JP4797300B2 - 液体展開用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体、例えば血液や尿等の生体液の特定成分を検査・定量する際に用いられる生体液展開用シート、特に血液検査、さらには血糖値検査用に用いられる検査シート用の液体展開用シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、血糖値などの検査には、数滴の血液を測定器の先の試験紙に付けて、光学的な方法で測定されていた。
【0003】
しかしながら、この光学方式は測定精度のバラツキが大きく、かつ血液(検体)量が多く必要で、さらに試験紙への血液の濡れ性が悪い等の問題を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる問題点を解決し、少量の検体量で測定でき、検体吸収速度が速く、検体の濡れ性も良好で、この結果測定精度の高いバイオセンサ用の生体液展開用シートを提供することを目的とし、特に電極方式(電気伝導度測定)の検査シートにおいて、検査シートの吸引孔から血液が素早く導入・展開し、かつ電気伝導性に優れた生体液展開用シートを提供することを目的としたものである。
【0005】
電極方式の検査シートは、通常、測定極・対極/スペーサー/カバーから構成されている(特開平3−54447号公報、特開平10−227755号公報、特開平11−42098号公報等)。本発明は、この検査シートカバー用等に用いられる液体展開用シートを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
これらの目的に沿う本発明の液体展開用シートは、基材の少なくとも片面に液体受容層を設けてなる液体展開用シートにおいて、該液体受容層が少なくともアセチレングリコール類のエチレンオキサイド付加物界面活性剤とカチオン系界面活性剤を含有することを特徴とする液体展開用シートである。
【0007】
また、本発明の液体展開用シートにおいては、液体受容層の表面抵抗値が1×1012Ω以下であること、液体受容層の臨界表面張力が35mN/m以上であること、液体受容層の付着量が0.1〜5g/m2であること、液体が血液や尿等の生体液であることが好ましい態様として含まれている。
【0008】
また、本発明の液体展開用シートの液体受容層は、有機系バインダーや無機系バインダー等を主とした膜からなる。中でもバインダーと界面活性剤の混合物からなることが好ましく、特に、アセチレングリコール類のエチレンオキサイド付加物界面活性剤とカチオン系界面活性剤を含有するものが好適である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の液体展開用シートは、基材の少なくとも片面にアセチレングリコール類のエチレンオキサイド付加物界面活性剤とカチオン系界面活性剤を含有する液体受容層を設けてなる液体展開用シートであり、かつ該液体受容層は有機系バインダーや無機系バインダー等を主体とした膜で構成されている。 液体受容層として用いられるバインダーとしては、例えば、ポリエステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アイオノマ−樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン樹脂、エチレン−アクリル酸共重合樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合樹脂、エチレン−アクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコ−ル共重合樹脂、ポリビニルブチラ−ル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアルキレンオキシド樹脂、ゼラチン等の有機系バインダー、ジルコニウム、珪素、アルミニウム、チタン原子等を含む無機系バインダーが挙げられるが、中でもポリエステル樹脂が基材との接着力や、生体液の塗れ・展開性から好ましく用いられる。
【0010】
さらに、本発明においては、このバインダーに、表面抵抗値、臨界表面張力調整剤として、各種の界面活性剤を添加する。界面活性剤としては、例えば「実用プラスチック事典 材料編」((株)産業調査会 1996年)や「13398の化学商品」(化学工業日報社 1998年)に記載の非イオン系、アニオン系、カチオン系、および両性系の界面活性剤が挙げられる。
【0012】
さらに、アセチレングリコール類のエチレンオキサイド付加物界面活性剤とカチオン系界面活性剤を含有することが電気伝導性、生体液の塗れ・展開性からより好ましい。カチオン系界面活性剤としては、アミン塩型カチオン界面活性剤や第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤等が好ましく用いられる。カチオン系界面活性剤の中でも、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩、アシル塩化コリン等が、電気伝導性、生体液の塗れ・展開性から好ましく用いられる。
【0013】
液体受容層中の界面活性剤の全含有量は、通常0.1〜20部であり、好ましくは0.5〜10部である。
【0014】
また界面活性剤としてアセチレングリコール類のエチレンオキサイド付加物界面活性剤とカチオン系界面活性剤混合系としては、アセチレングリコール類のエチレンオキサイド付加物界面活性剤0.5〜5部、カチオン系界面活性剤1〜15部を適宜混合したものが好ましく用いられる。
【0015】
界面活性剤の添加量が上記範囲より多いと、基材との接着性が低下したり、ブロッキングしやすくなったりして好ましくない。また、界面活性剤の添加量が上記範囲より少ないと、所望の表面抵抗値が得ら難く、また液体の濡れ性・展開性が悪化し、電気伝導性が低くなり測定精度の低下や測定時間が長くなったりして好ましくない。
【0016】
本発明の基材としては、プラスチックフィルム、合成紙、紙または表面処理が施された複合シートが好ましく用いられるが、中でも寸法安定性や耐久性等の点からプラスチックフィルムが好ましい。
【0017】
プラスチックフィルムの材質としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ−ρ−フェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、これらの共重合体やブレンド物やさらに架橋したを用いることもできる。 さらに、上記プラスチックフィルムの中でも、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート、ポリエチレンα,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレートなどが好ましく、これらの中で機械的特性、作業性などの品質、経済性などを総合的に勘案すると、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましく用いられる。
【0018】
基材の厚みは特に限定されないが、通常10μm〜500μm、好ましくは20μm〜300μm、より好ましくは30μm〜200μmであることが望ましい。
【0019】
本発明の液体展開用シートは、血液や尿等の生体試料や食品工業における原料や製品、果汁等の試料中に含まれる特定成分の検査・定量する際に用いられ、中でも好適には、血液や尿等の生体液の特定成分を検査・定量する際に用いられる生体液展開用シートとして用いられる。
【0020】
本発明の液体展開用シートにおいて、液体受容層の表面抵抗値は1×1012Ω以下であり、好ましくは5×1011Ω以下である。表面抵抗値が上記範囲より高いと、液体の濡れ性・展開性の悪化や、電気伝導性の低下による測定精度の低下や測定時間が長くなったりして好ましくない。
【0021】
また、液体受容層の臨界表面張力は35mN/m以上であることが好ましく、より好ましくは40mN/m以上である。臨界表面張力が上記範囲より低いと、液体の濡れ性・展開性が悪化し、液体が測定極まで浸透せずに値が測定できなくなり好ましくない。
【0022】
また、液体受容層の付着量は0.1〜5g/m2であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5g/m2である。付着量が上記範囲より少ないと加工時の擦り傷等により付着層の脱落や、ピンホールが発生し易くなり測定精度が低下し好ましくない。また、付着量が上記範囲より多くなると作業性が悪くなったり、ブロッキングを生じやすくなり好ましくない。
【0023】
本発明の液体展開用シートの液体受容層は、有機系バインダーや無機系バインダー等を、塗布、貼着した塗膜で構成される。
【0024】
本発明の液体受容層は、例えば、液体受容層を構成する成分を含む塗布液を基材に塗布し塗膜とすることで形成することができる。塗布液は、例えば、バインダーと界面活性剤を混合して、トルエンやメチルエチルケトン(MEK)等の有機溶剤や水等の溶媒で所望の濃度に希釈して得ることができる。
【0025】
塗布液の塗布方法は特に限定されないが、グラビアコート法、リバースコート法、キスコート法、ダイコート法、およびバーコート法などの方法を用いることができる。この際、基材上には塗布液を塗布する前に、必要に応じて空気中あるいはそのほかの雰囲気中でのコロナ放電処理や、プライマー処理などの表面処理を施すことによって、塗布性が良化するのみならず、液体受容層をより強固に基材上に形成することができる。なお、塗布液濃度、塗膜乾燥条件は特に限定されるものではないが、塗膜乾燥条件は基材の諸特性に悪影響を及ぼさない範囲で行なうことが望ましい。
【0026】
また、本発明の液体受容層は、また上記塗布液で予め膜状物を作り、それを基材に貼着することで形成することができる。
【0027】
【実施例】
本発明における特性の評価方法について次に説明する。
【0028】
(1)表面抵抗値
東京電気(株)製のHI−レジスタンス テスター モデル TR−2)(HI−RESISTANCE TESTER MODEL TR−2)を用いて測定した。
【0029】
(2)臨界表面張力
JIS−K6768に準じ、濡れ指数標準液(和光純薬工業(株)製)を用いて測定した。
【0030】
(3)付着量
塗布液を塗布した基材100cm2の重量を測定し(A)、次に塗布前の基材100cm2の重量を測定し(B)、(A−B)×100で付着量(g/m2)を算出した。
【0031】
(4)液体の濡れ性・展開性
ライフ テクノロジーズ(LIFE TECHNOLOGIES)社製の牛胎児血清0.05mlを液体受容層面に滴下し、滴下5秒後の血清の広がり状態で血液の濡れ性・展開性を判定した。判定基準は次のとおりである。
血清の広がり10mm以上 : ○
血清の広がり 9mm以下 : ×
(実施例1)東レ(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラー”(タイプ100T60)を基材とし、また、塗布液として、ポリエステル樹脂(バインダー)(高松油脂(株)製 ペスレジンS140)とポリオキシエチレントリアルキルアンモニウム塩系カチオン系界面活性剤(東邦化学工業(株)製 アンステックスC−200X)及びアセチレングリコール類のエチレンオキサイド付加物界面活性剤(日信化学工業(株)製 オルフィンE1004)を、固形分比で100/5/1の割合で調合し、トルエンで15%に希釈したものを用意した。15%に希釈した塗布液をグラビアコータにて基材に塗布し、120℃で30秒乾燥して本発明の液体展開用シ−トを得た。乾燥後の付着量は1.5g/m2であった。得られた液体展開用シートの特性は、表1に示したとおり、液体の濡れ性・展開性(血清の広がり17mm)が優れたものであった。
(実施例2)実施例1において、塩化セチルトリメチルアンモニウム塩系カチオン系界面活性剤(東邦化学工業(株)製 カチナールCTC−70ET)を用いたこと以外は、同様にして、本発明の液体展開用シ−トを得た。乾燥後の付着量は1.5g/m2であった。得られた液体展開用シートの特性は表1に示したとおり、液体の濡れ性・展開性(血清の広がり18mm)が優れたものであった。
【0032】
(比較例1)
東レ(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラー”(タイプ100T60)を基材とし、塗布液として、ポリエステル樹脂(高松油脂(株)製 ペスレジンS140)をトルエンで15%に希釈したものを用意した。15%に希釈した塗布液をグラビアコータにて基材に塗布した。120℃で30秒乾燥した。乾燥後の付着量は1.5g/m2であった。得られたシートの特性は表1に示したとおり、血清の広がりが5mmであり、液体の濡れ性・展開性が劣るものであった。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】
本発明の液体展開用シ−トは、液体の濡れ性・展開性が非常に優れたものであり、特に血液や尿等生体液の検査用として好ましく用いられる。さらには、食品の原料や製品中の特定成分の検査用などの用途においても好ましく用いることができる。
Claims (9)
- 基材の少なくとも片面に液体受容層を設けてなる液体展開用シートにおいて、該液体受容層が少なくともアセチレングリコール類のエチレンオキサイド付加物界面活性剤とカチオン系界面活性剤を含有することを特徴とする液体展開用シート。
- 液体受容層の表面抵抗値が1×1012Ω以下であることを特徴とする請求項1に記載の液体展開用シート。
- 液体受容層の臨界表面張力が35mN/m以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の液体展開用シート。
- 液体受容層の付着量が0.1〜5g/m2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体展開用シート。
- 液体受容層が、界面活性剤を0.1〜20部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液体展開用シート。
- 液体が生体液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液体展開用シート。
- 液体展開用シートが生体液展開用シートであることを特徴とする請求項6の液体展開用シート。
- 生体液展開用シートが血液あるいは尿検査用シートであることを特徴とする請求項7記載の液体展開用シート。
- 基材がプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の液体展開用シート。
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