JP4803777B2 - 9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよびその製造方法 - Google Patents

9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高性能ポリマーの製造に有用なモノマーであるビス(o−アミノフェノール)フルオレン類およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビス−o−アミノフェノール類は、高耐熱、高強度、電気特性の良好なポリマー、例えばポリベンゾオキサゾールおよび水酸基を有するポリイミドまたはその前駆体の製造に必要な化合物である。ポリベンゾオキサゾールおよびポリヒドロキシイミドは特に半導体の表面保護膜、層間絶縁膜、多層配線基板の相関絶縁膜、フレキシブル配線基板のカバーコート等として重要である。近年フォトレジストの機能をもたせた感光性ポリベンゾオキサゾールやポリイミドが特に注目されている。ポリベンゾオキサゾールは、通常ジカルボン酸ジクロライドとビス−o−アミノフェノールからポリヒドロキシアミドを得、次いで加熱処理し脱水閉環して製造される。またポリヒドロキシイミドはテトラカルボン酸無水物とビス−o−アミノフェノールからポリアミック酸を得、これを加熱処理し脱水閉環して製造される。ビス−o−アミノフェノール類はこれから製造されるポリマーの性質に大きい影響を与える。即ちポリマーの耐熱性、機械特性、電気特性あるいは溶解性等は原料のビス−o−アミノフェノール類によって大きく影響される。このような用途に使用されるビス−o−アミノフェノール類の具体例としては、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、3,3′−ジアミノ−4,4′−ジヒドロキシビフェニル等が知られている。
【0003】
ビス−o−アミノフェノール類の一種である9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンについては、わずかにIzv.Akad.Nauk SSSR,Ser.Khim.(1976),(4),920−922に、ビス−o−アミノフェノール類とトリメチルシリルジエチルアミンの反応により、アミノ基と水酸基がトリメチルシリル化されたビス−o−アミノフェノール類を得た旨の報告の中で、ビス−o−アミノフェノール類の一例として構造式のみ記載され、その性質あるいはその製造法並びにシリル化生成物の確認については全く記載されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
半導体分野で益々進んでいる高密度化、面実装化や高周波伝送に対応する耐熱性、低膨張性、低誘電率、物理的特性に優れたポリマーの製造に有用なモノマーであるビス−o−アミノフェノール類およびその製造方法を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが前記したような半導体分野での高度な性能要求を充たすポリマーのモノマーとして有用であり、これを高純度、高収率で製造する方法を見出して本発明を完成させた。
即ち、本発明は、
(1)9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、
(2)9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを還元する9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの製造方法、
(3)還元を触媒の存在下、水素を用いて還元を行う(2)に記載の9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの製造方法、
(4)還元を触媒の存在下、ヒドラジン類を用いて還元を行う(2)に記載の9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの製造方法、
(5)触媒がニッケルまたは貴金属触媒である(2)または(3)に記載の9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの製造方法、
(6)貴金属触媒が担体に分散された白金および/またはパラジウムである(5)に記載の9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの製造方法、
(7)還元を低級脂肪族アルコール類、環式または非環式エーテル類の溶媒中で行う(2)から(6)のいずれかに記載の9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの製造方法、
(8)9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、
(9)9,9−ビス(3−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを、ニトロ化する9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの製造方法、
(10)9,9−ビス(3−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを、不活性な溶媒中で、硝酸濃度が10〜95重量%の硝酸を用いて、反応温度がー20〜35℃でニトロ化する(9)に記載の9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの製造方法、
(11)不活性溶媒が脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族塩素化炭化水素または芳香族塩素化炭化水素のいずれかであり、実質的に他の酸の存在しない条件で、ニトロ化することを特徴とする(9)または(10)に記載の9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの製造方法、
(12)9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの5位に結合したアルキルが、CからCのアルキル基またはハロゲン置換アルキル基である(1)に記載のフルオレン化合物、
(13)9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが9,9−ビス(3−アミノ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン又は9,9−ビス(3−アミノ−5−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンである(1)または(12)に記載のフルオレン化合物、
に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明の9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの5位の置換基は、好ましくはCからCのアルキル基またはハロゲン置換アルキル基であり、具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、n−ヘキシル、iso−ヘキシルであるか、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘキサフルオロプロピル、ヘキサフルオロブチル、ヘプタフルオロペンチルが挙げられる。これらのうちメチルまたはトリフルオロメチルが好ましい。
好ましい9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンとしては、9,9−ビス(3−アミノ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−5−エチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−5−iso−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−5−n−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−5−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−5−n−ペンチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−5−iso−ペンチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−5−n−ヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−5−iso−ヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−5−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−5−トリクロロメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−5−ペンタフルオロエチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−5−ヘキサフルオロプロピル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−5−ヘキサフルオロブチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−5−ヘプタフルオロペンチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが挙げられる。
【0008】
本発明の9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの原料となる本発明の9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの5位の置換基は、好ましくはCからCのアルキル基またはハロゲン置換アルキル基であり、具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、n−ヘキシル、iso−ヘキシルであるか、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘキサフルオロプロピル、ヘキサフルオロブチル、ヘプタフルオロペンチルが挙げられる。これらのうちメチルまたはトリフルオロメチルが好ましい。
好ましい9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンとしては、9,9−ビス(3−ニトロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ニトロ−5−エチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ニトロ−5−iso−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ニトロ−5−n−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ニトロ−5−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ニトロ−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ニトロ−5−n−ペンチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ニトロ−5−iso−ペンチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ニトロ−5−n−ヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ニトロ−5−iso−ヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ニトロ−5−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ニトロ−5−トリクロロメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ニトロ−5−ペンタフルオロエチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ニトロ−5−ヘキサフルオロプロピル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ニトロ−5−ヘキサフルオロブチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ニトロ−5−ヘプタフルオロペンチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが挙げられる。
【0009】
本発明の9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの原料となる本発明の9,9−ビス(3−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンは、フルオレノンとo−アルキルフェノールを塩化水素等の酸触媒の存在下で加熱することによりに製造される。例えば、フルオレノンとフルオレノンに対して過剰のo−アルキルフェノールと触媒量のβ−メルカプトプロピオン酸の如きチオール類を加えて加熱溶解し、この溶液に塩化水素ガスを連続的に吹き込んで反応させ、得られた反応混合物に高沸点溶剤を加え、未反応のo−アルキルフェノールを蒸留回収後、蒸留残分を冷却して、9,9−ビス(3−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを析出させ、ろ過により取り出し、必要に応じて再結晶などにより精製することにより、9,9−ビス(3−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを得ることができる。
本発明の9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンは、9,9−ビス(3−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンをニトロ化することにより製造される。
また、本発明の9,9−ビス(3−アミノ5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンは、9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを、還元することにより製造される。
【0010】
9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを還元して9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを得る本発明の製造方法を、好ましい態様である、触媒の存在下、水素またはヒドラジンで還元する方法にて説明する。
【0011】
還元の触媒としては、ニッケル触媒または貴金属触媒を使用することができる。ニッケル触媒としては、ケイソウ土や活性炭のような担体に分散されたニッケル、ホウ化ニッケル、ラネーニッケルが使用しうる。これらのうちラネーニッケルを使用するのが好ましい。又貴金属触媒としては、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム触媒が使用しうる。これらの貴金属の単体の外、該金属の酸化物、該金属が活性炭、シリカ、アルミナ、ゼオライト、炭酸カルシウムのような担体に分散された触媒が使用しうる。白金またはパラジウムが活性炭に分散された触媒が好ましい例として挙げられる。この場合、担体に分散する金属の割合は1.0〜5.0重量%が好ましい。又、ヒドラジンで還元する場合、鉄塩と活性炭を組み合わせたものも触媒として使用しうる。鉄塩としては塩化第1鉄や塩化第2鉄を挙げることができる。触媒量は原料の9,9−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシ−5−アルキルフェニル)フルオレンに対して、ラネーニッケルでは5〜20重量%、白金ーカーボンまたはパラジウムーカーボンでは1〜10重量%、鉄塩では5〜20重量%使用することが好ましい。触媒は新触媒でも回収リサイクルした触媒でもよい。
【0012】
水素で還元する場合、反応温度は30〜150℃、好ましくは50〜100℃である。30℃以下では反応速度が遅く、150℃以上では芳香核の水素化などの副反応物が増加する。反応水素圧は1〜100kg/cm(ゲージ圧)、好ましくは2〜20kg/cm(ゲージ圧)である。適宜水素を補給して一定圧力に保つのが好ましく、水素吸収がなくなるまで補給する。水素の吸収量は9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン1.0モルに対して約6.0モルである。
【0013】
または、ヒドラジン類で還元する場合、ヒドラジン類としてはヒドラジン一水和物、メチルヒドラジン、ヒドラジニウムクロライド、ヒドラジニウムサルフェートが使用できる。好ましくはヒドラジン一水和物の60〜80重量%水溶液を使用する。ヒドラジン類は、9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン1.0モルに対して2.5〜7.0モル、好ましくは3.0〜4.5モル使用する。反応温度は10〜100℃、好ましくは30〜80℃で行う。
【0014】
還元反応は、通常、低級脂肪族アルコール類、環式または非環式エーテル類の溶媒中で行われる。使用しうる低級脂肪族アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール等が、同じくエーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランがそれぞれ例示できる。溶媒の使用量は9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン1重量部に対して通常0.5〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。これらの溶媒と水との混合溶媒を使用することもできる。混合溶媒中の水の割合は50容量%以下が好ましい。
【0015】
水素を用いた水素還元の操作方法しては、オートクレーブに溶媒、9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、触媒の所定量を仕込み、空気を窒素置換ついで水素置換する。攪拌しながら反応温度近くまで加熱後、冷却して反応温度を保持しながら、所定反応圧力で水素を吸収がなくなるまで補給する。または溶媒と触媒を仕込み、反応温度と圧力を保持しながら、9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの反応溶媒スラリーまたは溶液と、水素を同時に供給して反応する。反応時間は触媒量、反応温度、反応圧力によって変わるが通常0.5〜12時間である。反応終了後、室温まで冷却して水素を窒素で置換した後、オートクレーブから取り出した反応物から触媒を濾過して除く。濾液から溶媒と水を留去して固体の9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが得られる。
【0016】
ヒドラジンを用いたヒドラジン還元の操作方法としては、反応器内の空気を窒素で置換した後、溶媒、9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、触媒の所定量を仕込み、攪拌しながら反応温度近くまで加熱する。冷却して反応温度を保持しながら、所定量のヒドラジン水溶液を分割または連続して加えて反応する。または溶媒と触媒を仕込み、反応温度を保持しながら9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの反応溶媒スラリーまたは溶液と、ヒドラジン水溶液を同時に加えて反応する。 反応時間は触媒量、反応温度により変わるが通常0.5から12時間である。ヒドラジン注入後さらに所定温度を保って、0.5〜6時間攪拌する。反応終了後、室温まで冷却し反応物を取り出し、触媒を濾過して除く。濾液から溶媒と水を留去して固体の9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが得られる。
【0017】
以上のようにして得られた9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンは十分純度は高いが、必要に応じて再結晶法等により精製することも出来る。再結晶用の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランのようなエーテル類、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチルのようなカルボン酸エステルを使用することができる。この場合、通常アミン生成物1重量部に対して溶媒は1〜10重量部で使用し、溶媒は単独で使用しても2種類以上を混合して使用してもよい。
または9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを希塩酸に溶解し、活性炭を加えて攪拌後、活性炭を濾別した濾液に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を加えて中和して析出させる方法によっても精製できる。この場合9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン1重量部に対して希塩酸は2〜20重量部で使用するのが好ましい。9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン1モルに対する塩酸量は、4〜5モルである。
【0018】
反応の進行状況あるいは目的物の純度は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって確認できる。本発明の方法によって製造される9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンは、ポリベンゾオキサゾールおよびポリヒドロキシイミド等の高性能ポリマーのモノマーとして使用できる。
【0019】
引き続き、9,9−ビス(3−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンをニトロ化して9,9−ビス(3−ニトロ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを得る本発明の製造方法を、好ましい態様である、硝酸を用いてニトロ化する方法にて説明する。
【0020】
ニトロ化に使用される硝酸は、通常10〜95重量%水溶液であり、工業用硝酸をそのまま又は水で希釈して使用することができる。好ましい硝酸濃度は55〜75重量%水溶液である。硝酸の使用量は9,9−ビス(3−アルキル−4−ヒドキシフェニル)フルオレン1モルに対して通常1.8〜2.5モルであり、1.9〜2.3モルが好ましい。
【0021】
ニトロ化の反応温度は、通常−20〜35℃、好ましくは−5〜5℃である。
【0022】
9,9−ビス(3−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのニトロ化は不活性な溶媒中でおこなう。使用し得る不活性な溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族塩素化炭化水素または芳香族塩素化炭化水素が挙げられる。脂肪族炭化水素の具体例としては、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンを挙げることができる。芳香族炭化水素の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンが挙げれる。使用し得る脂肪族塩素化炭化水素の具体例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン等を、同じく芳香族塩素化炭化水素の具体例としては、モノクロロベンゼン、オルソジクロロベンゼンを挙げることができる。反応に使用する溶媒量は、9,9−ビス(3−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンに対して通常3〜10倍(重量比)である。
【0023】
ニトロ化の反応操作方法としては、9,9−ビス(3−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを不活性溶媒中で攪拌して溶解するか分散、冷却して所定温度に保ちながら所定量の硝酸を少しずつ注入する。注入時間は通常0.5〜20時間であり、好ましくは3〜10時間である。硝酸注入後さらに所定温度に保って、0.5〜10時間攪拌を継続して反応を完結させる。反応終了後、反応混合物に水を加えて攪拌後、反応混合物がスラリー状態の場合はこれを濾過し、希アルカリ水溶液次いで水でよく洗浄する。反応混合物が溶液の場合は静置して有機層と水層を分離し、有機層を希アルカリ水溶液で中性になるまで洗浄後、溶媒を留去して粗ニトロ化生成物を得る。反応の進行状況あるいは目的物の純度は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって確認できる。
【0024】
【実施例】
次に実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明がこれらの具体例にのみ限定されるものではない。
【0025】
実施例1 9,9−ビス(3−ニトロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの製造
温度計,攪拌機を備えた1L4口フラスコにトルエン450mlと9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン114g(0.30mol)を加え、冷却して反応温度を−5〜0℃にたもちながら70重量%硝酸(d=1.42)69g(0.77mol)を3時間30分かけて滴下した。さらに同温度で2時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を濾過し希炭酸水素ナトリウム水溶液次いで水により洗浄した。減圧乾燥して黄色の粗9,9−ビス(3−ニトロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン137gを得た。理論収量に対して98%。HPLC分析(面積%)90.5%。
このものをメタノール500mlと2−ブタノン150mlの混合溶媒中で1時間還流した後、5℃まで徐々に冷却後結晶を濾過した。乾燥して精9,9−ビス(3−ニトロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン110gを得た。精製収率80%。HPLC分析値(面積%)98.5%。
9,9−ビス(3−ニトロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの特性値
融点(DSC) 205℃
H−NMR(CDCl3)
δ2.23ppm(6H,s)、7.23(2H,s)、7.33(2H,d)、7.37−7.30(2H,m)、7.43(2H,ddd)、7.74(2H,d)、7.80(2H,d)10.85(2H,s)
【0026】
実施例2 9,9−ビス(3−アミノ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの製造(水素還元法)
温度計、攪拌機を備えた500ccオートクレーブに、9,9−ビス(3−ニトロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン47g(0.10mol)、エチレングリコールモノエチルエーテル200ml、5%Pd−炭素1.8g(乾燥品として)を加え、窒素置換次いで水素置換する。水素圧9kg/cm(ゲージ圧)、80℃に保持して還元すると約2時間で水素吸収が止まった。さらに30分、80℃で熟成した後、窒素置換後オートクレーブより反応物を取り出した。触媒を濾過により除いた濾液から、ロータリーエバポレーターにより減圧下で溶媒および生成水の大部分を留去し、スラリーを得た。このものにメタノールを加えて還流状態で30分攪拌し、室温まで冷却後濾過した。真空乾燥器で50℃、減圧で乾燥して、9,9−ビス(3−アミノ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン37.5gを得た。収率92%。HPLC分析(面積%)99.5%。
9,9−ビス(3−アミノ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの特性値
融点(DSC) 235℃
H−NMR(重DMSO)
δ1.94ppm(6H,s)、4.47(4H,bs)、6.00(2H,d)、6.36(2H,d)、7.29(4H,m)、7.40(2H,d)、7.82(2H,d)
【0027】
実施例3 9,9−ビス(3−アミノ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの製造(ヒドラジン還元法)
温度計、攪拌機、コンデンサーを備えた500mlフラスコに、9,9−ビス(3−ニトロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン47g(0.10mol)、エチレングリコールモノエチルエーテル200ml、5%Pd−炭素2gを加え、窒素置換した。60℃に加熱後、60%ヒドラジン一水和物33g(0.40mol)を2時間かけて滴下した。この間反応温度を60〜65℃に保持するように冷却した。さらに1時間、60〜65℃に保持して熟成した後、室温まで冷却した。反応物を取り出し、触媒を濾過により除いた濾液から、減圧下で溶媒と水の大部分を留去し、スラリーを得た。このものにメタノールを加えて還流状態で30分攪拌し、室温まで冷却後濾過した。真空乾燥器で乾燥して、9,9−ビス(3−アミノ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン36.7gを得た。収率90%。HPLC分析値(面積%)99.4%。
融点およびH−NMRデータは、実施例2に記載のデータと完全に一致した。
【0028】
【発明の効果】
高性能ポリマーのモノマーとして有用な9,9−ビス(3−アミノ−5−アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが効率よく得られる。

Claims (7)

  1. 9,9−ビス(3−アミノ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン。
  2. 9,9−ビス(3−ニトロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを、還元することを特徴とする9,9−ビス(3−アミノ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの製造方法。
  3. 還元を触媒の存在下、水素を用いて行う請求項2に記載の9,9−ビス(3−アミノ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの製造方法。
  4. 還元を触媒の存在下、ヒドラジン類を用いて行う請求項2に記載の9,9−ビス(3−アミノ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの製造方法。
  5. 触媒がニッケル触媒または貴金属触媒である請求項3又は4に記載の9,9−ビス(3−アミノ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの製造方法。
  6. 貴金属触媒がパラジウム触媒である請求項5に記載の9,9−ビス(3−アミノ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの製造方法。
  7. 9,9−ビス(3−ニトロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン。
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