JP4826862B2 - 管ライニング用樹脂組成物及び管ライニング材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、管ライニング用樹脂組成物とこれを用いた管ライニング材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、既設管路を補修するため熱硬化性樹脂を用いる管ライニング材が用いられるようになり、特に、ガス管、水道管や下水道管などの管路に対し、管の強度補強や防蝕対策、漏水・浸水対策あるいは流量改善などの目的として、管内面に液状硬化性樹脂組成物を含浸した内張り用管ライニング材を流体圧などにより反転・進行させ、反転した管ライニング材を流体圧力によって管内面に圧着し、硬化性樹脂組成物を硬化させて既設管内面に合成樹脂管を形成する管ライニングが用いられている。
【0003】
この管ライニングの概略を説明すると、まず、管の内径全長に合致する外側に柔軟なフィルム層を有し、その内側に繊維質筒状体を有する管状体を作成する。次いで、主に液状の硬化性樹脂及び硬化促進剤を必須成分とする硬化性樹脂組成物からなる管ライニング用樹脂組成物が繊維強化材に均一に含浸しやすくなる目的でこの管状体の内部を減圧にして空気を排除し、管状体の一方の端より徐々に管状体の全長にわたり管ライニング用樹脂組成物を含浸させライニング材を得る。次に、このライニング材を冷凍状態または冷蔵状態に維持しながら管の挿入口まで運搬し、空気、水圧等の流体圧により既設管に密着させながら反転し、その後、熱風、熱水蒸気、温水等を用いて既設管に密着させながら硬化させる。最後に、施工した最先端の管ライニング材止め部及び挿入部の余分な管ライニング材を切断し、内張りした管を継ぎ込んで完了する。
【0004】
この管ライニングでは、管ライニング材を含浸処理した後、管ライニング材を定位置に設置する前に硬化性樹脂組成物が、早期に硬化しないようにするため、できるだけ管ライニング材の貯蔵可能期間を長くする一方、工期をできる限り短くするため、一旦硬化が開始されたら速やかに硬化を完了させる速硬化性が望まれている。
【0005】
こうした管ライニングに用いられるライニング材用基材に含浸する樹脂としては、例えば、、管ライニング材の貯蔵可能期間の延長と速硬化性の両立化を目的に、特定の成分を反応させて得られるエポキシ樹脂を主成分とした主剤と、特定の化学構造を有する硬化剤とを配合したエポキシ樹脂組成物が提案されている。しかし、エポキシ樹脂組成部からなる管ライニング材の使用は、一般には内圧管や上水管に限られており、管ライニングが最も行われている下水道管や農業用水管では、硬化時の速硬化性が必要な点から、不飽和ポリエステル樹脂組成物やビニルエステル樹脂組成物等のラジカル共重合性不飽和樹脂組成物が主流である。
【0006】
しかし、前記で用いられるラジカル共重合性不飽和樹脂組成物は、ラジカル共重合性不飽和樹脂とラジカル共重合性モノマーを主成分からなる組成物であり、これらの組成物は、硬化時に体積収縮する性質を持つため、。特に管の長手方向の収縮により、管と内張りライニングとの寸法が合わなくなり、硬化後、端部を手直し必要となるような不具合が生ずる。そのため、管ライニングの工期を短縮することが困難であった。
【0007】
また、上記の不具合を改善すべく、ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物に、更に低収縮剤として、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂を添加する方策が採られている。
【0008】
しかし、これらの低収縮剤は、ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物との相溶性に乏しく、樹脂組成物の一液化が困難である。そのため、管ライニング用樹脂組成物の保存性がない、管ライニング用樹脂組成物の繊維質筒状体への含浸が困難となったり、あるいは、樹脂を含浸したライニング基材において、保存中に樹脂が分離し、含浸、硬化が不均一となる問題点があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ラジカル共重合性不飽和樹脂からなるライニング用樹脂組成物において、優れた保存安定性と、管ライニング基材の硬化時の低収縮性を両立する管ライニング用組成物と、それを用いた、寸法変化の少ない管ライニング材を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上述の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、管ライニング用樹脂組成物として、ラジカル共重合性不飽和樹脂と熱可塑性樹脂からなる低収縮剤に、特定の相溶化剤を配合することで、上述の問題点が解決することを見出し、発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は、ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物(A)としての不飽和ポリエステル樹脂及びスチレン、高分子系低収縮剤(B)としてのスチレン系樹脂、及び前記不飽和樹脂組成物(A)と前記低収縮剤(B)とを相溶化させるための相溶化剤(C)とを必須成分とするラジカル共重合性不飽和樹脂組成物であって、相溶化剤(C)が、連鎖(C1)としてスチレン系モノマーを主成分とし、重合反応により得られる骨格を持ち、且つ、ポリオキシアルキレンエーテルからなる数平均分子量3000〜8000のポリエーテルを主成分とする連鎖(C2)にもつグラフト共重合体であることを特徴とするラジカル共重合性不飽和樹脂組成物を必須成分とする管ライニング用樹脂組成物、これを繊維質筒状体に含浸させてなるライニング材を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
次いで、本発明の管ライニング用樹脂組成物について説明する。
【0013】
本発明に用いる、ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物(A)とは、ラジカル共重合性不飽和樹脂(A1)と重合性不飽和単量体(A2)とからなるものである。更に必要に応じて、重合禁止剤、硬化剤、充填剤、強化剤、内部離型剤、着色剤、その他の添加剤を加えることができる。ラジカル共重合性不飽和樹脂(A1)としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂、又は、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0014】
まず、本発明にラジカル共重合性不飽和樹脂(A1)として使用する不飽和ポリエステル樹脂について説明する。
【0015】
不飽和ポリエステル樹脂の組成は、特に限定されないが、例えば、α,β−不飽和カルボン酸と多価アルコールとの反応で得られる。α,β−不飽和カルボン酸以外にも飽和カルボン酸を含んでいてもよい。
【0016】
α,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、クロロマレイン酸、あるいは、これらのジメチルエステル類などが挙げられる。これらのα,β−不飽和カルボン酸はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、飽和カルボン酸としては、例えばフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸などが挙げられる。これらの飽和カルボン酸はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0017】
ー方、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2メチル−1,3プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフエノールAのアルキレンオキサイド付加物等のグリコール類などのジオール類、トリメチロールプロパンなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどのテトラオール類などが挙げられる。これらの多価アルコール類はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
さらに、得られた不飽和ポリエステルをグリシジルメタアクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物類、トルエンジイソシアネート、イソプロペニル−ジメチル−ベンジルイソシアネートのようなイソシアネート化合物類で変性してもよい。
【0019】
また、ジシクロペンタジエンを添加し、上記α,β−不飽和カルボン酸、飽和カルボン酸および多価アルコールと共に反応し得られるジシクロペンタジエン系不飽和ポリエステルも使用できる。
【0020】
また、回収ポリエチレンーテレフタレート(PET)と多価アルコールを高温で反応させたグリコール分解物を主たる原料とし、上記α,β−不飽和カルボン酸、飽和カルボン酸および多価アルコールと共に反応し得られるPET系不飽和ポリエステルも本発明を適用すれば、問題なく使用できる。
【0021】
また、前記の重合性不飽和単量体(A2)として使用できるモノマー成分としては、スチレン系モノマーのみ、またはスチレン系モノマーを主成分とし、他の成分として(メタ)アクリル酸系モノマー等を併用してなる混合物である。スチレン系モノマーとして代表的なもののみ例示すれば、スチレン、ビニルトルエン(メチルスチレン)、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルベンジルアルキルエーテル等が挙げられる。
【0022】
また、併用できる(メタ)アクリル酸系モノマーの代表例としては、公知の(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸グリセリルカーボネート、メタアクリル酸イソシアネートエチル、(メタ)アクリル酸エステルが利用できる。(メタ)アクリル酸エステルの代表的なもののみ例示すれば、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ベンジル、フェニル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ステアリル、ベヘニル、トリフルオロエチルなどのエステル化合物が挙げられ、必要により添加される。
【0023】
次いで、本発明にラジカル共重合性不飽和樹脂(A1)として使用するにビニルエステル樹脂について、説明する。該ビニルエステル樹脂は、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応によって得られる反応生成物である。
【0024】
前記のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂類、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂類、これらの樹脂の臭素化エポキシ樹脂等のフェノール類のグリシジルエーテル類、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフエノールAのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等の多価アルコール類のグリシジルエーテル類、3,4−エポキシー6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン等の脂環式エポキシ樹脂類、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル類、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、トリグリシジル−p一アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン類、1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂は単独もしくは2種以上を併用してもよい。
【0025】
不飽和一塩基酸としては、例えげアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマー、モノメチルマレート、モノメチルフマレート、モノシクロヘキシルフマレート、あるいはソルビン酸等が挙げられる。これら酸は単独もしくは、2種以上を併せて用いられる。さらに、得られたビニルエステルを無水マレイン酸、無水コハク酸等の酸無水物類、トルエンジイソシアネート、イソプロペニル−ジメチル−ベンジルイソシアネートのようなイソシアネート化合物等で変性してもよい。
【0026】
次いで、本発明にラジカル共重合性不飽和樹脂(A1)として使用するビニルウレタン樹脂について、説明する。該ビニルウレタン樹脂とは、ポリオール化合物、有機ポリイソシアネ−ト化合物、水酸基含有(メタ)アクルート類とから得られるオリゴマーである。ポリオール化合物とは、分子内に複数の水酸基を有する化合物の総称であるが、水酸基の代わりにイソシアネート基と反応しうる活性水素を有する官能基、例えばカルボキシル基、アミノ基、メルカプト基を有する化合物でも構わない。かかるポリオール化合物としては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフインポリオール、ひまし油ポリオール、カプロラクトン系ポリオールなどが挙げられ、それぞれ単独もしくは2種以上を併せて用いられる。有機ポリイソシアネート化合物としては後述のものを用いることができる。
【0027】
有機のポリイソシアネート化合物として特に代表的なもののみを例示すれば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等、または、各種イソシアネート化合物をイソシアヌレート化せしめて得られる多量体類が挙げられる。これらは単独もしくは2種以上を併せて用いられる。
【0028】
次いで、本発明にラジカル共重合性不飽和樹脂(A1)として使用するアクリル樹脂について説明する。該アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸エステルを主たる成分とする重合性不飽和単量体から導かれる熱可塑性アクリル重合体と重合性不飽和単量体から構成されるものである。(メタ)アクリル酸エステルを必須成分とし、必要により上記(メタ)アクリル酸エステル類と共重合可能な他の重合性不飽和単量体を併用し、該単量体溶液を重合して得られるものである。このアクリル重合体は、該重合性単量体に溶解させたシラップの形で用いられるため、分子量10万以下のものが好ましく、懸濁重合、溶液重合等、一般的重合方法で得ることができる。また、該単量体を10〜40重量%を予備重合したシラップをそのまま用いることもできる。
【0029】
該ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物(A)に使用できる重合性不飽和単量体(A2)として特に代表的なもののみを例示すれば、スチレン類、アクリルエステル類、メタアクリルエステル類、ジアリルフタレートエステル類、カルボン酸ビニルエステル類、ビニルエーテル類等の公知のものが使用できる。しかしこれに限定されるものでなく、樹脂液の用途、要求性能に応じて各種の不飽和単量体を適宜選択し使用することができる。
【0030】
本発明に用いるラジカル共重合性不飽和樹脂組成物(A)中の不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂あるいはアクリル樹脂等のラジカル共重合性不飽和樹脂(A1)に対する重合性不飽和単量体(A2)の配合量は、特に限定されるものではないが、ラジカル共重合性不飽和樹脂(A1)と重合性不飽和単量体(A2)の合計100重量部に対して重合性不飽和単量体(A2)が、10〜70重量部である範囲が好ましく、20〜50重量部の範囲内がさらに好ましい。
【0031】
本発明の樹脂組成物に利用できる重合禁止剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の重合禁止剤を用いることができる。具体的には、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、トルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ナフテン酸銅、塩化銅等が挙げられる。これらの重合禁止剤は、一種のみを用いても良く、また、二種以上を適時混合して用いても良い。尚、上記重合禁止剤の添加量は、特に限定されるものではない。
【0032】
本発明の樹脂組成物に利用できる硬化剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の硬化剤を用いることができる。例えば、熱硬化剤、紫外線硬化剤、電子線硬化剤等から選択される1種類以上のものが挙げられる。硬化剤の使用量は、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、特に好ましくは1〜5重量部である。
【0033】
熱硬化剤としては、有機過酸化物が挙げられ、具体的にはジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系化合物等の公知のものが使用され、成形条件に応じて適宜選択できる。
【0034】
紫外線硬化剤とは、光増感物質である。具体的には、アシルホスフインオキサイド系、ベンゾインエーテル系、ベンゾフエノン系、アセトフェノン系、チオキサントン系化合物等の公知のものが使用可能であり、成形条件に応じて適宜選択できる。また電子線硬化剤としては、ハロゲン化アルキルベンゼン、ジサルファイド系化合物等が挙げられる。
【0035】
また、前述の硬化剤と併用し、硬化を促進する添加剤(硬化促進剤)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナフテン酸コバルトやオクテン酸コバルト等の金属塩類、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)パラトルイジン、ジメチルアセトアセトアミド等の3級アミン類等が挙げられ必要により選択使用できる。
【0036】
本発明に用いられる高分子系低収縮剤(B)としては、特に限定されるものではないが、目的の低収縮化や物性向上(破壊靭性)効果が発揮されるものを成形用途、条件等に応じて適宜選択し、使用することができる。特に代表的なもののみを例示すれば、スチレンを主成分としたポリスチレン系樹脂、例えば、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、スチレンー共役ジエンブロック共重合体、スチレン−水添共役ジエンブロック共重合体等が挙げられる。その他、スチレンを含まない(メタ)アクリル酸エステル系重合体、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸−n−ブチルエステル等が挙げられる。また、これら重合体中の二重結合に、他の化合物を反応させたものも用いることができる。
【0037】
前述のスチレン−共役ジエン系ブロック共重合体とは、スチレンと共役ジエンを重合させて得られるスチレン成分と共役ジエン成分からなるブロック共重合体であり、共役ジエン成分としてブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどが用いられる。さらに、これらスチレン−共役ジエンブロック共重合体を水素添加して得られるスチレン−水添共役ジエンブロック共重合体であっても良い。ブロック共重合体の構成単位は特に限定されるものではなく、スチレン−共役ジエン、スチレン−共役ジエン−スチレン、共役ジエン−スチレン−共役ジエンなどのスチレンと共役ジエンの繰り返し単位のものも含まれる。
【0038】
上記の高分子系低収縮剤(B)は、必要に応じ、重合性不飽和単量体を含有してもよい。ここで併用可能な重合性不飽和単量体としては、例えば、前記の重合性不飽和単量体(A2)等が挙げられる。また高分子系低収縮剤(B)と重合性不飽和単量体との配合量は、特に限定されるものではないが、高分子系低収縮剤(B)と重合性不飽和単量体の合計100重量部に対して重合性不飽和単量体(A2)が、10〜70重量部である範囲が好ましく、20〜50重量部の範囲内がさらに好ましい。
【0039】
ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物(A)と高分子系低収縮剤(B)との配合量は、特に限定されるものではないが、ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物(A)と高分子系低収縮剤(B)の合計100重量部(固形分当たり)に対して高分子系低収縮剤(B)が、2〜22重量部(固形分当たり)である範囲が好ましく、3〜13重量部の範囲内がさらに好ましい。
【0040】
本発明に用いる相溶化剤(C)は、スチレン系モノマー類、(メタ)アクリル酸エステルモノマー類の群から選ばれた不飽和単量体を主成分とし、これらを付加重合させて得られる連鎖を連鎖(C1)に持ち、且つエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを成分とする開環重合系のポリオキシアルキレンエーテル構造であるポリエーテル連鎖を連鎖(C2)に持つ構造を有するグラフト共重合体を必須成分とし、適宜、重合性不飽和単量体に溶解した樹脂組成物である。
【0041】
また、前記グラフト共重合体として、予め不飽和単量体として、エチレンオキサイドを主成分としたポリエーテルの末端に(メタ)アクロイル基等の重合性官能基を有するモノマー(以下ポリエーテル系マクロモノマーと記す。)とスチレン系モノマー類、(メタ)アクリル酸エステルモノマー類の群から選ばれた不飽和単量体との共重合体も含む。
【0042】
また、本発明のグラフト共重合体中の連鎖(C1)を構成する主成分として、スチレン系モノマー類の使用が相溶化安定性に優れ望ましい。
【0043】
上記連鎖(C1)の連鎖を構成するために使用できる成分としては、スチレン系モノマー類及び(メタ)アクリル酸エステルモノマー無の群から選択される少なくとも一種の単量体からなる。スチレン系モノマー類としては、スチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルベンジルエーテル系化合物等が挙げられる。これらの中でも、相溶化安定性に優れる点から、スチレン系モノマーが連鎖(C1)の主成分であることが好ましい。更に、スチレン系モノマー類としては、スチレンの使用が望ましい。
【0044】
該スチレン系モノマー類の含有量は特に限定されないが、相溶化性に優れる点から、グラフト共重合体中のポリエーテル連鎖を除いた連鎖部分の50重量%以上がスチレン系モノマー類であることが好ましく、70〜99重量%であることが特に好ましい。
【0045】
また、上記の(メタ)アクリル酸エステルモノマー類としては、公知のもの利用できる。具体的には、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル等のエステル化合物が挙げられ、これらの群のうち少なくとも一種が選択され使用される。
【0046】
また、グラフト共重合体の連鎖(C1)を構成する主成分のスチレン系モノマー類及び(メタ)アクリル酸エステルモノマー類の群以外で、使用できる共重合可能な不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸化合物、水酸基やグリシジルエーテル基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー類、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル系単量体、フマル酸のモノ及びジエステル系単量体、イタコン酸のモノ及びジエステル系単量体、シクロヘキシルビニルエーテル等ビニルエーテル系単量体が挙げられる。これらは、必要に応じて適宜選択、使用できる。
【0047】
ついで、本発明の相溶化剤(C)中の連鎖(C2)について説明する。
【0048】
本発明の相溶化剤(C)中の連鎖(C2)は、ポリエーテル、ポリエステル、及びポリカーボネートから選ばれる1種以上の連鎖であり、その数平均分子量が好ましくは1000〜20000、より好ましくは2000〜10000であって、合成方法、構造等、特に限定されるものではない。かかる連鎖としてはポリエーテルが好ましい。ポリエーテルとしては、後述するものである。ポリエステルとしては、後述の、α,β−不飽和カルボン酸、または飽和カルボン酸と多価アルコールから得られる飽和及び/または、不飽和ポリエステル、あるいはカプロラクトン等を開環重合して得られるポリカプロラクトン等である。ポリカーボネートとしては、後述の多価アルコールとジメチルカーボネート等の炭酸エステル化合物とを反応して得られるポリカーボネートや、トリメチレンカーボネート等の環状炭酸エステル化合物を開環重合して得られるポリカーボネート等である。これらは、単独もしくは、2種類以上を併せて用いることができる。
【0049】
上記の連鎖(C2)の中で、エチレンオキサイド系ポリエーテル等のポリオキシアルキレン連鎖を構成するために使用できる成分としては、開環重合性単量体類の群から選択され、エチレンオキサイドを主成分とし、エチレンオキサイド単独もしくは、エチレンオキサイドと共重合可能なその他のアルキレンオキサイド系単量体や開環共重合可能な他の環状化合物からなる。他のアルキレンオキサイド系単量体としては、例えば、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイド等が挙げられる。
【0050】
また、開環共重合が可能なその他の環状化合物としては、酸無水物類、例えば、無水コハク酸、無水フタル酸等が挙げられる。また、環状エステル化合物類、例えば、カプロラクトン、バレロラクトン等が挙げられる。さらに、環状炭酸エステル化合物類、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチレンカーボネート等が挙げられる。その他、環状化合物以外でアルキレンオキサイド系単量体と共重合可能な二酸化炭素も利用できる。
【0051】
エチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類を成分とし、これらの開環重合性単量体を共重合して得られる連鎖(C2)のポリエーテル連鎖の構造については、該ラジカル共重合性不飽和樹脂との相溶性が発揮されるものであれば特に限定しない。例えば、エチレンオキサイドとのランダム共重合やブロック共重合でもかまわない。また、ポリエーテル連鎖(C2)は、分子量1000以下のエチレンオキサイド系ポリエーテルポリオール化合物やグリコール化合物等とジカルボン酸化合物、ジイソシアネート化合物、炭酸エステル化合物、ジグリシジルエーテル化合物等を用いて伸長させ、好ましくは数平均分子量が1000〜20000になるようなものでも良い。なおポリエーテル系連鎖は、直鎖状でも分岐状でもかまわないが、合成上、直鎖状の連鎖が望ましい。
【0052】
連鎖(C2)のポリエーテル連鎖の数平均分子量は、相溶化剤として充分な効果を得られる点、また、合成上均質なグラフト共重合体(C)が得られる点から1000〜20000の範囲にあることが好ましく、3000〜8000が特に好ましい。
【0053】
エチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを主成分とし、開環重合して得られる連鎖(C2)中のオキシアルキレン鎖の含有量は、オキシアルキレン鎖が該ラジカル共重合性不飽和樹脂成分と分子間力により密接に配位し、アンカー成分として働き、分散安定性が良好となる点から、連鎖(C2)中の、エチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの含有量が20重量%〜100重量%である範囲にあることが好ましく、60重量%〜100重量%がとくに好ましい。
さらに、相溶化剤(C)中の連鎖(C2)を形成するエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド系ポリエーテル鎖の数平均分子量が、1000〜20000であることが、性能及び合成上望ましい。好ましくは、グラフト共重合体の連鎖(C1)と連鎖(C2)との重量比(C1/C2)が、90/10〜20/80(重量%)である。
【0054】
グラフト共重合体の製造法としては、特に限定されるものではないが、一般的には、▲1▼連鎖(C1)のみを予め合成し、別途合成された連鎖(C2)を高分子反応にて結合させ、目的の(C)を得る法、▲2▼連鎖(C1)のみを予め合成し、連鎖(C2)を構成する開環重合性単量体を連鎖(C1)中の活性部位を起点とし開環重合させる方法、▲3▼連鎖(C1)を構成する不飽和単量体と、予め合成されたポリエーテル鎖である連鎖(C2)としての片末端に共重合可能な重合性官能基を有するマクロモノマーとを付加共重合させて目的の連鎖(C)を得る方法がある。本発明の相溶化剤の製造法としては、均質な重合体が得られ易いポリエーテル系マクロモノマーを用いる▲3▼の合成方法が望ましい。
【0055】
本発明のグラフト共重合体に使用できるポリエーテル系マクロモノマーとしては、前述のポリエーテル鎖骨格を有する(C2)の末端に、連鎖(C1)を構成する不飽和単量体と共重合可能な重合性官能基を有するものである。その官能基としては、一般にエチレン性不飽和基である。具体的には、(メタ)アクリルロイル基、スチリル基、ビニル基、プロペニル基、アリル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、フマリル基、マレイル基などが挙げられる。これらの官能基を有する化合物を、前述の直鎖状ポリエーテル連鎖の片末端にのみに化学的に結合させたものが特に好ましい。
【0056】
具体的には、ポリエチレンオキサイドのモノ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリエチレンオキサイドのモノビニルベンジルエーテル類、ポリエチレンオキサイドのモノビニルエーテル類、ポリエチレンオキサイドのモノアリルエーテル類、ポリエチレンオキサイドのモノクロトン酸エステル類、エチルメタアクリル酸エステルとポリエチレンオキサイドの当モル反応物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和単量体とポリエチレンオキサイドをイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物介して結合させた化合物等も利用できる。結果として、本発明の目的の相溶化剤として機能するグラフト共重合体が得られれば、マクロモノマーの詳細な化学的構造は限定しない
【0057】
本発明のグラフト共重合体において、ポリエーテル鎖骨格を有する連鎖(C2)の自由末端の化学構造、及び、ポリエーテル系マクロモノマーの重合性官能基のある末端以外の末端基構造は、特に限定しない。ポリエーテル連鎖合成条件に由来する末端のままでも、化学的に他の構造に変換されたものでも良い。望ましくは、水酸基か、アルコキシエーテル基、アルコキシエステル基である。前記の末端基構造の分子量が著しく増大すると、連鎖(C2)中のオキシエチレン−ユニット等のオキシアルキレン−ユニット(単位)含有率が低下するため、相溶化効果が不安定になる恐れがある。よって炭素数で言えば、20以内、分子量では500以内の末端基構造を有する連鎖(C2)が望ましい。
【0058】
グラフト共重合体中の連鎖(C1)とポリエーテル連鎖(C2)の重量比(Cl/C2)は、90/10〜20/80(重量%)である。望ましくは70/30〜30/70(重量%)である。更に、不飽和ポリエステル樹脂とポリスチレンの混合物を1ヶ月以上の長期に亘り一液化できる点で、60/40〜50/50(重量%)が特に好ましい。
【0059】
また、グラフト共重合体の数平均分子量は、特に限定されないが、相溶化剤としての効果がより顕著に発現する点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における数平均分子量において、2000〜100000であることが望ましい。
【0060】
相溶化剤のグラフト共重合体(C)の合成反応は、溶媒中で行っても良いし、溶媒を用いなくても良いが、通常は作業性の観点から溶媒中で行われる。溶媒としては、該相溶化剤が溶解するものであり、グラフト共重合体の合成に支障がなければ何を用いても構わない。反応後には、(C)を溶媒から固体分として単離しても、反応溶媒の溶液のままでもよい。特に、相溶化剤として利用する上で支障がなければ、溶液のままで用いることが好ましい。また、溶液粘度を下げ、利便性を向上させる目的でスチレン等の不飽和単量体や反応溶媒以外の他の有機溶媒で希釈または、再溶解させることも可能である。例えば、(C)と不飽和単量体や溶媒を含むものを相溶化剤組成物として用いる。
【0061】
また、相溶化剤(C)としては、前記のグラフト共重合体のほか、スチレン系樹脂とエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを主成分として得られるポリエーテル樹脂とを、ジイソシアネート化合物を介して結合させたブロック共重合体も含まれる。この際、使用できるジイソシアネート化合物としては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0062】
グラフト共重合体の合成時の重合開始剤としては、特に限定されないが、一般的には、ラジカル共重合系開始剤、例えばベンゾイルパーオキサイドのような有機過酸化物やAIBN等のアゾ化合物が利用できる。なお目的の重合体が得られれば、ラジカル共重合系以外のアニオン、カチオン重合索開始剤を用いることもできる。
【0063】
ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物(A)と、低収縮化剤(B)とを相溶させる相溶化剤(C)の添加量は、ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物(A)と低収縮化剤(B)の合計100重量部当たり、前記(A)及び(B)が長時間相溶化できる点から、0.1重量部以上が好ましく、良好な硬化物物性が得られる点から30重量部以下が好ましい。更に0.5〜10重量部の範囲が特に好ましい。
【0064】
また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じ充填剤を添加して使用できる。本発明の樹脂組成物に利用できる充填剤として、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオリン、クレー、セライト、アスベスト、パーライト、バライタ、シリカ、ケイ砂、ドロマイト、石灰石、セッコウ、アルミニウム微粉、中空バルーン、アルミナ、ガラス粉、水酸化アルミニウム、寒水石、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、二酸化モリブデン等が挙げられる。これらの充填材は、作業性や得られる成形品の強度、外観、経済性などを考慮して選ばれるが、炭酸カルシウムや水酸化アルミニウム、シリカ、タルクが好ましく、中でも水酸化アルミニウム及び、シリカが特に好ましい。なお、充填剤には表面処理されたものも含まれる。例えば、表面処理メチル化したシリカは、沈降防止に有効である。
【0065】
また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じ着色剤を添加して使用できる。利用できる着色剤として、特に限定されないが、例えば、チタンホワイト、カーボンブラック等無機顔料類やフタロシアニンブルー、キナクリドンレッド等有機顔料類があり、色相に応じて、種々の着色剤を用いることができる。なお一般的には、顔料を不飽和ポリエステル樹脂等のラジカル共重合性不飽和樹脂組成物に均一分散させたトナーとして添加する場合が多い。
【0066】
また、必要に応じて、難燃剤を添加して使用できる。利用できる難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、塩素化パラフィン類、リン酸エステル類、三酸化アンチモン、臭素系難燃剤等が挙げられる。更に、必要に応じて、各種紫外線吸収剤も併用できる。
【0067】
次いで、管ライニング用樹脂組成物を繊維質筒状体に含浸させてなるライニング材の製造方法について説明する。管ライニング材、管ライニング工法に就いては、特に、限定されないが、例えば、特開2000−141484号公報等に記載の方法を用いることができる。
【0068】
例えば、以下にその一例を挙げる。気密性のある筒状熱融着性フィルムの内側に、繊維質からなる筒状樹脂吸収材を挿入した後、筒内部を減圧して、熱融着性フィルムと筒状樹脂吸収材とを密着した後、加熱して、該フィルムと筒状樹脂吸収材を密着させ、気密性フィルムの内部に繊維質からなる筒状樹脂吸収材が張り合わされた、管ライニング用基材に本発明の管ライニング用樹脂組成物を含浸させる。
【0069】
次いで、前記の管ライニング基材に、本発明の管ライニング用樹脂組成物を含浸して管ライニング材とする。その含浸方法としては、管ライニング材用基材の一方の端部を空気の漏れないようシールし、もう一方の端部から内部の空気を吸引し、シール側端部の吸収材と吸収材との間に該熱硬化性樹脂注入パイプを挿入することにより、該吸収材に樹脂組成物を含浸することで、本発明の管ライニング材を得る。
【0070】
こうして得られる管ライニング材は、管のライニング工法に用いられる。この管ライニング工法とは、可撓性の筒状樹脂吸収材に熱硬化性樹脂を含浸せしめて成る管ライニング材を流体(水、空気等)圧によって管路内に反転させながら挿入すると共に、これを管路内周面に押圧し、この状態を保ったまま管ライニング材を加温等して、これに含浸された熱硬化性樹脂を硬化させることによって、管路の内周面にライニングを施す工法である。
【0071】
【実施例】
以下に実施例を挙げて以下に本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。また、以下の文中の「部」は、特に断りのない限り重量基準である。
【0072】
参考例1(ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物(A)の調製)
窒素導入管、還流コンデンサー、及び攪拌機を設けたフラスコに、プロピレングリコール126部、ネオペンチルグリコール198部、イソフタル酸214部、及び無水マレイン酸200部を仕込み、窒素気流下で、攪拌しながら、加熱を開始する。液温200℃に維持して、脱水縮合反応を行った。酸価15mg−KOH/gになったところで、180℃迄冷却し、ハイドロキノン0.1部を添加し、150℃まで冷却し、不飽和ポリエステル樹脂(a)を得た。
次いで、この不飽和ポリエステル樹脂を固形分63重量%のスチレン溶液となる様にスチレンを添加し、ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物溶液(a−1)を調製した。
【0073】
参考例2(低収縮剤の調製)
温度計、窒素導入管、撹拝機、コンデンサ及び滴下口一トを設けたフラスコにスチレン600部を仕込み、攪拌しながら50℃に加熱する。重量平均分子量約25万のポリスチレン(ディックスチレンCR−3500,大日本インキ化学製)を400部、ハイドロキノン0.1部を添加、溶解させた。固形分40重量%の低収縮剤溶液(b−1)を得た。
【0074】
参考例3(相溶化剤の調製)
温度計、窒素導入管、撹拝機、コンデンサ及び滴下口一トを設けたフラスコに、溶媒としてキシレン200部を仕込み、窒素気流下120℃まで昇温した。次にスチレン210部に、マクロモノマーとしてポリエーテル連鎖の数平均分子量が4000のモノメトキシ−ポリエチレンオキシド−モノメタクリル酸エステル140部と重合開始剤としてAIBN2.0部を溶解させたプレミックス液を調製した。次にこの混合液を滴下ロートより約3時間かけて滴下し付加重合させた。滴下後、120℃を保持しながらさらに8時間反応させ、目的のグラフト共重合体(c)を得た。反応後、得られた樹脂溶液を30℃まで冷却し、ここにキシレン220部、ハイドロキノン0.1部を加え、室温まで冷却した。このようにして、有効成分60重量%の相溶化剤溶液(c−1)を得た。これを相溶化剤溶液SE−1とする。得られた重合体(c)のGPCで測定した数平均分子量は、12000であった。
【0075】
実施例1
参考例1で調製したラジカル共重合性不飽和樹脂組成物溶液(a−1)70部、参考例2で調製した低収縮剤(b−1)30部、参考例3で調製した相溶化剤溶液(c−1)0.7部を混合し、攪拌機で混合し、樹脂混合液(x)を得た。
【0076】
一液安定性を確認のため得られた樹脂混合液を室温下で静置し、目視で分離に要した時間を調べた。得られた結果を表1に示す。
【0077】
次いで、上記の樹脂混合液(x)を型に入れて加熱成形、80℃で硬化した試験片を作成し収縮率を測定した。更に樹脂混合液(x)をフェルトに含浸して80℃で硬化した試験片を作成し、曲げ強さ、曲げ弾性率、引張り強さ、引張り弾性率、及び引張り伸び率を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0078】
更に、管直径700mmの管について、本発明の管ライニング材を用いて管ライニングを行い、収縮量を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0079】
比較例1(相溶化剤(C)を添加しない組成物による評価)
相溶化剤溶液(c−1)を添加しない以外は、実施例1と同一条件で樹脂混合液を調製したが、0.5〜2時間で分離したので、硬化物の物性は測定できなかった。
【0080】
比較例2(低収縮剤溶液(B)を添加しない組成物による評価)
低収縮剤溶液(b−1)を添加しない以外は、実施例1と同一条件で樹脂混合液を調製し及び評価を行った。
【0081】
【表1】
【0082】
【発明の効果】
本発明の管ライニング用樹脂組成物により、ライニング材の保存安定性に優れ、管ライニング材の硬化時の低収縮性を両立する管ライニング用組成物と、それを用いた寸法変化の少ない管ライニング材を提供できる。
Claims (5)
- ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物(A)としての不飽和ポリエステル樹脂及びスチレン、高分子系低収縮剤(B)としてのスチレン系樹脂、及び前記不飽和樹脂組成物(A)と前記低収縮剤(B)とを相溶化させるための相溶化剤(C)とを必須成分とするラジカル共重合性不飽和樹脂組成物であって、相溶化剤(C)が、連鎖(C1)としてスチレン系モノマーを主成分とし、重合反応により得られる骨格を持ち、且つ、ポリオキシアルキレンエーテルからなる数平均分子量3000〜8000のポリエーテルを主成分とする連鎖(C2)にもつグラフト共重合体であることを特徴とするラジカル共重合性不飽和樹脂組成物を必須成分とする管ライニング用樹脂組成物。
- 相溶化剤(C)の連鎖(C1)と連鎖(C2)との重量比(C1/C2)が、90/10〜20/80(重量%)であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
- 相溶化剤(C)が、連鎖(C1)を形成するスチレン系モノマーを主成分とする不飽和単量体と、連鎖(C2)を形成する、片末端に(メタ)アクリロイル基またはスチリル基を有するポリエーテルとを、付加共重合させたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
- 更に、充填材、及び/またはトナーを配合した請求項1〜3のいずれかひとつに記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1つに記載の管ライニング用樹脂組成物を繊維質筒状体に含浸させてなるライニング材。
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