従来、車両に搭載された内燃機関の各部を冷却して適正な温度に維持するため、冷却水循環装置が搭載されている。この冷却水循環装置は、内燃機関よりも車両前方側に搭載したラジエータと、内燃機関とラジエータとの間を接続する冷却水循環管路(アウトレットパイプおよびインレットパイプ)とで構成され、ラジエータで冷却された冷却水がインレットパイプを通って内燃機関に送給され、さらに、内燃機関で温められた冷却水(温水)がアウトレットパイプを通ってラジエータに送給され、このような冷却水の循環によって内燃機関の各部を冷却している。
ワゴンタイプ(キャブオーバー型)のフロアトンネルの無い車種においては、内燃機関が座席の下に配設され、通常、冷却水循環装置における内燃機関側の最高水位位置がラジエータ側の最高水位位置よりも低くなるように設定され、さらに、内燃機関側の最高水位位置とラジエータ側の最高水位位置よりもインレットパイプおよびアウトレットパイプの中間部位が低くなるように設定されている(特許文献1参照)。 このような内燃機関側の最高水位位置とラジエータ側の最高水位位置との関係、さらに、これらの最高水位位置とインレットパイプ、アウトレットパイプの中間部位の位置との関係は、もっぱら上記の車種における居室空間の配置に起因するものではあるが、後述する最高水位位置における空気溜まりの発生を防止することをも目的としている。
また、車種によっては、内燃機関で温められた温水を利用して、室内を暖房するように構成されている。このような車種(アウトレットサーモ車)では、内燃機関内部からアウトレットパイプに至る内燃機関のウォータジャケット出口にウォータアウトレットが設けられ、このウォータアウトレットの下面に、カーヒータ(フロントヒータやリアヒータ)に内燃機関で温められた温水を送給する温水供給管路が接続され、カーヒータで暖房のために使用された後の温水を送給する温水還流管路がインレットパイプの途中部位に接続されている。
そして、ウォータアウトレット内のアウトレットパイプ接続部近くには、サーモスタットが組み込まれ、サーモスタットの感温部で検知される水温が高い場合にはサーモスタットが開いて、アウトレットパイプを通して温水をラジエータに送給し、感温部で検知される水温が低い場合にはサーモスタットが閉じて、温水のラジエータへの送給を停止する。サーモスタットの開閉に係らず、インレットパイプの内燃機関への取り付け部にあるウォータインレット内に設けられたウォータポンプを駆動させれば、カーヒータへの温水の供給は常時可能であり、これにより、内燃機関で温められた温水がウォータアウトレットで分岐された温水供給管路を通ってカーヒータのヒータコアに送給され、室内を暖房することができる。
このような冷却水循環装置において、不凍液を交換するに際して、一旦冷却水循環装置内にある冷却水を排出し、その後に新しい不凍液を含む冷却水を冷却水循環装置に注入すると、内燃機関を始動したときに冷却水循環装置内の冷却水がカーヒータに送給され、内燃機関側の最高水位位置にあるウォータアウトレット内部に空気が溜まり、サーモスタットの感温部が冷却水に浸されない空気溜まりができた状況が生じることになる。このような状況下では、冷却水温度が高くなってもサーモスタットが閉じたままで、冷却水が流れないため、内燃機関のオーバーヒートが発生することになる。
そこで、このような事態に至るのを避けるため、不凍液を交換した時には、内燃機関を駆動させてしばらく暖気運転を行った後、アクセルペダルを踏み込み、無負荷状態で内燃機関の回転数を一気に上げる操作が実施される。これにより、ウォータアウトレット内部の水位を上昇させてサーモスタットの感温部に冷却水に浸らせ、サーモスタットを開状態にして冷却水を強制的に循環させて、ウォータアウトレット内部に溜まっていた空気をアウトレットパイプに送り込み、ラジエータのアッパータンク上方に設けられたエア抜き弁から空気を外部に排出することができる。
しかしながら、実際には、このような空気溜まりを排除する動作を忘れたり、アイドリング状態でそのまま車両が放置されたりすることがあり、そのような場合には、上述したように、サーモスタットが閉じたままで冷却水循環装置内を冷却水が流れないため、内燃機関のオーバーヒートが発生する事態にも繋がりかねない。
さらに、ウォータアウトレット内部に溜まっていた空気がカーヒータに流れると、ヒータコアを気泡が混入した温水が流れるため、これらの部分で騒音(水流音)が発生することがあり、ヒータの異常と錯覚されることがあった。
また、このように温水供給管路がウォータアウトレットの下面から分岐されるため、アイドル回転領域でのエンジン回転数では、冷却水循環装置内を流れる冷却水の水量が少なく、ウォータアウトレットではほぼ全量が温水供給管路を通してカーヒータに送給されることになる。したがって、ウォータアウトレット内部に溜まっていた空気をアウトレットパイプに送り込むためには、アクセルペダルを踏み込み、エンジン回転数を一気に上げて冷却水の水量を多くする操作が必要となる。
このようなことを防止するため、特許文献1に記載された内燃機関の冷却水循環装置30では、図6に示すように、内燃機関31側の最高水位位置Seがラジエータ32側の最高水位位置Srよりも低くなるように設定され、さらに、内燃機関31側の最高水位位置Seとラジエータ32側の最高水位位置Srよりもインレットパイプ33およびアウトレットパイプ34の中間部位が低くなるように設定されている。また、ラジエータ32側では、ラジエータ32側の最高水位位置Seにエア抜き弁35(開動作圧力P1)を設け、リザーブタンク36に溜められる冷却水の低水位位置Lがラジエータ32側の冷却水最高位置Srと並ぶようにリザーブタンク36を上方に配設し、エア抜き弁35とリザーブタンク36との間をオーバフローパイプ37により接続するとともに、内燃機関31側では、内燃機関31側の最高水位位置Seにサーモスタット38を設け、このサーモスタット38にエア抜き弁39(開動作圧力P2)を設け、このエア抜き弁39を第2のオーバフローパイプ40によりラジエータ32側のオーバフローパイプ37に連絡させている。そして、ラジエータ32側のエア抜き弁35の開動作圧力P1を内燃機関31側のエア抜き弁39の開動作圧力P2よりも大きく設定(P1>P2)することにより、内燃機関31側のエア抜き弁39がラジエータ32側のエア抜き弁35よりも先に開動作するようにしている。
このように構成した冷却水循環装置30によると、ウォータジャケットの圧力がラジエータ32側のエア抜き弁35が開動作する第1開動作圧力P1に達する前に、内燃機関31側のエア抜き弁39を開動作させ、ウォータアウトレット41内に残留する空気を第2のオーバフローパイプ40およびオーバフローパイプ37を介してリザーブタンク36に導くことができ、高温時に残留する空気の膨張により引き起こされるエアロックを回避することができるとともに、オーバーヒートの恐れを回避することができるとしている。また、この冷却水循環装置30は、ウォータアウトレット41内に空気溜まりができ、この空気溜まりの空気が膨張して冷却水を押し出した場合にも、エア抜き弁39によって押し出される冷却水量を少なくすることができ、リザーブタンク36の排出パイプ42から冷却水が吹き出すことを防止できるとしている。
特開2000−199430号公報
以下、本発明の内燃機関の冷却水循環装置に係る最良の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。なお、下記に開示される実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、実施の形態で開示された内容ではなく、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれると解されるべきである。
先ず、本発明の実施の形態に係る内燃機関1の冷却水循環装置5の構成について、図1〜図3に基づき説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る内燃機関の冷却水循環装置の構成を説明するための概略構成図であり、図2は、この冷却水循環装置におけるウォータアウトレットおよびウォータインレットの構成を説明するための、内燃機関の一部を切り欠いて示す斜視図である。また、図3は、この冷却水循環装置でのウォータアウトレットの構造を説明するための、(a)は側面図であり、(b)は(a)のA−A’矢視断面図である。
本実施の形態に係る車両において、エンジン1(内燃機関)は、車両の略中央部位に位置する座席シートの下方に配置されている。エンジン1は、シリンダーブロック2の上側にシリンダーヘッド3が取付けられ、さらに、このシリンダーヘッド3の上側にヘッドカバー(図示省略)が取付けられている。
この車両に搭載されたエンジン1には、冷却水循環装置5が設けられている。冷却水循環装置5は、エンジン1よりも車両前方側に搭載したラジエータ6と、エンジン1とラジエータ6との間を接続する冷却水循環管路7(アウトレットパイプ8およびインレットパイプ9)とで構成され、ラジエータ6で冷却された冷却水がインレットパイプ9を通ってエンジン1に送給され、さらに、エンジン1で温められた冷却水(温水)がアウトレットパイプ8を通ってラジエータ6に送給され、このような冷却水の循環によってエンジン1の各部を冷却している。車両2の略中央部位に搭載したエンジン1よりも車両前側に位置させてラジエータ6を搭載し、エンジン1とラジエータ6とを離間して搭載している。ラジエータ6は、アッパータンク16とロアータンク17とコア18とからなる。
エンジン1のシリンダーブロック2およびシリンダーヘッド3の外辺部には、エンジン1の各部を冷却する冷却水の流通経路を形成するウォータジャケット10が設けられている。そして、エンジン1の最高高さ位置にある吸気マニホールド4に近接するウォータジャケット10の出口位置にウォータアウトレット11が設けられ、このウォータアウトレット11にアウトレットパイプ8の一端(エンジン側端部)が接続されている。また、シリンダーブロック2の中位位置にウォータジャケット10のウォータインレット12が設けられ、このウォータインレット12にインレットパイプ9の一端(エンジン側端部)が接続されている。また、アウトレットパイプ8とインレットパイプ9の他端(ラジエータ側端部)は、それぞれアッパータンク16の入水口16aとロアータンク17の出水口17aに接続されている。
ウォータアウトレット11内には、エンジン1より排出される冷却水の温度が所定の開動作温度より高い場合に開いて、冷却水をアウトレットパイプ8に送出するサーモスタット14が配設されている。また、ウォータインレット12の下流側に位置するウォータジャケット10内には、ウォータポンプ13が配設され、このウォータポンプ13がエンジン1の回転に連動して駆動されることにより、サーモスタット14が開いている状態で、ラジエータ6で冷却された冷却水がインレットパイプ9、ウォータインレット12、ウォータジャケット10、ウォータアウトレット11、アウトレットパイプ9を順に循環し、ウォータジャケット10内でエンジン1の各部を冷却することになる。
この冷却水循環装置5においては、エンジン1側の最高水位位置がラジエータ6側の最高水位位置よりも低くなるように、エンジン1側のウォータアウトレット11およびラジエータ6側のアッパータンク16が配置され、さらに、冷却水循環管路7(アウトレットパイプ8およびインレットパイプ9)は、その中間部位が内燃機関1側の最高水位位置とラジエータ6側の最高水位位置よりも低くなるように屈曲されて、フロアパネル(図示省略)の下に配設されている。
ウォータアウトレット11内でサーモスタット14が配設される位置は、図3(a)に示されるように、エンジン1側の最高水位位置であり、このサーモスタット14に対向するようにウォータアウトレット11の上方位置にはエア抜き弁15が配設されている。なお、このエア抜き弁15は、不凍液を含む新しい冷却水が冷却水循環装置5内に注入されたときに、ネジ(図示省略)を緩めてウォータアウトレット11内の空気を排出するためのものであり、その他の場合には常時「閉」の状態になっている。そして、図3(b)に示されるように、第1の温水供給配管24が接続されるウォータアウトレット11の接続口11aがサーモスタット14の感温部14aよりも高い位置となるよう、第1の温水供給配管24がウォータアウトレット11の側方面に接続されている。
より具体的には、サーモスタット14の感温部14aはウォータアウトレット11の軸芯に沿ってウォータジャケット10側で下方に傾斜するように配置され、接続口11aの最下辺部の位置が、サーモスタット14の感温部14aの最下位位置よりも高い位置に設定されている。なお、サーモスタット14の上流側と下流側とを仕切る隔壁板14bの上方には、空気の流通を可能とする空気流通孔14cが開口されており、不凍液を含む新しい冷却水が冷却水循環装置5内に注入されたときに、エア抜き弁15ネジを緩めることにより、ウォータアウトレット11内のサーモスタット14より下流側に残留する空気をこの空気流通孔14cを介して上流側に押し出して、エア抜き弁15から排出することができる。
本実施の形態においては、エンジン1から排出される冷却水が第1の温水供給配管24を介してフロントヒータ22およびリアヒータ23に送給されても、冷却水のウォータアウトレット11内における水位がサーモスタット14の感温部14aより下方に低下することがなく、サーモスタット14の感温部14aはいかなる状況下でも冷却水に浸され、冷却水の温度を感知できる状態が維持されることになる。なお、図3(b)に第1の温水供給配管24がウォータアウトレット11の側方面に接続されている状況が示されているが、接続口の位置は、ウォータアウトレット11の側方ないしは側方下方であれば良く、側方より若干上方に寄っていても良い。要は、接続口11aの最下辺部の位置が、サーモスタット14の感温部14aの最下位位置よりも高い位置に設定され、感温部14aが冷却水により浸される状態が常に維持されるように接続されていれば良い。
そして、アッパータンク16の上方にはエア抜き弁19が配設され、このエア抜き弁19はオーバーフロー管20を介してリザーブタンク21に接続されている。エア抜き弁19は、エンジン1の駆動中に、アッパータンク16内の圧力が所定の開動作圧力を越えると開動作して、冷却水とともに、ラジエータ6のアッパータンク16に溜っていた空気をオーバーフロー管20を介してリザーブタンク21に逃がすとともに、エンジン1の停止時に、冷却水が収縮して冷却水循環管路7(アッパータンク16)内の圧力が低下して所定の設定圧力未満になると、リザーブタンク21に貯留されている冷却水をオーバーフロー管20を介してラジエータ6のアッパータンク16に吸い込ませる役割を果たす。
また、本実施の形態に係る車両においては、室内を暖房するためのカーヒータ(フロントヒータ22およびリアヒータ23)が設けられ、フロントヒータ22が車両前方から室内に臨む位置に配設され、リアヒータ23が車両後方から室内に臨む位置に配設されている。エンジン1により温められた冷却水(温水)をフロントヒータ22に送給する第1の温水供給配管24(温水供給管路)の一端(エンジン側端部)がウォータアウトレット11の側方面に開口された接続口11aに接続され、他端(ラジエータ側端部)がフロントヒータ22の入水口22aに接続されている。また、フロントヒータ22のヒータコア22c内を循環して暖房の用に供された冷却水(温水)をエンジン1に戻す第1の温水還流配管25(温水還流管路)の一端(ヒータ側端部)がフロントヒータ22の出水口22bに接続され、他端(エンジン側端部)がインレットパイプ9の途中部位に接続されている。
さらに、エンジン1により温められた冷却水(温水)をリアヒータ23に送給する第2の温水供給配管26の一端(エンジン側端部)がウォータアウトレット11より下流位置で第1の温水供給配管24に接続され、他端(ラジエータ側端部)がリアヒータ23の入水口23aに接続されている。また、リアヒータ23のヒータコア23c内を循環して暖房の用に供された冷却水(温水)をエンジン1に戻す第2の温水還流配管27の一端(ヒータ側端部)がリアヒータ23の出水口23bに接続され、他端(エンジン側端部)が第1の温水還流配管25との接続位置より下流位置でインレットパイプ9の途中部位に接続されている。
また、第1の温水供給配管24は、ウォータアウトレット11の側方面(接続口11a)に接続された下流側で下方に向けて屈曲されるとともに、アウトレットパイプ8が略水平方向に延設される区間において、第1の温水供給配管24は、アウトレットパイプ8に沿って延設され、この略水平方向に延設される区間24aの下流側で下方に屈曲されている。
このように構成された冷却水循環装置5においては、不凍液を含む冷却水を交換した後に、エンジン1を始動させると、冷却水循環装置5内の冷却水がカーヒータに送給され、エンジン1の細部に残留していた空気が高い所(すなわち、ウォータアウトレット11)に集まってくることにより、エンジン1側の最高水位位置にあるウォータアウトレット11内部に空気溜まりが形成された状況が生じることになるが、サーモスタット14の感温部14aが冷却水に浸されているため、暖気運転等によるエンジン1の熱でしばらくして冷却水の温度がサーモスタット14の開動作温度に達すれば、サーモスタット14が開状態となり、冷却水をアウトレットパイプ8に送給して冷却水循環装置5内を循環させることができる。したがって、この冷却水循環装置5においては、従来のように、エンジン1を駆動させた後、一度アクセルペダルを踏み込み、無負荷状態でエンジン1の回転数を一気に上げて、ウォータアウトレット11内部の水位を上昇させてサーモスタット14の感温部14aを冷却水に浸らせる操作を行わなくても良い。
そして、このように冷却水が冷却水循環装置5内を循環している状態で、アクセルペダルを踏み込み、エンジン1の回転数を上昇させることにより、ウォータアウトレット11上方(サーモスタット14の上方)に溜まっていた空気を下流側に押し出し、さらに、ウォータアウトレット11下流側(サーモスタット14の下流側)に溜まっていた空気をアウトレットパイプ8に送り込み、ラジエータ6のアッパータンク16上方に設けられたエア抜き弁19からオーバーフロー管20、リザーブタンク21を介して空気を外部に排出することができる。
したがって、従来のように無負荷状態でエンジン1の回転数を一気に上げて、サーモスタット14の感温部14aを冷却水に浸らせてサーモスタット14を開状態にし、空気溜まりを強制的に排除する操作を行わなくても、あるいは、そのような操作を忘れたり、アイドリング状態でそのまま放置されたりしても、サーモスタット14の感温部14aが冷却水に浸され、冷却水温度の上昇によりサーモスタット14が開状態となるため、冷却水が冷却水循環装置5内を循環していないことに付随するエンジン1でのオーバーヒートの発生を確実に防止することができる。
さらに、ウォータアウトレット11内部に溜まっていた空気がカーヒータに流れると、フロントヒータ22やリアヒータ23のヒータコア22c、23cを気泡が混入した冷却水が流れるため、これらの部分で騒音(水流音)が発生することがあるが、上述したように、ウォータアウトレット11内部に溜まっていた空気が外部に排出されるため、気泡が混入した冷却水がフロントヒータ22やリアヒータ23のヒータコア22c、23cを流れることがなく、水流音の発生を確実に防止することができる。
また、第1の温水供給配管24がウォータアウトレット11の側方面に位置する接続口11aに接続されて、下流側で下方に向けて屈曲されていることにより、新しい不凍液を含む冷却水が冷却水循環装置5に注入された時、第1の温水供給配管24では、ウォータアウトレット11内に満たされた冷却水と同じ水位まで冷却水が満たされ、エンジン1の始動に伴って一旦ウォータアウトレット11内での冷却水の水位が下がるが、エンジン1がアイドル運転されている間にアウトレット11内の圧力が上昇し、ウォータアウトレット11および第1の温水供給配管24内の冷却水がカーヒータ側に押し出され、確実にフロントヒータ22、リアヒータ23に冷却水を送給することができる。また、第1の温水供給配管24がウォータアウトレットの側方面に接続していることにより、第1の温水供給配管24に空気が流れ込み難くなり、フロントヒータ22、リアヒータ23に送給される冷却水に気泡が混入することが防止されるため、フロントヒータ22、リアヒータ23(ヒータコア22c、23c)における水流音の発生を確実に防止することができる。
さらに、第1の温水供給配管24が、アウトレットパイプ8が略水平方向に延設される区間において、アウトレットパイプ8に沿って延設され、その下流側で下方に向けて屈曲されていることにより、たとえ何らかの理由で気泡が混入した冷却水が第1の温水供給配管24に流れ込んだとしても、第1の温水供給配管24の略水平方向に延設された区間24aにおいて空気(気泡)が上方に分離して、フロントヒータ22、リアヒータ23に送給されるのが防止される。これにより、フロントヒータ22、リアヒータ23のヒータコア22c、23cに気泡が混入するのが防止され、フロントヒータ22、リアヒータ23(ヒータコア22c、23c)における水流音の発生を確実に防止することができる。
なお、このような第1の温水供給配管24に、略水平方向に延設された区間24aが設けられていない場合(例えば、第1の温水供給配管24が接続口から下方に延び、上方にまたは斜め上方に屈曲されるような場合)や、略水平方向に延設された区間24aが設けられていても、この区間24aの下流側で上方にまたは斜め上方に屈曲されるような場合には、気泡が混入した冷却水から空気(気泡)が分離できず、フロントヒータ22、リアヒータ23のヒータコア22c、23c内に気泡が持ち込まれてしまうことになる。
次に、この実施の形態に係る内燃機関1の冷却水循環装置5における冷却水の流れについて、図4、図5に基づき説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る内燃機関の冷却水循環装置での不凍液交換後における内燃機関の操作状態と冷却水の動きとの関係を説明するためのフロー図であり、図5は、この冷却水循環装置のウォータアウトレットにおける冷却水の水位と流れを説明するための側断面模式図であり、(a)は不凍液交換直後(内燃機関停止状態)の状態を、(b)は内燃機関始動時の状態を、(c)は暖気運転時の状態を示すものである。
先ず、ステップ#1において、不凍液の交換が行われる。ここでは、一旦冷却水循環装置5内にある冷却水が排出され、その後に新しい不凍液を含む冷却水が冷却水循環装置5に注入される。そして、冷却水循環装置5のエンジン1側の最高水位位置にあるウォータアウトレット11にも、アウトレットパイプ8、インレットパイプ9を介して冷却水が導入され、エア抜き弁15のネジを手動で緩めて、ウォータアウトレット11内のサーモスタット14より下流側に残留する空気を隔壁板の上方に開口された空気流通孔14cを介して上流側に押し出しつつ、ウォータアウトレット11内の空気をエア抜き弁15から外部に排出することにより、ラジエータ6のアッパータンク16より下方位置にあるウォータアウトレット11の内部が冷却水で満たされることになる。このようにして冷却水循環装置5内に新しい冷却水が導入され、ウォータアウトレット11内では、サーモスタット14が冷たい冷却水に浸されて「閉」の状態となり、ウォータアウトレット11からアウトレットパイプ8への冷却水の送給経路が閉ざされた状態となる(図5(a)参照)。
次に、ステップ#2において、エンジン1の始動が行われる。ここでは、冷却水温度がまだ低いため、サーモスタット14は「閉」の状態であるが、エンジン1の始動に伴ってウォータポンプ13が駆動され、冷却水循環装置5内の冷却水が、接続口11aから温水供給配管24、26および温水還流配管25、27を介してフロントヒータ22、リアヒータ23に循環されるとともに、エンジン1で発せられる熱により次第に温められる。この冷却水の循環に際して、エンジン1の細部に残留していた空気が高い所(すなわち、ウォータアウトレット11)に集まってくるため、ウォータアウトレット11内では水位が下がる(図5(b)参照)が、第1の温水供給管路24がサーモスタット14の感温部14aの位置よりも高い位置でウォータアウトレット11に接続されているため、冷却水の水位はサーモスタット14の感温部14aより下方に低下することがなく、サーモスタット14の感温部14aは冷却水に浸され、冷却水の温度を感知できる状態が維持される。
そして、続くステップ#3において、アイドル回転領域でのエンジン1の暖気運転が継続されている間に、冷却水循環装置5内を循環する冷却水がエンジン1でさらに温められ、冷却水温度がサーモスタット14の開動作温度に達すると、サーモスタット14が「開」の状態となる。このとき、ウォータアウトレット11のアウトレットパイプ8側に存在する冷たい冷却水がウォータアウトレット11のウォータジャケット10側に流入し、逆に、ウォータアウトレット11のウォータジャケット10側に存在する温かい冷却水がウォータポンプ13からの駆動圧力によりウォータアウトレット11のアウトレットパイプ8側に押し出される現象が起こる(図5(c)参照)。このような冷たい冷却水と温かい冷却水との入れ替わりにより、サーモスタット14の感温部14aの温度が低下してサーモスタット14の開動作温度より低くなると、サーモスタット14が「閉」の状態となる。このようなことをしばらく繰り返した後、エンジン1の暖気運転がしばらく継続され、ウォータアウトレット11内の冷却水温度がサーモスタット14の開動作温度より高くなると、サーモスタット14の「開」の状態が維持され、ラジエータ6へ冷却水を送給できることになる。
そして、ステップ#4において、アクセルペダルが踏み込まれる操作が行われる。この操作は無負荷状態での操作に限らず、車両を走行させるための操作をも含むものである。この操作により、ウォータポンプ13からの駆動圧力が一気に上昇し、冷却水循環管路7内を循環する冷却水の水量が増加すると、ウォータアウトレット11内およびアッパータンク16内に形成されていた空気溜りの空気がエア抜き弁19から強制的に排出される。すなわち、ウォータアウトレット11内のサーモスタット14の上方に溜まっていた空気が下流側に押し出され、さらに、サーモスタット14の下流側に溜まっていた空気がアウトレットパイプ8を介してラジエータ6のアッパータンク16に送り込まれ、このアッパータンク16上方に位置するエア抜き弁19からオーバーフロー管20、リザーブタンク21を経て外部に排出されることになる。
本実施の形態に係る冷却水循環装置5では、冷却水が温水供給配管24、26を介してフロントヒータ22やリアヒータ23に送給される間においても、サーモスタット14の感温部14aが冷却水に浸されているため、冷却水温度がサーモスタット14の開動作温度に達した時点で、サーモスタット14が「開」の状態となる。したがって、冷却水温度が高くなってもサーモスタット14が開かず、冷却水循環管路7に冷却水が送給されない事態に至るのを防止して、エンジン1のオーバーヒートを確実に防止することができる。また、ウォータアウトレット11内やアッパータンク16内に溜まっていた空気がエア抜き弁19から強制的に排出されることにより、温水供給配管24、26やカーヒータ(フロントヒータ22およびリアヒータ23)に気泡の混入した冷却水(温水)が流れることはなく、カーヒータのヒータコア22c、23cで水流音が発生するのを確実に防止することができる。
なお、上記のステップ#2またはステップ#3の途中において、サーモスタット14が「開」の状態にならない状態で、ステップ#4に示したアクセルペダルが踏み込まれる操作が行われる(図中、破線で示されるルート)と、当初、冷却水温度が低い状態では、サーモスタット14が「閉」の状態で冷却水循環管路7には冷却水が送給されないが、冷却水温度がサーモスタット14の開動作温度に達すると(すなわち、エンジン1のオーバーヒートを招くことのない温度で)、サーモスタット14が「開」の状態となり、冷却水循環管路7に冷却水が送給され、ウォータアウトレット11内やアッパータンク16内に溜まっていた空気がエア抜き弁19から強制的に排出される。したがって、このような場合であっても、エンジン1のオーバーヒートを防止することができるとともに、温水供給配管24、26やカーヒータ(フロントヒータ22およびリアヒータ23)に気泡の混入した冷却水(温水)が流れるのを防止して、カーヒータ22、23(ヒータコア22c、23c)で水流音が発生するのを確実に防止することができる。
また、上記のステップ#1において、新しい不凍液を含む冷却水が冷却水循環装置5に注入された時、第1の温水供給配管24では、ウォータアウトレット11内に満たされた冷却水と同じ水位まで冷却水が満たされ、次のステップ#2で、エンジン1が始動されると、それに伴って一旦ウォータアウトレット11内での冷却水の水位が下がり、さらに、次のステップ#3で、エンジン1がアイドル回転領域で暖機運転されている間に、アウトレット11内の圧力が上昇して、ウォータアウトレット11および第1の温水供給配管24内の冷却水がカーヒータ側に押し出される。このように、第1の温水供給配管24がウォータアウトレット11の側方面に位置する接続口11aから下流側で下方に向けて屈曲されていることにより、冷却水を確実にフロントヒータ22、リアヒータ23に送給することができる。また、第1の温水供給配管24がウォータアウトレットの側方面に接続していることにより、第1の温水供給配管24に空気が流れ込み難くなり、フロントヒータ22、リアヒータ23に送給される冷却水に気泡が混入することが防止されるため、フロントヒータ22、リアヒータ23(ヒータコア22c、23c)における水流音の発生を確実に防止することができる。
さらに、ステップ#1から#3の動作の中で、何らかの理由で気泡が混入した冷却水が第1の温水供給配管24に流れ込んだとしても、第1の温水供給配管24が、アウトレットパイプ8が略水平方向に延設される区間において、アウトレットパイプ8に沿って延設され、その下流側で下方に向けて屈曲されていることにより、第1の温水供給配管24の略水平方向に延設された区間24aにおいて空気(気泡)が上方に分離して、フロントヒータ22、リアヒータ23に送給されるのが防止される。これにより、フロントヒータ22、リアヒータ23のヒータコア22c、23cに気泡が混入するのが防止され、フロントヒータ22、リアヒータ23(ヒータコア22c、23c)における水流音の発生を確実に防止することができる。
以上のような一連の動作により、本実施の形態に係る冷却水循環装置5では、エンジン1のオーバーヒートを確実に防止することができるとともに、しかも、ウォータアウトレット11内上方および下流側の空気溜りに溜まっていた空気が第1の温水供給配管24に送り込まれることなく、カーヒータ(フロントヒータ22およびリアヒータ23)において、気泡が混入した冷却水が流れることにより引き起こされるヒータコア22c、23cでの水流音の発生を確実に防止することができる。
上記の実施の形態において、フロントヒータ22に温水を供給する第1の温水供給配管24がウォータアウトレット11の側方面(接続口11a)に接続されていたが、リアヒータ23に温水を供給する第2の温水供給配管25がウォータアウトレット11の側方面に接続されても良い。この場合には、第2の温水供給配管25が、ウォータアウトレット11に接続される接続口11aの下流側で下方に向けて屈曲されれば良い。また、アウトレットパイプ8が略水平方向に延設される場合においては、第2の温水供給配管25が、アウトレットパイプ8に沿って延設され、その下流側で下方に向けて屈曲されれば良い。
また、上記の実施の形態において、フロントヒータ22で暖房の用に供された温水をエンジン1に戻す第1の温水還流配管25がインレットパイプ9の途中部位に接続されているが、この第1の温水還流配管25がウォータインレット12に直接接続されても良く、同様に、リアヒータ23で暖房の用に供された温水をエンジン1に戻す第2の温水還流配管26がインレットパイプ9の途中部位に接続されているが、この第2の温水還流配管26がウォータインレット12に直接接続されても良い。さらに、第2の温水還流配管26が第1の温水還流配管25との接続位置より下流側でインレットパイプ9に接続されているが、第1の温水還流配管25との接続位置より上流側でインレットパイプ9に接続されても良い。