JP4172145B2 - 相溶化剤、ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物、成形材料及び成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラジカル共重合性不飽和樹脂と、低収縮化、物性向上等を主目的として添加される付加重合系重合体とを相溶化できる新規相溶化剤、ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物、成形材料及び成形品に関するものである。より詳しくは、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂等のラジカル共重合性不飽和樹脂と、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアセテート、アクリルゴム等の熱可塑性樹脂からなる付加重合系重合体との二成分の相溶性を著しく改善し、相溶性の悪さに起因した、保存上、成形上の問題を解決する極めて有効な相溶化剤に関するものである。さらには、ラジカル共重合性不飽和樹脂と付加重合系重合体とを含む樹脂混合物が分離するのを防止し、安定な分散状態、つまり一液化を可能にすることにより、製品の高付加価値を図ることを可能にする相溶化剤、ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物、成形材料及び成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ラジカル共重合性不飽和樹脂は、成形材料の原料樹脂として好適に用いられている。しかし、ラジカル共重合性不飽和樹脂を用いた成形材料は、硬化時に起こる体積収縮が、成形品の反り、クラック等を引き起こすと言った大きな問題がある。この問題を改良する目的で、種々の熱可塑性樹脂、例えばポリスチレン、スチレンブタジエンゴム等の低収縮化剤が用いられている。しかし、これら低収縮化剤は、ラジカル共重合性不飽和樹脂との相溶性が低く、混合後の経時分離が避けられないため、樹脂混合物の分散安定性に乏しく、樹脂混合物の一液化が困難である。また前記の樹脂混合物から得られる成形品においては、低収縮化剤の分離等に起因するスカミング、色ムラなどの各種成形外観の欠陥が発生しやすい。
【0003】
そこで、第三成分としての相溶化剤を添加する方法が種々検討されている。例えば、米国特許3836600号にはリビングアニオン重合法により得られるスチレン−エチレンオキサイドブロック共重合体を相溶化剤とした例が示されている。この相溶化剤は、高い相溶化効果を示し、長期に亘り安定な分散状態を継続することができるものの、合成方法の特殊性から、工業的な大量製造が困難である。
【0004】
一方、低収縮化剤に、酢酸ビニルブロックや飽和ポリエステルブロック等を導入した付加重合体を使用する手法にて、相溶性を改善する方法が検討されている(例えば、特開平3−174424号公報、特開平11−92646号公報)。これら改良型の低収縮化剤は、分離までの時間を遅延する効果はあるものの、本質的に相溶性を改善し安定な分散状態を得るには至っていない。また前述の技術は、特定の構造を有する重合体に限られ、必要物性、用途等に応じて多種の付加重合体を低収縮化剤として適宜選択、使用する利便性は提供されていない。
また、ビニルエステル樹脂を用いるSMC、BMC等成形材料に添加する粘度低減剤としてスチレン・マレイン酸ハーフエステル・ポリエチレングリコールの共重合体が、米国特許第3947422号で提案されている。しかし、残存するマレイン酸由来のカルボキシル基が、SMCとした時に炭酸カルシウム等充填剤に吸着され、本発明目的の優れた相溶化効果を得ることができない。さらに、我々は不飽和ポリエステルとポリスチレンのみの充填剤を含有しない系での実験でも、相溶化効果がほとんどない場合があることを確認している。よって、本発明の効果として期待する多く種類の不飽和樹脂と付加重合系重合体との一液化、成形品のスカミング、均一着色性、表面平滑性、光沢等での改善は、期待できない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ラジカル共重合性不飽和樹脂と、低収縮化、物性向上を目的として添加される付加重合系重合体(熱可塑樹脂)との相溶性を向上せしめ、前記二成分の分離に伴う成形時の成形欠陥を改善し、あるいは樹脂混合液状態で長期に亘り安定な分散状態を可能とする相溶化剤を提供することにある。即ち、従来技術では成しえなかったラジカル共重合性不飽和樹脂と付加重合系重合体との分離を防止することで、樹脂混合物の一液化を可能とし、分離に伴う成形時の欠陥(スカミング、均一着色性、平滑性、光沢)をなくすことを可能とする、実用的な相溶化剤、それを含むラジカル共重合性不飽和樹脂組成物、成形材料及び成形品を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの課題について鋭意研究の結果、特定の構造を有するグラフト共重合体が、前述の相溶化剤として極めて有用なことを見出し、本発明に到達した。
【0007】
即ち、本発明は、ラジカル共重合性不飽和樹脂と、付加重合系重合体とを相溶させる為の相溶化剤であって、連鎖(A1)を形成するスチレン系モノマーを主成分とする不飽和単量体と、連鎖(A2)を形成する片末端に(メタ)アクリロイル基またはスチリル基を有するポリオキシアルキレンエーテルとを付加共重合して得られるグラフト共重合体(A)を含有してなり、前記連鎖(A2)中のオキシエチレン−ユニット(単位)の含有量が20〜100重量%であることを特徴とする相溶化剤、それを含むラジカル共重合性不飽和樹脂組成物、成形材料及び成形品に関する。
【0008】
また、本発明は、グラフト共重合体(A)中の連鎖(A1)に連鎖(A2)が(メタ)アクリロイル基またはスチリル基を介して結合したグラフト共重合体(A)、好ましくは連鎖(A2)の数平均分子量が1000〜20000である上記グラフト共重合体(A)、好ましくは連鎖(A1)と連鎖(A2)との重量比(A1/A2)が、90/10〜20/80である上記グラフト共重合体(A)、好ましくは連鎖(A1)を形成するスチレン系モノマーを主成分とする不飽和単量体と連鎖(A2)を形成する片末端に(メタ)アクリロイル基またはスチリル基を有するマクロモノマーとを付加共重合させた上記グラフト共重合体(A)を含有する相溶化剤、それとラジカル共重合性不飽和樹脂、重合性不飽和単量体および/または付加重合系重合体を含む有用なラジカル共重合性不飽和樹脂組成物、このラジカル共重合性不飽和樹脂組成物を含む成形材料及びその成形品に関する。以下に本発明を詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の相溶化剤は、スチレン系モノマーを主成分として付加重合させて得られる共重合体の連鎖(A1)に、ポリオキシアルキレンエーテル鎖を主成分とし、好ましくはオキシエチレン−ユニット(単位)を主成分とするポリエーテル連鎖(A2)が結合してなるグラフト共重合体(A)を含有するものである。連鎖(A2)は、(A2)中の(メタ)アクリロイル基またはスチリル基(ビニルベンジル基)などを介して連鎖(A1)に結合するのが好ましい。
【0010】
連鎖(A1)を構成するために使用できるモノマー成分としては、スチレン系モノマーのみ、またはスチレン系モノマーを主成分とし、他の成分として(メタ)アクリル酸系モノマー等を併用してなる混合物である。スチレン系モノマーとして代表的なもののみ例示すれば、スチレン、ビニルトルエン(メチルスチレン)、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルベンジルアルキルエーテル等が挙げられる。スチレン系モノマーが連鎖(A1)の主成分であると相溶化安定性に優れ望ましい
【0011】
また、併用できる(メタ)アクリル酸系モノマーの代表例としては、公知の(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸グリセリルカーボネート、メタアクリル酸イソシアネートエチル、(メタ)アクリル酸エステルが利用できる。(メタ)アクリル酸エステルの代表的なもののみ例示すれば、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ベンジル、フェニル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ステアリル、ベヘニル、トリフルオロエチルなどのエステル化合物が挙げられ、必要により添加される。
【0012】
連鎖(A2)は、ポリエーテルであり、その数平均分子量が好ましくは1000〜20000、より好ましくは2000〜10000であって、合成方法、構造等、特に限定されるものではない。かかる連鎖としてはポリエーテルが好ましい。ポリエーテルとしては、後述するものである。
【0013】
この連鎖(A2)のポリエーテル連鎖を構成するために使用できる成分としては、開環重合性単量体が利用でき、エチレンオキサイドを成分とし、エチレンオキサイド単独もしくは、エチレンオキサイドと共重合可能な他のアルキレンオキサイドや開環共重合可能な他の環状化合物からなる。他のアルキレンオキサイドとしては、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイサイド、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイド等が挙げられる。オキシエチレン−ユニット(単位)を主成分とするポリエーテルが好ましい。そのポリエーテル連鎖は数平均分子量が好ましくは1000〜20000、より好ましくは2000〜10000である。
【0014】
また、開環共重合可能なその他の環状化合物としては、酸無水化合物、例えば、無水コハク酸、無水フタル酸等が挙げられる。環状エステル化合物、例えばカプロラクトン、バレロラクトン等が挙げられる。さらに、環状炭酸エステル化合物、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチレンカーボネート等が挙げられる。その他、環状化合物以外でアルキレンオキサイドと共重合可能な二酸化炭素も利用できる。
【0015】
エチレンオキサイドを主成分とし、前記環状化合物を共重合して得られる連鎖(A2)のポリエーテルの構造については、該ラジカル共重合性不飽和樹脂との相溶性が発揮されるものであれば特に限定しない。連鎖(A2)は例えば、エチレンオキサイドと他の環状化合物のランダム共重合体やブロック共重合体でもかまわない。また、連鎖(A2)は、分子量1000未満のエチレンオキサイド系ポリエーテルポリオール化合物やグリコール化合物等と、ジカルボン酸化合物、ジイソシアネート化合物、炭酸エステル化合物、ジグリシジルエーテル化合物等を用いて伸長させたものでもよい。なお、ポリエーテル連鎖(A2)は、直鎖状でも分岐状でもかまわないが、合成法上、直鎖状が望ましい。
【0016】
連鎖(A2)のポリエーテルの数平均分子量は1000〜20000の範囲にあることが望ましい。この範囲であると、相溶化剤としての性能が高く、また合成が容易となる。特に望ましくは、数平均分子量3000〜8000である。
【0017】
連鎖(A2)中のオキシエチレン−ユニット(単位)の含有量は、好ましくは20〜100重量%、特に望ましくは60〜100重量%である。残りの成分は、好ましくはオキシエチレン系以外のポリエーテル、ポリエステル及び/又はポリカーボネートである。これは、主成分のオキシエチレン鎖が該ラジカル共重合性不飽和樹脂と分子間力により密接に配位し、アンカー成分として働き、安定分散において極めて重要な成分となるからである。むろん、オキシエチレン鎖以外の成分は、目的の相溶化効果を高めたり、相溶化以外効果も付与するように設計、選択、利用される。
【0018】
本発明のグラフト共重合体(A)の製造法としては、特に限定されるものではないが、例えば、1)連鎖(A1)のみを予め合成し、別途合成された連鎖(A2)を高分子反応にて結合させ、目的の(A)を得る法、2)(A1)のみを予め合成し、(A2)を構成する開環重合性単量体等を(A1)中の活性部位を起点とし重合させる方法、3)(A1)を構成する不飽和単量体と、連鎖(A2)を構成する予め合成された片末端に共重合可能な重合性官能基を有するマクロモノマーとを付加共重合させて目的の(A)を得る方法がある。本発明の相溶化剤の製造法としては、均質な重合体が得られ易いマクロモノマーを用いる3)の合成方法が望ましい。
【0019】
本発明のグラフト共重合体(A)に使用できるマクロモノマーとしては、前述のポリエーテル、ポリエステル及び/又はポリカーボネート鎖(A2)の片末端に、連鎖(A1)を構成する不飽和単量体と共重合可能な重合性官能基を有するものである。その官能基としては、好ましくはエチレン性不飽和基である。具体的には、重合性の観点から(メタ)アクリルロイル基、スチリル基が好ましく、その他ビニル基、プロペニル基、アリル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基などが挙げられる。これらの官能基を有する化合物を、前述の連鎖(A2)の片末端にのみに化学的に結合させたものを、本発明に利用できるマクロモノマーの代表例とする。
【0020】
具体的には、ポリエーテル系マクロマーとしてポリエチレンオキサイドのモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレンオキサイドのモノビニルベンジルエーテル、ポリエチレンオキサイドのモノビニルエーテル、ポリエチレンオキサイドのモノアリルエーテル、ポリエチレンオキサイドのモノクロトン酸エステル、メタアクリル酸イソシアネートエチルとポリエチレンオキサイドの当モル反応生成物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の水酸基含有不飽和単量体とポリエチレンオキサイドとをイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物で結合させた化合物等も利用できる。その他、ポリエステル系マクロマーとしてポリカプロラクトンのモノ(メタ)アクリル酸エステル等や、ポリカーボネート系マクロモノマーとしてポリトリメチレンカーボネートのモノ(メタ)アクリル酸エステル等挙げられる。結果として、本発明の目的の相溶化剤として機能するグラフト共重合体(A)が得られれば、マクロモノマー全体の詳細な化学的構造は限定しないが、前述のポリエチレンオキシドとマレイン酸のハーフエステル化合物の利用は、性能上好ましくない。
【0021】
グラフト共重合体(A)において、連鎖(A2)の自由末端の化学構造、及び前述のマクロモノマーの重合性官能基がある末端以外の他末端基構造は、特に限定しない。該連鎖合成条件に由来する末端のままでも、化学的に他の構造に変換されたものでも良い。末端官能基は、望ましくは、水酸基、アルコキシエーテル基、アルコキシエステル基である。末端基の分子量が著しく増大すると、連鎖(A2)中のオキシエチレン−ユニット(単位)の含有率が低下するため、相溶化効果が不安定になる恐れがある。よって炭素数で言えば、20以内、分子量では500以内の末端基構造を有する連鎖(A2)が望ましい。
【0022】
グラフト共重合体(A)の連鎖(A1)を構成する主成分のスチレン系モノマー以外で、使用できる共重合可能な不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸化合物、水酸基やグリシジルエーテル基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、アクリルアミド等のアクリルアミド系単量体、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル系単量体、フマル酸ジエステル系単量体、イタコン酸のモノ及びジエステル系単量体、シクロヘキシルビニルエーテル等ビニルエーテル系単量体が挙げられる。これらは、必要に応じて適宜選択、使用できる。
【0023】
連鎖(A1)中の主成分としては、スチレン系モノマーの使用が望ましい。含有量は特に限定されないが、通常はスチレン系モノマーが50重量%以上であり、好ましくは、70〜99重量%である。特にスチレンモノマーの使用が望ましい。通常、連鎖(A1)は、スチレン系モノマー70〜99.9重量%、(メタ)アクリル酸エステルを含む他の不飽和単量体 0.1〜30重量%からなる。合成方法、及び要求性能に応じて、連鎖(A1)の構成成分を適宜変更する。
【0024】
グラフト共重合体(A)中の連鎖(A1)と連鎖(A2)の重量%比(A1/A2)は、好ましくは90/ 10〜20/ 80、より好ましくは80/20〜20/80であり、更に好ましくは70/ 30〜30/ 70(重量%)である。特に60/ 40〜50/ 50の重量%比付近の組成のグラフト共重合体(A)は、不飽和ポリエステル樹脂とポリスチレンの混合物を1ヶ月以上の長期に亘り一液化できることを確認している。
【0025】
また、グラフト共重合体(A)の数平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは2000〜100000、より好ましくは5000〜50000であることが望ましい。この分子量の範囲であれば、相溶化剤としての効果がより高くなる。この場合の数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)でポリスチレン標準にて測定したものである。
【0026】
相溶化剤のグラフト共重合体(A)の合成反応は、溶媒中で行っても良いし、溶媒を用いなくても良いが、通常は作業性の観点から溶媒中で行われる。溶媒としては、該相溶化剤が溶解するものであり、グラフト共重合体の合成に支障がなければ何を用いても構わない。反応後には、共重合体(A)を溶媒から固体分として単離しても、反応溶媒の溶液のままでもよい。特に、相溶化剤として利用する上で支障がなければ、溶液のままで用いることが好ましい。また、溶液粘度を下げ、利便性を向上させる目的でスチレン等の不飽和単量体や反応溶媒以外の他の有機溶媒で希釈または、再溶解させることも可能である。例えば、グラフト共重合体(A)と不飽和単量体や溶媒を含むものを相溶化剤組成物として用いる。
【0027】
グラフト共重合体(A)の合成時の重合開始剤としては、特に限定されないが、一般的には、ラジカル重合系開始剤、例えばベンゾイルパーオキサイドのような有機過酸化物やAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)等のアゾ化合物が利用できる。なお目的の重合体が得られれば、ラジカル重合系以外のアニオン、カチオン重合系開始剤を用いることもできる。
【0028】
ラジカル共重合性不飽和樹脂と、低収縮化剤や物性向上剤として添加される付加重合系重合体(熱可塑性樹脂)とに配合される相溶化剤の添加量は、ラジカル共重合性不飽和樹脂と付加重合系重合体の合計100重量部当たり、好ましくは0.1〜10重量部であり、より好ましくは0.5〜3重量部である。かかる量であればより相溶性が高く、硬化物の物性も好ましいものとなる。
【0029】
本発明の相溶化剤を含むラジカル共重合性不飽和樹脂組成物とは、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂、あるいはアクリル樹脂等のラジカル共重合性不飽和樹脂、付加重合系重合体と重合性不飽和単量体とからなるものである。さらに必要に応じて、重合禁止剤、硬化剤、充填材、強化材、内部離型剤、着色剤、その他各種添加剤を加えることができる。
【0030】
本発明に使用される不飽和ポリエステルの組成は、特に制限されるものではなく、α,β−不飽和カルボン酸または場合により飽和カルボン酸を含むα,β−不飽和カルボン酸と多価アルコールとから得られるものである。
【0031】
α,β−不飽和カルボン酸としては、例えばフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、クロロマレイン酸、あるいは、これらのジメチルエステル類などが挙げられる。これらのα,β−不飽和カルボン酸はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、飽和カルボン酸としては、例えばフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸などが挙げられる。これらの飽和カルボン酸はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0032】
一方、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2メチル−1,3プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等のグリコール類などのジオール類、トリメチロールプロパンなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどのテトラオール類などが挙げられる。これらの多価アルコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
さらに、得られた不飽和ポリエステルは、グリシジルメタアクリレート、ビスフェノールA型エポキシ等のエポキシ化合物、トルエンジイソシアネート、イソプロペニル−ジメチル−ベンジルイソシアネートのようなイソシアネート化合物等で変性した樹脂でもよい。
【0034】
また、上記α,β−不飽和カルボン酸、飽和カルボン酸および多価アルコールにジシクロペンタジエンを添加し共に反応し得られるジシクロペンタジエン系不飽和ポリエステルも使用できる。
【0035】
また、回収ポリエチレン−テレフタレート(PET)と多価アルコールを高温で反応させたグリコール分解物を主たる原料とし、上記α,β−不飽和カルボン酸、飽和カルボン酸および多価アルコールと共に反応し得られるPET系不飽和ポリエステルも本発明を適用すれば、問題なく使用できる。
【0036】
本発明に用いられるビニルエステル樹脂は、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応によって得られる反応生成物である。
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂などの多価フェノール類のグリシジルエーテル類、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルなどの多価アルコールのグリシジルエーテル、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンなどの脂環式エポキシ樹脂、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルp−オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル類、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルm−キシリレンジアミン、トリグリシジルP−アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン類、1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独もしくは2種以上を併用してもよい。
【0037】
不飽和一塩基酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマー、モノメチルマレート、モノメチルフマレート、モノシクロヘキシルフマレート、あるいはソルビン酸等が挙げられる。これら酸は単独もしくは、2種以上を併せて用いられる。
【0038】
さらに、得られたビニルエステル樹脂を無水マレイン酸、無水コハク、無水酢酸等の酸無水物、トルエンジイソシアネート、イソプロペニル−ジメチル−ベンジルイソシアネートのようなイソシアネート化合物等で変性してもよい。
【0039】
ビニルウレタン樹脂とは、ポリオール化合物、有機ポリイソシアネート化合物、水酸基含有(メタ)アクリレート類から得られるオリゴマーである。ポリオール化合物とは、分子内に複数の水酸基を有する化合物の総称であるが、水酸基の代わりにイソシアネート基と反応しうる活性水素を有する官能基、例えばカルボキシル基、アミノ基、メルカプト基を有する化合物でも構わない。かかるポリオール化合物としては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール、カプロラクトン系ポリオールなどが挙げられ、それぞれ単独もしくは2種以上を併せて用いられる。有機ポリイソシアネート化合物としては後述のものを用いることができる。
【0040】
有機ポリイソシアネート化合物として特に代表的なもののみを例示すれば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等が用いられる。その他、各種イソシアネート化合物をイソシアヌレート化せしめて得られる多量体も挙げられる。これらは単独もしくは2種以上を併せて用いられる。
【0041】
アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸エステルを主たる成分とする重合性不飽和単量体から導かれる熱可塑性アクリル重合体と重合性不飽和単量体から構成されるものである。(メタ)アクリル酸エステルを必須成分とし、必要により上記(メタ)アクリル酸エステル類と共重合可能な他の重合性不飽和単量体を併用し、該単量体溶液を重合して得られるものである。このアクリル重合体は、該重合性単量体に溶解させたシラップの形で用いられるため、分子量10万以下のものが好ましく、懸濁重合、溶液重合等、一般的重合方法で得ることができる。また、該単量体を10〜40重量%を予備重合したシラップをそのまま用いることもできる。
【0042】
該ラジカル共重合性不飽和樹脂組成物に使用できる重合性不飽和単量体として特に代表的なもののみを例示すれば、スチレン類、アクリルエステル類、メタアクリルエステル類、ジアリルフタレートエステル類、カルボン酸ビニルエステル類、ビニルエーテル類等の公知のものが使用できる。しかしこれに限定されるものでなく、樹脂液の用途、要求性能に応じて各種の不飽和単量体を適宜選択し、使用することができる。
【0043】
(変性)不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂あるいはアクリル樹脂に対する重合性不飽和単量体の配合量は、特に限定されるものではないが、10〜70重量%の範囲内が好ましく、20〜50重量%の範囲内がさらに好ましい。好ましくはラジカル共重合性不飽和樹脂:重合性不飽和単量体=30〜90重量%:10〜70重量%、より好ましくは50〜80重量%:20〜50重量%からなる樹脂組成物である。
【0044】
本発明の樹脂組成物に利用できる重合禁止剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の重合禁止剤を用いることができる。具体的には、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、トルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ナフテン酸銅、塩化銅等が挙げられる。これらの重合禁止剤は、一種のみを用いても良く、また、二種以上を適時混合して用いても良い。尚、上記重合禁止剤の添加量は、特に限定されるものではない。
【0045】
本発明の樹脂組成物に利用できる硬化剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の硬化剤を用いることができる。例えば、熱硬化剤、紫外線硬化剤、電子線硬化剤等から選択される1種類以上のものが挙げられる。硬化剤の使用量は、樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、特に好ましくは1〜5重量部である。
【0046】
熱硬化剤としては、有機過酸化物が挙げられ、具体的にはジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系化合物等の公知のものが使用され、成形条件に応じて適宜選択される。
【0047】
紫外線硬化剤とは、光増感物質である。具体的には、アシルホスフィンオキサイド系、ベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、チオキサントン系化合物等の公知のものが使用され、成形条件に応じて適宜選択される。また電子線硬化剤としては、ハロゲン化アルキルベンゼン、ジサルファイド系化合物等がある。
【0048】
また、前述の硬化剤と併用し、硬化を促進する添加剤(硬化促進剤)としては、特に限定されるものではないが、例えばナフテン酸コバルトやオクテン酸コバルト等の金属塩類、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)パラトルイジン、ジメチルアセトアセタミド等の3級アミン類等が挙げられ、必要により選択、使用される。
【0049】
本発明の樹脂組成物に利用できる充填剤として、特に代表的なもののみを例示すれば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオリン、クレー、セライト、アスベスト、パーライト、バライタ、シリカ、ケイ砂、ドロマイト、石灰石、セッコウ、アルミニウム微粉、中空バルーン、アルミナ、ガラス粉、水酸化アルミニウム、寒水石、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、二酸化モリブデン等が挙げられる。これらの充填材は、作業性や得られる成形品の強度、外観、経済性などを考慮して選ばれるが、通常炭酸カルシウムや水酸化アルミニウム、シリカ、タルクなどがよく用いられる。なお、充填剤には表面処理されたものも含まれる。
【0050】
本発明の樹脂組成物に利用できる強化材としては、通常繊維強化材として用いられるものでよく、例えば、ガラス繊維、ポリエステル繊維、フェノール繊維、ポリビニルアルコール繊維、芳香族ポリアミド繊維、ナイロン繊維、炭素繊維がある。これらの形態としては、例えば、チョップドストランド、チョップドストランドマット、ロービング、織物状などが挙げられる。これらの繊維強化材は組成物の粘度や得られる成形品の強度などを考慮して選ばれる。
【0051】
本発明の樹脂組成物に利用できる内部離型剤としては、例えば、ステアリン酸などの高級脂肪酸、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸塩、あるいはアルキルリン酸エステルなどが挙げられる。しかし、これらに限定されるものではなく、成形条件に応じて各種離型剤を適宜選択し、使用することができる。
【0052】
本発明の樹脂組成物に利用できる着色剤として、特に代表的なもののみを例示すれば、チタンホワイト、カーボンブラック等無機顔料類やフタロシアニンブルー、キナクリドンレッド等有機顔料類があり、色相に応じて、種々の着色剤を用いることができる。なお一般的には、顔料を不飽和ポリエステル樹脂等に均一分散させたトナーとして添加する場合が多い。
【0053】
その他各種添加剤としては、減粘剤等の粘度調節剤、脱泡剤、シランカップリング剤、パラフィン等の空気遮断剤等が挙げられ、市販品が利用できる。
【0054】
また、シート・モールディング・コンパウンド(以降SMCと略記)、バルク・モールディング・コンパウンド(以降BMCと略記)などの成形材料を作成する場合には、増粘剤として酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの金属酸化物や水酸化物、クルードMDI等の多官能イソシアネート化合物がある。しかしこれに限定されるものでなく、成形材料の用途、要求性能に応じて各種増粘剤を適宜選択し、使用することができる。なお一般的には、増粘度を制御し易い酸化マグネシウムが用いられる。
【0055】
本発明において、ラジカル共重合性不飽和樹脂と混合される該付加重合系重合体(熱可塑性樹脂)としては、特に限定されるものではないが、目的の低収縮化や物性向上(破壊靭性等)効果が発揮されるものを成形用途、条件等に応じて適宜選択し、使用することができる。特に代表的なもののみを例示すれば、スチレンを主成分としたポリスチレン系樹脂、例えば、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、スチレン−共役ジエンブロック共重合体、スチレン−水添共役ジエンブロック共重合体等が挙げられる。その他、スチレンを含まない(メタ)アクリル酸エステル系重合体、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸n−ブチルエステル等が挙げられる。また、これら重合体中の二重結合に、他の化合物を反応させたものも用いることができる。
【0056】
前述のスチレン−共役ジエン系ブロック共重合体とは、スチレンと共役ジエンを重合させて得られるスチレン成分と共役ジエン成分からなるブロック共重合体であり、共役ジエン成分としてブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどが用いられる。さらに、これらスチレン−共役ジエンブロック共重合体を水素添加して得られるスチレン−水添共役ジエンブロック共重合体であっても良い。ブロック共重合体の構成単位は特に限定されるものではなく、スチレン−共役ジエン、スチレン−共役ジエン−スチレン、共役ジエン−スチレン−共役ジエンなどのスチレンと共役ジエンの繰り返し単位のものも含まれる。具体的には、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・ブチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、成形材料(SMC、BMCとしてのプレス成形、スプレー成形、ハンドレイアップ成形、注型、引き抜き成形)、被覆材料(塗料、パテ、シーリング材、ライニング材)として用いることができる。本発明の成形材料とは、樹脂組成物、重合禁止剤、硬化剤、充填材、繊維強化材からなり、必要により内部離型剤、着色剤等の各種添加剤を加えたものである。
【0058】
本発明の成形品とは、浴槽、キッチンカウンター、洗面化粧台、防水パン、浄化槽等の住設機器、人造大理石、パネル、波板、引き抜き材、ポリマーコンクリート等の土木建築材料、ボート、船等の船舶、ランプリフレクター等の車輌用部品、ボタン、ボーリングボールの日用品などが挙げられる。
【0059】
本発明によれば、従来技術では容易に成しえなかったラジカル共重合性不飽和樹脂と低収縮化剤の相溶性を改善し、分離を防止することで、樹脂混合物の一液化を可能とし、さらに分離に伴う成形時の欠陥をなくすことを可能とする実用的な相溶化剤をもたらすことができる。よって、本発明の相溶化剤を用いた樹脂組成物は、低収縮化剤の分離のないものであり、その成形材料は、均質性に優れるため、スカミングがなく、均一着色性、表面平滑性、表面光沢等に優れ、極めて高品位な成形品を得ることができる。
【0060】
【実施例】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、文中「部」とあるのは、重量部を示すものである。
【0061】
実施例
[本発明の相溶化剤<グラフト共重合体(A)>の調製]
(合成例1)
温度計、窒素導入管、撹拌機、コンデンサ及び滴下ロートを設けた1Lのフラスコに、溶媒としてキシレン200gを仕込み、窒素気流下120℃まで昇温した。次にスチレン210gに、マクロモノマーとしてポリエーテル鎖の数平均分子量が4000のモノメトキシ−ポリエチレンオキシド−モノメタクリル酸エステル140gと重合開始剤として AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)2.0gを溶解させたプレミックス液を調製した。次にこの混合液を滴下ロートより約3時間かけて滴下し付加重合させた。滴下後、120℃を保持しながらさらに8時間反応させ、目的のグラフト共重合体(A)を得た。 反応後、得られた樹脂溶液を30℃まで冷却し、ここにスチレン440g、ハイドロキノン 0.1gを加え、室温まで冷却した。このようにして、有効成分35重量%の相溶化剤溶液を得た。これを相溶化剤溶液SE−1とする。 得られた重合体(A)のGPCで測定した数平均分子量は、12000であった。
【0062】
(合成例2) (相溶化剤の合成)
合成例1と同様にして、キシレン200g、スチレン175g、マクロモノマーとしてポリエーテル鎖の数平均分子量4000のモノメトキシ−ポリエチレンオキシド−モノメタクリル酸エステル175g、AIBN2.0gを原料とし、120℃にて付加重合させ、目的のグラフト共重合体(A)を得た。さらに合成例1と同様にして、スチレン440g、ハイドロキノン0.1gを加え、有効成分35重量%の相溶化剤溶液を得た。これを相溶化剤溶液SE−2とする。得られた重合体(A)のGPCで測定した数平均分子量は、11000であった。
【0063】
(合成例3) (相溶化剤の合成)
合成例1と同様にして、キシレン200g、スチレン210g、マクロモノマーとしてポリエーテル鎖の数平均分子量6000のモノメトキシ−ポリエチレンオキシド−モノメタクリル酸エステル140g、AIBN2.0gを原料とし、120℃にて付加重合させ、目的のグラフト共重合体(A)を得た。さらに合成例1と同様にして、スチレン440g、ハイドロキノン0.1gを加え、有効成分35重量%の相溶化剤溶液を得た。これを相溶化剤溶液SE−3とする。得られた重合体(A)のGPCで測定した数平均分子量は、13000であった。
【0064】
(合成例4) (相溶化剤の合成)
合成例1と同様にして、キシレン200g、スチレン210g、マクロモノマーとしてポリエーテル鎖の数平均分子量2000のモノメトキシ−ポリエチレンオキシド−モノメタクリル酸エステル140g、AIBN2.0gを原料とし、120℃にて付加重合させ、目的のグラフト共重合体(A)を得た。さらに合成例1と同様にして、スチレン440g、ハイドロキノン0.1gを加え、有効成分35重量%の相溶化剤溶液を得た。これを相溶化剤溶液SE−4とする。得られた重合体(A)のGPCで測定した数平均分子量は、11000であった。
【0065】
(合成例5) (相溶化剤の合成)
合成例1と同様にして、キシレン200g、スチレン210g、メタクリル酸メチル35g、マクロモノマーとしてポリエーテル鎖の数平均分子量4000のモノメトキシ−ポリエチレンオキシド−モノメタクリル酸エステル105g、AIBN2.0gを原料とし、120℃にて付加重合させ、目的のグラフト共重合体(A)を得た。さらに合成例1と同様にして、スチレン440g、ハイドロキノン0.1gを加え、有効成分35重量%の相溶化剤溶液を得た。これを相溶化剤溶液SE−5とする。得られた重合体(A)のGPCで測定した数平均分子量は、10000であった。
【0066】
(合成例6) (相溶化剤の合成)
合成例1と同様にして、キシレン200g、スチレン175g、メタアクリル酸ベヘニルエステル35g、マクロモノマーとしてポリエーテル鎖の数平均分子量4000のモノメトキシ−ポリエチレンオキシド−モノメタクリル酸エステル140g、AIBN2.0gを原料とし、120℃にて付加重合させ、目的のグラフト共重合体(A)を得た。さらに合成例1と同様にして、スチレン440g、ハイドロキノン0.1gを加え、有効成分35重量%の相溶化剤溶液を得た。これを相溶化剤溶液SE−6とする。得られた重合体 (A)のGPCで測定した数平均分子量は、10500であった。
【0067】
(合成例7) (相溶化剤の合成)
合成例1と同様にして、キシレン200g、スチレン210g、マクロモノマーとしてポリエーテル鎖の数平均分子量4000のモノエトキシ−ポリエチレンオキシド−モノビニルベンジルエーテル140g、AIBN2.0gを原料とし、120℃にて付加重合させ、目的のグラフト共重合体(A)を得た。さらに合成例1と同様にして、スチレン440g、ハイドロキノン0.1gを加え、有効成分35重量%の相溶化剤溶液を得た。これを相溶化剤溶液SE−7とする。得られた重合体(A)のGPCで測定した数平均分子量は、11500であった。
【0068】
(合成例8) (相溶化剤の合成)
合成例1と同様にして、キシレン200g、スチレン210g、マクロモノマーとしてポリエーテル鎖の数平均分子量4000のモノメトキシ−ポリエチレン、プロピレンオキシドブロック体のモノメタクリル酸エステル140g、AIBN2.0gを原料とし、120℃にて付加重合させ、目的のグラフト共重合体(A)を得た。さらに合成例1と同様にして、スチレン440g、ハイドロキノン0.1gを加え、有効成分35重量%の相溶化剤溶液を得た。これを相溶化剤溶液SE−8とする。得られた重合体(A)のGPCで測定した数平均分子量は、11500であった。なお側鎖(A2)中のエチレンオキシド鎖含有量は、80重量%である。
【0069】
(合成例9) (相溶化剤の合成)
合成例1と同様にして、キシレン200g、スチレン210g、マクロモノマーとして側鎖(A2)の数平均分子量4000のモノメトキシ−ポリエチレンオキシド−ポリカプロラクトンブロック体のモノメタクリル酸エステル140g、AIBN2.0gを原料とし、120℃にて付加重合させ、目的のグラフト共重合体(A)を得た。さらに合成例1と同様にして、スチレン440g、ハイドロキノン0.1gを加え、有効成分35重量%の相溶化剤溶液を得た。これを相溶化剤溶液SE−9とする。得られた重合体(A)のGPCで測定した数平均分子量は、10500であった。なお側鎖(A2)中のエチレンオキシド鎖含有量は、80重量%である。
【0070】
(合成例10) (比較の相溶化剤の合成)
合成例1と同様にして、キシレン200g、スチレン210g、マクロモノマーとしてポリエーテル鎖の数平均分子量600のモノメトキシ−ポリエチレンオキシド−モノメタクリル酸エステル140g、AIBN2.0gを原料とし、120℃にて付加重合させ、比較のグラフト共重合体を得た。さらに合成例1と同様にして、スチレン440g、ハイドロキノン0.1gを加え、固形分35重量%の比較の相溶化剤溶液を得た。これを相溶化剤溶液SE−10とする。得られた重合体のGPCで測定した数平均分子量は、9500であった。
【0071】
(合成例11) (比較の相溶化剤の合成)
合成例1と同様にして、キシレン200g、スチレン210g、マクロモノマーとしてポリエーテル連鎖の数平均分子量4000のモノメトキシ−ポリプロピレンオキシド−モノメタクリル酸エステル140g、AIBN 2.0gを原料とし、120℃にて付加重合させ、比較のグラフト共重合体を得た。さらに合成例1と同様にして、スチレン440g、ハイドロキノン0.1gを加え、固形分35重量%の比較の相溶化剤溶液を得た。これを相溶化剤溶液SE−11とする。得られた重合体のGPCで測定した数平均分子量は、10000であった。
【0072】
(合成例12)(比較の相溶化剤の合成)
合成例1と同様にして、キシレン200g、スチレン210g、ポリエーテル鎖の数平均分子量4000のモノメトキシ−ポリエチレンオキシドのマレイン酸ハーフエステル140g、AIBN 2.0gを原料とし、120℃にて付加重合させ、比較のグラフト共重合体を得た。さらに合成例1と同様にして、スチレン440g、ハイドロキノン0.1gを加え、固形分35重量%の比較の相溶化剤溶液を得た。これを相溶化剤溶液SE−12とする。得られた重合体のGPCで測定した数平均分子量は、9500であった。
【0073】
(合成例13) (低収縮化剤−ポリスチレン溶液の調製)
合成例1と同様なフラスコに、スチレン650gを仕込み、50℃に加熱する。攪拌下、重量平均分子量約25万のポリスチレン(デイックスチレン CR-3500,大日本インキ化学製)を350g、ハイドロキノン0.1gを添加、溶解させた。固形分35重量%の樹脂溶液を得た。これを低収縮化剤溶液LP−1とする。
【0074】
(合成例14) (低収縮化剤−スチレン−ブタジエンゴム溶液の調製)
合成例13と同様にして、スチレン650gを仕込み、50℃に加熱する。
攪拌下、スチレン/ゴム重量比 31/69の重合体(KRATON D-1118,SHELL社製)を350g、ハイドロキノン0.1gを添加、溶解させた。固形分35重量%の樹脂溶液を得た。これを低収縮化剤溶液LP−2とする。
【0075】
(合成例15) (低収縮化剤−ポリメタクリル酸メチル溶液の調製)
合成例13と同様にして、スチレン650gを仕込み、50℃に加熱する。
攪拌下、メタクリル酸メチルエステルの重合体(ダイヤナール BR-84,三菱レーヨン製)を350g、ハイドロキノン0.1gを添加、溶解させた。固形分35重量%の樹脂溶液を得た。これを低収縮化剤溶液LP−3とする。
【0076】
(合成例16) (低収縮化剤−ポリビニルアセテート溶液の調製)
合成例13と同様にして、スチレン650gを仕込み、50℃に加熱する。
攪拌下、ビニルアセテートの重合体(デンカ ASR,M-5D,電気化学工業製)を350g、ハイドロキノン0.1gを添加、溶解させた。固形分35重量%の樹脂溶液を得た。これを低収縮化剤溶液LP−4とする。
【0077】
(合成例17) (低収縮化剤−ポリアクリル酸ブチル溶液の調製)
合成例1と同様にして、トルエン100g、アクリル酸n−ブチル350g、AIBN0.4gを原料とし、50〜80℃にて発熱に注意しながら、約8時間付加重合させ、アクリルゴム系重合体を得た。その後、90℃にて溶媒のトルエンを減圧下、留去した。次に、スチレン640g、ハイドロキノン0.1gを加え、固形分35重量%の樹脂溶液を得た。これを低収縮化剤溶液LP−5とする。
【0078】
(合成例18) (不飽和樹脂−不飽和ポリエステル樹脂の調製)
窒素ガス導入管、還流コンデンサ、攪拌機を備えた2Lのガラス製フラスコに、プロピレングリコール525g、フマル酸696gを仕込み窒素気流下、加熱を開始する。内温200℃にて、常法にて脱水縮合反応を行い、酸価が26KOHmg/gになったところで、180℃まで冷却し、ハイドロキノン0.15gを添加する。さらに150℃まで冷却し、不飽和ポリエステルを得た。
次に、この不飽和ポリエステルをスチレン430gに溶解させ、固形分70重量%の不飽和ポリエステル樹脂液を得た。これをラジカル重合性不飽和樹脂液VP−1とする。
【0079】
(合成例19) (不飽和樹脂−不飽和ポリエステル樹脂の調製)
合成例18と同様の2Lのフラスコにペットボトルを機械粉砕して得られた回収PET(ポリエチレンテレフタレート)フレークを384g 、プロピレングリコール320g、モノブチル錫酸0.4gを仕込み、窒素気流下、加熱を開始する。昇温中、徐々にPETが溶解し、スラリー状になったら攪拌を開始する。内温が210℃になったところで、この温度を保持し約4時間反応する。内容物が透明液状になったのを確認した後、120℃まで冷却する。この温度で無水マレイン酸392gを添加、加熱を開始する。内温200℃にて、常法にて脱水縮合反応を行い、酸価が25KOHmg/gになったところで、180℃まで冷却し、ハイドロキノン0.15gを添加する。さらに150℃まで冷却し、不飽和ポリエステルを得た。
次に、この不飽和ポリエステルをスチレン457gに溶解させ、固形分70重量%の不飽和ポリエステル樹脂液を得た。これをラジカル重合性不飽和樹脂液VP−2とする。
【0080】
(合成例20) (不飽和樹脂−不飽和ポリエステル樹脂の調製)
合成例18と同様の2Lのフラスコに、プロピレングリコール433g、無水マレイン酸588g、純度95%のジシクロペンタジエン264gを仕込み窒素気流下、加熱を開始する。発熱に注意しながら、昇温する。内温200℃にて、常法にて脱水縮合反応を行い、酸価が30KOHmg/gになったところで、180℃まで冷却し、ハイドロキノン0.16gを添加する。さらに150℃まで冷却し、不飽和ポリエステルを得た。
次に、この不飽和ポリエステルをスチレン510gに溶解させ、固形分70重量%の不飽和ポリエステル樹脂液を得た。これをラジカル重合性不飽和樹脂液VP−3とする。
【0081】
(合成例21) (不飽和樹脂−ビニルエステル樹脂の調製)
窒素および空気導入管を設けた2Lの4つ口フラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量410)826g、メタクリル酸174g、ハイドロキノン0.4gを仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、90℃まで昇温した。ここに2−メチルイミダゾール2.0gを入れ、105℃に昇温して10時間反応させた。このようにしてビニルエステル樹脂を得た。
次に、このビニルエステル樹脂をスチレン430g、トルハイドロキノン0.15gに溶解させ、固形分70重量%のビニルエステル樹脂液を得た。これをラジカル重合性不飽和樹脂液VP−4とする。
【0082】
(合成例22) (不飽和樹脂−ビニルエステル樹脂の調製)
窒素および空気導入管を設けた2Lの4つ口フラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量 182)680g、メタクリル酸320g、ハイドロキノン0.4gを仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、90℃まで昇温した。ここに2−メチルイミダゾール2.0gを入れ、105℃に昇温して10時間反応させた。その後、90℃まで冷却後、スチレン150g、トルハイドロキノン0.7g、無水マレイン酸140gを入れ、さらに3時間反応させた。このようにしてビニルエステル樹脂を得た。
次に、ここにスチレン339gを混合し、固形分70%のビニルエステル樹脂液を得た。これをラジカル重合性不飽和樹脂液VP−5とする。
【0083】
(合成例23) (不飽和樹脂−ビニルウレタン樹脂の調製)
合成例21の同様なフラスコに、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(分子量500)500g、イソホロンジイソシアネート448gを仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、80℃で4時間反応させた。ここに、60℃で2−ヒドロキシエチルメタクリレート273g、ハイドロキノン0.15を入れ90℃に昇温して6時間反応させた。このようにしてビニルウレタン樹脂を得た。
次に、このビニルウレタン樹脂をスチレン523gに溶解させ、固形分70重量%のビニルウレタン樹脂液を得た。これをラジカル重合性不飽和樹脂液VP−6とする。
【0084】
[樹脂組成物の調製及びその混合安定性]の評価
(実施例1)
合成例18で得られた不飽和樹脂液(VP−1)76部、合成例13で得られた低収縮化剤液(LP−1)20部、スチレン4部と、合成例1で得られた相溶化剤溶液(SE−1)3部(有効成分として約1部)を200ccガラス瓶に仕込み、攪拌機にて2500rpm、5分間混合し、樹脂混合液(樹脂組成物)を得た。
【0085】
得られた樹脂混合液を室温下静置し、目視にて分散安定性を確認した。この時の分離時間、日数を6段階に分類して評価した。なお、前述の容器にて保存中、側面から見て約2mm以上の高さまで相分離した状態を分離時間とした。
(相溶性の評価)
1:混合後、4時間未満で分離した。
2:混合後、4時間以上、12時間未満で分離した。
3:混合後、12時間以上、24時間未満で分離した。
4:混合後、24時間以上、10日未満で分離した。
5:混合後、10日以上、30日未満で分離した。
6:混合後、30日以上全く分離せず、安定であった。
なお実施例1で得られた組成物の分散安定性は、6で1ヶ月以上安定であった。
【0086】
(実施例2〜9)
相溶化剤溶液を合成例2〜9で得られた(SE−2〜9)に変更した以外は、実施例1に準じて、樹脂組成物を調製した。この液の安定性を実施例1と同様に評価し、その結果を実施例1も含め、表1、表2に示した。
【0087】
【表1】
【0088】
(比較例1)
相溶化剤溶液を全く添加しない以外は、実施例1に準じて、樹脂組成物を調製した。この液の安定性を実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
(比較例2〜3)
相溶化剤溶液を合成例10〜11で得られた(SE−10,11)に変更した以外は、実施例1に準じて、樹脂組成物を調製した。この液の安定性を実施例1と同様に評価し、その結果をまとめて表2に示した。
【0089】
【表2】
【0090】
<表中の略号の説明>
SM:スチレン,MMA:メタクリル酸メチル、VMA:ベヘニルメタアクリレート、
PEO:ポリエチレンオキサイド,PPO:ポリプロピレンオキサイド、
PE−Block:ポリエチレンオキサイド−ブロック重合体
PS:ポリスチレン、UP:不飽和ポリエステル樹脂
【0091】
(実施例10〜13)
低収縮化剤溶液を合成例14〜17で得られた(LP−2〜5)に変更した以外は、実施例1に準じて、樹脂組成物を調製した。この液の安定性を実施例1と同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0092】
(比較例4〜7)
相溶化剤溶液を全く添加しない以外は、実施例10〜13と同様の樹脂組成物を調製した。この液の安定性を実施例1と同様に評価した。その結果を表4に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
<表中の略号の説明>
SM:スチレン,PEO:ポリエチレンオキサイド、
PS:ポリスチレン,SBR:スチレンブタジエンゴム
PMMA:ポリメタクリル酸メチル、PVAc:ポリビニルアセテート,
PBA:ポリアクリル酸ブチル、PS:ポリスチレン、
UP:不飽和ポリエステル樹脂
【0095】
(実施例14〜18)
不飽和樹脂液を合成例19〜23で得られた(VP−2〜6)に変更した以外は、実施例1に準じて、樹脂組成物を調製した。この液の安定性を実施例1と同様に評価し、その結果を表5に示した。
【0096】
(比較例8〜12)
相溶化剤溶液を全く添加しない以外は、実施例14〜18と同様の樹脂組成物を調製した。この液の安定性を実施例1と同様に評価した。その結果を表6に示す。
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
<表中の略号の説明>
SM:スチレン、 PEO:ポリエチレンオキサイド、 PS:ポリスチレン、UP:不飽和ポリエステル樹脂、 VE:ビニルエステル樹脂、VU:ビニルウレタン樹脂
【0100】
実施例19 (成形材料及び成形品の調製)
合成例18で得られた不飽和樹脂(VP−1)80部に対し、合成例13で得られた低収縮化剤液(LP−1)25部、合成例1で得られた相溶化剤溶液(SE−1)3部、パラベンゾキノン0.06部、ステアリン酸亜鉛4部、炭酸カルシウム140部、顔料トナー(ポリトングレーPT-8809、大日本インキ化学製)10部、硬化剤BIC−75(化薬アクゾ製)1.0部を混合し、均一に分散するまで充分に攪拌、コンパウンドとした。得られたコンパウンドを調製1日後に、増粘剤として酸化マグネシウム1.0部を添加、混合攪拌した後、補強材として繊維長1インチのガラス繊維に含浸させ、シート状のSMC(成形材料)を得る。このSMCの両面は、ポリエチレンフイルムで保護し、さらにスチレンを透過させないアルミ蒸着フイルムで包装、保存する。なお、このSMCのガラス含有量(GC%)は、28%に設定した。
【0101】
このようにして得られたSMC(成形材料)は、40℃にて24時間熟成した後、常温にて静置、保管する。SMC製造3日後に、上型145℃、下型135℃に調整した金型に供給し、圧力70kgf/cm2(面圧)で5分間加圧保持することによって30×30cm、厚さ3mmの平板に成形した。得られた成形品のスカミング、均一着色性、表面平滑性、光沢の評価は、下記に示す方法で行った。結果を表7に示した。
【0102】
[成形の外観評価]
スカミングの評価:目視によって、スカミングの有無を判定。
均一着色性の評価:目視での評価とともに色差計(日本電色工業製カラーマシンΣ80)を使用し、成形品の任意の直線上で1cm間隔で12点以上のL値を測定する。該L値の平均値を算出し、それを標準としてL値のばらつき(標準偏差)を算出し指標とする。
表面平滑性の評価:目視評価と、面歪測定機SURFMATIC(東京貿易(株))を使用し、表面凹凸の2次微係数を測定する。
表面光沢:目視および光沢計(村上色彩技術研究所:GM26D)を使用し、60°光沢により評価。
【0103】
(評価基準) :良 ◎>○>△>× 不良
均一着色性:◎=目視でまったく色ムラが見られず、L値のばらつき(標準偏差)が0.5以下。
○=目視ではほとんど色ムラが確認できないが、L値のばらつき(標準偏差)が0.7以下。
△=目視で色ムラが確認でき、L値のばらつき(標準偏差)が0.7より大きく1.0未満。
×=目視で明らかな色ムラが確認でき、L値のばらつき(標準偏差)が1.0以上。
【0104】
表面平滑性:◎=2次微係数が500以下。
○=2次微係数が700以下。
△=2次微係数が700より大きく1000未満。
×=2次微係数が1000以上。
【0105】
表面光沢:◎=60°光沢が90以上。
○=60°光沢が85以上。
△=60°光沢が80以上85未満。
×=60°光沢が80未満。
【0106】
実施例20
不飽和樹脂を合成例22で得られた(VP−5)、低収縮化剤を合成例14で得られた(LP−2)に変更する以外は、実施例19と同様にしてSMCを調製し、成形品を得た。さらに同様の評価を行った。その結果を表7に示した。
【0107】
実施例21
不飽和樹脂を合成例19で得られた(VP−2)に変更する以外は、実施例19と同様にしてSMCを調製し、成形品を得た。さらに同様の評価を行った。結果を表7に示した。
【0108】
実施例22
相溶化剤を合成例6で得られた(SE−6)、不飽和樹脂を合成例20で得られた(VP−3)に変更する以外は実施例19と同様にしてSMCを調製し、成形品を得た。さらに同様の評価を行った。結果を表7に示した。
【0109】
比較例13
相溶化剤を全く用いない以外は、実施例19と同様にしてSMCを調製し、成形品を得た。さらに同様の評価を行った。結果を表7に示した。
【0110】
比較例14
相溶化剤を合成例12で得られた(SE−12)、不飽和樹脂を合成例20で得られた(VP−3)に変更する以外は実施例19と同様にしてSMCを調製し、成形品を得た。さらに同様の評価を行った。結果を表7に示した。
【0111】
【表7】
【0112】
<表中の略号の説明>
SM:スチレン、VMA:ベヘニルメタクリレート、PEO:ポリエチレンオキサイド、
PS:ポリスチレン, SBR:スチレンブタジエンゴム
UP:不飽和ポリエステル樹脂、 VE:ビニルエステル樹脂
【0113】
表1〜表6に記載の結果から明らかなように、本発明の条件を満たした相溶化剤溶液(SE−1〜9)を用いた実施例1〜18はいずれも高い相溶化効果が得られ、樹脂液の分離が極めて起こり難かった。一方、相溶化剤を全く使用しない場合、及び本発明の条件を満たしていない相溶化剤溶液(SE−10,11)を用いた比較例1〜12は、充分な相溶化効果が得られず、一日以内に相分離した。(LP−4使用の比較例6を除く)
【0114】
また、表7に記載の実施例19〜22の結果から明らかなように、いずれも本発明の相溶化剤により低収縮化剤の分離に伴う成形欠陥が改善され、スカミングのない、均一着色性、表面平滑性、表面光沢に優れた成形品を得ることが出来た。比較例13および14は、本発明の用件を満たしていないため、低収縮化剤分離に起因する成形欠陥が起き、成形品として実用性が低かった。
【0115】
【発明の効果】
本発明の相溶化剤は、従来技術では容易に成しえなかったラジカル共重合性不飽和樹脂と低収縮化剤の相溶性を改善し、分離を防止することで、樹脂混合物の一液化を可能とし、さらに分離に伴う成形時の欠陥をなくすことができる。それを用いた樹脂組成物は、低収縮化剤の分離のないものであり、またその成形材料は、均質性に優れるため、スカミングがなく、均一着色性、表面平滑性、表面光沢等に優れ、極めて高品位な成形品を得ることができる。
Claims (7)
- ラジカル共重合性不飽和樹脂と、付加重合系重合体とを相溶させる為の相溶化剤であって、連鎖(A1)を形成するスチレン系モノマーを主成分とする不飽和単量体と、連鎖(A2)を形成する片末端に(メタ)アクリロイル基またはスチリル基を有するポリオキシアルキレンエーテルとを付加共重合して得られるグラフト共重合体(A)を含有してなり、前記連鎖(A2)中のオキシエチレン−ユニット(単位)の含有量が20〜100重量%であることを特徴とする相溶化剤。
- グラフト共重合体(A)の連鎖(A2)の数平均分子量が、1000〜20000であることを特徴とする請求項1記載の相溶化剤。
- グラフト共重合体(A)中の連鎖(A1)と連鎖(A2)との重量%比(A1/A2)が、90/10〜20/80であることを特徴とする請求項1または2に記載の相溶化剤。
- 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の相溶化剤、ラジカル共重合性不飽和樹脂、及び重合性不飽和単量体を含むことを特徴とするラジカル共重合性不飽和樹脂組成物。
- 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の相溶化剤、付加重合系重合体、ラジカル共重合性不飽和樹脂、及び重合性不飽和単量体を含むことを特徴とするラジカル共重合性不飽和樹脂組成物。
- 請求項5に記載のラジカル共重合性不飽和樹脂組成物を含むことを特徴とする成形材料。
- 請求項6に記載の成形材料を用いたことを特徴とする成形品。
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