JP4774827B2 - 圧電アクチュエータの駆動制御装置、電子機器および圧電アクチュエータの駆動制御方法 - Google Patents
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ところで、圧電アクチュエータは、周囲の温度や負荷等の影響で共振周波数が変動するため、圧電アクチュエータを駆動可能な駆動信号の周波数も、周囲温度や負荷等に応じて変動する。
そのため、例えば、駆動電圧と電流の位相などを検出し、その位相差が所定範囲内になるまで駆動周波数をスイープさせて駆動信号の周波数を最適な値に制御する位相差フィードバック制御を行う超音波モータ駆動方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、周波数フィードバック制御方式では、周波数安定度が低いため、周波数変動が生じてしまい最大効率で駆動することができないという問題があった。
従って、従来は圧電アクチュエータの利用が難しかった温度変化が激しい環境での使用や、大電力でかつ連続駆動の用途にも利用することが可能となり、特に駆動源も小型化が必要な小型の電子機器の駆動源として様々な用途に利用することができる。
また、位相差および周波数の一方の変動量が所定範囲から外れた場合には、即座にフィードバック制御モードに移行する。このため、周波数固定制御モード時に温度変化等が生じても即座にフォードバック制御に戻してその状況に応じた周波数に調整でき、この点でも圧電アクチュエータを安定して駆動することができる。
その上、ローパスフィルタはフィードバック制御モード時のみ作動されるため、制御手段は、周波数固定制御モード時には位相比較器から直接出力される位相差に基づいてフォードバック制御モードへの移行を制御でき、変動があった場合に迅速にフィードバック制御モードに移行することができる。
この際、駆動信号の電圧値を変更しても、温度変化等によって駆動信号の周波数が変化する場合には、圧電素子のインピーダンスも変化して流れる電流値が変化するため、目標となる駆動速度に調整することが難しい。
これに対し、本発明では、圧電アクチュエータ(圧電素子)を流れる電流値を検出し、目標駆動速度に応じて設定される電流指令値と比較しながら駆動信号の電圧値を制御しているので、単に駆動信号の電圧値を制御する場合に比べて、安定してかつ精度の高い駆動速度制御を行うことができる。
例えば、駆動制御装置は、前記圧電素子に供給する駆動信号の電圧を制御して駆動対象の駆動速度を調整する電圧コントローラと、圧電アクチュエータを流れる電流値を検出する電流検出器と、圧電アクチュエータで駆動される駆動対象の駆動速度を検出する駆動速度検出器と、駆動対象の目標駆動速度に基づいて設定される駆動速度指令値および前記駆動速度検出器で検出された駆動速度に基づいて電流指令値を出力する駆動速度制御器と、駆動速度制御器から入力される電流指令値および前記電流検出器で検出された電流値に基づいて前記電圧コントローラを制御する電流制御器と、を備えることが好ましい。
このような構成によれば、電流値および駆動速度の両方を検出して駆動信号の電圧を制御できるので、より高精度な速度調整を実現できる。
この際、前記電子機器は、計時部と、該計時部で計時された計時情報を表示する計時情報表示部とを備えた時計であることが好ましい。
従って、例えば、時計の秒針のように連続して駆動が必要な駆動対象であっても、高精度に制御できる。このため、従来はステッピングモータが利用されていた時計の指針の駆動源として、圧電アクチュエータを利用することができ、時計の一層の薄型化が実現できると共に、圧電アクチュエータがステッピングモータよりも磁性の影響を受けにくいことから、時計の耐磁化を実現でき、携帯電話機などの磁気発生源の影響による時刻指示ずれを防止することができる。
このような駆動制御方法によって、前記圧電アクチュエータの駆動制御装置と同様の作用効果を奏することができる。
圧電アクチュエータの駆動制御装置の制御プログラムは、所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体と、この振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される当接部とを備えた圧電アクチュエータの駆動制御装置の制御プログラムであって、前記駆動制御装置に組み込まれたコンピュータを、前記圧電素子へ供給する駆動信号および前記振動体の振動状態を表す検出信号の位相差を検出する位相差検出手段と、前記検出信号の周波数を検出する周波数検出手段と、前記圧電素子に供給する駆動信号の周波数を制御する制御手段として機能させ、前記制御手段は、位相差検出手段で検出された前記位相差および周波数検出手段で検出された前記周波数に基づいて前記圧電素子に供給
する駆動信号の周波数を制御するフィードバック制御モードと、駆動信号の周波数を固定して制御する周波数固定制御モードとを選択して実行し、フィードバック制御モード時に、前記位相差の変動量が所定範囲内であり、かつ前記周波数の変動量が所定範囲内である状態が設定時間継続している場合には、周波数固定制御モードに切り替え、周波数固定制御モード時に、前記位相差の変動量または前記周波数の変動量の少なくとも一方が所定範囲外となった場合には、フィードバック制御モードに切り替えるように機能させればよい。
このように構成すれば、駆動制御装置に組み込まれたコンピュータを前記各手段として機能させることで、前述の駆動制御装置と同様の作用効果を奏することができる。
ここで、前記制御プログラムは、ネットワークなどを介してコンピュータに組み込んでもよいし、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を介して組み込んでもよい。
まず、電子機器の実施形態として、圧電アクチュエータによって駆動されるクロノグラフ秒針を備えた電子時計を例示する。
図1は、本実施形態にかかる電子時計1を示す平面図である。電子時計1は、通常時刻を表示するための時針2、分針3、秒針4のほか、クロノグラフ時間を示す秒クロノグラフ針(秒CG針)5、分クロノグラフ針(分CG針)6を備えている。
秒クロノグラフ針5を駆動する駆動機構は、圧電アクチュエータ20と、この圧電アクチュエータ20によって回転駆動される駆動対象(被駆動体)としてのロータ30と、ロータ30の回転を減速しつつ伝達する減速輪列40とを備えて構成されている。
減速輪列40は、ロータ30と同軸に配置されてロータ30と一体的に回転する歯車41と、この歯車41に噛合し、かつ、秒クロノグラフ針5の回転軸に固定された歯車42とで構成されている。
なお、圧電アクチュエータ20と、ロータ30および歯車41は、図2,3に示すように、圧電アクチュエータユニット10としてユニット化されている。
圧電アクチュエータユニット10は、電子時計1の地板などに固定される支持プレート11と、支持プレート11に固定された圧電アクチュエータ20と、支持プレート11に回転自在に取り付けられたロータ30および歯車41とを備えて構成されている。
圧電アクチュエータ20は、図2,3に示すように、略矩形板状の補強板21と、補強板21の両面に接着された圧電素子22とからなる振動体20Aを備えている。
補強板21の長手方向略中央には、両側に突出する腕部23が形成されており、これらの各腕部23がビス24によって前記スペーサ14に固定されている。なお、腕部23を備える補強板21は、導電性金属で構成されており、前記腕部23は圧電素子22に駆動信号を印加するための電極としても利用されている。
補強板21の長手方向一方の端部、具体的にはロータ30に対向する端部には、補強板21の長手方向に沿って突出する突起25が形成されている。突起25は、ロータ30の側面に当接されており、この突起25により駆動対象に当接する当接部が構成されている。
なお、圧電素子22の補強板21側の面には、その全面に1つの電極が形成され、この電極に接触する補強板21および腕部23を介して図示しない駆動制御装置に電気的に接続されている。
また、圧電素子22の表面側の面には、図3にも示すように、5つに分割された電極が形成されている。すなわち、圧電素子22の表面側の電極は、圧電素子22の幅方向にほぼ三等分され、その中央の電極によって駆動電極221が形成されている。また、駆動電極221の両側の電極は、圧電素子22の長手方向にほぼ二等分され、圧電素子の対角上でそれぞれ対となる駆動電極222および駆動電極223が形成されている。
これらの駆動電極221,222,223もそれぞれリード線などによって図示しない駆動制御装置に接続されている。
すなわち、駆動電極221と駆動電極222とを電圧印加の対象として圧電素子22に電圧を印加すると、振動体20Aは縦振動および屈曲振動を励振し、振動体20Aの突起25が圧電素子22の長手方向の中心線に対して傾斜した楕円軌跡を描く。そして、突起25の押圧により、ロータ30は順方向に回転する。一方、駆動電極222の代わりに駆動電極223を電圧印加の対象とした場合には、駆動電極222と駆動電極223とは、圧電素子22の長手方向の中心線を軸として線対称の位置関係にあるから、駆動電極223に電圧を印加することにより、縦振動に対する交差方向が駆動電極222に電圧印加した場合とは線対称となる屈曲振動が誘発される。したがって、振動体20Aの突起25の軌跡は、駆動電極222に電圧印加した場合とは線対称に傾斜する楕円軌跡となり、ロータ30は反対方向に回転駆動される。
但し、圧電アクチュエータ20およびロータ30は共に支持プレート11に取り付けられており、衝撃が加わった際にも圧電アクチュエータ20およびロータ30が相対的にずれてしまうことは殆ど無いため、溝31を設けずにロータ30の外周面をフラットに形成し、その外周面に突起25を当接させてもよい。
ロータ30が回転駆動すると、ロータ30と一体の歯車41も回転し、歯車41の回転に伴い歯車42が回転し、秒クロノグラフ針5を作動する。
次に、圧電アクチュエータ20の駆動制御装置50の構成を図4に基づいて説明する。
図4において、駆動制御装置50は、電圧制御発振器51、デットタイム生成回路52、ゲートドライバ53、電源54、スイッチ回路55、バンドパスフィルタ(BPF)56、信号増幅器(AMP)57、コンパレータ(CMP)58、位相シフト器59、位相比較器60、ローパスフィルタ(LPF)61、周波数電圧変換器62、制御手段である制御器63を備えて構成されている。
デットタイム生成回路52は、後述するスイッチ回路55の切替タイミングを制御して貫通電流を抑制するためのデットタイムを生成し、このデットタイムが追加された駆動信号を出力する回路である。
そして、デットタイム生成回路52からゲートドライバ53Bに入力される駆動信号はインバータ(NOTゲート)64を経由するため、ゲートドライバ53Aに入力される駆動信号が反転した信号とされている。
電源54は、圧電アクチュエータ20に対して電圧VDDおよびVSS間の電位差の電圧または電圧VDDおよびGND間の電位差の電源電圧を印加するものである。
すなわち、スイッチ55A,55Cを駆動するゲートドライバ53Aと、スイッチ55B,55Cを駆動するゲートドライバ53Bとは、互いに反転した駆動信号で動作するため、同じPチャネルMOS−FETのスイッチ55A,55Bは、一方のスイッチ55Aがオンされている場合には他方のスイッチ55Bはオフされる。
同様に、NチャネルMOS−FETのスイッチ55C,55Dは、一方のスイッチ55Cがオンされている場合には他方のスイッチ55Dはオフされる。
また、直列に接続されたスイッチ55A,55Cでは、ゲートドライバ53Aから同じ駆動信号が入力されるため、一方がオンの場合、他方がオフされる。同様に、直列に接続されたスイッチ55B,55Dでも、一方がオンの場合、他方がオフされる。
このバンドパスフィルタ56を通過した検出信号は、信号増幅器57で増幅され、コンパレータ58で所定の閾値と比較されて2値化される。
位相比較器60は、位相シフト器59から出力された信号の位相と、電圧制御発振器51から出力される駆動信号の位相とを比較し、その位相差情報を出力する。ここで、前述の通り、位相シフト器59は、検出信号の位相を、目標とされる位相差分だけシフトしているので、位相比較器60の出力が零に近づくほど目標位相差に近づいていることになる。
従って、本実施形態では、位相シフト器59、位相比較器60、ローパスフィルタによって位相差検出手段が構成されている。
また、ローパスフィルタ61は、制御器63によって作動が制御されている。このため、制御器63は、ローパスフィルタ61が作動されている時には、ローパスフィルタ61の出力に基づいて電圧制御発振器51に加える制御電圧を設定し、ローパスフィルタ61が停止されている時には、位相比較器60から直接入力される出力に基づいて制御電圧を設定している。
そして、制御器63から出力される電圧信号によって電圧制御発振器51から出力される駆動信号の周波数が調整されている。
このような構成の駆動制御装置50における圧電アクチュエータ20の駆動制御手順に関し、図5〜8に示すフローチャートおよび図9のタイミングチャートに基づいて説明する。
駆動制御装置50は、図5に示すように、圧電アクチュエータ20の起動時に実行される初期駆動制御工程(ステップ1、以下ステップを「S」と略す)と、初期駆動制御工程S1後に実行されるフィードバック制御工程S2および周波数固定制御工程S3とを備えている。
フィードバック制御工程S2および周波数固定制御工程S3の切り替えは、後述するように所定の条件を満たすか否かによって制御される。すなわち、圧電アクチュエータ20の振動状態を表す検出信号の周波数変動と、駆動信号および検出信号の位相差変動とがいずれも小さくなって安定した制御状態になっている場合には周波数固定制御工程S3が実行され、周波数変動や位相差変動が大きくなってきた場合にはフィードバック制御工程S2が実行されるように制御されている。
初期駆動制御工程S1では、図6に示すように、制御器63は、まず、ローパスフィルタ61を停止し、その出力を初期化する(S11)。
次に、制御器63は、電圧制御発振器51に入力する電圧を制御し、電圧制御発振器51から出力される駆動信号の周波数をfminからfmaxまで掃引(スイープ)する(S12)。たとえば、fmin=230kHz、fmax=280kHzの場合、駆動信号の周波数を230kHzから280kHzまで変化させる。
そして、制御器63は、位相比較器60の出力が「0」になるまで、駆動信号の周波数スイープを継続し、出力が「0」になった時点で初期駆動制御工程を終了し、フィードバック制御工程S2を実施する(S14)。
なお、S11でローパスフィルタ61を停止しているのは、初期駆動制御工程S1では駆動信号の周波数をスイープさせながら、直接位相比較器60の出力を検出して最適駆動位相となる周波数にロックさせる処理を行うため、ローパスフィルタ61を作動させる必要がなく、かつ、作動させたままにしておくと、積分回路であるローパスフィルタ61の値が増大し、次にローパスフィルタ61の出力に基づいて制御する際に異常な制御値になってしまうという問題が生じるためである。
フィードバック制御工程S2では、制御器63は、図7に示すように、まずローパスフィルタ61を起動する(S21)。また、制御器63は、タイマカウントNを「0」にして初期化する(S22)。
そして、制御器63は、駆動信号および検出信号の位相差と、検出信号の周波数とに基づいて駆動信号の周波数を制御するフィードバック制御を開始する(S23)。
すなわち、ローパスフィルタ61の出力に基づく位相差フィードバック制御によって、駆動信号の周波数の安定度を高め、最大効率での駆動を可能にしている。また、位相差フィードバック制御では瞬時の周波数変動に対しては追従が困難であるが、周波数電圧変換器62の出力に基づく周波数フィードバック制御を併用することによって、瞬時の周波数変動に対しても追従して制御でき、温度変化が大きい環境で使用している場合や、大電力・連続駆動などによって圧電アクチュエータ20が発熱して温度変化が大きくなった場合でも安定した駆動を可能にしている。
すなわち、制御器63は、周波数電圧変換器62から入力される電圧値の微分値VFD を求め(S24)、さらに、位相比較器60から入力される位相差の微分値VPD を求める(S25)。
そして、制御器63は、微分値VFD つまり検出信号の周波数変動量が所定範囲VFmin からVFmax の範囲内であるか否かを判断する(S26)。ここで、たとえば、VFmin は周波数が−500Hzに該当する電圧であり、VFmax は+500Hzに該当する電圧である。
次に、制御器63は、変数Nが予め設定された設定値Countstopに達したか否かを判断し(S29)、達していなければ前記S24〜S28を繰り返す。
一方、S26やS27で「No」と判断された場合には、タイマカウント変数Nは「0」にリセットされ(S30)、前記S24〜S27を繰り返す。
なお、制御器63がたとえばシステムクロック125kHzで動作し、かつ前記設定値Countstopが「125000」とされていた場合、変数Nが0から125000まで更新される前記設定時間は、Countstop/システムクロック=125000/125000=1秒である。
周波数固定制御工程S3では、制御器63は、まず、電圧制御発振器51の電圧値(指令値)を維持する(S41)。このため、電圧制御発振器51から出力される駆動信号は周波数が固定された信号となり、周波数固定制御が実行される。
すなわち、制御器63は、フィードバック制御工程のS24〜27と同様に、周波数電圧変換器62から入力される電圧値の微分値VFD を求め(S42)、位相比較器60から入力される位相差の微分値VPD を求め(S43)、微分値VFD が所定範囲VFmin からVFmax の範囲内であるか否かを判断し(S44)、微分値VPD が所定範囲VPmin からVPmax の範囲内であるか否かを判断する(S45)。
一方、制御器63は、S44またはS45で「No」と判断された場合には、周波数固定制御では安定した制御が継続できないと判断し、周波数固定制御工程S3を終了してフィードバック制御工程S2に戻る(S46)。
(1)制御器63は、フィードバック制御モード時には、ローパスフィルタ61の出力に基づく位相差フィードバック制御と、周波数電圧変換器62の出力に基づく周波数フィードバック制御を併用しているので、駆動信号の周波数安定度が低下することを防止でき、かつ、瞬時の周波数変動に対しても追従して制御できる。このため、温度変化が大きい環境で使用している場合や、大電力・連続駆動などによって圧電アクチュエータ20が発熱して温度変化が大きくなった場合でも、圧電アクチュエータ20を安定して駆動することができる。
従って、従来は圧電アクチュエータ20の利用が難しかった温度変化が激しい環境での使用や、大電力でかつ連続駆動の用途にも利用することが可能となり、特に腕時計などの小型の電子機器の駆動源として様々な用途に利用することができる。
また、位相差および周波数の一方の変動量が所定範囲から外れた場合には、即座にフィードバック制御モードに移行する。このため、周波数固定制御モード時に温度変化等が生じても即座にフォードバック制御に戻してその状況に応じた周波数に調整でき、この点でも圧電アクチュエータを安定して駆動することができる。
これに対し、本実施形態では、フィードバック制御工程S2を終了する際にローパスフィルタ61を停止し、周波数固定制御工程S3ではローパスフィルタ61を停止した状態で制御を行っているので、フィードバック制御工程S2のS21でローパスフィルタ61を起動した際に、フィードバック制御時の状態に応じた適切な出力値(指令値)を出力でき、圧電アクチュエータ20を安定して効率的に駆動することができる。
さらに、ローパスフィルタ61はフィードバック制御モード時のみ作動されるため、周波数固定制御モード時には位相比較器60から直接出力される位相差に基づいてフォードバック制御モードへの移行を制御でき、変動があった場合に迅速にフィードバック制御モードに移行することができる。
次に本発明の第2実施形態について、図10に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態において、前述した各実施形態と同一または同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略または簡略する。
このため、本実施形態では、VDDやVSSをコントローラ71で制御可能に構成している。また、圧電アクチュエータ20の圧電素子22は温度変化等で駆動周波数が変更されるとインピーダンスも変化してしまうため、圧電アクチュエータ20に加える電圧を変化させても圧電素子22を流れる電流が変化し、圧電アクチュエータ20を安定して制御することが難しい。このため、本実施形態では、電流検出器74で電流値を検出し、電流制御器72では検出された電流値と電流指令装置73で指令された電流指令値とを比較してコントローラ71を制御するようにしている。
(6)電源54の電圧をコントロールするコントローラ71を設けたので、圧電アクチュエータ20の振動状態を制御して被駆動体の駆動速度などを制御することができる。このため、速度調整が必要な被駆動体の駆動源としても圧電アクチュエータ20を利用できる。
次に本発明の第3実施形態について、図11に基づいて説明する。
第3実施形態の駆動制御装置50Bは、第1実施形態の駆動制御装置50の構成に加えて、電源54の電圧値を制御可能なコントローラ71と、このコントローラ71に対して制御信号を出力する回転数制御器(駆動速度制御器)82と、この回転数制御器82に対して回転数指令値(駆動速度指令値)を入力する回転数指令装置(駆動速度指令装置)83と、圧電アクチュエータ20で回転駆動される部材の回転数を検出する回転数検出器(駆動速度検出器)84とを備える。
回転数検出器84は、例えば、第1実施形態においてロータ30の回転数を検出する回転センサ15によって構成される。
(8)前記第2実施形態では、圧電アクチュエータ20を流れる電流値に基づいてコントローラ71を制御していたが、圧電アクチュエータ20は摩擦によってロータ30を回転駆動するため、すべり等が生じる可能性もあり、電流値の制御だけでは多少の誤差が生じる虞があった。これに対して第3実施形態の構成によれば、直接ロータ30の回転数を検出しているので、より正確な駆動制御を行うことができる。
次に本発明の第4実施形態について、図12に基づいて説明する。
第4実施形態の駆動制御装置50Cは、第2実施形態の電流値に基づく電源制御と、第3実施形態の回転数に基づく電源制御とを組み合わせたものである。
すなわち、駆動制御装置50Cは、コントローラ71、電流制御器72、電流検出器74、回転数制御器82、回転数指令装置83、回転数検出器84を備えている。
回転数制御器82は、回転数指令装置83からの回転数指令値と回転数検出器84で検出される回転数に基づいて電流制御器72に電流指令値を出力する。
電流制御器72は、回転数検出器84からの電流指令値と、電流検出器74で検出された電流値に基づいてコントローラ71を制御している。
従って、電源電圧を制御するフィードバック制御においては、回転数に基づく制御ループがメジャーループ、電流値に基づく制御ループがマイナーループとされている。
(9)圧電アクチュエータ20によって回転駆動されるロータ30の回転数と、圧電アクチュエータ20を流れる電流値との2つのパラメータに基づいて電源電圧を制御しているので、ロータ30の回転数(回転速度)をより正確に制御することができる。
例えば、位相差検出手段は、前記実施形態のように、位相シフト器59、位相比較器60、ローパスフィルタ61で構成されるものに限らず、駆動信号および検出信号の位相差を検出できるものであればよい。例えば、制御器63がハードウェアではなく、コンピュータに制御プログラムを組み込むことで構成されている場合には、位相シフト器59を設けずに制御器63に目標位相差を設定しておき、位相比較器60で直接位相差を算出してその位相差と目標位相差とを制御器63で比較するようにしてもよい。
同様に、周波数検出手段も周波数電圧変換器62に限定されず、検出した周波数を電圧ではなくデータとして制御器63に入力するような周波数検出手段を用いてもよい。
ここで、前記プログラムやデータは、時計や携帯機器内に組み込まれたRAMやROM等のメモリに予め記憶しておけばよい。また、例えば、時計や携帯機器内のメモリに所定の制御プログラムやデータをインターネット等の通信手段や、CD−ROM、メモリカード等の記録媒体を介してインストールしてもよい。そして、メモリに記憶されたプログラムでCPU等を動作させて、各手段を実現させればよい。なお、時計や携帯機器に所定のプログラム等をインストールするには、その時計や携帯機器にメモリカードやCD−ROM等を直接差し込んで行ってもよいし、これらの記憶媒体を読み取る機器を外付けで時計や携帯機器に接続してもよい。さらには、LANケーブル、電話線等を時計や携帯機器に接続して通信によってプログラム等を供給しインストールしてもよいし、無線によってプログラムを供給してインストールしてもよい。
このような記録媒体やインターネット等の通信手段で提供される制御プログラム等を時計や携帯機器に組み込めば、プログラムの変更のみで前記各発明の機能を実現できるため、工場出荷時あるいは利用者が希望する制御プログラムを選択して組み込むこともできる。この場合、プログラムの変更のみで制御形式の異なる各種の時計や携帯機器を製造できるため、部品の共通化等が図れ、バリエーション展開時の製造コストを大幅に低減できる。
さらに、からくり時計のからくり、例えば時刻にあわせて人形などが動くからくり時計において、人形の駆動源として圧電アクチュエータを用いてもよい。
したがって、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
Claims (8)
- 所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体と、この振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される当接部とを備えた圧電アクチュエータの駆動制御装置であって、
前記圧電素子へ供給する駆動信号および前記振動体の振動状態を表す検出信号の位相差を検出する位相差検出手段と、
前記検出信号の周波数を検出する周波数検出手段と、
前記圧電素子に供給する駆動信号の周波数を制御する制御手段とを備えて構成され、
前記制御手段は、位相差検出手段で検出された前記位相差および周波数検出手段で検出された前記周波数に基づいて前記圧電素子に供給する駆動信号の周波数を制御するフィードバック制御モードと、駆動信号の周波数を固定して制御する周波数固定制御モードとを選択して実行し、
フィードバック制御モード時に、前記位相差の変動量が所定範囲内であり、かつ前記周波数の変動量が所定範囲内である状態が設定時間継続している場合には、周波数固定制御モードに切り替え、
周波数固定制御モード時に、前記位相差の変動量または前記周波数の変動量の少なくとも一方が所定範囲外となった場合には、フィードバック制御モードに切り替えることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動制御装置。 - 請求項1に記載の圧電アクチュエータの駆動制御装置において、
前記制御手段は、圧電アクチュエータの駆動開始時に実行される初期駆動制御モードを備え、
初期駆動制御モード時は、駆動信号の周波数を所定範囲で掃引し、前記位相差検出手段で検出された位相差が所定値になった時点で掃引を停止し、前記フィードバック制御モードに切り替えることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動制御装置。 - 請求項1または請求項2に記載の圧電アクチュエータの駆動制御装置において、
前記位相差検出手段は、前記検出信号の位相を予め設定された位相差だけシフトする位相シフト器と、この位相シフト器の出力と駆動信号との位相を比較して位相差を出力する位相比較器と、位相比較器の出力信号が入力可能に構成されたローパスフィルタとを備えて構成され、
前記制御手段は、フィードバック制御モードの開始時にローパスフィルタを作動し、前記位相比較器からローパスフィルタを介して入力される位相差と、前記周波数とに基づいて駆動信号の周波数をフィードバック制御し、フィードバック制御モードの終了時にローパスフィルタを停止してその時点の出力をローパスフィルタに保持することを特徴とする圧電アクチュエータの駆動制御装置。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の圧電アクチュエータの駆動制御装置において、
前記圧電素子に供給する駆動信号の電圧を制御して駆動対象の駆動速度を調整する電圧コントローラと、
圧電アクチュエータを流れる電流値を検出する電流検出器と、
駆動対象の目標駆動速度に基づいて設定される電流指令値および前記電流検出器で検出された電流値に基づいて前記電圧コントローラを制御する電流制御器と、
を備えることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動制御装置。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載の圧電アクチュエータの駆動制御装置において、
前記圧電素子に供給する駆動電圧の電圧を制御して駆動対象の駆動速度を調整する電圧コントローラと、
圧電アクチュエータで駆動される駆動対象の駆動速度を検出する駆動速度検出器と、
駆動対象の目標駆動速度に基づいて設定される駆動速度指令値および前記駆動速度検出器で検出された駆動速度に基づいて前記電圧コントローラを制御する駆動速度制御器と、
を備えることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動制御装置。 - 圧電アクチュエータと、この圧電アクチュエータで駆動される駆動対象と、請求項1から請求項5のいずれかに記載の圧電アクチュエータの駆動制御装置とを備えることを特徴とする電子機器。
- 請求項6の電子機器は、計時部と、該計時部で計時された計時情報を表示する計時情報表示部とを備えた時計であることを特徴とする電子機器。
- 所定の周波数の駆動信号が圧電素子に与えられることで振動する振動体と、この振動体に設けられるとともに駆動対象に当接される当接部とを備えた圧電アクチュエータの駆動制御方法であって、
前記圧電素子へ供給する駆動信号および前記振動体の振動状態を表す検出信号の位相差を検出する位相差検出工程と、
前記検出信号の周波数を検出する周波数検出工程と、
前記圧電素子に供給する駆動信号の周波数を制御する周波数制御工程とを備えて構成され、
前記周波数制御工程は、位相差検出工程で検出された前記位相差および周波数検出工程で検出された前記周波数に基づいて前記圧電素子に供給する駆動信号の周波数を制御するフィードバック制御工程と、駆動信号の周波数を固定して制御する周波数固定制御工程とを選択して実行し、
フィードバック制御工程の実行時に、前記位相差の変動量が所定範囲内であり、かつ前記周波数の変動量が所定範囲内である状態が設定時間継続している場合には、周波数固定制御工程に切り替えて実行し、
周波数固定制御工程の実行時に、前記位相差の変動量または前記周波数の変動量の少なくとも一方が所定範囲外となった場合には、フィードバック制御工程に切り替えて実行することを特徴とする圧電アクチュエータの駆動制御方法。
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