以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
<実施の形態1>
図1ないし図10に基づいて、本実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置の概略構成を模式的に示す模式断面図である。なお、断面に対するハッチングは図面の見やすさを考慮して省略してある(以下の図でも同様とする)。
本実施の形態に係る半導体装置20は、一例として例えば化合物半導体MOS構造とした電界効果トランジスタ(MOSFET)である。
半導体装置20は、基板21に対して順次積層されたバッファ層22、下地化合物半導体層23f(下地化合物半導体層23)、インパクトイオン制御層24、下地化合物半導体層23s(下地化合物半導体層23)、チャネル画定化合物半導体層26f(チャネル画定化合物半導体層26)、中間層27、チャネル画定化合物半導体層26s(チャネル画定化合物半導体層26)、キャップ層29を備えている。
以下では、下地化合物半導体層23fと下地化合物半導体層23sとを特に区別する必要がないときは、単に下地化合物半導体層23とすることがある。また、チャネル画定化合物半導体層26fおよびチャネル画定化合物半導体層26sを併せてチャネル画定化合物半導体層26と記載することがある。
チャネル画定化合物半導体層26fには、チャネル画定化合物半導体層26sの自発分極とピエゾ分極の作用によって2次元電子ガス層2DEGが形成される。つまり、チャネル画定化合物半導体層26fは、チャネル層(チャネル)として機能し、チャネル画定化合物半導体層26sは、2次元電子ガス層2DEGに対する障壁層として機能する。
また、チャネル画定化合物半導体層26fとチャネル画定化合物半導体層26sの間に形成された中間層27は、チャネル画定化合物半導体層26sによる2次元電子ガス層2DEGに対する合金散乱の影響を緩和する。
基板21は、結晶面方位(111)の高濃度p形Si基板であり、バッファ層22は、膜厚2.8μmのGaN/AlN(窒化ガリウム/窒化アルミニウム)超格子バッファ層であり、下地化合物半導体層23fは、膜厚1.95μmのAl0.05Ga0.95N(窒化アルミニウムガリウム:AlGaN)層であり、インパクトイオン制御層24は、膜厚50nmのIn0.1Ga0.9N(窒化インジウムガリウム)層であり、下地化合物半導体層23sは、膜厚425nmのAl0.05Ga0.95N層であり、チャネル画定化合物半導体層26fは、膜厚50nmのGaN層であり、中間層27は、膜厚1nmのAlN層であり、チャネル画定化合物半導体層26sは、膜厚23nmのAl0.25Ga0.75N(AlGaN)層であり、キャップ層29は、膜厚1nmのGaN層である。
つまり、本実施の形態に係る半導体装置20は、基板21と、基板21に積層されて下地を構成する下地化合物半導体層23(下地化合物半導体層23fおよび下地化合物半導体層23s)と、下地化合物半導体層23に積層されてチャネルを画定するチャネル画定化合物半導体層26(チャネル画定化合物半導体層26fおよびチャネル画定化合物半導体層26s)とを備える。なお、中間層27は、2次元電子ガス層2DEGの形成自体にはほとんど寄与しないことからチャネル画定化合物半導体層26には含めない。
また、半導体装置20は、下地化合物半導体層23の積層範囲(積層範囲の厚さTst)内に積層されてインパクトイオン化現象の発生位置を制御するインパクトイオン制御層24を備える。下地化合物半導体層23は、第1化合物半導体(AlGaN、例えばAl0.05Ga0.95N)で形成され、チャネル画定化合物半導体層26は、第2化合物半導体(GaN、AlGaN例えばAl0.25Ga0.75N)で形成され、インパクトイオン制御層24は、第1化合物半導体のバンドギャップより小さいバンドギャップを有する第3化合物半導体(InGaN、例えばIn0.1Ga0.9N)で形成されている。
したがって、半導体装置20は、インパクトイオン化現象の発生位置を容易かつ高精度に制御し、発生した電子・正孔を効率よく吸収することが可能となる。すなわち、ドレイン電極32の近傍でインパクトイオン化現象によって発生した正孔は、バッファ層22と下地化合物半導体層23fとの界面に沿ってソース電極31側へ走行し、ソース電極31に吸収される。また、インパクトイオン化現象によって発生した電子は、ドレイン電極32へ吸収される。
つまり、インパクトイオン化現象によって発生した電子・正孔のキャリア信号に対する影響を抑制して正常な動作特性と高い信頼性を実現することができる。なお、インパクトイオン制御層24の作用については、シミュレーションによって確認することが可能であり、シミュレーション結果の詳細については、図9、図10で説明する。
なお、インパクトイオン制御層24の自発分極が大きい場合、自発分極による電界は大きくなることから、インパクトイオン化現象が発生しやすくなり、また、パラレルコンダクションによるリーク電流は大きくなる。他方、インパクトイオン制御層24の自発分極が小さい場合、自発分極が大きいインパクトイオン制御層に比べてインパクトイオン化現象は発生しにくくなり、また、パラレルコンダクションによるリーク電流は小さくなる。したがって、インパクトイオン制御層24の自発分極は、動作特性を安定化させるためには小さい方が望ましい。
チャネル画定化合物半導体層26f、中間層27、チャネル画定化合物半導体層26s、キャップ層29には、表面からのイオン注入によって形成されたイオン注入領域30がソース領域30s、ドレイン領域30dとして形成されている。イオン注入領域30には、高濃度のn型不純物が導入されている。以下では、ソース領域30sおよびドレイン領域30dを特に区別する必要がないときは、単にイオン注入領域30とすることがある。
キャップ層29にはソース領域30sに接合(オーミックコンタクト)されたソース電極31、ドレイン領域30dに接合(オーミックコンタクト)されたドレイン電極32が形成されている。また、ドレイン電極32には、さらにドレインフィールド電極35が接続され、ドレイン領域30dでの電界強度の抑制を図っている。
ソース領域30sとドレイン領域30dとの間には、溝状に形成されたリセス部33が配置され、リセス部33の表面(底面、側面)にはゲート絶縁膜33gが形成され、ゲート絶縁膜33gには、ゲート電極34が重ねて形成されている。ゲート絶縁膜33gは、SiO2で形成され、MOS型とされている。つまり、半導体装置20は、横型のMOS(金属−酸化物−半導体)電界効果トランジスタ(MOSFET)としてある。
なお、ゲート絶縁膜を酸化膜以外のもので構成したMIS(金属−絶縁物−半導体)電界効果トランジスタ(MISFET)とすることも可能である。また、絶縁膜の構造は、他の構造であっても良い。例えば、複数の絶縁膜を積層した場合、高誘電体絶縁膜を適用した場合など、種々の形態とすることができる。
ソース電極31、ドレイン電極32、ゲート電極34の間には、キャップ層29(半導体装置20)を被覆して保護する表面保護膜36が形成されている。
基板21としては、Siの他に、結晶性金属酸化物(例えばAl2O3、ZnO、MgOなど)、IV族の2元混晶(例えばSiC)の単結晶、III−V族化合物(例えばGaAs、InAsなど)の単結晶、II−VI族化合物(ZnSeなど)の単結晶、ガラス(例えば石英ガラス、MESAガラスなど)などを適用することが可能である。また、バッファ層22としては、アモルファス状の物質(例えばAlN、GaN、Si、SiCなど)、あるいは単結晶物質(例えばAlN、ZnO、SiC)を適用することができる。
上述したとおり、半導体装置20は、チャネル画定化合物半導体層26(チャネル画定化合物半導体層26fおよびチャネル画定化合物半導体層26s)に対応して形成されたゲート絶縁膜33gと、ゲート絶縁膜33gに対応して形成されたゲート電極34と、ゲート電極34の一方に配置されたソース電極31と、ゲート電極34の他方にソース電極31に対応して配置されたドレイン電極32とを備える。
この構成により、半導体装置20(電界効果トランジスタ)は、横型の電界効果トランジスタでのインパクトイオン化現象の発生位置を制御し、チャネルでゲート電極34に対応してインパクトイオン化現象が発生する前にドレイン領域の近傍でインパクトイオン化現象を発生させることが可能となる。したがって、半導体装置20は、ドレイン領域の近傍で発生させた電子/正孔をドレイン/ソースで吸収することが可能となるので、インパクトイオン化現象によるチャネルでの正孔の蓄積を防止して正常な動作特性を実現することができる。
下地化合物半導体層23fの膜厚に比較して下地化合物半導体層23sの膜厚が厚いと、下地化合物半導体層23sで電界が広がって電界強度が低下し、ドレイン領域30dの近傍でのインパクトイオン化現象が発生しにくくなる。
したがって、インパクトイオン制御層24は、下地化合物半導体層23fと下地化合物半導体層23sとの中間よりチャネル画定化合物半導体層26f(チャネル画定化合物半導体層26)の側に配置することが望ましい。
本実施の形態では、下地化合物半導体層23fの膜厚は、1.95μmであり、下地化合物半導体層23sの膜厚は、425nmであり、膜厚50nmのインパクトイオン制御層24は、下地化合物半導体層23fと下地化合物半導体層23sとに挟まれた構成としてある。
つまり、インパクトイオン制御層24は、下地化合物半導体層23の積層範囲(積層範囲の厚さTst=1.95μm+425nm+50nm=2.425μm)の中間(積層範囲で端から約1.2μmの位置)よりチャネル画定化合物半導体層26fの側に配置されていることが望ましい。
この構成により、チャネル画定化合物半導体層26fの側に配置された下地化合物半導体層23sでの電界強度の低下を抑制して例えば電界効果トランジスタのドレイン領域30dの近傍でインパクトイオン化現象を確実に発生させることが可能となる(図9参照)ので、正常な動作特性を有する半導体装置20を容易に実現することができる。
下地化合物半導体層23fの膜厚と下地化合物半導体層23sの膜厚とを足した厚さ(2.375μm)は、必要な電界強度を発生させるのに必要な厚さとなるように形成される。下地化合物半導体層23の厚さが必要な厚さに対して不十分であると、インパクトイオン化現象によって発生した正孔がゲート絶縁膜33gに衝突してソース領域30sに届かなくなり、インパクトイオン制御層24による作用を発生させることが困難となる。
また、基板21が非絶縁性基板(例えばSi基板)であるとき、下地化合物半導体層23の電界は、基板21からの電界の影響を受けて変動する。つまり、インパクトイオン制御層24を安定して作用させるためには、基板21からの下地化合物半導体層23に対する電界の影響を抑制することが必要である。
したがって、下地化合物半導体層23fの膜厚および下地化合物半導体層23sの膜厚の和をバッファ層22の膜厚の半分より大きくすることによって、下地化合物半導体層23に必要な厚さを確保して電界強度を確保し、また、基板21からの下地化合物半導体層23に対する電界の影響を抑制して下地化合物半導体層23の電界を安定化することが望ましい。
半導体装置20は、基板21と下地化合物半導体層23との間に配置され結晶格子の整合性を取るバッファ層22を備え、基板21が非絶縁性基板であるとき、下地化合物半導体層23の積層範囲の厚さTst(2.425μm)は、バッファ層22の厚さの半分(2.8μm/2=1.4μm)より大きくしてある。
この構成により、下地化合物半導体層23に必要な膜厚を確保し、バッファ層22を介して基板21(非絶縁性基板)から下地化合物半導体層23に及ぼされる電界の影響を抑制してインパクトイオン化現象の発生を確実に制御することが可能となる。
半導体装置20では、第1化合物半導体(下地化合物半導体層23)は、AlGaN(例えばAl0.05Ga0.95N)である。したがって、AlGaN(Al0.05Ga0.95N)のバンドギャップより小さいバンドギャップを有する第3化合物半導体(InGaN、GaN(実施の形態3参照)、または第1化合物半導体のAlGaNと比べてAl混晶比の小さいAlGaN(実施の形態4参照))は、インパクトイオン制御層24として適用することができる。
つまり、半導体装置20では、第1化合物半導体(下地化合物半導体層23f、下地化合物半導体層23s)は、AlGaNであり、インパクトイオン制御層24を構成する第3化合物半導体は、InGaN、GaN、または第1化合物半導体のAlGaNと比べてAl混晶比の小さいAlGaNのいずれか一つである。この構成により、下地化合物半導体層23およびインパクトイオン制御層24を容易かつ高精度に形成することが可能となる。
なお、AlGaNにおいて、Alの混晶比とバンドギャップの大きさとは相関関係を有することから、AlGaNを適用する場合、バンドギャップ大きさに必要な条件を満たすようにAlの混晶比を選択することが可能である。
チャネル画定化合物半導体層26fは、積層された中間層27(およびチャネル画定化合物半導体層26s)に対してヘテロ接合HJを構成する。つまり、チャネル画定化合物半導体層26は、2次元電子ガス層2DEGが形成されるチャネル層(チャネル画定化合物半導体層26f)と、チャネル層(チャネル画定化合物半導体層26f)に積層され2次元電子ガス層2DEGに対して障壁となる障壁層(チャネル画定化合物半導体層26s)とを備える。この構成により、高密度の2次元電子ガス層2DEGを容易に形成することが可能となり、高周波大電力で動作する半導体装置20とすることができる。
上述したとおり、中間層27、チャネル画定化合物半導体層26sは、チャネル画定化合物半導体層26fに対してヘテロ接合HJを構成する。チャネル画定化合物半導体層26fは、GaNで形成され、中間層27は、AlNで形成され、チャネル画定化合物半導体層26sは、AlGaNで形成されている。GaN(チャネル画定化合物半導体層26f:チャネル層)のバンドギャップは、AlN(中間層27)およびAlGaN(チャネル画定化合物半導体層26s:障壁層)のバンドギャップより小さい。したがって、チャネル画定化合物半導体層26s(AlGaN層)は、チャネル画定化合物半導体層26fに2次元電子ガス層2DEGが形成されたときの障壁となる障壁層として機能する。
なお、2次元電子ガス層2DEGは、チャネル画定化合物半導体層26fにおいて中間層27との境界側に形成される。つまり、チャネル画定化合物半導体層26f(チャネル層)を構成するGaN層にチャネルとしての2次元電子ガス層2DEGを容易に形成することが可能となる。
チャネル画定化合物半導体層26fに対してヘテロ接合HJを構成する中間層27にチャネル画定化合物半導体層26s(障壁層)を積層することによって、自発分極とピエゾ分極に基づく電界を発生させることが可能となり、チャネル画定化合物半導体層26fにおいて中間層27(チャネル画定化合物半導体層26s)との境界側に2次元電子ガス層2DEGを形成することができる。また、キャップ層29の積層により表面状態を制御することができる。
なお、インパクトイオン制御層24とヘテロ接合HJ(2次元電子ガス層2DEG)との間隔は、0.2μmから1.0μmまでの範囲であることが望ましい。この構成により、インパクトイオン制御層24に起因するリーク電流の発生を抑制してインパクトイオン化現象による電子・正孔を効果的に吸収することが可能となるので、安定した動作特性を有する半導体装置20とすることができる。
インパクトイオン制御層24と2次元電子ガス層2DEGとの間隔が0.2μmより小さい場合は、インパクトイオン制御層24とドレイン領域30d(ドレイン電極32)とが近接しすぎてインパクトイオン制御層24が電流のリーク源となる恐れが生じる。また、インパクトイオン制御層24と2次元電子ガス層2DEGとの間隔が1.0μmより大きい場合は、インパクトイオン制御層24とドレイン領域30d(ドレイン電極32)とが離れすぎてインパクトイオン制御層24が十分に作用しなくなる恐れが生じる。
半導体装置20は、表面からヘ2次元電子ガス層2DEGに達する溝で構成されたリセス部33を備える。ゲート電極34に電圧を印加しない状態では2次元電子ガス層2DEGは、リセス部33で遮断され、オフ状態となる。したがって、高精度に制御されたノーマリオフ動作の電界効果トランジスタ(半導体装置20)とすることができる。なお、オン動作は、ゲート絶縁膜33gに正の電圧を印加してチャネル(チャネル層)となるチャネル画定化合物半導体層26fに反転チャネルを発生させて実現する。
上述したとおり、本実施の形態に係る半導体装置20では、第1化合物半導体、第2化合物半導体、第3化合物半導体は、窒化物半導体で構成されていることが望ましい。この構成により、窒化物半導体の優れた特性(高周波特性、大電力特性、高耐圧特性、高温特性)を反映させて、優れた特性(高周波特性、大電力特性、高耐圧特性、高温特性)を有する半導体装置とすることが可能となる。なお、第1化合物半導体、第2化合物半導体、第3化合物半導体は、窒化物半導体に限るものではなく、窒化物半導体以外の化合物半導体を適用することが可能である。
図2ないし図8に基づいて、本実施の形態に係る半導体装置20の製造方法(製造工程)について説明する。
図2は、図1に示した半導体装置の基板上に化合物半導体層を積層し、イオン注入領域を形成した工程での状態を模式的に示す模式断面図である。
基板21に対してバッファ層22、下地化合物半導体層23f(下地化合物半導体層23)、インパクトイオン制御層24、下地化合物半導体層23s(下地化合物半導体層23)、チャネル画定化合物半導体層26f、中間層27、チャネル画定化合物半導体層26s、キャップ層29が積層されている。
なお、これらの各層は、分子線エピタキシ(MBE)法、あるいは、有機金属器層成長法(MOCVD)法などを適用して形成することができる。
キャップ層29の上に、イオン注入保護膜として例えば膜厚25nmのSiNx(窒化シリコン)を堆積し、さらにレジストを塗布する。塗布したレジストに対してパターニングを施し、ソース領域30s、ドレイン領域30dに対応する開口を形成する。パターニングしたレジストをマスクとし、50keVのエネルギーで1×1014/cm2〜1×1016/cm2のシリコン同位体28Siをイオン注入する。
レジスト、イオン注入保護膜を剥離した後、活性化保護膜として例えば膜厚50nmのSiNxを堆積し、1100〜1300℃にて活性化アニールを行なうことで、活性化させたイオン注入領域30(ソース領域30s、ドレイン領域30d)を形成する。なお、イオン注入領域30に注入されるターゲットとして、シリコン同位体28Siの他に、シリコン同位体29Si、30Si、酸素同位体16O、17O、18Oなどのn形ドーパントを用いることができる。
図3は、図2に示した工程の後、ソース電極およびドレイン電極を形成した工程での状態を模式的に示す模式断面図である。
キャップ層29の表面にTi(チタン)を膜厚30nm、Al(アルミニウム)を膜厚100nm、およびAu(金)を膜厚200nmとして順次蒸着する。蒸着したTi/Al/Auをリフトオフ法若しくはエッチングによりパターニングしてソース電極31およびドレイン電極32を形成する。その後、窒素雰囲気中にて500℃〜900℃のアニールを行なうことで優れたオーミック特性を得る。
図4は、図3に示した工程の後、ソース電極およびドレイン電極の間に表面保護膜を形成した工程での状態を模式的に示す模式断面図である。
ソース電極31およびドレイン電極32を形成した後、ソース電極31とドレイン電極32との間のキャップ層29の表面(化合物半導体層の表面)に、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)を適用してSiNxを膜厚300nm堆積し、例えば屈折率が2.0である表面保護膜36を形成する。
図5は、図4に示した工程の後、表面保護膜を階段状に加工した工程での状態を模式的に示す模式断面図である。
表面保護膜36をパターニングし、リセス部33(図6参照)を形成する領域に対応させて表面開口部36wを形成する。また、表面開口部36wのドレイン側に段差部36sg、ドレイン電極32のゲート側に段差部36sdを形成する。段差部36sg、段差部36sdは、表面保護膜36を横方向に0.5μm〜2μm程度、積層方向に150nm程度エッチングすることによって形成される。
図6は、図5に示した工程の後、リセス部を形成した工程での状態を模式的に示す模式断面図である。
表面開口部36wの中央部で化合物半導体層をドライエッチングによって除去し、表面からの深さ50nmの溝で形成されたリセス部33を形成する。つまり、膜厚1nmのキャップ層29、膜厚23nmのチャネル画定化合物半導体層26s、膜厚1nmの中間層27を貫通して、チャネル画定化合物半導体層26fの中央部に至る溝を形成する。
図7は、図6に示した工程の後、リセス部に酸化膜を形成した工程での状態を模式的に示す模式断面図である。
リセス部33の表面(底面、側面)を被覆し、表面開口部36wの底面を被覆するゲート絶縁膜33gを形成する。ゲート絶縁膜33gは、スパッタによりSiO2を膜厚25nm堆積した後、適宜のパターニングを施して形成される。
図8は、図7に示した工程の後、ゲート電極、ドレインフィールド電極を形成した工程での状態を模式的に示す模式断面図である。
WN(窒化タングステン)、Auをそれぞれ50nmずつ蒸着し、リフトオフ法若しくはエッチングによりゲート電極34およびドレインフィールド電極35を形成する。なお、ゲート電極34は、段差部36sgを超えてドレイン領域30dの側の表面保護膜36を被覆するように形成され、ドレインフィールド電極35は、段差部36sdを超えてゲート電極34の側の表面保護膜36を被覆するように形成される。
図9および図10に基づいて、インパクトイオン制御層24の作用に対するシミュレーション結果を説明する。
図9は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置でのインパクトイオン化現象の発生状況をシミュレーションした結果を示す模式図である。なお、実際の寸法を考慮するとチャネル画定化合物半導体層26f、中間層27、チャネル画定化合物半導体層26s、キャップ層29は、図示が困難であるので2次元電子ガス層2DEGのみを代表的に記載している。
図10は、インパクトイオン制御層のない従来の半導体装置(比較半導体装置)でのインパクトイオン化現象の発生状況をシミュレーションした結果を示す模式図である。
なお、図9、図10は、いずれもソース・ドレイン間に電圧1250Vを印加したときのシミュレーション結果である。つまり、電界の状態(等電位線)と、インパクトイオン化現象によって発生した電子、正孔の移動状況を示す。また、電子、正孔の移動状況を表すために、積層方向の寸法を横方向の寸法に比べて拡大してある。
本実施の形態に係る半導体装置20(図9)は、インパクトイオン制御層24を備える。したがって、ゲート電極34に対応する領域のチャネルでインパクトイオンが発生する前にドレイン領域30dの近傍(インパクトイオン発生位置Pii)でインパクトイオン化現象を発生させることができる。
つまり、半導体装置20は、従来のインパクトイオン化現象が発生する位置であるゲート電極34に対応する領域のチャネルでの電界を緩和させることから、インパクトイオン化現象は、ドレイン電極32(ドレイン領域30d)の近傍で発生しやすくなり、インパクトイオン発生位置Piiは、従来の場合に比較してドレイン領域30dの近傍に移動する。なお、半導体装置20のインパクトイオン発生位置Piiでは、電界強度は、5.1MV/cmであり、ソース・ドレイン間での最高電界強度を示していた。
インパクトイオン発生位置Piiで発生した電子は、ドレイン領域30d(ドレイン電極32の電位)に起因する電界によって吸引されることから電子流Fieとなってドレイン領域30dに流入し、インパクトイオン発生位置Piiで発生した正孔は、ドレイン領域30d(ドレイン電極32の電位)に起因する電界に対して反発することから正孔流Fihとなって下地化合物半導体層23fとバッファ層22との境界に達し、この境界を介してドレイン領域30dの側からソース領域30sの側へ移動し、ソース領域30s(ソース電極31)へ吸収される。
つまり、インパクトイオン化現象によって発生した電子は、ドレイン領域30d(ドレイン電極32)へ吸収され、インパクトイオン化現象によって発生した正孔は、ソース領域30s(ソース電極31)へ吸収される。したがって、正孔がゲート電極34(ゲート絶縁膜33g)に対応する領域に蓄積されることが無いことから、半導体装置20(電界効果トランジスタ)の閾値Vthの変動を抑制し、動作特性を安定化させて信頼性を向上させることができる。
本実施の形態に係る半導体装置20に対して、従来の比較半導体装置320(図10)は、インパクトイオン制御層を持たないので、インパクトイオン化現象は、ゲート電極334(ゲート絶縁膜333g)に対応する領域(インパクトイオン発生位置Pii)で発生する。つまり、インパクトイオン発生位置Piiは、ゲート電極334(ゲート絶縁膜333g)に対応する領域に存在する。なお、比較半導体装置320のインパクトイオン発生位置Piiでは、電界強度は、4.1MV/cmであり、ソース・ドレイン間での最高電界強度を示していた。
インパクトイオン発生位置Piiで発生した電子は、電子流Fieとなって表面を流れドレイン領域30dに流入する。他方、インパクトイオン発生位置Piiで発生した正孔は、ゲート電極334に対応するチャネルに溜まるがゲート絶縁膜333gがあることからゲート電極334に吸収されることはない。つまり、インパクトイオン発生位置Piiで発生した正孔は、ゲート電極334に対応するチャネルに溜まることとなるので、閾値Vthを変動させ、動作特性を不安定にし、信頼性を低下させることになる。
本実施の形態の構成要素は、他の実施の形態と適合できる範囲で適宜組み合わせることが可能である。
本実施の形態では、半導体装置20は、横型のMOSFETである場合を例示した。本発明は、これに限らず、電界効果トランジスタ(FET)以外の横型の半導体装置に適用した場合でも、インパクトイオン化現象の発生位置を制御することが可能である。つまり、従来のインパクトイオン化現象が発生する位置の電界を緩和することが可能である。
<実施の形態2>
図11に基づいて、本実施の形態に係る半導体装置について説明する。なお、インパクトイオン化現象の発生、作用は、実施の形態1で説明したとおりであり、基本的な構成は半導体装置20と同様であるので、主に異なる事項について説明する。
図11は、本発明の実施の形態2に係る半導体装置の概略構成を模式的に示す模式断面図である。
本実施の形態に係る半導体装置40は、一例として例えば化合物半導体MOS構造とした電界効果トランジスタである。
半導体装置40は、基板41に対して順次積層されたバッファ層42、下地化合物半導体層43f(下地化合物半導体層43)、インパクトイオン制御層44、下地化合物半導体層43s(下地化合物半導体層43)、中間層45、チャネル画定化合物半導体層46、キャップ層49を備えている。
以下では、下地化合物半導体層43fと下地化合物半導体層43sとを特に区別する必要がないときは、単に下地化合物半導体層43とすることがある。
基板41は、結晶面方位(0001)のサファイア基板であり、バッファ層42は、膜厚20nmのGaNバッファ層であり、下地化合物半導体層43fは、膜厚3μmのGaN層であり、インパクトイオン制御層44は、膜厚50nmのIn0.1Ga0.9N(InGaN)層であり、下地化合物半導体層43sは、膜厚1μmのGaN層であり、中間層45は、膜厚1nmのAlN層であり、チャネル画定化合物半導体層46は、膜厚20nmのAl0.2Ga0.8N(AlGaN)層であり、キャップ層49は、膜厚1nmのGaN層である。
なお、中間層45、キャップ層49のそれぞれの機能は実施の形態での中間層27、キャップ層29に準じたものとなる。また、実施の形態1に係るチャネル画定化合物半導体層26は、チャネル層と障壁層とを備えた形態としたが、本実施の形態に係るチャネル画定化合物半導体層46は、下地化合物半導体層43にチャネル層を形成する形態としてある点で異なる。実施の形態1との関係は、以下の実施の形態でも同様であり、適宜説明を省略することがある。
つまり、本実施の形態に係る半導体装置40は、基板41と、基板41に積層されて下地を構成する下地化合物半導体層43(下地化合物半導体層43fおよび下地化合物半導体層43s)と、下地化合物半導体層43に積層されてチャネルを画定するチャネル画定化合物半導体層46とを備える。
また、半導体装置40は、地化合物半導体層43の積層範囲(積層範囲の厚さTst)内に積層されてインパクトイオン化現象の発生位置を制御するインパクトイオン制御層44を備える。下地化合物半導体層43は、第1化合物半導体(GaN)で形成され、チャネル画定化合物半導体層46は、第2化合物半導体(AlGaN)で形成され、インパクトイオン制御層44は、第1化合物半導体のバンドギャップより小さいバンドギャップを有する第3化合物半導体(InGaN、例えばIn0.1Ga0.9N)で形成されている。
したがって、半導体装置40は、インパクトイオン化現象の発生位置を容易かつ高精度に制御し、発生した電子・正孔を効率よく吸収することが可能となる。すなわち、ドレイン電極52の近傍でインパクトイオン化現象によって発生した正孔は、バッファ層42と下地化合物半導体層43fとの界面に沿ってソース電極51側へ走行し、ソース電極51に吸収される。また、インパクトイオン化現象によって発生した電子は、ドレイン電極52へ吸収される。
つまり、インパクトイオン化現象によって発生した電子・正孔のキャリア信号に対する影響を抑制して正常な動作特性と高い信頼性を実現することができる。
半導体装置40には、キャップ層49に接合(オーミックコンタクト)されたソース電極51、ドレイン電極52が形成されている。したがって、ソース電極51、ドレイン電極52に対応する中間層45、チャネル画定化合物半導体層46、キャップ層49には、ソース領域、ドレイン領域が構成される。ソース電極51とドレイン電極52との間には、キャップ層49にゲート絶縁膜53gが積層して形成され、ゲート絶縁膜53gには、ゲート電極54が重ねて形成されている。
ゲート絶縁膜53gは、膜厚20nmのSiO2で形成され、ゲート電極54は、膜厚50nmのNiに膜厚50nmのAuを重ねて形成され、MOS型とされている。つまり、半導体装置40は、横型のMOS電界効果トランジスタとしてある。
ソース電極51、ドレイン電極52、ゲート電極54の間には、キャップ層49(半導体装置40)を被覆して保護する表面保護膜56が形成されている。表面保護膜56は、プラズマCVDを用いて堆積したSiNxであり、例えば屈折率は2.0である。
ソース電極51、ドレイン電極52、ゲート絶縁膜53g、ゲート電極54、表面保護膜56などは、実施の形態1と同様に形成することが可能であり、詳細な説明は省略する。
上述したとおり、半導体装置40は、チャネル画定化合物半導体層46に対応して形成されたゲート絶縁膜53gと、ゲート絶縁膜53gに対応して形成されたゲート電極54と、ゲート電極54の一方に配置されたソース電極51と、ゲート電極54の他方にソース電極51に対応して配置されたドレイン電極52とを備える。
この構成により、半導体装置40(電界効果トランジスタ)は、横型の電界効果トランジスタでのインパクトイオン化現象の発生位置を制御し、チャネルでゲート電極54に対応してインパクトイオン化現象が発生する前にドレイン領域の近傍でインパクトイオン化現象を発生させることが可能となる。したがって、半導体装置40は、ドレイン領域の近傍で発生させた電子/正孔をドレイン/ソースで吸収することが可能となるので、インパクトイオン化現象によるチャネルでの正孔の蓄積を防止して正常な動作特性を実現することができる。
下地化合物半導体層43fの膜厚に比較して下地化合物半導体層43sの膜厚が厚いと、下地化合物半導体層43sで電界が広がって電界強度が低下し、ドレイン領域の近傍でのインパクトイオン化現象が発生しにくくなる。
したがって、インパクトイオン制御層44は、下地化合物半導体層43fと下地化合物半導体層43sとの中間よりチャネル画定化合物半導体層46の側に配置することが望ましい。
本実施の形態では、下地化合物半導体層43fの膜厚は、3μmであり、下地化合物半導体層43sの膜厚は、1μmであり、膜厚50nmのインパクトイオン制御層44は、下地化合物半導体層23fと下地化合物半導体層23sとに挟まれた構成としてある。
つまり、インパクトイオン制御層44は、下地化合物半導体層43の積層範囲(積層範囲の厚さTst=3μm+50nm+1μm=4.05μm)の中間(積層範囲で端から約2μmの位置)よりチャネル画定化合物半導体層46の側に配置されていることが望ましい。
この構成により、チャネル画定化合物半導体層46の側に配置された下地化合物半導体層43sでの電界強度の低下を抑制して例えば電界効果トランジスタのドレイン領域の近傍でインパクトイオン化現象を確実に発生させることが可能となるので、正常な動作特性を有する半導体装置40を容易に実現することができる。
下地化合物半導体層43fの膜厚と下地化合物半導体層43sの膜厚とを足した厚さ(4μm)は、必要な電界強度を発生させるのに必要な厚さとなるように形成される。下地化合物半導体層43の厚さが必要な厚さに対して不十分であると、インパクトイオン化現象によって発生した正孔がゲート絶縁膜53gに衝突してソース領域に届かなくなり、インパクトイオン制御層44による作用を発生させることが困難となる。
半導体装置40では、第1化合物半導体(下地窒化物半導体層43)は、GaNである。したがって、GaNのバンドギャップより小さいバンドギャップを有する第3化合物半導体(InGaN、例えばIn0.1Ga0.9N)は、インパクトイオン制御層44として適用することができる。
つまり、半導体装置40では、第1化合物半導体(下地化合物半導体層43f、下地化合物半導体層43s)は、GaNであり、インパクトイオン制御層44を構成する第3化合物半導体は、InGaNである。この構成により、下地化合物半導体層43およびインパクトイオン制御層44を容易かつ高精度に形成することが可能となる。
中間層45(およびチャネル画定化合物半導体層46)は、下地化合物半導体層43(下地化合物半導体層43s)に対してヘテロ接合HJを構成する。つまり、チャネル画定化合物半導体層46は、下地化合物半導体層43(下地化合物半導体層43s)に形成された2次元電子ガス層2DEGに対して障壁となる障壁層である。この構成により、高密度の2次元電子ガス層2DEGを容易に形成することが可能となり、高周波大電力で動作する半導体装置40を形成することができる。
下地化合物半導体層43(下地化合物半導体層43s)は、GaNで形成され、中間層45は、AlNで形成され、チャネル画定化合物半導体層46は、AlGaN(Al0.2Ga0.8N)で形成されている。GaN(下地化合物半導体層43)のバンドギャップは、AlN(中間層46)およびAlGaN(チャネル画定化合物半導体層46)のバンドギャップより小さい。したがって、チャネル画定化合物半導体層46は、下地化合物半導体層43sに2次元電子ガス層2DEGが形成されたときの障壁となる障壁層として機能する。
なお、2次元電子ガス層2DEGは、下地化合物半導体層43sにおいて中間層45(チャネル画定化合物半導体層46)との境界側に形成される。つまり、下地化合物半導体層43(下地化合物半導体層43s)を構成するGaN層にチャネルとしての2次元電子ガス層2DEGを容易に形成することが可能となる。
下地化合物半導体層43に対してヘテロ接合HJを構成する中間層45にチャネル画定化合物半導体層46(障壁層)を積層することによって、自発分極とピエゾ分極に基づく電界が生じ、下地化合物半導体層43s(下地化合物半導体層43)においてチャネル画定化合物半導体層46との境界側に2次元電子ガス層2DEGが形成される。また、キャップ層49の積層により表面状態と閾値を制御することができる。
インパクトイオン制御層44とヘテロ接合HJ(2次元電子ガス層2DEG)との間隔は、0.2μmから1.0μmまでの範囲であることが望ましい。この構成により、インパクトイオン制御層44に起因するリーク電流の発生を抑制してインパクトイオン化現象による電子・正孔を効果的に吸収することが可能となるので、安定した動作特性を有する半導体装置40とすることができる。
インパクトイオン制御層44とヘテロ接合HJとの間隔が0.2μmより小さい場合は、インパクトイオン制御層44とドレイン領域(ドレイン電極52)とが近接しすぎてインパクトイオン制御層24が電流のリーク源となる恐れが生じる。また、インパクトイオン制御層44とヘテロ接合HJとの間隔が1.0μmより大きい場合は、インパクトイオン制御層44とドレイン領域(ドレイン電極52)とが離れすぎてインパクトイオン制御層44が十分に作用しなくなる恐れが生じる。
上述したとおり、本実施の形態に係る半導体装置40では、第1化合物半導体、第2化合物半導体、第3化合物半導体は、窒化物半導体で構成されていることが望ましい。この構成により、窒化物半導体の優れた特性を反映させて、優れた特性を有する半導体装置とすることが可能となる。なお、第1化合物半導体、第2化合物半導体、第3化合物半導体は、窒化物半導体に限るものではなく、窒化物半導体以外の化合物半導体を適用することが可能である。
本実施の形態の構成要素は、他の実施の形態と適合できる範囲で適宜組み合わせることが可能である。
<実施の形態3>
図12に基づいて、本実施の形態に係る半導体装置について説明する。なお、インパクトイオン化現象の発生、作用は、実施の形態1、実施の形態2で説明したとおりであり、基本的な構成は半導体装置20、半導体装置40と同様であるので、主に異なる事項について説明する。
図12は、本発明の実施の形態3に係る半導体装置の概略構成を模式的に示す模式断面図である。
本実施の形態に係る半導体装置60は、一例として例えば化合物半導体MOS構造とした電界効果トランジスタである。
本実施の形態に係る半導体装置60は、基板61に対して順次積層されたバッファ層62、下地化合物半導体層63f(下地化合物半導体層63)、インパクトイオン制御層64、下地化合物半導体層63s(下地化合物半導体層63)、チャネル画定化合物半導体層66を備えている。
以下では、下地化合物半導体層63fと下地化合物半導体層63sとを特に区別する必要がないときは、単に下地化合物半導体層63とすることがある。
基板61は、結晶面方位(111)の高濃度p形Si基板であり、バッファ層62は、膜厚2μmのGaN/AlN超格子バッファ層であり、下地化合物半導体層63fは、膜厚3μmのAl0.05Ga0.95N層であり、インパクトイオン制御層64は、膜厚50nmのGaN層であり、下地化合物半導体層63sは、膜厚1μmのAl0.05Ga0.95N層であり、チャネル画定化合物半導体層66は、膜厚20nmのAl0.2Ga0.8N層である。
つまり、本実施の形態に係る半導体装置60は、基板61と、基板61に積層されて下地を構成する下地化合物半導体層63(下地化合物半導体層63fおよび下地化合物半導体層63s)と、下地化合物半導体層63に積層されてチャネルを画定するチャネル画定化合物半導体層66とを備える。
また、半導体装置60は、下地化合物半導体層63の積層範囲(積層範囲の厚さTst)内に積層されてインパクトイオン化現象の発生位置を制御するインパクトイオン制御層64を備える。下地化合物半導体層63は、第1化合物半導体(AlGaN、例えばAl0.05Ga0.95N)で形成され、チャネル画定化合物半導体層66は、第2化合物半導体(AlGaN、例えばAl0.2Ga0.8N)で形成され、インパクトイオン制御層64は、第1化合物半導体のバンドギャップより小さいバンドギャップを有する第3化合物半導体(GaN)で形成されている。
したがって、半導体装置60は、インパクトイオン化現象の発生位置を容易かつ高精度に制御し、発生した電子・正孔を効率よく吸収することが可能となる。すなわち、ドレイン電極72の近傍でインパクトイオン化現象によって発生した正孔は、バッファ層62と下地化合物半導体層63fとの界面に沿ってソース電極71側へ走行し、ソース電極71に吸収される。また、インパクトイオン化現象によって発生した電子は、ドレイン電極72へ吸収される。
つまり、インパクトイオン化現象によって発生した電子・正孔のキャリア信号に対する影響を抑制して正常な動作特性と高い信頼性を実現することができる。
半導体装置60には、チャネル画定化合物半導体層66に接合(オーミックコンタクト)されたソース電極71、ドレイン電極72が形成されている。したがって、ソース電極71、ドレイン電極72に対応するチャネル画定化合物半導体層66には、ソース領域、ドレイン領域が構成される。ソース電極71とドレイン電極72との間には、チャネル画定化合物半導体層66にゲート絶縁膜73gが積層して形成され、ゲート絶縁膜73gには、ゲート電極74が重ねて形成されている。
ゲート絶縁膜73gは、膜厚20nmのSiO2で形成され、ゲート電極74は、膜厚50nmのNiに膜厚50nmのAuを重ねて形成され、MOS型とされている。つまり、半導体装置60は、横型のMOS電界効果トランジスタとしてある。
ソース電極71、ドレイン電極72、ゲート電極74の間には、チャネル画定化合物半導体層66(半導体装置60)を被覆して保護する表面保護膜76が形成されている。表面保護膜76は、プラズマCVDを用いて堆積したSiNxであり、例えば屈折率は2.0である。
ソース電極71、ドレイン電極72、ゲート絶縁膜73g、ゲート電極74、表面保護膜76などは、実施の形態1、実施の形態2と同様に形成することが可能であり、詳細な説明は省略する。
上述したとおり、半導体装置60は、チャネル画定化合物半導体層66に対応して形成されたゲート絶縁膜73gと、ゲート絶縁膜73gに対応して形成されたゲート電極74と、ゲート電極74の一方に配置されたソース電極71と、ゲート電極74の他方にソース電極71に対応して配置されたドレイン電極72とを備える。
この構成により、半導体装置60(電界効果トランジスタ)は、横型の電界効果トランジスタでのインパクトイオン化現象の発生位置を制御し、チャネルでゲート電極74に対応してインパクトイオン化現象が発生する前にドレイン領域の近傍でインパクトイオン化現象を発生させることが可能となる。したがって、半導体装置60は、ドレイン領域の近傍で発生させた電子/正孔をドレイン/ソースで吸収することが可能となるので、インパクトイオン化現象によるチャネルでの正孔の蓄積を防止して正常な動作特性を実現することができる。
下地化合物半導体層63fの膜厚に比較して下地化合物半導体層63sの膜厚が厚いと、下地化合物半導体層63sで電界が広がって電界強度が低下し、ドレイン領域の近傍でのインパクトイオン化現象が発生しにくくなる。
したがって、インパクトイオン制御層64は、下地化合物半導体層63fと下地化合物半導体層63sとの中間よりチャネル画定化合物半導体層66の側に配置することが望ましい。
本実施の形態では、下地化合物半導体層63fの膜厚は、3μmであり、下地化合物半導体層63sの膜厚は、1μmであり、膜厚50nmのインパクトイオン制御層64は、下地化合物半導体層63fと下地化合物半導体層63sとに挟まれた構成としてある。
つまり、インパクトイオン制御層64は、下地化合物半導体層63の積層範囲(積層範囲の厚さTst=3μm+50nm+1μm=4.05μm)の中間(積層範囲で端から約2μmの位置)よりチャネル画定化合物半導体層66の側に配置されていることが望ましい。
この構成により、チャネル画定化合物半導体層66の側に配置された下地化合物半導体層63sでの電界強度の低下を抑制して例えば電界効果トランジスタのドレイン領域の近傍でインパクトイオン化現象を確実に発生させることが可能となるので、正常な動作特性を有する半導体装置60を容易に実現することができる。
下地化合物半導体層63fの膜厚と下地化合物半導体層63sの膜厚とを足した厚さ(4μm)は、必要な電界強度を発生させるのに必要な厚さとなるように形成される。下地化合物半導体層63の厚さが必要な厚さに対して不十分であると、インパクトイオン化現象によって発生した正孔がゲート絶縁膜73gに衝突してソース領域に届かなくなり、インパクトイオン制御層64による作用を発生させることが困難となる。
また、基板61が非絶縁性基板(例えばSi基板)であるとき、下地化合物半導体層63の電界は、基板61からの電界の影響を受けて変動する。つまり、インパクトイオン制御層64を安定して作用させるためには、基板61からの下地化合物半導体層63に対する電界の影響を抑制することが必要である。
したがって、下地化合物半導体層63fの膜厚および下地化合物半導体層63sの膜厚の和をバッファ層62の膜厚の半分より大きくすることによって、下地化合物半導体層63に必要な厚さを確保して電界強度を確保し、また、基板61からの下地化合物半導体層63に対する電界の影響を抑制して下地化合物半導体層63の電界を安定化することが望ましい。
半導体装置60は、基板61と下地化合物半導体層63との間に配置され結晶格子の整合性を取るバッファ層62を備え、基板61が非絶縁性基板であるとき、下地化合物半導体層63の積層範囲の厚さTst(4.25μm)は、バッファ層62の厚さの半分(2μm/2=1μm)より大きくしてある。
この構成により、下地化合物半導体層63に必要な膜厚を確保し、バッファ層62を介して基板61(非絶縁性基板)から下地化合物半導体層63に及ぼされる電界の影響を抑制してインパクトイオン化現象の発生を確実に制御することが可能となる。
半導体装置60では、第1化合物半導体(下地化合物半導体層63)は、AlGaN(例えばAl0.05Ga0.95N)である。したがって、AlGaN(Al0.05Ga0.95N)のバンドギャップより小さいバンドギャップを有する第3化合物半導体(InGaN、GaN、または第1化合物半導体のAlGaNと比べてAl混晶比の小さいAlGaN(実施の形態4参照))は、インパクトイオン制御層64として適用することができる。
つまり、半導体装置60では、第1化合物半導体(下地化合物半導体層63f、下地化合物半導体層63s)は、AlGaNであり、インパクトイオン制御層64を構成する第3化合物半導体は、InGaN、GaN、または第1化合物半導体のAlGaNと比べてAl混晶比の小さいAlGaNのいずれか一つである。この構成により、下地化合物半導体層63およびインパクトイオン制御層64を容易かつ高精度に形成することが可能となる。
チャネル画定化合物半導体層66は、下地化合物半導体層63(下地化合物半導体層63s)に対してヘテロ接合HJを構成する。つまり、チャネル画定化合物半導体層66は、下地化合物半導体層63(下地化合物半導体層63s)に形成された2次元電子ガス層2DEGに対して障壁となる障壁層である。この構成により、高密度の2次元電子ガス層2DEGを容易に形成することが可能となり、高周波大電力で動作する半導体装置60を形成することができる。
下地化合物半導体層63(下地化合物半導体層63s)は、AlGaN(例えばAl0.05Ga0.95N)で形成され、チャネル画定化合物半導体層66は、下地化合物半導体層63を形成するAlGaNと比べてAl混晶比の大きいAlGaN(例えばAl0.2Ga0.8N)で形成されている。Al0.05Ga0.95N(下地化合物半導体層63)のバンドギャップは、Al0.2Ga0.8N(チャネル画定化合物半導体層66)のバンドギャップより小さい。したがって、チャネル画定化合物半導体層66は、下地化合物半導体層63に2次元電子ガス層2DEGが形成されたときの障壁層として機能する。
なお、2次元電子ガス層2DEGは、下地化合物半導体層63sにおいてチャネル画定化合物半導体層66との境界側に形成される。つまり、下地化合物半導体層63(下地化合物半導体層63s)を構成するAlGaN層にチャネルとしての2次元電子ガス層2DEGを容易に形成することが可能となる。
インパクトイオン制御層64とヘテロ接合HJ(2次元電子ガス層2DEG)との間隔は、0.2μmから1.0μmまでの範囲であることが望ましい。この構成により、インパクトイオン制御層64に起因するリーク電流の発生を抑制してインパクトイオン化現象による電子・正孔を効果的に吸収することが可能となるので、安定した動作特性を有する半導体装置60とすることができる。
インパクトイオン制御層64とヘテロ接合HJとの間隔が0.2μmより小さい場合は、インパクトイオン制御層64とドレイン領域(ドレイン電極72)とが近接しすぎてインパクトイオン制御層64が電流のリーク源となる恐れが生じる。また、インパクトイオン制御層64とヘテロ接合HJとの間隔が1.0μmより大きい場合は、インパクトイオン制御層64とドレイン領域(ドレイン電極72)とが離れすぎてインパクトイオン制御層64が十分に作用しなくなる恐れが生じる。
上述したとおり、本実施の形態に係る半導体装置60では、第1化合物半導体、第2化合物半導体、第3化合物半導体は、窒化物半導体で構成されていることが望ましい。この構成により、窒化物半導体の優れた特性を反映させて、優れた特性を有する半導体装置とすることが可能となる。なお、第1化合物半導体、第2化合物半導体、第3化合物半導体は、窒化物半導体に限るものではなく、窒化物半導体以外の化合物半導体を適用することが可能である。
本実施の形態の構成要素は、他の実施の形態と適合できる範囲で適宜組み合わせることが可能である。
<実施の形態4>
図13に基づいて、本実施の形態に係る半導体装置について説明する。なお、インパクトイオン化現象の発生、作用は、実施の形態1ないし実施の形態3で説明したとおりであり、基本的な構成は半導体装置20、半導体装置40、半導体装置60と同様であるので、主に異なる事項について説明する。
図13は、本発明の実施の形態4に係る半導体装置の概略構成を模式的に示す模式断面図である。
本実施の形態に係る半導体装置80は、一例として例えば化合物半導体MOS構造とした電界効果トランジスタである。
本実施の形態に係る半導体装置80は、基板81に対して順次積層されたバッファ層82、下地化合物半導体層83f(下地化合物半導体層83)、インパクトイオン制御層84、下地化合物半導体層83s(下地化合物半導体層83)、中間層85、チャネル画定化合物半導体層86、キャップ層89を備えている。
以下では、下地化合物半導体層83fと下地化合物半導体層83sとを特に区別する必要がないときは、単に下地化合物半導体層83とすることがある。
基板81は、結晶面方位(111)の高濃度p形Si基板であり、バッファ層82は、膜厚2μmのGaN/AlN超格子バッファ層であり、下地化合物半導体層83fは、膜厚3μmのAl0.1Ga0.9N層であり、インパクトイオン制御層84は、膜厚50nmのAl0.05Ga0.95N層であり、下地化合物半導体層83sは、膜厚1μmのAl0.1Ga0.9N層であり、中間層85は、膜厚1nmのAlN層であり、チャネル画定化合物半導体層86は、膜厚20nmのAl0.4Ga0.6N層であり、キャップ層89は、膜厚1nmのGaN層である。
つまり、本実施の形態に係る半導体装置80は、基板81と、基板81に積層されて下地を構成する下地化合物半導体層83(下地化合物半導体層83fおよび下地化合物半導体層83s)と、下地化合物半導体層83に積層されてチャネルを画定するチャネル画定化合物半導体層86とを備える。
なお、チャネル画定化合物半導体層86は、Alの混晶比が0.4であり、0.3を越えている。一般的にAlの混晶比が0.3を越えると酸素の影響を受けやすいと言われていることから、酸素の影響を抑制するためにチャネル画定化合物半導体層86の表面にキャップ層89を積層した。
また、半導体装置80は、下地化合物半導体層83の積層範囲(積層範囲の厚さTst)内に積層されてインパクトイオン化現象の発生位置を制御するインパクトイオン制御層84を備える。下地化合物半導体層83は、第1化合物半導体(AlGaN、例えばAl0.1Ga0.9N)で形成され、チャネル画定化合物半導体層86は、第2化合物半導体(AlGaN)で形成され、インパクトイオン制御層84は、第1化合物半導体のバンドギャップより小さいバンドギャップを有する第3化合物半導体(AlGaN、例えばAl0.05Ga0.95N)で形成されている。
したがって、半導体装置80は、インパクトイオン化現象の発生位置を容易かつ高精度に制御し、発生した電子・正孔を効率よく吸収することが可能となる。すなわち、ドレイン電極92の近傍でインパクトイオン化現象によって発生した正孔は、バッファ層82と下地化合物半導体層83fとの界面に沿ってソース電極91側へ走行し、ソース電極91に吸収される。また、インパクトイオン化現象によって発生した電子は、ドレイン電極92へ吸収される。
つまり、インパクトイオン化現象によって発生した電子・正孔のキャリア信号に対する影響を抑制して正常な動作特性と高い信頼性を実現することができる。
半導体装置80には、キャップ層89に接合(オーミックコンタクト)されたソース電極91、ドレイン電極92が形成されている。したがって、ソース電極91、ドレイン電極92に対応する中間層85、チャネル画定化合物半導体層86、キャップ層89には、ソース領域、ドレイン領域が構成される。ソース電極91とドレイン電極92との間には、キャップ層89にゲート絶縁膜93gが積層して形成され、ゲート絶縁膜93gには、ゲート電極94が重ねて形成されている。
ゲート絶縁膜93gは、膜厚20nmのSiO2で形成され、ゲート電極94は、膜厚50nmのNiに膜厚50nmのAuを重ねて形成され、MOS型とされている。つまり、半導体装置80は、横型のMOS電界効果トランジスタとしてある。
ソース電極91、ドレイン電極92、ゲート電極94の間には、キャップ層89(半導体装置40)を被覆して保護する表面保護膜96が形成されている。表面保護膜96は、プラズマCVDを用いて堆積したSiNxであり、例えば屈折率は2.0である。
ソース電極91、ドレイン電極92、ゲート絶縁膜93g、ゲート電極94、表面保護膜96などは、実施の形態1ないし実施の形態3と同様に形成することが可能であり、詳細な説明は省略する。
上述したとおり、半導体装置80は、チャネル画定化合物半導体層86に対応して形成されたゲート絶縁膜93gと、ゲート絶縁膜93gに対応して形成されたゲート電極94と、ゲート電極94の一方に配置されたソース電極91と、ゲート電極94の他方にソース電極91に対応して配置されたドレイン電極92とを備える。
この構成により、半導体装置80(電界効果トランジスタ)は、横型の電界効果トランジスタでのインパクトイオン化現象の発生位置を制御し、チャネルでゲート電極94に対応してインパクトイオン化現象が発生する前にドレイン領域の近傍でインパクトイオン化現象を発生させることが可能となる。したがって、半導体装置80は、ドレイン領域の近傍で発生させた電子/正孔をドレイン/ソースで吸収することが可能となるので、インパクトイオン化現象によるチャネルでの正孔の蓄積を防止して正常な動作特性を実現することができる。
下地化合物半導体層83fの膜厚に比較して下地化合物半導体層83sの膜厚が厚いと、下地化合物半導体層83sで電界が広がって電界強度が低下し、ドレイン領域の近傍でのインパクトイオン化現象が発生しにくくなる。
したがって、インパクトイオン制御層84は、下地化合物半導体層83fと下地化合物半導体層83sとの中間よりチャネル画定化合物半導体層86の側に配置することが望ましい。
本実施の形態では、下地化合物半導体層83fの膜厚は、3μmであり、下地化合物半導体層83sの膜厚は、1μmであり、膜厚50nmのインパクトイオン制御層84は、下地化合物半導体層83fと下地化合物半導体層83sとに挟まれた構成としてある。
つまり、インパクトイオン制御層84は、下地化合物半導体層83の積層範囲(積層範囲の厚さTst=3μm+50nm+1μm=4.05μm)の中間(積層範囲で端から約2μmの位置)よりチャネル画定化合物半導体層86の側に配置されていることが望ましい。
この構成により、チャネル画定化合物半導体層86の側に配置された下地化合物半導体層83sでの電界強度の低下を抑制して例えば電界効果トランジスタのドレイン領域の近傍でインパクトイオン化現象を確実に発生させることが可能となるので、正常な動作特性を有する半導体装置80を容易に実現することができる。
下地化合物半導体層83fの膜厚と下地化合物半導体層83sの膜厚とを足した厚さ(4μm)は、必要な電界強度を発生させるのに必要な厚さとなるように形成される。下地化合物半導体層83の厚さが必要な厚さに対して不十分であると、インパクトイオン化現象によって発生した正孔がゲート絶縁膜83gに衝突してソース領域に届かなくなり、インパクトイオン制御層84による作用を発生させることが困難となる。
また、基板81が非絶縁性基板(例えばSi基板)であるとき、下地化合物半導体層83の電界は、基板81からの電界の影響を受けて変動する。つまり、インパクトイオン制御層84を安定して作用させるためには、基板81からの下地化合物半導体層83に対する電界の影響を抑制することが必要である。
したがって、下地化合物半導体層83fの膜厚および下地化合物半導体層83sの膜厚の和をバッファ層82の膜厚の半分より大きくすることによって、下地化合物半導体層83に必要な厚さを確保して電界強度を確保し、また、基板81からの下地化合物半導体層83に対する電界の影響を抑制して下地化合物半導体層83の電界を安定化することが望ましい。
半導体装置80は、基板81と下地化合物半導体層83との間に配置され結晶格子の整合性を取るバッファ層82を備え、基板81が非絶縁性基板であるときの下地化合物半導体層83の積層範囲の厚さTst(4.05μm)は、バッファ層82の厚さの半分(2μm/2=1μm)より大きくしてある。
この構成により、下地化合物半導体層83に必要な膜厚を確保し、バッファ層82を介して基板81(非絶縁性基板)から下地化合物半導体層83に及ぼされる電界の影響を抑制してインパクトイオン化現象の発生を確実に制御することが可能となる。
半導体装置80では、第1化合物半導体(下地化合物半導体層83)は、AlGaN(例えばAl0.1Ga0.9N)である。したがって、AlGaN(Al0.1Ga0.9N)のバンドギャップより小さいバンドギャップを有する第3化合物半導体(InGaN、GaN、または第1化合物半導体のAlGaNと比べてAl混晶比の小さいAlGaN(例えばAl0.05Ga0.95N))は、インパクトイオン制御層84として適用することができる。
つまり、半導体装置80では、第1化合物半導体(下地化合物半導体層83f、下地化合物半導体層83s)は、AlGaNであり、インパクトイオン制御層84を構成する第3化合物半導体は、InGaN、GaN、または第1化合物半導体のAlGaNと比べてAl混晶比の小さいAlGaNのいずれか一つである。この構成により、下地化合物半導体層83およびインパクトイオン制御層84を容易かつ高精度に形成することが可能となる。
中間層85およびチャネル画定化合物半導体層86は、下地化合物半導体層83(下地化合物半導体層83s)に対してヘテロ接合HJを構成する。つまり、チャネル画定化合物半導体層86は、下地化合物半導体層83(下地化合物半導体層83s)に形成された2次元電子ガス層2DEGに対して障壁となる障壁層である。この構成により、高密度の2次元電子ガス層2DEGを容易に形成することが可能となり、高周波大電力で動作する半導体装置80を形成することができる。
下地化合物半導体層83(下地化合物半導体層83s)は、AlGaN(例えばAl0.1Ga0.9N)で形成され、中間層85は、AlNで形成され、チャネル画定化合物半導体層86は、下地化合物半導体層83を形成するAlGaNと比べてAl混晶比の大きいAlGaN(例えばAl0.4Ga0.6N層)で形成されている。Al0.1Ga0.9N(下地化合物半導体層83)のバンドギャップは、AlN(中間層85)およびAl0.4Ga0.6N(チャネル画定化合物半導体層86)より小さい。したがって、チャネル画定化合物半導体層86は、下地化合物半導体層83に2次元電子ガス層2DEGが形成されたときの障壁層として機能する。
なお、2次元電子ガス層2DEGは、下地化合物半導体層83sにおいて中間層85(チャネル画定化合物半導体層86)との境界側に形成される。つまり、下地化合物半導体層83(下地化合物半導体層83s)を構成するAlGaN層にチャネルとしての2次元電子ガス層2DEGを容易に形成することが可能となる。
下地化合物半導体層83に対してヘテロ接合HJを構成する中間層85にチャネル画定化合物半導体層86(障壁層)を積層することによって、自発分極とピエゾ分極に基づく電界が生じ、下地化合物半導体層83s(下地化合物半導体層83)においてチャネル画定化合物半導体層86との境界側に2次元電子ガス層2DEGが形成される。また、キャップ層89の積層により表面状態と閾値を制御することができる。
インパクトイオン制御層84とヘテロ接合HJ(2次元電子ガス層2DEG)との間隔は、0.2μmから1.0μmまでの範囲であることが望ましい。この構成により、インパクトイオン制御層84に起因するリーク電流の発生を抑制してインパクトイオン化現象による電子・正孔を効果的に吸収することが可能となるので、安定した動作特性を有する半導体装置80とすることができる。
インパクトイオン制御層84とヘテロ接合HJとの間隔が0.2μmより小さい場合は、インパクトイオン制御層84とドレイン領域(ドレイン電極92)とが近接しすぎてインパクトイオン制御層84が電流のリーク源となる恐れが生じる。また、インパクトイオン制御層84とヘテロ接合HJとの間隔が1.0μmより大きい場合は、インパクトイオン制御層84とドレイン領域(ドレイン電極92)とが離れすぎてインパクトイオン制御層84が十分に作用しなくなる恐れが生じる。
上述したとおり、本実施の形態に係る半導体装置80では、第1化合物半導体、第2化合物半導体、第3化合物半導体は、窒化物半導体で構成されていることが望ましい。この構成により、窒化物半導体の優れた特性を反映させて、優れた特性を有する半導体装置とすることが可能となる。なお、第1化合物半導体、第2化合物半導体、第3化合物半導体は、窒化物半導体に限るものではなく、窒化物半導体以外の化合物半導体を適用することが可能である。
本実施の形態の構成要素は、他の実施の形態と適合できる範囲で適宜組み合わせることが可能である。
<実施の形態5>
図14に基づいて、本実施の形態に係る半導体装置について説明する。なお、インパクトイオン化現象の発生、作用は、実施の形態1ないし実施の形態4で説明したとおりであり、基本的な構成は半導体装置20、半導体装置40、半導体装置60と同様であるので、主に異なる事項について説明する。
図14は、本発明の実施の形態5に係る半導体装置の概略構成を模式的に示す模式断面図である。
本実施の形態に係る半導体装置100は、一例として例えば化合物半導体MOS構造とした電界効果トランジスタである。
なお、以下に説明する通り、本実施の形態に係る半導体装置100は、実施の形態2の半導体装置40の変形例でもあり、下地化合物半導体層43の領域内に形成したインパクトイオン制御層44の層数を複数としたものである。つまり、本実施の形態に係る半導体装置100は、下地化合物半導体層103に例えば2層のインパクトイオン制御層104(インパクトイオン制御層104f、インパクトイオン制御層104s)を備える。したがって、下地化合物半導体層103は、3層構造(下地化合物半導体層103f、下地化合物半導体層103s、下地化合物半導体層103t)となっている。
半導体装置100は、基板101に対して順次積層されたバッファ層102、下地化合物半導体層103f(下地化合物半導体層103)、インパクトイオン制御層104f(インパクトイオン制御層104)、下地化合物半導体層103s(下地化合物半導体層103)、インパクトイオン制御層104s(インパクトイオン制御層104)、下地化合物半導体層103t(下地化合物半導体層103)、中間層105、チャネル画定化合物半導体層106、キャップ層109を備えている。
以下では、下地化合物半導体層103f、下地化合物半導体層103s、下地化合物半導体層103tを特に区別する必要がないときは、単に下地化合物半導体層103とすることがある。また、インパクトイオン制御層104fとインパクトイオン制御層104sとを特に区別する必要がないときは、単にインパクトイオン制御層104とすることがある。
基板101は、結晶面方位(0001)のサファイア基板であり、バッファ層102は、膜厚20nmのGaNバッファ層であり、下地化合物半導体層103fは、膜厚3μmのGaN層であり、インパクトイオン制御層104fは、膜厚50nmのIn0.1Ga0.9N層であり、下地化合物半導体層103sは、膜厚50nmのGaN層であり、インパクトイオン制御層104sは、膜厚50nmのIn0.1Ga0.9N層であり、下地化合物半導体層103tは、膜厚1μmのGaN層であり、中間層105は、膜厚1nmのAlN層であり、チャネル画定化合物半導体層106は、膜厚20nmのAl0.2Ga0.8N(AlGaN)層であり、キャップ層109は、膜厚1nmのGaN層である。
つまり、本実施の形態に係る半導体装置100は、基板101と、基板101に積層されて下地を構成する下地化合物半導体層103(下地化合物半導体層103f、下地化合物半導体層103s、および下地化合物半導体層103t)と、下地化合物半導体層103に積層されチャネルを画定するチャネル画定化合物半導体層106とを備える。
また、半導体装置100は、下地化合物半導体層103の積層範囲(積層範囲の厚さTst)内に積層されてインパクトイオン化現象の発生位置を制御するインパクトイオン制御層104を備える。下地化合物半導体層103は、第1化合物半導体(GaN)で形成され、チャネル画定化合物半導体層106は、第2化合物半導体(AlGaN)で形成され、インパクトイオン制御層104は、第1化合物半導体(GaN)のバンドギャップより小さいバンドギャップを有する第3化合物半導体(InGaN、例えばIn0.1Ga0.9N)で形成されている。
したがって、半導体装置100は、インパクトイオン化現象の発生位置を容易かつ高精度に制御し、発生した電子・正孔を効率よく吸収することが可能となる。すなわち、ドレイン電極112の近傍でインパクトイオン化現象によって発生した正孔は、バッファ層102と下地化合物半導体層103fとの界面に沿ってソース電極111側へ走行し、ソース電極111に吸収される。また、インパクトイオン化現象によって発生した電子は、ドレイン電極112へ吸収される。
つまり、インパクトイオン化現象によって発生した電子・正孔のキャリア信号に対する影響を抑制して正常な動作特性と高い信頼性を実現することができる。
半導体装置100には、キャップ層109に接合(オーミックコンタクト)されたソース電極111、ドレイン電極112が形成されている。したがって、ソース電極111、ドレイン電極112に対応する中間層105、チャネル画定化合物半導体層106、キャップ層109には、ソース領域、ドレイン領域が構成される。ソース電極111とドレイン電極112との間には、キャップ層109にゲート絶縁膜113gが積層して形成され、ゲート絶縁膜113gには、ゲート電極114が重ねて形成されている。
ゲート絶縁膜113gは、膜厚20nmのSiO2で形成され、ゲート電極114は、膜厚50nmのNiに膜厚50nmのAuを重ねて形成され、MOS型とされている。つまり、半導体装置100は、横型のMOS電界効果トランジスタとしてある。
ソース電極111、ドレイン電極112、ゲート電極114の間には、キャップ層109(半導体装置100)を被覆して保護する表面保護膜116が形成されている。表面保護膜116は、プラズマCVDを用いて堆積したSiNxであり、例えば屈折率は2.0である。
ソース電極111、ドレイン電極112、ゲート絶縁膜113g、ゲート電極114、表面保護膜116などは、実施の形態1ないし実施の形態4と同様に形成することが可能であり、詳細な説明は省略する。
なお、本実施の形態に係る半導体装置100では、インパクトイオン制御層104は、下地化合物半導体層103の積層方向の領域内に複数形成されている。すなわち、下地化合物半導体層103として、下地化合物半導体層103f、下地化合物半導体層103s、下地化合物半導体層103tが形成され、インパクトイオン制御層104として、インパクトイオン制御層104f、インパクトイオン制御層104sが形成されている。つまり、インパクトイオン制御層104fは、下地化合物半導体層103fと下地化合物半導体層103sとの間に形成され、インパクトイオン制御層104sは、下地化合物半導体層103sと下地化合物半導体層103tとの間に形成されている。
この構成により、インパクトイオン制御層104をより高精度に制御することが可能となるので、インパクトイオン化現象の発生を容易かつ高精度に制御することができる。なお、インパクトイオン制御層104f、下地化合物半導体層103s、インパクトイオン制御層104sの各膜厚は、電界制御性、製膜制御性の観点から、等しくすることが望ましい。
上述したとおり、半導体装置100は、チャネル画定化合物半導体層106に対応して形成されたゲート絶縁膜113gと、ゲート絶縁膜113gに対応して形成されたゲート電極114と、ゲート電極114の一方に配置されたソース電極111と、ゲート電極114の他方にソース電極111に対応して配置されたドレイン電極112とを備える。
この構成により、半導体装置100(電界効果トランジスタ)は、横型の電界効果トランジスタでのインパクトイオン化現象の発生位置を制御し、チャネルでゲート電極114に対応してインパクトイオン化現象が発生する前にドレイン領域の近傍でインパクトイオン化現象を発生させることが可能となる。したがって、半導体装置100は、ドレイン領域の近傍で発生させた電子/正孔をドレイン/ソースで吸収することが可能となるので、インパクトイオン化現象によるチャネルでの正孔の蓄積を防止して正常な動作特性を実現することができる。
下地化合物半導体層103fの膜厚に比較して下地化合物半導体層103tの膜厚が厚いと、下地化合物半導体層103tで電界が広がって電界強度が低下し、ドレイン領域の近傍でのインパクトイオン化現象が発生しにくくなる。
したがって、インパクトイオン制御層104(インパクトイオン制御層104f、インパクトイオン制御層104s)は、下地化合物半導体層103fと下地化合物半導体層103tとの中間よりチャネル画定化合物半導体層106の側に配置することが望ましい。
本実施の形態では、下地化合物半導体層103fの膜厚は、3μmであり、下地化合物半導体層103tの膜厚は、1μmであり、インパクトイオン制御層104f、下地化合物半導体層103s、インパクトイオン制御層104sは、それぞれ膜厚50nmとされている。また、インパクトイオン制御層104fは、下地化合物半導体層103fと下地化合物半導体層103sとに挟まれ、インパクトイオン制御層104sは、下地化合物半導体層103sと下地化合物半導体層103tとに挟まれた構成としてある。
つまり、インパクトイオン制御層104は、下地化合物半導体層103の積層範囲(積層範囲の厚さTst=3μm+50nm+50nm+50nm+1μm=4.15μm)の中間(積層範囲で端から約2μmの位置)よりチャネル画定化合物半導体層106の側に配置されていることが望ましい。
この構成により、チャネル画定化合物半導体層106の側に配置された下地化合物半導体層103tでの電界強度の低下を抑制して例えば電界効果トランジスタのドレイン領域の近傍でインパクトイオン化現象を確実に発生させることが可能となるので、正常な動作特性を有する半導体装置100を容易に実現することができる。
下地化合物半導体層103fの膜厚と下地化合物半導体層103sの膜厚と下地化合物半導体層103tの膜厚とを足した厚さ(約4μm)は、必要な電界強度を発生させるのに必要な厚さとなるように形成される。下地化合物半導体層103の厚さが必要な厚さに対して不十分であると、インパクトイオン化現象によって発生した正孔がゲート絶縁膜113gに衝突してソース領域に届かなくなり、インパクトイオン制御層104(インパクトイオン制御層104f、インパクトイオン制御層104s)による作用を発生させることが困難となる。
半導体装置100では、第1化合物半導体(下地窒化物半導体層103)は、GaNである。したがって、GaNのバンドギャップより小さいバンドギャップを有する第3化合物半導体(InGaN、例えばIn0.1Ga0.9N)は、インパクトイオン制御層104として適用することができる。
つまり、半導体装置100では、第1化合物半導体(下地化合物半導体層103f、下地化合物半導体層103s、下地化合物半導体層103t)は、GaNであり、インパクトイオン制御層104(インパクトイオン制御層104f、インパクトイオン制御層104s)を構成する第3化合物半導体は、InGaNである。この構成により、下地化合物半導体層103およびインパクトイオン制御層104を容易かつ高精度に形成することが可能となる。
中間層105およびチャネル画定化合物半導体層106は、下地化合物半導体層103(下地化合物半導体層103t)に対してヘテロ接合HJを構成する。つまり、チャネル画定化合物半導体層106は、下地化合物半導体層103(下地化合物半導体層103t)に形成された2次元電子ガス層2DEGに対して障壁となる障壁層である。この構成により、高密度の2次元電子ガス層2DEGを容易に形成することが可能となり、高周波大電力で動作する半導体装置40を形成することができる。
下地化合物半導体層103(下地化合物半導体層103t)は、GaNで形成され、中間層105は、AlNで形成され、チャネル画定化合物半導体層106は、AlGaN(Al0.2Ga0.8N)で形成されている。GaN(下地化合物半導体層103)のバンドギャップは、AlN(中間層105)およびAlGaN(チャネル画定化合物半導体層106)のバンドギャップより小さい。したがって、チャネル画定化合物半導体層106は、下地化合物半導体層103tに2次元電子ガス層2DEGが形成されたときの障壁となる障壁層として機能する。
なお、2次元電子ガス層2DEGは、下地化合物半導体層103tにおいて中間層105(チャネル画定化合物半導体層106)との境界側に形成される。つまり、下地化合物半導体層103(下地化合物半導体層103t)を構成するGaN層にチャネルとしての2次元電子ガス層2DEGを容易に形成することが可能となる。
下地化合物半導体層103tに対してヘテロ接合HJを構成する中間層105にチャネル画定化合物半導体層106(障壁層)を積層することによって、自発分極とピエゾ分極に基づく電界が生じ、下地化合物半導体層103tにおいてチャネル画定化合物半導体層106との境界側に2次元電子ガス層2DEGが形成される。また、キャップ層109の積層により表面状態と閾値を制御することができる。
インパクトイオン制御層104とヘテロ接合HJ(2次元電子ガス層2DEG)との間隔は、0.2μmから1.0μmまでの範囲であることが望ましい。この構成により、インパクトイオン制御層104に起因するリーク電流の発生を抑制してインパクトイオン化現象による電子・正孔を効果的に吸収することが可能となるので、安定した動作特性を有する半導体装置100とすることができる。
インパクトイオン制御層104とヘテロ接合HJとの間隔が0.2μmより小さい場合は、インパクトイオン制御層104とドレイン領域(ドレイン電極112)とが近接しすぎてインパクトイオン制御層104が電流のリーク源となる恐れが生じる。また、インパクトイオン制御層104とヘテロ接合HJとの間隔が1.0μmより大きい場合は、インパクトイオン制御層104とドレイン領域(ドレイン電極112)とが離れすぎてインパクトイオン制御層104が十分に作用しなくなる恐れが生じる。
上述したとおり、本実施の形態に係る半導体装置100では、第1化合物半導体、第2化合物半導体、第3化合物半導体は、窒化物半導体で構成されていることが望ましい。この構成により、窒化物半導体の優れた特性を反映させて、優れた特性を有する半導体装置とすることが可能となる。なお、第1化合物半導体、第2化合物半導体、第3化合物半導体は、窒化物半導体に限るものではなく、窒化物半導体以外の化合物半導体を適用することが可能である。
本実施の形態の構成要素は、他の実施の形態と適合できる範囲で適宜組み合わせることが可能である。
<実施の形態6>
図15に基づいて、本実施の形態に係る半導体装置について説明する。なお、インパクトイオン化現象の発生、作用は、実施の形態1ないし実施の形態5で説明したとおりであり、基本的な構成は半導体装置20、半導体装置40、半導体装置60、半導体装置100と同様であるので、主に異なる事項について説明する。
図15は、本発明の実施の形態6に係る半導体装置の概略構成を模式的に示す模式断面図である。
本実施の形態に係る半導体装置120は、一例として例えば化合物半導体MOS構造とした電界効果トランジスタである。
なお、以下に説明する通り、本実施の形態に係る半導体装置120は、実施の形態2に係る半導体装置40の変形例でもある。半導体装置40では、下地化合物半導体層43(下地化合物半導体層43s)としてGaN層、中間層45としてAlN層を備え、中間層45にチャネル画定化合物半導体層46(AlGaN層)、キャップ層49(GaN層)を積層してある。これに対して、本実施の形態に係る半導体装置120では、下地化合物半導体層123(下地化合物半導体層123s)としてGaN層を備え、チャネル画定化合物半導体層126(AlGaN層)、キャップ層129(GaN層)を積層してある。つまり、中間層45を除外した形態としてある。
半導体装置120は、基板121に対して順次積層されたバッファ層122、下地化合物半導体層123f(下地化合物半導体層123)、インパクトイオン制御層124、下地化合物半導体層123s(下地化合物半導体層123)、チャネル画定化合物半導体層126、キャップ層129を備えている。
以下では、下地化合物半導体層123fと下地化合物半導体層123sとを特に区別する必要がないときは、単に下地化合物半導体層123とすることがある。
基板121は、結晶面方位(0001)のサファイア基板であり、バッファ層122は、膜厚20nmのGaNバッファ層であり、下地化合物半導体層123fは、膜厚3μmのGaN層であり、インパクトイオン制御層124は、膜厚50nmのIn0.1Ga0.9N層であり、下地化合物半導体層123sは、膜厚1μmのGaN層であり、チャネル画定化合物半導体層126は、膜厚20nmのAl0.2Ga0.8N層であり、キャップ層129は、膜厚1nmのGaN層である。
つまり、本実施の形態に係る半導体装置120は、基板121と、基板121に積層されて下地を構成する下地化合物半導体層123(下地化合物半導体層123fおよび下地化合物半導体層123s)と、下地化合物半導体層123に積層されチャネルを画定するチャネル画定化合物半導体層126とを備える。
また、半導体装置120は、下地化合物半導体層123の積層範囲(積層範囲の厚さTst)内に積層されてインパクトイオン化現象の発生位置を制御するインパクトイオン制御層124を備える。下地化合物半導体層123は、第1化合物半導体(GaN)で形成され、チャネル画定化合物半導体層126は、第2化合物半導体(AlGaN)で形成され、インパクトイオン制御層124は、第1化合物半導体(GaN)のバンドギャップより小さいバンドギャップを有する第3化合物半導体(InGaN、例えばIn0.1Ga0.9N)で形成されている。
したがって、半導体装置120は、インパクトイオン化現象の発生位置を容易かつ高精度に制御し、発生した電子・正孔を効率よく吸収することが可能となる。すなわち、ドレイン電極132の近傍でインパクトイオン化現象によって発生した正孔は、バッファ層122と下地化合物半導体層123fとの界面に沿ってソース電極131側へ走行し、ソース電極131に吸収される。また、インパクトイオン化現象によって発生した電子は、ドレイン電極132へ吸収される。
つまり、インパクトイオン化現象によって発生した電子・正孔のキャリア信号に対する影響を抑制して正常な動作特性と高い信頼性を実現することができる。
半導体装置120には、キャップ層129に接合(オーミックコンタクト)されたソース電極131、ドレイン電極132が形成されている。したがって、ソース電極131、ドレイン電極132に対応するチャネル画定化合物半導体層126、キャップ層129には、ソース領域、ドレイン領域が構成される。ソース電極131とドレイン電極132との間には、キャップ層129にゲート絶縁膜133gが積層して形成され、ゲート絶縁膜133gには、ゲート電極134が重ねて形成されている。
ゲート絶縁膜133gは、膜厚20nmのSiO2で形成され、ゲート電極134は、膜厚50nmのNiに膜厚50nmのAuを重ねて形成され、MOS型とされている。つまり、半導体装置120は、横型のMOS電界効果トランジスタとしてある。
ソース電極131、ドレイン電極132、ゲート電極134の間には、キャップ層129(半導体装置120)を被覆して保護する表面保護膜136が形成されている。表面保護膜136は、プラズマCVDを用いて堆積したSiNxであり、例えば屈折率は2.0である。
ソース電極131、ドレイン電極132、ゲート絶縁膜133g、ゲート電極134、表面保護膜126などは、実施の形態1ないし実施の形態5と同様に形成することが可能であり、詳細な説明は省略する。
上述したとおり、半導体装置120は、チャネル画定化合物半導体層126に対応して形成されたゲート絶縁膜133gと、ゲート絶縁膜133gに対応して形成されたゲート電極134と、ゲート電極134の一方に配置されたソース電極131と、ゲート電極134の他方にソース電極131に対応して配置されたドレイン電極132とを備える。
この構成により、半導体装置120(電界効果トランジスタ)は、横型の電界効果トランジスタでのインパクトイオン化現象の発生位置を制御し、チャネルでゲート電極134に対応してインパクトイオン化現象が発生する前にドレイン領域の近傍でインパクトイオン化現象を発生させることが可能となる。したがって、半導体装置120は、ドレイン領域の近傍で発生させた電子/正孔をドレイン/ソースで吸収することが可能となるので、インパクトイオン化現象によるチャネルでの正孔の蓄積を防止して正常な動作特性を実現することができる。
下地化合物半導体層123fの膜厚に比較して下地化合物半導体層123sの膜厚が厚いと、下地化合物半導体層123sで電界が広がって電界強度が低下し、ドレイン領域の近傍でのインパクトイオン化現象が発生しにくくなる。
したがって、インパクトイオン制御層124は、下地化合物半導体層123fと下地化合物半導体層123sとの中間よりチャネル画定化合物半導体層126の側に配置することが望ましい。
本実施の形態では、下地化合物半導体層123fの膜厚は、3μmであり、下地化合物半導体層123sの膜厚は、1μmであり、膜厚50nmのインパクトイオン制御層124は、下地化合物半導体層123fと下地化合物半導体層123sとに挟まれた構成としてある。
つまり、インパクトイオン制御層124は、下地化合物半導体層123の積層範囲(積層範囲の厚さTst=3μm+50nm+1μm=4.05μm)の中間(積層範囲で端から約2μmの位置)よりチャネル画定化合物半導体層126の側に配置されていることが望ましい。
この構成により、チャネル画定化合物半導体層126の側に配置された下地化合物半導体層123sでの電界強度の低下を抑制して例えば電界効果トランジスタのドレイン領域の近傍でインパクトイオン化現象を確実に発生させることが可能となるので、正常な動作特性を有する半導体装置120を容易に実現することができる。
下地化合物半導体層123fの膜厚と下地化合物半導体層123sの膜厚とを足した厚さ(4μm)は、必要な電界強度を発生させるのに必要な厚さとなるように形成される。下地化合物半導体層123の厚さが必要な厚さに対して不十分であると、インパクトイオン化現象によって発生した正孔がゲート絶縁膜133gに衝突してソース領域に届かなくなり、インパクトイオン制御層124による作用を発生させることが困難となる。
半導体装置120では、第1化合物半導体(下地窒化物半導体層123)は、GaNである。したがって、GaNのバンドギャップより小さいバンドギャップを有する第3化合物半導体(InGaN。例えばIn0.1Ga0.9N)は、インパクトイオン制御層124として適用することができる。
つまり、半導体装置120では、第1化合物半導体(下地化合物半導体層123f、下地化合物半導体層123s)は、GaNであり、インパクトイオン制御層124を構成する第3化合物半導体は、InGaNである。この構成により、下地化合物半導体層123およびインパクトイオン制御層124を容易かつ高精度に形成することが可能となる。
チャネル画定化合物半導体層126は、下地化合物半導体層123(下地化合物半導体層123s)に対してヘテロ接合HJを構成する。つまり、チャネル画定化合物半導体層126は、下地化合物半導体層123(下地化合物半導体層123s)に形成された2次元電子ガス層2DEGに対して障壁となる障壁層である。この構成により、高密度の2次元電子ガス層2DEGを容易に形成することが可能となり、高周波大電力で動作する半導体装置120を形成することができる。
下地化合物半導体層123(下地化合物半導体層123s)は、GaNで形成され、チャネル画定化合物半導体層126は、AlGaNで形成されている。GaN(下地化合物半導体層123)のバンドギャップは、AlGaN(チャネル画定化合物半導体層126)のバンドギャップより小さい。したがって、チャネル画定化合物半導体層126は、下地化合物半導体層123sに2次元電子ガス層2DEGが形成されたときの障壁となる障壁層として機能する。
なお、2次元電子ガス層2DEGは、下地化合物半導体層123sにおいてチャネル画定化合物半導体層126との境界側に形成される。つまり、下地化合物半導体層123(下地化合物半導体層123s)を構成するGaN層にチャネルとしての2次元電子ガス層2DEGを容易に形成することが可能となる。
下地化合物半導体層123sに対してヘテロ接合HJを構成するチャネル画定化合物半導体層126(障壁層)を積層することによって、自発分極とピエゾ分極に基づく電界が生じ、下地化合物半導体層123s(下地化合物半導体層123)においてチャネル画定化合物半導体層126との境界側に2次元電子ガス層2DEGが形成される。また、キャップ層129の積層により表面状態と閾値を制御することができる。
インパクトイオン制御層124とヘテロ接合HJとの間隔は、0.2μmから1.0μmまでの範囲であることが望ましい。この構成により、インパクトイオン制御層124に起因するリーク電流の発生を抑制してインパクトイオン化現象による電子・正孔を効果的に吸収することが可能となるので、安定した動作特性を有する半導体装置120とすることができる。
インパクトイオン制御層124とヘテロ接合HJとの間隔が0.2μmより小さい場合は、インパクトイオン制御層124とドレイン領域(ドレイン電極132)とが近接しすぎてインパクトイオン制御層124が電流のリーク源となる恐れが生じる。また、インパクトイオン制御層124とヘテロ接合HJとの間隔が1.0μmより大きい場合は、インパクトイオン制御層124とドレイン領域(ドレイン電極132)とが離れすぎてインパクトイオン制御層124が十分に作用しなくなる恐れが生じる。
上述したとおり、本実施の形態に係る半導体装置120では、第1化合物半導体、第2化合物半導体、第3化合物半導体は、窒化物半導体で構成されていることが望ましい。この構成により、窒化物半導体の優れた特性を反映させて、優れた特性を有する半導体装置とすることが可能となる。なお、第1化合物半導体、第2化合物半導体、第3化合物半導体は、窒化物半導体に限るものではなく、窒化物半導体以外の化合物半導体を適用することが可能である。
本実施の形態の構成要素は、他の実施の形態と適合できる範囲で適宜組み合わせることが可能である。
以上、図面を参照して本発明に係る実施の形態1ないし実施の形態6について説明したが、本発明は、以上の例示および説明の内容によって何ら限定されるものではない。