JP4799785B2 - 粉体特性に優れたスチレン系グラフト共重合体含有粉体 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、粉体特性に優れたスチレン系グラフト共重合体含有粉体及びこれを用いた機械的特性および耐フローマーク(ジェッティング)性に優れたスチレン系熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂材料の耐衝撃性を向上させることは、材料用途の拡大だけでなく成形品の薄肉化や大型化への対応を可能にするなど、工業的な有用性は非常に大きく、これまで様々な手法によって発明がなされてきた。
このうち、ゴム状重合体を硬質樹脂と組み合わせることによって、材料の耐衝撃性を高めた材料としては、従来アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン−アルキル(メタ)アクリレート(ASA)樹脂、変性PPE樹脂およびMBS樹脂強化ポリ塩化ビニル樹脂等が既に工業的に使用され、これら熱可塑性樹脂は、射出成形や押出成形、ブロー成形等によって成形品に加工され、これら成型品は車両用部品や電気機器外装等に応用されている。
近年、この様な熱可塑性樹脂の生産性を高めるために、原料となるスチレン系グラフト共重合体中のゴム含有量を高める検討が特開平10−259217号公報、特開平10−17628号公報、同10−17627号公報、同10−7745号公報にて提案されている。そして、この様なスチレン系グラフト共重合体は、一般には乳化重合によって製造されたラテックスを酸や塩で凝固させた後、脱水、乾燥により、通常粉体粒子として得ることができる。
しかしながら、この様にゴム含有量の高められたスチレン系グラフト共重合体の粉体は、嵩密度が低下する傾向にあったり貯蔵中にブロッキングを起こし易い。嵩密度の低下は輸送コストの上昇や他硬質樹脂とのブレンドによる熱可塑性樹脂組成物の製造の際に分級を起こしやすくなるという問題が発生する。
【0003】
この様な課題を解決するために、特開平1−26663号公報にグラフト共重合体に対して無機系金属塩を添加してブロッキング性を改善する方法が、特開平1−56761号公報にはシリコーンオイルを添加してブロッキング性を改善する方法が提案されているが、これらの方法では嵩密度を改善することは出来ないばかりか、無機系金属塩の添加は樹脂組成物の機械的特性や成形外観を損なう欠点があった。
また、特開昭64−2644号公報にグラフト共重合体に滑剤を添加する方法が提案されているが、粉体性状が改良できるだけの滑剤を添加すると樹脂組成物の耐衝撃性が低下したり、賦形もしくは成型時に「目ヤニ」が発生しやすくなる。
一方、特公昭58−48584号公報には、粉体特性改良するための低ゴム含有量のグラフト共重合体を高ゴム含有量のグラフト共重合体にスラリー状態で混合する方法が開示されているが、この方法では樹脂組成物の機械的特性や成形外観等の悪影響無いが、目的とする嵩密度およびブロッキング性の改良には不十分であった。
また、特公昭61−57341号公報や特開昭58−1742号公報、特開平4−300947号公報、特開平5−262954号公報、特開平5−262953号公報には硬質な共重合体をグラフト共重合体スラリーに混合する方法が開示されているが、これらは用いる硬質共重合体中のシアン化ビニル単量体単位の比率が低いがために、目的とするスチレン系熱可塑性樹脂組成物の粉体性状改良効果としては不十分であった。
【0004】
一方、ABS樹脂に代表されるゴム変性熱可塑性樹脂は、近年、例えば自動車のフロントグリルの様に細かい格子形状などデザインの複雑化から、格子内部のウェルド部に気泡膨れやフローマーク(ジェッティング)が発生し易くなっており、大型成形品の不良の大きな原因となっている。
この様なフローマーク(ジェッティング)性の改善には、特公昭57−24814号公報、特開平10−25394号公報、特開平10−182759号公報、特開平11−71433号公報、特開平11−80565号公報、特開平11−100480号公報、特開平11−217485号公報、特開2000−103935号公報に、ゴム変性熱可塑性樹脂に分子量が非常に高い硬質樹脂をラテックス状態もしくは粉体同士混合によって改善する方法が提案されており、これらの方法によって上記フローマーク(ジェッティング)を改善することは可能であるが、この様に非常に分子量の高い硬質重合体を配合した際には表面外観、特にフィッシュアイが悪化する傾向にあり、また、当然のことながらこれら技術では上記の様にゴム含有率の高められたスチレン系グラフト共重合体の粉体性状を改善することはできない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述のごとく、得られるスチレン系熱可塑性樹脂組成物の成型外観および機械的特性を損なうことなく、ゴム含有率の高められたスチレン系グラフト共重合体の粉体特性を充分に改良し、同時にこれを用いたゴム変性熱可塑性樹脂のフローマーク(ジェッティング)を改善する方法は未だ見出されていないのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記のごとく粉体性状に優れ、なおかつ耐フローマーク(ジェッティング)性の改善された樹脂組成物の原料となるスチレン系グラフト共重合体を得るべく鋭意検討した結果、スラリー状態のスチレン系グラフト共重合体に対し、シアン化ビニル系単量体単位を必須成分とし、なおかつ分子量の高められた特定粒子径の共重合体を供給させることによって上記目的を同時に達成できることを見出し本発明に到達した。即ち、本発明の要旨は、スチレン系グラフト共重合体(A)のスラリー100重量部(固形分)に対し、下記(1)〜(3)の特徴を有する(硬質)共重合体(B)0.1〜10重量部(固形分)を添加した後、回収されてなるスチレン系グラフト共重合体含有粉体(G)にある。
(1)シアン化ビニル系単量体単位を20〜50質量%と、芳香族アルケニル単量体単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を0〜5質量%と含む。
(2)0.2gをジメチルホルムアミド100ml中に溶解した溶液の25℃で測定した還元粘度が1.5〜20dl/g
(3)重量平均粒子径が50〜200nm
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のスチレン系グラフト共重合体含有粉体(G)においては、特にスチレン系グラフト共重合体(A)のスラリーの存在下にシアン化ビニル系単量体単位を必須成分とする硬質重合体(B)のラテックスを添加し、凝析することによって本発明をより効果的に達成することができる。
本発明に有用に用いられるスチレン系グラフト共重合体(A)は、ガラス転移点温度は0℃未満である常温でゴム状重合体に対し、ガラス転移点温度が50℃以上である常温で硬質な重合体がグラフトしたものである。
特に、ゴム状重合体としては特に限定されないが一例を挙げると、ジエン系ゴム、アルキル(メタ)アクリレート系ゴム、エチレン−プロピレン系共重合ゴム、ポリオルガノシロキサン系ゴム、ジエン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム、ポリオルガノシロキサン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴムからなる群の少なくとも一種以上を用いたものがより望ましい。より好ましくはジエン系ゴムもしくはジエン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴムである。
【0008】
ジエン系ゴム状重合体は、ブタジエン、イソプレン等のジエン成分と、これらと共重合可能な単量体成分を構成成分とするゴム質重合体であり、重量平均粒子径が200nm以上のものである。重量平均粒子径が200nm未満の場合は、樹脂組成物の耐衝撃性が低下する。
このような重量平均粒子径を有するジエン系ゴムは、例えば、150nm未満である小粒子ジエン系ゴムラテックスを予め調製し、これを肥大化することにより得ることができる。
この様な肥大化の方法の方法としては公知の方法が利用でき、例えば、重量平均粒子径が150nm未満のゴム状重合体を撹拌等による剪断応力によって肥大化する方法、酸を添加して肥大化する方法、酸基含有共重合体ラテックスを添加して肥大化する方法等が利用できる。
【0009】
粒径肥大化処理に用いられる酸としては、有機酸であっても無機酸であっても特に問題無く、無機酸としては例えば硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等が使用でき、リン酸が肥大化粒子径の制御性の面から好ましい。また、有機酸としては例えば酢酸、プロピオン酸、安息香酸、乳酸、オレイン酸等、または無水酢酸が使用できる。これら酸は水溶液として使用され、その溶液濃度は1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%である。肥大化に使用される酸量としては、ゴム状重合体ラテックス100重量部(固形分として)に対し0.1〜5重量部(実量として)、好ましくは0.3〜3重量部である。
【0010】
肥大化剤として用いられる酸基含有共重合体ラテックスとは、酸基含有単量体と、アルキル(メタ)アクリレートとを共重合体の構成成分とする共重合体ラテックスである。酸基含有単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびクロトン酸等が挙げられ、アルキル(メタ)アクリレートとしてはアルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。酸基含有共重合体中の酸基含有単量体成分の重量割合は、ジエン系ゴムを肥大化させる際のラテックスの安定性が優れ、肥大化して得られるジエン系ゴムの平均粒子径を200nm以上に制御しやすいことから、共重合体中3〜30重量%、さらに好ましくは10〜25重量%である。また、酸基含有重合体ラテックス中の酸基含有重合体の重量平均粒子径は、ジエン系ゴムを肥大化させる際のラテックスの安定性が優れ、肥大化して得られるジエン系ゴムの平均粒子径を200nm以上に制御しやすいことから、100〜200nmが好ましい。
肥大化は、乳化重合で得られた小粒子径のジエン系ゴムラテックス中に、上記酸基含有共重合体ラテックスを添加することによって行う。
以上の様にして調製された重量平均粒子径が200nm以上であるジエン系ゴム状重合体に対し、芳香族ビニル系単量体単位を必須成分とした単量体または単量体混合物をグラフト重合させることによってジエン系ゴム状重合体を含有したグラフト重合体を調製することができる。
【0011】
ジエン/アルキル(メタ)アクリレート複合ゴム中のジエン系ゴムは、ブタジエン、イソプレン等のジエン成分と、これらと共重合可能な単量体成分を構成成分とするゴム状重合体であり、重量平均粒子径が300nm以上のものである。重量平均粒子径が300nm未満の場合は、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下する。
このような重量平均粒子径を有するジエン系ゴムは、例えば、前述の酸基含有共重合体ラテックスからなる肥大化剤で重量平均粒子径が150nm未満のジエン系ゴム状重合体粒子を肥大化することにより得られる。
ジエン/アルキル(メタ)アクリレート複合ゴムは、重量平均粒子径が300nm以上のジエン系ゴム1〜30重量%の存在下で、グラフト交叉剤と架橋剤とを含むアルキル(メタ)アクリレート単量体成分99〜70重量%を乳化重合して得られるものである。ジエン系ゴムの量が1重量%未満の場合は、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の低温衝撃特性が低下し、一方、30重量%を超えた場合は耐候性が低下する傾向にある。
アルキル(メタ)アクリレート単量体成分中には、アクリル系ゴム状重合体やグラフト部との親和性を付与し、コア−シェル構造に近づける目的で各種の架橋剤やグラフト交叉剤を併用することができる。用いることのできるグラフト交叉剤や架橋剤の例としては、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート等が挙げられ、これらは単独または2種類以上混合して用いられる。
この様な複合ゴムの肥大化は、前述の肥大化法と同様の方法により行われる。
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂を構成するグラフト重合体(A)は、前述したゴム状重合体に、芳香族アルケニル化合物、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレートおよびシアン化ビニル化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体成分を乳化グラフト重合して製造することができる。
グラフト部の単量体成分のうち芳香族アルケニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等であり、メタクリル酸エステルとしては、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等であり、アクリル酸エステルとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等であり、シアン化ビニル化合物としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等である。これらのうち、グラフト部の単量体成分として、スチレンとアクリロニトリルの混合物を使用すると、スチレン系グラフト共重合体(A)の熱安定性が優れるため好ましい。
グラフト重合体(A)は、ゴム状重合体10〜80重量%に対して、グラフト部単量体成分90〜20重量%を乳化グラフト重合させて得られる。このような重量割合で乳化グラフト重合すると、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と流動性、成形外観が優れるため好ましい。グラフト部単量体成分の量が10重量%未満の場合は、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、一方、80重量%を超えると耐衝撃性が低下し成形外観も悪化するために共に好ましくない。さらに好ましくは、グラフト重合体(A)中、ゴム状重合体が30〜70重量%で、グラフト部単量体成分は70〜30重量%である。このような場合、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物は良好な耐衝撃性と流動性、成形外観顔料をバランス良く発現するため好ましい。
グラフト重合体(A)を製造する際の乳化グラフト重合は、乳化剤を使用してラジカル重合技術により行う。また、グラフト部単量体成分中には、グラフト率やグラフト成分の分子量を制御するための各種連鎖移動剤を添加することができる。
【0013】
この際に用いるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。この中でレドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・ピロリン酸ナトリウム・ブドウ糖・ヒドロパーオキサイドや、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたレドックス系開始剤が好ましい。
【0014】
乳化剤としては特に制限はないが、乳化重合時のラテックスの安定性が優れ、重合率が高められることから、サルコシン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸等の各種カルボン酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどの中から選ばれたアニオン系乳化剤が好ましく用いられる。これらは目的に応じて使い分けられ、もちろんゴム状重合体の調製に用いた乳化剤をそのまま利用し、乳化グラフト重合時に追添加しなくても良い。
【0015】
本発明で用いられる硬質共重合体(B)は、シアン化ビニル系単量体単位を10〜60重量%を必須成分として含み、その他成分として、芳香族アルケニル単量体単位、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を40〜90重量%含むものである。
硬質重合体(B)中のシアン化ビニル系単量体単位の含有量としては、10〜60重量%、好ましくは15〜55重量%、より好ましくは20〜50重量%である。10重量%未満であった場合には本発明の目的である熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が劣る様になり、60重量%を越える場合には樹脂組成物の熱着色が顕著になる。
硬質重合体(B)の製造に用いることのできるシアン化ビニル系単量体、芳香族アルケニル単量体単位および(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、前記グラフト部重合体の製造に用いたものが使用できる。
【0016】
硬質重合体(B)の調製は特に限定されないが、その使用目的を鑑みて公知の乳化重合で調製することが好ましい。その際、乳化剤や開始剤については、スチレン系グラフト共重合体(A)の調製に用いたものを使用することができる。
本発明の目的の一つである、フローマーク(ジェッティング)性に優れたゴム変性熱可塑性樹脂組成物を得る目的から、硬質重合体(B)の分子量はその0.2gをジメチルホルムアミド100ml中に溶解した溶液の25℃で測定した還元粘度が1.5〜20dl/gに調節する必要がある。好ましくは、2.0〜16dl/g、より好ましくは3〜14dl/gである。1.5dl/g未満であった場合には、その硬質共重合体(B)の使用量にも依存するが、得られる熱可塑性樹脂組成物のフローマーク性耐衝撃性が劣る様になり、また、20dl/gを越える場合には熱可塑性樹脂組成物の流動性低下が顕著になる。
硬質共重合体(B)の分子量を調節する方法としてはどの様な方法でも構わないが、連鎖移動剤の使用またはその使用量を変更する方法、用いる開始剤量を変更する方法、重合温度や原料となる単量体の供給方法を変更する方法等が例示される。
一方、本発明のもう一つの目的である、良好な粉体性状を有するスチレン系グラフト共重合体を得る目的から、硬質共重合体(B)の重量平均粒子径は50〜200nmに調節する必要がある。好ましくは60〜180nm、より好ましくは70〜160nmである。50nm未満であった場合には粉体性状の改良効果、特に嵩比重および耐ブロッキング性改善効果が劣る様になる。また、200nmを越える場合には得られるスチレン系グラフト共重合体(A)粉体中の直径60μm以下の微粉量が増加する傾向にあり、粉体の取扱い性に劣る。
硬質共重合体(B)の重量平均粒子径を変更する方法としてはどの様な方法でも構わないが、用いる開始剤量を変更する方法、重合温度や原料となる単量体の供給方法を変更する方法等が例示される。
【0017】
以下、スチレン系グラフト共重合体(A)に硬質共重合体(B)を添加して、粉体として回収する方法について説明する。粉体特性ならびに良好な性能を有する熱可塑性樹脂組成物を得るために、該スチレン系グラフト共重合体(A)のスラリーと該硬質共重合体(B)を混合することが必須である。この混合方法として、該スチレン系グラフト共重合体(A)のスラリーを別途調製した硬質共重合体(B)のスラリーと混合する方法、および該スチレン系グラフト共重合体(A)のスラリーに該硬質共重合体(B)のラテックスを添加し、該スチレン系グラフト共重合体(A)のスラリー中で凝固させてスラリーとし、結果として混合スラリーとする方法などが挙げられる。本発明の実施においては、後者の方が好ましい。
【0018】
本発明においては、スチレン系グラフト共重合体(A)がラテックスではなくスラリーであることが非常に重要である。スチレン系グラフト共重合体(A)のラテックスに硬質共重合体(B)のラテックスやスラリーを添加しても、スチレン系グラフト共重合体(A)に対する粉体特性改良効果はほとんど得られない。これらの理由は明確ではないが、スチレン系グラフト共重合体(A)の小さなスラリー粒子が覆い、該硬質共重合体(B)の小さなスラリー粒子が表面を保護層として被覆することにより、該スチレン系グラフト共重合体(A)のスラリー粒子同士の粘着性を減少させ、その粉体特性を改良していることによるものと思われる。つまり、スチレン系グラフト共重合体(A)がラテックスであれば、硬質共重合体(B)をラテックスやスラリーとして添加しても、凝固する際に該スチレン系グラフト共重合体(A)粒子の中に該硬質共重合体(B)が取り込まれてしまい、該スチレン系グラフト共重合体(A)粒子の表面を覆う該硬質共重合体(B)が極端に少なくなってしまうために、該スチレン系グラフト共重合体(A)の粉体特性を改良する効果が非常に少なくなってしまうものと思われる。
【0019】
本発明に用いることの出来る硬質共重合体(B)の使用量は、本発明のスチレン系グラフト共重合体(G)の粉体性状改良効果とスチレン系熱可塑性樹脂組成物のフローマーク(ジェッティング)性の改良効果の度合い、さらには用いる硬質共重合体(B)の重量平均分子量から適正は範囲を選択すべきであるが、概してスチレン系グラフト共重合体(A)のスラリー100重量部(固形分として)に対し、0.1〜10重量部(固形分として)、好ましくは0.2〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。硬質共重合体(B)の使用量が0.1重量部未満であるとスチレン系グラフト共重合体(A)に対する粉体特性を改良する効果およびゴム変性熱可塑性樹脂組成物のフローマーク(ジェッティング)改良効果が小さく、また10重量部を越えると得られるスチレン系グラフト共重合体(A)中の60μm以下の微粉の割合が増加するために取扱い性が極端に悪化し、同時にゴム変性熱可塑性樹脂組成物の流動性は悪化する様になる。
【0020】
この様にして得られた粉体性状の改良されたスチレン系グラフト共重合体は単独で、もしくは他の熱可塑性樹脂と配合される。他の熱可塑性樹脂の例としては、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル三元共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種以上用いることができる。
得られた熱可塑性樹脂組成物はそのままで、または、さらに必要に応じて染料、顔料、安定剤、補強剤、充填材、難燃剤、発泡剤、滑剤、可塑剤等の添加剤を配合した後、成形品の製造原料として使用することができる。この熱可塑性樹脂組成物は、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等の各種成形方法によって、目的の成形品とされる。
このような熱可塑性樹脂組成物の工業的用途例としては、車両部品、特に無塗装で使用される各種外装・内装部品、壁材、窓枠等の建材部品、食器、玩具、掃除機ハウジング、テレビジョンハウジング、エアコンハウジング等の家電部品、インテリア部材、船舶部材および通信機器ハウジング等が挙げられる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。なお、以下の例中の%および部数は明記しない限りは重量基準とする。
評価方法は以下の様に行った。
1)ラテックスの重量平均粒子径
MATEC APPLIED SCIENCES社製サブミクロン粒度分布測定器CHDF−2000を用いて測定した。
2)共重合体の還元粘度
ラテックスから回収した粉末状の共重合体0.2gをジメチルホルムアミド100ml中に溶解し、ウベローデ型粘度計を用いて25℃で測定した。
3)嵩比重
嵩比重計を用いてJIS K−6721に基づいて測定した。
4)スチレン系グラフト共重合体(A)の粒度分布
得られた粉体状のスチレン系グラフト共重合体(A)を、種々のメッシュサイズの篩いで篩い分けし、その質量分布を測定した。さらに微粉の割合として、目開き60μmの篩いを通過した重量の全体に対する割合として計算した。
5) 耐ブロッキング性
直径8cmの円筒形の容器に、得られたスチレン系グラフト共重合体粉末を20g入れ、35℃で0.4kg/cm2の圧力を2時間加えた。固化した粉体ブロックを目開き2.5mmのメッシュに乗せ、振動篩い器で振動を与え、該ブロックが60%破砕する時間(秒)を測定した。
【0022】
6)アイゾット衝撃強度
ASTM D256に準拠した方法により行い、23℃雰囲気下で12時間以上アイゾット試験片を放置した後測定を行った。
7)メルトフローレート(MI)
ASTM D1238に準拠する方法で、バレル温度200℃、加重49Nの条件で実施した。
8)成形光沢度
100mm×100mm×3mm板の成形を日本製鋼所(株)製射出成形機J85−ELIIを用いてシリンダー設定温度200℃、金型温度60℃、インジェクションスピード50%の条件で行い、得られた成形板を用いて測定した。
9)耐ジェッティング性
50mm×90mm×3mm、ゲート幅2.4mm、ゲート厚さ1.5mmの成形板の成形を日本製鋼所(株)製射出成形機J75−E11Pを用いてシリンダー設定温度200℃、射出速度10%、射出圧力ショートショット+10kg・cm2、金型温度60℃の条件で行い、ゲート近傍のジェッティング状態(ミミズ状の外観不良)を判定した。この時、全くミミズ状不良の見られないものを○、僅かに見られるものを△、顕著に発生したものを×とした。
【0023】
[製造例1]小粒子径ジエン系ゴム状重合体(X−1)の製造
攪拌装置および温度制御ジャケット付き10リットルのステンレス製オートクレーブに、
脱イオン水(以後、単に水と略記) 145部
ロジン酸カリウム 1.4部
オレイン酸ナトリウム 0.6部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート二水和物 0.4部
硫酸ナトリウム 0.1部
t−ドデシルメルカプタン 0.3部
ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド 0.5部
を攪拌下で仕込み、反応器内を窒素置換した。その後、
スチレンモノマー 1.4部
1, 3−ブタジエン 26.2部
を仕込み内容物を昇温した。昇温途中50℃にて、
無水ピロリン酸ナトリウム 0.2部
硫酸第一鉄七水塩 0.003部
水 5部
からなる水溶液を添加し重合を開始した。重合温度57℃で一定制御しつつ、
1, 3−ブタジエン 68.8部
スチレンモノマー 3.6部
からなる単量体を圧力ポンプにて3時間かけて反応器内に連続供給した。その途中、重合転化率が40%に達した時点で
n−ドデシルメルカプタン 0.3部
を反応器内に圧入し、さらに重合を継続した。8時間後、残存1,3−ブタジエンを水蒸気蒸留によって除去し、固形分が40.2%、重合転化率が97%、重量平均粒子径が80nmおよびpHが11.0である小粒子ジエン系ゴム状重合体ラテックス(X−1)を得た。
【0024】
[製造例2]酸基含有共重合体ラテックス(K−1)の調製
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、
水 200部
オレイン酸カリウム 1.5部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 2.5部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート二水和物 0.3部
硫酸第一鉄七水塩 0.003部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.009部
を窒素フロー下で仕込み、60℃に昇温した。60℃になった時点から、
n−ブチルアクリレート 88.5部
メタクリル酸 11.5部
クメンヒドロパーオキシド 0.5部
からなる混合物を120分かけて連続的に滴下した。滴下終了後さらに、2時間60℃のまま熟成を行い、固形分が33.0%、重合転化率が99%および重量平均粒子径が80nmである酸基含有共重合体ラテックス(K−1)を得た。
[製造例3]酸基含有共重合体ラテックス(K−2)の調製
製造例2の例において、用いたオレイン酸カリウムの量を2.2部に、n−ブチルアクリレートを81.5部、アクリル酸を18.5部にした以外は同様にして重合を行い、固形分が33.0%、重合転化率が99%および重量平均粒子径が145nmである酸基含有共重合体ラテックス(K−2)を得た。
【0025】
[製造例4]ジエン系グラフト重合体(A−1)の製造
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、
ジエン系ゴム状重合体ラテックス(X−1、固形分として) 58.7部
を入れ(室温)、次いで撹拌下で
酸基含有共重合体ラテックス(K−1、固形分) 0.91部
酸基含有共重合体ラテックス(K−2、固形分) 0.39部
の混合ラテックスを投入した。室温のまま引続き60分間撹拌し、重量平均粒子径が300nm、固形分が39.9%である肥大化されたジエン系ゴム状重合体ラテックスを得た。
この肥大化されたジエン系ゴム状重合体ラテックスに、
水(ゴム状重合体ラテックスに含まれる水を含む) 140部
ブドウ糖 0.5部
無水ピロリン酸ナトリウム 0.01部
硫酸第1鉄七水塩 0.005部
水酸化ナトリウム 0.1部
を仕込み、攪拌下で窒素置換した後50℃に昇温した。これに、
アクリロニトリル 11.6部
スチレン 28.4部
t−ドデシルメルカプタン 0.6部
クメンヒドロパーオキシド 0.3部
からなる混合物を180分かけて滴下し、その間内温が65℃を越えない様にコントロールした。
滴下終了後、
クメンヒドロパーオキシド 0.12部
を添加し、さらに1時間保持し冷却した。得られたラテックスに
老化防止剤(川口化学工業(株)製、アンテージW−400) 1部
を添加したジエン系グラフト重合体(A−1)ラテックスを得た。
【0026】
[製造例5]ジエン系グラフト重合体(A−2)の製造
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、
ジエン系ゴム状重合体ラテックス(X−1、固形分として) 60部
を入れ(室温)、次いで撹拌下で
無水酢酸 0.34部
水 8.4部
からなる混合液をゴム状重合体ラテックス中に投入し、5分間攪拌を継続した。
その後、攪拌を停止し60分間保持して肥大化せしめた後に、
2%水酸化ナトリウム水溶液 13.8部
を入れた後に攪拌を再開し、重量平均粒子径が280nm、固形分が34.4%である肥大化されたジエン系ゴム状重合体ラテックスを得た。
この肥大化されたゴム状重合体ラテックスに参考例4と同様にしてグラフト重合を行い、ジエン系グラフト重合体(A−2)ラテックスを得た。
【0027】
[参考例6]ジエン/アクリレ−ト複合系グラフト重合体(A−3)の調製
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、
ジエン系ゴム状重合体ラテックス(X−1、固形分として) 12部
を入れ(室温)、次いで撹拌下で
酸基含有共重合体ラテックス(K−2、固形分) 0.25部
を投入した。室温のまま引続き60分間撹拌し、重量平均粒子径が380nm、固形分が39.9%である肥大化されたジエン系ゴム状重合体ラテックスを得た。
この肥大化されたジエン系ゴム状重合体ラテックスに、
アルケニルコハク酸ジカリウム 0.2部
イオン交換水(ジエン系ゴム重合体中の水を含む) 200部
ブチルアクリレート 48部
アリルメタクリレート 0.19部
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート 0.10部
ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド 0.12部
を仕込んだ。反応器内の窒素置換を行い、ジャケット加熱器を60℃まで昇温した。内部の液温が50℃となった時点で、
硫酸第一鉄七水塩 0.00015部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.00045部
ロンガリット 0.24部
イオン交換水 5部
に溶解させた水溶液を添加して重合を開始せしめ、内温を65℃に上昇させた。
1時間この状態を維持し、アクリレート成分の重合を完結させ重量平均粒子径が310nmである肥大化されたジエン系ゴムとブチルアクリレートゴムとの複合ゴム状重合体のラテックスを得た。その後、
ロンガリット 0.10部
イオン交換水 5部
アルケニルコハク酸ジカリウム 0.75部
からなる水溶液を添加し、次いで
アクリロニトリル 2.5部
スチレン 7.5部
t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.05部
の混合液を25分にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度70℃の状態を1時間保持した後、
硫酸第一鉄七水塩 0.001部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.003部
ロンガリット 0.15部
イオン交換水 10部
からなる水溶液を添加し、次いで、
アクリロニトリル 7.5部
スチレン 22.5部
t−ブチルハイドロパオキサイド 0.23部
からなる混合物を1時間にわたって滴下し、その間内温が80℃を越えない様に重合せしめた。滴下終了後、温度70℃の状態を30分間保持した後冷却し、グラフト重合体(A−3)ラテックスを得た。
【0028】
[参考例7] 硬質共重合体(B−1)の調製
攪拌装置および温度計、ジャケット式温度調節器を有した5Lガラス製反応器に、
水 390部
アルケニルコハク酸ジカリウム
(花王(株)社製ラテムルASK、実量として) 1.0部
アクリロニトリル 29部
スチレンモノマー 71部
を投入し、窒素気流および攪拌下で内温を50℃に昇温した。これに、
過硫酸ナトリウム 0.15部
水 5部
からなる水溶液を投入し、その5分後に
亜硫酸ナトリウム 0.05部
水 5部
からなる水溶液を添加した。ジャケット温度をその温度のまま維持すると30分後位から急激に発熱し、内温は85℃に上昇した。発熱が収まってから内温を80℃で1時間保持した後冷却し、固形分19.5%、重量平均粒子径110nm、還元粘度12.5dl/gである硬質共重合体(B−1)ラテックスを得た。
【0029】
[参考例8] 硬質共重合体(B−2)の調製
参考例7の製造例において、用いる単量体の組成を、アクリロニトリル27部、スチレンモノマー68部、n−ブチルアクリレート5部に変更した以外は同様にして重合を行い、固形分19.4%、重量平均粒子径110nm、還元粘度14.1dl/gである硬質共重合体(B−2)ラテックスを得た。
【0030】
[参考例9] 硬質共重合体(B−3)の調製
参考例7の製造例において、用いるアルケニルコハク酸ジカリウムの量を5部にした以外は同様にして重合を行い、固形分19.8%、重量平均粒子径42nm、還元粘度14.6dl/gである硬質共重合体(B−3)ラテックスを得た。
【0031】
[参考例10] 硬質共重合体(B−4)の調製
参考例7の製造例において、用いる不均化ロジン酸カリウムの量を0.2部にした以外は同様にして重合を行い、固形分18.9%、重量平均粒子径230nm、還元粘度11.0dl/gである硬質共重合体(B−4)ラテックスを得た。
【0032】
[参考例11] 硬質共重合体(B−5)の調製
参考例7の製造例において、tert−ドデシルメルカプタンを0.5部使用とした以外は同様にして重合を行い、固形分19.4%、重量平均粒子径100nm、還元粘度1.35dl/gである硬質共重合体(B−5)ラテックスを得た。
【0033】
[参考例12]共重合体(C−1)の調製
参考例7の製造例において、用いる単量体をアクリロニトリル5部、スチレンモノマー25部、n−ブチルアクリレート70部にした以外は同様にして重合を行い、固形分19.0%、重量平均粒子径140nm、還元粘度13.8dl/gである共重合体(C−1)ラテックスを得た。
【0034】
[実施例1]
温度計、攪拌装置および蒸気吹き込み式温度調節器を有するガラス製容器中で、参考例3で調製したスチレン系グラフト共重合体(A−1)ラテックス100重量部(固形分として)を、72℃に昇温したラテックスと同量の3.3%硫酸水溶液中に投入しスラリー状態とした。そのスラリーを80℃に昇温し、参考例7で調製した硬質共重合体(B−1)ラテックス2部(固形分として)を添加し凝固させた。その後87℃に昇温して固化した後、脱水、乾燥しジエン系グラフト共重合体(A−1)粉体を得た。平均粒度330μm、嵩比重0.49g/cc、耐ブロッキング性は加重開放してもブロック化しないまでに良好なレベルであった。
【0035】
[実施例2〜6、比較例1〜6]
参考例で調製したスチレン系グラフト共重合体(A−1)〜(A−3)ラテックス、硬質共重合体(B−1)〜(B−5)ラテックス、共重合体(C−1)ラテックスを用い、実施例1と同様にして凝固回収を実施し、その結果を表1に示した。
【0036】
【表1】
【0037】
[実施例7〜12および比較例7〜12]
参考例で製造したスチレン系グラフト共重合体(A−1)〜(A−3)およびアクリロニトリル成分29%およびスチレン成分71%よりなり、N、N−ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.60dl/gであるアクリロニトリル−スチレン共重合体(SAN樹脂)、そして、ステアリン酸マグネシウムおよびエチレンビスステアリルアミドを樹脂成分100部に対してそれぞれ、0.4部、0.4部添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、この混合物を200℃に加熱した脱気式押出機(池貝鉄工(株)製PCM−30)に供給し、混練してペレットを得た。
得られたペレットを用いて測定したアイゾット衝撃強度、メルトフローレート(MI)、成形光沢度、耐ジェッティング性の評価結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
実施例および比較例より、次のことが明らかとなった。
1)実施例1〜6の、グラフト重合体(A)のスラリーに対し特定の硬質共重合体(B)を添加して回収したスチレン系グラフト共重合体は、嵩比重も充分に高く、耐ブロッキング性も良好であり、なおかつ微粉の発生も少ないものであった。
2)比較例1〜4および6の、本発明から外れたスチレン系グラフト共重合体は、上記いずれか項目において劣るものであった。
3)実施例7〜12の、本発明のスチレン系グラフト共重合体を配合した熱可塑性樹脂は、アイゾット衝撃強度、流動性、成形光沢、耐ジャッティング性が良好であった。
4) 比較例7、8、11の、本発明以外の熱可塑性樹脂組成物は、上記いずれか項目において劣るものであった。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のスチレン系グラフト共重合体およびそれを用いた熱可塑性樹脂組成物は、次のように特別に顕著な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大きい。
1)本発明のゴム含有率を高めたスチレン系グラフト共重合体は、嵩比、耐ブロッキング性そして微粉量が少ない。
2)本発明のゴム含有率を高めたスチレン系グラフト共重合体を用いた熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性、成形光沢、耐フローマーク(ジェッティング)性に優れ、粉体性状とその材料性能とのバランスは非常に高いレベルであり、各種工業用材料としての利用価値は極めて高い。
Claims (7)
- スチレン系グラフト共重合体(A)のスラリー100重量部(固形分)に対し、下記(1)〜(3)の特徴を有する共重合体(B)0.1〜10重量部(固形分)を添加した後、回収されてなるスチレン系グラフト共重合体含有粉体(G)。
(1)シアン化ビニル系単量体単位を20〜50質量%と、芳香族アルケニル単量体単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を0〜5質量%と含む。
(2)0.2gをジメチルホルムアミド100ml中に溶解した溶液の25℃で測定した還元粘度が1.5〜20dl/g
(3)重量平均粒子径が50〜200nm - 前記共重合体(B)は、シアン化ビニル系単量体を27〜29質量%と、芳香族アルケニル単量体を68〜71質量%と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を0〜5質量%と含む単量体混合物を乳化重合したものであることを特徴とする請求項1に記載のスチレン系グラフト共重合体含有粉体。
- 前記シアン化ビニル系単量体がアクリロニトリル単量体、芳香族アルケニル単量体がスチレン単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体がn−ブチルアクリレート単量体であることを特徴とする請求項2に記載のスチレン系グラフト共重合体含有粉体。
- スチレン系グラフト共重合体(A)のスラリーに対し、共重合体(B)がラテックスもしくはスラリー状態で添加されてなることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のスチレン系グラフト共重合体含有粉体(G)。
- スチレン系グラフト共重合体(A)が、重量平均粒子径150nm以下のジエン系ゴムラテックスを肥大化処理した後に、芳香族ビニル系単量体およびこれと共重合可能な単量体がグラフト重合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスチレン系グラフト共重合体含有粉体(G)。
- スチレン系グラフト共重合体(A)が、重量平均粒子径150nm以下のジエン系ゴムラテックスを酸基含有共重合体ラテックス(K)にて肥大化された重量平均粒子径が300nm以上であるジエン系ゴム状重合体存在下に、(メタ)アクリルアルキルエステル系単量体を重合させ、その後に芳香族ビニル系単量体およびこれと共重合可能な単量体がグラフト重合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスチレン系グラフト共重合体含有粉体(G)。
- 請求項1〜6記載の何れか1項記載のスチレン系グラフト共重合体含有粉体(G)に対し、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル三元共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(D)を配合してなるスチレン系熱可塑性樹脂組成物。
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