JP4003114B2 - 相溶化剤、ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物、成形材料及び成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラジカル共重合性不飽和樹脂と、低収縮化、物性向上等を主目的として添加される付加重合系重合体とを相溶化し得る新規相溶化剤、ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物、成形材料及び成形品に関するものである。より詳しくは、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂等のラジカル共重合性不飽和樹脂と、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアセテート、アクリルゴム等の付加重合系重合体との二成分の相溶性を著しく改善し、相溶性の悪さに起因した、保存上、成形上の問題を解決する極めて有効な相溶化剤に関するものである。さらには、ラジカル共重合性不飽和樹脂と付加重合系重合体とを含む樹脂混合物が分離するのを防止し、安定な分散状態、つまり一液化を可能にすることにより、製品の高付加価値を図ることを可能にする相溶化剤、ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物、成形材料及び成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ラジカル共重合性不飽和樹脂は、成形材料の原料樹脂として好適に用いられている。しかし、ラジカル共重合性不飽和樹脂を用いた成形材料は、硬化時に起こる体積収縮が、成形品の反り、クラック等を引き起こすと言った大きな問題がある。この問題を改良する目的で、種々の熱可塑性樹脂、例えばポリスチレン、スチレンブタジエンゴム等の低収縮化剤が該成形材料に添加されている。しかし、これら低収縮化剤は、ラジカル共重合性不飽和樹脂との相溶性が低く、混合後の経時分離が避けられないため、成形材料中での分散安定性に乏しく、成形材料の一液化を困難とさせている。そのため、そのような成形材料から得られる成形品においては、低収縮化剤の分離等に起因するスカミング、色ムラなどの各種成形外観の欠陥が発生しやすい。
【0003】
そこで、本発明者らは、そのような問題を解決するために、特定の構造を有する共重合体を含有する相溶化剤を提案している。即ち、特開2001−192456号では、縮合反応法により得られるポリスチレン系ブロック共重合体を含有する相溶化剤として使用する手法、また、特開2001−213967号では、付加重合により得られるポリスチレン系グラフト共重合体を含有する相溶化剤として使用する手法を提案している。しかし、これらの相溶化剤は、一般的なラジカル共重合性不飽和樹脂に添加されると、高い相溶化効果を示し長期に亘り安定な分散状態を継続することができるものの、該不飽和樹脂の種類によっては十分な効果が発現できない場合もあることが判明した。最近、より多くのラジカル共重合性不飽和樹脂に添加しても、高度に安定分散化が発現できる相溶化剤が市場より求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、より多種のラジカル共重合性不飽和樹脂、例えば水添ビスフェノールA、ジシクロペンタジエン等で変性された低極性の不飽和ポリエステル等と、低収縮化を主目的として添加される付加重合系重合体(熱可塑樹脂)との相溶性をさらに向上せしめ、保存中および硬化過程で発生するの前記二成分の分離に伴う成形欠陥を低減する。あるいはより多くの種類の樹脂混合液において、長期に亘り高度な安定分散状態を保持することを可能にする相溶化剤を提供することにある。即ち従来技術では達成が困難であった、より多種のラジカル共重合性不飽和樹脂と付加重合系重合体との分離を防止し、樹脂混合物の一液化を可能とする相溶化剤を提供することにある。さらに、分離に伴う成形時の欠陥(スカミング、均一着色性、平滑性、光沢)をなくすことを可能とする実用的な相溶化剤、それを含むラジカル共重合性不飽和樹脂組成物、成形材料及び成形品を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの課題について鋭意研究の結果、特定の構造を有するグラフト共重合体が前述の相溶化剤として極めて有用なことを見出し、本発明に到達した。
【0006】
即ち、本発明は、ラジカル共重合性不飽和樹脂と付加重合系重合体とをより高度に相溶させる為の相溶化剤であり、スチレン系モノマーを主成分として重合反応により得られるポリマーである連鎖(A1)に、必須成分としてポリオルガノシロキサンを含むシリコン系ポリマー鎖(A2)と、さらにポリオキシアルキレンエーテル、ポリエステル及び/又はポリカーボネートを主成分とするポリマー鎖(A3)が結合してなり、グラフト共重合体(A)中の連鎖(A1)、ポリマー鎖(A2)および(A3)の重量%比(A1/A2/A3)が、90/0.1/9.9〜20/20/60であるグラフト共重合体(A)を含有する相溶化剤、それを含むラジカル共重合性不飽和樹脂組成物、成形材料及び成形品に関する。
【0007】
また、本発明は、連鎖(A1)に、ポリマー鎖(A2)及び(A3)が、それぞれのポリマー鎖に結合された(メタ)アクリロイル基またはスチリル基を介して結合してなるグラフト共重合体(A)、好ましくは、ポリマー鎖(A2)及び(A3)の数平均分子量が1000〜20000である上記グラフト共重合体(A)、また好ましくは連鎖(A1)、ポリマー鎖(A2)と(A3)の重量比(A1/A2/A3)が、90/0.1/9.9〜20/20/60である上記グラフト共重合体(A)、更に好ましくは連鎖(A1)を形成するスチレン系モノマーを主成分とする不飽和単量体と、ポリマー鎖(A2)及び(A3)の分子の片末端に(メタ)アクリロイル基またはスチリル基を有するマクロモノマーとを付加共重合させて得られる上記グラフト共重合体(A)を含有する相溶化剤、それとラジカル共重合性不飽和樹脂、重合性不飽和単量体および/または付加重合系重合体を含む有用なラジカル共重合性不飽和樹脂組成物、このラジカル共重合性不飽和樹脂組成物を含む成形材料及びその成形品に関する。以下に本発明を詳細に説明する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の相溶化剤は、スチレン系モノマーを主成分として付加重合させて得られる連鎖(A1)に、必須成分としポリオルガノシロキサンを含むポリマー鎖(A2)及びポリオキシアルキレンエーテル鎖、ポリエステル及び/又はポリカーボネートを主成分としてなり、好ましくはオキシエチレン−ユニット(単位)を主構成成分とするポリマー鎖(A3)が結合してなるグラフト共重合体(A)を含有するものである。グラフト共重合体(A)に於いて、ポリマー鎖(A2)及び(A3)は、(A2)及び(A3)中の片末端に結合した(メタ)アクリロイル基またはスチリル基(ビニルベンジル基)などを介して連鎖(A1)に結合するのが好ましい。
【0009】
上記グラフト共重合体(A)を構成する連鎖(A1)は、スチレン系モノマーを主成分とするポリマー鎖であり、ポリマー鎖(A2)及びポリマー鎖(A3)が結合しているものである。連鎖(A1)には、ポリマー鎖(A2)及びポリマー鎖(A3)を結合する際にこれらのポリマー鎖から由来するエチレン性不飽和基も組み込まれているものである。かかる連鎖(A1)の数平均分子量としては、本発明の目的を達成すれば、特に制限されないが、好ましくは2000〜80000、より好ましくは5000〜30000である。
【0010】
連鎖(A1)を構成するために使用できるモノマー成分としては、スチレン系モノマー単独、またはスチレン系モノマーを主成分とし、他の成分として(メタ)アクリル酸系モノマー等を併用してなる混合物である。かかるスチレン系モノマーとして代表的なもののみ例示すれば、スチレン、ビニルトルエン(メチルスチレン)、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルベンジルアルキルエーテル、ビニルベンジルアルコール、ビニルベンジルアミン、p−ビニルフェノール等が挙げられる。スチレン系モノマーが連鎖(A1)の主成分であるとラジカル共重合性不飽和樹脂と混合した場合、相溶性や安定性に優れ望ましい。
【0011】
また、併用できる(メタ)アクリル酸系モノマーの代表例としては、公知の(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸グリセリルカーボネート、メタアクリル酸イソシアネートエチル、(メタ)アクリル酸エステルが利用できる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの代表的なもののみを例示すれば、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ベンジル、フェニル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ステアリル、ベヘニル、トリフルオロエチルなどのエステル化合物が挙げられる。
【0012】
更に、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸化合物、水酸基やグリシジルエーテル基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、アクリルアミド等のアクリルアミド系単量体、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル系単量体、フマル酸ジエステル系単量体、イタコン酸のモノ及びジエステル系単量体、シクロヘキシルビニルエーテル等ビニルエーテル系単量体も併用することができる。これらは、必要に応じて適宜選択、使用できる。
【0013】
連鎖(A1)中の主成分であるスチレン系モノマーの含有量は特に限定されないが、通常はスチレン系モノマーが50重量%以上であり、好ましくは、70〜99重量%である。通常、連鎖(A1)は、スチレン系モノマー70〜99.9重量%、(メタ)アクリル酸エステルを含む他の不飽和単量体 0.1〜30重量%からなる。その合成方法、及び要求性能に応じて、連鎖(A1)の構成成分を適宜変更することができる。
【0014】
ポリマー鎖(A2)は、ポリオルガノシロキサンを含むシリコン系のポリマー鎖を主成分とし、そのポリマー鎖の片末端に連鎖(A1)と結合可能な部位を有する構造のものである。具体的には、ポリマー鎖(A2)は、連鎖(A1)に組み込まれているエチレン性不飽和基以外の部分、即ちポリオルガノシロキサンを含むシリコン系のポリマー鎖とその末端に連結した結合部位からなる部分で、エチレン性不飽和基を除いた部分からなるものである。より具体的には、例えばポリオルガノシロキサンを含むポリマー鎖末端に連結した(メタ)アクリロイル基のエチレン性不飽和基以外の全ての部分やスチリル基のエチレン性重合性基を除いた全ての部分がポリマー鎖(A2)である。ポリマー鎖(A2)の数平均分子量は、好ましくは1000〜20000、より好ましくは1000〜10000である。
【0015】
ポリマー鎖(A2)の構造は、特に限定されるものではなく、直鎖構造でも、分岐構造をしていてもよい。かかるポリマー鎖中にはポリオルガノシロキサン系セグメント以外にポリエーテル系セグメント、ポリエステル系セグメントを含有していてもよく、目的の性能が発現されるよう適宜選択し使用される。ポリマー鎖(A2)中のポリオルガノシロキサンの含有量(連鎖(A1)との結合部を除いて)は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80〜98重量%である。なお、このポリオルガノシロキサン成分は、グラフト共重合体(A)自身の樹脂混合液への溶解性を制御し、相溶化効果を安定化させるために機能し、また、界面エネルギーの低下にも寄与しているものと考えられる。
【0016】
ポリマー鎖(A3)は、ポリオキシアルキレンエーテル、ポリエステル、及びポリカーボネートから選ばれる1種以上を主成分とし、そのポリマー鎖の片末端に連鎖(A1)と結合可能な部位を有する構造のものである。具体的には、ポリマー鎖(A3)は、連鎖(A1)に組み込まれているエチレン性不飽和基以外の部分、即ちポリマー鎖とその末端に連結した結合部位からなる部分で、エチレン性不飽和基を除いた部分からなるものである。より具体的には、ポリマー鎖末端に連結した(メタ)アクリロイル基のエチレン性不飽和基以外の全ての部分や、スチリル基のエチレン性重合性基を除いた全ての部分がポリマー鎖(A3)である。ポリマー鎖(A3)の数平均分子量は、好ましくは1000〜20000、より好ましくは3000〜10000である。その合成方法や構造等は、特に限定されるものではない。
【0017】
ポリマー鎖(A3)としては、ポリオキシアルキレンエーテルを主成分とするのが好ましい。ポリオキシアルキレンエーテルを構成するために使用できる成分としては、開環重合性単量体が利用でき、好ましくはエチレンオキサイドを主成分とし、エチレンオキサイド単独もしくはエチレンオキサイドと共重合可能な他のアルキレンオキサイドや開環共重合可能な他の環状化合物からなる。他のアルキレンオキサイドとしては、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイサイド、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイド等が挙げられる。特にオキシエチレン−ユニット(単位)を主成分とするポリオキシアルキレンエーテルが好ましい。
【0018】
ここに入れる
また、前述のエチレンオキサイドと開環共重合可能なその他の環状化合物としては、酸無水化合物、例えば、無水コハク酸、無水フタル酸等が挙げられる。また、環状エステル化合物としては、例えばカプロラクトン、バレロラクトン等が挙げられる。さらに、環状炭酸エステル化合物、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチレンカーボネート等も挙げられる。その他、環状化合物以外でアルキレンオキサイドと共重合可能な二酸化炭素も利用できる。
【0019】
エチレンオキサイドを主成分とし、他の環状化合物を共重合して得られるポリオキシアルキレンエーテルを主成分とするポリマー鎖(A3)については、該ラジカル共重合性不飽和樹脂との相溶性が発揮されるものであれば特に限定されず、ポリエチレンオキサイドと他の環状化合物のランダム共重合体やブロック共重合体でもかまわない。また、ポリマー鎖(A3)は、分子量1000未満のエチレンオキサイド系ポリエーテルポリオール化合物やグリコール化合物等と、ジカルボン酸化合物、ジイソシアネート化合物、炭酸エステル化合物、ジグリシジルエーテル化合物等を用いて伸長させたものでもよい。なお、ポリマー鎖(A3)は、直鎖状でも分岐状でもかまわないが、合成法上、直鎖状が望ましい。
【0020】
ポリマー鎖(A3)中のオキシエチレン−ユニット(単位)の含有量(連鎖(A1)との結合部を除いて)は、好ましくは20〜100重量%、特に望ましくは60〜100重量%である。残りの成分は、好ましくはオキシエチレン系以外のポリオキシアルキレンエーテル、ポリエステル及び/又はポリカーボネートである。これは、主成分のオキシエチレン鎖が該ラジカル共重合性不飽和樹脂と分子間力により密接に配位し、アンカー成分として働き、安定分散において極めて重要な成分となるからである。むろん、オキシエチレン鎖以外の成分は、目的の相溶化効果を高めたり、相溶化以外効果も付与するように設計、選択、利用される。
【0021】
ポリマー鎖(A3)のポリオキシアルキレンエーテルの数平均分子量は1000〜20000の範囲にあることが望ましい。この範囲であると、相溶化剤としての性能が高く、また合成が容易となる。特に望ましくは、数平均分子量3000〜8000である。
【0022】
ポリエステルとしては、α,β−不飽和ジカルボン酸または飽和ジカルボン酸と多価アルコールから得られる飽和及び/または不飽和ポリエステル、あるいはカプロラクトン等を開環重合して得られるポリカプロラクトン等である。ポリカーボネートとしては、多価アルコールとジメチルカーボネート等の炭酸エステル化合物とを反応して得られるポリカーボネートや、トリメチレンカーボネート等の環状炭酸エステル化合物を開環重合して得られるポリカーボネート等である。これらは、単独もしくは、2種類以上を併せて用いることができる。
【0023】
α,β−不飽和ジカルボン酸としては、例えばフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、あるいは、これらのジメチルエステル類などが挙げられる。これらのα,β−不飽和ジカルボン酸はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、飽和ジカルボン酸としては、例えばフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、無水コハク酸などが挙げられる。これらの飽和ジカルボン酸はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0024】
一方、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2メチル−1,3プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、トリシクロデカンジメタノール、水素化ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等のグリコール類などのジオール類、トリメチロールプロパンなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどのテトラオール類などが挙げられる。これらの多価アルコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明でのグラフト共重合体(A)を含有する相溶化剤の製造法としては、特に限定されるものではないが、例えば、1)連鎖(A1)のみを予め合成し、別途合成されたポリマー鎖(A2)及び(A3)を高分子反応にて結合させ、目的の(A)を得る法、2)(A1)を構成する不飽和単量体と、ポリマー鎖(A2)及び(A3)の片末端に予め共重合可能な重合性官能基が導入された構造を有するマクロモノマーとを付加共重合させて目的の(A)を得る方法がある。本発明の相溶化剤の好ましい製造法としては、均質な重合体が得られ易いマクロモノマーを用いる2)の合成方法である。
【0026】
本発明の相溶化剤を製造するのに好適に使用できるマクロモノマーとしては、前述のポリオルガノシロキンサン鎖(A2)及びポリオキシアルキレンエーテル、ポリエステル及び/又はポリカーボネート鎖(A3)の片末端に重合性官能基を有するもので、該重合性官能基が連鎖(A1)を構成する不飽和単量体と共重合可能なものである。その官能基としては、好ましくはエチレン性不飽和基である。具体的には、重合性の観点から(メタ)アクリルロイル基、スチリル基が好ましく、その他ビニル基、プロペニル基、アリル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基などが挙げられる。これらの官能基を有する化合物を、前述のポリマー鎖(A2)及びA3)の片末端にのみに化学的に結合させたものを、本発明に利用できるマクロモノマーの代表例とする。
【0027】
具体的には、ポリオルガノシロキサン系マクロモノマーとしては、ポリジメチルシロキサンのモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリジメチルシロキサンのモノビニルベンジルエーテル、ポリジメチルシロキサン−ポリエチレンオキシドブロックポリマーのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられ、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の水酸基含有不飽和単量体と水酸基末端のポリジメチルシロキサンとをイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物で結合させた化合物等も利用できる。
【0028】
ポリエーテル系マクロマーとしてポリエチレンオキサイドのモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレンオキサイドのモノビニルベンジルエーテル、ポリエチレンオキサイドのモノビニルエーテル、ポリエチレンオキサイドのモノアリルエーテル、ポリエチレンオキサイドのモノクロトン酸エステル、メタアクリル酸イソシアネートエチルとポリエチレンオキサイドの当モル反応生成物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の水酸基含有不飽和単量体とポリエチレンオキサイドとをイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物で結合させた化合物等も利用できる。その他、ポリエステル系マクロマーとしてポリカプロラクトンのモノ(メタ)アクリル酸エステル等や、ポリカーボネート系マクロモノマーとしてポリトリメチレンカーボネートのモノ(メタ)アクリル酸エステル等挙げられる。結果として、本発明の目的の相溶化剤として機能するグラフト共重合体(A)が得られれば、マクロモノマー全体の詳細な化学的構造は限定しない。
【0029】
本発明の相溶化剤の主成分であるグラフト共重合体(A)において、ポリマー鎖(A2)及び(A3)の自由末端の化学構造、及び前述のマクロモノマーの重合性官能基がある末端以外の他末端基構造は、特に限定しない。該連鎖合成条件に由来する末端のままでも、化学的に他の構造に変換されたものでも良い。末端官能基は、望ましくは、水酸基、アルコキシエーテル基、アルコキシエステル基、アルキル基である。特にポリマー鎖(A3)では、連鎖(A1)との結合部の分子量が著しく増大すると、ポリマー鎖(A3)中のオキシエチレン−ユニット(単位)の含有率が低下するため、相溶化効果が不安定になる恐れがある。よって炭素数で言えば、20以内、分子量では500以内の該結合部の構造を有するポリマー鎖(A3)が望ましい。
【0030】
グラフト共重合体(A)中の連鎖(A1)、ポリマー鎖(A2)及びポリマー鎖(A3)の重量%比(A1/A2/A3)は、90/0.1/9.9〜20/20/ 60、好ましくは80/1/19〜40/10/50である。特にポリマー鎖(A2)の含有量により相溶化効果が劇的に変化するので、ラジカル共重合性不飽和樹脂と付加重合系重合体の組み合わせにより、十分な最適化を行う必要がある。
【0031】
また、グラフト共重合体(A)の数平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは2000〜100000、より好ましくは8000〜50000であることが望ましい。この分子量の範囲であれば、相溶化剤としての効果がより高くなる。
【0032】
尚、本発明に於ける数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によりポリスチレン標準にて測定して得られた値を指すものである。
【0033】
本発明の相溶化剤のグラフト共重合体(A)の合成反応は、溶媒中で行っても良いし、溶媒を用いなくても良いが、通常は作業性の観点から溶媒中で行われる。溶媒としては、該相溶化剤が溶解するものであり、グラフト共重合体の合成に支障がなければ何を用いても構わない。反応後には、共重合体(A)を溶媒から固体分として単離しても、反応溶媒の溶液のままでもよい。特に、相溶化剤として利用する上で支障がなければ、溶液のままで用いることが好ましい。また、溶液粘度を下げ、利便性を向上させる目的で、スチレン等の不飽和単量体や反応溶媒以外の他の有機溶媒で希釈または、再溶解させることも可能である。例えば、グラフト共重合体(A)と反応溶媒とを含むものを相溶化剤組成物として用いる。
【0034】
グラフト共重合体(A)の合成時の重合開始剤としては、特に限定されないが、一般的には、ラジカル重合系開始剤、例えばベンゾイルパーオキサイドのような有機過酸化物やAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)等のアゾ化合物が利用できる。なお目的の重合体が得られれば、ラジカル重合系以外のアニオン、カチオン重合系開始剤を用いることもできる。
【0035】
本発明の相溶化剤は、ラジカル共重合性不飽和樹脂と、低収縮化剤や物性向上剤として添加される付加重合系重合体(熱可塑性樹脂)とに配合され、両者の相溶性を向上させることができる。該相溶化剤の添加量は、ラジカル共重合性不飽和樹脂と付加重合系重合体との相溶性を向上せしめれば特に制限されないが、ラジカル共重合性不飽和樹脂と付加重合系重合体の合計100重量部当たり、好ましくは0.1〜10重量部であり、より好ましくは0.5〜3重量部である。かかる量であればより相溶化効果が高く、且つ硬化物の物性も好ましいものとなる。
【0036】
本発明でのラジカル共重合性不飽和樹脂組成物とは、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂、あるいはアクリル樹脂等のラジカル共重合性不飽和樹脂、付加重合系重合体と重合性不飽和単量体とからなるものである。
【0037】
本発明に使用され得る不飽和ポリエステルの組成は、特に制限されるものではなく、α,β−不飽和ジカルボン酸または、場合により飽和ジカルボン酸を含むα,β−不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとから得られるものである。α,β−不飽和ジカルボン酸及び飽和ジカルボン酸としては、前記するものを使用することができる。かかる不飽和ポリエステルとしては、数平均分子量が好ましくは500〜6000、より好ましくは1000〜4000のものが使用され得る。
【0038】
さらに、上記不飽和ポリエステルを、グリシジルメタアクリレート、ビスフェノールA型エポキシ等のエポキシ化合物、トルエンジイソシアネート、イソプロペニル−ジメチル−ベンジルイソシアネートのようなイソシアネート化合物等で変性した樹脂でもよい。
【0039】
また、上記α,β−不飽和ジカルボン酸、飽和ジカルボン酸および多価アルコールにジシクロペンタジエンを添加し共に反応し得られるジシクロペンタジエン変性不飽和ポリエステルの使用も好適である。ジシクロペンタジエン変性樹脂の合成方法は特に限定しないが、マレイン酸由来のカルボキシ基にジシクロペンタジエンを付加反応させる方法により得られるポリエステルの利用が、反応性が高く望ましい。
【0040】
また、回収ポリエチレン−テレフタレート(PET)と多価アルコールを高温で反応させたグリコール分解物を主たる原料とし、上記α,β−不飽和カルボン酸、飽和カルボン酸および多価アルコール、特に水素化ビスフェノールAと共に反応し得られるPET系不飽和ポリエステルにも本発明を適用すれば、問題なく使用できる。
【0041】
本発明に用いることができるビニルエステル樹脂は、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応によって得られる反応生成物である。エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂などの多価フェノール類のグリシジルエーテル類、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルなどの多価アルコールのグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルp−オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル類、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルm−キシリレンジアミン、トリグリシジルP−アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン類、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独もしくは2種以上を併用してもよい。
【0042】
不飽和一塩基酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマー、モノメチルマレート、モノメチルフマレート、モノシクロヘキシルフマレート、あるいはソルビン酸等が挙げられる。これら酸は単独もしくは、2種以上を併せて用いられる。
【0043】
さらに、得られたビニルエステル樹脂を無水マレイン酸、無水コハク、無水酢酸等の酸無水物、トルエンジイソシアネート、イソプロペニル−ジメチル−ベンジルイソシアネートのようなイソシアネート化合物等で変性してもよい。
【0044】
本発明で使用し得るビニルウレタン樹脂とは、ポリオール化合物、有機ポリイソシアネート化合物、水酸基含有(メタ)アクリレート類から得られるオリゴマーである。ポリオール化合物とは、分子内に複数の水酸基を有する化合物の総称であるが、水酸基の代わりにイソシアネート基と反応しうる活性水素を有する官能基、例えばカルボキシル基、アミノ基、メルカプト基を有する化合物でも構わない。かかるポリオール化合物としては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール、カプロラクトン系ポリオールなどが挙げられ、それぞれ単独もしくは2種以上を併せて用いられる。有機ポリイソシアネート化合物としては後述のものを用いることができる。
【0045】
有機ポリイソシアネート化合物として特に代表的なもののみを例示すれば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等が用いられる。その他、各種イソシアネート化合物をイソシアヌレート化せしめて得られる多量体も挙げられる。これらは単独もしくは2種以上を併せて用いられる。
【0046】
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸エステルを主たる成分とする重合性不飽和単量体から導かれる熱可塑性アクリル重合体と重合性不飽和単量体から構成されるものである。(メタ)アクリル酸エステルを必須成分とし、必要により上記(メタ)アクリル酸エステル類と共重合可能な他の重合性不飽和単量体を併用し、該単量体溶液を重合して得られるものである。このアクリル重合体は、該重合性単量体に溶解させたシラップの形で用いられるため、分子量10万以下のものが好ましく、懸濁重合、溶液重合等、一般的重合方法で得ることができる。また、該単量体を10〜40重量%を予備重合したシラップをそのまま用いることもできる。
【0047】
該ラジカル共重合性不飽和樹脂に併用できる重合性不飽和単量体として特に代表的なもののみを例示すれば、スチレン類、アクリルエステル類、メタアクリルエステル類、ジアリルフタレートエステル類、カルボン酸ビニルエステル類、ビニルエーテル類等の公知のものが使用できる。しかしこれに限定されるものでなく、樹脂液の用途、要求性能に応じて各種の不飽和単量体を適宜選択し、使用することができる。
【0048】
不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂あるいはアクリル樹脂などのラジカル共重合性不飽和樹脂に対する重合性不飽和単量体の配合量は、特に限定されるものではないが、10〜70重量%の範囲内が好ましく、20〜50重量%の範囲内がさらに好ましい。ラジカル共重合性不飽和樹脂:重合性不飽和単量体の重量%比は、好ましくは30〜90重量%:10〜70重量%、より好ましくは50〜80重量%:20〜50重量%である。
【0049】
本発明において、ラジカル共重合性不飽和樹脂と混合される該付加重合系重合体(熱可塑性樹脂)としては、特に限定されるものではないが、目的の低収縮化や物性向上(破壊靭性等)効果が発揮されるものを成形用途、条件等に応じて適宜選択し、使用することができる。特に代表的なもののみを例示すれば、スチレンを主成分としたポリスチレン系樹脂、例えば、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、スチレン−共役ジエンブロック共重合体、スチレン−水添共役ジエンブロック共重合体等が挙げられる。その他、スチレンを含まない(メタ)アクリル酸エステル系重合体、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸n−ブチルエステル等が挙げられる。また、これら重合体中の二重結合に、他の化合物を反応させたものも用いることができる。
【0050】
前述のスチレン−共役ジエン系ブロック共重合体とは、スチレンと共役ジエンを重合させて得られるスチレン成分と共役ジエン成分からなるブロック共重合体であり、共役ジエン成分としてブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどが用いられる。さらに、これらスチレン−共役ジエンブロック共重合体を水素添加して得られるスチレン−水添共役ジエンブロック共重合体であっても良い。ブロック共重合体の構成単位は特に限定されるものではなく、スチレン−共役ジエン、スチレン−共役ジエン−スチレン、共役ジエン−スチレン−共役ジエンなどのスチレンと共役ジエンの繰り返し単位のものも含まれる。具体的には、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・ブチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0051】
本発明で使用される付加重合系重合体の使用量については、その目的を発揮し得る量であれば特に制限されないが、ラジカル共重合性不飽和樹脂と付加重合系重合体の重量%比は、好ましくは95/5〜60/40、より好ましくは85/15〜70/30重量%である。
【0052】
本発明では、ラジカル共重合性不飽和樹脂、重合性不飽和単量体、付加重合系重合体及び相溶化剤を混合してなる樹脂組成物として使用することができる。尚、使用方法によっては、ラジカル共重合性不飽和樹脂、重合性不飽和単量体及び相溶化剤からなる樹脂組成物に付加重合系重合体を後添加することもできる。
【0053】
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、重合禁止剤、硬化剤、充填材、強化材、内部離型剤、着色剤、その他各種添加剤を加えることができる。例えば重合禁止剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の重合禁止剤を用いることができる。具体的には、ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、トルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ナフテン酸銅、塩化銅等が挙げられる。これらの重合禁止剤は、一種のみを用いても良く、また、二種以上を適時混合して用いても良い。尚、上記重合禁止剤の添加量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部である。
【0054】
硬化剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の硬化剤を用いることができる。例えば、熱硬化剤、紫外線硬化剤、電子線硬化剤等から選択される1種類以上のものが挙げられる。硬化剤の使用量は、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、特に好ましくは1〜5重量部である。
【0055】
熱硬化剤としては、有機過酸化物が挙げられ、具体的にはジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系化合物等の公知のものが使用され、成形条件に応じて適宜選択される。その使用量は、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、特に好ましくは0.5〜3重量部である。
【0056】
紫外線硬化剤としては、光増感物質である。具体的には、アシルホスフィンオキサイド系、ベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、チオキサントン系化合物等の公知のものが使用され、成形条件に応じて適宜選択される。また電子線硬化剤としては、ハロゲン化アルキルベンゼン、ジサルファイド系化合物等がある。それらの使用量は、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、特に好ましくは0.5〜3重量部である。
【0057】
また、前述の硬化剤と併用し、硬化を促進する添加剤(硬化促進剤)としては、特に限定されるものではないが、例えばナフテン酸コバルトやオクテン酸コバルト等の金属塩類、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)パラトルイジン、ジメチルアセトアセタミド等の3級アミン類等が挙げられ、必要により選択、使用される。その使用量は、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部、特に好ましくは0.1〜1重量部である。
【0058】
本発明の樹脂組成物に利用できる充填剤として、特に代表的なもののみを例示すれば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオリン、クレー、セライト、アスベスト、パーライト、バライタ、シリカ、ケイ砂、ドロマイト、石灰石、アルミニウム微粉、中空バルーン、アルミナ、ガラス粉、水酸化アルミニウム、寒水石、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、二酸化モリブデン等が挙げられる。これらの充填材は、作業性や得られる成形品の強度、外観、経済性などを考慮して選ばれるが、通常炭酸カルシウムや水酸化アルミニウム、シリカ、タルクなどがよく用いられる。なお、充填剤には表面処理されたものも含まれる。その使用量は、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは50〜300重量部、特に好ましくは100〜200重量部である。
【0059】
本発明の樹脂組成物に利用できる強化材としては、通常繊維強化材として用いられるものでよく、例えば、ガラス繊維、ポリエステル繊維、フェノール繊維、ポリビニルアルコール繊維、芳香族ポリアミド繊維、ナイロン繊維、炭素繊維がある。これらの形態としては、例えば、チョップドストランド、チョップドストランドマット、ロービング、織物状などが挙げられる。これらの繊維強化材は組成物の粘度や得られる成形品の強度などを考慮して選ばれる。その使用量は、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは10〜150重量部、特に好ましくは20〜100重量部である。
【0060】
本発明の樹脂組成物に利用できる内部離型剤としては、例えば、ステアリン酸などの高級脂肪酸、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸塩、あるいはアルキルリン酸エステル、変性シリコンオイルなどが挙げられる。しかし、これらに限定されるものではなく、成形条件に応じて各種離型剤を適宜選択し、使用することができる。その使用量は、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、特に好ましくは0.5〜5重量部である。
【0061】
本発明の樹脂組成物に利用できる着色剤として、特に代表的なもののみを例示すれば、チタンホワイト、カーボンブラック等無機顔料類やフタロシアニンブルー、キナクリドンレッド等有機顔料類があり、色相に応じて、種々の着色剤を用いることができる。なお一般的には、顔料を不飽和ポリエステル樹脂等に均一分散させたトナーとして添加する場合が多い。その使用量は、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、特に好ましくは1〜10重量部である。
【0062】
その他各種添加剤としては、減粘剤等の粘度調節剤、脱泡剤、シランカップリング剤、パラフィン等の空気遮断剤等が挙げられ、市販品が利用できる。
【0063】
また、シート・モールディング・コンパウンド(以降SMCと略記)、バルク・モールディング・コンパウンド(以降BMCと略記)などの成形材料を作製する場合には、増粘剤として酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの金属酸化物や水酸化物、クルードMDI等の多官能イソシアネート化合物がある。しかしこれに限定されるものでなく、成形材料の用途、要求性能に応じて各種増粘剤を適宜選択し、使用することができる。なお一般的には、増粘度を制御し易い酸化マグネシウムが用いられる。その使用量は、成形材料100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、特に好ましくは0.5〜2重量部である。
【0064】
本発明の上記した相溶化剤、付加重合系重合体、ラジカル共重合性不飽和樹脂、重合性不飽和単量体などを含む樹脂組成物は、成形材料(SMC、BMCとしてのプレス成形、スプレー成形、ハンドレイアップ成形、注型、引き抜き成形)、被覆材料(塗料、パテ、シーリング材、ライニング材)として用いることができる。
【0065】
また、本発明の成形材料としては、上記の樹脂組成物、重合禁止剤、硬化剤、充填材、繊維強化材からなり、必要により内部離型剤、着色剤等の各種添加剤を加えたものが好適である。
【0066】
本発明の成形材料から得られる成形品としては、浴槽、キッチンカウンター、洗面化粧台、防水パン、浄化槽等の住設機器、人造大理石、パネル、波板、引き抜き材、ポリマーコンクリート、風力発電用ブレード等の土木建築材料、ボート、船等の船舶、ランプリフレクター等の車輌用部品、ボタン、ボーリングボールの日用品などが挙げられる。
【0067】
本発明によれば、従来技術では容易に成しえなかったラジカル共重合性不飽和樹脂と低収縮化剤の相溶性を改善し、さらに高度に分離を防止することで、樹脂混合物の安定一液化を可能する。さらに分離に伴う成形時の欠陥をなくすことを可能とする実用的な相溶化剤を提供できる。よって、本発明の相溶化剤を用いた樹脂組成物は、低収縮化剤の分離のないものであり、その成形材料は、均質性に優れるため、スカミンク゛がなく、均一着色性、表面平滑性、表面光沢等に優れ、極めて高品位な成形品を得ることができる。
【0068】
【実施例】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、文中「部」とあるのは、重量部を示すものである。
【0069】
(合成例1)(本発明の相溶化剤<グラフト共重合体(A)>の調製)
温度計、窒素導入管、撹拌機、コンデンサ及び滴下ロートを設けた1Lのフラスコに、溶媒としてキシレン200gを仕込み、窒素気流下120℃まで昇温した。次にスチレン192gに、シリコン鎖系マクロモノマーとしてポリジメチルシロキサン鎖の数平均分子量が5000のモノメタクリル酸エステル(SILAPANE FM−0721、チッソ社製)18g、ポリエーテル系マクロモノマーとしてポリエーテル鎖の数平均分子量が4000のモノメトキシ−ポリエチレンオキシド−モノメタクリル酸エステル140gと、重合開始剤として AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)1.6gを溶解させたプレミックス液を調製した。次にこの混合液を滴下ロートより約3時間かけて滴下し付加重合させた。滴下後、120℃を保持しながらさらに8時間反応させ、目的のグラフト共重合体(A)を得た。 反応後、得られた樹脂溶液を40℃まで冷却しキシレン33gを加え、有効成分60重量%の相溶化剤組成物を得た。これを相溶化剤溶液SES−1とする。 得られた重合体(A)のGPCで測定した数平均分子量は、12000であった。
【0070】
(合成例2)( 同上 )
合成例1と同様にして、キシレン200g、スチレン192g、シリコン鎖系マクロモノマーとしてポリジメチルシロキサン鎖の数平均分子量が1000のモノメタクリル酸エステル(SILAPANE FM−0711、チッソ社製)18g、ポリエーテル系マクロモノマーとしてポリエーテル鎖の数平均分子量4000のモノメトキシ−ポリエチレンオキシド−モノメタクリル酸エステル140g、AIBN1.6gを原料とし、120℃にて付加重合させ、目的のグラフト共重合体(A)を得た。さらに合成例1と同様にして、キシレン33gを加え、有効成分60重量%の相溶化剤組成物を得た。これを相溶化剤溶液SES−2とする。得られた重合体(A)のGPCで測定した数平均分子量は、11000であった。
【0071】
(合成例3)( 同上 )
合成例1と同様にして、キシレン200g、スチレン273g、シリコン鎖系マクロモノマーとしてポリジメチルシロキサン鎖の数平均分子量が5000のモノメタクリル酸エステル(SILAPANE FM−0721、チッソ社製)7g、ポリエーテル系マクロモノマーとしてポリエーテル鎖の数平均分子量4000のモノメトキシ−ポリエチレンオキシド−モノメタクリル酸エステル70g、AIBN1.6gを原料とし、120℃にて付加重合させ、目的のグラフト共重合体(A)を得た。さらに合成例1と同様にして、キシレン33gを加え、有効成分60重量%の相溶化剤組成物を得た。これを相溶化剤溶液SES−3とする。得られた重合体(A)のGPCで測定した数平均分子量は、10000であった。
【0072】
(合成例4)( 同上 )
合成例1と同様にして、キシレン200g、スチレン175g、シリコン鎖系マクロモノマーとしてポリジメチルシロキサン鎖の数平均分子量が1000のモノメタクリル酸エステル(SILAPANE FM−0711、チッソ社製)35g、ポリエーテル系マクロモノマーとしてポリエーテル鎖の数平均分子量6000のモノメトキシ−ポリエチレンオキシド−モノメタクリル酸エステル140g、AIBN1.6gを原料とし、120℃にて付加重合させ、目的のグラフト共重合体(A)を得た。さらに合成例1と同様にして、キシレン33gを加え、有効成分60重量%の相溶化剤組成物を得た。これを相溶化剤溶液SES−4とする。得られた重合体(A)のGPCで測定した数平均分子量は、13000であった。
【0073】
(合成例5)(比較の相溶化剤の合成)
合成例1と同様にして、キシレン200g、スチレン210g、ポリエーテル系マクロモノマーとしてポリエーテル連鎖の数平均分子量4000のモノメトキシ−ポリエチレンオキシド−モノメタクリル酸エステル140g、AIBN 1.6gを原料とし、120℃にて付加重合させ、比較のグラフト共重合体を得た。さらに合成例1と同様にして、キシレン33gを加え、固形分60重量%のシリコン系ポリマー鎖を含有しない比較の相溶化剤組成物を得た。これを相溶化剤溶液SE−1とする。得られた重合体のGPCで測定した数平均分子量は、11000であった。
【0074】
(合成例6)(低収縮化剤−ポリスチレン溶液の調製)
合成例1と同様なフラスコに、スチレン650gを仕込み、50℃に加熱する。攪拌下、重量平均分子量約25万のポリスチレン(デイックスチレン CR-3500、大日本インキ化学製)を350g、ハイドロキノン0.1gを添加、溶解させ固形分35重量%の樹脂溶液を得た。これを低収縮化剤溶液LP−1とする。
【0075】
(合成例7)(不飽和樹脂−不飽和ポリエステル樹脂の調製)
窒素ガス導入管、還流コンデンサ、攪拌機を備えた2Lのガラス製フラスコに、プロピレングリコール168g、ネオペンチルグリコール208g、水素化ビスフェノールA480g、フマル酸696gを仕込み窒素気流下、加熱を開始する。内温200℃にて、常法にて脱水縮合反応を行い、酸価が26KOHmg/gになったところで、180℃まで冷却し、ハイドロキノン0.2gを添加する。さらに160℃まで冷却し、不飽和ポリエステルを得た。次に、この不飽和ポリエステルをスチレン890gに溶解させ、固形分60重量%の不飽和ポリエステル樹脂液を得た。これをラジカル重合性不飽和樹脂液VP−1とする。
【0076】
(合成例8)(不飽和樹脂−不飽和ポリエステル樹脂の調製)
合成例7と同様の2Lのフラスコに、2−メチル−1,3プロパンジオール504g、無水マレイン酸588g、純度95%のジシクロペンタジエン264gを仕込み窒素気流下、加熱を開始する。発熱に注意しながら、昇温する。内温200℃にて、常法にて脱水縮合反応を行い、酸価が30KOHmg/gになったところで、180℃まで冷却し、ハイドロキノン0.19gを添加する。さらに150℃まで冷却し、不飽和ポリエステルを得た。次に、この不飽和ポリエステルをスチレン856gに溶解させ、固形分60重量%の不飽和ポリエステル樹脂液を得た。これをラジカル重合性不飽和樹脂液VP−2とする。
【0077】
(合成例9)(不飽和樹脂−ビニルエステル樹脂の調製)
窒素および空気導入管を設けた2Lの4つ口フラスコに、水添化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量410)826g、メタクリル酸174g、ハイドロキノン0.4gを仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、90℃まで昇温した。ここに2−メチルイミダゾール2.0gを入れ、105℃に昇温して10時間反応させた。このようにしてビニルエステル樹脂を得た。次に、このビニルエステル樹脂をスチレン666g、トルハイドロキノン0.15gに溶解させ、固形分60重量%のビニルエステル樹脂液を得た。これをラジカル重合性不飽和樹脂液VP−3とする。
【0078】
[樹脂組成物の調製及びその相溶化効果の安定性]の評価
(実施例1)
合成例7で得られた不飽和樹脂液(VP−1)80部、合成例6で得られた低収縮化剤液(LP−1)20部と、合成例1で得られた相溶化剤溶液(SES−1)2部(有効成分として約1.2部)を200ccガラス瓶に仕込み、攪拌機にて2500rpm、5分間混合し、樹脂混合液(樹脂組成物)を得た。
【0079】
得られた樹脂混合液を室温下静置し、調製1日後、30日後にサンプル採取する。このサンプル液をスライドガラスに滴下し、カバーグラスを掛けた後、20gf/cm2の荷重を2分間負荷した後、光学顕微鏡により分散状態を確認する。その時画像を撮影し、得られた画像より低収縮化剤液滴の平均の直径を算出した。なお算出の基準として、付属の標準スケールを使用した。これらの結果を基に相溶化性能を5段階に分類して評価した。また、硬化過程の分散形態を確認するために、サンプル液2gに対し硬化剤パーブチルZ(日本油脂製)を0.02g添加混合した液を調製した後、同様にして光学顕微鏡にて画像撮影を行う。この時ホットステージを用いて、スライドガラスを30℃から140℃まで、20℃/分の速度で加熱し、さらに140℃にて4分間保持した後、約15分かけて30℃まで冷却した。その間の分散形態変化の追跡を行った。硬化終了後の画像として30℃冷却時の画像を評価した。なお用いた機器は以下の通りである。
光学顕微鏡:ニコン製、FX、対物レンズ40倍にて観察。
ホットステージ:メトラー製、FP−82
デジタルカメラ:富士写真フイルム製、HC−300
[相溶性の評価]
1:液滴の平均直径が10μm以上。
2:液滴の平均直径が5μm以上10μm未満。
3:液滴の平均直径が3μm以上5μm未満。
4:液滴の平均直径が3μm未満。
なお実施例1で得られた組成物の硬化前の相溶性は、調製1日後、30日後も4であった。さらに調製1日後、30日後の硬化追跡においても良好な分散安定性を発現し、硬化終了後の相溶性も4であり、良好な相溶性が確認された。
【0080】
(実施例2〜4)
相溶化剤組成物を合成例2〜4で得られた(SES2〜4)に変更した以外は、実施例1に準じて、樹脂組成物を調製した。この液の相溶性を実施例1と同様に評価した。その結果を実施例1も含め、表1に示す。
【0081】
(比較例1)
相溶化剤組成物を合成例5で得られた(SE−1)に変更する以外は、実施例1に準じて、樹脂組成物を調製した。この液の相溶性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
<表中の記号の説明>
SM:スチレン、PEO:ポリエチレンオキサイド,DMSi:ポリジメチルシロキサン、PS:ポリスチレン、UP:不飽和ポリエステル樹脂
【0084】
(実施例5、6)
不飽和樹脂溶液を合成例8、9で得られた(VP−2〜3)に変更した以外は、実施例1に準じて、樹脂組成物を調製した。この液の安定性を実施例1と同様に評価した。その結果を表2に示す。
【0085】
(比較例2、3)
不飽和樹脂溶液を合成例8、9で得られた(VP−2〜3)に変更した以外は、比較例1と同様の樹脂組成物を調製した。この液の相溶性を実施例1と同様に評価した。その結果を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
<表中の記号の説明>
SM:スチレン、PEO:ポリエチレンオキサイド,DMSi:ポリジメチルシロキサン、PS:ポリスチレン、UP:不飽和ポリエステル樹脂、VE:ビニルエステル樹脂。
【0088】
(実施例7、8)
相溶化剤組成物を合成例3で得られた(SES−3)、不飽和樹脂液を合成例8、9で得られた(VP−2、3)に変更した以外は、実施例1に準じて、樹脂組成物を調製した。この液の安定性を実施例1と同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0089】
【表3】
【0090】
<表中の記号の説明>
SM:スチレン、PEO:ポリエチレンオキサイド,DMSi:ポリジメチルシロキサン、PS:ポリスチレン、UP:不飽和ポリエステル樹脂、VE:ビニルエステル樹脂。
【0091】
実施例9 (成形材料及び成形品の調製)
合成例7で得られた不飽和樹脂(VP−1)80部に対し、合成例6で得られた低収縮化剤液(LP−1)20部、合成例1で得られた相溶化剤溶液(SES−1)2部、パラベンゾキノン0.06部、ステアリン酸亜鉛4部、炭酸カルシウム140部、顔料トナー(ホ゜リトンク゛レーPT−8809、大日本インキ化学製)10部、硬化剤BIC−75(化薬アクゾ製)1.0部を混合し、均一に分散するまで充分に攪拌、コンパウンドとした。得られたコンパウンドを調製1日後に、増粘剤として酸化マグネシウム1.0部を添加、混合攪拌した後、補強材として繊維長1インチのガラス繊維に含浸させ、シート状のSMC(成形材料)を得る。このSMCの両面は、ポリエチレンフイルムで保護し、さらにスチレンを透過させないアルミ蒸着フイルムで包装、保存する。なお、このSMCのガラス含有量(GC%)は、28%に設定した。
【0092】
このようにして得られたSMC(成形材料)は、40℃にて24時間熟成した後、常温にて静置、保管する。SMC製造3日後に、上型145℃、下型135℃に調整した金型に供給し、圧力70kgf/cm2(面圧)で5分間加圧保持することによって30×30cm、厚さ3mmの平板に成形した。得られた成形品のスカミング、均一着色性、表面平滑性、光沢の評価は、下記に示す方法で行った。結果を表4に示した。
【0093】
[成形の外観評価]
スカミングの評価:目視によって、スカミングの有無を判定。
均一着色性の評価:目視での評価とともに色差計(日本電色工業製カラーマシンΣ80)を使用し、成形品の任意の直線上で1cm間隔で12点以上のL値を測定する。該L値の平均値を算出し、それを標準としてL値のばらつき(標準偏差)を算出し指標とする。
表面平滑性の評価:目視評価と、面歪測定機SURFMATIC(東京貿易(株))を使用し、表面凹凸の2次微係数を測定する。
表面光沢:目視および光沢計(村上色彩技術研究所:GM26D)を使用し、60°光沢により評価。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
(実施例10)
相溶化剤組成物を合成例3で得られた(SES−3)に変更する以外は、実施例9と同様にしてSMCを調製し、成形品を得た。さらに同様の評価を行った。その結果を表4に示す。
【0098】
(実施例11)
不飽和樹脂を合成例8で得られた(VP−2)に変更する以外は、実施例9と同様にしてSMCを調製し、成形品を得た。さらに同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0099】
(比較例4)
相溶化剤組成物を合成例5で得られた(SE−1に変更する以外は、実施例9と同様にしてSMCを調製し、成形品を得た。さらに同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0100】
【表4】
【0101】
<表中の記号の説明>SM:スチレン、PEO:ポリエチレンオキサイド,DMSi:ポリジメチルシロキサン、PS:ポリスチレン、UP:不飽和ポリエステル樹脂。
【0102】
表1〜表3に記載の結果から明らかなように、本発明の条件を満たした相溶化剤溶液(SES−1〜4)を用いた実施例1〜8はいずれも高い相溶化効果が得られ、分散状態の経時変化も極めて少なく、安定分散した樹脂液が得られた。一方、本発明の条件を満たしていない相溶化剤溶液(SE−1)を用いた比較例1〜3は、安定した相溶化効果が得られず、分散形態の経時変化が起きやすい傾向にある。
【0103】
また、表4に記載の実施例9〜11の結果から明らかなように、いずれも本発明の相溶化剤により低収縮化剤の分離に伴う成形欠陥が改善され、スカミンク゛のない、均一着色性、表面平滑性、表面光沢が高度に達成された成形品を得ることが出来た。比較例4は、本発明の用件を満たしていないため、低収縮化剤の分散形態の経時変化に起因する成形欠陥が起きやすい傾向にあり、成形品として品質がやや劣った。
【0104】
【発明の効果】
本発明の相溶化剤は、従来技術では容易に成しえなかったラジカル共重合性不飽和樹脂と低収縮化剤の相溶性を高度に改善し、安定微分散することで、樹脂混合物の一液化状態がより優れ、さらに経時的な分離に伴う成形時の欠陥をなくすことができる。本技術を用いた樹脂組成物は、低収縮化剤の分離のないものであり、またその成形材料は、均質性に優れるため、スカミンク゛がなく、均一着色性、表面平滑性、表面光沢等が高度に達成され、極めて高品位な成形品を提供することができる。
Claims (12)
- ラジカル共重合性不飽和樹脂と付加重合系重合体とを相溶させる為の相溶化剤であり、スチレン系モノマーを主成分として重合反応により得られるポリマーである連鎖(A1)に、必須成分としてポリオルガノシロキサンを含むシリコン系ポリマー鎖(A2)、及びポリオキシアルキレンエーテル、ポリエステル及び/又はポリカーボネートを主成分とするポリマー鎖(A3)が結合してなり、グラフト共重合体(A)中の連鎖(A1)、ポリマー鎖(A2)および(A3)の重量%比(A1/A2/A3)が、90/0.1/9.9〜20/20/60であるグラフト共重合体(A)を含有してなる相溶化剤。
- グラフト共重合体(A)のポリマー鎖(A2)及び(A3)の数平均分子量が、1000〜20000である請求項1記載の相溶化剤。
- ポリマー鎖(A2)及び(A3)が、それぞれのポリマー鎖に結合した(メタ)アクリロイル基またはスチリル基を介して、連鎖(A1)に結合してなる請求項1又は請求項2記載の相溶化剤。
- グラフト共重合体(A)のポリマー鎖(A3)中のオキシエチレン−ユニット(単位)の含有量が20〜100重量%である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の相溶化剤。
- グラフト共重合体(A)の連鎖(A1)を形成する成分が、スチレン系モノマーを主とする不飽和単量体と、ポリマー鎖(A2)及び(A3)の片末端に結合にしている(メタ)アクリロイル基またはスチリル基を有する化合物の重合性部位からなる請求項1〜請求項4のいずれかに記載の相溶化剤。
- グラフト共重合体(A)のポリマー鎖(A2)が、ポリオルガノシロキサンを含むシリコン系ポリマー鎖を主成分とし、その分子の片末端に連鎖(A1)と結合部位を有する構造である請求項1〜請求項5のいずれかに記載の相溶化剤。
- グラフト共重合体(A)のポリマー鎖(A3)が、ポリオキシアルキレンエーテル、ポリエステル及び/又はポリカーボネート系ポリマー鎖を主成分とし、その分子の片末端に連鎖(A1)と結合部位を有する構造である請求項1〜請求項6のいずれかに記載の相溶化剤。
- グラフト共重合体(A)が、連鎖(A1)を形成するスチレン系モノマーを主成分とする不飽和単量体と、ポリマー鎖(A2)の片末端に(メタ)アクリロイル基またはスチリル基を有するマクロモノマーと、ポリマー鎖(A3)の片末端に(メタ)アクリロイル基またはスチリル基を有するマクロモノマーとを、付加共重合させて得られるものである請求項1〜請求項7のいずれかに記載の相溶化剤。
- 請求項1〜請求項8に記載の相溶化剤、ラジカル共重合性不飽和樹脂、重合性不飽和単量体を含むことを特徴とするラジカル共重合性不飽和樹脂組成物。
- 請求項1〜請求項8に記載の相溶化剤、付加重合系重合体、ラジカル共重合性不飽和樹脂、重合性不飽和単量体を含むことを特徴とするラジカル共重合性不飽和樹脂組成物。
- 請求項10に記載のラジカル共重合性不飽和樹脂組成物を含むことを特徴とする成形材料。
- 請求項11に記載の成形材料を用いたことを特徴とする成形品。
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