に限定される。エポキシ当量は好ましくは、650〜1100g/eqである。
【0017】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A)としては、軟化点が75〜128℃であり、エポキシ当量が600〜2200g/eqの範囲であれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン]とエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリンとを反応させて、一旦低分子量のエポキシ樹脂を製造した後、更にビスフェノールAを付加重合させて、所望の分子量に調整する2段法により得られるもの等を挙げることができる。
【0018】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A)としては、市販されているものも使用することができる。具体的には、例えば、エポトートYD−014(エポキシ当量900〜1000g/eq、軟化点91〜102℃、東都化成社製)、エポトートYD−017(エポキシ当量1750〜2100g/eq、軟化点117〜127℃、東都化成社製)、エポトートYD−904(エポキシ当量900〜1000g/eq、軟化点96〜107℃、東都化成社製)、エポトートYD−907(エポキシ当量1300〜1700g/eq、軟化点117〜127℃、東都化成社製)、エピコート1003F(エポキシ当量700〜800g/eq、軟化点約96℃、油化シェルエポキシ社製)、エピコート1004F(エポキシ当量875〜975g/eq、軟化点約103℃、油化シェルエポキシ社製)、エピコート1005F(エポキシ当量950〜1050g/eq、軟化点約107℃、油化シェルエポキシ社製)、アラルダイドXAC5007(エポキシ当量600〜700g/eq、軟化点約90℃、日本チバガイギー社製)、アラルダイドGT7004(エポキシ当量730〜830g/eq、軟化点約100℃、日本チバガイギー社製)、アラルダイドGT7097(エポキシ当量1650〜2000g/eq、軟化点約120℃、日本チバガイギー社製)等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。
【0019】
o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)としては特に限定されず市販されているものとしては以下のものが挙げられる。例えば、エピコート180S65(エポキシ当量205〜220g/eq、軟化点約67℃、油化シェルエポキシ社製)、エポトートYDCN−704P(エポキシ当量195〜225g/eq、軟化点約90℃、東都化成社製)等である。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
上記フェノール性硬化剤(C)は上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A)とo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)の混合エポキシ樹脂成分の硬化剤として使用される成分であり、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0021】
【化3】
【0022】
式中、mは、1〜4の整数を表す。上記mが1未満であると、以下に詳述するように、原料としてビスフェノールAを使用する場合には、存在することができず、mが4を超えると、合成時に反応が進みすぎて、合成が困難となるので、上記範囲に限定される。上記一般式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールAとの反応により得られるもの等を挙げることができる。上記硬化剤(C)はフェノール性水酸基当量が200〜800g/eqである。200g/eq未満であるとプライマー組成物の軟化点が低下し、プライマー組成物の貯蔵中に粉体粒子間で融着が起こりやすくなり、貯蔵安定性が低下する。800g/eqを超えると反応性が低下し、陰極剥離性が低下する。上記硬化剤(C)としては、市販されているものを使用することができる。具体的には、例えば、TH−4100(フェノール性水酸基当量約725g/eq、軟化点約110℃、東都化成社製)、エピキュア171(フェノール性水酸基当量200〜286g/eq、軟化点約80℃、油化シェルエポキシ社製)、エピキュア170(フェノール性水酸基当量286〜400g/eq、軟化点約90℃、油化シェルエポキシ社製)等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
上記硬化促進剤(D)としてはトリアジン環を有するイミダゾール系硬化促進剤またはトリメリット酸塩であるイミダゾール系硬化促進剤であり、それぞれ下記一般式(2)および下記一般式(3)で表される化合物である。式中、R1は、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、または、フェニル基を表す。R2は、水素原子、または、メチル基を表す。
【0024】
【化4】
【0025】
【化5】
【0026】
上記炭素数1〜17のアルキル基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基等を挙げることができる。上記イミダゾール系硬化促進剤としては特に限定されず、市販されているものを使用してもよい。具体的には、例えば、2,4−ジアミノ−6−〔2−メチルイミダゾリル−(1)〕−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1)〕−エチル−S−トリアジン、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウム・トリメリテートを挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
上記無機質充填材(E)としては、ホウ酸亜鉛の他に、例えば、アルミナ、シリカ、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、クレー、タルク、マイカ等の体質顔料:二酸化チタン、ベンガラ、カーボンブラック、酸化鉄等の着色無機顔料:リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム等の防錆顔料:亜鉛粉、アルミニウム粉等の金属粉等を挙げることができる。
【0028】
更に本発明におけるエポキシ粉体プライマー組成物にはレベリング剤、流動化助剤、脱気剤等の添加剤や助剤を含有してもよい。
【0029】
また、鋼材表面に当該プライマー組成物を塗布する前に例えばクロメート処理やリン酸塩処理のような化成処理を施すこともできる。特に鋼材表面にクロメート処理を施すことで、本発明のエポキシ粉体プライマー組成物を使用したポリプロピレン被覆防食システムがより厳しい環境でも使用できるようになる。
【0030】
【実施例】
以下に、ポリプロピレン被覆鋼管に本発明のエポキシ粉体プライマー組成物を用いた場合の実施例および比較例を挙げる。
【0031】
(実施例1)
a)エポキシ粉体プライマー組成物の調製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製エポトートYD−014)90質量部、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製エピコート180S65)10質量部、フェノール系硬化剤(油化シェルエポキシ社製エピキュア170)29質量部(エポキシ基1当量に対するフェノール性水酸基当量0.6)、4−ジアミノ−6−〔2−メチルイミダゾリル−(1)〕−エチル−S−トリアジン 1質量部(硬化剤に対して3.4質量%)、ホウ酸亜鉛40質量部(エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤の合計量に対して30質量部)をスーパーミキサー(日本スピンドル社製)にて約3分間予備混合した。次いで、コニーダー(ブス社製)により約100℃の条件で溶融混練押し出しを行った。押し出された配合品を室温まで冷却・粗粉砕後、アトマイザー(不二パウダル社製)にて微粉砕し平均粒径35μmエポキシ粉体プライマーを得た。この組成を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
b)ポリプロピレン被覆鋼管の製作鋼管(SGP250AX5500mm長さX6.6mm厚み)の外面をグリッドブラスト処理により除錆し、クロメート処理剤(水溶液中の全クロムに対する3価クロムの質量比が0.4、シリカの質量比が2.0、リン酸の質量比が1.0)を刷毛で塗布し乾燥した。クロメート被膜の全クロム付着量は500mg/m2であった。クロメート処理した鋼管をスキューターニング式搬送装置に載せ、回転させながら管軸方向に搬送した。この鋼管を高周波誘導加熱装置で表面温度が180℃になるように加熱し、(a)で調製したエポキシ粉体プライマー組成物を静電粉体塗装機(GX3300、オノダ社製)および静電粉体ガン(GX107、オノダ社製)を用いて静電塗装した。エポキシプライマー層の厚みは硬化後で0.10mmであった。ポリプロピレン被覆鋼管は変性ポリプロピレン(プロピレンの単独重合体を無水マレイン酸で変性した変性ポリプロピレンで、変性ポリプロピレン1gに対する無水マレイン酸の付加量が1×10-5モル)とポリプロピレン(密度0.90、カーボンブラックを2.5質量%配合)を二層一体でTダイから押し出して、エポキシプライマーが塗装された鋼管表面にらせん状に被覆した。変性ポリプロピレン層の厚みは0.15mm、ポリプロピレン層の厚みは2.5mmであった。被覆直後にシリコーンゴム製のロールを押し当てて被覆層を圧着し、ポリプロピレン被覆鋼管層間を強固に融着させた後、外面から水冷を行いポリプロピレン被覆鋼管を得た。
【0034】
c)耐熱水密着性の評価
(a)で得られた粉体プライマーの耐熱水密着性を評価するために、(b)で得られたポリプロピレン被覆鋼管を80℃の熱水に100日間浸漬し、ピール強度測定を行う熱水浸漬試験を行った。浸漬後、カッターナイフで鋼管素地に達する切り込み傷を円周方向に沿って10mm幅で入れ、剥離角90度、剥離速度10mm/分でピール強度を測定し、浸漬前ピール強度(初期ピール強度)と比較した。初期ピール強度は240N/10mm、浸漬後ピール強度は220N/10mmであった。
【0035】
d)耐陰極剥離性の評価
(a)で得られた粉体プライマーの耐陰極剥離性を評価するために、(b)で得られたポリプロピレン被覆鋼管に鋼管素地まで達する直径9mmのドリル穴をあけ、3%食塩水に浸漬し、60℃および、100℃恒温下にて、−1.5V(対飽和カロメル電極)の電圧を30日間印加して陰極剥離試験を行った。試験終了後、被覆を除去し、初期穴端部から剥離先端までの距離(剥離距離)を測定した。剥離距離は60℃浸漬の場合で2.5mm、100℃浸漬の場合で4.9mmであった。なお表1中では、上記浸漬温度60℃で実施したものを陰極剥離性A、100℃で実施したものを陰極剥離性Bとして表示した。
【0036】
e)耐低温衝撃性の評価
(a)で得られた粉体プライマーの耐衝撃性を評価するために、(b)で得られたポリプロピレン被覆鋼管に対して、ASTM G 14の規定に準拠して先端径15.875mmのポンチを用いた落錘衝撃試験を行った。試験は−30℃で行った。試験終了後、被覆の割れの有無を目視により判定した。被覆の割れはなかった。
【0037】
(実施例2〜6および比較例1〜3)
表1に示す組成のエポキシ粉体プライマー組成物を実施例1(a)と同じ要領で調製した。なお、表1に記載のエポキシ樹脂の配合量は質量%であり、フェノール硬化剤の配合量はエポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量に対するフェノール硬化剤中のフェノール性水酸基当量を表す。また、硬化促進剤であるイミダゾール化合物の配合量はフェノール硬化剤の量に対する質量%、無機質充填材の配合量はエポキシ樹脂、フェノール硬化剤、硬化促進剤の合計量に対する質量%である。そして実施例1(b)と同じ要領で、表1に記したエポキシ粉体プライマー組成物を用いたポリプロピレン被覆鋼管を製作し、実施例1と同様の評価を行った。
【0038】
(比較例1〜3)
比較例1〜3に示す組成のエポキシ粉体プライマー組成物を実施例1(a)と同じ要領で調製した。そして実施例1(b)と同じ要領で、エポキシ粉体プライマー組成物を用いたポリプロピレン被覆鋼管を製作した。
【0039】
これらの被覆鋼管の耐熱水密着性を実施例1(c)と同じ要領で、耐陰極剥離性を実施例1(d)と同じ要領で、耐低温衝撃性を実施例1(e)と同じ要領で評価した。試験結果を表1にまとめて示す。
【0040】
表1の評価から、本発明の実施例によるポリプロピレン被覆鋼管は、比較例のものに較べて、耐熱水密着力、耐陰極剥離性、耐低温衝撃性いずれも優れた特性を示すことが確認できた。
【0041】
【発明の効果】
本発明のポリオレフィン被覆鋼材用エポキシ粉体プライマー組成物は、特定質量比の混合エポキシ樹脂成分と、フェノール性硬化剤、およびトリアジン環を有するイミダゾール系硬化促進剤またはトリメリット酸塩であるイミダゾール系硬化促進剤を含有するため、従来のエポキシ粉体プライマー組成物よりも高温下での耐陰極剥離性に優れ、ポリプロピレン被覆鋼材の防食性を長期にわたり保持することができ、優秀な性能を発揮することができる。
Claims (2)
- エポキシ樹脂成分として、軟化点が75〜128℃でエポキシ当量が600〜2200g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(A)と、
o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)との混合物であって、その割合が質量比で97/3〜50/50である混合エポキシ樹脂成分、
下記一般式(1)(式中、mは1〜4)で表される化合物であって、平均フェノール水酸基当量が200〜800g/eqのフェノール性硬化剤(C)、
トリアジン環を有するイミダゾール系硬化促進剤またはトリメリット酸塩であるイミダゾール系硬化促進剤(D)並びに、無機質充填材(E)
からなるポリプロピレン被覆鋼材用エポキシ粉体プライマー組成物であって、
前記硬化剤(C)のフェノール水酸基の量は前記混合エポキシ樹脂成分のエポキシ基1当量に対して0.4〜0.9当量であり、前記硬化促進剤(D)の配合量は前記硬化剤(C)の配合量に対して0.1〜15.0質量%であり、かつ、前記無機質充填材(E)の配合量はビスフェノールA型エポキシ樹脂(A)、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)、硬化剤(C)、および硬化促進剤(D)の合計量に対して無機質充填材(E)が10〜100質量%含有するように配合されることを特徴とするポリプロピレン被覆鋼材用エポキシ粉体プライマー組成物。
- 前記無機質充填材(E)が、ホウ酸亜鉛である請求項1に記載のポリプロピレン被覆鋼材用エポキシ粉体プライマー組成物。
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