JP4830861B2 - 接合構造体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、両部材の間に作用する応力を弾性的に緩和する加熱硬化型の接着剤を介して当該両部材同士を組み付けてなる接合構造体の製造方法に関する。
従来より、この種の一般的な接合構造体として、第1の部材としてのヒートシンクと第2の部材としてのセラミック基板とが、これら両部材の間に作用する応力を弾性的に緩和する接着剤を介して組み付けられてなる半導体装置が提案されている。
そして、この半導体装置においては、ヒートシンクに対してさらに第3の部材としてのリードフレームが、かしめなどにより組み付けられてなり、このリードフレームとセラミック基板とがワイヤボンディングなどにより接続されている。
また、このような半導体装置は、その全体がモールド樹脂により封止されているのが通常である。ここで、上記接着剤は、通常、シリコーン樹脂などよりなる樹脂部材である。そして、このような接着剤は、加熱により硬化するものであって、当該加熱により空中にシロキサンなどの飛散物を発生するものである。
ところで、この種の半導体装置を製造するとき、各構成部材同士を接着剤を用いて接着する工程においては、当該接着剤の硬化時に接着剤から飛散する上記飛散物が、周辺部材に付着することがある。
たとえば、上記した従来の半導体装置では、あらかじめヒートシンクとリードフレームとをかしめ接合しておき、次に、ヒートシンクとセラミック基板との間に接着剤を配置し、接着剤を硬化させることで接合構造体を完成する。
この場合、接着剤の硬化時には、接着剤より発生する飛散物が、すでにヒートシンクに組み付けられているリードフレームの表面に付着したり、ヒートシンクやセラミック基板のうち接着剤で接合される部位以外の部位にも付着したりする。
そうなると、これら飛散物が付着した部分が、当該飛散物により汚染された状態となり、たとえば、ワイヤボンディングの接合性やモールド樹脂の密着性などを低下させたり、また、飛散物が付着した部分が摺動接点などである場合には、接点障害を引き起こす懸念がある。
これらの対策として、従来では、接着剤が塗布面から必要以上に濡れ広がらないように、部材の接着面に突起を設けたり(たとえば、特許文献1参照)、接着剤として紫外線硬化樹脂を用いて紫外線硬化し、その後ワイヤボンディングを施し、さらに熱硬化するという方法が提案されている(特許文献2参照)。
特開2000−12615号公報 特開平10−098347号公報
しかしながら、上記した対策のうち接着剤が塗布面から必要以上に濡れ広がらないように突起を設ける構造では、接着面上の広がりは防止できても空中への飛散は防止することができない。
紫外線硬化樹脂を用いる方法では、紫外線硬化という特殊な樹脂が適用できる場合のみであり、上述したように、接着剤に対して、両部材の間に作用する応力を弾性的に緩和するという機能が所望される場合には、適当な紫外線硬化型の接着材料を得ることは困難な場合が多い。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、両部材の間に作用する応力を弾性的に緩和する加熱硬化型の接着剤を介して当該両部材同士を組み付けてなる接合構造体の製造方法において、接着剤から発生する飛散物が外部へ飛散するのを防止することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、第1の部材(10)と第2の部材(20)とが、これら両部材(10、20)の間に作用する応力を弾性的に緩和する樹脂よりなる接着剤(70)を介して組み付けられてなり、前記接着剤(70)は加熱により硬化するとともに当該加熱により空中に飛散物を発生するものである接合構造体を製造する製造方法において、
前記接着剤(70)のうち、前記両部材(10、20)を組み付けたときに外部に露出する表層部のみを硬化させることにより、当該硬化された表層部によって飛散物透過防止部材(71)を形成する飛散物透過防止部材形成工程と、
しかる後、前記接着剤(70)のうち、前記飛散物透過防止部材(71)の内側に位置する未硬化の接着剤を前記飛散物透過防止部材(71)及び前記両部材(10、20)により封止された状態で硬化する接着剤硬化工程とを備えており、
前記飛散物透過防止部材形成工程では、前記両部材(10、20)のうちいずれか一方の部材に未硬化の前記接着剤(70)を配置し、
前記未硬化の接着剤(70)のうち、前記両部材(10、20)を組み付けたときに外部に露出する表層部のみを硬化させることにより、前記飛散物透過防止部材(71)を形成し、
その後に、前記未硬化の接着剤(70)を介して、前記両部材(10、20)のうち他方の部材を前記一方の部材に組み付け、しかる後、前記接着剤硬化工程を実行することを特徴とする。
それによれば、接着剤(70)のうち、外部に露出する表層部のみを硬化させることにより飛散物透過防止部材(71)を形成できる。
そして、接着剤(70)のうち、飛散物透過防止部材(71)の内側に位置する未硬化の接着剤を飛散物透過防止部材(71)及び両部材(10、20)により封止された状態で硬化するから、接着剤(70)から発生する飛散物が外部へ飛散するのを防止することができる。その結果として、接合構造体(100)のうち接着剤(70)からの飛散物の付着を嫌う部材への飛散物の付着を防止することができる。
また、請求項に記載の発明のように、請求項1に記載の接合構造体の製造方法において、前記接着剤(70)に、前記飛散物をトラップする多孔質剤を混合するようにすれば、飛散物透過防止部材(71)を通り抜けようとする飛散物を多孔質剤がトラップするため、多孔質剤を混合しない場合よりも、飛散物の発生をより一層抑制できる可能性が高くなる。
ここで、請求項に記載の発明のように、請求項に記載の接合構造体の製造方法において、多孔質剤としてはゼオライトを採用できる。
また、請求項に記載の発明のように、請求項1ないしのいずれか1つに記載の接合構造体の製造方法において、接着剤(70)としては、シロキサン結合を有する材料よりなるものを採用できる。
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る接合構造体としての半導体装置100の概略断面構成を示す図であり、図1(b)は(a)に示される半導体装置100における接着剤70を拡大して示す部分断面図である。
本実施形態の半導体装置100は、大きくは、板状をなすヒートシンク10の一面11上にセラミック基板20を搭載し、さらにヒートシンク10にリード端子30を接合し、ヒートシンク10の一面11側およびセラミック基板20を、モールド樹脂40にて封止するとともに、ヒートシンク10の一面11とは反対側の他面12をモールド樹脂40から露出させてなる。
ここで、本実施形態では、ヒートシンク10が第1の部材、セラミック基板20が第2の部材、リード端子30が第3の部材として構成されている。ヒートシンク10は、セラミック基板20の熱を放熱する板状のものであり、放熱性に優れた銅、モリブデン、アルミニウム、鉄などの材料よりなる。
このセラミック基板20は、一般に知られているアルミナなどのセラミックよりなる配線基板であり、単層基板でも積層基板でもよい。
積層基板の場合、セラミック基板20はその一面(図1(a)中の上面)21側から他面(図1(a)中の下面)22側へ向かって図示しない複数のセラミックよりなるセラミック層が積層されてなるものである。このようなセラミック層を積層してなる積層基板は、アルミナなどよりなるグリーンシートを積層し、焼成してなるものである。
また、図示しないが、本実施形態のセラミック基板20の一面21には、電子部品50、51を搭載したり、ボンディングワイヤ60が接続されたりする導体部が設けられている。この図示しない導体部は、たとえばモリブデンやタングステンなどの導体ペーストよりなるものである。
そして、セラミック基板20は、ヒートシンク10の一面11との間に接着剤70を介して搭載され、ヒートシンク10、接着剤70、セラミック基板20は、接着剤70の接着力により互いに固定されている。
この接着剤70としては、この種の半導体装置に用いられる一般的な加熱硬化型の樹脂よりなり硬化時に低分子成分が飛散物として発生するような接着剤を採用できる。そして、本半導体装置100における接着剤70は、このような加熱硬化型の樹脂接着剤を硬化させたものである。
また、この接着剤70は低弾性のものである。そして、半導体装置100においては、この接着剤70の弾性により、ヒートシンク10とセラミック基板20との間に作用する応力、たとえば、ヒートシンク10とセラミック基板20との熱膨張差による歪みなどが吸収されるようになっている。
具体的に、このような接着剤70としては、シリコーン樹脂よりなる接着剤が用いられる。このようなシリコーン樹脂よりなる接着剤70は、ヤング率が小さいため、セラミック基板20に加わる熱応力を緩和し、また、硬度が低いため、セラミック基板20の他面22に設けられた図示しない抵抗や保護樹脂を保護する機能を有する。
このシリコーン樹脂よりなる接着剤70は、硬化時には、樹脂中の分子量の小さいシロキサン分子が飛散しやすいものであり、従来では、この低分子シロキサンがリード端子30や、セラミック基板20の表面に付着することで、ワイヤボンディング性の阻害や、モールド樹脂の剥離を発生させるなどの問題があった。
しかし、本実施形態では、図1(b)に示されるように、接着剤70において外部に露出する表層部を、飛散物透過防止部材71にて被覆している。この飛散物透過防止部材71は、接着剤70の加熱硬化時に上記飛散物が透過しないような膜であり、後述する製造方法にて形成されるものである。
この飛散物透過防止部材71としては、接着剤70としてのシリコーン樹脂接着剤よりも加熱硬化時の飛散物発生量が少なく、且つ、硬化温度が低いものが望ましい。具体的に飛散物透過防止部材71は、エポキシ樹脂などよりなる。
また、セラミック基板20には、ICチップ50、コンデンサ51といった電子部品50、51が搭載されている。なお、セラミック基板20の一面21上に搭載される電子部品としては、これらの部品50、51以外にも抵抗素子などの電子部品を採用することができる。
これら電子部品50、51は、はんだや導電性接着剤などよりなるダイマウント材80を介してセラミック基板20の一面21上に固定され、必要に応じてボンディングワイヤ60を介してセラミック基板20の一面21の上記導体部と接続されている。ここでは、ICチップ50にて、ボンディングワイヤ60による接続が行われている。
また、上記リード端子30は、銅などのリードフレームにより構成されるもので、モールド樹脂40の内部にてセラミック基板20の周囲に配置されている。ここで、図示しないが、このリード端子30は、かしめや溶接などによりヒートシンク10に接合されている。
そして、モールド樹脂40の内部にてリード端子30とセラミック基板20とは、ボンディングワイヤ60により電気的に接続されている。
ここで、上記した各ボンディングワイヤ60は、一般的なAuやアルミニウムなどよりなるもので、通常のワイヤボンディングにより形成される。そして、本半導体装置100は、リード端子30のアウターリードを、図示しない外部配線などに接続することにより、外部との電気的なやりとりが可能となっている。
ここで、モールド樹脂40は、通常、この種の半導体装置に用いられるモールド材料、例えばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などを採用できる。このようなモールド樹脂40はトランスファーモールド法などにより形成できる。
そして、この半導体装置100は、図示しないケースなどの基材に搭載されて使用されるが、このとき、モールド樹脂40から露出するヒートシンク10の他面12を当該基材に接触させ、放熱を図るようにしている。
このように、本実施形態の半導体装置100は、第1の部材であるヒートシンク10と第2の部材であるセラミック基板20とが、上記接着剤70を介して組み付けられてなるとともに、ヒートシンク10に対してさらに第3の部材であるリード端子30が組み付けられてなる接合構造体である。
次に、本実施形態の接合構造体としての半導体装置100の製造方法について、図2を参照して述べる。図2は、本製造方法のうち飛散物透過防止部材形成工程を(a)〜(c)の工程順に示す工程図であり、(a)および(b)はセラミック基板20の他面22側からワークをみたときの概略平面図、(c)はワークの概略断面図である。
まず、セラミック基板20の一面21に対して、ダイマウント材80を介してICチップ50およびコンデンサ51を搭載し、固定する。そして、ICチップ50については、ワイヤボンディングを行い、ワイヤ60によりICチップ50とセラミック基板20とを接続する。
一方で、ヒートシンク10とリード端子30とを、かしめ固定などにより接合し一体化する。そして、これらヒートシンク10とセラミック基板20とを、接着剤70を介して組み付けるのである。
このとき、本製造方法では、図2に示されるように、飛散物透過防止部材形成工程を行い、接着剤70におけるヒートシンク10およびセラミック基板20との接触部以外の表層部を上記飛散物透過防止部材71にて被覆する。
まず、図2(a)に示されるように、飛散物透過防止部材71を、セラミック基板20の他面22に対して環状に設ける。これは、飛散物透過防止部材71を構成するエポキシ樹脂などの材料をセラミック基板20の他面22にディスペンス法や印刷法などにより環状に塗布した後、これを加熱硬化させて飛散物透過防止膜71を形成することにより実現することができる。
次に、図2(b)に示されるように、セラミック基板20の他面22のうち飛散物透過防止部材71の内周の部位に、ディスペンス法などにより、未硬化の状態の接着剤70を配置する。
次に、図2(c)に示されるように、ヒートシンク10の一面11とセラミック基板20の他面22とを対向させ、ヒートシンク10とセラミック基板20とが、接着剤70および飛散物透過防止部材71を介して接触するように組み付ける。
すると、未硬化の接着剤70は環状の飛散物透過防止部材71により取り囲まれているため、上記の組み付けによって、組み付け後におけるヒートシンク10およびセラミック基板20の間のうち環状の飛散物透過防止部材71の内周の部位に接着剤70が介在し、この接着剤70が飛散物透過防止部材71により封止された状態となる。
つまり、未硬化の接着剤70におけるヒートシンク10およびセラミック基板20との接触部以外の表層部が、当該表層部の外周を取り囲む飛散物透過防止部材71によって、被覆された状態となる。
こうして、飛散物透過防止部材形成工程を行った後、本製造方法では、接着剤硬化工程を行い、飛散物透過防止部材71に封止された接着剤70を加熱して硬化する。この接着剤70の加熱条件は、この種の一般的なシリコーン樹脂接着剤と同様であり、たとえば150℃で30分程度のものである。
それにより、接着剤70におけるヒートシンク10およびセラミック基板20との接触部以外の表層部が飛散物透過防止部材71にて被覆された状態で、硬化した接着剤70によって、ヒートシンク10とセラミック基板20とが接着する。こうして、接着剤硬化工程が終了する。
この後、本製造方法では、セラミック基板20とリード端子30との間でワイヤボンディングを行う。こうして、ヒートシンク10、セラミック基板20およびリード端子30の3つの部材が一体に組み付けられたワークができあがる。その後は、このワークを、通常のトランスファーモールド法などにてモールド樹脂40で封止する。それにより、本実施形態の半導体装置100ができあがる。
ところで、本第1実施形態の製造方法によれば、ヒートシンク10およびセラミック基板20を組み付けて接着剤70を硬化させる時には、未硬化の接着剤70におけるヒートシンク10およびセラミック基板20との接触部以外の表層部が環状の飛散物透過防止部材71にて被覆されており、当該接着剤70から発生するシロキサンなどの飛散物が封止される。そのため、ヒートシンク10およびセラミック基板20への飛散物の付着を防止できる。
また、本実施形態では、この接着剤70の硬化時には、第3の部材としてリード端子がヒートシンク10に組み付けられているが、このような場合に従来の製造方法を採用した場合には、接着剤70のすぐ近くに位置するリード端子30に上記飛散物が付着する可能性が高い。
その点、本製造方法では、上述のように、飛散物透過防止部材71によって、接着剤70からの飛散物の発生が防止されているため、このリード端子30に対する飛散物の付着も防止することができる。
このようにして、ヒートシンク10、セラミック基板20およびリード端子30への飛散物の付着防止がなされる結果、これら各部材10〜30におけるワイヤボンディング性や樹脂密着性などを十分に確保することが可能となる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態においては、飛散物透過防止部材形成工程は、飛散物透過防止部材71をセラミック基板20に設けるものであったが、これとは反対に、飛散物透過防止部材71はヒートシンク10の一面11に設けてもよい。その場合も、上記第1実施形態の製造方法と同様の効果が得られる。
この場合、飛散物透過防止部材71を構成する材料をヒートシンク10の一面11に環状に塗布した後、これを加熱硬化させて飛散物透過防止膜71を形成すればよい。その後は、ヒートシンク10の一面11のうち飛散物透過防止部材71の内周の部位に、未硬化の状態の接着剤70を配置する。
そして、上記図2(c)と同様に、組み付け後におけるヒートシンク10およびセラミック基板20の間のうち環状の飛散物透過防止部材71の内周の部位にて接着剤70が封止された状態となるように、ヒートシンク10の一面11とセラミック基板20の他面22とを、接着剤70および飛散物透過防止部材71を介して組み付ける。
その後は、上記第1実施形態の製造方法と同様に、接着剤硬化工程を行い、飛散物透過防止部材71に封止された接着剤70を加熱して硬化することで、ヒートシンク10とセラミック基板20とを接着する。そして、上記同様に、ワイヤボンディング、樹脂モールドを行うことにより、本実施形態においても、上記図1に示したものと同様の半導体装置ができあがる。
(第3実施形態)
図3は、本発明の第3実施形態に係る接合構造体の製造方法の要部を示す工程図であり、本製造方法における飛散物透過防止部材形成工程を示すものである。
ここで、図3では、接合構造体として上記第1実施形態と同様の半導体装置の例を示しており、(a)は本工程におけるセラミック基板20の他面22の概略平面図、(b)はヒートシンク10の一面11の概略平面図、(c)はヒートシンク10およびセラミック基板20の組み付け状態を示す概略断面図である。
上記第1および第2実施形態では、飛散物透過防止部材形成工程において、ヒートシンク10およびセラミック基板20のうちどちらか一方の部材に飛散物透過防止部材71を硬化させて環状に設けた後、さらに、同じ一方の部材において環状の飛散物透過防止部材71の内周に未硬化の接着剤70を設けるようにしていた。
これに対して、本第3実施形態の製造方法では、飛散物透過防止部材形成工程において、ヒートシンク10およびセラミック基板20のうちどちらか一方の部材に飛散物透過防止部材71を硬化させて環状に設けた後、上記第1および第2実施形態とは逆に、他方の部材において環状の飛散物透過防止部材71の内周に未硬化の接着剤70を設けるものである。
図3に示される例では、まず、図3(a)に示されるように、飛散物透過防止部材71を、セラミック基板20の他面22に対して環状に設ける。一方で、図3(b)に示されるように、ヒートシンク10の一面11のうち組み付け後において飛散物透過防止部材71の内周となる部位に、未硬化の接着剤70を配置する。
しかる後、本製造方法では、図3(c)に示されるように、環状の飛散物透過防止部材71の内周部に接着剤70が対向するように、ヒートシンク10の一面11とセラミック基板20の他面22とを位置あわせし、これら両部材10、20が、接着剤70および飛散物透過防止部材71を介して接触するように組み付ける。ここで、組み付け後の状態は上記図2(c)に示されるものと同様になる。
この本実施形態の組み付けによっても、上記第1および第2実施形態と同様に、組み付け後におけるヒートシンク10およびセラミック基板20の間のうち環状の飛散物透過防止部材71の内周の部位に接着剤70が介在し、この接着剤70が飛散物透過防止部材71により封止された状態となる。
その後は、上記同様に、接着剤硬化工程を行って、飛散物の発生を防止しながら接着剤70を加熱硬化することで、ヒートシンク10とセラミック基板20とを接着する。そして、上記同様に、ワイヤボンディング、樹脂モールドを行うことにより、本実施形態においても、上記図1に示したものと同様の半導体装置ができあがる。
このように、本第3実施形態では、ヒートシンク10およびセラミック基板20の組み付け前において、飛散物透過防止部材71を配置する部材と接着剤70を配置する部材とが、別々であるが、上記各実施形態と同様に、ヒートシンク10、セラミック基板20さらにはリード端子30への飛散物の付着を防止することができる。
(第4実施形態)
図4は、本発明の第4実施形態に係る接合構造体の製造方法の要部を示す工程図であり、本製造方法の飛散物透過防止部材形成工程における接着剤70および飛散物透過防止部材71の配置状態を示す概略平面図である。
上記各実施形態では、飛散物透過防止部材形成工程において、組み付け後におけるヒートシンク10およびセラミック基板20の間で、環状の飛散物透過防止部材71の内周に未硬化の接着剤70が封止されるように、当該組み付けを行っていた。そして、このとき、飛散物透過防止部材71とその内周の接着剤70とは接触した状態となっていた(上記図2(b)、(c)参照)。
しかし、この組み付け時においては、接着剤70が環状の飛散物透過防止部材71により封止された状態となっていればよく、図4に示されるように、接着剤70と飛散物透過防止部材71とが離れていてもよい。このことは、上記した各実施形態において同様である。そして、この場合でも、できあがった半導体装置においては、接着剤70の表層部が飛散物透過防止部材71で被覆された状態となる。
また、上記第1〜第4実施形態では、飛散物透過防止部材71を接着剤70とは異なる材料により形成していたが、飛散物透過防止部材71を接着剤70と同じ材料により形成してもよい。つまり、飛散物透過防止部材71も接着剤70と同様に、シリコーン樹脂よりなる接着剤を用いて形成してもよい。
(第5実施形態)
図5は、本発明の第5実施形態に係る接合構造体の製造方法の要部を示す工程図であり、本製造方法における飛散物透過防止部材形成工程を、接合構造体として上記第1実施形態と同様の半導体装置を例にとって示している。
上記第1〜第4実施形態では、飛散物透過防止部材形成工程では、ヒートシンク10およびセラミック基板20の一方に環状の飛散物透過防止部材71を形成した後、両部材10、20の組み付け時に、飛散物透過防止部材71の内周に接着剤70を介在させ、当該組み付けによって、接着剤70の外周が飛散物透過防止部材71で被覆され封止されるようにしていた。
これに対して、本実施形態の飛散物透過防止部材形成工程では、図5(a)に示されるように、まず、未硬化の接着剤70を介してヒートシンク10とセラミック基板20とを組み付ける。
そして、図5(b)に示されるように、接着剤70を硬化する前に、接着剤70における両部材10、20との接触部以外の表層部すなわち未硬化の接着剤70において外部に露出する端面に、ディスペンス法などにより、飛散物透過防止部材71の材料を塗布する。そして、この塗布された材料をヒートガンなどで硬化して飛散物透過防止部材71を形成する。
その後は、上記各実施形態と同様に、接着剤硬化工程、ワイヤボンディング、樹脂モールドを行うことにより、本実施形態においても、上記図1に示したものと同様の半導体装置ができあがる。
このように、本第5実施形態においても、接着剤70における両部材10、20との接触部以外の表層部が、飛散物透過防止部材71にて被覆され、この状態で接着剤70の加熱硬化がなされるため、上記各実施形態と同様に、ヒートシンク10、セラミック基板20さらにはリード端子30への飛散物の付着を防止することができる。
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態は、飛散物透過防止部材71と接着剤70とを同じ材料により形成する場合の飛散物透過防止部材形成工程を要部とする製造方法を提供するものである。なお、本製造方法の飛散物透過防止部材形成工程は、そのワークの外形は上記図5に示されるものと同様であるため、上記図5を参照して説明することとする。
本製造方法の飛散物透過防止部材形成工程では、まず、上記図5(a)に示されるように、未硬化の接着剤70を介して、ヒートシンク10とセラミック基板20とを組み付ける。
次に、この未硬化の接着剤70の端面すなわち接着剤70において外部に露出する表層部のみを硬化させる。これは、硬化槽における温度や時間を制御して表層部のみ硬化させたり、ヒートガンにて温風を吹き付けることなどにより実現可能である。それにより、上記図5(b)に示されるように、当該硬化された表層部が飛散物透過防止部材71として形成される。
その後は、上記各実施形態と同様に、接着剤硬化工程、ワイヤボンディング、樹脂モールドを行うことにより、本実施形態においても、上記図1に示したものと同様の半導体装置ができあがる。ただし、この場合、できあがった半導体装置において、接着剤70と飛散物透過防止部材71とが同一材料よりなることは言うまでもない。
このように、本第6実施形態においては、接着剤70における両部材10、20との接触部以外の表層部が、接着剤70における先に硬化した部分としての飛散物透過防止部材71によって被覆された状態で、接着剤70の加熱硬化がなされる。
そのため、この飛散物透過防止部材71が、その内部から発生する低分子シロキサンなどの防止膜となって機能する。ここで、飛散物透過防止部材71の硬化時に発生する低分子シロキサンガスは微量なため、これによる付着の影響は実質的に問題なく、その後の工程への影響を最小限にとどめることができる。
こうして、本第6実施形態の製造方法によっても、上記した各実施形態と同様に、ヒートシンク10、セラミック基板20さらにはリード端子30への飛散物の付着を防止することができる。
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態では、上記第6実施形態と同様に、飛散物透過防止部材71と接着剤70とを同じ材料により形成する場合の飛散物透過防止部材形成工程を要部とする製造方法を提供するものであるが、上記第6実施形態を一部変形したものである。
すなわち、上記第6実施形態では、ヒートシンク10とセラミック基板20とを組み付けた後に、接着剤70において外部に露出する表層部のみを硬化させて飛散物透過防止部材71を形成したが、本実施形態では、ヒートシンク10とセラミック基板20とを組み付ける前に、接着剤70において外部に露出する表層部のみを硬化させて飛散物透過防止部材71を形成する。本実施形態の製造方法によっても、最終的には、上記図5(b)に示される接合状態となるため、この図5(b)を参照して説明することとする。
具体的には、ヒートシンク10の一面11およびセラミック基板20の他面22いずれか一方に、接着剤70を塗布などにより配置する。ここでは、セラミック基板20の他面22に接着剤70を配置するものとする。
その後、ヒートシンク10とセラミック基板20とを組み付けたときに接着剤70において外部に露出する表層部のみを硬化させる。この表層部は、上記図5(b)からもわかるように、接着剤70の端面であり、この端面に対してヒートガンなどで選択的に熱を加え、当該端面の表層部を硬化させる。
それにより、セラミック基板20の他面22において、未硬化の接着剤70の外周に、当該接着剤70と同じ材料によりなる環状の飛散物透過防止部材71が形成される。このときの平面形状は、上記図4と同様のものとなる。
その後は、これら未硬化の接着剤70および飛散物透過防止部材71を介して、セラミック基板20の他面22とヒートシンク10の一面11とを対向させて、これら両部材10、20を重ね合わせる。こうして、ヒートシンク10とセラミック基板20とを組み付けた後、未硬化の接着剤70を硬化させれば、本実施形態においても、上記図5(b)に示されるような接合状態が形成される。
このように、本実施形態によっても、接着剤70における両部材10、20との接触部以外の表層部が、飛散物透過防止部材71にて被覆され、この状態で接着剤70の加熱硬化がなされるため、上記各実施形態と同様に、ヒートシンク10、セラミック基板20さらにはリード端子30への飛散物の付着を防止することができる。
(他の実施形態)
なお、上記した各実施形態において、飛散物透過防止部材71として、当該飛散物透過防止部材71の内部に接着剤70から発生する飛散物をトラップする多孔質剤が混合されたものを用いてもよい。
このような多孔質剤としては、ゼオライトなどが挙げられる。具体的には、このようなゼオライトを細粒化して飛散物透過防止部材71を構成するエポキシ樹脂やシリコーン樹脂に混合し、これを上記各実施形態における飛散物透過防止部材71の材料として用いればよい。
この場合、できあがった飛散物透過防止部材71の内部または表面に、多孔質剤が配置された状態となる。そのため、もし、低分子シロキサンが飛散物透過防止部材71を通り抜けようとしても、この多孔質剤の細孔内にトラップされ、飛散物透過防止部材71の外部に放出されるのを防止できる。
また、上記した各実施形態において、飛散物透過防止部材71の材料としては、上記したエポキシ樹脂など以外にも、低分子シロキサンガスと反応する材料を用いてもよい。それによれば、飛散物を透過させない機能と合わせて、飛散物と反応することにより、さらなる透過防止効果が期待できる。
また、上記図1に示される半導体装置100の製造方法において、ヒートシンク10とセラミック基板20とを接着剤70を介して組み付けるにあたって、接着剤70として、当該接着剤70を構成するシリコーン樹脂などの内部に上記多孔質剤が混合されたものを用いてもよい。
この場合、この多孔質剤が混合された接着剤70を介して、ヒートシンク10とセラミック基板20とを組み付けた後、接着剤70を加熱硬化して、両部材10、20を接着する。その後は、上記の実施形態同様の工程を進めていくことで、上記同様の半導体装置を製造することができる。
そして、この場合、接着剤70の内部に発生するシロキサンなどの飛散物は、接着剤70の内部にて多孔質剤の細孔にトラップされるため、上記した飛散物透過防止部材71を用いなくても、当該飛散物が外部へ飛散するのを防止することができる。
また、上記の各実施形態に示した製造方法は、第1の部材と第2の部材とが上記接着剤を介して組み付けられてなる接合構造体の製造方法に適用可能なものであり、第1の部材、第2の部材はそれぞれ、ヒートシンク10、セラミック基板20に限定されるものでないことはもちろんである。
たとえば、第1の部材と第2の部材の組み合わせとしては、配線基板とリードフレーム、配線基板同士、半導体素子と配線基板、半導体素子とリードフレーム、半導体素子とヒートシンク、配線基板とケースなど、上記接着剤70により組み付けできるものであれば、種々の組み合わせが可能である。
また、上記の各実施形態における接着剤70としては、シリコーン樹脂よりなる接着剤以外にも、第1の部材と第2の部材との間に介在して当該両部材の間に作用する応力を弾性的に緩和するとともに、加熱より硬化し当該加熱により空中に飛散物を発生するものであればよく、たとえばシリコーン樹脂以外の樹脂よりなる接着剤でもよい。
(a)は、本発明の第1実施形態に係る接合構造体としての半導体装置の概略断面図であり、(b)は(a)における接着剤の拡大図である。 上記第1実施形態に係る接合構造体の製造方法のうち飛散物透過防止部材形成工程を示す工程図である。 本発明の第3実施形態に係る接合構造体の製造方法のうち飛散物透過防止部材形成工程を示す工程図である。 本発明の第4実施形態に係る接合構造体の製造方法のうち飛散物透過防止部材形成工程を示す工程図である。 本発明の第5実施形態に係る接合構造体の製造方法のうち飛散物透過防止部材形成工程を示す工程図である。
符号の説明
10…第1の部材としてのヒートシンク、
20…第2の部材としてのセラミック基板、
70…接着剤、71…飛散物透過防止部材。

Claims (4)

  1. 第1の部材(10)と第2の部材(20)とが、これら両部材(10、20)の間に作用する応力を弾性的に緩和する樹脂よりなる接着剤(70)を介して組み付けられてなり、前記接着剤(70)は加熱により硬化するとともに当該加熱により空中に飛散物を発生するものである接合構造体を製造する製造方法において、
    前記接着剤(70)のうち、前記両部材(10、20)を組み付けたときに外部に露出する表層部のみを硬化させることにより、当該硬化された表層部によって飛散物透過防止部材(71)を形成する飛散物透過防止部材形成工程と、
    しかる後、前記接着剤(70)のうち、前記飛散物透過防止部材(71)の内側に位置する未硬化の接着剤を前記飛散物透過防止部材(71)及び前記両部材(10、20)により封止された状態で硬化する接着剤硬化工程とを備えており、
    前記飛散物透過防止部材形成工程では、前記両部材(10、20)のうちいずれか一方の部材に未硬化の前記接着剤(70)を配置し、
    前記未硬化の接着剤(70)のうち、前記両部材(10、20)を組み付けたときに外部に露出する表層部のみを硬化させることにより、前記飛散物透過防止部材(71)を形成し、
    その後に、前記未硬化の接着剤(70)を介して、前記両部材(10、20)のうち他方の部材を前記一方の部材に組み付け、
    しかる後、前記接着剤硬化工程を実行することを特徴とする接合構造体の製造方法。
  2. 前記接着剤(70)に、前記飛散物をトラップする多孔質剤が混合されていることを特徴とする請求項1に記載の接合構造体の製造方法。
  3. 前記多孔質剤はゼオライトであることを特徴とする請求項に記載の接合構造体の製造方法。
  4. 前記接着剤(70)は、シロキサン結合を有する材料より構成されたものであることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の接合構造体の製造方法。
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