JP2698550B2 - 結露防止性積層フィルムあるいはシート - Google Patents

結露防止性積層フィルムあるいはシート

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JP2698550B2
JP2698550B2 JP20654494A JP20654494A JP2698550B2 JP 2698550 B2 JP2698550 B2 JP 2698550B2 JP 20654494 A JP20654494 A JP 20654494A JP 20654494 A JP20654494 A JP 20654494A JP 2698550 B2 JP2698550 B2 JP 2698550B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、浴室等の鏡面、自動
車、電車、家屋等の窓ガラス、温室内のガラス板、眼鏡
のレンズ、ゴーグルあるいはカーブミラー等、高湿度環
境下または温度が著しく異なる境界にあるガラス面など
に貼付して長期間持続的に結露を防止するのに有用な、
結露防止性積層フィルムあるいはシート(以下、単にフ
ィルムとする)に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、透明なガラスやプラスチック製品
の結露を防止するために種々の提案がなされ、また実用
化されている[筏 義人編:高分子表面の基礎と応用
(下)、化学同人社 p81〜 106(1989)]。これを大別
すると、 a)界面活性剤を混練して成形品の表面の濡れ性を改善
する方法:例えば、ソルビタン脂防酸エステル、グリセ
リン脂防酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂
防酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂防酸
エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよび
ショ糖脂防酸エステル等の界面活性剤を樹脂中に添加
し、フィルム状に成形すると、樹脂との相溶性から成形
品の表面に界面活性剤がブリードしてくる。そこに水滴
が付着すると界面活性剤が水滴内に入り込み、水滴の表
面張力を低下させ水滴を広がらせ透明性を維持する。 b)疎水性物質を成形品の表面に塗布して表面の撥水性
を向上させる方法:例えば、フィルム等の成形品の表面
にシリコーンオイル、流動パラフィン、ワセリン等の疎
水性物質を塗布し、表面の撥水性を向上させて水滴を流
下させる。 c)水に対して親和性の高い樹脂を成形物の表面に塗布
し、表面に付着した水滴を吸水してしまう方法:例え
ば、水に対して親和性の高い樹脂として、澱粉/ポリア
クリル酸系吸水樹脂、ポリビニルアルコール、メチルセ
ルロースなどを用い、これをフィルム等の表面に塗布
し、表面に付着した水滴を吸収する。 d)成形品の表面を常に露点以上の温度に保ち結露を防
ぐ方法:例えば、ガラスの内面に発熱体を取付けて加熱
し、結露を防止する。
【0003】しかし、a)の方法は、樹脂中に混練した
界面活性剤等がフィルム等の表面にブリードアウトする
ことで結露防止効果を示すもののため、この界面活性剤
が水と繰り返し接触すると、界面活性剤が溶解流出して
結露防止効果を示さなくなる。すなわち、この方法によ
る結露防止効果は、初期効果のみで持続性に乏しい;
b)の方法も成形品表面に塗布した撥水性物質が水と繰
り返し接触すると流出するため持続性に乏しく、また細
かい水滴に対しては全く効果がない。さらに均一に塗布
しにくく、かつこの塗布により形成された塗膜がべとつ
いたり、塗布後の成形物の透明性が阻害されるなどの欠
点がある;c)の方法による結露防止効果の持続性は
a)およびb)の方法よりも優れているもののまだ十分
ではなく、さらには水に対する親和性が高いため、水滴
に接触した部分が膨潤して表面硬度が低下したり皺ある
いは剥離が生じる。d)の方法は初期投資が大きく電力
費も高く、また特殊な用途にしか利用できない。このよ
うな理由から結露防止成形物を得る方法としては、一般
にc)の方法をさらに改良した方法が用いられている。
しかし、この方法では主にポリビニルアルコール系樹脂
が用いられているため水に対する親和性が高く、水滴に
接触した部分が膨潤してシワを発生する。またポリビニ
ルアルコール系樹脂の吸水量では高湿度下または温度が
著しく異なる境界面で長期間持続的に防曇効果を示すこ
とができない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、これを改善し
た結露防止フィルムとして、さらにポリビニルアルコ
ール系樹脂を有機ケイ素化合物(シラン化合物あるいは
シランカップリング剤)で架橋させたもの(特開昭48-4
7939号、特開平3-181586号、3-181587号、3-181588号、
3-181589号各公報)、分子内にシリル基を有する変性
ポリビニルアルコールと無機物とよりなる組成物(特開
昭59−179684号公報)を用いたもの、ポリエステルフ
ィルム上にポリビニルアルコールとイソブチレン−無水
マイレン酸共重合体との混合溶液を塗布したもの(特開
平5-310978号公報)等が提案されている。しかし、お
よびより得られるフィルムは膨潤による表面硬度の低
下およびシワの発生を十分に防ぐことができるが、フィ
ルムが疎水性化するため高湿度の環境下および温度が著
しく異なる境界面では結露防止効果の持続性に乏しい。
により得られるフィルムは吸水量が乏しいため同様の
条件下で長期間持続的に結露防止効果を示すことができ
ない。したがって、本発明の目的は高湿度環境下または
温度あるいは湿度差が著しく異なる境界面で長期間持続
的に結露を防止することができ、またシワが発生せず、
貼り付けや剥すことが容易にできる、結露防止効果の優
れた透明な積層フィルムを提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題の
解決のため特開昭59-64650号公報および特開昭60−2104
44号公報の記載を基にさらに研究を重ねた結果、ポリビ
ニルアルコール系樹脂にイソブチレン−マイレン酸−マ
イレン酸アルカリ金属塩共重合体を添加して得られた組
成物をポリビニルアルコール系樹脂表面に積層した積層
フィルムは、同じ厚みのポリビニルアルコール系樹脂フ
ィルムと比較して吸水性が著しく向上することに着目
し、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの表面に上記
組成物を塗布して吸水層として用いることで、ポリビニ
ルアルコール系樹脂フィルムの吸水力を向上させること
ができることを見出した。また、支持基体層とポリビニ
ルアルコール系樹脂層との接着強さに、吸湿、吸水ある
いは排湿、排水による、吸水層とポリビニルアルコール
系樹脂層との伸縮力よりも強い剪断強度が与えられるこ
と、疎水性樹脂からなる支持基体層の一方の面に、ポリ
ビニルアルコール系樹脂層を積層し、その表面に上記吸
水層を形成すると共に、支持基体層の他方の面に粘着剤
層を設ければ、この積層フィルムをガラスなどの表面に
容易に貼付することが可能となり結露防止効果を付与で
きること等を見出し、本発明に到達した。
【0006】すなわち、本発明による結露防止性積層フ
ィルムは、図1および図2に縦断面図で例示するよう
に、水不溶性で全光線透過率が90%以上の通常の厚さが
10〜 800μmの支持基体層1に、接着剤層2を介して通
常の厚さが5〜 500μmのポリビニルアルコール系樹脂
層3を積層し、その表面に通常の厚さが1〜15μmの吸
水層4を設けたものからなり、この吸水層が、ケン化度
95モル%以上、重合度 500〜2500のポリビニルアルコー
ル系樹脂(A)と、共重合体中のカルボキシル基の25〜
50%がアルカリ金属塩の形であるイソブチレン−マレイ
ン酸−マレイン酸アルカリ金属塩共重合体(B)とから
なる、重量比(A)/(B)=90/10〜20/80の組成物
から得られるものであること、またさらに前記支持基体
層1の他方の面に粘着剤層5を設けたものである。な
お、図中、6は離型紙である。
【0007】本発明をさらに詳細に説明する。本発明の
結露防止性積層フィルムに使用される支持基体層1とし
ては、透明性が高く、水不溶性のフィルムであれば特に
制限はなく、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビ
ニル、ポリメチルメタクリレートなどの透明な合成樹脂
が挙げられる。これらのフィルムの厚さが10μm未満で
は吸排湿層の吸排湿による伸縮によりシワが発生し易
く、また 800μmを越えると施工が困難になり易く、か
つコストがアップするので、通常10〜 800μmの範囲の
厚さのものが用いられる。また、全光線透過率が90%未
満では透明性が不足し易く好ましくない。
【0008】この支持基体層1に接着剤層2を介して積
層されるポリビニルアルコール系樹脂層3に使用可能な
ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニル、蟻
酸ビニル等のビニルエステルあるいはt−ブチルエーテ
ル、トリメチルシリルビニルエーテル等のビニルエーテ
ルを重合させた重合体を酸あるいはアルカリで加水分解
して得られるものであるが、一般的には酢酸ビニルを重
合した重合物を加水分解したものがコストの面から好適
である。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は95モ
ル%以上、好ましくは98モル%以上、重合度は 500以
上、好ましくは1000〜2500、より好ましくは1000〜2000
である。ケン化度が95モル%未満の場合はポリビニルア
ルコール系樹脂層の耐水性が劣るため、ポリビニルアル
コール系樹脂層が膨潤してシワが発生したり、ポリビニ
ルアルコール系樹脂層が溶解して支持基体層から剥離し
てしまう。重合度が500未満では、得られるフィルムの
機械的強度が低くなり好ましくない。また重合度が2500
を越えると、ポリビニルアルコール系樹脂の溶融状態で
の粘度が著しく高いためフィルムへの成形が困難にな
る。
【0009】これらポリビニルアルコール系樹脂を成膜
する方法は、独立薄膜を得ることができる成膜法であれ
ばどのような方法でもよいが、工業的にはインフレーシ
ョン成形法あるいはT−ダイを用いた溶融押出成形法が
成形能率が高く好ましい。このようにして得られたポリ
ビニルアルコール系樹脂フィルムは必要に応じて熱処理
または延伸を行ってもかまわない。この成膜原液には、
必要に応じて、フィルムの透明性および耐水性を損なわ
ない程度に、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシ
エチルセルロース等のセルロース誘導体、澱粉あるいは
その誘導体、キサンタンガム、カラギナン等の多糖類、
ポリアクリル酸またはその誘導体、ポリアクリルアミ
ド、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリエチレンオキサ
イド等の水溶性合成高分子等の水溶性樹脂、グリセリ
ン、ポリエチレングリコールあるいはエタノールアミン
等の可塑剤、ノニオン性あるいはアニオン性の界面活性
剤、pH調節剤、各種消泡剤、防腐剤等も添加すること
ができる。ポリビニルアルコール系樹脂層の厚さは5μ
m未満では結露防止効果が不十分となり易く、 500μm
を越えると施工が困難となり易くコストもアップするの
で好ましくない。
【0010】ポリビニルアルコール系樹脂層3と支持基
体層1との間に介在する接着剤層2を構成する接着剤と
しては、吸排湿に伴う吸排湿層の伸縮を防止する能力が
あり、この伸縮力よりも大きい剪断強度を有する接着力
が要求されるので、ウレタン系2液反応型(ポリエチレ
ングリコールまたは両末端に水酸基を有するポリエステ
ル、ポリアミンまたはポリカルボキシル基とイソシアネ
ートとの反応型)接着剤、エポキシ樹脂系接着剤が好適
である。これらの接着剤は耐水性、耐高温多湿性に優れ
ている。なお、吸水層とポリビニルアルコール系樹脂層
の伸縮力以下の剪断強度の接着力しかない接着剤で接着
するとシワが発生し易くなる。
【0011】吸水層4の形成に使用されるポリビニルア
ルコール系樹脂は、酢酸ビニル、蟻酸ビニル等のビニル
エステルあるいはt−ブチルエーテル、トリメチルシリ
ルビニルエーテル等のビニルエーテルを重合させた重合
体を酸あるいはアルカリで加水分解して得られるが、一
般的には酢酸ビニルを重合した重合物を加水分解したも
のがコストの面から好適である。ポリビニルアルコール
系樹脂のケン化度は95モル%以上、好ましくは98モル
%、重合度は 500〜2500、好ましくは1000〜2000であ
る。ケン化度が95モル%未満では積層フィルムの透明性
が劣るため好ましくない。重合度が 500未満では、薄膜
の強度が低下しフィルム表面にクラックが発生する。重
合度が2500を越えると、粘度が著しく高くなり吸水層の
形成が困難となる。
【0012】このポリビニルアルコール系樹脂と共に吸
水層4の形成に用いられるイソブチレン−マレイン酸−
マレイン酸アルカリ金属塩共重合体には、イソブチレン
−無水マレイン酸共重合体をアルカリ金属化合物あるい
はアルカリ土類金属塩化合物の水溶液で加水分解したも
のが用いられる。なお、ここでいうアルカリ金属化合物
あるいはアルカリ土類金属化合物とは、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム、水酸化リチウムおよび水酸化マグ
ネシウム等である。イソブチレン−マレイン酸−マレイ
ン酸アルカリ金属塩共重合体中のカルボキシル基がアル
カリ金属塩を形成している割合(以後中和度と記す)
は、25〜50%、好ましくは30〜50%である。イソブチレ
ン−無水マレイン酸をアルカリ金属化合物あるいはアル
カリ土類金属化合物で加水分解し、中和度が25%未満の
イソブチレン−マレイン酸−マレイン酸アルカリ金属塩
共重合体を作製することは非常に困難である。中和度が
50%を越える場合は、ポリビニルアルコール系樹脂との
相溶性が悪くなり、フィルムが白濁し透明なフィルムが
得れらなくなるだけでなく、ポリビニルアルコール系樹
脂とイソブチレン−マレイン酸−マレイン酸アルカリ金
属塩共重合体が相分離し、不透明な積層フィルムとなっ
てしまう。
【0013】ポリビニルアルコール系樹脂(A)とイソ
ブチレン−マレイン酸−マレイン酸アルカリ金属塩共重
合体(B)との重量組成比は(A)/(B)の重量比で
90/10〜20/80の範囲であり、とくには70/30〜40/60
の範囲であることが好ましい。ポリビニルアルコール系
樹脂の重量組成比が90/10より多くなると吸水層として
の機能を十分発揮できない。また、この重量組成比が20
/80より小さくなるとポリビニルアルコール系樹脂とイ
ソブチレン−マイレン酸−マイレン酸アルカリ金属塩共
重合体組成物がポリビニルアルコール系樹脂層から剥離
してしまう。この吸水層中には、必要に応じてアセチレ
ンアルコール、アセチレングリコールあるいはグレセリ
ン脂防酸エステル等の界面活性剤を添加しても構わな
い。
【0014】形成する吸水層4の厚みは 1.0〜15μmが
用いられ、さらには3〜10μmが好ましい。これが 1.0
μm未満では吸水量が小さいため高湿度あるいは温度差
が著しく異なる環境下での防曇効果が乏しくなり易く、
15μm越えると吸水後吸水層の体積増加が著しくなり易
い。ポリビニルアルコール系樹脂層3上への吸水層4の
形成方法は、一般にはキャスティング方式で行うのが好
ましい。具体的にはポリビニルアルコール系樹脂とイソ
ブチレン−マレイン酸−マレイン酸アルカリ金属塩共重
合体の混合溶液を所定の濃度に溶解した後、ポリビニル
アルコール系樹脂層上にワイヤーバー、ダイコーター、
リバースコーターあるいはナイフコーター等を用いて塗
工した後、乾燥することにより得られる。また乾燥後、
必要に応じて熱処理を施しても構わない。
【0015】本発明の結露防止性積層フィルムには、必
要に応じて支持基体層1の他方の面に粘着剤層5を設け
ることができるが、この粘着剤層5には、一般に使用さ
れている粘着剤、例えば、ポリアクリル酸エステル系粘
着剤やシリコーン系粘着剤が使用される。ただしこの場
合、粘着剤自体の透明性や耐水白化性等が良好なものを
選択的に使用することが好ましい。
【0016】
【作用】本発明による結露防止性積層フィルムはポリビ
ニルアルコール系樹脂フィルム上にポリビニルアルコー
ル系樹脂とイソブチレン−マレイン酸−マレイン酸アル
カリ金属塩共重合体組成物からなる層を形成することに
より、ポリビニルアルコール系樹脂層の吸水量を増加さ
せ表面の結露を防止する作用を有する。また、本発明に
用いられる支持基体層は、上記吸水層とポリビニルアル
コール系樹脂層が吸湿、吸水や排湿、排水を行うときの
寸法変化を抑えるための支持体として作用し、これら
は、吸水層とポリビニルアルコール系樹脂層の吸排湿に
よる伸縮力よりも大きな剪断強度を有する接着剤等の接
着力と組み合わさって有効に作用する。
【0017】
【実施例】以下、本発明の具体的実施態様を実施例およ
び比較例により説明するが、本発明はこれらの記載に限
定されるものではない。 (実施例1〜7、比較例1〜10) ・吸水層形成剤の調製:吸水層形成剤は表1および表2
(吸水層の欄)に示す種類と量割合の成分を用いて、ま
ずイオン交換水中にポリビニルアルコール樹脂(表中、
PVA樹脂とする)を添加し、80℃以上に加熱し溶解し
た。溶解後、ポリビニルアルコール樹脂水溶液の濃度を
10重量%に調節した。イソブチレン−マレイン酸−マレ
イン酸ナトリウム金属塩共重合体溶液(クラレ社製、表
中、共重合体とする)を濃度10重量%に調節した後、上
記ポリビニルアルコール樹脂水溶液に添加して作製し
た。なお、表中の防曇剤には2,4,7,9−テトラメ
チル−5−デシン−4,7−ジオールを使用した。
【0018】・積層フィルムの作製:支持基体層として
の厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム
に、T−ダイ溶融押出成形法により作製した表1および
表2(PVA樹脂層の欄)に示すケン化度と重合度を有
するポリビニルアルコール樹脂フィルム(厚み50μm)
を、ウレタン系2液反応性接着剤(両末端に水酸基を有
するポリエステル、イソシアネート反応型接着剤、主
剤:武田薬品工業社製、タケラックA310 、硬化剤:同
社製、タケネートA10)を用いてワイヤーバーにより、
接着剤固形分の厚さが5μmになるように塗布乾燥後、
ニップ部にて60℃のロールでニップし積層フィルムを得
た。この積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂側
に、上記吸水層形成剤の10重量%水溶液を、ワイヤーバ
ーにて乾燥後の塗工膜の厚みが表1および表2の値とな
るように塗工した。塗工後 100℃で10分間乾燥し、さら
に 170℃で30秒間熱処理を行って図1に示す積層フィル
ムを得た。
【0019】得られた積層フィルムの内、状態の良かっ
た実施例1〜7、比較例1〜2および8〜10の各試料に
ついて下記の方法で吸水量の測定を行い、その結果を表
1および表2に併記した。また、この積層フィルムのポ
リエチレンテレフタレート側に、ポリアクリル酸エステ
ル系粘着剤(主剤:綜研化学社製、SKダイン1811L、硬
化剤:同社製、D-90)を固形分の厚さが20μmとなるよ
うにワイヤーバーで塗布して乾燥後、ニップロールを用
いて離型紙(厚さ20μm)を貼り合わせて図2に示す積
層物を得た。この積層物を10cm角に切り出して厚み5mm
のアクリル樹脂製板に貼り付け、下記の方法で高温結露
防止性、低温結露防止性および結露防止効果の持続性の
各試験を行い、その結果を表1および表2に併記した。
【0020】・吸水量の測定: 得られた積層フィルムを5cm角に切り出し、23℃のイオ
ン交換水中に1時間浸漬した後、取り出し、濾紙にて両
表面の付着水を十分に除去し、フィルムの重量W1 を求
めた。ついで、このフィルムを 110℃で3時間乾燥し
て、乾燥状態のフィルムの重量W2 を求めた。これらの
値から次式により吸水量を求めた。 吸水量=(W1 −W2 )/ 2.5×10 -3 ・高温結露防止性試験: 外部温度20℃の恒温室中で 300mlのビーカー中に40℃に
保持したイオン交換水を 200ml入れ、ビーカーの上部に
積層物の吸水層側を内部に向けて設置し、15分後に内面
の結露状態を目視により観察し、下記の基準で評価し
た。観察後、20℃のイオン交換水中に8日間浸漬し、一
昼夜自然乾燥した後、再び上記と同じ試験を行った。な
お、◎、○については結露防止効果有りとした。 ◎:フィルム表面には、全く水滴が付着していない。 ○:直径10mmを越える水滴がフィルムの一部に付着して
いた。 △:直径2〜10mmの水滴がフィルムの全面に付着してい
た。 ×:直径2mm未満の水滴がフィルムの全面に多数付着し
ていた。
【0021】低温結露防止性試験:上記試験におけるイ
オン交換水の温度を20℃にしたほかは、同様にして結露
状態を目視により観察し、上記と同じ基準で評価した。
観察後、20℃のイオン交換水中に8日間浸漬し、一昼夜
自然乾燥した後、再び上記と同じ試験を行った。なお、
◎、○については結露防止効果有りとした。 持続性試験:富士テスター社製の建具結露防止性能試験
により効果の確認を行った。防曇性試験の条件は恒温恒
湿室側の温度25℃、湿度70%、恒温室側の温度5℃の条
件下で行った。放置2週間後の結露防止性効果を目視に
より観察し、上記と同じ基準で評価した。なお、◎、○
について結露防止効果有りとした。さらにシワの発生の
有無も観察した。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】(実施例1〜7)本発明で得られた各積層
フィルムでは、高温下および低温下においてもフィルム
内面の結露は認められなかった。8日間イオン交換水中
に浸漬した後も効果は失われていなかった。また結露防
止効果の持続性も確認できた。さらにフィルム表面にシ
ワの発生も認められなかった。 (比較例1)結露防止性効果はフィルム表面に直径2mm
未満の水滴が多数付着しており全く認められなかった。
しかし、フィルム表面にはシワの発生は認めらなかっ
た。 (比較例2)高温結露防止性および低温結露防止性とも
初期効果は認められたが、浸漬後の効果はフィルム全表
面に2mm未満の水滴が多数付着しており消失していた。
また効果の持続性も認められなかった。しかしフィルム
表面にはシワの発生は認めらなかった。 (比較例3)塗工、乾燥後、吸水層が白濁し透明なフィ
ルムは得られなかった。 (比較例4)吸水層形成剤の粘度が著しく高く、表面の
平滑なフィルム得られなかった。このため、吸水層形成
剤水溶液の濃度をさらに1重量%希釈したが、表面の平
滑なフィルムは得られなかった。
【0025】(比較例5)塗工、乾燥後、フィルムの吸
水層にクラックが発生した。 (比較例6)得られた積層フィルムは不透明で表面の平
滑性も劣っていた。 (比較例7)塗工、乾燥後、吸水層がポリビニルアルコ
ール樹脂層から剥離した。 (比較例8)高温時および低温時の結露防止性効果はフ
ィルム表面に直径2〜5mmの水滴が多数付着しており認
められなかった。また持続性効果も認められなかった。
しかしフィルム表面にシワの発生は認められなかった。 (比較例9)結露防止性効果はフィルム表面に直径2〜
5mmの水滴が多数付着し認められなかった。フィルム表
面にシワの発生は認められなかった。 (比較例10)高温および低温での初期結露防止効果は優
れていたが、イオン交換水に浸漬中にポリビニルアルコ
ール系樹脂層が溶解し、支持基体層から剥離してしまっ
た。また持続性効果を測定中にポリビニルアルコール系
樹脂層が膨潤し、フィルム表面にシワの発生が認められ
た。
【0026】(実施例8)実施例1で得られた積層フィ
ルムについて、持続性試験前後のポリビニルアルコール
系樹脂層とポリエチレンテレフタレート層間の接着剤の
強度を、90°および 180°剥離強度で求め、その結果を
表3に示した。 ・測定条件:引張速度 300mm/分、サイズ15mm×50mm これより、ポリビニルアルコール系樹脂層とポリエチレ
ンテレフタレート層間の接着強度は、結露試験試験機内
に2週間放置しても全く衰えていなかった。
【表3】
【0027】
【発明の効果】本発明による結露防止性積層フィルムは
ポリビニルアルコール系樹脂フィルム上にポリビニルア
ルコール系樹脂とイソブチレン−マレイン酸−マレイン
酸アルカリ金属塩混合物からなる吸水層を形成したこと
により、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム表面の吸
水力を増加させて表面の結露を防止することができる。
また、吸水層とポリビニルアルコール系樹脂層を支持基
体層上に接着させ、それを吸水層が表面層となるように
ガラスなどに粘着施工することにより、吸湿、吸水や排
湿、排水によるポリビニルアルコール系樹脂の膨潤、伸
縮から引き起こされるシワを完全に防止することができ
る。本発明の結露防止性積層フィルムに粘着剤層を設け
たものでは容易にガラスなどの表面に貼付したり剥した
りできて利便性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜7および比較例1〜10で得られた積
層フィルムの縦断面図である。
【図2】実施例1〜7および比較例1、2、8〜10で得
られた積層物の縦断面図である。
【符号の説明】
1:支持基体層、 2:接着剤層、 3:ポリビニルア
ルコール系樹脂層、4:吸水層、 5:粘着剤層、
6:離型紙。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08L 23/26 C08L 23/26

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水不溶性で全光線透過率が90%以上の支持
    基体層に、接着剤層を介してポリビニルアルコール系樹
    脂層を積層し、その表面にケン化度95モル%以上、重合
    度 500〜2500のポリビニルアルコール系樹脂(A)と、
    共重合体中のカルボキシル基の25〜50%がアルカリ金属
    塩の形であるイソブチレン−マレイン酸−マレイン酸ア
    ルカリ金属塩共重合体(B)とからなる、重量比(A)
    /(B)=90/10〜20/80の組成物から得られる吸水層
    を設けたことを特徴とする結露防止性積層フィルムある
    いはシート。
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