JP5201925B2 - 4,9−ジブロモジアマンタンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は4,9−ジブロモジアマンタンの製造方法に関するものである。より詳細には、副生物が少なく、かつ収率の高い工業的に有用な4,9−ジブロモジアマンタンの製造方法に関するものである。
ジアマンタン誘導体は様々な有用な用途を有している。例えば、電子材料分野においては、高集積化、多機能化、高性能化の進行に伴い、回路抵抗や配線間のコンデンサー容量が増大し、消費電力や遅延時間の増大を招いている。この遅延時間を減少させてデバイスの高速化を図るべく、寄生抵抗や寄生容量の低減が求められており、この寄生容量を低減するための具体策の一つとして、配線の周辺を低誘電性の層間絶縁膜で被覆することが試みられている。また層間絶縁膜は実装基板製造時の薄膜形成工程に耐え得る優れた耐熱性が要求される。ジアマンタンは電子分極が小さく、かつリジッドなダイヤモンド状の飽和炭化水素構造を有しているため、低誘電率で耐熱性の高い層間絶縁膜の構成要素として有用であることが知られている。この例として特許文献1を参照することが出来る。
種々の官能基を有する有用なジアマンタン誘導体を合成する上で、その臭素体は重要な合成中間体としての役割を演じる。すなわち、ジアマンタン上の臭素原子は適当な反応条件下、OH基、アミノ基、SH基、カルボキシル基、ホルミル基、アシル基、アミド基、エチニル基、ビニル基、アルキル基、アリール基等に変換することができる。
ジアマンタンの臭素置換体の合成法に関して、これまでにいくつかの報告がなされている。例えば、非特許文献1に記載されているように、触媒量の臭化アルミニウムの存在下で臭素を作用させることによりモノブロモ体、ジブロモ体、トリブロモ体、テトラブロモ体を合成する方法が開示されている。この中でジブロモ体については、1位と4位、4位と9位、1位と6位の3種の異性体が知られているが、この中で4位と9位のジブロモ体のみを選択的に高収率で合成することは困難であり、有効な方法は知られていなかった。従来知られている条件で4,9−ジブロモジアマンタンの合成を試みると、他のジブロモ体異性体やモノブロモ体、トリブロモ体等の副生物が同時に生成し、これらを再結晶やカラムクロマトグラフィーを繰り返すことで精製すると収率が大幅に低下し、純度も十分なものが得られない。また、上記に記載の方法では臭素化反応の発熱が非常に大きく内温の制御が困難なためスケールアップが難しいことや臭素の突沸等で作業員の安全性や工業的生産性の観点からも大幅な改善が望まれていた。
米国特許出願公開第2005/276964号明細書 Journal of Organic Chemistry.,39,2987-3003(1974)
これらの従来技術の問題点を考慮して、本発明は4,9−ジブロモジアマンタンを選択的に収率良く製造する方法を提供する。
本願発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、上記課題が下記の方法により高収率で製造できることを見出し、本発明に到達した。
〔1〕
ジアマンタンに臭化アルミニウム存在下、臭素を反応させて4,9−ジブロモジアマンタンを選択的に製造する方法であって、溶媒として、シクロヘキサン及びn−ヘプタンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を用い、式(1)の関係が成立することを特徴とする製造方法。
A/(A+B+C+D+E)>0.80 式(1)
[式(1)において、Aは反応終了後の溶液のガスクロマトグラフィー測定によって得られる4,9−ジブロモジアマンタンの面積比(%)を表し、Bはジアマンタンの面積比、Cは1−ブロモジアマンタンと4−ブロモジアマンタンの面積比の和、Dはトリブロモジアマンタンの面積比、Eは1,6−ジブロモジアマンタンと1,4−ジブロモジアマンタンの面積比の和を表す。]
〔2〕
臭素(Br )をジアマンタン1モルあたり3.5モル以上7.0モル以下使用することを特徴とする〔1〕に記載の製造方法。
本発明は、上記〔1〕及び〔2〕に係る発明であるが、以下、それ以外の事項(例えば、下記<1>及び<2>)についても記載している。
<1> ジアマンタンにルイス酸存在下、臭素を反応させて4,9−ジブロモジアマンタンを選択的に製造する方法であって、溶媒として炭素数3〜10の置換または無置換の直鎖、分岐または環状の飽和炭化水素系溶媒を用い、式(1)の関係が成立することを特徴とする製造方法。
A/(A+B+C+D+E)>0.80 式(1)
[式(1)において、Aは反応終了後の溶液のガスクロマトグラフィー測定によって得られる4,9−ジブロモジアマンタンの面積比(%)を表し、Bはジアマンタンの面積比、Cは1−ブロモジアマンタンと4−ブロモジアマンタンの面積比の和、Dはトリブロモジアマンタンの面積比、Eは1,6−ジブロモジアマンタンと1,4−ジブロモジアマンタンの面積比の和を表す。]
<2> 臭素(Br)をジアマンタン1モルあたり3.5モル以上7.0モル以下使用することを特徴とする<1>に記載の製造方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するジアマンタンは市販のものを用いても良いし、文献で記載の方法(例えば、Organic Syntheses,Vol.53.70頁)に従って容易に合成できる。
本発明で使用できるルイス酸は、反応進行に悪影響の無いものであればどのようなものでも構わないが、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化鉄、臭化鉄が好ましく、特に臭化アルミニウムが好ましい。ルイス酸の使用量は、反応条件(ルイス酸種、濃度、温度、溶媒種、臭素量等)によって異なるが、好ましい範囲はジアマンタン1モルに対して0.01〜0.5モル、より好ましくは0.03〜0.3モル、特に好ましくは0.05〜0.25モルである。
本発明で使用できる反応溶媒は、炭素数3〜10の置換または無置換の直鎖、分岐または環状の飽和炭化水素(例えば、1−クロロプロパン、1−ニトロプロパン、1−ブロモブタン、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、1−メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等)が好ましく、より好ましくは炭素数5〜8の無置換の直鎖または環状の飽和炭化水素であり、特に好ましくはn−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンである。
本発明で使用できる反応溶媒としての飽和炭化水素が有しても良い置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基が挙げられ、置換基を有する飽和炭化水素としては、分子量120以下が好ましい。
飽和炭化水素溶媒を使用した場合には、反応の選択性と収率が予想外に大幅に向上し、また臭素化の際の発熱が予想外に少ないことを見出し、大きなスケールで安全に生産性良く目的物を製造できるに到った。
反応溶媒の量は好ましくはジアマンタン1gに対して1〜20ml、より好ましくは2〜10ml、特に好ましくは3〜7mlである。
本発明で使用する臭素の量(Br2としての量)はジアマンタン1モルに対して、好ま
しくは2.0〜10モル、より好ましくは2.5〜8.0モル、特に好ましくは3.5〜7.0モルである。
臭素の添加のタイミングは特に限定はされないが、臭素化の選択性を高くする観点から、ジアマンタンとルイス酸および反応溶媒存在下に反応の内温を0℃以下に保ちながら滴下することが特に好ましい。臭素はそのまま、あるいは臭素を溶解する溶媒で希釈して、液体の形態で添加できる。
反応時の内温は好ましくは−20℃〜10℃、より好ましくは−15〜5℃、特に好ま
しくは−10℃〜0℃である。反応時間は好ましくは10分〜10時間、より好ましくは1時間〜8時間、特に好ましくは2時間〜6時間であるが、ガスクロマトグラフィーで反応進行を確認して適当な時間反応させるとよい。また、反応後にモノブロモ体が残存した場合には、これを目的物に変換する目的でさらに0℃〜25℃で1〜5時間、後反応させても良い。
反応は乾燥した不活性ガス(例えば窒素、アルゴン等)雰囲気下で行なうことが好ましい。
反応生成物の確認は反応後の溶液のガスクロマトグラフィーで行なうことができる。本発明では、反応液のガスクロマトグラフィー測定によって得られる4,9−ジブロモジアマンタンの面積比(%)をA、ジアマンタンの面積比をB、1−ブロモジアマンタンと4−ブロモジアマンタンの面積比の和C、トリブロモジアマンタンの面積比をD、1,6−ジブロモジアマンタンと1,4−ジブロモジアマンタンの面積比の和をEとしたとき、A/(A+B+C+D+E)>0.80の関係が成り立つことを特徴とする。ここでモノブロモジアマンタンとは1位置換体、4位置換体を含み、トリブロモジアマンタンとは1、4、6位置換体、1、4、9位置換体を含む。
A/(A+B+C+D+E)が0.80以下の場合には、再結晶やカラムクロマトグラフィー等による精製が困難なため、目的物の単離収率や純度が低下してしまい工業的な見地から問題となる。
A/(A+B+C+D+E)は0.90以上であることがより好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。
このような反応生成物は、上述の方法より得ることができる。
以下の実施例は本発明を説明するものであり、その範囲を限定するものではない。
本発明で使用したガスクロマトグラフィー(GC)は、島津製作所(製)GC−2010、注入口温度280℃、Agilent Technologies社製カラム(DB−5MS、内径0.25mm、膜厚0.25μm×長さ30m、充填剤(5%-Phenyl)-methylpolysiloxane)、カラム温度(180℃(3分)→10℃/min→280℃(17分))、カラム流量0.32ml/minを使用した。
<実施例1>
1000mlの3つ口フラスコにシクロヘキサン340ml、臭化アルミニウム25.5gを加え、窒素雰囲気下、室温で15分間メカニカルスターラーで攪拌した。内温を10℃以下に冷却して、ジアマンタン80gを添加した。さらに、内温を3℃に冷却して臭素12.7mlを5分間で滴下した。次に内温を−5℃に冷却して臭素115mlを2時間かけて滴下した。この時、内温を−10℃〜−5℃に保った。臭素の滴下終了後、さらに2時間、内温を−10℃〜−5℃で攪拌した。
ここで反応液をサンプリングして、ヘキサン/亜硫酸ナトリウム水溶液で前処理した後、ガスクロマトグラフィー(GC)で分析した結果、面積比はジアマンタン:モノブロモ体:4,9−ジブロモ体:トリブロモ体:他のジブロモ体=0:7.4:92.6:0:0であった。(A/(A+B+C+D+E)=0.93)続けて内温25℃で1時間攪拌した後にGCで反応液の測定を行なった結果、面積比はジアマンタン:モノブロモ体:4,9−ジブロモ体:トリブロモ体:他のジブロモ体=0:2.9:96.1:1.0:0であった。(A/(A+B+C+D+E)=0.96)
水2000mlに亜硫酸ナトリウム430gを溶解し、内温を10℃に冷却したす易溶液に反応液を攪拌しながら少しずつ加えた。トルエン1200mlと水酸化ナトリウム1
20gを添加して、70℃に加熱した。水層を分液、廃却した後、有機層を純水1000mlで2回洗浄した。トルエンを減圧濃縮して、残渣にアセトン400mlを加えて10℃で1時間攪拌、晶析した。得られた結晶を濾過した結果、4,9−ジブロモジアマンタンを103g得た。収率70%。粉末のGC測定より純度は99.0%であった。
<実施例2>
ジアマンタンを1270g、シクロヘキサン5.4リットル、臭化アルミニウム404g、臭素を計2027mlを使用した他は実施例1と同じ操作によって4,9−ジブロモジアマンタンを合成した。反応終了後の溶液のGC測定の結果、A/(A+B+C+D+E)=0.93であった。4,9−ジブロモジアマンタンの収量は1848g、収率は79.1%であった。粉末のGC測定より純度は99.0%であった。
<実施例3>
100ml4つ口フラスコにn−ヘプタン51ml、臭化アルミニウム0.86g、ジ
アマンタン8.0gを仕込み、内温を3℃以下に冷却した。窒素雰囲気下、臭素1.27mlを5分間で滴下した。次に内温を−5℃以下に冷却して臭素11.47mlを2時間かけて滴下した。この時、内温を−10℃〜−5℃に保った。臭素の滴下終了後、さらに2時間、内温を−10℃〜−5℃で攪拌した。さらに内温0℃で1時間攪拌した後にGCで反応液の測定を行なった結果、面積比はジアマンタン:モノブロモ体:4,9−ジブロモ体:トリブロモ体:他のジブロモ体=0:2.9:96.7:0.3:0であった。(A/(A+B+C+D+E)=0.96)
純水20mlに亜硫酸ナトリウム4.3gを溶解した水溶液を反応液に添加した。続けてトルエンを120mlと亜硫酸ナトリウム水溶液180mlを添加して50℃で攪拌して分液した。有機層を純水100mlで2回洗浄後、トルエンを減圧濃縮した。アセトンを40ml添加して0℃で30分間攪拌晶析した。得られた結晶を濾過した結果、4,9−ジブロモジアマンタンを14.7g得た。収率86%。粉末のGC測定より純度は99.0%であった。
以降、実施例7、9及び10は、それぞれ、参考例7、9及び10に読み替えるものとする。
<実施例4〜10>
反応条件を表1に記載の通りに変更した他は実施例1と同様に合成を行い、GC測定と4,9−ジブロモジアマンタンの単離収率を求めた。
<比較例1>
Journal of Organic Chemistry.,39,3000頁(1974)に記載の方法に準じて、反応を行な
った。
100mlフラスコに、ジアマンタン8.0gと臭素40mlを氷冷、攪拌しながら、臭化アルミニウム0.40gを2時間かけて加えた。この際に非常に大きい発熱を伴った。その後、内温を0℃に保ちながら3時間攪拌後、さらに臭化アルミニウム0.40gを添加して、内温0℃で2時間攪拌した。ここでGCで反応液の測定を行なった結果、面積比はジアマンタン:モノブロモ体:4,9−ジブロモ体:トリブロモ体:他のジブロモ体=0:5.0:46.0:6.0:43.0であった。(A/(A+B+C+D+E)=0.46)
実施例1の方法に準じて後処理を行なった結果、5.4gの粗結晶が得られた。粉末のGC測定より4,9−ジブロモジアマンタンの含量は85%であった。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/クロロホルム=98/2)にて精製後、トルエン/アセトンにて再結晶を行なった結果、4.1gの4,9−ジブロモジアマンタンを得た。GC純度は95%であった。
<比較例2〜5>
反応条件を表1に記載の通りに変更した他は実施例1と同様に合成を行い、GC測定と
4,9−ジブロモジアマンタンの単離収率を求めた。
Figure 0005201925
本発明の合成法が4,9−ジブロモジアマンタンの生成率および単離収率が高く、優れた方法であることがわかる。

Claims (2)

  1. ジアマンタンに臭化アルミニウム存在下、臭素を反応させて4,9−ジブロモジアマンタンを選択的に製造する方法であって、溶媒として、シクロヘキサン及びn−ヘプタンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を用い、式(1)の関係が成立することを特徴とする製造方法。
    A/(A+B+C+D+E)>0.80 式(1)
    [式(1)において、Aは反応終了後の溶液のガスクロマトグラフィー測定によって得られる4,9−ジブロモジアマンタンの面積比(%)を表し、Bはジアマンタンの面積比、Cは1−ブロモジアマンタンと4−ブロモジアマンタンの面積比の和、Dはトリブロモジアマンタンの面積比、Eは1,6−ジブロモジアマンタンと1,4−ジブロモジアマンタンの面積比の和を表す。]
  2. 臭素(Br)をジアマンタン1モルあたり3.5モル以上7.0モル以下使用することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
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