本発明のニトロ又はアミノアリールポリアダマンタン誘導体は前記式(1)で表される。式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子、前記式(2)で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは式(2)で表される芳香族環式基である。kは1〜3の整数を示し、kが2又は3の場合、複数個のR4、R6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい。なお、式(2)中、環Zは芳香環を示し、Xは芳香環に結合している置換基であって、ニトロ基又はアミノ基を示し、pは1以上(例えば1〜5)の整数を示し、pが2以上の場合、複数個のXは同一であっても異なっていてもよい。また、芳香環はX以外の置換基を有していてもよい。なお、k、pは、それぞれ括弧内の基の個数を意味する。
式(1)で表される化合物のうちXがアミノ基であるアミノアリールポリアダマンタン誘導体は、アミノ基を利用した重合により或いはアミノ基に重合性基を導入した重合性単量体の重合により機能性ポリマーに誘導することができる。例えば、Xがアミノ基である式(2)で表される芳香族環式基を1つ有する化合物は、アミノ基に重合性基を導入することにより、側鎖にポリアダマンタン環を有するポリマー(ペンダント型)のモノマー原料として利用できる。また、Xがアミノ基である式(2)で表される芳香族環式基を1つ有する化合物によれば、アミノ基と反応しうる基を有するポリマーと反応させることにより、アリール基が結合したポリアダマンタン骨格を該ポリマーの側鎖として導入することができる。一方、Xがアミノ基である式(2)で表される芳香族環式基を2つ有する化合物(特に、前記芳香族環式基を両端のアダマンタン環に1つずつ有する化合物)は、アミノ基を利用した縮合反応により合成されるポリマー(主鎖型)のモノマー原料として使用できる。さらに、Xがアミノ基である式(2)で表される芳香族環式基を3つ以上有する化合物(特に、前記芳香族環式基を少なくとも両端のアダマンタン環に1つずつ有する化合物)は、3次元網目構造を有する高次重合体の原料等として利用できる。式(1)で表される化合物のうちXがニトロ基であるニトロアリールポリアダマンタン誘導体は、これらのアミノアリールポリアダマンタン誘導体の合成原料として有用である。
式(2)で表される芳香族環式基における芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環等の芳香族炭素環;ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、アクリジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環などの芳香族複素環などが挙げられる。芳香環には非芳香環(シクロヘキサン環等の脂環;ピペリジン環、オキソラン環、オキサン環等の非芳香族性複素環)が縮合していてもよい。
また、前記芳香環(環Z)には、溶剤溶解性、耐熱性、その他の機能を付与または向上させるため、X以外の置換基を有していてもよい。このような置換基として、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ(ハロ)アルキル基、保護基で保護されたアミノ基、保護基で保護されていてもよいアシル基、シアノ基、アリール基などが挙げられる。該置換基の数は0〜4程度である。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどの炭素数1〜15程度のアルキル基(好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基);トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル基などの炭素数1〜15程度のハロアルキル基(好ましくはC1-10ハロアルキル基、さらに好ましくはC1-6ハロアルキル基)などが挙げられる。ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基として、特に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基が好ましい。ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブチルオキシ、s−ブチルオキシ、t−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜15程度のアルコキシ基(好ましくはC1-10アルコキシ基、さらに好ましくはC1-6アルコキシ基);トリフルオロメトキシ基などの炭素数1〜15程度のハロアルコキシ基(好ましくはC1-10ハロアルコキシ基、さらに好ましくはC1-6ハロアルコキシ基)などが挙げられる。ヒドロキシ(ハロ)アルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル基、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチル−1−ヒドロキシエチル基など(好ましくは、ヒドロキシ−C1-4アルキル基、ヒドロキシ−C1-4ハロアルキル基等)が挙げられる。
前記ヒドロキシル基や、ヒドロキシ(ハロ)アルキル基におけるヒドロキシル基の保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基、例えば、アルキル基(例えば、メチル、t−ブチル基などのC1-4アルキル基など)、アルケニル基(例えば、アリル基など)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基など)、アリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル基など)、アラルキル基(例えば、ベンジル基など);置換メチル基(例えば、メトキシメチル、メチルチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基など)、置換エチル基(例えば、1−エトキシエチル基など)、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、1−ヒドロキシアルキル基(例えば、1−ヒドロキシエチル基など)等の、ヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基;アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基;アセトアセチル基;ベンゾイル基などの芳香族アシル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、置換シリル基(例えば、トリメチルシリル基など)など、及び、分子内にヒドロキシル基(ヒドロキシメチル基を含む)が2以上存在するときには、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基(例えば、メチレン、エチリデン、イソプロピリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、ベンジリデン基など)などが例示できる。
前記アミノ基の保護基としては、例えば、前記ヒドロキシル基の保護基として例示したアルキル基、アラルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基などが挙げられる。前記アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基;アセトアセチル基;ベンゾイル基などの芳香族アシル基などが挙げられる。アシル基の保護基としては有機合成分野で慣用の保護基を使用できる。アシル基の保護された形態として、例えば、アセタール(ヘミアセタールを含む)などが挙げられる。前記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
式(2)において、Xの置換位置は特に限定されず、例えば芳香環がベンゼン環の場合、オルト位、メタ位及びパラ位の何れであってもよく、用途やポリマー設計に応じて適宜選択できる。なお、芳香環がベンゼン環の場合には、オルト位及びパラ位が配向性上合成しやすく、特にパラ位が重合用モノマーとして有用な場合が多い。また、芳香環が多環の場合には、ベンゼン環の場合に準じてXの置換位置を選択できる。
式(1)に示されるアダマンタン環には、溶剤溶解性、耐熱性、その他の機能を付与または向上させるため、式(2)で表される基以外の置換基を有していてもよい。また、置換基はアダマンタン環の橋頭位、非橋頭位の何れに結合していてもよい。
アダマンタン環が有していてもよい置換基として、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ(ハロ)アルキル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、保護基で保護されていてもよいアシル基、シアノ基、ニトロ基、オキソ基(=O)などが挙げられる。
ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基、ヒドロキシ(ハロ)アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基やヒドロキシ(ハロ)アルキル基におけるヒドロキシル基の保護基、アミノ基の保護基、アシル基の保護基は、前記環Zの置換基の場合と同様である。また、保護基で保護されたカルボキシル基としては、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシカルボニル基など)、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、トリアルキルシリルオキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基などが挙げられる。保護基で保護されたスルホ基としては、アルコキシスルホニル基(例えば、メトキシスルホニル、エトキシスルホニル、ブトキシスルホニル基等のC1-6アルコキシスルホニル基など)、シクロアルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アラルキルオキシスルホニル基、トリアルキルシリルオキシスルホニル基、置換又は無置換スルファモイル基などが挙げられる。
上記のアダマンタン環が有していてもよい置換基のなかでも、溶剤溶解性を著しく高める機能を有することから、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基が好ましく、特に、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基が好ましい。また、機能性を向上させるため、アダマンタン環が有していてもよい置換基として、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基なども好ましい。
前記置換基(例えば、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基等)がアダマンタン環の橋頭位に結合する場合、アダマンタン環の橋頭位の1つに結合していてもよいが、アダマンタン環の2つの橋頭位に結合しているのが特に好ましい。また、複数のアダマンタン環の各2箇所の橋頭位すべてに該置換基を有するのも好ましい。
式(1)で表されるニトロ又はアミノアリールポリアダマンタン誘導体は、分子中に酸性基又は塩基性基を有する時は塩を形成しうる。本発明の化合物にはこのような塩も含まれる。分子中にカルボキシル基やスルホ基(スルホン酸基)等の酸性基を有する場合の塩としては、例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが例示される。分子中にアミノ基等の塩基性基を有する場合の塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;p−トルエンスルホン酸塩、酢酸塩等の有機酸塩が挙げられる。塩は通常の塩形成反応により製造できる。
式(1)で表される化合物のうちニトロアリールポリアダマンタン誘導体の代表的な例として、3−(4−ニトロフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラメチル−3−(4−ニトロフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラエチル−3−(4−ニトロフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラブチル−3−(4−ニトロフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−3−(4−ニトロフェニル)−1,1′−ビアダマンタンなどのニトロフェニルビアダマンタン誘導体;3,3′−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(3,4−ジニトロフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−アミノ−3−ニトロフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラメチル−3,3′−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラエチル−3,3′−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラブチル−3,3′−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3′−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジヒドロキシ−5,5′−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジニトロ−5,5′−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジアミノ−5,5′−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′−ビアダマンタンなどのビス(ニトロフェニル)ビアダマンタン誘導体;3−(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−3−(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサエチル−3−(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサブチル−3−(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−3−(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのニトロフェニルトリアダマンタン誘導体;3,3″−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサメチル−3,3″−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサエチル−3,3″−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサブチル−3,3″−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−3,3″−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのビス(ニトロフェニル)トリアダマンタン誘導体;3−(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−3−(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタエチル−3−(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタブチル−3−(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタキス(トリフルオロメチル)−3−(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのニトロフェニルテトラアダマンタン誘導体;3,3′′′−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−3,3′′′−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタエチル−3,3′′′−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタブチル−3,3′′′−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタキス(トリフルオロメチル)−3,3′′′−ビス(4−ニトロフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのビス(ニトロフェニル)テトラアダマンタン誘導体;3,3′−ビス(4−ニトロナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタンなどの上記各ニトロフェニルポリアダマンタン誘導体に対応するニトロナフチルポリアダマンタン誘導体などが挙げられる。
式(1)で表される化合物のうちアミノアリールポリアダマンタン誘導体の代表的な例として、3−(4−アミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラメチル−3−(4−アミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラエチル−3−(4−アミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラブチル−3−(4−アミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−3−(4−アミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタンなどのアミノフェニルビアダマンタン誘導体;3,3′−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(3,4−ジアミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラメチル−3,3′−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラエチル−3,3′−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラブチル−3,3′−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3′−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジヒドロキシ−5,5′−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジアミノ−5,5′−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタンなどのビス(アミノフェニル)ビアダマンタン誘導体;3−(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−3−(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサエチル−3−(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサブチル−3−(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−3−(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのアミノフェニルトリアダマンタン誘導体;3,3″−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサメチル−3,3″−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサエチル−3,3″−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサブチル−3,3″−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−3,3″−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのビス(アミノフェニル)トリアダマンタン誘導体;3−(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−3−(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタエチル−3−(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタブチル−3−(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタキス(トリフルオロメチル)−3−(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのアミノフェニルテトラアダマンタン誘導体;3,3′′′−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−3,3′′′−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタエチル−3,3′′′−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタブチル−3,3′′′−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタキス(トリフルオロメチル)−3,3′′′−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのビス(アミノフェニル)テトラアダマンタン;3,3′−ビス(4−アミノナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタンなどの上記各アミノフェニルポリアダマンタン誘導体に対応するアミノナフチルポリアダマンタン誘導体などが挙げられる。
本発明のニトロ又はアミノアリールポリアダマンタン誘導体及びその塩は、非常に安定で対称性に優れた炭素骨格であるアダマンタン骨格を2〜4個直接結合しており、反応性官能基として利用できるニトロ又はアミノ基を有している。そのため、耐熱性、耐水性、光学特性、光透過性、低誘電率性、吸水性、密着性などの電気特性、熱特性、機械特性及び物理特性などに優れた各種高機能性ポリマー等の機能性材料、例えば、フレキシブル配線板(ベース材、カバー材)材料、CCL(銅張り積層板)材料、半導体デバイスや多層配線基板の層間絶縁膜材料、液晶配向膜材料、塗料材料、光学材料、航空宇宙用材料、車両用材料、接着剤材料等の原料(モノマー)、添加剤などとして有用である。
本発明の化合物のうち式(2)におけるXがニトロ基であるニトロアリールポリアダマンタン誘導体は、例えば、前記式(3)で表されるアリールポリアダマンタン誘導体にニトロ化剤を反応させることにより製造することができる。
式(3)中、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aは、同一又は異なって、水素原子、前記式(4)で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aのうち少なくとも1つは式(4)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4a、R6aはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい。また、式(4)において、環Zは芳香環を示し、該芳香環は置換基を有していてもよい。但し、水素原子を少なくとも1つ有している。
式(4)における芳香環(環Z)、該芳香環が有していてもよい置換基は式(2)におけるX以外の置換基と同様である。該芳香環はアミノ基を有していてもよい。R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aにおけるその他の置換基、アダマンタン環の橋頭位以外の部位に有していてもよい置換基は式(1)の場合と同様である。式(3)で表される好ましい化合物には、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6aの少なくとも1つ(より好ましくは2以上)がハロゲン原子を有していてもよいアルキル基(特に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基)である化合物が含まれる。また、アダマンタン環の橋頭位以外の部位にハロゲン原子を有していてもよいアルキル基(特に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基)を少なくとも1つ有している化合物も好ましい。
式(3)で表されるアリールポリアダマンタン誘導体の代表的な例として、3−フェニル−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラメチル−3−フェニル−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラエチル−3−フェニル−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラブチル−3−フェニル−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−3−フェニル−1,1′−ビアダマンタンなどのフェニルビアダマンタン誘導体;3,3′−ジフェニル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(3−ニトロフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(3−アミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラメチル−3,3′−ジフェニル−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラエチル−3,3′−ジフェニル−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラブチル−3,3′−ジフェニル−1,1′−ビアダマンタン、5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3′−ジフェニル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジヒドロキシ−5,5′−ジフェニル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジアミノ−5,5′−ジフェニル−1,1′−ビアダマンタンなどのジフェニルビアダマンタン誘導体;3−フェニル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−3−フェニル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサエチル−3−フェニル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサブチル−3−フェニル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−3−フェニル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのフェニルトリアダマンタン誘導体;3,3″−ジフェニル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサメチル−3,3″−ジフェニル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサエチル−3,3″−ジフェニル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサブチル−3,3″−ジフェニル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−3,3″−ジフェニル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのジフェニルトリアダマンタン誘導体;3−フェニル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−3−フェニル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタエチル−3−フェニル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタブチル−3−フェニル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタキス(トリフルオロメチル)−3−フェニル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのフェニルテトラアダマンタン誘導体;3,3′′′−ジフェニル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−3,3′′′−ジフェニル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタエチル−3,3′′′−ジフェニル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタブチル−3,3′′′−ジフェニル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタキス(トリフルオロメチル)−3,3′′′−ジフェニル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのジフェニルテトラアダマンタン誘導体;3,3′−ジ(1−ナフチル)−1,1′−ビアダマンタンなどの上記各フェニルポリアダマンタン誘導体に対応するナフチルポリアダマンタン誘導体などが挙げられる。
ニトロ化剤としては、例えば、硝酸(濃硝酸、発煙硝酸等)、混酸(硝酸及び硫酸)、金属硝酸塩(硝酸ナトリウムや硝酸カリウムと硫酸の混合物等)、硝酸アセチル、硝酸トリフルオロアセチル、五酸化二窒素や二酸化窒素等の窒素酸化物、ニトロニウム塩などが挙げられる。前記硝酸アセチルは、例えば、無水酢酸と濃硝酸、発煙硝酸、硝酸銅等との反応により生成する。硝酸トリフルオロアセチルは硝酸アンモニウムと無水トリフルオロ酢酸との反応により生成する。ニトロニウム塩としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸と無水硝酸との反応により生成するニトロニウムトリフルオロメタンスルホナート、ニトロニウムテトラフルオロボラートなどが挙げられる。なお、用いるニトロ化剤として、「The Nitro Group in Organic Synthesis」、NOBORU ONO 著、WILEY-VCH 刊に記載のニトロ化剤を用いることができる。
反応は溶媒の存在下又は非存在下で行われる。溶媒としては、ニトロ化剤の種類により異なるが、通常、酢酸などのカルボン酸;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素;ペンタンなどの脂肪族炭化水素;スルホラン;アセトニトリルなどの脂肪族ニトリルなどが挙げられる。
反応温度は、反応原料及びニトロ化剤の種類によって異なるが、通常−100℃〜100℃の範囲で適宜選択される。ニトロ化剤として硝酸アセチルを用いる場合には、反応温度は0〜60℃の範囲が好ましい。ニトロ化剤の使用量は、反応原料に対して当量程度用いてもよいが、大過剰量使用してもよい。また、ニトロ基の導入個数によりニトロ化剤の使用量を調節してもよい。反応は、回分式、半回分式、連続式等の何れの方式で行ってもよい。
反応により、式(3)で表されるアリールポリアダマンタン誘導体の式(4)で表される芳香族環式基の芳香環の水素原子がニトロ基に置き換わった対応する式(5)で表されるニトロアリールポリアダマンタン誘導体が生成する。式(5)中、R1b、R2b、R3b、R4b、R5b、R6bは、同一又は異なって、水素原子、前記式(6)で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1b、R2b、R3b、R4b、R5b、R6bのうち少なくとも1つは式(6)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4b、R6bはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい。なお、式(6)中、環Zは芳香環を示し、pは1以上(例えば1〜5)の整数を示す。芳香環はニトロ基以外の置換基を有していてもよい。式(6)における芳香環(環Z)、該芳香環が有していてもよい置換基は式(2)におけるX以外の置換基と同様である。該芳香環はアミノ基を有していてもよい。R1b、R2b、R3b、R4b、R5b、R6bにおけるその他の置換基、アダマンタン環の橋頭位以外の部位に有していてもよい置換基は式(1)の場合と同様である。
反応終了後、反応生成物は、例えば、液性調整、濾過、濃縮、抽出、蒸留、昇華精製、晶析、洗浄、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な分離精製手段により分離精製できる。
上記反応において原料として用いる式(3)で表されるアリールポリアダマンタン誘導体は、アダマンタン環に、脱離して該アダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基を有するポリアダマンタン誘導体とベンゼン等の芳香環に水素原子を有する芳香族化合物とを反応させることにより得ることができる。前記脱離して該アダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基の種類及び反応条件等としては、後述の式(7)で表されるポリアダマンタン誘導体と式(8)で表される芳香族化合物との反応と同様である。例えば、ハロポリアダマンタン誘導体と芳香環に水素原子を有する芳香族化合物とを、塩化第二鉄等のルイス酸の存在下で反応(フリーデルクラフト反応)させることにより、式(3)で表されるアリールポリアダマンタン誘導体を得ることができる。より具体的には、3−フェニル−1,1′−ビアダマンタンは、3−ブロモ−1,1′−ビアダマンタンとベンゼンとを、3,3′−ジフェニル−1,1′−ビアダマンタンは、3,3′−ジブロモ−1,1′−ビアダマンタンとベンゼンとを、3,3′′′−ジフェニル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンは、3,3′′′−ジブロモ−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンとベンゼンとを、それぞれ、ルイス酸存在下で反応させることにより製造できる。
上記脱離して該アダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基を有するポリアダマンタン誘導体のなかでも、アダマンタン骨格に、前記アダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基以外の置換基を持つ化合物は、フリーデルクラフト反応等に用いる溶媒への溶解性に優れ合成上ハンドリングが容易であり、また、ポリマー用途における溶解性の向上が期待できる点から好ましい。特に、アダマンタン骨格にハロゲン原子を有していてもよいアルキル基(特に炭素数1〜6のハロゲン原子を有していてもよいアルキル基)を持つ化合物が溶解性の点では好ましい。このような化合物の例として、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′′′−ジブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどが挙げられる。
本発明の式(1)で表される化合物のうち式(2)におけるXがニトロ基であるニトロアリールポリアダマンタン誘導体は、また、前記式(7)で表されるポリアダマンタン誘導体と、前記式(8)で表される芳香族化合物とを反応させることにより製造することもできる。この方法は、例えば、芳香環がナフタレン環やアントラセン環等の多環であってニトロ基を有する環とは別の環がアダマンタン環と結合しているような化合物を得る際に特に有用である。
式(7)中、R1d、R2d、R3d、R4d、R5d、R6dは、同一又は異なって、水素原子、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基、又はその他の置換基を示す。但し、R1d、R2d、R3d、R4d、R5d、R6dのうち少なくとも1つは脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4d、R6dはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい。
脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基として、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、−ONO2、ヒドリド(H)などが挙げられる。特に、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、−ONO2が好ましい。
R1d、R2d、R3d、R4d、R5d、R6dにおけるその他の置換基、アダマンタン環の橋頭位以外の部位に有していてもよい置換基は式(1)の場合と同様である。式(7)で表される好ましい化合物には、R1d、R2d、R3d、R4d、R5d、R6dの少なくとも1つ(より好ましくは2以上)がハロゲン原子を有していてもよいアルキル基(特に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基)である化合物が含まれる。また、アダマンタン環の橋頭位以外の部位にハロゲン原子を有していてもよいアルキル基(特に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基)を少なくとも1つ有している化合物も好ましい。
式(7)で表される化合物の代表的な例として、例えば、3−ブロモ−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタンなどのブロモビアダマンタン誘導体;3,3′−ジブロモ−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタンなどのジブロモビアダマンタン誘導体;3−ブロモ−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−3−フェニル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサエチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサブチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのブロモトリアダマンタン誘導体;3,3″−ジブロモ−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ジブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ジブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサエチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ジブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサブチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ジブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのジブロモトリアダマンタン誘導体;3−ブロモ−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタエチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタブチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタキス(トリフルオロメチル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのブロモテトラアダマンタン誘導体;3,3′′′−ジブロモ−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ジブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ジブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタエチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ジブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタブチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ジブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタキス(トリフルオロメチル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのジブロモテトラアダマンタン誘導体;及び3−ヒドロキシ−1,1′−ビアダマンタン、3−ニトロオキシ−1,1′−ビアダマンタン等の前記各ブロモアダマンタン誘導体に対応するヒドロキシアダマンタン誘導体、ニトロオキシアダマンタン誘導体などが挙げられる。
前記式(8)において、環Zは芳香環を示し、pは1以上の整数を示す。芳香環はニトロ基以外の置換基を有していてもよい。環Zにおける芳香環、該芳香環が有していてもよい置換基は式(2)におけるX以外の置換基と同様である。なお、該芳香環はアミノ基を有していてもよい。式(8)で表される芳香族化合物の代表的な例として、1−ニトロナフタレン、2−ニトロナフタレンなどが挙げられる。
式(7)で表されるポリアダマンタン誘導体と式(8)で表される芳香族化合物との反応は、反応に不活性な溶媒の存在下又は溶媒非存在下で行われる。前記溶媒として、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの鎖状又は環状エーテル;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;酢酸エチルなどのエステル;酢酸などのカルボン酸;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物;これらの混合物などが挙げられる。
式(8)で表される芳香族化合物の使用量は、一般に、式(7)で表されるポリアダマンタン誘導体1モルに対して、0.8〜30モル、好ましくは1〜20モル、さらに好ましくは1.5〜10モル程度である。式(8)で表される芳香族化合物を大過剰量用いてもよい。
この方法では、反応を促進させるため、系内にプロトン酸やルイス酸、塩基を添加するのが好ましい。例えば、式(7)で表されるポリアダマンタン誘導体として、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がヒドロキシル基又は−ONO2基である化合物を用いる場合には、反応速度を速くするため、酸(特にプロトン酸)の存在下で反応を行うのが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、塩化水素、臭化水素、硝酸、リン酸等の無機酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類;酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸;ヘテロポリ酸;陽イオン交換樹脂などが挙げられる。これらのなかでも、強酸、例えば、塩化水素、硫酸などの無機酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類、ヘテロポリ酸、強酸性陽イオン交換樹脂などが好ましい。酸の使用量は、例えば、式(7)で表されるポリアダマンタン誘導体1モルに対して、0.01〜10モル、好ましくは0.1〜5モル程度である。
また、式(7)で表されるポリアダマンタン誘導体として、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がハロゲン原子である化合物(ポリアダマンタンハライド誘導体)を用いる場合には、通常加熱下で反応を行う。この際、副生するハロゲン化水素を捕捉するため、反応を適宜な塩基の存在下で行ってもよい。また、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がハロゲン原子である化合物を用いる場合には、ルイス酸(FeBr3、FeCl3、AlBr3、AlCl3など)の存在下で反応(フリーデルクラフト反応)を行ってもよい。ルイス酸の使用量は、例えば、式(7)で表されるポリアダマンタン誘導体1モルに対して、0.001〜10モル、好ましくは0.05〜5モル程度である。
式(7)で表されるポリアダマンタン誘導体と式(8)で表される芳香族化合物との反応における反応温度は、反応成分の種類等に応じて適宜選択できる。例えば、式(7)で表されるポリアダマンタン誘導体として、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がヒドロキシル基である化合物(ポリアダマンタノール誘導体)等を用いる場合には、反応温度は、例えば10〜200℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは60〜130℃程度である。また、式(7)で表されるポリアダマンタン誘導体として、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がハロゲン原子である化合物等を用いる場合には、反応温度は、例えば100〜250℃、好ましくは130〜220℃程度である。なお、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がハロゲン原子である化合物を用いる場合において、ルイス酸を使用する時には、反応温度は、例えば−50℃〜200℃、好ましくは−20℃〜150℃、さらに好ましくは−10℃〜100℃程度である。
なお、式(8)で表される芳香族化合物の使用量[式(7)で表されるポリアダマンタン誘導体との当量比]やその他の反応条件を調整することにより、式(7)で表されるポリアダマンタン誘導体中の脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基としてのハロゲン原子やヒドロキシル基等の一部を未反応のまま残して、分子内にニトロ基含有芳香環と共にハロゲン原子やヒドロキシ基等を有する式(5)で表される化合物を製造することができる。反応は、回分式、半回分式、連続式等の何れの方式で行ってもよい。上記の触媒や反応促進剤は、反応の初期に一括添加してもよく、反応の進行と共に逐次添加してもよい。
上記反応(脱ハロゲン化水素反応、脱水縮合反応等)により、式(7)で表される化合物における脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基の結合部位に、式(2)で表される基が結合した対応する式(5)で表されるニトロアリールポリアダマンタン誘導体が生成する。反応終了後、反応生成物は、例えば、液性調整、濾過、濃縮、抽出、蒸留、昇華精製、晶析、洗浄、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な分離精製手段により分離精製できる。
本発明の式(1)で表される化合物のうち式(2)におけるXがアミノ基であるアミノアリールポリアダマンタン誘導体は、例えば、前記式(5)で表されるニトロアリールポリアダマンタン誘導体を還元することにより製造することができる。還元は、例えば、「The Nitro Group in Organic Synthesis」、NOBORU ONO 著、WILEY-VCH 刊に記載の方法に従って行うことができる。
還元剤としては、水素、鉄/塩化水素、水素化ホウ素ナトリウム/塩化ニッケル、Pd−C/ヒドラジン、ラネーニッケル/ヒドラジンなどが挙げられる。これらの中でも水素が好ましい。還元剤として水素を用いる接触水素化反応の場合、通常触媒が用いられる。該触媒は不均一触媒及び均一触媒の何れであってもよい。不均一触媒として、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、ラネーニッケルなどが挙げられる。白金はPtO2として使用される場合が多い。パラジウム等の金属は、通常、活性炭、アルミナ、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの担体に担持された状態で使用される。均一触媒としては、前記金属の錯体などが用いられる。
還元は、通常溶媒中で行われる。溶媒としては、還元剤や触媒の種類等に応じて適宜選択でき、例えば、エタノール等のアルコール;ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素;酢酸エチル等のエステル;酢酸等のカルボン酸;ジエチルエーテル、ジオキサン等の鎖状又は環状エーテル;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素;水;これらの混合溶媒などが挙げられる。
反応温度は、還元剤の種類等のよっても異なるが、通常、−20℃〜150℃程度の範囲で適宜選択できる。接触水素化反応では、20〜100℃が好ましい。還元反応は常圧で行っても加圧下で行ってもよい。例えば、接触水素化反応における圧力は、一般に0.5〜20MPa、好ましくは1〜10MPa程度である。
反応により、式(5)で表されるニトロアリールポリアダマンタン誘導体の式(6)で表される芳香族環式基の芳香環のニトロ基がアミノ基に置き換わった対応する式(9)で表されるアミノアリールポリアダマンタン誘導体が生成する。式(9)中、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R6cは、同一又は異なって、水素原子、前記式(10)で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R6cのうち少なくとも1つは式(10)で表される基である。kは1〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4c、R6cはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい。なお、式(10)中、環Zは芳香環を示し、pは1以上(例えば1〜5)の整数を示す。芳香環はアミノ基以外の置換基を有していてもよい。式(10)における芳香環(環Z)、該芳香環が有していてもよい置換基は式(2)におけるX以外の置換基と同様である。なお、芳香環はニトロ基を有していてもよい。R1c、R2c、R3c、R4c、R5c、R6cにおけるその他の置換基、アダマンタン環の橋頭位以外の部位に有していてもよい置換基は式(1)の場合と同様である。
反応終了後、反応生成物は、例えば、液性調整、濾過、濃縮、抽出、蒸留、昇華精製、塩析、晶析、洗浄、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な分離精製手段により分離精製できる。