JP4665346B2 - 液体展開用シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体、例えば血液や尿等の生体液の特定成分を検査・定量する際に用いられる生体液展開用シート、特に血液検査、さらには血糖値検査用に用いられる検査シート用の液体展開用シートの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、血糖値などの検査には、数滴の血液を測定器の先の試験紙に付けて、光学的な方法で測定されていた。
【0003】
しかしながら、この光学方式は測定精度のバラツキが大きく、かつ血液(検体)量が多く必要で、さらに試験紙への血液の濡れ性が悪い等の問題を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる問題点を解決し、少量の検体量で測定でき、検体吸収速度が速く、検体の濡れ性も良好で、この結果測定精度の高いバイオセンサ用の生体液展開用シートの製造方法を提供することを目的とし、特に電極方式(電気伝導度測定)の検査シートにおいて、検査シートの吸引孔から血液が素早く導入・展開し、かつ電気伝導性に優れた生体液展開用シートの製造方法を提供することを目的としたものである。
【0005】
電極方式の検査シートは、通常、測定極・対極/スペーサー/カバーから構成されている(特開平3−54447号公報、特開平10−227755号公報、特開平11−42098号公報等)。本発明は、この検査シートカバー用等に用いられる液体展開用シートの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
従来、液体展開用シートは基材の片面に液体受容層を形成し、そのまま巻き取る方法が採られていたが、この方法では基材の裏面にも液体受容層が薄く転写し、測定精度等に重大な問題が発生した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
これらの目的に沿う本発明の液体展開用シートの製造方法は、基材の片面に液体受容層を設けてなる液体展開用シートにおいて、界面活性剤を少なくとも1種含有する該液体受容層を塗布後、中心線平均粗さが15〜500nm及び山数が70〜500個/0.1mm2であるセパレータを積層して巻き取ることを特徴とする液体展開用シートの製造方法である。
【0008】
本発明の液体受容層を設けてなる液体展開用シートは、該液体受容層を塗布後、中心線平均粗さが15〜500nm及び山数が70〜500個/0.1mm2であるセパレータを積層して巻き取ることが必要である。セパレータを積層しないで巻き取った場合は、液体受容層が基材の裏面に薄く転写し、例えば生体液等の検査用チップとして組み込んだ時に、生体液が裏面にも拡がり、測定精度等に重大な問題が発生するため好ましくない。
【0009】
本発明の液体展開用シートの液体受容層には、界面活性剤が少なくとも1種含有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の液体展開用シートの液体受容層は、有機系バインダーや無機系バインダーを主とした膜からなる。中でもバインダーと界面活性剤の混合物からなることが好適である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の液体展開用シートの製造方法は、基材の片面に少なくとも1種の界面活性剤を含有する液体受容層を設けてなる液体展開用シートの製造方法であり、かつ該液体受容層は有機系バインダーや無機系バインダーを主体とした膜で構成されている。
液体受容層として用いられるバインダーとしては、例えば、ポリエステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アイオノマ−樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン樹脂、エチレン−アクリル酸共重合樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合樹脂、エチレン−アクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコ−ル共重合樹脂、ポリビニルブチラ−ル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアルキレンオキシド樹脂、ゼラチン等の有機系バインダー、ジルコニウム、珪素、アルミニウム、チタン原子等を含む無機系バインダーが挙げられるが、中でもポリエステル樹脂が基材との接着力や、生体液の濡れ・展開性から好ましく用いられる。
【0012】
さらに、本発明においては、このバインダーに、表面抵抗値、臨界表面張力調整剤として、各種の界面活性剤を添加する。界面活性剤としては、例えば「実用プラスチック事典 材料編」((株)産業調査会 1996年)や「13398の化学商品」(化学工業日報社 1998年)に記載の非イオン系、アニオン系、カチオン系、および両性系の界面活性剤が挙げられる。
【0013】
液体受容層中の界面活性剤の含有量は、通常0.1〜20部であり、好ましくは0.5〜10部、より好ましくは1〜7部である。
【0014】
界面活性剤の添加量が上記範囲内であれば、基材との接着性が低下せず、ブロッキングがおこりにくくなり、また、所望の表面抵抗値が得られ易くなり、液体の濡れ性・展開性、電気伝導性が適度に保たれ、測定精度や測定時間が適切となり好ましい。
【0015】
本発明の基材としては、プラスチックフィルム、合成紙、紙または表面処理が施された複合シートが好ましく用いられるが、中でも寸法安定性や耐久性等の点からプラスチックフィルムが好ましい。
【0016】
プラスチックフィルムの材質としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ−ρ−フェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、これらの共重合体やブレンド物やさらに架橋したを用いることもできる。 さらに、上記プラスチックフィルムの中でも、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート、ポリエチレンα,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレートなどが好ましく、これらの中で機械的特性、作業性などの品質、経済性などを総合的に勘案すると、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましく用いられる。
【0017】
基材の厚みは特に限定されないが、通常10μm〜500μm、好ましくは20μm〜300μm、より好ましくは30μm〜200μmであることが望ましい。
【0018】
本発明のセパレータとしては、上記基材材料を用いることが出来る。セパレータの厚みは2〜75μmが好ましく、4〜50μmがより好ましい。さらにセパレータの厚みは基材より薄い方が好ましい。セパレータの厚みが上記範囲より薄いと、液体受容層の塗布・貼り合わせ工程やスリット工程等でセパレータにシワが発生したり、迷い巻き等が発生しやすくなる。セパレータの厚みが上記範囲より厚いと、液体受容層の塗布・貼り合わせ工程やスリット工程等でセパレータが浮き、迷い巻き等が発生しやすくなる。
【0019】
セパレータを積層した液体展開用シートは、通常のラミネート法と同様にして製造される。すなわち、第1巻き出し部から基材を巻き出し、液体受容層を塗布・乾燥後、第2巻き出し部からセパレータを巻き出し貼り合わせることにより製造される。
【0020】
セパレータの中心線平均粗さは、15nm以上500nm以下であり、20nm以上400nm以下であることが好ましい。セパレータの山数は、70個/0.1mm2以上500個/0.1mm2以下であり、80個/0.1mm2以上400個/0.1mm2以下であることが好ましい。中心線平均粗さ及び山数が上記範囲より低いと、液体受容層の塗布・貼り合わせ工程時に、セパレータが巻き込んだ空気が抜けきらず、セパレータが浮き、シワが発生したり、迷い巻き等が発生しやすくなる。また、中心線平均粗さ及び山数が上記範囲より高いと、液体受容層に擦り傷等が発生し易くなる。
【0021】
セパレータの中心線平均粗さが20nm以上400nm以下及び山数が80個/0.1mm2以上400個/0.1mm2以下であることが特に好ましい。
【0022】
本発明の液体展開用シートは、血液や尿等の生体試料や食品工業における原料や製品、果汁等の試料中に含まれる特定成分の検査・定量する際に用いられ、中でも好適には、血液や尿等の生体液の特定成分を検査・定量する際に用いられる生体液展開用シートとして用いられる。
【0023】
本発明の液体展開用シートにおいて、液体受容層の表面抵抗値は1×1012Ω以下が好ましく、5×1011Ω以下がより好ましい。表面抵抗値が上記範囲内であれば、液体の濡れ性・展開性、電気伝導性が適度にたもたれ、測定精度や測定時間が適切となり好ましい。
【0024】
液体受容層の臨界表面張力は35mN/m以上であることが好ましく、より好ましくは40mN/m以上である。臨界表面張力が上記範囲より低いと、液体の濡れ性・展開性が悪化し、液体が測定極まで浸透せずに値が測定できなくなり好ましくない。
【0025】
液体受容層の付着量は0.1〜5g/m2であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5g/m2である。付着量が上記範囲であれば加工時の擦り傷等により付着層の脱落や、ピンホールが発生しにくくなり、測定精度がたもちやすくなる。また、作業性が悪くなったり、ブロッキングを生じにくくなり好ましい。
【0026】
本発明の液体展開用シートの液体受容層は、有機系バインダーや無機系バインダー等を塗布した塗膜で構成される。
【0027】
本発明の液体受容層は、例えば、液体受容層を構成する成分を含む塗布液を基材に塗布し塗膜とすることで形成することができる。塗布液は、例えば、バインダーと界面活性剤を混合して、トルエンやメチルエチルケトン(MEK)等の有機溶剤や水等の溶媒で所望の濃度に希釈して得ることができる。
【0028】
塗布液の塗布方法は特に限定されないが、グラビアコート法、リバースコート法、キスコート法、ダイコート法、およびバーコート法などの方法を用いることができる。この際、基材上には塗布液を塗布する前に、必要に応じて空気中あるいはそのほかの雰囲気中でのコロナ放電処理や、プライマー処理などの表面処理を施すことによって、塗布性が良化するのみならず、液体受容層をより強固に基材上に形成することができる。なお、塗布液濃度、塗膜乾燥条件は特に限定されるものではないが、塗膜乾燥条件は基材の諸特性に悪影響を及ぼさない範囲で行なうことが望ましい。
【0029】
【実施例】
本発明における特性の評価方法について次に説明する。
【0030】
(1)中心線平均粗さ(SRa)、山数(SPc)
3次元表面粗さ計(小坂研究所製,ET−30HK)を用い、触針法により測定を行った。SRa(単位:nm)は中心面(この平面と粗さ曲面が作る体積が、この面の上下で等しくなる)に対する3次元の平均粗さであり、SPc(単位:個/0.1mm2)は粗さ曲面の中心面に平行で距離が6.25nmである平面を中心線の上下に設け、上下の2平面とも山と認めた山数を計測し、0.1mm2当たりに換算して表した物である。触針は2μmR、カットオフ250μmで測定した。
【0031】
(2)表面抵抗値
東京電気(株)製のHI−レジスタンス テスター モデル TR−2)(HI−RESISTANCE TESTER MODEL TR−2)を用いて測定した。
【0032】
(3)臨界表面張力
JIS−K6768に準じ、濡れ指数標準液(和光純薬工業(株)製)を用いて測定した。
【0033】
(4)付着量
塗布液を塗布した基材100cm2の重量を測定し(A)、次に塗布前の基材100cm2の重量を測定し(B)、(A−B)×100で付着量(g/m2)を算出した。
【0034】
(5)液体の濡れ性・展開性
ライフ テクノロジーズ(LIFE TECHNOLOGIES)社製の牛胎児血清0.05mlを液体受容層面に滴下し、滴下5秒後の血清の広がり状態で血液の濡れ性・展開性を判定した。判定基準は次のとおりである。
血清の広がり10mm以上 : ○
血清の広がり 9mm以下 : ×
(実施例1)
東レ(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラー”(タイプ100T60)を基材とし、また、塗布液として、ポリエステル樹脂(バインダー)(高松油脂(株)製 ペスレジンS140)とカチオン系界面活性剤(東邦化学工業(株)製 アンステックスC−200X)及びアセチレングリコール類のエチレンオキサイド付加物界面活性剤(日信化学工業(株)製 オルフィンE1004)を、固形分比で100/10/2の割合で調合し、トルエン/MEK=1/1で15%に希釈したものを用意した。
15%に希釈した塗布液をグラビアコータにて基材に塗布し、120℃で30秒乾燥し、セパレータとして東レ(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラー”(SRa:31.1nm,SPc:109.4個/0.1mm2)を積層して巻き取った本発明の液体展開用シ−トを得た。セパレータの浮きやシワ発生もなく問題なく巻き取れた。乾燥後の付着量は1.5g/m2であった。得られた液体展開用シートの特性は、表1に示したとおり、液体の濡れ性・展開性(血清の広がり17mm)が優れたものであった。
【0035】
(実施例2)
実施例1において、カチオン系界面活性剤の代わりにアニオン系界面活性剤(三洋化成工業(株)製 ケミスタット3500)を用いた以外は、同様にして、本発明の液体展開用シ−トを得た。セパレータの浮きやシワ発生もなく問題なく巻き取れた。乾燥後の付着量は1.5g/m2であった。得られた液体展開用シートの特性は表1に示したとおり、液体の濡れ性・展開性(血清の広がり18mm)が優れたものであった。
【0036】
(実施例3)
実施例1において、カチオン系界面活性剤の代わりに非イオン系界面活性剤(三洋化成工業(株)製 ケミスタット2500)を用いた以外は、同様にして、本発明の液体展開用シ−トを得た。セパレータの浮きやシワ発生もなく問題なく巻き取れた。乾燥後の付着量は1.5g/m2であった。得られた液体展開用シートの特性は表1に示したとおり、液体の濡れ性・展開性(血清の広がり15mm)が優れたものであった。
【0037】
(実施例4)
実施例1において、セパレータとして東レ(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラー”(SRa:83.5nm,SPc:152.7個/0.1mm2)を用いた以外は同様にして本発明の液体展開用シ−トを得た。セパレータの浮きやシワ発生もなく問題なく巻き取れた。乾燥後の付着量は1.5g/m2であった。得られた液体展開用シートの特性は、表1に示したとおり、液体の濡れ性・展開性(血清の広がり17mm)が優れたものであった。
【0038】
(実施例5)
実施例1において、セパレータとして東レ(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラー”(SRa:102.5nm,SPc:212.4個/0.1mm2)を用いた以外は同様にして本発明の液体展開用シ−トを得た。セパレータの浮きやシワ発生もなく問題なく巻き取れた。乾燥後の付着量は1.5g/m2であった。得られた液体展開用シートの特性は、表1に示したとおり、液体の濡れ性・展開性(血清の広がり17mm)が優れたものであった。
【0039】
(比較例1)
実施例1において、セパレータを積層しない液体展開用シートを得た。得られた液体展開用シートは基材の裏面に液体受容層が薄く転写し、液体の濡れ性・展開性(血清の広がり17mm)が裏面にも発現し、生体液の検査用チップとして組み込んだ時に、生体液が裏面にも拡がり、測定精度等に重大な問題が発生するものであった。
【0040】
(比較例2)
実施例1において、セパレータとして東レ(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム“ルミラー”(SRa:10.3nm,SPc:62.3個/0.1mm2)を用いた以外は同様にして液体展開用シートを得た。セパレータを積層して巻き取るとき、セパレータが巻き込んだ空気が抜けきらず、セパレータが浮き、シワが発生したり、迷い巻き等が発生した。
【0041】
【表1】
【0042】
本発明の液体受容層を設けてなる液体展開用シ−ト製造方法によれば、液体受容層の裏面への転写もなく、該液体受容層は液体の濡れ性・展開性が非常に優れた液体展開用シ−トが得られ、これは特に血液や尿等生体液の検査用として好ましく用いられる。さらには、食品の原料や製品中の特定成分の検査用などの用途においても好ましく用いることができる。
Claims (4)
- 基材の片面に界面活性剤を少なくとも1種含有する液体受容層を設けてなる液体展開用シートにおいて、該液体受容層を形成後、該液体受容層側に、中心線平均粗さが15〜500nm及び山数が70〜500個/0.1mm2であるセパレータを積層して巻き取ることを特徴とする液体展開用シートの製造方法。
- セパレータの厚みが2〜75μmであることを特徴とする請求項1記載の液体展開用シートの製造方法。
- セパレータの厚みが基材の厚みより薄いことを特徴とする請求項1または2記載の液体展開用シートの製造方法。
- 基材およびセパレータがプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体展開用シートの製造方法。
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