JP4830449B2 - 圧電アクチュエータの位置制御駆動装置、および電子機器 - Google Patents
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Description
ここで、電磁モータの駆動における被駆動体(カメラレンズ)の位置制御(合焦)に関しては、被駆動体が目標位置に達する前に、PWM(Pulse Width Modulation)制御によりモータ回転速度を低速にし、慣性力を小さくして被駆動体を目標位置に停止させる方法が知られている(例えば、特許文献1)。
このような速度制御(スピードコントロール)による位置制御方法では、被駆動体を目標位置に正確に停止させるために、モータ速度を緻密にフィードバックして位置制御する必要がある。
圧電アクチュエータの駆動制御の場合、メカ体である圧電素子を構成に含み、オープンループによる位置制御ができないことから、被駆動体の速度をフィードバックし、この速度制御ループと、位置制御ループとを用いて駆動制御することが考えられる。
また、このような加減速の過程で、圧電アクチュエータの出力が規定の出力よりも小さいときがあり、所定の駆動効率を発揮できないため、被駆動体を送る指令の出力後、目標位置に被駆動体を停止させるまでの時間(以下、目標応答時間という)が余分に掛かる。
さらに、圧電アクチュエータの駆動特性を図17に示したように、駆動周波数を掃引した際の移動量(ロータ回転量)および圧電素子における電流値の変化が線形ではないため、圧電アクチュエータの速度制御自体が非常に困難である。
そして、特許文献1のようなPWM制御による速度制御の場合、駆動信号よりも十分に高い周波数での基準パルス信号が必要となるので、回路電流の増加を招くとともに、回路構成の難易度が高い。
また、速度制御を行わずに被駆動体の加減速を抑制したので、振動体と被駆動体との間のすべり距離を小さくでき、磨耗を低減できる。
ここで、継続送り工程では、駆動信号を継続的にオンとして被駆動体を略一定の出力で駆動したので、速度制御をした場合と比べて、振動体と被駆動体との間のすべり距離を極力小さくできることになり、磨耗を格段に低減できる。これにより、磨耗による圧電アクチュエータの駆動効率の低下等を防止できる。加えて、圧電アクチュエータの出力を略一定にできるので、所定の駆動効率を発揮でき、オンの継続により被駆動体の移動速度も緩やかに増加するので、目標応答時間を短縮できる。
このような微動送り工程でも、駆動信号のオンオフによる制御を実施するので、低速にして位置出しする場合などと比べて、磨耗の点で有利であるとともに、規定のオン出力により所定の駆動性能を発揮できるので、目標応答時間を短くできる。
また、オン時に規定の出力で圧電アクチュエータを駆動して被駆動体を送った後のオフ時、被駆動体は振動体との摩擦により速度低下して停止に向かうが、被駆動体が制御位置に達すると、到達を判定する位置が次の制御位置に移るので、再び、オン出力により被駆動体が微動送りされる。このような微動送りを制御位置の数に応じて繰り返し、被駆動体を目標位置に徐々に近付けることができるので、振動体および被駆動体の発振を防止できるとともに、たとえ発振が生じた場合であっても、発振が収束するまでの時間を短縮できる。これにより、被駆動体を目標位置に停止させることが容易となり、位置精度を高くできる。
そして、オフ時にも振動体および被駆動体は慣性により駆動するので、速度制御を始終実施する場合などと比べて、低電力化できる。
なお、目標位置を入れずに、位置出し開始位置と目標位置との間で複数の制御位置を設定しても勿論よい。
さらに、位置出し開始位置と制御位置とは、圧電アクチュエータ駆動のオンオフを行うという点では、同様に構成できるので、回路やソフトウェアの構成を簡略にできる。
また、制御位置が設定される数は、(位置出し開始位置から目標位置までの距離/被駆動体の位置を検出するセンサの最小分解能)の値以下とすることが好ましく、各制御位置の値は、センサの最小分解能で離散的な数値で量子化することが好ましい。
この発明によれば、単相の駆動信号の供給により圧電素子を複数の振動モードで駆動するので、多相の駆動信号を用いる場合と比べて、構成を簡略にできる。
例えば、矩形板状とした振動体が縦一次振動と屈曲二次振動とを励振する場合、これら縦振動と屈曲振動との位相差により、振動体の一部における楕円運動を実現し得る単相の駆動信号の印加により、簡略な構成で、ロータなどの被駆動体を高効率で駆動できる。
すなわち、磨耗を格段に低減できるから、長寿命な製品を提供できる。また、圧電アクチュエータの交換などの回数を減らし、メンテナンス性を向上させることができる。
さらに、位置精度が高く、また、速度制御する構成を不要にできる簡略な構成であるから、低コスト化できる。そして、駆動効率の高さにより、目標応答時間の高速化を実現できる。
なお、電子機器としては、プリンタ、カメラ、携帯電話、携帯情報端末、可動玩具、顕微鏡、望遠鏡などを例示できる。
加えて、圧電アクチュエータにおける利点、すなわち、磁気の影響を受けない、小型薄型化に有利、高トルクなどを実現できる。
この制御プログラムでは、前述の位置制御駆動装置に組み込まれたコンピュータを、制御手段、位置制御手段、位置検出手段などとして機能させればよい。
このように構成すれば、前述の位置制御駆動装置と同様の作用効果を奏することができる。
ここで、この制御プログラムは、ネットワークなどを介してコンピュータに組み込んでもよいし、当該プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を介して組み込んでもよい。
このような記録媒体やインターネット等の通信手段で提供される制御プログラム等を時計や携帯機器、プリンタ等に組み込めば、プログラムの変更のみで前述の作用効果を実現でき、工場出荷時あるいは利用者が希望する制御プログラムを選択して組み込むこともできる。この場合、プログラムの変更のみで制御方式の異なる各種の電子機器を製造できるため、部品の共通化等が図れ、モデル展開時の製造コストを大幅に低減できる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[1.全体概略構成]
図1は、本実施形態に係るプリンタ1の概略図である。プリンタ1は、印刷用紙を収容する引き出し式の用紙トレイ2と、印刷された紙PPを受け取る出力トレイ3と、筐体4内部に設置され、紙送り手段を構成するローラ5とを備える。
ローラ5は、用紙トレイ2内の紙を図示しない印刷駆動部に送るものである。
ローラ5を駆動する駆動機構は、圧電アクチュエータ(超音波モータ)20と、この圧電アクチュエータ20によって回転駆動される被駆動体としてのロータ30と、ロータ30の回転を減速しつつ伝達する減速輪列40とを備えて構成されている。
減速輪列40は、ロータ30と同軸に配置されてロータ30と一体的に回転する歯車41と、この歯車41に噛合し、かつ、ローラ5の回転軸に固定された歯車42とで構成されている。
なお、圧電アクチュエータ20と、ロータ30および歯車41は、図2,3に示すように、圧電アクチュエータユニット10としてユニット化されている。
圧電アクチュエータユニット10は、筐体4のフレーム等に固定される支持プレート11と、支持プレート11に固定された圧電アクチュエータ20と、支持プレート11に回転自在に取り付けられたロータ30および歯車41とを備えて構成されている。
なお、歯車41の回転数は、歯車41の上方に配置された位置センサ(ロータリエンコーダ)15によって検出可能に構成されている。位置センサ15の最小分解能は、本実施形態では、0.25Countである(1Count=720dpi(dot per inch・インチ当りドット数)である場合)。
圧電アクチュエータ20は、図2、図3に示すように、略矩形板状の補強板21と、補強板21の両面に接着された圧電素子22とからなる振動体20Aを備えている。
補強板21の長手方向略中央には、両側に突出する腕部23が形成されており、これらの各腕部23がビス24によって前記スペーサ14に固定されている。なお、腕部23を備える補強板21は、導電性金属で構成されており、腕部23は圧電素子22に駆動信号を印加するための電極としても利用されている。
補強板21の長手方向一方の端部、具体的にはロータ30に対向する端部には、補強板21の長手方向に沿って突出する突起25が形成され、突起25は、ロータ30の側面に当接されている。この突起25は、ロータ30の外周面に対して所定の力で当接するように、ロータ30との相対位置が設定された状態で、ばねなどの任意の付勢手段によって付勢されており、突起25とロータ30側面との間に適切な摩擦力が働くことで、振動体20Aの振動が効率良くロータ30に伝達されるようになっている。
なお、振動体20Aの突起25の側面および、ロータ30の側面は、摩擦力を一定とするため鏡面仕上げが施されている。
なお、圧電素子22の補強板21側の面には、その全面に1つの電極が形成され、この電極に接触する補強板21および腕部23を介して位置制御駆動装置50(図4)に電気的に接続されている(図4中、N参照)。
また、圧電素子22の表面側の面には、図3に示すように、5つに分割された電極が形成されている。すなわち、圧電素子22の表面側の電極は、圧電素子22の幅方向にほぼ三等分され、その中央の電極によって駆動電極221が形成されている。また、駆動電極221の両側の電極は、圧電素子22の長手方向にほぼ二等分され、圧電素子の対角上でそれぞれ対となる駆動電極222および駆動電極223が形成されている。
これらの駆動電極221,222,223はそれぞれリード線などによって位置制御駆動装置50に接続され(図4中、P1〜P3参照)、補強板21(図4中、N参照)との間で電圧が印加される。なお、位置制御駆動装置50における電源は、駆動電極221と補強板21との間の電圧印加用と、駆動電極222と補強板21との間の電圧印加用と、駆動電極223と補強板21との間の電圧印加用との3つ、設けられている。
ここで、必要に応じて圧電素子22に設けられた駆動電極222,223を使い分けることにより、ロータ30を両方向に回転駆動することができる。
すなわち、駆動電極221と駆動電極222とを電圧印加の対象として圧電素子22に所定の周波数で駆動信号を供給すると、圧電素子22の伸縮により振動体20Aは縦振動および屈曲振動を励振し、これら縦振動と屈曲振動との位相差により、振動体20Aの突起25が圧電素子22の長手方向の中心線に対して傾斜した略楕円軌跡E(図3)を描く。この軌跡Eの一部で突起25がロータ30を押圧することによりロータ30が順方向(図3中、矢印方向)に回転する。一方、駆動電極222の代わりに駆動電極223を電圧印加の対象として圧電素子22に駆動信号を供給した場合には、駆動電極222と駆動電極223とは、圧電素子22の長手方向の中心線を軸として線対称の位置関係にあるから、縦振動に対する交差方向が駆動電極222に電圧印加した場合とは線対称となる屈曲振動が誘発される。したがって、振動体20Aの突起25の軌跡は、駆動電極222に電圧印加した場合とは線対称に傾斜する略楕円軌跡となり、ロータ30は反対方向に回転駆動される。
このようなロータ30の回転により、ロータ30と一体の歯車41も回転し、歯車41の回転に伴い歯車42が回転し、ローラ5が駆動する。そして、ローラ5の回転によって紙が送られる。
なお、振動体22Aの振動状態を示す検出信号は、ロータ30の正転時には、駆動信号が印加されない駆動電極223を介して検出され、ロータ30の逆転時には、駆動信号が印加されない駆動電極222を介して検出される。
また、位置センサ15による歯車41の回転数の検出を通じて、ロータ30の回転数が検出される。
次に、圧電アクチュエータ20の位置制御駆動装置50の構成を図4に基いて説明する。
図4において、位置制御駆動装置50は、電圧制御発振器(VCO)51、パルスコントロール回路52、ゲートドライバ53、電源54、スイッチ回路55、バンドパスフィルタ(BPF)56、信号増幅器(AMP)57、位相差検出手段60、制御手段としてのコントローラ65、位置センサ15、位置検出回路66、位置指令値源67、および位置制御手段である位置制御器68とを備える。
ところで、駆動信号の周波数(駆動周波数)については、振動体20Aにおける縦振動の共振点と屈曲振動の共振点などを考慮して決められる。
図5(A)に、振動体20Aにおける駆動周波数とインピーダンスとの関係を示し、図5(B)には、振動体20Aにおける駆動周波数と縦振動の振幅および屈曲振動の振幅との関係を示した。
図5(A)に示すように、駆動周波数に対してインピーダンスが極小であって振幅が最大となる共振点が二点現れ、これらのうち周波数の低い方が縦振動の共振点、高い方が屈曲振動の共振点となる。
すなわち、縦振動の縦共振周波数fr1と屈曲振動の屈曲共振周波数fr2との間で振動体20Aを駆動すると、縦振動および屈曲振動双方の振幅が確保され、圧電アクチュエータ20は高効率で駆動する。なお、縦共振周波数fr1と屈曲共振周波数fr2とを互いに近接させることで、縦振動および屈曲振動の振幅がより大きくなる駆動周波数を設定することができる。
そして、パルスコントロール回路52から第2ゲートドライバ53Bに入力される駆動信号はインバータ(NOT回路)IVを経由し、第1ゲートドライバ53Aに入力される駆動信号とは反転した信号となっている。
電源54は、本実施形態では、ロータ30の正逆回転時に使用される第1電源541と、ロータ30の正回転時のみ使用される第2電源542と、ロータ30の逆回転時のみ使用される第3電源543とからなり、これらの第1、第2、第3電源541,542,543により、圧電アクチュエータ20に対して電源VDDおよびVSS間の電位差の電圧、または電源VDDおよびGND間の電位差の電源電圧が印加される。
なお、第2ゲートドライバ53Bは、正逆回転回路522に接続されており、ロータ30の正回転時には、スイッチ552,553(図4中、P1)およびスイッチ555,556(P2)のみを駆動する。
すなわち、ロータ30の正回転時には、スイッチ551,554を駆動する第1ゲートドライバ53Aと、スイッチ552,553(P1)およびスイッチ555,556(P2)を駆動する第2ゲートドライバ53Bとは、互いに反転した駆動信号で動作するため、同じPチャネルMOS−FETのスイッチ551,552は、一方のスイッチ551がオンされている場合には他方のスイッチ552はオフされる。なお、同じPチャネルMOS−FETのスイッチ551,555についても同様である。
また、同様に、NチャネルMOS−FETのスイッチ553,554は、一方のスイッチ553がオンされている場合には他方のスイッチ554はオフされる(NチャネルMOS−FETのスイッチ556,554についても同様)。
また、直列に接続されたスイッチ551,554は、一方がオンの場合、他方がオフされる。同様に、直列に接続されたスイッチ552,553、あるいは、スイッチ555,556も、一方がオンの場合、他方がオフされる。
これらのスイッチ551〜554(あるいはスイッチ551,555,556,554)は、第1ゲートドライバ53A、第2ゲートドライバ53Bにより、圧電素子22に対してブリッジ接続され、ブリッジの対角に位置する一対のスイッチ551,553(またはスイッチ551,556)で構成されるスイッチ回路と、他の一対のスイッチ552,554(またはスイッチ555,554)で構成されるスイッチ回路とは、交互にオンオフ制御される。これにより、電源54によって印加される所定の電源電圧が交番する矩形波電圧に変換され、圧電アクチュエータ20に印加される。すなわち、第1電源541および第2電源542により、駆動電極221,222と補強板21(図2)との間で圧電素子22に交流電圧が印加され、ロータ30は順方向に回転する。
なお、検出信号は、ロータ30の正転逆転に応じて、駆動信号が供給されない駆動電極222、駆動電極223のいずれかを通じて(図4のP2,P3参照)検出される。ここで、検出信号は、腕部23(図4中、N)における電位を基準信号として、この基準信号に対する駆動電極222の電位の差、あるいは基準信号に対する駆動電極223の電位の差、つまりは、腕部23に対する駆動電極222,223の差動信号により検出される。
バンドパスフィルタ56を通過した検出信号は、信号増幅器57で増幅される。
位相制御器61は、検出信号の2周期ごとに、位相シフト器62に制御信号を出力し、これに応じて位相シフト器62は、予め設定された最適位相差分、検出信号の位相をシフトする。
以上の位相差検出手段60によれば、位相シフト器62でシフトされた検出信号の位相と駆動信号の位相との差分、すなわち最適位相差との偏差(大小)がローパスフィルタ64を介してコントローラ65に出力される。
コントローラ65は、入力された最適位相差との偏差を解消するように、電圧制御発振器51に電圧信号を出力する。
位置指令値源67には、プリンタ1外部から入力された印刷指示情報における紙送り量が、図示しない印刷駆動制御部を介して与えられ、位置指令値源67は、その紙送り量を指令値として位置制御器68に出力する。なお、図示しない印刷駆動制御部において、印刷指示情報における紙送り量は位置センサ15の出力値(Count)に変換される。
位置制御器68は、位置検出回路66で検出された位置Cと、位置指令値源67から出力された位置指令値Rとに基いて、コントローラ65に対してオンオフの操作信号(操作量U)を出力するものである。この位置制御器68は、位置センサ15および位置検出回路66を通じて入力されるロータ30の位置Cを指令値Rから差し引く第1減算器68Aと、位置制御時に順次使用される9つの制御器680〜688と、制御器680〜688の出力を積算する加算器68Bと、上限1、下限−1で出力を制限するリミッタ68Cと、操作量増幅器68Dとを有する。
なお、制御器681〜688もこの制御器680と略同様に構成され、それぞれ、制御量ゲインG1〜G8に応じた制御量増幅器681H・・・688Hの出力Op1〜Op8を加算器68Bに出力する。
次に、圧電アクチュエータ20の位置制御駆動装置50による作用について、前掲の図6と、図7および図8のフローチャートと、図9および図10に示すタイミングチャートとを参照して説明する。位置制御駆動装置50は、圧電アクチュエータ20の駆動によりロータ30を位置出しする位置制御器68に特徴を有するから、以下では、この位置制御器68を中心に説明する。
モード設定工程S01では、ロータ30の正回転によりローラ5を紙送り方向(正方向)だけでなく戻し方向(逆方向)にも回転させる正逆転モードか、紙送り方向(正方向)にだけ回転させる正回転モードかを図示しないメモリにセットする。本実施形態では、正逆転モードをセットする。
そして、設定値初期化工程S02では、制御器数K、微動送り量Nk、操作量ゲインGu、制御量ゲインGk、遅延時間Zk、制御周期Tをそれぞれ設定する。
微動送り量Nkは、図6にN0〜N8として図示したように、制御器680〜688が制御の際に参照する制御位置を決めるためのCount値である。位置制御器68は、これらのN0〜N8を基準に、ロータ30の位置出し制御を行う。
本実施形態では、N0は「9.0」、N1は「7.5」、N2は「6.0」、N3は「4.5」、N4は「3.0」、N5は「2.25」、N6は「1.5」、N7は「0.75」、N8は「0.0」に設定する。すなわち、N0〜N4までは1.5Count刻みで、N4〜N7までは0.75Count刻みで設定する(N8は「0.0」とする)。ここで、これらのN0〜N8は、指令値源67の指令値で示される目標位置に対する離れ量(距離)であり、指令値からN0〜N8をそれぞれマイナスして得られた各Count値が、位置制御器68において位置制御の基準とする各制御位置となる。
そして、指令値から、N0を差し引いた位置が、位置制御器68の位置制御における位置出し開始位置となるが、これについては後述する。
なお、制御器数Kは、(位置出し開始位置から指令値源67の指令値で示される目標位置までの距離)割ることの(位置センサ15の最小分解能)の値以下、とされており、また、N0〜N8の値は、位置センサ15の最小分解能で離散的な数値で量子化されている。
そして、制御量ゲインGkは、図6にG0〜G8として図示したように、増幅器680H・・・688Hにおける個別の制御量であるが、本実施形態では、いずれも「1.0」に設定する。
また、遅延時間Zkは、図6にZ0〜Z8として図示したように、制御器680〜688に個別に設定する処理待機時間(ミリ秒(ms)単位)であり、Z0〜Z8の順に、「2」、「2」、「2」、「2」、「1」、「1」、「1」、「1」、「0」をそれぞれ設定する。つまり、Z0〜Z4までは「2」を、Z5〜Z7までは「1」を、そして最後のZ8には「0」を設定する。
制御周期Tは、位置制御器68における位置制御を実施するためのものであり、本実施形態では、位置センサ15の検出周期よりも短い「0.1」msを設定する。
なお、これらの各種パラメータの値は、一例であり、駆動条件等に応じて任意の値を設定できる。
以上で初期設定工程P0を終了し、図8に示す位置制御工程P1に移行する。
位置制御工程P1では、始めに、制御器680〜688に順次処理を移していくためにインデックス変数であるKを「0」に初期化する(ステップS11)。
そして、次のステップS12では、クロック信号に基き、現在が制御周期Tで規定された制御タイミングであるか否かを判定し、制御周期Tが到来するまで(YES)、ループする。これにより、以下の処理は、制御周期Tごとに行われる。
次いで、インデックスKの値が最後の制御器688のインデックスである「8」ではないか否かを判定し(ステップS14)、この判定でYESの場合(最後のインデックスではない場合)、ステップS15に移行する。NOの場合は、目標位置停止判定工程P13に移行する(後述)。
ステップS15では、第2減算器680Aにより、N0の値から差分変数Aの値を差し引いた際の差分が「0」以下であるか否かを判定する。
ここで、当該差分が正の数であれば(NO)、ロータ30の位置がN0で決まる制御位置に未達であるため、位置制御器68の出力をオンにし(操作量Uは「1」)、ロータ30を駆動する(ステップS16)。この位置制御器68の出力オンを受けて、コントローラ65は、当該オンに応じた電圧信号を電圧制御発振器51に出力する。これにより、駆動信号はオン時の高周波数に設定され、圧電アクチュエータ20は高駆動効率で駆動する。
ここで、インデックスKが「0」の場合、すなわち、位置制御のはじめの段階では、指令値R入力前におけるロータ30の位置(図10、制御開始位置X0)から、目標位置までの距離がN0(「9.0」)となる位置出し開始位置X1までの間、図9のOp0に示すように、出力が継続的にオンとなる。このように、継続的にロータ30が駆動する間は、図9、図10に示したように、継続送り工程P11となっており、ロータ30が制御開始位置X0から位置出し開始位置X1に達するまでは、この継続送り工程P11を続行する。
なお、図9では、各制御器680〜688の各出力Op0〜Op8を示し、図10では、位置制御器68からコントローラ65に出力する操作信号の出力(0または1である操作量U)を示した。
駆動信号はオフの状態であり、このオフ時にも、制御周期Tが到来してステップS12でYESと判定されるごとに、ステップS14、S15を通るが、遅延回路680Eにより、遅延時間Z0が経過するまで処理待機の状態とする(ステップS18)。この待機中、慣性力は小さいものの、ロータ30が回転し、突起25との摩擦によって、直に、停止に向かう(図10におけるR0参照)。
そして、遅延時間Z0の経過により、ステップS18を終了し、インデックスKを1つカウントアップする(ステップS19)。
以上で継続送り工程P11(図10)を終了し、次の微動送り工程P12(図10)に移行する。
一方、ステップS15において、ロータ30がN1〜N7で決まる制御位置に達したら、操作量Uを「0」として位置制御器68の出力をオフとする(ステップS17)。
このような位置制御により、制御器681〜687から、図9に示すように、Op1〜Op7が順次出力され、これを受けて、図10に示すように、ロータ30の位置(Count)は微小な間隔で移動し、次第に目標位置X2に近づく。このような微動送りは、圧電アクチュエータ20の応答性の良さと、振動でロータ30を駆動する駆動原理によって、可能となる。
目標位置停止判定工程P13では、制御器688による制御を実施する。この制御器688において、遅延時間Z8は「0.0」であるため、本実施形態ではステップS21を通過し、モードを判定する(ステップS22)。なお、Z8の値は「0.0」に限らず、ロータ30の慣性が大きい場合にはZ8に設定する値を大きくすることにより、発振をより効果的に防止できる。
ここで、前述の初期設定工程P0において、正逆転モードが設定されているため、ステップS22からステップS23に進み、ステップS13で得られた差分変数AからN8(「0.0」)を差し引いた際の差分に基き、ロータ30を収束させて目標位置X2に位置付けるための微調整を行う。なお、モードが正転モードであり、ステップS22でNOと判定される場合については、後述する。
そして、これらステップS23,S25でロータ30の位置が目標位置X2に未達とも、超えたとも判定されなければ、操作量Uを「0」とし(ステップS27)、最終的に、目標位置X2にロータ30が停止したかを確認して(ステップS28)、位置制御を終了する。
図9および図10に示した例では、ステップS23でロータ30の位置が未達と判定されており、制御器688は図9に示すOp8を出力して、位置制御器68の出力はオンとなり、ロータ30は微動送りされる(図10のR8参照)。この後、目標位置停止判定工程P13において、ロータ30は目標位置X2に収束する。
この例では、図12に示すように、継続送り工程P11におけるロータ30速度が大きく、位置出し開始位置X1への到達により、一旦、駆動がオフされた後に収束する位置(図12のR0参照)が図10に示したR0の位置よりも目標位置X2に近くなっている。そして、インデックスKが「5」までの制御器680〜685による処理により、ロータ30の位置が、N6で決まる制御位置(指令値「60」引くことのN6「1.5」により、58.5Count)に既に達する。そのため、制御器686では、ステップS15でYESと判定されることなく、常にNOとなり、遅延時間Z6を待つことになる(ステップS18)。
すなわち、図11からわかるように、制御器686,688からは、オン出力(Op6,Op8)がされていない。
しかしながら、この図11、図12に示した例でも、図9、図10に示した例と同様に、継続送り工程P11と微動送り工程P12との組み合わせにより、ロータ30を目標位置X2に正確に停止させることができる。
本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)圧電アクチュエータ20の駆動により、ロータ30を指令値Rに応じて目標位置X2に移動、停止させるにあたり、位置制御器68によって、継続送り工程P11および微動送り工程P12を実施し、駆動信号のオンオフで位置制御する構成とした。このため、ロータ30の速度制御が不要となり、ロータ30の加減速を抑制できるので、振動体20Aの突起25とロータ30との間のすべり距離を小さくでき、磨耗を低減できる。また、速度制御ループなどが不要であるから、構成を簡略にできる。
特に、継続送り工程P11では、位置制御器68の出力、ひいては駆動信号を継続的にオンとしてロータ30を略一定の出力で駆動したので、速度制御をした場合と比べて、振動体20Aとロータ30との間のすべり距離を極力小さくできることになり、磨耗を格段に低減できる。これにより、磨耗による圧電アクチュエータ20の駆動効率の低下等を防止できる。加えて、圧電アクチュエータ20の出力を略一定にできるので、所定の駆動効率を発揮でき、オンの継続によりロータ30の移動速度も緩やかに増加するので、ロータ30を駆動して制御開始位置X0から目標位置X2まで紙送りするまでの目標応答時間を短縮できる。
そして、このように表面粗さがばらつくと、まるで紙の上を消しゴムでこするのと同様に、突起25およびロータ30が磨耗しやすい。
磨耗については下記式(1)で表される。この式において、磨耗量(mm2)はV、磨耗係数はk、突起25とロータ30との互いの押圧による荷重(N)はW、突起25とロータ30との間のすべり距離(mm2)はL、突起25(あるいはロータ30の側面)の材料硬さはHである。
すなわち、位置制御器68では、オンオフのみを実施し、速度制御を実施しないので、加減速をできるだけ少なくでき、磨耗を防止するうえで非常に有利な構成を実現できる。
また、オンオフの出力切り替えによる微動送りをN1〜N7で繰り返し、ロータ30を目標位置X2に徐々に近付けることができるので、振動体20Aおよびロータ30の発振を防止できるとともに、たとえ発振が生じた場合であっても、発振が収束するまでの時間を短縮できる。これにより、ロータ30を目標位置X2に停止させることが容易となり、位置精度を高くできる。
なお、オフ時にも振動体20Aおよびロータ30は慣性により駆動するので、速度制御を始終実施する場合などと比べて、低電力化できる。
そして、このようにしてロータ30の慣性力を小さくした後は、N5〜N7において位置間隔を狭め、0.75刻みとしたので、一層微小な送り量で微動送りすることが可能となり、発振を抑制して位置精度をより一層向上させることができる。
そのうえ、このように共振を利用する場合には駆動周波数の範囲が狭く、駆動周波数の
制御が困難であって、経時変化や個体差により共振点がばらつくことで駆動状態が不安定となりやすいため、位置制御駆動装置50によって位置出し性能が確保されることの効果は大きい。
さらに、位置制御駆動装置50は、簡略な構成でありながら、位置精度が高く、また、駆動効率の高さにより、目標応答時間の高速化を実現できる。
なお、プリンタ1における駆動機構の中でも、特に位置決め精度が要求される紙送りローラを駆動するために位置制御駆動装置50を用いた点は大きい。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同様の構成については、同一符号を付して、説明を省略もしくは簡略する。
前述の第1実施形態では、位置制御駆動装置50を構成する位置制御器68の動作モードは正逆転モードであったが、本実施形態では、位置制御器68の動作モードは正回転モードである。これに伴い、図6に示すコンパレータ680Bは、「1」または「0」を出力し、リミッタ680Cは、上限1、下限0で出力を制限する。
また、位置制御器68を構成する複数の制御器の出力が第1実施形態におけるものとは相違する。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
本実施形態では、図7で示した初期設定工程P0において、正転モードをメモリにセットする。また、制御量ゲインGkについて、G0〜G4は「1.0」に、G5は「0.75」、G6は「0.5」、G7およびG8は「0.25」に設定する。すなわち、ゲイン出力を途中から0.25ピッチで小さくしている。
すなわち、目標位置停止判定工程P33においても、ロータ30を収束させて目標位置X2に位置付けるための微調整を行うが、モードが正転モードであるため、前記第1実施形態のようにマイナス出力によりロータ30を逆転させることなく、ロータ30を正方向にのみ、微動送りする。
具体的に、ステップS22で行うモード判定において、正転モードであるためNOと判定され、次のステップS23において、ステップS13で得られた差分変数AからN8(「0.0」)を差し引いた際の差分が正、すなわちロータ30の位置が目標位置X2に未達であるとき(YES)、位置制御器68の出力をオンとする(ステップS24)。このステップS23でNOのときは、操作量Uを「0」とし(ステップS27)、目標位置X2にロータ30が達したか否かを判定する(ステップS38)。この判定をクリアすれば(YES)、位置制御を終了する。
ここで、前述のように、微動送り工程P12の途中から、制御器685〜688の出力が順次小さくなるので、より小さい位置間隔でロータ30を駆動でき、発振を極力小さくできる。このため、ロータ30を逆転させなくても、ロータ30を目標位置X2にほぼ正確に停止させることが可能となる。
(10)制御器680〜688のゲイン調整により、目標位置X2に近づくにつれて、ロータ30を一層微小な送り量で微動送りすることが可能となるから、目標位置X2への位置精度がより一層向上する。
このため、ロータ30を逆回転させることを不要にでき、構成を簡略化できる。
なお、本実施形態におけるG5〜G8のゲイン設定を第1実施形態でも採用することにより、第1実施形態における位置精度を更に向上できる。
前記各実施形態では、電子機器としてプリンタ1を例示したが、本実施形態では、本発明を電子時計70に適用した例を示す。
図16は、本実施形態に係る電子時計70を示す平面図である。電子時計70は、計時部としてのムーブメント71と、通常時刻を表示するための計時情報表示部としての文字板72、時針73、分針74、秒針75のほか、クロノグラフ時間を示すクロノグラフ秒針76A、クロノグラフ分針76Bを備えた腕時計(ウォッチ)である。電子時計70のケースには、りゅうず77と、りゅうず77を挟んでクロノグラフの操作ボタン78A,78Bとが設けられている。
減速輪列40の歯車42は、クロノグラフ秒針76Aの回転軸に固定されている。
また、圧電アクチュエータユニット10の支持プレート11は、電子時計70の地板に固定されている。
ここで、ロータ30の回転に伴い、歯車41、歯車42が順次回転し、クロノグラフ秒針76Aを駆動できるので、クロノグラフ秒針76Aの運針を正確なものにできる。
(12)位置制御駆動装置50による圧電アクチュエータ20の駆動により、クロノグラフ秒針76Aを正確に位置出しして駆動することが可能となり、信頼性を向上させることができる。
本発明は、前述の各実施形態に限定されるものではなく、各種の変形や改良が許容される。
前記各実施形態における位置制御駆動装置50は、位相差検出手段60を備えていたが、これを備えず、位相差フィードバック制御を実施しなくてもよい。
また、前記各実施形態では、共振周波数を基に駆動信号の周波数を設定していたが、これに限らず、共振を利用せずに駆動信号を決めてもよく、また、駆動周波数の制御によって圧電アクチュエータを駆動するほか、PWM制御や、電圧可変制御によって圧電アクチュエータを駆動することも検討できる。
そして、前記各実施形態では、9つの制御器680〜688により位置制御手段が構成されていたが、位置制御手段の構成はこれに限られない。ここで、制御位置の数も、前記各実施形態のように、N1〜N8の8つに限らず(位置出し開始位置X1を含めると9つ)、好ましくは、(位置出し開始位置から目標位置までの距離/被駆動体の位置を検出するセンサの最小分解能)の値以下で設定する。
ここで、各種の電子機器としては、時計機能を備えた電話、携帯電話、非接触ICカード、パソコン、携帯情報端末(PDA)、カメラ等が例示できる。
また、時計機能を備えないカメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、カメラ機能付き携帯電話等の電子機器にも適用可能である。これらカメラ機能を備えた電子機器に適用する場合には、レンズの合焦機構や、ズーム機構、絞り調整機構等の駆動に本発明の駆動手段を用いることができる。
さらに、計測機器のメータ指針の駆動機構や、自動車等のインパネ(instrumental panel)のメータ指針の駆動機構、圧電ブザー、プリンタのインクジェットヘッド、乗り物並びに人形などの可動玩具類の駆動機構および姿勢補正機構、超音波モータ等に本発明の位置制御駆動装置を用いてもよい。
なお、前記各実施形態では、圧電アクチュエータの適用例として腕時計を例示したが、これに限定されず、本発明は、懐中時計、置時計、掛け時計などにも適用できる。これらの各種時計において、例えばからくり人形などを駆動する機構としても利用できる。
なお、被駆動体としては、回転駆動されるロータ、直線駆動されるリニア駆動体などを採用でき、被駆動体の駆動方向は限定されない。
したがって、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
Claims (5)
- 圧電素子を有しこの圧電素子への駆動信号の供給により振動する振動体を備えて前記振動体の振動を被駆動体に伝達する圧電アクチュエータの駆動において、前記被駆動体を所定の目標位置に停止させる位置制御駆動装置であって、
前記駆動信号の供給を制御する制御手段と、
前記被駆動体の位置を検出する位置検出手段と、
前記制御手段の出力をオンオフで操作する操作信号を前記制御手段に入力する位置制御手段とを備え、
前記位置制御手段は、前記位置検出手段による検出に基いて前記被駆動体が前記目標位置手前の所定位置である位置出し開始位置に達したか否かを判定し、当該判定において前記被駆動体が前記位置出し開始位置に達したと判定されるまで、前記操作信号を継続的にオンとした後、前記操作信号をオフとし、
前記位置出し開始位置から前記目標位置までの間で設定された複数の制御位置それぞれについて、前記被駆動体が当該制御位置に達したか否かを判定し、当該判定において前記制御位置に達していないと判定された際は、前記操作信号をオンとし、当該判定において前記被駆動体が前記制御位置に達したと判定された際は、前記操作信号をオフとするとともに、当該制御位置の次の制御位置についての判定に移行する微動送りを実施し、
前記位置制御手段は、前記各制御位置にそれぞれ対応した複数の制御器により、構成されている
ことを特徴とする圧電アクチュエータの位置制御駆動装置。 - 請求項1に記載の圧電アクチュエータの位置制御駆動装置において、
前記振動体は、複数の振動モードで振動し、
前記駆動信号は、単相である
ことを特徴とする圧電アクチュエータの位置制御駆動装置。 - 圧電アクチュエータと、この圧電アクチュエータで駆動される被駆動体と、請求項1または請求項2に記載の圧電アクチュエータの位置制御駆動装置とを備える
ことを特徴とする電子機器。 - 請求項3の電子機器は、計時部と、前記計時部で計時された計時情報を表示する計時情報表示部とを備えた時計である
ことを特徴とする電子機器。 - 請求項3の電子機器は、紙送り手段を備えたプリンタであり、
前記被駆動体は、前記紙送り手段が有するローラである
ことを特徴とする電子機器。
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