以下、本発明のモータ駆動装置の具体的な実施の形態について、図面を参照して説明する。尚、以下において記述される数字は、すべて本発明を具体的に説明するために例示したものであり、本発明は例示された数字に制限されない。
(第1の実施形態)
図1Aは本発明に係るモータ駆動装置の第1の実施形態における回路構成を示す。図1Aにおいてモータ駆動装置は、モータ1、駆動部2、駆動信号生成部5、比較部6、電流検出部7、相トルク指令信号生成部8、探索指令信号生成部9、起動指令信号生成部10、疑似中性点電圧生成部11、中性点差電圧検出部13、および逆起電圧検出部14を備える。
モータ1は、3相の固定されたステータ、およびステータの周りを回転するロータを含む。第1の実施形態では、モータには3相モータ1を用いるが、本発明は、Nを2以上の整数として、N相モータに対しても適用できる。ステータに巻回されるU相モータ巻線LU、V相モータ巻線LV、およびW相モータ巻線LWは、中性点CNで共通接続され、他端はそれぞれU相モータ端子QU、V相モータ端子QV、W相モータ端子QWに接続される。
駆動部2は、駆動信号生成部5で生成される6本の駆動信号S16Cを増幅するプリドライバ15、およびプリドライバ15により制御電極を駆動される6個のスイッチング素子を含む。6個のスイッチング素子は、U相高電位側スイッチング素子Q1、V相高電位側スイッチング素子Q2、W相高電位側スイッチング素子Q3、U相低電位側スイッチング素子Q4、V相低電位側スイッチング素子Q5、およびW相低電位側スイッチング素子Q6である。それぞれのスイッチング素子には、ダイオードが逆導通方向に並列接続される。各高電位側スイッチング素子Q1、Q2、Q3の高電位側電極は、高電位側電源3に接続され、各低電位側スイッチング素子Q4、Q5、Q6の低電位側電極は、電流検出部7を介して低電位側電源4に接続される。U相高電位側スイッチング素子Q1の低電位側電極とU相低電位側スイッチング素子Q4の高電位側電極は、モータ端子QUで接続され、V相高電位側スイッチング素子Q2の低電位側電極とV相低電位側スイッチング素子Q5の高電位側電極は、モータ端子QVで接続され、W相高電位側スイッチング素子Q3の低電位側電極とW相低電位側スイッチング素子Q6の高電位側電極は、モータ端子QWで接続される。駆動部2は、モータ1に高電位側電源3からの駆動電流または駆動電圧を供給し、モータ1を駆動する。
駆動信号生成部5は、転流制御部16、PWM制御部17、パルス発生器18、および閾値設定部12を含む。電流検出部7は、電流検出抵抗RDおよび増幅器19を含む。疑似中性点電圧生成部11は各相抵抗RU、RV、RWを含む。各相抵抗RU、RV、RWは、疑似中性点PNに共通接続され、他端はそれぞれモータ端子QU、モータ端子QV、モータ端子QWに接続される。なお、疑似中性点電圧生成部11は、モータ端子電圧を平均化した電圧を与える回路であり、同様の機能を有する別の回路と代替可能である。例えば、疑似中性点電圧生成部11の抵抗回路は、モータ端子電圧を平均化した電圧を与える機能を有すれば、抵抗以外の素子を含んでもよい。または、疑似中性点電圧生成部11の抵抗回路の抵抗素子を別の素子や回路に置換えてもよい。中性点差電圧検出部13は、比較器21および比較器22を含む。逆起電圧検出部14は、相選択部20および比較器23を含む。比較器21および比較器22は第1比較器とも呼び、比較器23は第2比較器とも呼ぶ。
本発明のモータ駆動装置では、特に指定しない限り、各端子における電圧は、各端子における電位と所定の基準電位との差を表す。第1の実施形態では、低電位側電源4が所定の基準電位、例えば接地電位を供給する。モータ端子QUには、低電位側電源4を基準電位とするU相モータ端子電圧SUが発生し、モータ端子QVには、低電位側電源4を基準電位とするV相モータ端子電圧SVが発生し、モータ端子QWには、低電位側電源4を基準電位とするW相モータ端子電圧SWが発生する。中性点CNには、低電位側電源4を基準電位とする中性点電圧SCNが発生する。疑似中性点PNには、低電位側電源4を基準電位とする疑似中性点電圧SPNが発生する。疑似中性点電圧生成部11は、各相抵抗RU、RV、RWにより、U相モータ端子電圧SU、V相モータ端子電圧SV、およびW相モータ端子電圧SWを平均化し、疑似中性点PNにおいて、疑似中性点電圧SPNを生成する。この平均化には、各相抵抗RU、RV、RWによる加重平均も含まれる。第1の実施形態では、各相抵抗RU、RV、RWは、互いに等しい値を持つとする。なお、所定の基準電位は、高電位側電源3により供給されるとしてもよいし、他の基準電位供給源により供給されるとしてもよい。
各モータ端子電圧SU、SV、SWと中性点電圧SCNとの差電圧を、巻線両端電圧と呼ぶ。また、各モータ端子電圧SU、SV、SWと疑似中性点電圧SPNとの差電圧を、端子差電圧と呼ぶ。すなわち、U相モータ端子電圧SUと疑似中性点電圧SPNとの差電圧をU相端子差電圧、V相モータ端子電圧SVと疑似中性点電圧SPNとの差電圧をV相端子差電圧、W相モータ端子電圧SWと疑似中性点電圧SPNとの差電圧をW相端子差電圧とそれぞれ呼び、U相端子差電圧とV相端子差電圧とW相端子差電圧を総称して、端子差電圧と呼ぶ。
各モータ巻線LU、LV、LWの巻線両端電圧は、駆動電圧と逆起電圧と誘導電圧と降下電圧とを含む。駆動電圧は、駆動部2により供給され、モータ1を駆動する。逆起電圧は、ロータ回転時に、ロータ磁束の変化に基づく電磁誘導により発生する。誘導電圧は、駆動電圧に基づいてモータ巻線に流れる駆動電流が、モータ巻線に磁束変化を起こし、この磁束変化に基づく電磁誘導により発生する。誘導電圧には、駆動電流の流れるモータ巻線と同じモータ巻線に発生する、自己誘導による電圧と、駆動電流の流れるモータ巻線と異なるモータ巻線に発生する、相互誘導による電圧とがある。降下電圧は、モータ巻線の抵抗による電圧降下である。
2相通電時における非通電相の場合、駆動電圧は実質的にゼロである。また、電流制御によるPWM駆動のように、所定期間、2相通電の駆動電流がほぼ一定の小電流であれば、誘導電圧も実質的にゼロである。降下電圧は相対的に小さいため、無視すれば、巻線両端電圧は、ほぼ逆起電圧だけとなる。
各スイッチング素子Q1からQ6には、MOSトランジスタ、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等が使用できる。本発明の実施形態では、各スイッチング素子Q1からQ6には、nチャンネル型MOSトランジスタが使用される。この場合、高電位側電極はドレイン、低電位側電極はソース、制御電極はゲートである。
各スイッチング素子Q1からQ6のうち、オンするスイッチング素子に対応する駆動信号S16Cの論理レベルは、動作状態レベルと呼び、オフするスイッチング素子に対応する駆動信号S16Cの論理レベルは、非動作状態レベルと呼ぶ。本発明の実施形態で用いられるnチャンネル型MOSトランジスタの場合、動作状態レベルはハイレベルであり、非動作状態レベルはローレベルである。論理レベルが、動作状態レベルあるいは非動作状態レベルをとるような、一タイミングにおける論理の状態を、論理状態と呼ぶ。さらに各高電位側スイッチング素子Q1、Q2、Q3のうち、オンするスイッチング素子に対応する相は、動作状態相と呼び、動作状態相における相の状態をPWMオン状態と呼ぶ。逆にオフするスイッチング素子に対応する相は、非動作状態相と呼び、非動作状態相における相の状態をPWMオフ状態と呼ぶ。PWMオン状態である期間をPWMオン期間、PWMオフ状態である期間をPWMオフ期間と呼ぶ。動作状態相および非動作状態相は、駆動部2を制御する転流制御部16において設定される。駆動部2は、モータ1に高電位側電源3からの駆動電流を、動作状態相において供給し、非動作状態相において供給停止する。
本発明のモータ駆動装置において、停止中のモータ1に対し、ロータの初期位置を探索し、起動回転を与えて起動開始し、極低速回転状態になるまでの状態を、探索起動モードと呼ぶ。また、逆起電圧を安定に検出して転流制御できる通常回転状態を、逆起電圧モードと呼ぶ。
まず逆起電圧モードのトルク制御について説明する。逆起電圧モードにおける駆動信号S16Cは、通常駆動信号S16Cと呼ばれる。逆起電圧モードでは、探索指令信号生成部9および起動指令信号生成部10は、使用されない。相トルク指令信号生成部8は、モータ1のトルクを指定するトルク指令信号を生成する。また相トルク指令信号生成部8には、転流制御部16から、通常駆動信号S16Cにおける動作状態レベルの組み合わせを表す動作状態信号S16Aが入力される。相トルク指令信号生成部8は、トルク指令信号と動作状態信号S16Aとに基づいて、各相に対応する相トルク指令信号S8を生成する。パルス発生器18は、周期性を有し、PWMオン状態における始点のタイミングを表すオンパルスS18を生成する。電流検出部7は、各相のスイッチング素子に流れるモータ電流を電流検出抵抗RDで電圧に変換し、増幅器19で増幅することにより、電流検出信号S7を生成する。
比較部6は、動作状態相を表す動作状態相信号S16Bを転流制御部16から受ける。比較部6は、動作状態相信号S16Bに基づいて、電流検出信号S7と相トルク指令信号S8を比較する。電流検出信号S7が、動作状態相における相トルク指令信号S8よりも大きい場合、動作状態相に対してオフパルスS6を生成する。PWM制御部17は、例えばSRフリップフロップの構成になっており、オンパルスS18によりセットされ、オフパルスS6によりリセットされるPWM制御信号S17を生成し、転流制御部16に送る。このように、動作状態相のPWMパルス幅が制御される。上述の構成および動作は、3相モータ巻線すべてにモータ電流が存在する場合も、電流制御を可能にする。なお120度通電を行う場合には、3相同時に通電するモータ電流スロープ制御をせずに、同時に通電する相は2相だけなので、相トルク指令信号S8は1本で済む。
次に逆起電圧モードの通電相制御について説明する。転流制御部16と逆起電圧検出部14は連携して動作する。転流制御部16は、各相における逆起電圧の極性が変化すると予測される期間において、対応する相のモータ電流をゼロにする通電制御を行う。モータ電流がゼロである相、すなわち非通電相では、モータ電流の時間変化成分も、短時間後にゼロになる。非通電相の巻線両端電圧には、逆起電圧が検出可能な状態で現れる。この逆起電圧の極性変化のタイミング、すなわちゼロクロスタイミングを検出して、ロータ位置を正確に認識することができる。
逆起電圧モードでは、閾値設定部12は、比較器23の2つの入力信号の比較に際して所定の閾値S12Cを設定する。入力信号間の電位差を閾値S12Cと比較し、比較器23の出力を変化させる。閾値S12Cにより、ゼロクロスタイミングのチャタリングを防止することができる。
転流制御部16は、各タイミングにおいてモータ電流およびその時間変化がゼロになる相を表す相選択信号S16Dを生成し、相選択部20に出力する。相選択部20には、モータ端子QUにおけるU相モータ端子電圧SU、モータ端子QVにおけるV相モータ端子電圧SV、モータ端子QWにおけるW相モータ端子電圧SW、および中性点CNにおける中性点電圧SCNも入力される。相選択部20は、相選択信号S16Dに基づいて、各相モータ端子電圧SU、SV、SWのうち、1つを選択し、中性点電圧SCNとともに、比較器23に送る。比較器23は、選択されたモータ端子電圧と中性点電圧SCNとの差、すなわち選択されたモータ端子の逆起電圧、の絶対値を閾値S12Cと比較し、閾値S12C以上であればロータの位相情報を表すロータ位相信号S23を生成し、転流制御部16に送る。転流制御部16は、ロータ位相信号S23に基づいて、正確な転流タイミングの制御を継続的に維持する。
なお、比較器23は、上述のように、入力されるモータ端子電圧と中性点電圧SCNに対して、閾値S12Cのオフセットを与えて比較し、ロータ位相信号S23を生成する。この比較動作は、より一般的には、入力されるモータ端子電圧と中性点電圧SCNとの差を表す逆起電圧を検出し、検出結果を閾値S12Cと比較し、ロータ位相信号S23を生成する、と表すことができる。またロータ位相信号S23としては、比較結果の2値信号であってもよいし、検出された逆起電圧そのものであってもよい。さらに、閾値設定部12により比較器23に設けられるオフセット値の代わりに、転流制御部16にラッチを設け、ロータ位相信号S23をラッチしても、チャタリングを防止できる。相選択部20は、逆起電圧モードだけでなく、探索起動モードでも使用される。
次に、探索起動モードについて説明する。本発明のモータ駆動装置は、停止から起動直後の極低速回転状態まで、探索起動モードとして動作する。探索起動モードでは、探索ステップと起動ステップとが交互に繰り返されることにより、起動および加速が行われる。探索ステップは探索状態、起動ステップは起動状態とも呼ばれる。探索ステップでは、転流制御部16は、3相のうち2つの相を選択し、駆動部2は、この2つの相に対して探索パルスを印加する。探索パルスは、探索パルス電流、もしくは探索電流とも呼ばれる。探索パルスは、ロータが動かない程度に極めて短時間あるいは微小印加され、ロータ位置が検出される。起動ステップでは、ロータ位置の判明後、好適なステータ相に起動パルスが印加され、起動トルクが与えられる。起動パルスは、起動パルス電流、もしくは起動電流とも呼ばれる。
次に図1Aにおいて、探索起動モードに関係する部分の構成を説明する。転流制御部16は、中性点差電圧検出部13における2つの各所定の閾値S12A、S12Bを制御する閾値制御信号S16Eを、閾値設定部12に出力する。閾値設定部12は、閾値制御信号S16Eに基づいて、比較器21に所定の正の閾値S12Aを与え、比較器22に所定の負の閾値S12Bを与える。ここで、正の閾値S12Aおよび負の閾値S12Bのそれぞれの絶対値は、本発明の実施形態では簡単化のため等しいとするが、異なってもよい。なお、中性点差電圧検出部13を1つの比較器により構成し、閾値設定部12は、中性点差電圧検出部13に正の閾値S12Aと負の閾値S12Bを与え、中性点差電圧検出部13は、与えられた正の閾値S12Aと負の閾値S12Bを適宜切替えて使用するようにしてもよい。また、閾値設定部12は、正の閾値S12Aと負の閾値S12Bを時分割的に1系統化し、中性点差電圧検出部13に1系統で送るようにしてもよい。
比較器21および比較器22には、中性点電圧SCNと、疑似中性点PNにおける疑似中性点電圧SPNが入力される。比較器21は、中性点電圧SCNと疑似中性点電圧SPNの差が、正の閾値S12A以上であれば、閾値超過信号S21を生成し、転流制御部16に送る。比較器22は、中性点電圧SCNと疑似中性点電圧SPNの差が、負の閾値S12B以下であれば、閾値超過信号S22を生成し、転流制御部16に送る。中性点電圧SCNと疑似中性点電圧SPNとの差電圧を、中性点差電圧と呼ぶ。すなわち中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧と所定の各閾値S12A、S12Bとの差の極性が、中性点差電圧の極性と一致する場合、閾値超過信号S21またはS22を生成し、転流制御部16に送る。これにより、ロータ位置が検出され、探索ステップが終了する。
なお、閾値超過信号は、検出結果信号とも呼ばれる。また、比較器21は、上述のように、入力される中性点電圧SCNと疑似中性点電圧SPNに対して、閾値S12Aのオフセットを与えて比較し、閾値超過信号S21を生成する。比較器22についても同様である。この比較動作は、より一般的には、入力される中性点電圧SCNと疑似中性点電圧SPNとの差を表す中性点差電圧を検出し、検出結果を各閾値S12A、S12Bと比較し、閾値超過信号S21を生成する、と表すことができる。また閾値超過信号S21としては、比較結果の2値信号であってもよいし、検出された中性点差電圧そのものであってもよい。
次に、探索ステップに関する動作を説明する。
図2は、2相通電において、探索パルスの印加に対する中性点差電圧を測定した波形図である。縦軸は、中性点電圧を表し、基準は、疑似中性点電圧SPN(0mV)としている。横軸は、ロータの相対位置を表し、基準は、モータ端子QUからモータ端子QVに定常電流を流す場合にロータがロックされる位置(150度)としている。このようなロータの相対位置を、ただ単にロータ位置と呼ぶ。後述の、図3、図4、図5、図6、図7、図8、図9、図12、図13、図18、図19、図21、図22、図23、図24、図26、図27、図28、図29についても、横軸の基準は同様である。第1の実施形態では、探索パルスは、2相通電により印加される。図2(a)の場合、探索パルスは、U相をソース相、V相をシンク相として、ロータが動かない程度に極めて短時間あるいは微小印加される。また図2(b)の場合、探索パルスは、V相をソース相、U相をシンク相として、ロータが動かない程度に極めて短時間あるいは微小印加される。
ここでソース相は、駆動部2からモータ巻線にモータ電流を流出する相であり、シンク相は、モータ巻線から駆動部2にモータ電流を流入する相である。またソース電流は、ソース相におけるモータ電流であり、シンク電流は、シンク相におけるモータ電流である。
図2において、M1およびM2は中性点差電圧であり、S12AおよびS12Bは、それぞれ正の閾値および負の閾値である。なお、図2(a)のように、U相をソース相、V相をシンク相として、電流パルスを流すことを、U⇒Vと表す。また図2(b)のように、V相をソース相、U相をシンク相として、電流パルスを流すことをV⇒Uと表す。同様にすべての実施形態において、ソース相からシンク相に電流パルスを流すことを、(ソース相)⇒(シンク相)、と表す。ここで(ソース相)および(シンク相)は、それぞれU、V、Wのいずれかである。(ソース相)⇒(シンク相)は、電流パルスを流すときの通電相が(ソース相)と(シンク相)であり、電流パルスの向きが(ソース相)から(シンク相)に向かっていることを表している。電流パルスが探索パルスの場合、(ソース相)⇒(シンク相)を、探索通電相と呼ぶ。
図2(a)において、中性点差電圧M1は、110度付近と190度付近に大きな極値を有する。110度付近の極値は最小値、190度付近の極値は最大値である。150度付近で中性点差電圧M1は0mVとなるが、U⇒Vに定常電流を流す場合にロータがロックされる位置を150度としたことに対応する。この角度を、探索通電相中心角度と呼ぶ。また図2(b)において、中性点差電圧M2は、10度付近と290度付近に大きな極値を有する。10度付近の極値は最小値、290度付近の極値は最大値である。探索通電相中心角度は、330度である。なお、図示してはいないが、V⇒Wの場合の中性点差電圧、およびW⇒Uの場合の中性点差電圧は、図2(a)の中性点差電圧M1を、それぞれ+120度、および−120度だけ移動した波形になる。またW⇒Vの場合の中性点差電圧、およびU⇒Wの場合の中性点差電圧は、図2(b)の中性点差電圧M2を、それぞれ+120度、および−120度だけ移動した波形になる。
ここで図2において、ロータ位置360度のうち、所定の角度から所定の角度までの角度の範囲を探索角度範囲と呼ぶ。図2(a)において、中性点差電圧M1は、探索角度範囲D1Nだけ負の閾値S12B以下になり、探索角度範囲D1Pだけ正の閾値S12A以上になる。さらに図2(b)において、中性点差電圧M2は、探索角度範囲D4Nだけ負の閾値S12B以下になり、探索角度範囲D4Pだけ正の閾値S12A以上になる。探索角度範囲D1P、D1N、D4P、D4Nのそれぞれの角度差は、大略等しい。この角度差を、探索角度差DPNと呼ぶ。
図3は、図2と同じ横軸に対して、中性点差電圧検出部13の動作を示す波形図である。図3(b)、(c)の波形信号は、図2(a)の中性点差電圧M1を、それぞれ正の閾値S12A、負の閾値S12Bと比較した結果である。同様に、図3(d)、(e)の波形信号は、図2(b)の中性点差電圧M2を、それぞれ正の閾値S12A、負の閾値S12Bと比較した結果である。図示する各探索角度範囲D1P、D1N、D4P、D4Nは、図2に図示したものに対応する。
図3(b)、(d)の各波形信号は、中性点差電圧が正の閾値S12A以上になると、ハイレベルになる。図3(c)、(e)の各波形信号は、中性点差電圧が負の閾値S12B以下になると、ローレベルになる。図3(b)、(d)の各波形信号がハイレベルとなる期間、および図3(c)、(e)の各波形信号がローレベルとなる期間は、中性点差電圧が各所定の閾値S12A、S12Bを超えた期間である。ハイレベルとなる期間における図3(b)、(d)の各波形信号を、閾値超過信号S21、と呼び、ローレベルとなる期間における図3(c)、(e)の各波形信号を、閾値超過信号S22と呼ぶ。すなわち、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧と所定の各閾値S12A、S12Bとの差の極性が、中性点差電圧の極性と一致する場合、閾値超過信号S21またはS22を生成し、転流制御部16に送る。これにより、ロータ位置が検出され、探索ステップが終了する。
次に、起動ステップに関する動作を説明する。
図3(a)において、TU、TV、TWは、それぞれU相モータ巻線、V相モータ巻線、W相モータ巻線のトルク定数を表す。トルク定数とは、モータ巻線に流れるモータ電流に対して、得られるトルクを比で表したものである。ある相のトルク定数が正の場合、対応するモータ巻線にソース電流を流すと、正回転方向にトルクが発生しロータが加速する。また、ある相のトルク定数が負の場合、対応するモータ巻線にシンク電流を流すと、正回転方向にトルクが発生しロータが加速する。
例えば図3(b)において、閾値超過信号S21がハイレベルとなる期間では、V相トルク定数TVは正の値、W相トルク定数TWは負の値であるので、V⇒Wの向きにロータが動き出す程度の時間あるいは振幅を有する電流パルスを流せば、正回転方向にトルクが発生する。同様に、図3(c)において、閾値超過信号S22がローレベルとなる期間では、U相トルク定数TUは正の値、W相トルク定数TWは負の値であるので、U⇒Wの向きにロータが動き出す程度の時間あるいは振幅を有する電流パルスを流せば、正回転方向にトルクが発生する。
同様に、図3(d)においては、閾値超過信号S21がハイレベルとなる期間に、W⇒Uの向きに、また図3(e)においては、閾値超過信号S22がローレベルとなる期間に、W⇒Vの向きに、それぞれロータが動き出す程度の時間あるいは振幅を有する電流パルスを流せば、正回転方向にトルクが発生する。ここでロータ停止時に、正回転方向にトルクが発生する通電相を、起動通電相と呼び、(ソース相)⇒(シンク相)で表す。
図3は、図2と同じく横軸の基準として、U相モータ巻線からV相モータ巻線に定常電流を流す場合、ロータがロックされる位置を150度としている。この150度は、図3(a)の場合、U相トルク定数TUとV相トルク定数TVがともに正で、かつ大きさが一致するロータ位置になっている。すなわち、U相トルク定数TUとV相トルク定数TVがともに正の位置で交差する点において、正のU相トルク定数TUにソース電流を流し、正のV相トルク定数TVにシンク電流を流すことになり、しかもソース電流とシンク電流の大きさが一致するので、ロータは動かずにロックされる。このように上述の横軸の基準と、図3(a)の各トルク定数TU、TV、TWの波形は対応する。同図において、U相トルク定数TUは、ロータ位置0度において、正方向に発生しはじめる。この場合、U相モータ巻線の逆起電圧も、ロータ位置0度において、中性点電圧SCNを基準として正方向に発生しはじめる。
図4は、2相通電において、各探索通電相に対する、中性点差電圧検出部13における所定の閾値の極性と、中性点差電圧の最大値または最小値におけるロータ位置と、起動通電相との関係を示す関係図である。
3相モータにおいて、U相、V相、W相の内の2相の組み合わせからなる探索通電相は、全部で6種類である。第1の実施形態では、ロータを正回転させるため、探索通電相は、U⇒V(状態F1)、U⇒W(状態F2)、V⇒W(状態F3)、V⇒U(状態F4)、W⇒U(状態F5)、W⇒V(状態F6)、U⇒V(状態F1)、・・・の順序で切替えられる。このように探索通電相が6状態ごとに循環する系列を、探索通電相系列と呼ぶ。
各状態F1、F2、F3、F4、F5、F6について、各2つの起動通電相は、起動通電相系列FAと起動通電相系列FBに分割される。分割の仕方は、ロータ位置がそれぞれの起動通電相系列について等間隔になるように、しかも各状態F1からF6における探索角度範囲が、全電気角360度にわたって抜けなく行き渡るようにしている。
状態F1は、探索通電相をU⇒Vに設定し、閾値超過信号S22がローレベルになると、ロータ位置が110度付近の最小値と検出され、起動通電相をU⇒Wに設定する。または状態F1は、閾値超過信号S21がハイレベルになると、ロータ位置が190度付近と検出され、起動通電相をV⇒Wに設定する。
状態F2は、探索通電相をU⇒Wに設定し、閾値超過信号S21がハイレベルになると、ロータ位置が170度付近の最大値と検出され、起動通電相をV⇒Wに設定する。または状態F2は、閾値超過信号S22がローレベルになると、ロータ位置が250度付近と検出され、起動通電相をV⇒Uに設定する。
状態F3は、探索通電相をV⇒Wに設定し、閾値超過信号S22がローレベルになると、ロータ位置が230度付近の最小値と検出され、起動通電相をV⇒Uに設定する。または状態F3は、閾値超過信号S21がハイレベルになると、ロータ位置が310度付近と検出され、起動通電相をW⇒Uに設定する。
状態F4は、探索通電相をV⇒Uに設定し、閾値超過信号S21がハイレベルになると、ロータ位置が290度付近の最大値と検出され、起動通電相をW⇒Uに設定する。または状態F4は、閾値超過信号S22がローレベルになると、ロータ位置が10度付近と検出され、起動通電相をW⇒Vに設定する。
状態F5は、探索通電相をW⇒Uに設定し、閾値超過信号S22がローレベルになると、ロータ位置が350度付近の最小値と検出され、起動通電相をW⇒Vに設定する。または状態F5は、閾値超過信号S21がハイレベルになると、ロータ位置が70度付近と検出され、起動通電相をU⇒Vに設定する。
状態F6は、探索通電相をW⇒Vに設定し、閾値超過信号S21がハイレベルになると、ロータ位置が50度付近の最大値と検出され、起動通電相をU⇒Vに設定する。または状態F6は、閾値超過信号S22がローレベルになると、ロータ位置が130度付近と検出され、起動通電相をU⇒Wに設定する。
起動通電相系列FAの最大値や最小値のロータ位置は、50度付近、110度付近、170度付近、230度付近、290度付近、および350度付近となり、起動通電相系列FBの最大値や最小値のロータ位置は、70度付近、130度付近、190度付近、250度付近、310度付近、および10度付近となる。各起動通電相系列FA、FBとも、最大値や最小値のロータ位置は、60度間隔になっている。しかし最大値や最小値となるロータ位置の所望の値を、60度付近、120度付近、180度付近、240度付近、300度付近、および0度(360度)付近とすれば、所望の値から若干ずれていることがわかる。探索通電相中心角度は、各探索通電相において、各起動通電相系列FA、FBにおける最大値や最小値のロータ位置の平均値になるから、状態F1からF6に対して、それぞれ150度、210度、270度、330度、30度、90度となる。これも60度間隔になっている。
このように、各起動通電相系列FA、FBは、起動通電相が60度間隔で6状態ごとに循環する系列になっている。またそれぞれの切替え順序は、探索通電相系列の切替え順序と一致し、その方向は、探索通電相系列と同様に、ロータを正回転させる方向になっている。しかし起動通電相系列FAの切替え順序は、探索通電相系列の切替え順序に対して、1つ進んでいる。さらに起動通電相系列FBの切替え順序は、起動通電相系列FAの切替え順序に対して、1つ進んでいる。すなわち起動通電相系列FBの切替え順序は、探索通電相系列の切替え順序に対して、2つ進んでいる。
探索ステップにおいて、中性点差電圧の絶対値が所定閾値以上の探索通電相を検出する。起動ステップにおいては、この探索通電相に対して、起動通電相系列がFAの場合、1つ進めた起動通電相に設定し、起動通電相系列がFBの場合、2つ進めた起動通電相に設定する。この起動通電相に対し、起動パルスを与える。後述するように、2回目以降の探索通電相として直前の起動通電相を利用する場合、各起動通電相系列FA、FBの使い分けが意味を持つ。すなわち、起動ステップによりロータ位置が約60度ずつ移動する場合、起動通電相系列FAが適しており、また回転速度が速まり、起動ステップによりロータ位置が約120度ずつ移動する場合、起動通電相系列FBが適している。いずれにしても、ロータ位置が60度から120度進んだ探索通電相を使用することが可能になり、探索起動ステップの立ち上がりを早くすることができる。
また起動通電相系列FAの場合、1回目の探索ステップの後、1回目の起動ステップを実行し、2回目の探索ステップは1回目の起動ステップの結果を利用する。次に2回目の起動ステップは、起動通電相系列FA内の次の起動通電相に対して実行し、3回目の探索ステップは2回目の起動ステップの結果を利用する。このようにしていけば、起動通電相系列FAだけで、全6種類の探索通電相に対してロータ位置が探索可能となり、起動通電相を設定することができる。
このように、1回の探索パルスにより、正負の閾値分に対応して、120度という広い探索角度範囲のロータ位置を探索可能であり、1回目の探索ステップだけでもロータ位置を特定できる確率が高い。これにより、特殊な3相ブラシレスモータにおいても、ロータ位置を短時間に特定可能で、引き続く起動ステップと併せて、確実に起動開始可能となる。
図5は、2相通電における探索通電相の探索角度範囲を示す説明図である。
U⇒V(負)は、U相からV相に電流パルスを与える探索通電相において、負の閾値S12Bに基づいて比較器22で中性点差電圧が検出され、ロータ位置が検出される探索角度範囲を示している。また、U⇒V(正)とは、U相からV相に電流パルスを与える探索通電相において、正の閾値S12Aに基づいて比較器21で中性点差電圧が検出され、ロータ位置が検出される探索角度範囲を示している。V⇒U(正)、V⇒U(負)、V⇒W(正)、V⇒W(負)、W⇒V(正)、W⇒V(負)、W⇒U(正)、W⇒U(負)、U⇒W(正)、U⇒W(負)についても、同様である。
ここで、図5を中心に、図1A、図2、図4を参照し、2相通電における探索起動モードについて、その動作を説明する。
本発明のモータ駆動装置は、停止から起動直後の極低速回転状態まで、探索起動モードとして動作する。探索起動モードでは、探索ステップと起動ステップとが交互に繰り返されることにより、起動および加速が行われる。探索ステップでは、転流制御部16は、3相のうち2つの相の組み合わせからなる探索通電相を選択し、駆動部2は、この探索通電相に対して探索パルスを印加する。探索パルスは、ロータが動かない程度に極めて短時間あるいは微小印加され、ロータ位置が検出される。起動ステップでは、ロータ位置の判明後、好適な起動通電相に起動パルスが印加され、起動トルクが与えられる。
最初に、図4の状態F1において、転流制御部16は、探索通電相U⇒Vに基づいて、図1Aにおける高電位側スイッチング素子Q1および低電位側スイッチング素子Q5をオンする。これにより、探索パルスは、高電位側電源3、高電位側スイッチング素子Q1、U相モータ巻線LU、中性点CN、V相モータ巻線LV、低電位側スイッチング素子Q5、電流検出抵抗RD、低電位側電源4、の経路で流れる。すなわち探索パルスは、U相モータ巻線LUからV相モータ巻線LVに流れる。図2(a)の中性点差電圧M1は、この場合、ロータ位置に対して中性点CNと疑似中性点PN間に生じる電圧の測定データである。
探索起動モードでは、閾値設定部12は、所定の正の閾値S12Aを比較器21に与え、所定の負の閾値S12Bを比較器22に与える。図2(a)、(b)には、正の閾値S12Aおよび負の閾値S12Bが図示されている。このとき中性点電圧SCNを比較器21および比較器22の非反転入力端子に入力し、疑似中性点電圧SPNを反転入力端子に入力する。
この場合、閾値超過信号S21がハイレベルであれば、図2(a)により、ロータ位置は190度付近であると検出される。閾値超過信号S22がローレベルであれば、図2(a)により、ロータ位置は110度付近であると検出される。閾値超過信号S21および閾値超過信号S22が、それぞれローレベルおよびハイレベルの場合、ロータは他の角度範囲にあるものと判定される。
ここで190度付近にあるロータに対しては、起動通電相系列FBが採用され、起動通電相V⇒Wに基づいて、各スイッチング素子Q2、Q6をオンする。これにより、V相モータ巻線LVからW相モータ巻線LWに起動パルスは流れ、良好な起動トルクを与えることができる。110度付近の位置にあるロータに対しては、起動通電相系列FAが採用され、起動通電相U⇒Wに基づいて、各スイッチング素子Q1、Q6をオンする。これにより、U相モータ巻線LUからW相モータ巻線LWに起動パルスが流れ、良好な起動トルクを与えることができる。
次に、図4の状態F4において、転流制御部16は、探索通電相V⇒Uに基づいて、各スイッチング素子Q2、Q4をオンする。これにより、探索パルスは、高電位側電源3、高電位側スイッチング素子Q2、V相モータ巻線LV、中性点CN、U相モータ巻線LU、低電位側スイッチング素子Q4、電流検出抵抗RD、低電位側電源4、の経路で流れる。すなわち探索パルスは、V相モータ巻線LVからU相モータ巻線LUに流れる。図2(b)の中性点差電圧M2は、この場合、ロータ位置に対して中性点CNと疑似中性点PN間に生じる電圧の測定データである。
この場合、閾値超過信号S21がハイレベルであれば、図2(b)により、ロータ位置は290度付近であると検出される。閾値超過信号S22がローレベルであれば、図2(b)により、ロータ位置は10度付近であると検出される。閾値超過信号S21および閾値超過信号S22が、それぞれローレベルおよびハイレベルの場合、ロータは他の角度範囲にあるものと判定され、U相とV相以外の組合せを選んで探索ステップを継続する。
ここで290度付近にあるロータに対しては、起動通電相系列FAが採用され、起動通電相W⇒Uに基づいて、各スイッチング素子Q3、Q4をオンする。これにより、W相モータ巻線LWからU相モータ巻線LUに起動パルスが流れ、良好な起動トルクを与えることができる。10度付近の位置にあるロータに対しては、起動通電相系列FBが採用され、起動通電相W⇒Vに基づいて、各スイッチング素子Q3、Q5をオンする。これにより、W相モータ巻線LWからV相モータ巻線LVに起動パルスが流れ、良好な起動トルクを与えることができる。
次に、図4の状態F3において、転流制御部16は、探索通電相V⇒Wに基づいて、各スイッチング素子Q2、Q6をオンする。これにより、探索パルスは、V相モータ巻線LVからW相モータ巻線LWに流れる。この場合、閾値超過信号S21がハイレベルであれば、ロータ位置は310度付近であると検出される。閾値超過信号S22がローレベルであれば、ロータ位置は230度付近であると検出される。閾値超過信号S21および閾値超過信号S22が、それぞれローレベルおよびハイレベルの場合、ロータは他の角度範囲にあるものと判定される。
ここで310度付近にあるロータに対しては、起動通電相系列FBが採用され、起動通電相W⇒Uに基づいて、各スイッチング素子Q3、Q4をオンする。これにより、W相モータ巻線LWからU相モータ巻線LUに起動パルスが流れ、良好な起動トルクを与えることができる。230度付近の位置にあるロータに対しては、起動通電相系列FAが採用され、起動通電相V⇒Uに基づいて、各スイッチング素子Q2、Q4をオンする。これにより、V相モータ巻線LVからU相モータ巻線LUに起動パルスが流れ、良好な起動トルクを与えることができる。
次に、図4の状態F6において、転流制御部16は、探索通電相W⇒Vに基づいて、各スイッチング素子Q3、Q5をオンする。これにより、探索パルスは、W相モータ巻線LWからV相モータ巻線LVに流れる。この場合、閾値超過信号S21がハイレベルであれば、ロータ位置は50度付近であると検出される。閾値超過信号S22がローレベルであれば、ロータ位置は130度付近であると検出される。閾値超過信号S21および閾値超過信号S22が、それぞれローレベルおよびハイレベルの場合、ロータは他の角度範囲にあるものと判定され、V相とW相以外の組合せを選んで探索ステップを継続する。
ここで50度付近にあるロータに対しては、起動通電相系列FAが採用され、起動通電相U⇒Vに基づいて、各スイッチング素子Q1、Q5をオンする。これにより、U相モータ巻線LUからV相モータ巻線LVに起動パルスが流れ、良好な起動トルクを与えることができる。130度付近の位置にあるロータに対しては、起動通電相系列FBが採用され、起動通電相U⇒Wに基づいて、各スイッチング素子Q1、Q6をオンする。これにより、U相モータ巻線LUからW相モータ巻線LWに起動パルスが流れ、良好な起動トルクを与えることができる。
次に、図4の状態F5において、転流制御部16は、探索通電相W⇒Uに基づいて、各スイッチング素子Q3、Q4をオンする。これにより、探索パルスは、W相モータ巻線LWからU相モータ巻線LUに流れる。この場合、閾値超過信号S21がハイレベルであれば、ロータ位置は70度付近であると検出される。閾値超過信号S22がローレベルであれば、ロータ位置は350度付近であると検出される。閾値超過信号S21および閾値超過信号S22が、それぞれローレベルおよびハイレベルの場合、ロータは他の角度範囲にあるものと判定される。
ここで70度付近にあるロータに対しては、起動通電相系列FBが採用され、起動通電相U⇒Vに基づいて、各スイッチング素子Q1、Q5をオンする。これにより、U相モータ巻線LUからV相モータ巻線LVに起動パルスが流れ、良好な起動トルクを与えることができる。350度付近の位置にあるロータに対しては、起動通電相系列FAが採用され、起動通電相W⇒Vに基づいて、各スイッチング素子Q3、Q5をオンする。これにより、W相モータ巻線LWからV相モータ巻線LVに起動パルスが流れ、良好な起動トルクを与えることができる。
次に、図4の状態F2において、転流制御部16は、探索通電相U⇒Wに基づいて、各スイッチング素子Q1、Q6をオンする。これにより、探索パルスは、U相モータ巻線LUからW相モータ巻線LWに流れる。この場合、閾値超過信号S21がハイレベルであれば、ロータ位置は170度付近であると検出される。閾値超過信号S22がローレベルであれば、ロータ位置は250度付近であると検出される。閾値超過信号S21および閾値超過信号S22が、それぞれローレベルおよびハイレベルの場合、ロータは他の角度範囲にあるものと判定され、W相とU相以外の組合せを選んで探索ステップを継続する。
ここで170度付近にあるロータに対しては、起動通電相系列FAが採用され、起動通電相V⇒Wに基づいて、各スイッチング素子Q2、Q6をオンする。これにより、V相モータ巻線LVからW相モータ巻線LWに起動パルスが流れ、良好な起動トルクを与えることができる。250度付近の位置にあるロータに対しては、起動通電相系列FBが採用され、起動通電相V⇒Uに基づいて、各スイッチング素子Q2、Q4をオンする。これにより、V相モータ巻線LVからU相モータ巻線LUに起動パルスが流れ、良好な起動トルクを与えることができる。
以上、3相モータの印加極性も含めて6種類の探索通電相について、また所定閾値の正負も考慮すると12種類の探索角度範囲について説明したが、基本的にこの6種類の探索通電相において、探索パルス印加時の中性点差電圧から、ロータ位置の検出は十分行うことができる。
ここで、探索通電相に対応する駆動信号S16Cを、探索駆動信号S16C、起動通電相に対応する駆動信号S16Cを、起動駆動信号S16Cと呼ぶ。探索ステップにおいて、駆動信号生成部5は、探索通電相に基づいて探索駆動信号S16Cを生成し、駆動部2は、探索駆動信号S16Cに基づいて、探索電流を生成する。起動ステップにおいて、駆動信号生成部5は、起動通電相に基づいて起動駆動信号S16Cを生成し、駆動部2は、起動駆動信号S16Cに基づいて、起動電流を生成する。逆起電圧モードにおいて、駆動信号生成部5は、通電相に基づいて通常駆動信号S16Cを生成し、駆動部2は、通常駆動信号S16Cに基づいて、駆動電流を生成する。探索駆動信号、起動駆動信号、通常駆動信号を総称して、単に駆動信号と呼ぶ。
図7は、図5のU相、V相、W相を、それぞれ第1相、第2相、第3相に一般化した説明図である。ここで第1相は、U相、V相、W相のうち、いずれか1つの相を指し、第2相は、U相、V相、W相のうち、第1相以外のいずれか1つの相を指し、第3相は、U相、V相、W相のうちの、第1相と第2相以外の残りの1つの相を指す。例として、ここではU相を第1相、V相を第2相、W相を第3相とする。第1相⇒第2相(正)はU⇒V(正)に、第2相⇒第3相(正)はV⇒W(正)に、第3相⇒第1相(正)はW⇒U(正)に、第1相⇒第2相(負)はU⇒V(負)に、第2相⇒第3相(負)はV⇒W(負)に、第3相⇒第1相(負)はW⇒U(負)に対応する。またU⇒V(正)/(負)は、U⇒V(正)およびU⇒V(負)の簡略標記を表す。その他の探索通電相についても、同様な簡略標記を使用する。図5と図7から分るように、これら6種類の探索通電相について、全部に探索パルスを印加する必要はない。
図5において、探索通電相を3種類の各探索条件1A、2A、3Aに分類する。
(1A)・・・ U⇒V(正)/(負)、V⇒U(正)/(負)
(2A)・・・ V⇒W(正)/(負)、W⇒V(正)/(負)
(3A)・・・ W⇒U(正)/(負)、U⇒W(正)/(負)
同様に図7において、探索通電相を3種類の各探索条件1B、2B、3Bに分類する。
(1B)・・・ 第1相⇒第2相(正)/(負)、第2相⇒第1相(正)/(負)
(2B)・・・ 第2相⇒第3相(正)/(負)、第3相⇒第2相(正)/(負)
(3B)・・・ 第3相⇒第1相(正)/(負)、第1相⇒第3相(正)/(負)
各探索条件1A、2A、3A、あるいは各探索条件1B、2B、3Bのいずれについても、2種類の探索通電相に基づいた4つの探索角度範囲は、重複が少ないのでロータ位置の探索に効率的である。1回目の探索ステップにおいて、これら3種類の探索条件のうち1つを選択して、1回目の探索パルスを印加する。ロータ位置が検出できなければ、同じ探索条件で印加極性を逆にして2回目の探索パルスを印加する。ロータ位置が検出できなければ、3種類の探索条件のうち別の1つを選択して、3回目の探索パルスを印加する。ロータ位置が検出できなければ、同じ探索条件で印加極性を逆にして4回目の探索パルスを印加する。
例えば、1回目の探索ステップにおいて、探索条件1Aを選択して、探索通電相U⇒Vに対し1回目の探索パルスを印加する。ロータ位置が検出できなければ、探索通電相V⇒Uに対し2回目の探索パルスを印加する。ロータ位置が検出できなければ、探索条件2Aを選択して、探索通電相V⇒Wに対し3回目の探索パルスを印加する。ロータ位置が検出できなければ、探索通電相W⇒Vに対し4回目の探索パルスを印加する。
1回目の探索ステップの後、1回目の起動ステップを経て、2回目の探索ステップに入る。2回目以降の探索ステップにおける1回目の探索パルスの印加には、1回目の探索ステップにおいて、ロータ位置が検出できた探索通電相を使用する。ロータ位置が検出できなければ、2回目の探索パルスの印加には、ロータが60度正回転するとした場合の探索通電相を使用する。
例えば、1回目の探索ステップにおいて、ロータ位置が検出できた探索通電相をU⇒Vとすると、2回目の探索ステップにおける1回目の探索パルスの印加には、探索通電相U⇒Vを使用する。ロータ位置が検出できなければ、2回目の探索パルスの印加には、ロータが60度正回転するとした場合の探索通電相U⇒Wを使用する。
また図5において、3種類の探索通電相U⇒V(正)/(負)と、V⇒W(正)/(負)と、W⇒U(正)/(負)とは、互いに位置の重複が少ない。これらのうち2種類の探索通電相について、探索パルスを1種類につき1回ずつ合計2回順次印加してもよい。このように、1対の端子間に順方向および逆方向に探索パルスを印加する各探索条件1A、2A、3Aのロータ位置把握率は、各探索条件ともほぼ同等である。続いて3回目の探索パルスは、上述の2種類のうち一方の探索通電相に逆極性で印加し、4回目の探索パルスは上述の2種類のうち他方の探索通電相に逆極性で印加すれば、すべてのロータ位置を把握することができる。
例えば、探索パルスを、U⇒V(正)/(負)、V⇒W(正)/(負)、V⇒U(正)/(負)、W⇒V(正)/(負)の順に、1回目から4回目まで印加すれば、ロータ位置を把握できる。またこの手順を一部変えて、探索パルスの印加を、U⇒V(正)/(負)、V⇒W(正)/(負)、W⇒V(正)/(負)、V⇒U(正)/(負)の順に、1回目から4回目まで印加しても、ロータ位置を把握できる。この場合V相は、1回目の探索パルスの印加ではシンク相であり、2回目の探索パルス印加ではソース相となっている。もし2回目の探索パルスの印加においてもV相がシンク相であれば、1回目の電流パルス印加と2回目の電流パルス印加で、探索角度範囲が図5のU⇒V(正)/(負)、W⇒V(正)/(負)となり、重複が大きくロータ位置の早期検出率が低下する。
同様に、3種類の探索通電相V⇒U(正)/(負)と、W⇒V(正)/(負)と、U⇒W(正)/(負)とは、互いに位置の重複が少ない。これらのうち2種類の探索通電相について、探索パルスを1種類につき1回ずつ合計2回順次印加してもよい。このように、1対の端子間に順方向および逆方向に探索パルスを印加する各探索条件1A、2A、3Aのロータ位置把握率は、各探索条件ともほぼ同等である。続いて3回目の探索パルスは、上述の2種類のうち一方の探索通電相に逆極性で印加し、4回目の探索パルスは上述の2種類のうち他方の探索通電相に逆極性で印加すれば、すべてのロータ位置を把握することができる。
ここで、図5を中心に、図1A、図2、図4を参照して、探索ステップから起動ステップまでの探索起動モードを説明する。
図7に記載されている内、例えば
第1相⇒第2相(正)/(負)、第2相⇒第1相(正)/(負)、
第2相⇒第3相(正)/(負)、第3相⇒第2相(正)/(負)、
つまり、
U⇒V(正)/(負)、V⇒U(正)/(負)、
V⇒W(正)/(負)、W⇒V(正)/(負)、
を例として説明する。
本発明のモータ駆動装置は、停止から起動直後の極低速回転状態まで、探索起動モードとして動作する。探索起動モードでは、探索ステップと起動ステップとが交互に繰り返されることにより、起動および加速が行われる。探索ステップでは、転流制御部16は、3相のうち2つの相を選択し、駆動部2は、この2つの相に対して探索パルスを印加する。探索パルスは、ロータが動かない程度に極めて短時間あるいは微小印加され、ロータ位置が検出される。起動ステップでは、ロータ位置の判明後、好適なステータ相に起動パルスが印加され、起動トルクが与えられる。
最初に、図4の状態F1において、転流制御部16は、探索通電相U⇒Vに基づいて図1Aにおける高電位側スイッチング素子Q1および低電位側スイッチング素子Q5をオンすることにより、探索パルスを、高電位側電源3、高電位側スイッチング素子Q1、U相モータ巻線LU、中性点CN、V相モータ巻線LV、低電位側スイッチング素子Q5、電流検出抵抗RD、低電位側電源4、の経路で流す。すなわち探索パルスを、U相モータ巻線LUからV相モータ巻線LVに流す。このとき中性点電圧SCNを比較器21および比較器22の非反転入力端子に入力し、疑似中性点電圧SPNを反転入力端子に入力する。
この場合、閾値超過信号S21がハイレベルであれば、ロータ位置は190度付近であると検出される。閾値超過信号S22がローレベルであれば、ロータ位置は110度付近であると検出される。閾値超過信号S21および閾値超過信号S22が、それぞれローレベルおよびハイレベルの場合、ロータは他の角度範囲にあるものと判定される。
ここで190度付近にあるロータに対しては、起動通電相系列FBが採用され、起動通電相V⇒Wに基づいて各スイッチング素子Q2、Q6をオンすることにより、V相モータ巻線LVからW相モータ巻線LWに起動パルスを流し、良好な起動トルクを与えることができる。110度付近の位置にあるロータに対しては、起動通電相系列FAが採用され、起動通電相U⇒Wに基づいて各スイッチング素子Q1、Q6をオンすることにより、U相モータ巻線LUからW相モータ巻線LWに起動パルスを流し、良好な起動トルクを与えることができる。
次に、図4の状態F4において、転流制御部16は、探索通電相V⇒Uに基づいて各スイッチング素子Q2、Q4をオンすることにより、探索パルスを、高電位側電源3、高電位側スイッチング素子Q2、V相モータ巻線LV、中性点CN、U相モータ巻線LU、低電位側スイッチング素子Q4、電流検出抵抗RD、低電位側電源4、の経路で流す。すなわち探索パルスを、V相モータ巻線LVからU相モータ巻線LUに流す。
この場合、閾値超過信号S21がハイレベルであれば、ロータ位置は290度付近であると検出される。閾値超過信号S22がローレベルであれば、ロータ位置は10度付近であると検出される。閾値超過信号S21および閾値超過信号S22が、それぞれローレベルおよびハイレベルの場合、ロータは他の角度範囲にあるものと判定され、U相とV相以外の組合せを選んで探索ステップを継続する。
ここで290度付近にあるロータに対しては、起動通電相系列FAが採用され、起動通電相W⇒Uに基づいて各スイッチング素子Q3、Q4をオンすることにより、W相モータ巻線LWからU相モータ巻線LUに起動パルスを流し、良好な起動トルクを与えることができる。10度付近の位置にあるロータに対しては、起動通電相系列FBが採用され、起動通電相W⇒Vに基づいて各スイッチング素子Q3、Q5をオンすることにより、W相モータ巻線LWからV相モータ巻線LVに起動パルスを流し、良好な起動トルクを与えることができる。
次に、図4の状態F3において、転流制御部16は、探索通電相V⇒Wに基づいて各スイッチング素子Q2、Q6をオンすることにより、探索パルスを、V相モータ巻線LVからW相モータ巻線LWに流す。この場合、閾値超過信号S21がハイレベルであれば、ロータ位置は310度付近であると検出される。閾値超過信号S22がローレベルであれば、ロータ位置は230度付近であると検出される。閾値超過信号S21および閾値超過信号S22が、それぞれローレベルおよびハイレベルの場合、ロータは他の角度範囲にあるものと判定される。
ここで310度付近にあるロータに対しては、起動通電相系列FBが採用され、起動通電相W⇒Uに基づいて各スイッチング素子Q3、Q4をオンすることにより、W相モータ巻線LWからU相モータ巻線LUに起動パルスを流し、良好な起動トルクを与えることができる。230度付近の位置にあるロータに対しては、起動通電相系列FAが採用され、起動通電相V⇒Uに基づいて各スイッチング素子Q2、Q4をオンすることにより、V相モータ巻線LVからU相モータ巻線LUに起動パルスを流し、良好な起動トルクを与えることができる。
次に、図4の状態F6において、転流制御部16は、探索通電相W⇒Vに基づいて各スイッチング素子Q3、Q5をオンすることにより、探索パルスを、W相モータ巻線LWからV相モータ巻線LVに流す。この場合、閾値超過信号S21がハイレベルであれば、ロータ位置は50度付近であると検出される。閾値超過信号S22がローレベルであれば、ロータ位置は130度付近であると検出される。閾値超過信号S21および閾値超過信号S22が、それぞれローレベルおよびハイレベルの場合、ロータは他の角度範囲にあるものと判定され、V相とW相以外の組合せを選んで探索ステップを継続する。
ここで50度付近にあるロータに対しては、起動通電相系列FAが採用され、起動通電相U⇒Vに基づいて各スイッチング素子Q1、Q5をオンすることにより、U相モータ巻線LUからV相モータ巻線LVに起動パルスを流し、良好な起動トルクを与えることができる。130度付近の位置にあるロータに対しては、起動通電相系列FBが採用され、起動通電相U⇒Wに基づいて各スイッチング素子Q1、Q6をオンすることにより、U相モータ巻線LUからW相モータ巻線LWに起動パルスを流し、良好な起動トルクを与えることができる。
以上、3相モータの印加極性も含めて4種類の探索通電相について、また所定閾値の正負も考慮すると8種類の探索角度範囲について説明したが、基本的にこの4種類の探索通電相において、探索パルス印加時の中性点差電圧から、ロータ位置の検出は十分行うことができる。
ここで、転流制御部16は、探索通電相に基づいて、探索駆動信号を生成し、高電位側スイッチング素子または低電位側スイッチング素子をオンする。高電位側スイッチング素子をオンする探索駆動信号を、高電位側探索駆動信号と呼び、低電位側スイッチング素子をオンする探索駆動信号を、低電位側探索駆動信号と呼ぶ。
次に探索ステップについて説明する。
図30は、2相通電における探索ステップのフローチャートである。
図30において、
ステップG100で、探索ステップの動作が開始される。
ステップG101で、転流制御部16は、探索通電相をU⇒Vに設定する。すなわち転流制御部16は、各スイッチング素子Q1、Q5の各制御電極に与える駆動信号S16Cを、動作状態レベルにする。
ステップG102で、駆動部2は、探索パルスを印加する。すなわち駆動部2は、設定された探索通電相に基づいて、対応する各スイッチング素子をオンする。
ステップG103で、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧が正の閾値S12A以上かどうかを判断する。正の閾値S12A以上と判断されれば、閾値超過信号S21を生成し、ステップG511に進んで、探索ステップは終了する。正の閾値S12A以下と判断されれば、ステップG104に進む。
ステップG104で、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧が負の閾値S12B以下かどうかを判断する。負の閾値S12B以下と判断されれば、閾値超過信号S22を生成し、ステップG511に進んで、探索ステップは終了する。負の閾値S12B以上と判断されれば、探索ステップを続行し、ステップG105に進む。
ステップG105で、駆動部2は、各モータ巻線LU、LV、LWに流れる各モータ電流をゼロにする。すなわち転流制御部16は、全6本の駆動信号S16Cを非動作状態レベルにし、駆動部2の各スイッチング素子Q1からQ6はオフされる。
ステップG106で、6種類の探索通電相を全部設定完了したかどうかを判断する。未完であれば、ステップG107に進み、完了であれば、ステップG503に進む。
ステップG107で、転流制御部16は、探索通電相を他の組合せに設定し、ステップG102に戻る。
ステップG503で、探索再設定ステップの動作が実行される。
以上のようにして探索ステップでは、中性点差電圧と所定の各閾値S12A、S12Bとの差の極性が、中性点差電圧の極性と一致する場合、閾値超過信号S21またはS22を生成し、転流制御部16に送る。転流制御部16は、閾値超過信号S21またはS22の送られた時の探索通電相を記憶し、次の起動ステップにおける起動通電相を、この探索通電相と図4に基づいて設定する。なお、図30のステップG101で、探索通電相の初期設定をU⇒Vとしているが、他の探索通電相から探索ステップを開始してもよい。さらにPWM駆動をさせる必要もなく、リニア駆動させることも可能である。
次に、図30の探索再設定ステップG503について、図34の探索ステップG502および探索再設定ステップG503を用いて説明する。
ステップG502で、探索ステップの動作が実行される。中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧と所定の閾値との差の極性が、中性点差電圧の極性と一致する場合、閾値超過信号S21またはS22を生成し、ステップG511で探索ステップを終了する。次に、1回目の探索ステップ以降の探索起動ステップを表す後続探索起動ステップG512を実行する。後続探索起動ステップG512のフローチャートは、図33で後述する。探索ステップG502で、全種類の探索通電相について探索ステップを実行しても終了しない場合、探索再設定ステップG503に進む。
図34の探索再設定ステップG503では、探索通電相の全種類について探索パルスを印加したにもかかわらず、中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上にならなかったのは、所定の閾値が高すぎたためと判断する。そこで所定の閾値の絶対値を所定値だけ低くする。
ステップG504で、中性点差電圧検出部13における正の閾値S12Aおよび負の閾値S12Bの各絶対値は、下限値に到達しているかどうかが判断される。未到達であれば、ステップG505に進み、到達していればステップG506に進む。
ステップG505で、転流制御部16は、閾値設定部12を介して、所定の閾値の絶対値を所定値だけ低減し、ステップG507に進む。
ステップG506で、所定の閾値が十分低下しても中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上にならなかったのは、ロータ位置が探索角度範囲の端部付近にあったためと判断する。そこでロータのステータに対する初期相対位置をずらす1回以上のキックパルスを印加し、ロータ位置を若干移動する。次にステップG507に進む。
ステップG507で、探索再設定ステップG503を通過する回数を計測する探索再設定カウンタの値が、所定回数に到達したかどうかが判断される。到達していれば、ステップG508に進み、未到達であれば、探索再設定カウンタの値を進め、ステップG502に戻って、探索ステップを再度実行する。
ステップG508で、探索起動モードによる起動を断念し、同期起動モードでの起動を実行する。
ステップG507により、探索ステップの実行に回数制限を設け、探索ステップの過剰な再実行を防止する。
同期起動モードは、所定の回転速度の回転磁界をステータに発生させ、モータを起動するモードである。同期起動モードでは起動速度は遅くなるが、ロータ位置が不明であっても確実に起動することが可能となる。
以上のことから、図30に示すフローチャートは、全6種類の探索通電相について探索ステップを実行し、ロータ位置が検出され次第、直ちに終了としていることがわかる。図30のフローチャートを、起動ステップ実行後の2回目以降の探索ステップに利用してもよいが、以後に述べる効率化の観点から、1回目の探索ステップのみとして用いるのが効率的である。
図33(a)は、探索起動モードにおいて1回目の起動ステップ以降のフローチャートである。図30における第1回目の探索ステップをステップG511で終了した後、図33(a)のフローチャートが開始される。
図33(a)を説明すると、
ステップG400で、フローチャートの動作が開始される。
ステップG401で、転流制御部16は、直前の探索ステップにおける探索通電相に基づいて起動通電相を設定し、駆動部2は、起動パルスを印加する。
ステップG402で、転流制御部16は、前回ロータ位置が検出できた探索通電相に通電相を設定し、駆動部2は、探索パルスを印加する。
ステップG403で、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上かどうかを判断する。所定の閾値以上の場合、ステップG404に進み、所定の閾値以下の場合、ステップG405に進む。
ステップG404で、ロータが前回判定の60度期間にあると判断し、再度ステップG401から繰り返す。
ステップG405で、ロータが次の60度期間に転流したと判定し、ステップG406に進む。
ステップG406で、逆起電圧モードへの切替え条件を満たしたかどうかを判定する。すなわち、探索通電相と閾値超過信号と起動通電相とロータ位相信号の少なくとも1つを用いて、モード切替え信号を生成し、モード切替え信号に基づいて判断する。切替え条件を満たした場合、ステップG407に進み、探索起動モードを終了する。切替え条件を満たしていない場合、再度ステップG401に戻る。
各ステップG401、G402、G403、G404、G405は、まとめて、1回目の探索ステップ以降の探索起動ステップを表す後続探索起動ステップG512を構成する。
図33(b)は、探索起動モードにおいて1回目の起動ステップ以降のフローチャートである。図33(a)のフローチャートと異なる点は、起動パルスが探索パルスを兼用している点である。図30における第1回目の探索ステップをステップG511で終了した後、図33(b)のフローチャートが開始される。
図33(b)を説明すると、
ステップG410で、フローチャートの動作が開始される。
ステップG411で、転流制御部16は、直前の探索ステップにおける探索通電相に基づいて起動通電相を設定し、駆動部2は、起動パルスを印加する。
ステップG412で、ステップG411における起動パルスの印加に対し、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上かどうかを判断する。所定の閾値以下の場合、ステップG413に進み、所定の閾値以上の場合、ステップG414に進む。
ステップG413で、ロータが前回判定の60度期間にあると判断し、再度ステップG411から繰り返す。
ステップG414で、ロータが次の60度期間に転流したと判定し、ステップG415に進む。
ステップG415で、逆起電圧モードへの切替え条件を満たしたかどうかを判定する。すなわち、探索通電相と閾値超過信号と起動通電相とロータ位相信号の少なくとも1つを用いて、モード切替え信号を生成し、モード切替え信号に基づいて判断する。切替え条件を満たした場合、ステップG416に進み、探索起動モードを終了する。切替え条件を満たしていない場合、再度ステップG411に戻る。
各ステップG411、G412、G413、G414は、まとめて、1回目の探索ステップ以降の探索起動ステップを表す後続探索起動ステップG512を構成する。
以上のことにより、図33(b)においては起動パルスが探索パルスを兼用するので、図33(a)における探索パルス印加のステップG402が省略される。終了のステップG407およびG416以後は、逆起電圧モードでの動作に移る。図33(b)によれば、トルクに寄与しない探索パルスの変わりに起動パルスを利用するので、起動時の加速度を高めることができる。
次に図31の探索ステップについて説明する。
図31は、2相通電における探索ステップのフローチャートである。
図31において、
ステップG200で、探索ステップの動作が開始される。
ステップG201で、転流制御部16は、探索通電相をU⇒Vに設定する。すなわち転流制御部16は、各スイッチング素子Q1、Q5の各制御電極に与える駆動信号S16Cを、動作状態レベルにする。
ステップG202で、中性点差電圧検出部13は、所定の閾値の極性を決定する。
ステップG203で、駆動部2は、探索パルスを印加する。すなわち駆動部2は、設定された探索通電相に基づいて、対応する各スイッチング素子をオンする。
ステップG204で、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上かどうかを判断する。所定の閾値以上と判断されれば、閾値超過信号を生成し、ステップG511に進んで、探索ステップは終了する。所定の閾値以下と判断されれば、ステップG205に進む。
ステップG205で、駆動部2は、各モータ巻線LU、LV、LWに流れる各モータ電流をゼロにする。すなわち転流制御部16は、全6本の駆動信号S16Cを非動作状態レベルにし、駆動部2の各スイッチング素子Q1からQ6はオフされる。
ステップG206で、6種類の探索通電相を全部設定完了したかどうかを判断する。未完であれば、ステップG207に進み、完了であれば、ステップG503に進む。
ステップG207で、転流制御部16は、探索通電相を他の組合せに設定し、ステップG202に戻る。
ステップG503で、探索再設定ステップの動作が実行される。
以上のようにして探索ステップでは、中性点差電圧と所定の閾値の差の極性が、中性点差電圧の極性と一致する場合、閾値超過信号を生成し、転流制御部16に送る。転流制御部16は、閾値超過信号の送られた時の探索通電相を記憶し、次の起動ステップにおける起動通電相を、この探索通電相と図4に基づいて設定する。
なお、図31のステップG201で、探索通電相の初期設定をU⇒Vとしているが、他の探索通電相から探索ステップを開始してもよい。さらにPWM駆動をさせる必要もなく、リニア駆動させることも可能である。
次に、図31の探索再設定ステップG503について、図34の探索ステップG502および探索再設定ステップG503を用いて説明する。
ステップG502で、探索ステップの動作が実行される。中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧と所定の閾値との差の極性が、中性点差電圧の極性と一致する場合、閾値超過信号S21またはS22を生成し、ステップG511で探索ステップを終了する。次に、1回目の探索ステップ以降の探索起動ステップを表す後続探索起動ステップG512を実行する。後続探索起動ステップG512のフローチャートは、図33で後述する。探索ステップG502で、全種類の探索通電相について探索ステップを実行しても終了しない場合、探索再設定ステップG503に進む。
図34の探索再設定ステップG503では、探索通電相の全種類について探索パルスを印加したにもかかわらず、中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上にならなかったのは、所定の閾値が高すぎたためと判断する。そこで所定の閾値の絶対値を所定値だけ低くする。
ステップG504で、中性点差電圧検出部13における正の閾値S12Aおよび負の閾値S12Bの各絶対値は、下限値に到達しているかどうかが判断される。未到達であれば、ステップG505に進み、到達していればステップG506に進む。
ステップG505で、転流制御部16は、閾値設定部12を介して、所定の閾値の絶対値を所定値だけ低減し、ステップG507に進む。
ステップG506で、所定の閾値が十分低下しても中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上にならなかったのは、ロータ位置が探索角度範囲の端部付近にあったためと判断する。そこでロータのステータに対する初期相対位置をずらす1回以上のキックパルスを印加し、ロータ位置を若干移動する。次にステップG507に進む。
ステップG507で、探索再設定ステップG503を通過する回数を計測する探索再設定カウンタの値が、所定回数に到達したかどうかが判断される。到達していれば、ステップG508に進み、未到達であれば、探索再設定カウンタの値を進め、ステップG502に戻って、探索ステップを再度実行する。
ステップG508で、探索起動モードによる起動を断念し、同期起動モードでの起動を実行する。
ステップG507により、探索ステップの実行に回数制限を設け、探索ステップの過剰な再実行を防止する。
同期起動モードは、所定の回転速度の回転磁界をステータに発生させ、モータを起動するモードである。同期起動モードでは起動速度は遅くなるが、ロータ位置が不明であっても確実に起動することが可能となる。
以上のことから、図31に示すフローチャートは、全6種類の探索通電相について探索ステップを実行し、ロータ位置が検出され次第、直ちに終了としていることがわかる。図31のフローチャートを、起動ステップ実行後の2回目以降の探索ステップに利用してもよいが、以後に述べる効率化の観点から、1回目の探索ステップのみとして用いるのが効率的である。
図33(a)は、探索起動モードにおいて1回目の起動ステップ以降のフローチャートである。図31における第1回目の探索ステップをステップG511で終了した後、図33(a)のフローチャートが開始される。
図33(a)を説明すると、
ステップG400で、フローチャートの動作が開始される。
ステップG401で、転流制御部16は、直前の探索ステップにおける探索通電相に基づいて起動通電相を設定し、駆動部2は、起動パルスを印加する。
ステップG402で、転流制御部16は、前回ロータ位置が検出できた探索通電相に通電相を設定し、駆動部2は、探索パルスを印加する。
ステップG403で、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上かどうかを判断する。所定の閾値以上の場合、ステップG404に進み、所定の閾値以下の場合、ステップG405に進む。
ステップG404で、ロータが前回判定の60度期間にあると判断し、再度ステップG401から繰り返す。
ステップG405で、ロータが次の60度期間に転流したと判定し、ステップG406に進む。
ステップG406で、逆起電圧モードへの切替え条件を満たしたかどうかを判定する。すなわち、探索通電相と閾値超過信号と起動通電相とロータ位相信号の少なくとも1つを用いて、モード切替え信号を生成し、モード切替え信号に基づいて判断する。切替え条件を満たした場合、ステップG407に進み、探索起動モードを終了する。切替え条件を満たしていない場合、再度ステップG401に戻る。
各ステップG401、G402、G403、G404、G405は、まとめて、1回目の探索ステップ以降の探索起動ステップを表す後続探索起動ステップG512を構成する。
図33(b)は、探索起動モードにおいて1回目の起動ステップ以降のフローチャートである。図33(a)のフローチャートと異なる点は、起動パルスが探索パルスを兼用している点である。図31における第1回目の探索ステップをステップG511で終了した後、図33(b)のフローチャートが開始される。
図33(b)を説明すると、
ステップG410で、フローチャートの動作が開始される。
ステップG411で、転流制御部16は、直前の探索ステップにおける探索通電相に基づいて起動通電相を設定し、駆動部2は、起動パルスを印加する。
ステップG412で、ステップG411における起動パルスの印加に対し、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上かどうかを判断する。所定の閾値以下の場合、ステップG413に進み、所定の閾値以上の場合、ステップG414に進む。
ステップG413で、ロータが前回判定の60度期間にあると判断し、再度ステップG411から繰り返す。
ステップG414で、ロータが次の60度期間に転流したと判定し、ステップG415に進む。
ステップG415で、逆起電圧モードへの切替え条件を満たしたかどうかを判定する。すなわち、探索通電相と閾値超過信号と起動通電相とロータ位相信号の少なくとも1つを用いて、モード切替え信号を生成し、モード切替え信号に基づいて判断する。切替え条件を満たした場合、ステップG416に進み、探索起動モードを終了する。切替え条件を満たしていない場合、再度ステップG411に戻る。
各ステップG411、G412、G413、G414は、まとめて、1回目の探索ステップ以降の探索起動ステップを表す後続探索起動ステップG512を構成する。
以上のことにより、図33(b)においては起動パルスが探索パルスを兼用するので、図33(a)における探索パルス印加のステップG402が省略される。終了のステップG407およびG416以後は、逆起電圧モードでの動作に移る。図33(b)によれば、トルクに寄与しない探索パルスの変わりに起動パルスを利用するので、起動時の加速度を高めることができる。
更にまた、図5と図7のロータ位置の判定可能位置を比較してわかるように、冗長性を排するならば、4種類の探索通電相により、ロータ位置を判定することができる。
図32は、2相通電での4種類の探索通電相における探索ステップのフローチャートである。
図32において、
ステップG301で、モータ電流をゼロにした後、第1相から第2相へ、探索パルスを印加する。
ステップG302で、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧が正の閾値以上かどうかを判断する。正の閾値以上の場合、閾値超過信号S21を生成し、ステップG511で探索ステップは終了する。正の閾値以下の場合、ステップG303に進む。
ステップG303で、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧が負の閾値以下かどうかを判断する。負の閾値以下の場合、閾値超過信号S22を生成し、ステップG511で探索ステップは終了する。負の閾値以上の場合、ステップG304に進む。
ステップG304で、モータ電流をゼロにした後、第2相から第1相へ、探索パルスを印加する。
ステップG305で、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧が正の閾値以上かどうかを判断する。正の閾値以上の場合、閾値超過信号S21を生成し、ステップG511で探索ステップは終了する。正の閾値以下の場合、ステップG306に進む。
ステップG306で、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧が負の閾値以下かどうかを判断する。負の閾値以下の場合、閾値超過信号S22を生成し、ステップG511で探索ステップは終了する。負の閾値以上の場合、ステップG307に進む。
ステップG307で、モータ電流をゼロにした後、第2相から第3相へ、探索パルスを印加する。
ステップG308で、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧が正の閾値以上かどうかを判断する。正の閾値以上の場合、閾値超過信号S21を生成し、ステップG511で探索ステップは終了する。正の閾値以下の場合、ステップG309に進む。
ステップG309で、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧が負の閾値以下かどうかを判断する。負の閾値以下の場合、閾値超過信号S22を生成し、ステップG511で探索ステップは終了する。負の閾値以上の場合、ステップG310に進む。
ステップG310で、モータ電流をゼロにした後、第3相から第2相へ、探索パルスを印加する。
ステップG311で、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧が正の閾値以上かどうかを判断する。正の閾値以上の場合、閾値超過信号S21を生成し、ステップG511で探索ステップは終了する。正の閾値以下の場合、ステップG312に進む。
ステップG312で、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧が負の閾値以下かどうかを判断する。負の閾値以下の場合、閾値超過信号S22を生成し、ステップG511で探索ステップは終了する。負の閾値以上の場合、ステップG503に進む。
ステップG503で、探索再設定ステップの動作が実行される。
このように、ステップG312まで4種類の探索通電相に探索パルスを印加し、ロータ位置を判断できなければ、探索再設定ステップを行う。
次に、図32の探索再設定ステップG503について、図34の探索ステップG502および探索再設定ステップG503を用いて説明する。
ステップG502で、探索ステップの動作が実行される。中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧と所定の閾値との差の極性が、中性点差電圧の極性と一致する場合、閾値超過信号S21またはS22を生成し、ステップG511で探索ステップを終了する。次に、1回目の探索ステップ以降の探索起動ステップを表す後続探索起動ステップG512を実行する。後続探索起動ステップG512のフローチャートは、図33で後述する。探索ステップG502で、全4種類の探索通電相について探索ステップを実行しても終了しない場合、探索再設定ステップG503に進む。
図34の探索再設定ステップG503では、探索通電相の全4種類について探索パルスを印加したにもかかわらず、中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上にならなかったのは、所定の閾値が高すぎたためと判断する。そこで所定の閾値の絶対値を所定値だけ低くする。
ステップG504で、中性点差電圧検出部13における正の閾値S12Aおよび負の閾値S12Bの各絶対値は、下限値に到達しているかどうかが判断される。未到達であれば、ステップG505に進み、到達していればステップG506に進む。
ステップG505で、転流制御部16は、閾値設定部12を介して、所定の閾値の絶対値を所定値だけ低減し、ステップG507に進む。
ステップG506で、所定の閾値が十分低下しても中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上にならなかったのは、ロータ位置が探索角度範囲の端部付近にあったためと判断する。そこでロータのステータに対する初期相対位置をずらす1回以上のキックパルスを印加し、ロータ位置を若干移動する。次にステップG507に進む。
ステップG507で、探索再設定ステップG503を通過する回数を計測する探索再設定カウンタの値が、所定回数に到達したかどうかが判断される。到達していれば、ステップG508に進み、未到達であれば、探索再設定カウンタの値を進め、ステップG502に戻って、探索ステップを再度実行する。
ステップG508で、探索起動モードによる起動を断念し、同期起動モードでの起動を実行する。
ステップG507により、探索ステップの実行に回数制限を設け、探索ステップの過剰な再実行を防止する。
同期起動モードは、所定の回転速度の回転磁界をステータに発生させ、モータを起動するモードである。同期起動モードでは起動速度は遅くなるが、ロータ位置が不明であっても確実に起動することが可能となる。
以上のことから、図32に示すフローチャートは、全4種類の探索通電相について探索ステップを実行し、ロータ位置が検出され次第、直ちに終了としていることがわかる。図32のフローチャートを、起動ステップ実行後の2回目以降の探索ステップに利用してもよいが、以後に述べる効率化の観点から、1回目の探索ステップのみとして用いるのが効率的である。図32における第1相、第2相、および第3相は、U相、V相、およびW相の3相の中から、適当に重複することなく選べばよい。
図33(a)は、探索起動モードにおいて1回目の起動ステップ以降のフローチャートである。図32における第1回目の探索ステップをステップG511で終了した後、図33(a)のフローチャートが開始される。
図33(a)を説明すると、
ステップG400で、フローチャートの動作が開始される。
ステップG401で、転流制御部16は、直前の探索ステップにおける探索通電相に基づいて起動通電相を設定し、駆動部2は、起動パルスを印加する。
ステップG402で、転流制御部16は、前回ロータ位置が検出できた探索通電相に通電相を設定し、駆動部2は、探索パルスを印加する。
ステップG403で、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上かどうかを判断する。所定の閾値以上の場合、ステップG404に進み、所定の閾値以下の場合、ステップG405に進む。
ステップG404で、ロータが前回判定の60度期間にあると判断し、再度ステップG401から繰り返す。
ステップG405で、ロータが次の60度期間に転流したと判定し、ステップG406に進む。
ステップG406で、逆起電圧モードへの切替え条件を満たしたかどうかを判定する。すなわち、探索通電相と閾値超過信号と起動通電相とロータ位相信号の少なくとも1つを用いて、モード切替え信号を生成し、モード切替え信号に基づいて判断する。切替え条件を満たした場合、ステップG407に進み、探索起動モードを終了する。切替え条件を満たしていない場合、再度ステップG401に戻る。
各ステップG401、G402、G403、G404、G405は、まとめて、1回目の探索ステップ以降の探索起動ステップを表す後続探索起動ステップG512を構成する。
図33(b)は、探索起動モードにおいて1回目の起動ステップ以降のフローチャートである。図33(a)のフローチャートと異なる点は、起動パルスが探索パルスを兼用している点である。図30における第1回目の探索ステップをステップG511で終了した後、図33(b)のフローチャートが開始される。
図33(b)を説明すると、
ステップG410で、フローチャートの動作が開始される。
ステップG411で、転流制御部16は、直前の探索ステップにおける探索通電相に基づいて起動通電相を設定し、駆動部2は、起動パルスを印加する。
ステップG412で、ステップG411における起動パルスの印加に対し、中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上かどうかを判断する。所定の閾値以下の場合、ステップG413に進み、所定の閾値以上の場合、ステップG414に進む。
ステップG413で、ロータが前回判定の60度期間にあると判断し、再度ステップG411から繰り返す。
ステップG414で、ロータが次の60度期間に転流したと判定し、ステップG415に進む。
ステップG415で、逆起電圧モードへの切替え条件を満たしたかどうかを判定する。すなわち、探索通電相と閾値超過信号と起動通電相とロータ位相信号少なくとも1つを用いて、モード切替え信号を生成し、モード切替え信号に基づいて判断する。切替え条件を満たした場合、ステップG416に進み、探索起動モードを終了する。切替え条件を満たしていない場合、再度ステップG411に戻る。
各ステップG411、G412、G413、G414は、まとめて、1回目の探索ステップ以降の探索起動ステップを表す後続探索起動ステップG512を構成する。
以上のことにより、図33(b)においては起動パルスが探索パルスを兼用するので、図33(a)における探索パルス印加のステップG402が省略される。終了のステップG407およびG416以後は、逆起電圧モードでの動作に移る。図33(b)によれば、トルクに寄与しない探索パルスの変わりに起動パルスを利用するので、起動時の加速度を高めることができる。
次に、逆起電圧モードについて説明する。
図16は、逆起電圧モードにおける通電電流波形のタイミング図と、各相ゼロクロス点の方向を示した説明図である。転流制御部16は通電相を設定し、駆動部2は設定された通電相に相電流を通電する。その結果、各相モータ巻線には逆起電圧が誘起される。また転流制御部16は、逆起電圧が検出可能となるように、非通電相を設定する。非通電相において、逆起電圧検出部14は逆起電圧のゼロクロス点および逆起電圧の方向を検出する。
図16(a)の実線はU相電流IU、破線はU相逆起電圧EUを示す。同様に図16(b)の実線はV相電流IV、破線はV相逆起電圧EV、図16(c)の実線はW相電流IW、破線はW相逆起電圧EWを示す。各相電流IU、IV、IWに対して、斜線部分がPWM制御される。各期間H1、H2、H3、H4、H5、およびH6は、それぞれ電気角60度に相当する。図16(d)において、各相電流IU、IV、IWが正の場合、ソース電流、また負の場合、シンク電流とする。各相電流IU、IV、IWは、図16(a)、(b)、(c)に対応して、ソース電流およびシンク電流の各通電状態において、増加状態、オン固定状態、および減少状態に順次状態を遷移する。
次に図16(d)において、非通電相に発生する逆起電圧のゼロクロス点について説明する。
期間H1では、転流制御部16はW相を非通電相に設定する。相選択部20は、中性点電圧SCNとW相モータ端子電圧SWを選択し、比較器23は、W相モータ端子電圧SWに現れるW相逆起電圧が、中性点電圧SCN以下になるW相逆起電圧の下降ゼロクロス点を検出する。これを「W相下降」と表す。期間H2では、転流制御部16はV相を非通電相に設定する。相選択部20は、中性点電圧SCNとV相モータ端子電圧SVを選択し、比較器23は、V相モータ端子電圧SVに現れるV相逆起電圧が、中性点電圧SCN以上になるV相逆起電圧の上昇ゼロクロス点を検出する。これを「V相上昇」と表す。同様にして比較器23は、期間H3ではU相逆起電圧が中性点電圧SCN以下になるU相下降ゼロクロス点を検出し、期間H4ではW相逆起電圧が中性点電圧SCN以上になるW相上昇ゼロクロス点を検出し、期間H5ではV相逆起電圧が中性点電圧SCN以下になるV相下降ゼロクロス点を検出し、期間H6ではU相逆起電圧が中性点電圧SCN以上になるU相上昇ゼロクロス点を検出する。
以上のように逆起電圧モードでは、各相の逆起電圧は、各相の非通電相において検出可能になる。この逆起電圧のゼロクロスの方向が、相選択部20と比較器23を含む逆起電圧検出部14により検出される。
図17を用いて、逆起電圧のゼロクロス検出について詳述する。図17(a)は、逆起電圧のゼロクロスを検出するタイミング図である。図17(b)および(c)は、逆起電圧モード直後において、ロータ位置が各タイミング69、70にある場合の電流プロファイルの波形図である。横軸は、ロータ位置もしくは時間軸を示す。61は、図16に示す6種類の60度期間H1からH6のうち、いずれかの1つを示す。62、63、および64は、それぞれ60度期間61の中心位置、開始位置、および終了位置を示す。67A、67Bおよび68A、68Bは、逆起電圧ゼロクロス検出期間の開始タイミングおよび終了タイミングを示す。この逆起電圧ゼロクロス検出期間のうち、65Aおよび65Bは進相期間を示し、66Aおよび66Bは、逆起電圧ゼロクロスの到来までの延長期間を示す。
センサレス駆動は、逆起電圧を検出するため、所定のゼロ電流期間を各相に形成する必要がある。ゼロ電流期間内における所定の期間を、逆起電圧ゼロクロス検出期間とする。図16に示すように、予測される逆起電圧ゼロクロスタイミングは、前回別の相で生じた逆起電圧ゼロクロスのタイミングから60度経過後である。この予測タイミングより各進相期間65A、65Bだけ早い各タイミング67A、67Bにおいて、ゼロクロス検出期間を開始する。これにより、予測していた周期が実際より長い場合、すなわち予測していた回転速度が実際より低めだった場合には、少しずつ位相が進められて予測値が徐々に修正されていく。また予測していた周期が実際より短い場合、すなわち予測していた回転速度が実際より高めだった場合には、上述したように各延長期間66A、66Bの間、逆起電圧ゼロクロスが生じるのを待ち続ける。その結果、位相が遅れて正しい逆起電圧ゼロクロスがタイミング68Aまたは68Bにおいて検出され、予測タイミングが修正される。
通常、逆起電圧モードに切り替わる直前の探索起動モードにおいて、60度正回転転流期間中における起動パルスの回数は、十分多い。このため、逆起電圧モードに変化するタイミングは、60度期間中の初期段階で発生し、逆起電圧モードに変化した直後のロータ位置も、その近傍の位置、例えばタイミング69にある。この場合、電流プロファイルは図17(b)のようになる。直前のロータ位置情報を受けて、U相電流84Aは比較的急峻に立ち上がり、V相電流83Aは比較的急峻に立ち下がり、W相電流85Aは比較的緩い傾斜で立ち下がる。その後、V相電流83Aは比較的緩い傾斜で立ち上がり始める。V相電流83AとW相電流85Aなどの緩い変化率は、モータ振動および騒音低減に効果的なスロープ状電流を形成するためのものである。やがてV相電流83Aはゼロとなり、V相電流83Aがゼロに整定するまで、短期間のゼロ電流期間を経る。その直後、V相逆起電圧の負から正への上昇ゼロクロス点を検出するため、ゼロクロス検出期間が始まる。タイミング62でV相上昇ゼロクロス点を検出した結果、V相電流は更に正方向に比較的緩い傾斜で立ち上がり始める。
以上のように、ある60度期間で逆起電圧モードに変化した後、同じ60度期間の中間タイミング62で逆起電圧ゼロクロスは発生し、この逆起電圧ゼロクロスを検出することが可能になる。すなわち逆起電圧モードに変化した時点から約30度期間後のタイミング62の近くで、ゼロクロス検出期間を設定すればよいことになる。この場合、ゼロクロス検出期間は、ゼロクロスが検出されるまで継続され、正しくゼロクロスタイミングが検出される。
もし直前の探索起動モードにおいて、60度正回転転流期間中における起動パルスの回数が少ない場合、逆起電圧モードに変化するタイミングは、この60度期間中の終盤段階で発生することもある。このため、逆起電圧モードに変化した直後のロータ位置も、その近傍の位置、例えばタイミング70にある。この場合、電流プロファイルは図17(c)のようになる。直前のロータ位置情報を受けて、U相電流84Bは比較的急峻に立ち上がり、V相電流83Bは比較的急峻に立ち下がり、W相電流85Bは比較的緩い傾斜で立ち下がる。その後、V相電流83Bは比較的緩い傾斜で立ち上がり始める。V相電流83BとW相電流85Bなどの緩い変化率は、モータ振動および騒音低減に効果的なスロープ状電流を形成するためのものである。やがてV相電流83Bはゼロとなり、V相電流83Bがゼロに整定するまで、短期間のゼロ電流期間を経る。その直後、V相逆起電圧の負から正への上昇ゼロクロス点を検出するため、ゼロクロス検出期間が始まる。
この場合、タイミング62において、逆起電圧ゼロクロスは既に発生している。このため、次に来る60度期間の中間タイミングで、ゼロクロスを検出する構成も考えられる。しかし、上述のように起動パルスの回数が十分多くなると、ゼロクロス検出期間が90度相当期間継続することになり、トルクが低下するという問題が生じる。従って、逆起電圧モードに切り替わり直後のロータ位置が、タイミング70にあるような場合においても、現60度期間の逆起電圧ゼロクロスを待つ方がよい。タイミング62で既に逆起電圧ゼロクロスが生じた後であるため、更に180度相当期間後まで、逆起電圧の極性は一定である。既に逆起電圧ゼロクロスが発生したことを、その極性に基づいて、逆起電圧ゼロクロス検出開始タイミング67Bにおいて判断できる。判断後、直ちにゼロクロス検出したものと見なし、次の60度のプロファイルを形成する。なおこの場合には、トルク低下を生じない。既に説明したように、予測周期情報を進相期間65Bずつ短縮し、やがては正確なゼロクロスタイミングの検出ができるようになる。
次に、図1Aに示す逆起電圧モードで動作する逆起電圧検出部14ついて説明する。比較器23と相選択部20の具体例として、図14(a)、(b)がある。
図14(a)は、1個の比較器23が、相選択部20を介して、非通電相の各相モータ端子から逆起電圧を読み出す構成になっている。すなわち、比較器23は、非通電相における各相モータ端子電圧SU、SV、SWと、中性点電圧SCNとの差を表す逆起電圧を検出し、ロータ位相信号S23を生成する。比較器23が中性点差電圧検出部13の比較器と兼用する場合には、逆起電圧モードにおいて、比較器23の所定の閾値は、その絶対値を低減するかまたはゼロに戻し、逆起電圧検出用の比較器として使用される。このとき逆起電圧のゼロクロスは、その出現が予測されるタイミングで、相選択部20を介して所定の非通電相のモータ端子から検出される。
また図14(b)は、図1Aの構成とは異なって、相選択部20を使用せず、U相比較器23U、V相比較器23V、W相比較器23Wを用意する構成になっている。すなわち、各比較器23U、23V、23Wは、直接に非通電相の各相モータ端子から、逆起電圧を読み出している。比較器23U、23V、23Wは、非通電相におけるモータ端子電圧SU、SV、SWと、中性点電圧SCNとの差を表す逆起電圧を検出し、ロータ位相信号S23U、S23V、S23Wをそれぞれ生成する。各ロータ位相信号S23U、S23V、S23Wは、転流制御部16に入力され、転流制御部16において、非通電相のロータ位相信号が選択される。比較器23が中性点差電圧検出部13の比較器と兼用する場合には、逆起電圧モードにおいて、各兼用比較器23U、23Vの所定の閾値は、その絶対値を低減するかまたはゼロに戻し、逆起電圧検出用の比較器として使用される。
図15は、図14(b)の構成に対し、逆起電圧検出部14が、相選択部20AとU相兼用比較器23UA、V相兼用比較器23VA、W相比較器23Wを含み、この内、兼用比較器23UA、23VAが、中性点差電圧検出部13の比較器21、22をそれぞれ兼用する構成になっている。転流制御部16は、中性点電圧検出部13と逆起電圧検出部14を制御する相選択信号S16Fを生成し、相選択部20Aは、相選択信号S16Fに基づいて、制御される。探索起動モードの場合、相選択部20Aを介して、各兼用比較器23UA、23VAの反転端子は、疑似中性点PNを選択し、非反転入力端子は、中性点CNを選択する。逆起電圧モードの場合、相選択部20Aを介して、各兼用比較器23UA、23VAの反転端子は、中性点CNを選択し、非反転入力端子は、各モータ端子SU、SVをそれぞれ選択する。またW相比較器23Wの反転端子は、中性点CNに接続され、非反転入力端子は、W相モータ端子SWに接続される。
図15の構成において、探索起動モードの場合、各兼用比較器23UA、23VAは、非反転入力端子と反転入力端子に入力される2入力信号の差の絶対値が、所定の閾値を超えたことを表す閾値超過信号S23UA、S23VAをそれぞれ生成し、転流制御部16に送る。逆起電圧モードの場合、各比較器23UA、23VA、23Wは、非通電相におけるモータ端子電圧SU、SV、SWと、中性点電圧SCNとの差を表す逆起電圧を検出し、ロータ位相信号S23UA、S23VA、S23Wをそれぞれ生成する。各ロータ位相信号S23UA、S23VA、S23Wは、転流制御部16に入力され、転流制御部16において、非通電相のロータ位相信号が選択される。各兼用比較器23UA、23VAの所定の閾値は、その絶対値を低減するかまたはゼロに戻し、逆起電圧検出用の比較器として使用される。
図18、図19は、最近の3相ブラシレスモータ1Aについて、探索起動モードから逆起電圧モードに切り替わる直後に、非通電相に発生する逆起電圧の状態を測定した波形図である。図18(a)では、U相巻線からV相巻線への通電時に、モータ回転数50rpm時に非通電相であるW相に発生する逆起電圧SF18Bと、W相の誘導電圧SF18Aが、図示されている。横軸は電気角であり、縦軸は中性点電圧SCNを基準(0V)としている。この3相ブラシレスモータ1Aの発電定数Keは、Ke=0.74mV/rpmである。図18(b)では、図18(a)におけるW相の誘導電圧SF18Aと、W相の逆起電圧SF18Bを合成した合成電圧SF18Cが、図示されている。
図19(a)では、U相巻線からV相巻線への通電時に、モータ回転数100rpm時に非通電相であるW相に発生する逆起電圧SF19Bと、モータ回転数200rpm時に非通電相であるW相に発生する逆起電圧SF19Cと、W相の誘導電圧SF19Aが、図示されている。図19(a)の誘導電圧SF19Aは、誘導電圧SF18Aと同一である。図19(b)では、図19(a)におけるW相の誘導電圧SF19Aとモータ回転数100rpm時のW相の逆起電圧SF19Bを合成した合成電圧SF19Dと、W相の誘導電圧SF19Aとモータ回転数200rpm時のW相の逆起電圧SF19Cを合成した合成電圧SF19Eとが、図示されている。
ここで、探索起動モードから逆起電圧モードに切り替わる直後の逆起電圧モードにおいて、U相からV相への通電時に、非通電相のW相モータ巻線の両端には、図18(b)、図19(b)に示すように、逆起電圧と誘導電圧の合成電圧が発生している。この場合、図16の期間H1に示すように、このW相の合成電圧の下降ゼロクロス点が、検出されるはずである。
図18(b)に示すように、探索起動モードから逆起電圧モードに切り替わった直後は、モータ回転数が低いため、W相に発生する逆起電圧はまだ小さい。2相通電している電流は、モータを起動するため比較的大きく、W相の誘導電圧の影響が大きい。そのため、モータ回転数50rpmにおいては、W相の合成電圧SF18Cのゼロクロス点は、電気角50度付近と270度付近の2箇所発生する。逆起電圧検出期間において、発生するゼロクロス点が50度付近の場合、正常検出位置で特に問題はないが、270度付近の場合、誤検出位置でモータ逆転等の問題が発生する可能性がある。
図18(b)に示す問題を回避するため、図19(b)に示すように、探索起動モードから逆起電圧モードに切り替わった直後は、モータ回転数を少し高くする。これにより、W相に発生する逆起電圧は少し高くなり、W相の誘導電圧との合成によるW相合成電圧へのW相の誘導電圧の影響は、少なくなる。
図19(b)のモータ回転数100rpmとモータ回転数200rpmの場合、合成電圧のゼロクロス点は、電気角50度付近に1箇所である。モータ回転数が少し高くなった分、W相に発生する逆起電圧は大きくなるので、W相の合成電圧は高くなり、電気角270度付近における中性点電圧SCNとのゼロクロスは回避される。逆起電圧検出期間において、270度付近のゼロクロス点の誤検出が回避され、正常検出位置である50度付近のゼロクロス点だけが検出される。このように、探索起動モードから逆起電圧モードに切替える際、探索起動モードでモータ回転数を所定の回転数に加速をした後、逆起電圧モードに切替えることが必要になる。
ところで通常、モータでは、U相巻線に発生する逆起電圧、V相巻線に発生する逆起電圧、W相巻線に発生する逆起電圧は、それぞれ120度の位相差を持つ正弦波状の波形である。この場合、3相モータの中性点電圧SCNは、U相巻線、V相巻線、W相巻線に発生する逆起電圧の合成電圧になる。つまり、中性点電圧SCNは、3相の正弦波が合成され、3倍高調波成分等を除いてゼロになる。このため、中性点電圧SCNと疑似中性点電圧SPNの差電圧である中性点差電圧には、逆起電圧の影響は含まれない。このように、ロータの初期加速を与える探索起動モードにおいて、中性点差電圧は、逆起電圧の影響を受けない正確なロータ位置情報を表す。
以上のように、第1の実施形態によれば、探索起動モードにおいて、2相通電による中性点差電圧からロータ位置を検出する探索ステップと、逆起電圧モードに切替える前にモータに適切な起動加速を与える起動ステップとが、交互に繰り返される。この場合、中性点差電圧は逆起電圧の影響を受けないので、正確なロータ位置情報が検出でき、探索起動モードにおいて、所望の起動加速が迅速かつ確実にできる。
また、探索起動モードから逆起電圧モードに切替えた直後は、逆起電圧検出を目的とする非通電相には、誘導電圧と逆起電圧の合成電圧が発生している。モータ起動時の初期加速期間における回転数が不十分であると、図18のように、特定の3相ブラシレスモータ1Aには、ロータ位置の誤検出による逆転等の問題が発生する。第1の実施形態によれば、2相通電による探索ステップにおいて、中性点電圧SCNと疑似中性点電圧SPNの差電圧を表す中性点差電圧は、逆起電圧の影響を受けないので、正確なロータ位置情報が検出できる。探索起動モードでモータに十分な起動加速を与えるため、所定のモータ回転数以上にでき、したがって逆起電圧モードでも逆起電圧を十分大きくできる。これにより、特定の3相ブラシレスモータ1Aにおいても、探索起動モードから逆起電圧モードへの切替えた直後から定常回転まで、ロータ位置の誤検出をせずに、迅速で確実な起動が得られる。
次に、更に具体的に、探索起動モードおよび逆起電圧モードについて、説明する。
探索ステップにおいて、図4の状態F1からF6の順番に、6種類の探索通電相に対して探索パルスを印加する。図5には、各探索通電相に対して、検出可能なロータ位置が示される。既述のように、2回目以降の探索ステップにおける1回目の探索パルスの印加には、1回目の探索ステップにおいて、ロータ位置が検出できた探索通電相を使用する。ロータ位置が検出できなければ、2回目の探索パルスの印加には、ロータが60度正回転するとした場合の探索通電相を使用する。
図6は、探索パルスと起動パルスの印加の様子を、模式的に示す。図6において、横軸は時間軸であり、図6(a)、(b)、および(c)は、それぞれU相巻線電流、V相巻線電流、およびW相巻線電流を示している。
図6(d)は、起動通電相系列FAに対応する、比較器21および比較器22の出力結果であり、図6(e)は、ロータ位置の判定結果である。図6(f)は、起動通電相系列FBに対応する、比較器21および比較器22の出力結果であり、図6(g)は、ロータ位置の判定結果である。図6(h)は、図6(d)、(f)の出力結果をまとめ、図6(i)は、図6(e)、(g)のロータ位置の判定結果をまとめたものである。図6(h)における正、負、および0は、比較器21の出力がハイレベルであること、比較器22の出力がローレベルであること、および比較器21の出力がハイレベルでなく比較器22の出力がローレベルでないこと、をそれぞれ示す。図6(i)における230、290、350、および70は、ロータ位置の判定結果が230度付近、290度付近、350度付近、および70度付近、であることをそれぞれ示す。
図6では、1回目の探索ステップに、探索パルスを6回印加可能な図5、図30、図31の探索ステップを適用する。1回目の探索ステップ以降には、図33(a)の後続探索起動ステップを適用する。
図6において、DS1は、1回目の探索ステップである。図5の6種類の探索通電相内において、図30、図31のフローチャートに基づいて、図4の状態F1、F2、F3の順番で、探索パルスを印加する。1回目および2回目では、中性点差電圧検出部13は、ロータ位置を検出できない。3回目に、スイッチング素子Q2およびQ6をオンすることにより、V相からW相に探索パルスを印加する。比較器22の出力がローレベルとなり、閾値超過信号S22が転流制御部16に送られる。ロータ位置が230度付近にあると判定され、このときの探索通電相を保存する。次に、SP1に示す1回目の起動ステップで、スイッチング素子Q2およびQ4をオンすることにより、V相からU相に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。
2回目の探索ステップDS2では、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。起動時は一般的に回転速度が低いため、転流を生じる頻度は、ロータ位置の探索回数に比べて十分に低い。DS2では、再び比較器22の出力がローレベルとなり、このときの探索通電相を保存する。次に、2回目の起動ステップSP2で、起動ステップSP1と同様に、V相からU相に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。3回目の探索ステップDS3および起動ステップSP3と、4回目の探索ステップDS4および起動ステップSP4についても、同様にV相からU相に起動パルスを与える。
5回目の探索ステップDS5は、2回の探索パルスからなる。このうち1回目の探索パルスは、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。このとき比較器22の出力としてローレベルを得られない。従って5回目の探索ステップDS5における2回目の探索パルスとして、電気角60度だけロータが回転した290度付近にあると想定して、スイッチング素子Q2およびQ4をオンすることにより、V相からU相に探索パルスを印加する。比較器21の出力はハイレベルとなり、ロータ位置が290度付近にあると判定され、このときの探索通電相を保存する。次に、5回目の起動ステップSP5で、スイッチング素子Q3およびQ4をオンすることにより、W相からU相に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。以降、6回目の探索ステップDS6および起動ステップSP6と、7回目の探索ステップDS7および起動ステップSP7についても、同様にW相からU相に起動パルスを与える。
8回目の探索ステップDS8は、2回の探索パルスからなる。このうち1回目の探索パルスは、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。このとき比較器21の出力としてハイレベルを得られない。従って8回目の探索ステップDS8における2回目の探索パルスとして、電気角60度だけロータが回転した350度付近にあると想定して、スイッチング素子Q3およびQ4をオンすることにより、W相からU相に探索パルスを印加する。比較器22の出力はローレベルとなり、ロータ位置が350度付近にあると判定され、このときの探索通電相を保存する。次に、8回目の起動ステップSP8で、スイッチング素子Q3およびQ5をオンすることにより、W相からV相に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。以降、9回目の探索ステップDS9および起動ステップSP9についても、同様にW相からV相に起動パルスを与える
10回目の探索ステップDS10は、1回の探索パルスからなる。1回目の探索パルスは、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。このとき比較器21の出力としてハイレベルを得られる。従って10回目の探索ステップDS10における1回目の探索パルスとして、電気角80度だけロータが回転した70度付近にあると判定される。次に、準定常ステップAP1として示すように、スイッチング素子Q1およびQ5をオンすることにより、U相からV相にPWM制御に基づいて駆動電流を供給し、ロータの回転を加速する。
ここで、1回目の60度正回転転流を確認した5回目の探索ステップDS5、2回目の60度正回転転流を確認した8回目の探索ステップDS8を経て、10回目の探索ステップDS10にて80度正回転転流を確認した。これら3回の60度から80度の正回転転流をもって回転起動が成功したと判定すれば、準定常ステップAP1の後は、逆起電圧モードにより、逆起電圧による位置検出に基づいて、通常の加速トルクを印加することができる。
図6の経過を図34のフローチャートに対応させると、1回目の探索ステップDS1は探索ステップG502に対応し、1回目の起動ステップSP1から準定常ステップAP1に至るまでは、ステップG511を経て後続探索起動ステップG512に対応する。次にステップG501で、回転速度が所定値以上かどうかを判断する。ステップG501は、より一般的に、図33(a)、(b)の各ステップG406、G415のように、逆起電圧モードへの切替え条件を満たしたかどうかを判断する、としてもよい。ステップG501で回転速度が所定値以上の場合、各ステップG509、G510の逆起電圧モードに入り、回転速度が所定値以下の場合、ステップG513で探索再設定カウンタを初期値にリセットし、再び探索ステップG502を実行する。
ステップG501においては、逆起電圧モードに入るかどうか、すなわち回転起動が成功したかどうかを判断する。図6の説明では、3回の60度から80度の正回転転流をもって、回転起動が成功したものと判定したが、3回以外の回数や、60度から80度以外の電気角の正回転転流をもって、ロータの回転起動が成功したと判定してもよい。また、60度から80度の正回転転流の期間中に得られる回転速度が、所定値に達することをもって、回転起動が成功したと判定してもよい。さらに、回転速度が所定値に達したとする信号として、探索ステップが60度の正回転転流の期間から、80度正回転転流の期間に切り替わる信号を用い、これをもって、回転起動が成功したと判定してもよい。
また探索起動モードから逆起電圧モードに変化した直後に加速トルクを印加するため、電流プロファイルを形成し、逆起電圧のゼロクロスを検出する電流ゼロ期間を設ける必要がある。この電流ゼロ期間は、探索起動モードにおける60度から80度毎の転流周期に基づいて、予め逆起電圧のゼロクロスが予測されるタイミングで設定される。
図6においては、準定常ステップAP1の後のゼロクロスを検出する。ロータ位置として60度領域が判定されたことを受けて、例えば探索起動モードでの60度領域のほぼ中心タイミングで生じるべきW相巻線の逆起電圧において、正から負へのゼロクロス点を検出する。ゼロクロス検出期間の開始時に、まだ所定のゼロクロスが生じていなければ、そのゼロクロスの発生を待ち、その発生をもって60度正回転転流を検出する。言い換えれば、W相巻線の逆起電圧の正から負へのゼロクロスを待つ場合、逆起電圧検出期間開始時に、W相巻線の逆起電圧がまだ正であれば所定のゼロクロスが生じるまでゼロクロス検出期間を継続とし、W相巻線の逆起電圧が負になった時点をもって、文字通りゼロクロスが生じたとする。逆起電圧ゼロクロス検出期間の開始時に、既に所定のゼロクロスが生じていることが逆起電圧信号の極性から判明している場合は、逆起電圧ゼロクロス検出期間の開始タイミングをもってゼロクロスタイミングとする。つまり例えばW相巻線の逆起電圧の正から負へのゼロクロスを待つ場合に、検出期間開始時にW相巻線の逆起電圧が既に負になっていれば、直ちにゼロクロスが生じたとする。
(第1の実施形態の変形例1)
第1の実施形態では、図5、図7の6種類全部の探索通電相について、図6の具体例を用いて説明した。第1の実施形態の変形例1では、4種類の探索通電相について、図8の具体例を用い、上述の第1の実施形態と異なる点を中心に、説明する。その他の構成、動作、および効果は、第1の実施形態と同様である。
図5、図7から分るように、これらの全探索通電相について、全部に探索パルスを印加する必要はない。
U⇒V(正)/(負)、V⇒U(正)/(負)、
V⇒W(正)/(負)、W⇒V(正)/(負)、
または、
W⇒U(正)/(負)、U⇒W(正)/(負)
いいかえれば、
第1相⇒第2相(正)/(負)、第2相⇒第1相(正)/(負)、
第2相⇒第3相(正)/(負)、第3相⇒第2相(正)/(負)、
または、
第3相⇒第1相(正)/(負)、第1相⇒第3相(正)/(負)、
のいずれについても、2種類の探索通電相に基づいた4つの探索角度範囲は、重複が少ないのでロータ位置の探索に効率的である。1回目の探索ステップにおいて、これら3種類の探索条件のうち1つを選択して、1回目の探索パルスを印加する。ロータ位置が検出できなければ、同じ探索条件で印加極性を逆にして2回目の探索パルスを印加する。ロータ位置が検出できなければ、3種類の探索条件のうち別の1つを選択して、3回目の探索パルスを印加する。ロータ位置が検出できなければ、同じ探索条件で印加極性を逆にして4回目の探索パルスを印加する。
以上により、第1の実施形態の変形例1では、1回目の探索ステップにおいて、図7の探索通電相を、下記に示す順番で選択して、ロータ位置を探索する場合を示す。
第1相⇒第2相(正)/(負)、第2相⇒第1相(正)/(負)、
第2相⇒第3相(正)/(負)、第3相⇒第2相(正)/(負)、
つまり、
U⇒V(正)/(負)、V⇒U(正)/(負)、
V⇒W(正)/(負)、W⇒V(正)/(負)、
の順番で探索パルスを印加する。
既述のように、2回目以降の探索ステップにおける1回目の探索パルスの印加には、1回目の探索ステップにおいて、ロータ位置が検出できた探索通電相を使用する。ロータ位置が検出できなければ、2回目の探索パルスの印加には、ロータが60度正回転するとした場合の探索通電相を使用する。
図8は、探索パルスと起動パルスの印加の様子を、模式的に示す。図8において、横軸は時間軸であり、図8(a)、(b)、および(c)は、それぞれU相巻線電流、V相巻線電流、およびW相巻線電流を示している。
図8(d)は、起動通電相系列FAに対応する、比較器21および比較器22の出力結果であり、図8(e)は、ロータ位置の判定結果である。図8(d)における正、負、および0は、比較器21がハイレベルであること、比較器22の出力がローレベルであること、および比較器21の出力がハイレベルでなく比較器22の出力がローレベルでないこと、をそれぞれ示す。図8(e)における230、290、350、および50は、ロータ位置の判定結果が230度付近、290度付近、350度付近、および50度付近、であることをそれぞれ示す。
図8では、1回目の探索ステップに、探索パルスを4回印加可能な図32の探索ステップを適用する。1回目の探索ステップ以降には、図33(a)の後続探索起動ステップを適用する。
図8において、DS1は、1回目の探索ステップである。図7に斜線で示した4種類の探索通電相内において、図32のフローチャートに基づいて、図4の状態F1、F4、F3の順番で、探索パルスを印加する。1回目および2回目では、中性点差電圧検出部13は、ロータ位置を検出できない。3回目に、スイッチング素子Q2およびQ6をオンすることにより、第2相(V相)から第3相(W相)に探索パルスを印加する。比較器22の出力がローレベルとなり、閾値超過信号S22が転流制御部16に送られる。ロータ位置が230度付近にあると判定され、このときの探索通電相を保存する。次に、SP1に示す1回目の起動ステップで、スイッチング素子Q2およびQ4をオンすることにより、第2相(V相)から第1相(U相)に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。
2回目の探索ステップDS2では、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。起動時は一般的に回転速度が低いため、転流を生じる頻度は、ロータ位置の探索回数に比べて十分に低い。DS2では、再び比較器22の出力がローレベルとなり、このときの探索通電相を保存する。次に、2回目の起動ステップSP2で、起動ステップSP1と同様に、第2相(V相)から第1相(U相)に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。3回目の探索ステップDS3および起動ステップSP3と、4回目の探索ステップDS4および起動ステップSP4についても、同様に第2相(V相)から第1相(U相)に起動パルスを与える。
5回目の探索ステップDS5は、2回の探索パルスからなる。このうち1回目の探索パルスは、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。このとき比較器22の出力としてローレベルを得られない。従って5回目の探索ステップDS5における2回目の探索パルスとして、電気角60度だけロータが回転した290度付近にあると想定して、スイッチング素子Q2およびQ4をオンすることにより、第2相(V相)から第1相(U相)に探索パルスを印加する。比較器21の出力はハイレベルとなり、ロータ位置が290度付近にあると判定され、このときの探索通電相を保存する。次に、5回目の起動ステップSP5で、スイッチング素子Q3およびQ4をオンすることにより、第3相(W相)から第1相(U相)に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。以降、6回目の探索ステップDS6および起動ステップSP6と、7回目の探索ステップDS7および起動ステップSP7についても、同様に第3相(W相)から第1相(U相)に起動パルスを与える。
8回目の探索ステップDS8は、2回の探索パルスからなる。このうち1回目の探索パルスは、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。このとき比較器21の出力としてハイレベルを得られない。従って8回目の探索ステップDS8における2回目の探索パルスとして、電気角60度だけロータが回転した350度付近にあると想定して、スイッチング素子Q3およびQ4をオンすることにより、第3相(W相)から第1相(U相)に探索パルスを印加する。比較器22の出力はローレベルとなり、ロータ位置が350度付近にあると判定され、このときの探索通電相を保存する。次に、8回目の起動ステップSP8で、スイッチング素子Q3およびQ5をオンすることにより、第3相(W相)から第2相(V相)に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。以降、9回目の探索ステップDS9および起動ステップSP9についても、同様に第3相(W相)から第2相(V相)に起動パルスを与える
10回目の探索ステップDS10は、2回の探索パルスからなる。このうち1回目の探索パルスは、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。このとき比較器22の出力としてローレベルを得られない。従って10回目の探索ステップDS10における2回目の探索パルスとして、電気角60度だけロータが回転した50度付近にあると想定して、スイッチング素子Q3およびQ5をオンすることにより、第3相(W相)から第2相(V相)に探索パルスを印加する。比較器21の出力はハイレベルとなり、ロータ位置が50度付近にあると判定される。次に、準定常ステップAP1として示すように、スイッチング素子Q1およびQ5をオンすることにより、U相からV相にPWM制御に基づいて駆動電流を供給し、ロータの回転を加速する。
ここで、1回目の60度正回転転流を確認した5回目の探索ステップDS5、2回目の60度正回転転流を確認した8回目の探索ステップDS8を経て、10回目の探索ステップDS10にて3回目の60度正回転転流を確認した。これら3回の60度の正回転転流をもって回転起動が成功したと判定すれば、準定常ステップAP1の後は、逆起電圧モードにより、逆起電圧による位置検出に基づいて、通常の加速トルクを印加することができる。
図34のステップG501においては、逆起電圧モードに入るかどうか、すなわち回転起動が成功したかどうかを判断する。図8の説明では、3回の60度の正回転転流をもって、回転起動が成功したものと判定したが、3回以外の回数や、60度以外の電気角、例えば80度の電気角を含む複数回の正回転転流をもって、ロータの回転起動が成功したと判定してもよい。また、60度や80度の正回転転流の期間中に得られる回転速度が、所定値に達することをもって、回転起動が成功したと判定してもよい。
(第1の実施形態の変形例2)
第1の実施形態の変形例2では、図2の中性点差電圧の波形について、上述の第1の実施形態と異なる点を中心に、説明する。その他の構成、動作、および効果は、第1の実施形態と同様である。
図9は、2相通電において、U相巻線端子からV相巻線端子に探索パルスを印加した時、中性点差電圧のロータ位置に対する特性を、探索パルスの電流レベルが異なる場合について示す波形図である。図9において、縦軸は中性点差電圧、横軸はロータ位置をそれぞれ表す。M3は、探索パルスの電流レベルが比較的高い場合の中性点差電圧であり、M4は、探索パルスの電流レベルが比較的低い場合の中性点差電圧である。各中性点差電圧M3、M4について、P1M3、P1M4はそれぞれの最大値を表し、P2M3、P2M4はそれぞれの最小値を表し、P3M3、P3M4はそれぞれの極大値を表し、P4M3、P4M4はそれぞれの極大値を表し、P5M3、P5M4はそれぞれの極小値を表す。なお、極大値P3M4と極大値P4M4は、波形M4上の同一の点を表し、極大値P3M3と極大値P4M3は、波形M3上の同一の点を表す。
図9において、極大値および極小値は、探索パルスを高めに設定した場合の方が、探索パルスを低めに設定した場合よりも小さいので、正の閾値S12Aおよび負の閾値S12Bの絶対値の下限マージンを大きく確保できる。従って探索ステップにおいて、所定の探索パルス値をよく制御すれば、電流ゼロの巻線両端に現れる中性点差電圧の極大値および極小値の大きさが減少し、ロータ位置をより正しく判定できる。
図1Aにおいて、探索パルスがモータ1に印加される動作を説明する。探索パルスは、基本的には、選択した各高電位側スイッチング素子Q1、Q2、Q3と各低電位側スイッチング素子Q4、Q5、Q6とをオン状態にすることにより、巻線端子間に所定電圧を所定時間幅だけ印加することで与えられる。PWM制御部17は、パルス発生器18からのオンパルスS18により、セットされるPWM制御信号S17を生成し、転流制御部16に送る。転流制御部16は、選択した探索通電相の探索角度範囲内にあるPWM制御信号S17に基づいて、スイッチング素子をPWMオン状態にする。探索パルスの印加によりモータ巻線に流れ始める探索パルス電流は、電流検出抵抗RDで電圧に変換される。電流検出抵抗RDの両端電圧は、増幅器19を介して、電流検出信号S7として生成される。探索指令信号生成部9は、探索パルスの所定値を表す探索指令信号S9を生成する。比較部6は、電流検出信号S7と探索指令信号S9と比較し、電流検出信号S7の値が、探索指令信号S9の値に達した時点のタイミングで、オフパルスS6を生成する。PWM制御信号S17は、PWM制御部17において、オフパルスS6によりリセットされる。
一方、探索パルスの印加により、中性点差電圧検出部13には中性点差電圧が現れる。その絶対値は、ロータ位置によっては所定の閾値を超えるまで大きくなる場合がある。中性点差電圧検出部13は、中性点差電圧と所定の閾値との差の極性が、中性点差電圧の極性と一致する場合、各閾値超過信号S21、S22を生成し、転流制御部16に送る。転流制御部16は、PWM制御信号S17のリセットされるタイミングで、各閾値超過信号S21、S22をラッチするとともに、探索パルスをPWMオフ状態にする。
図10Aは、上述した探索パルス電流値の設定の様子を示している。図10A(a)、(b)、および(c)は、電流検出信号S7として検出される探索パルス電流SF10P、閾値超過信号S21またはS22(SF10Qとして図示)、および閾値超過信号SF10Qをラッチした信号(SF10Rとして図示)であり、探索パルス電流SF10Pが増加する場合を示している。探索パルス電流SF10Pが探索指令信号S9の値(Ithとして図示)に達した時点86で、オフパルスS6が生成される。オフパルスS6は、閾値超過信号SF10Qをラッチするとともに、探索パルスをPWMオフ状態にする。
図9において、探索パルスは、上述したように、探索通電相の探索角度範囲内に印加される。中性点差電圧の絶対値は、探索角度範囲内において、安定的に所定の閾値以上となる。中性点差電圧が極大値や極小値などの極値となるロータ位置は、探索角度範囲の外側にある。したがって、極値におけるロータ位置の誤検出を、防止することができる。仮にロータ位置が図9の0度付近の位置にあり、誤って探索パルス電流を流すとする。この場合、図9の0度付近の各極大値P3M4、P3M3を誤検出し、探索パルス電流SF10Pの増加に伴って、閾値超過信号SF10Qは、図10A(b)のようにチャタリング状態87を呈する。このように、閾値超過信号SF10Qには、探索パルス電流SF10Pの大きさに依存して、チャタリング状態87と、論理レベルの安定した安定状態88とが存在する。閾値超過信号SF10Qが安定状態88にある期間に含まれる時点86で、閾値超過信号SF10QをオフパルスS6でラッチすることにより、探索ステップの誤動作を防止することができる。
図10Bは、サンプリングパルスを用いる別の構成による動作を示している。図10B(a)、(b)、および(c)は、電流検出信号S7として検出される探索パルス電流SF10A、サンプリングパルスSF10B、および閾値超過信号S21またはS22をサンプリングパルスSF10Bでラッチした信号(SF10Cとして図示)であり、探索パルス電流SF10Aが増加する場合を示している。サンプリングパルスSF10Bは、図1Bに示す転流制御部16B内のタイマー30により生成される。タイマー30は、PWM制御信号S17がオンパルスS18によりセットされる時点を始点として計時し、所定の遅延時間後、サンプリングパルスSF10Bを生成する。探索パルス電流SF10Aの形はほぼ一定であるため、サンプリングパルスSF10Bは、探索パルス電流SF10Aが一定値に達する時点で生成される。探索パルス電流SF10Aが探索指令信号S9の値(Ithとして図示)に達した時点で、転流制御部16Bは、サンプリングパルスSF10Bにより各閾値超過信号S21、S22をラッチするとともに、探索パルスをPWMオフ状態にする。
ここで特に具体的に図示していないが、オフパルスS6(SF10Bとして図示)を得る構成例を説明する。2つの比較回路において、探索指令信号S9(Ithとして図示)を一方の比較回路における非反転入力端子に入力し、探索指令信号S9より若干低い所定の閾値電圧を他方の比較回路における反転入力端子に入力する。この2つの比較回路の他方の2つの入力端子に、探索パルス電流SF10Aを共通に入力する。2つの比較回路の出力を論理積回路に入力すれば、この論理積回路の出力は、探索パルス電流SF10Aが探索指令信号S9近傍を横切る時に発生するパルス状信号となる。このパルス状信号は、探索パルス電流SF10Aの増加時と減少時の2回発生するため、マスク回路により減少時のパルス状信号を出力禁止にすれば、オフパルスS6が得られる。
次に、図10B(d)、(e)は、電流検出信号S7として検出される探索パルス電流SF10D、サンプリングパルスSF10E、および閾値超過信号S21またはS22をサンプリングパルスSF10Eでラッチした信号(SF10Fとして図示)であり、探索パルス電流SF10Dが減少する場合を示している。サンプリングパルスSF10Eは、図1Bに示す転流制御部16B内のタイマー30により生成される。タイマー30は、PWM制御信号S17がオンパルスS18によりセットされる時点を始点として計時し、所定の遅延時間後、サンプリングパルスSF10Eを生成する。探索パルス電流SF10Dの形はほぼ一定であるため、サンプリングパルスSF10Eは、探索パルス電流SF10Dが一定値に達する時点で生成される。探索パルス電流SF10Dが探索指令信号S9の値(Ithとして図示)に達した時点で、転流制御部16Bは、サンプリングパルスSF10Eにより各閾値超過信号S21、S22をラッチする。
オフパルスS6としては、上述したSF10Bを同様に用いる。ここで特に具体的に図示していないが、サンプリングパルスSF10Eを得る構成例を説明する。2つの比較回路において、探索指令信号S9(Ithとして図示)を一方の比較回路における非反転入力端子に入力し、探索指令信号S9より若干低い所定の閾値電圧を他方の比較回路における反転入力端子に入力する。この2つの比較回路の他方の2つの入力端子に、探索パルス電流SF10Dを共通に入力する。2つの比較回路の出力を論理積回路に入力すれば、この論理積回路の出力は、探索パルス電流SF10Dが探索指令信号S9近傍を横切る時に発生するパルス状信号となる。このパルス状信号は、探索パルス電流SF10Dの増加時と減少時の2回発生するため、マスク回路により増加時のパルス状信号を出力禁止にすれば、サンプリングパルスSF16Eが得られる。
起動パルスは、ロータ位置の判定結果に基づいて、起動通電相に対して付与される。起動パルスの与え方について、図11を用いて説明する。上述までの説明では、探索パルスおよび起動パルスは、図11(a)に示すように、それぞれ1つのパルスからなるとした。しかし特に起動パルスを与える期間は長くなり、過大な電流上昇を伴う場合があり、信頼性上問題がある。そこで図11(b)に示すように、PWM駆動をすることが可能である。起動指令信号生成部10からの起動指令信号S10に基づいて、電流ピーク値に達すればPWMオフし、所定時間経過後に再度PWMオンする。これにより、ほぼ一定の電流レベルを保つことができ、信頼性を維持することができる。探索パルスについても、図11(a)に示すように電流値をPWM制御することも可能であり、ロータ位置の誤検出防止に効果がある。
以上では、探索パルス電流の大きさが増大傾向にある場合を基本に、説明した。次に、探索パルス電流の大きさが減少傾向にある場合にも、ロータ位置の検出は可能であることを説明する。
図12は、探索パルス電流が増大する場合と減少する場合における中性点差電圧の波形図である。ロータ位置を横軸として、U相端子からV相端子の方向に、探索パルスを印加する場合を示している。M5は、探索パルス電流が増大傾向にある場合の中性点差電圧で、図2のM1に対応する。M6は、探索パルス電流が減少傾向にある場合の中性点差電圧である。
中性点差電圧は、インダクタンスと電流変化の積として検出されるので、ロータが同じ位置にある場合、電流増加時の中性点差電圧M5と電流減少時の中性点差電圧M6とは、逆極性になる。すなわち電流増加時の中性点差電圧M5、および電流減少時の中性点差電圧M6の閾値を設定する場合、同じロータ位置に対して、互いに逆極性の所定の閾値を設定すればよい。
例えば図11(b)において、PWMオン状態の後、PWMオフ状態になるが、PWMオン状態とPWMオフ状態とで、極性が逆の中性点差電圧を検出することができる。図4の説明において、ロータ位置が230度にあるとき、探索パルスをV相端子からW相端子方向に流した場合、電流が増加するPWMオン期間では、比較器22の出力はローレベルになる。しかし電流が減少するPWMオフ期間では、比較器21の出力はハイレベルになる。すなわち図4は、探索起動ステップにおいて、PWMオン期間における各状態を表しており、PWMオフ期間では、中性点差電圧検出部13の閾値の極性を、すべて反転したものとなる。このように、PWMオン期間とPWMオフ期間の両方、またはいずれか一方を利用することで、さらに柔軟な構成にすることができる。
図13は、図6と図8における探索起動ステップをまとめて表した、模式的タイミング図である。図13では、SD11からSD13の起動パルスの期間は、それぞれの電流波形が示すように、ピーク電流値を制御されたPWM駆動期間となっている。図13(d)の実線の矢印は、電流絶対値の増加期間を示すものである。SD11における電流増加期間に現れる中性点差電圧が、正の閾値以上であれば、ロータが290度の位置にあることを示す。同様に、SD12およびSD13における電流増加期間に現れる中性点差電圧が、負の閾値以下および正の閾値以上であれば、ロータが350度の位置および50度の位置にあることを、それぞれ示す。
また図13(d)の点線の矢印は、電流絶対値の減少期間を示すものである。SD11における電流減少期間に現れる中性点差電圧が、負の閾値以下であれば、ロータが290度の位置あることを示す。同様に、SD12およびSD13における電流減少期間に現れる中性点差電圧が、正の閾値以上および負の閾値以下であれば、ロータが350度の位置および50度の位置にあることを、それぞれ示す。電流増加期間に現れる中性点差電圧および電流減少期間に現れる中性点差電圧はいずれか、片方を利用してもよいし両方を利用してもよい。両方を利用する場合には、起動のためのトルク電流が連続しており、図6、図8の実施例よりも起動時の加速度を高めることが可能である。
以上の動作をフローチャートにして、図33(b)に示す。図33(b)においては、起動パルスが探索パルスを兼用する。すなわち、起動パルスの印加により、ロータに初期起動を与えるとともに、中性点差電圧検出部13にて中性点差電圧を検出し、ロータ位置を確認する。このように、図33(b)のフローチャートでは、図33(a)における探索パルスを印加するステップG402が、省略される。後続探索起動ステップG512終了以後は、ステップG415で、逆起電圧モードに入るかどうかを判断する。第1の実施形態の変形例2によれば、トルクに寄与しない探索パルスの変わりに起動パルスを利用するので、起動時の加速度を高めることができる。
(第1の実施形態の変形例3)
第1の実施形態の変形例3では、中性点差電圧検出部13の所定の閾値の設定について、さらに詳細に、上述の第1の実施形態と異なる点を中心に、説明する。その他の構成、動作、および効果は、第1の実施形態と同様である。
中性点差電圧検出部13の適正な閾値レベル域は、モータによって変動するため、モータ毎に閾値を適正な値に調整する必要がある。閾値が高すぎれば、例えば図2(a)、(b)のように、矢印で示した探索角度範囲が狭まるので、判定不能なロータ位置を生じてしまう。低すぎれば、極大値もしくは極小値を最大値もしくは最小値として、それぞれ誤判定する可能性がある。閾値を自動的に自己調整する場合には、初期閾値の絶対値を大きめに設定する。6種類の探索パルスを印加しても、中性点差電圧検出部13の出力がハイレベルでもローレベルでもない場合、すなわちロータ位置判定できない場合もある。この場合には、閾値を所定値低減した後に、再度探索ステップに戻したり、所定のキックパルス印加を印加して再度探索ステップに戻したりする。このように判定不能なロータ位置があっても、閾値レベルを更新することにより、判定不能なロータ位置を解消できる。例えば閾値設定部12が不揮発メモリを備え、適正化された閾値を保持し、以後は迅速にロータ位置の探索を可能にすることが出来る。
この閾値レベル更新の過程は、図30、図31および図32の探索再設定ステップに備えている。図34は、図30から図33に示した探索ステップを備えたフローチャートであり、閾値の絶対値レベルの低減過程を加えている。更に閾値の可変の結果にも拘わらずロータ位置が検出できない場合、同期運転で起動する同期起動モードへのステップや、逆起電圧モードへの切替え過程を追加している。
図33(a)、(b)における「逆起電圧モードへの切替え条件」を図34では「回転速度は所定値以上」であることとしている。また探索ステップG502には、探索通電相が6種類の図30、図31と、探索通電相が4種類の図32が、例として示されている。探索ステップG502では、6種類、もしくは4種類の探索通電相について探索パルスを印加し、それでもなおロータ位置が判定できない場合には、探索再設定ステップG503に進む。
探索再設定ステップG503では、まずステップG504で、中性点差電圧検出部13の閾値の絶対値が、下限値に達していないかどうかを判断する。未到達であれば、ステップG505で、閾値の絶対値は所定値だけ下げられ、探索ステップG502を再度繰り返す。中性点差電圧検出部13の閾値の絶対値を所定値低下させたにもかかわらず、全種類の探索パルスの印加を経ても、なおロータ位置が判定できなければ、再度同様にして所定値ずつ中性点差電圧検出部13の閾値の絶対値が下げられていく。中性点差電圧検出部13の閾値の絶対値の低減過程は、ロータ位置が判定されなければ、中性点差電圧検出部13の閾値の絶対値が下限値に達したと判定されるまでは、繰り返される。
次に、中性点差電圧検出部13の閾値の絶対値が下限値に達したと判定されれば、ロータ位置をずらすために、所定回数、キックパルスを印加する。その後再度、探索ステップG502に進む。この場合、探索再設定ステップG503を経て、再度、探索ステップG502に進む回数を、探索再設定カウンタでカウントする。所定の回数に達しない場合、再度、探索ステップG502に進む。所定の回数に達した場合、探索パルス印加によるロータ位置検出を中止し、所定の回転速度の回転磁界をステータに発生させ、モータ起動を行う同期起動モードに切替える。同期起動モードでは、起動速度が遅くなるが、ロータ位置が不明であっても、確実な起動を実現できる。
探索起動モードでは、中性点差電圧検出部13において、ロータ位置を検出し、ロータ位置の判定結果に基づいた起動パルスを印加し、回転速度が所定値に達するまで、探索ステップと起動ステップとを繰り返す。回転速度が所定値に達すれば、中性点差電圧検出部13と兼用した逆起電圧検出部14の比較器における閾値の絶対値を、逆起電圧モードに適した所定値に切替えて、逆起電圧モードでの動作を行う。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、2相通電の場合について説明した。第2の実施形態では、3相通電の場合について、上述の第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。その他の構成、動作、および効果は、第1の実施形態と同様である。
図20は本発明に係るモータ駆動装置の第2の実施形態における回路構成を示す。図20においてモータ駆動装置は、モータ1、駆動部2、駆動信号生成部5、比較部6、電流検出部7、相トルク指令信号生成部8、探索指令信号生成部9、起動指令信号生成部10、疑似中性点電圧生成部11、中性点差電圧検出部13A、および逆起電圧検出部14Aを備える。
モータ1は、3相の固定されたステータ、およびステータの周りを回転するロータを含む。ステータに巻回されるU相モータ巻線LU、V相モータ巻線LV、およびW相モータ巻線LWは、中性点CNで共通接続され、他端はそれぞれU相モータ端子QU、V相モータ端子QV、W相モータ端子QWに接続される。
駆動部2は、駆動信号生成部5で生成される6本の駆動信号S16Cを増幅するプリドライバ15、およびプリドライバ15により制御電極を駆動される6個のスイッチング素子を含む。6個のスイッチング素子は、U相高電位側スイッチング素子Q1、V相高電位側スイッチング素子Q2、W相高電位側スイッチング素子Q3、U相低電位側スイッチング素子Q4、V相低電位側スイッチング素子Q5、およびW相低電位側スイッチング素子Q6である。それぞれのスイッチング素子には、ダイオードが逆導通方向に並列接続される。各高電位側スイッチング素子Q1、Q2、Q3の高電位側電極は、高電位側電源3に接続され、各低電位側スイッチング素子Q4、Q5、Q6の低電位側電極は、電流検出部7を介して低電位側電源4に接続される。U相高電位側スイッチング素子Q1の低電位側電極とU相低電位側スイッチング素子Q4の高電位側電極は、モータ端子QUで接続され、V相高電位側スイッチング素子Q2の低電位側電極とV相低電位側スイッチング素子Q5の高電位側電極は、モータ端子QVで接続され、W相高電位側スイッチング素子Q3の低電位側電極とW相低電位側スイッチング素子Q6の高電位側電極は、モータ端子QWで接続される。
駆動信号生成部5は、転流制御部16A、PWM制御部17、パルス発生器18、および閾値設定部12Aを含む。電流検出部7は、電流検出抵抗RDおよび増幅器19を含む。疑似中性点電圧生成部11は各抵抗RU、RV、RWを含む。各抵抗RU、RV、RWは、疑似中性点PNに共通接続され、他端はそれぞれモータ端子QU、モータ端子QV、モータ端子QWに接続される。中性点差電圧検出部13Aは、比較器22Aを含む。逆起電圧検出部14Aは、相選択部20Aおよび比較器23を含む。比較器22Aは第1比較器とも呼び、比較器23は第2比較器とも呼ぶ。
本発明のモータ駆動装置において、停止中のモータ1に対し、ロータの初期位置を探索し、起動回転を与えて起動開始し、極低速回転状態になるまでの状態を、探索起動モードと呼ぶ。また、逆起電圧を安定に検出して転流制御できる通常回転状態を、逆起電圧モードと呼ぶ。
まず逆起電圧モードのトルク制御について説明する。逆起電圧モードでは、探索指令信号生成部9および起動指令信号生成部10は、使用されない。相トルク指令信号生成部8は、モータ1のトルクを指定するトルク指令信号を生成する。また相トルク指令信号生成部8には、転流制御部16Aから、駆動信号S16Cにおける動作状態レベルの組み合わせを表す動作状態信号S16Aが入力される。相トルク指令信号生成部8は、トルク指令信号と動作状態信号S16Aとに基づいて、各相に対応する相トルク指令信号S8を生成する。パルス発生器18は、周期性を有し、PWMオン状態における始点のタイミングを表すオンパルスS18を生成する。電流検出部7は、各相のスイッチング素子に流れるモータ電流を電流検出抵抗RDで電圧に変換し、増幅器19で増幅することにより、電流検出信号S7を生成する。
比較部6は、動作状態相を表す動作状態相信号S16Bを転流制御部16Aから受ける。比較部6は、動作状態相信号S16Bに基づいて、電流検出信号S7と相トルク指令信号S8を比較する。電流検出信号S7が、動作状態相における相トルク指令信号S8よりも大きい場合、動作状態相に対してオフパルスS6を生成する。PWM制御部17は、例えばSRフリップフロップの構成になっており、オンパルスS18によりセットされ、オフパルスS6によりリセットされるPWM制御信号S17を生成し、転流制御部16Aに送る。このように、動作状態相のPWMパルス幅が制御される。上述の構成および動作は、3相モータ巻線すべてにモータ電流が存在する場合も、電流制御を可能にする。なお120度通電を行う場合には、3相同時に通電するモータ電流スロープ制御をせずに、同時に通電する相は2相だけなので、相トルク指令信号S8は1本で済む。
次に、探索起動モードについて説明する。本発明のモータ駆動装置は、停止から起動直後の極低速回転状態まで、探索起動モードとして動作する。探索起動モードでは、探索ステップと起動ステップとが交互に繰り返されることにより、起動および加速が行われる。探索ステップでは、転流制御部16Aは、3相通電の組み合わせを選択し、駆動部2は、この3つの相に対して探索パルスを印加する。探索パルスは、ロータが動かない程度に極めて短時間あるいは微小印加され、ロータ位置が検出される。起動ステップでは、ロータ位置の判明後、好適なステータ相に起動パルスが印加され、起動トルクが与えられる。
次に図20において、探索起動モードに関係する部分の構成を説明する。転流制御部16Aは、中性点差電圧検出部13Aにおける1つの所定の閾値S12BAを制御する閾値制御信号S16Eを、閾値設定部12Aに出力する。閾値設定部12Aは、閾値制御信号S16Eに基づいて、比較器22Aに所定の閾値S12BAを与える。所定の閾値S12BAには、正の閾値S12BA1の場合と閾値S12BA2の場合とがある。閾値設定部12Aは、閾値制御信号S16Eに基づいて、所定の閾値S12BAを、正の閾値S12BA1もしくは閾値S12BA2に設定する。
比較器22Aには、中性点電圧SCNと、疑似中性点PNにおける疑似中性点電圧SPNが入力される。比較器22Aは、中性点電圧SCNと疑似中性点電圧SPNの差が、正の閾値S12BA1以上、あるいは負の閾値S12BA2以下であれば、閾値超過信号S22Aを生成し、転流制御部16Aに送る。中性点電圧SCNと疑似中性点電圧SPNとの差電圧を、中性点差電圧と呼ぶ。すなわち中性点差電圧検出部13Aは、中性点差電圧と所定の各閾値S12BA1、S12BA2との差の極性が、中性点差電圧の極性と一致する場合、閾値超過信号S22Aを生成し、転流制御部16Aに送る。これにより、ロータ位置が検出され、探索ステップが終了する。
次に、探索ステップに関する動作を説明する。
図21は、3相通電において、探索パルスの印加に対する中性点差電圧を測定した波形図である。縦軸は、中性点電圧を表し、基準は、疑似中性点電圧SPN(0mV)としている。横軸は、ロータの相対位置を表し、基準は、モータ端子QUからモータ端子QVに定常電流を流す場合にロータがロックされる位置(150度)としている。このようなロータの相対位置を、ただ単にロータ位置と呼ぶ。
図21において、M3およびM4は中性点差電圧であり、S12BA1およびS12BA2は、それぞれ正の閾値および負の閾値である。なお、図21(a)のように、U相をソース相、V相およびW相をシンク相として、電流パルスを流すことを、U⇒V&Wと表す。また図2(b)のように、V相およびW相をソース相、U相をシンク相として、電流パルスを流すことをV&W⇒Uと表す。同様にすべての実施形態において、1つのソース相から2つのシンク相に電流パルスを流すことを、(ソース相)⇒(第1シンク相)&(第2シンク相)、と表し、2つのソース相から1つのシンク相に電流パルスを流すことを、(第1ソース相)&(第2ソース相)⇒(シンク相)、と表す。ここで(ソース相)、(シンク相)、(第1ソース相)、(第2ソース相)、(第1シンク相)、および(第2シンク相)は、それぞれU、V、Wのいずれかである。(ソース相)⇒(第1シンク相)&(第2シンク相)は、電流パルスを流すときの通電相が(ソース相)、(第1シンク相)、および(第2シンク相)であり、電流パルスの向きが(ソース相)から(第1シンク相)および(第2シンク相)に向かっていることを表している。(第1ソース相)&(第2ソース相)⇒(シンク相)は、電流パルスを流すときの通電相が(第1ソース相)、(第2ソース相)、および(シンク相)であり、電流パルスの向きが(第1ソース相)および(第2ソース相)から(シンク相)に向かっていることを表している。電流パルスが探索パルスの場合、(ソース相)⇒(第1シンク相)&(第2シンク相)、(第1ソース相)&(第2ソース相)⇒(シンク相)を、それぞれ探索通電相と呼ぶ。
図21(a)において、中性点差電圧M3は、180度付近に最大値P1M3を有する。また図2(b)において、中性点差電圧M4は、0度付近に最小値P2M4を有する。なお、図示してはいないが、V⇒U&Wの場合の中性点差電圧、およびW⇒U&Vの場合の中性点差電圧は、図21(a)の中性点差電圧M3を、それぞれ+120度、および−120度だけ移動した波形になる。またU&W⇒Vの場合の中性点差電圧、およびU&V⇒Wの場合の中性点差電圧は、図21(b)の中性点差電圧M4を、それぞれ+120度、および−120度だけ移動した波形になる。
中性点差電圧検出部13Aに備えられた比較器22Aは、3相通電において、図21に示すように、中性点差電圧M3が正の閾値S12BA1以上になると、ハイレベルとなり、中性点差電圧M4が負の閾値S12BA2以下になると、ローレベルとなる閾値超過信号S22Aを生成し、転流制御部16Aに送る。ここで第1の実施形態と同様に、図3(a)のトルク定数に従って、閾値超過信号S22Aが生成される電気角の位置で、ロータが動き出す程度の時間あるいは振幅を有する電流パルスを流し、正回転方向にトルクが発生させる。ここでロータ停止時に、正回転方向にトルクが発生する通電相を、起動通電相と呼び、(ソース相)⇒(シンク相)で表す。
図22は、3相通電において、各探索通電相に対する、中性点差電圧検出部13Aにおける所定の閾値の極性と、中性点差電圧の最大値または最小値におけるロータ位置と、起動通電相との関係を示す関係図である。
3相モータにおいて、U相、V相、W相の3相の組み合わせからなる探索通電相は、全部で6種類である。第2の実施形態では、ロータを正回転させるため、探索通電相は、U&W⇒V(状態F1A)、U⇒V&W(状態F2A)、U&V⇒W(状態F3A)、V⇒U&W(状態F4A)、V&W⇒U(状態F5A)、W⇒U&V(状態F6A)、U&W⇒V(状態F1A)、・・・の順序で切替えられる。このように探索通電相が6状態ごとに循環する系列を、探索通電相系列と呼ぶ。
状態F1Aは、探索通電相をU&W⇒Vに設定し、閾値超過信号S22Aがローレベルになると、ロータ位置が120度付近の最小値と検出され、起動通電相をU⇒Wに設定する。
状態F2Aは、探索通電相をU⇒V&Wに設定し、閾値超過信号S22Aがハイレベルになると、ロータ位置が180度付近の最大値と検出され、起動通電相をV⇒Wに設定する。
状態F3Aは、探索通電相をU&V⇒Wに設定し、閾値超過信号S22Aがローレベルになると、ロータ位置が240度付近の最小値と検出され、起動通電相をV⇒Uに設定する。
状態F4Aは、探索通電相をV⇒U&Wに設定し、閾値超過信号S22Aがハイレベルになると、ロータ位置が300度付近の最大値と検出され、起動通電相をW⇒Uに設定する。
状態F5Aは、探索通電相をV&W⇒Uに設定し、閾値超過信号S22Aがローレベルになると、ロータ位置が0度付近の最小値と検出され、起動通電相をW⇒Vに設定する。
状態F6Aは、探索通電相をW⇒U&Vに設定し、閾値超過信号S22Aがハイレベルになると、ロータ位置が60度付近の最大値と検出され、起動通電相をU⇒Vに設定する。
以上のように、探索通電相系列U&W⇒V、U⇒V&W、U&V⇒W、V⇒U&W、V&W⇒U、W⇒U&Vに従って、起動通電相は、それぞれU⇒W、V⇒W、V⇒U、W⇒U、W⇒V、U⇒Vに設定される。U⇒W、V⇒W、V⇒U、W⇒U、W⇒V、U⇒Vのような起動通電相の系列を、起動通電相系列と呼ぶ。起動通電相系列の最大値や最小値のロータ位置は、0度付近、60度付近、120度付近、180度付近、240度付近、および300度付近となる。起動通電相系列において、最大値や最小値のロータ位置は、60度間隔になっている。
このように、起動通電相系列は、起動通電相が60度間隔で6状態ごとに循環する系列になっている。またそれぞれの切替え順序は、探索通電相系列の切替え順序と一致し、その方向は、探索通電相系列と同様に、ロータを正回転させる方向になっている。しかし起動通電相系列の切替え順序は、探索通電相系列の切替え順序に対して、90度進んでいる。例えば状態F1Aにおいて、探索通電相はU&W⇒Vであり、図3(a)のトルク定数では30度付近に相当する。これに対してロータ位置および起動通電相U⇒Wは、120度付近であるから、90度進んでいることになる。
探索ステップにおいて、中性点差電圧の絶対値が所定閾値以上の探索通電相を検出する。起動ステップにおいては、この探索通電相に対して、90度ロータ位置を進めた起動通電相に設定する。この起動通電相に対し、起動パルスを与える。後述するように、2回目以降の探索通電相として直前の起動通電相を利用する場合、ロータ位置が90度進んだ探索通電相を使用することが可能になり、探索起動ステップの立ち上がりを早くすることができる。
図23は、3相通電における探索通電相の探索角度範囲を示す説明図である。
U&W⇒V(負)は、U相とW相からV相に電流パルスを与える探索通電相において、負の閾値S12BA2に基づいて比較器22Aで中性点差電圧が検出され、ロータ位置が検出される探索角度範囲を示している。また、U&W⇒V(正)とは、U相とW相からV相に電流パルスを与える探索通電相において、正の閾値S12BA1に基づいて比較器22Aで中性点差電圧が検出され、ロータ位置が検出される探索角度範囲を示している。U&W⇒V(負)、U⇒V&W(正)、U&V⇒W(負)、V⇒U&W(正)、V&W⇒U(負)、W⇒U&V(正)についても、同様である。
ここで、図23を中心に、図20、図21、図22を参照し、3相通電における探索起動モードについて、その動作を説明する。
本発明のモータ駆動装置は、停止から起動直後の極低速回転状態まで、探索起動モードとして動作する。探索起動モードでは、探索ステップと起動ステップとが交互に繰り返されることにより、起動および加速が行われる。探索ステップでは、転流制御部16Aは、3相の組み合わせからなる探索通電相を選択し、駆動部2は、この探索通電相に対して探索パルスを印加する。探索パルスは、ロータが動かない程度に極めて短時間あるいは微小印加され、ロータ位置が検出される。起動ステップでは、ロータ位置の判明後、好適な起動通電相に起動パルスが印加され、起動トルクが与えられる。
最初に、図22の状態F1Aにおいて、転流制御部16Aは、探索通電相U&W⇒Vに基づいて、図20における高電位側スイッチング素子Q1、高電位側スイッチング素子Q3、および低電位側スイッチング素子Q5をオンする。これにより、探索パルスは、高電位側電源3、高電位側スイッチング素子Q1、高電位側スイッチング素子Q3、U相モータ巻線LU、W相モータ巻線LW、中性点CN、V相モータ巻線LV、低電位側スイッチング素子Q5、電流検出抵抗RD、低電位側電源4、の経路で流れる。すなわち探索パルスは、U相モータ巻線LUとW相モータ巻線LWからV相モータ巻線LVに流れる。
探索起動モードでは、閾値設定部12Aは、所定の負の閾値S12BA2を比較器22Aに与える。このとき中性点電圧SCNを比較器22Aの非反転入力端子に入力し、疑似中性点電圧SPNを反転入力端子に入力する。
この場合、閾値超過信号S22Aがローレベルであれば、ロータ位置は120度付近であると検出される。閾値超過信号S22Aがハイレベルの場合、ロータは他の角度範囲にあるものと判定される。120度付近にあるロータに対しては、起動通電相U⇒Wに基づいて、各スイッチング素子Q1、Q6をオンする。これにより、U相モータ巻線LUからW相モータ巻線LWに起動パルスは流れ、良好な起動トルクを与えることができる。
次に、図22の状態F2Aにおいて、転流制御部16Aは、探索通電相U⇒V&Wに基づいて、図20における高電位側スイッチング素子Q1、低電位側スイッチング素子Q5、および低電位側スイッチング素子Q6をオンする。これにより、探索パルスは、高電位側電源3、高電位側スイッチング素子Q1、U相モータ巻線LU、中性点CN、V相モータ巻線LV、W相モータ巻線LW、低電位側スイッチング素子Q5、低電位側スイッチング素子Q6、電流検出抵抗RD、低電位側電源4、の経路で流れる。すなわち探索パルスは、U相モータ巻線LUからV相モータ巻線LVとW相モータ巻線LWに流れる。
探索起動モードでは、閾値設定部12Aは、所定の正の閾値S12BA1を比較器22Aに与える。このとき中性点電圧SCNを比較器22Aの非反転入力端子に入力し、疑似中性点電圧SPNを反転入力端子に入力する。
この場合、閾値超過信号S22Aがハイレベルであれば、ロータ位置は180度付近であると検出される。閾値超過信号S22Aがローレベルの場合、ロータは他の角度範囲にあるものと判定される。180度付近にあるロータに対しては、起動通電相V⇒Wに基づいて、各スイッチング素子Q2、Q6をオンする。これにより、V相モータ巻線LVからW相モータ巻線LWに起動パルスは流れ、良好な起動トルクを与えることができる。
次に、図22の状態F3Aにおいて、転流制御部16Aは、探索通電相U&V⇒Wに基づいて、図20における高電位側スイッチング素子Q1、高電位側スイッチング素子Q2、および低電位側スイッチング素子Q6をオンする。これにより、探索パルスは、高電位側電源3、高電位側スイッチング素子Q1、高電位側スイッチング素子Q2、U相モータ巻線LU、V相モータ巻線LV、中性点CN、W相モータ巻線LW、低電位側スイッチング素子Q6、電流検出抵抗RD、低電位側電源4、の経路で流れる。すなわち探索パルスは、U相モータ巻線LUとV相モータ巻線LVからW相モータ巻線LWに流れる。
探索起動モードでは、閾値設定部12Aは、所定の負の閾値S12BA2を比較器22Aに与える。このとき中性点電圧SCNを比較器22Aの非反転入力端子に入力し、疑似中性点電圧SPNを反転入力端子に入力する。
この場合、閾値超過信号S22Aがローレベルであれば、ロータ位置は240度付近であると検出される。閾値超過信号S22Aがハイレベルの場合、ロータは他の角度範囲にあるものと判定される。240度付近にあるロータに対しては、起動通電相V⇒Uに基づいて、各スイッチング素子Q2、Q4をオンする。これにより、V相モータ巻線LVからU相モータ巻線LUに起動パルスは流れ、良好な起動トルクを与えることができる。
次に、図22の状態F4Aにおいて、転流制御部16Aは、探索通電相V⇒U&Wに基づいて、図20における高電位側スイッチング素子Q2、低電位側スイッチング素子Q4、および低電位側スイッチング素子Q6をオンする。これにより、探索パルスは、高電位側電源3、高電位側スイッチング素子Q2、V相モータ巻線LV、中性点CN、U相モータ巻線LU、W相モータ巻線LW、低電位側スイッチング素子Q4、低電位側スイッチング素子Q6、電流検出抵抗RD、低電位側電源4、の経路で流れる。すなわち探索パルスは、V相モータ巻線LVからU相モータ巻線LUとW相モータ巻線LWに流れる。
探索起動モードでは、閾値設定部12Aは、所定の正の閾値S12BA1を比較器22Aに与える。このとき中性点電圧SCNを比較器22Aの非反転入力端子に入力し、疑似中性点電圧SPNを反転入力端子に入力する。
この場合、閾値超過信号S22Aがハイレベルであれば、ロータ位置は300度付近であると検出される。閾値超過信号S22Aがローレベルの場合、ロータは他の角度範囲にあるものと判定される。300度付近にあるロータに対しては、起動通電相W⇒Uに基づいて、各スイッチング素子Q3、Q4をオンする。これにより、W相モータ巻線LWからU相モータ巻線LUに起動パルスは流れ、良好な起動トルクを与えることができる。
次に、図22の状態F5Aにおいて、転流制御部16Aは、探索通電相V&W⇒Uに基づいて、図20における高電位側スイッチング素子Q2、高電位側スイッチング素子Q3、および低電位側スイッチング素子Q4をオンする。これにより、探索パルスは、高電位側電源3、高電位側スイッチング素子Q2、高電位側スイッチング素子Q3、V相モータ巻線LV、W相モータ巻線LW、中性点CN、U相モータ巻線LU、低電位側スイッチング素子Q4、電流検出抵抗RD、低電位側電源4、の経路で流れる。すなわち探索パルスは、V相モータ巻線LVとW相モータ巻線LWからU相モータ巻線LUに流れる。
探索起動モードでは、閾値設定部12Aは、所定の負の閾値S12BA2を比較器22Aに与える。このとき中性点電圧SCNを比較器22Aの非反転入力端子に入力し、疑似中性点電圧SPNを反転入力端子に入力する。
この場合、閾値超過信号S22Aがローレベルであれば、ロータ位置は0度付近であると検出される。閾値超過信号S22Aがハイレベルの場合、ロータは他の角度範囲にあるものと判定される。0度付近にあるロータに対しては、起動通電相W⇒Vに基づいて、各スイッチング素子Q3、Q5をオンする。これにより、W相モータ巻線LWからV相モータ巻線LVに起動パルスは流れ、良好な起動トルクを与えることができる。
次に、図22の状態F6Aにおいて、転流制御部16Aは、探索通電相W⇒U&Vに基づいて、図20における高電位側スイッチング素子Q3、低電位側スイッチング素子Q4、および低電位側スイッチング素子Q5をオンする。これにより、探索パルスは、高電位側電源3、高電位側スイッチング素子Q3、W相モータ巻線LW、中性点CN、U相モータ巻線LU、V相モータ巻線LV、低電位側スイッチング素子Q4、低電位側スイッチング素子Q5、電流検出抵抗RD、低電位側電源4、の経路で流れる。すなわち探索パルスは、W相モータ巻線LWからU相モータ巻線LUとV相モータ巻線LVに流れる。
探索起動モードでは、閾値設定部12Aは、所定の正の閾値S12BA1を比較器22Aに与える。このとき中性点電圧SCNを比較器22Aの非反転入力端子に入力し、疑似中性点電圧SPNを反転入力端子に入力する。
この場合、閾値超過信号S22Aがハイレベルであれば、ロータ位置は60度付近であると検出される。閾値超過信号S22Aがローレベルの場合、ロータは他の角度範囲にあるものと判定される。60度付近にあるロータに対しては、起動通電相U⇒Vに基づいて、各スイッチング素子Q1、Q5をオンする。これにより、U相モータ巻線LUからV相モータ巻線LVに起動パルスは流れ、良好な起動トルクを与えることができる。
以上、3相モータの印加極性も含めて6種類の探索通電相の探索角度範囲について説明したが、基本的にこの6種類の探索通電相において、探索パルス印加時の中性点差電圧から、ロータ位置の検出は十分行うことができる。
次に図31の探索ステップについて説明する。
図31は、3相通電における探索ステップのフローチャートである。ここで転流制御部16は、転流制御部16Aに置き換えて説明する。
図31において、
ステップG200で、探索ステップの動作が開始される。
ステップG201で、転流制御部16Aは、探索通電相をU&W⇒Vに設定する(第2の実施形態ではステップG201の「U⇒V」を「U&W⇒V」に置き換える)。すなわち転流制御部16Aは、各スイッチング素子Q1、Q3、Q5の各制御電極に与える駆動信号S16Cを、動作状態レベルにする。
ステップG202で、中性点差電圧検出部13Aは、所定の閾値の極性を決定する。
ステップG203で、駆動部2は、探索パルスを印加する。すなわち駆動部2は、設定された探索通電相に基づいて、対応する各スイッチング素子をオンする。
ステップG204で、中性点差電圧検出部13Aは、中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上かどうかを判断する。所定の閾値以上と判断されれば、閾値超過信号を生成し、ステップG511に進んで、探索ステップは終了する。所定の閾値以下と判断されれば、ステップG205に進む。
ステップG205で、駆動部2は、各モータ巻線LU、LV、LWに流れる各モータ電流をゼロにする。すなわち転流制御部16Aは、全6本の駆動信号S16Cを非動作状態レベルにし、駆動部2の各スイッチング素子Q1からQ6はオフされる。
ステップG206で、6種類の探索通電相を全部設定完了したかどうかを判断する。未完であれば、ステップG207に進み、完了であれば、ステップG503に進む。
ステップG207で、転流制御部16Aは、探索通電相を他の組合せに設定し、ステップG202に戻る。
ステップG503で、探索再設定ステップの動作が実行される。
以上のようにして探索ステップでは、中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上になると、閾値超過信号を生成し、転流制御部16Aに送る。転流制御部16Aは、閾値超過信号の送られた時の探索通電相を記憶し、次の起動ステップにおける起動通電相を、この探索通電相と図22に基づいて設定する。
なお、図31のステップG201で、探索通電相の初期設定をU&W⇒Vとしているが、他の探索通電相から探索ステップを開始してもよい。さらにPWM駆動をさせる必要もなく、リニア駆動させることも可能である。
次に、図31の探索再設定ステップG503について、図34の探索ステップG502および探索再設定ステップG503を用いて説明する。ここで転流制御部16と中性点差電圧検出部13は、それぞれ転流制御部16Aと中性点差電圧検出部13Aに置き換えて説明する。
ステップG502で、探索ステップの動作が実行される。中性点差電圧検出部13Aは、中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上であれば、閾値超過信号S22Aを生成し、ステップG511で探索ステップを終了する。次に、1回目の探索ステップ以降の探索起動ステップを表す後続探索起動ステップG512を実行する。後続探索起動ステップG512のフローチャートは、図33で後述する。探索ステップG502で、全種類の探索通電相について探索ステップを実行しても終了しない場合、探索再設定ステップG503に進む。
図34の探索再設定ステップG503では、探索通電相の全種類について探索パルスを印加したにもかかわらず、中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上にならなかったのは、所定の閾値が高すぎたためと判断する。そこで所定の閾値の絶対値を所定値だけ低くする。
ステップG504で、中性点差電圧検出部13Aにおける正の閾値S12BA1および負の閾値S12BA2の各絶対値は、下限値に到達しているかどうかが判断される。未到達であれば、ステップG505に進み、到達していればステップG506に進む。
ステップG505で、転流制御部16Aは、閾値設定部12Aを介して、所定の閾値の絶対値を所定値だけ低減し、ステップG507に進む。
ステップG506で、所定の閾値が十分低下しても中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上にならなかったのは、ロータ位置が探索角度範囲の端部付近にあったためと判断する。そこでロータのステータに対する初期相対位置をずらす1回以上のキックパルスを印加し、ロータ位置を若干移動する。次にステップG507に進む。
ステップG507で、探索再設定ステップG503を通過する回数を計測する探索再設定カウンタの値が、所定回数に到達したかどうかが判断される。到達していれば、ステップG508に進み、未到達であれば、探索再設定カウンタの値を進め、ステップG502に戻って、探索ステップを再度実行する。
ステップG508で、探索起動モードによる起動を断念し、同期起動モードでの起動を実行する。
ステップG507により、探索ステップの実行に回数制限を設け、探索ステップの過剰な再実行を防止する。
同期起動モードは、所定の回転速度の回転磁界をステータに発生させ、モータを起動するモードである。同期起動モードでは起動速度は遅くなるが、ロータ位置が不明であっても確実に起動することが可能となる。
以上のことから、図31に示すフローチャートは、全6種類の探索通電相について探索ステップを実行し、ロータ位置が検出され次第、直ちに終了としていることがわかる。図31のフローチャートを、起動ステップ実行後の2回目以降の探索ステップに利用してもよいが、以後に述べる効率化の観点から、1回目の探索ステップのみとして用いるのが効率的である。
図33(a)は、探索起動モードにおいて1回目の起動ステップ以降のフローチャートである。図31における第1回目の探索ステップをステップG511で終了した後、図33(a)のフローチャートが開始される。
図33(a)を説明すると、
ステップG400で、フローチャートの動作が開始される。
ステップG401で、転流制御部16Aは、直前の探索ステップにおける探索通電相に基づいて起動通電相を設定し、駆動部2は、起動パルスを印加する。
ステップG402で、転流制御部16Aは、前回ロータ位置が検出できた探索通電相に通電相を設定し、駆動部2は、探索パルスを印加する。
ステップG403で、中性点差電圧検出部13Aは、中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上かどうかを判断する。所定の閾値以上の場合、ステップG404に進み、所定の閾値以下の場合、ステップG405に進む。
ステップG404で、ロータが前回判定の60度期間にあると判断し、再度ステップG401から繰り返す。
ステップG405で、ロータが次の60度期間に転流したと判定し、ステップG406に進む。
ステップG406で、逆起電圧モードへの切替え条件を満たしたかどうかを判定する。すなわち、探索通電相と閾値超過信号と起動通電相とロータ位相信号の少なくとも1つを用いて、モード切替え信号を生成し、モード切替え信号に基づいて判断する。切替え条件を満たした場合、ステップG407に進み、探索起動モードを終了する。切替え条件を満たしていない場合、再度ステップG401に戻る。
各ステップG401、G402、G403、G404、G405は、まとめて、1回目の探索ステップ以降の探索起動ステップを表す後続探索起動ステップG512を構成する。
図33(b)は、探索起動モードにおいて1回目の起動ステップ以降のフローチャートである。図33(a)のフローチャートと異なる点は、起動パルスが探索パルスを兼用している点である。図31における第1回目の探索ステップをステップG511で終了した後、図33(b)のフローチャートが開始される。
図33(b)を説明すると、
ステップG410で、フローチャートの動作が開始される。
ステップG411で、転流制御部16Aは、直前の探索ステップにおける探索通電相に基づいて起動通電相を設定し、駆動部2は、起動パルスを印加する。
ステップG412で、ステップG411における起動パルスの印加に対し、中性点差電圧検出部13Aは、中性点差電圧の絶対値が所定の閾値以上かどうかを判断する。所定の閾値以下の場合、ステップG413に進み、所定の閾値以上の場合、ステップG414に進む。
ステップG413で、ロータが前回判定の60度期間にあると判断し、再度ステップG411から繰り返す。
ステップG414で、ロータが次の60度期間に転流したと判定し、ステップG415に進む。
ステップG415で、逆起電圧モードへの切替え条件を満たしたかどうかを判定する。すなわち、探索通電相と閾値超過信号と起動通電相とロータ位相信号の少なくとも1つを用いて、モード切替え信号を生成し、モード切替え信号に基づいて判断する。切替え条件を満たした場合、ステップG416に進み、探索起動モードを終了する。切替え条件を満たしていない場合、再度ステップG411に戻る。
各ステップG411、G412、G413、G414は、まとめて、1回目の探索ステップ以降の探索起動ステップを表す後続探索起動ステップG512を構成する。
以上のことにより、図33(b)においては起動パルスが探索パルスを兼用するので、図33(a)における探索パルス印加のステップG402が省略される。終了のステップG407およびG416以後は、逆起電圧モードでの動作に移る。図33(b)によれば、トルクに寄与しない探索パルスの変わりに起動パルスを利用するので、起動時の加速度を高めることができる。
次に、図20に示す逆起電圧モードで動作する逆起電圧検出部14Aついて説明する。比較器23と相選択部20Aの具体例として、図14(a)、(b)がある。
図14(a)は、1個の比較器23が、相選択部20Aを介して、非通電相の各相モータ端子から逆起電圧を読み出す構成になっている。すなわち、比較器23は、非通電相における各相モータ端子電圧SU、SV、SWと、中性点電圧SCNとの差を表す逆起電圧を検出し、ロータ位相信号S23を生成する。比較器23が中性点差電圧検出部13Aの比較器と兼用する場合には、逆起電圧モードにおいて、比較器23の所定の閾値は、その絶対値を低減するかまたはゼロに戻し、逆起電圧検出用の比較器として使用される。このとき逆起電圧のゼロクロスは、その出現が予測されるタイミングで、相選択部20Aを介して所定の非通電相のモータ端子から検出される。
また図14(b)は、図20の構成とは異なって、相選択部20Aを使用せず、U相比較器23U、V相比較器23V、W相比較器23Wを用意する構成になっている。すなわち、各比較器23U、23V、23Wは、直接に非通電相の各相モータ端子から、逆起電圧を読み出している。比較器23U、23V、23Wは、非通電相におけるモータ端子電圧SU、SV、SWと、中性点電圧SCNとの差を表す逆起電圧を検出し、ロータ位相信号S23U、S23V、S23Wをそれぞれ生成する。各ロータ位相信号S23U、S23V、S23Wは、転流制御部16Aに入力され、転流制御部16Aにおいて、非通電相のロータ位相信号が選択される。比較器23が中性点差電圧検出部13Aの比較器と兼用する場合には、逆起電圧モードにおいて、兼用比較器23Uの所定の閾値は、その絶対値を低減するかまたはゼロに戻し、逆起電圧検出用の比較器として使用される。
図25(a)は、図20の構成とは異なって、相選択部20Aを使用せず、中性点差電圧検出部13Aの比較器22A、および逆起電圧検出部14Aの各比較器23U、23V、23Wの4つの比較器を、専用に用意する構成になっている。すなわち、各比較器23U、23V、23Wは、直接に非通電相の各相モータ端子から、逆起電圧を読み出している。比較器22Aは、中性点電圧SCNと疑似中性点電圧SPNを比較し、閾値超過信号S22Aを生成する。比較器23U、23V、23Wは、非通電相におけるモータ端子電圧SU、SV、SWと、中性点電圧SCNとの差を表す逆起電圧を検出し、ロータ位相信号S23U、S23V、S23Wをそれぞれ生成する。各ロータ位相信号S23U、S23V、S23Wは、転流制御部16Aに入力され、転流制御部16Aにおいて、非通電相のロータ位相信号が選択される。
また図25(b)は、図25(a)の構成に対し、逆起電圧検出部14Aが、相選択部20BとU相兼用比較器23UA、V相比較器23V、W相比較器23Wを含み、この内、兼用比較器23UAが、中性点差電圧検出部13Aの比較器22Aを兼用する構成になっている。転流制御部16Aは、中性点電圧検出部13Aと逆起電圧検出部14Aを制御する相選択信号S16Fを生成し、相選択部20Bは、相選択信号S16Fに基づいて、制御される。探索起動モードの場合、相選択部20Bを介して、兼用比較器23UAの反転端子は、疑似中性点PNを選択し、非反転入力端子は、中性点CNを選択する。逆起電圧モードの場合、相選択部20Bを介して、兼用比較器23UAの反転端子は、中性点CNを選択し、非反転入力端子は、モータ端子SUを選択する。またV相比較器23Vの反転端子は、中性点CNに接続され、非反転入力端子は、V相モータ端子SVに接続される。W相比較器23Wの反転端子は、中性点CNに接続され、非反転入力端子は、W相モータ端子SWに接続される。
図25(b)の構成において、探索起動モードの場合、兼用比較器23UAは、非反転入力端子と反転入力端子に入力される2入力信号の差の絶対値が、所定の閾値を超えたことを表す閾値超過信号S23UAを生成し、転流制御部16Aに送る。逆起電圧モードの場合、各比較器23UA、23V、23Wは、非通電相におけるモータ端子電圧SU、SV、SWと、中性点電圧SCNとの差を表す逆起電圧を検出し、ロータ位相信号S23UA、S23V、S23Wをそれぞれ生成する。各ロータ位相信号S23UA、S23V、S23Wは、転流制御部16に入力され、転流制御部16において、非通電相のロータ位相信号が選択される。兼用比較器23UAの所定の閾値は、その絶対値を低減するかまたはゼロに戻し、逆起電圧検出用の比較器として使用される。
次に、更に具体的に、探索起動モードおよび逆起電圧モードについて、説明する。
探索ステップにおいて、図22の状態F1AからF6Aの順番に、6種類の探索通電相に対して探索パルスを印加する。図23には、各探索通電相に対して、検出可能なロータ位置が示される。既述のように、2回目以降の探索ステップにおける1回目の探索パルスの印加には、1回目の探索ステップにおいて、ロータ位置が検出できた探索通電相を使用する。ロータ位置が検出できなければ、2回目の探索パルスの印加には、ロータが60度正回転するとした場合の探索通電相を使用する。
図24は、探索パルスと起動パルスの印加の様子を、模式的に示す。図24において、横軸は時間軸であり、図24(a)、(b)、および(c)は、それぞれU相巻線電流、V相巻線電流、およびW相巻線電流を示している。
図24(d)は、図22の起動通電相系列に対応する、比較器22Aの出力結果であり、図24(e)は、ロータ位置の判定結果である。図24(d)における正、負、および0は、所定の正の閾値S12BA1を与えられた比較器22Aの出力がハイレベルであること、所定の負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力がローレベルであること、および所定の正の閾値S12BA1を与えられた比較器22Aの出力がハイレベルでなく、所定の負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力がローレベルでないこと、をそれぞれ示す。ここで比較器22Aは、所定の正の閾値S12BA1と、所定の負の閾値S12BA2とを、適切に切替えて使用する。図24(e)における240、300、0、および60は、ロータ位置の判定結果が240度付近、300度付近、0度付近、および60度付近、であることをそれぞれ示す。
図24では、1回目の探索ステップに、探索パルスを6回印加可能な図23、図31の探索ステップを適用する。1回目の探索ステップ以降には、図33(a)の後続探索起動ステップを適用する。
図24において、DS1は、1回目の探索ステップである。図23の6種類の探索通電相内において、図31のフローチャートに基づいて、図22の状態F1A、F2A、F3Aの順番で、探索パルスを印加する。1回目および2回目では、中性点差電圧検出部13Aは、ロータ位置を検出できない。3回目に、スイッチング素子Q1、Q2、およびQ6をオンすることにより、U相とV相からW相に探索パルスを印加する。負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力がローレベルとなり、閾値超過信号S22Aが転流制御部16Aに送られる。ロータ位置が240度付近にあると判定され、このときの探索通電相を保存する。次に、SP1に示す1回目の起動ステップで、スイッチング素子Q2およびQ4をオンすることにより、V相からU相に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。
2回目の探索ステップDS2では、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。起動時は一般的に回転速度が低いため、転流を生じる頻度は、ロータ位置の探索回数に比べて十分に低い。DS2では、再び負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力がローレベルとなり、このときの探索通電相を保存する。次に、2回目の起動ステップSP2で、起動ステップSP1と同様に、V相からU相に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。3回目の探索ステップDS3および起動ステップSP3と、4回目の探索ステップDS4および起動ステップSP4についても、同様にV相からU相に起動パルスを与える。
5回目の探索ステップDS5は、2回の探索パルスからなる。このうち1回目の探索パルスは、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。このとき負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力としてローレベルを得られない。従って5回目の探索ステップDS5における2回目の探索パルスとして、電気角60度だけロータが回転した300度付近にあると想定して、スイッチング素子Q2、Q4、およびQ6をオンすることにより、V相からU相とW相に探索パルスを印加する。正の閾値S12BA1を与えられた比較器22Aの出力はハイレベルとなり、ロータ位置が300度付近にあると判定され、このときの探索通電相を保存する。次に、5回目の起動ステップSP5で、スイッチング素子Q3およびQ4をオンすることにより、W相からU相に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。以降、6回目の探索ステップDS6および起動ステップSP6と、7回目の探索ステップDS7および起動ステップSP7についても、同様にW相からU相に起動パルスを与える。
8回目の探索ステップDS8は、2回の探索パルスからなる。このうち1回目の探索パルスは、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。このとき正の閾値S12BA1を与えられた比較器22Aの出力としてハイレベルを得られない。従って8回目の探索ステップDS8における2回目の探索パルスとして、電気角60度だけロータが回転した0度付近にあると想定して、スイッチング素子Q2、Q3、およびQ4をオンすることにより、V相とW相からU相に探索パルスを印加する。負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力はローレベルとなり、ロータ位置が0度付近にあると判定され、このときの探索通電相を保存する。次に、8回目の起動ステップSP8で、スイッチング素子Q3およびQ5をオンすることにより、W相からV相に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。以降、9回目の探索ステップDS9および起動ステップSP9についても、同様にW相からV相に起動パルスを与える。
10回目の探索ステップDS10は、2回の探索パルスからなる。1回目の探索パルスは、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。このとき負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力としてローレベルを得られない。従って10回目の探索ステップDS10における2回目の探索パルスとして、電気角60度だけロータが回転した60度付近にあると想定して、スイッチング素子Q3、Q4、およびQ5をオンすることにより、W相からU相とV相に探索パルスを印加する。このとき正の閾値S12BA1を与えられた比較器22Aの出力は、ハイレベルとなる。従って10回目の探索ステップDS10における2回目の探索パルスとして、電気角60度だけロータが回転した60度付近にあると判定される。次に、準定常ステップAP1として示すように、スイッチング素子Q1およびQ5をオンすることにより、U相からV相にPWM制御に基づいて駆動電流を供給し、ロータの回転を加速する。
ここで、1回目の60度正回転転流を確認した5回目の探索ステップDS5、2回目の60度正回転転流を確認した8回目の探索ステップDS8を経て、10回目の探索ステップDS10にて3回目の60度正回転転流を確認した。これら3回の60度の正回転転流をもって回転起動が成功したと判定すれば、準定常ステップAP1の後は、逆起電圧モードにより、逆起電圧による位置検出に基づいて、通常の加速トルクを印加することができる。
図24の説明では、3回の60度の正回転転流をもって、回転起動が成功したものと判定したが、3回以外の回数や、60度以外の電気角の正回転転流をもって、ロータの回転起動が成功したと判定してもよい。また、3回の60度の正回転転流の期間中に得られる回転速度が、所定値に達することをもって、回転起動が成功したと判定してもよい。
また探索起動モードから逆起電圧モードに変化した直後に加速トルクを印加するため、電流プロファイルを形成し、逆起電圧のゼロクロスを検出する電流ゼロ期間を設ける必要がある。この電流ゼロ期間は、探索起動モードにおける60度毎の転流周期に基づいて、予め逆起電圧のゼロクロスが予測されるタイミングで設定される。
(第2の実施形態の変形例1)
第2の実施形態の変形例1では、キックパルスについて、上述の第2の実施形態と異なる点を中心に、説明する。その他の構成、動作、および効果は、第2の実施形態と同様である。
図26は、最近の3相ブラシレスモータ1Bについて、3相通電による中性点差電圧の測定結果を表す波形図である。図26の横軸は、電気角(度)を示し、縦軸は、疑似中性点電圧SPNを基準とした中性点差電圧を示している。図26から明らかなように、3相ブラシレスモータ1Bにおいては、6カ所のロータ位置が判定できない判定不能角度範囲UPが存在する。
このような場合に、キックパルスによりロータ位置をずらす動作を、探索起動モードに追加すると有効である。判定不能角度範囲UPは、全電気角からみれば比較的狭い。このため、所定のロータ位置判定を行い、ロータ位置判定できない場合に所定のキックパルスを印加する。ロータを現状の位置から若干変位させることにより、以後はロータ位置判定が可能になる。この場合、キックパルスは、複数のパルスを1組として、その内の少なくとも1つのパルスで、必ず所定値以上のトルクが印加されるようにする。例えば、互いに90度位相が異なる2種類のパルスを印加すれば、最大トルクを1としたときに少なくとも0.71のトルクを印加できる。互いに60度または120度位相が異なる3種類のパルスを印加すれば、最大トルクを1としたときに少なくとも0.87のトルクを印加できる。互いに60度または120度位相が異なる2種類のパルスを印加すれば、最大トルクを1としたときに少なくとも0.50のトルクを印加できる。互いに60度または120度位相が異なるパルスの組合せは、図20の3つの相巻線端子のうち、任意に選んだ2つの端子間に、電流パルスを印加する組合せで用意できる。90度位相が異なるパルスは、1回は3つの相巻線端子のうち、任意に選んだ2つの端子間に電流パルスを印加するとともに、2回目は上述2端子を束ねたものと残る1端子との間に電流パルスを印加すれば用意できる。このキックパルス印加の過程は、図34に示すようにフローチャートに挿入される。また、3つの相巻線に対するキックパルスの通電は、2相通電でも、3相通電でも両方適用できるのは明らかである。
図27は、キックパルスを含む探索パルスと起動パルスの印加の様子を、模式的に示す。図27では、1回目の探索ステップでロータ位置が判定できない場合、60度位相の異なる3相通電のキックパルスを3回挿入する。2回目の探索ステップで、再度1回目と同様の順番で探索ステップを行い、ロータ位置が判明する。ただし既述したように、3回目以降の探索ステップにおいて、1回目の探索パルスは、前回の探索ステップにおいてロータ位置判定できた探索通電相を用い、これが外れた場合、2回目の探索パルスには、ロータが60度正回転した探索通電相を用いる。図27において、横軸は時間軸であり、図27(a)、(b)、および(c)は、それぞれU相巻線電流、V相巻線電流、およびW相巻線電流を示している。
図27(d)は、図22の起動通電相系列に対応する、比較器22Aの出力結果であり、図27(e)は、ロータ位置の判定結果である。図27(d)における正、負、および0は、所定の正の閾値S12BA1を与えられた比較器22Aの出力がハイレベルであること、所定の負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力がローレベルであること、および所定の正の閾値S12BA1を与えられた比較器22Aの出力がハイレベルでなく、所定の負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力がローレベルでないこと、をそれぞれ示す。ここで比較器22Aは、所定の正の閾値S12BA1と、所定の負の閾値S12BA2とを、適切に切替えて使用する。図27(e)における240、300、0、および60は、ロータ位置の判定結果が240度付近、300度付近、0度付近、および60度付近、であることをそれぞれ示す。
図27では、1回目の探索ステップに、探索パルスを6回印加可能な図23、図31の探索ステップを適用する。1回目の探索ステップ以降には、図33(a)の後続探索起動ステップを適用する。
図27において、DS1は、1回目の探索ステップである。図23の6種類の探索通電相内において、図31のフローチャートに基づいて、図22の状態F1A、F2A、F3Aの順番で、探索パルスを印加する。図27では、6種類の探索通電相の全部に対して探索パルスを印加したが、中性点差電圧検出部13Aは、ロータ位置を検出できなかった。
次に、ロータ位置をわずかずらすため、3相通電でPWM駆動制御され、60度位相が異なるキックパルスを、KP1、KP2、KP3の順に計3回印加する。
キックパルスKP1では、スイッチング素子Q1、Q3、およびQ5をオン、オフするPWM駆動制御により、U相とW相からV相にキックパルス電流を流す。キックパルスKP2では、スイッチング素子Q1、Q5、およびQ6をオン、オフするPWM駆動制御により、U相からV相とW相にキックパルス電流を流す。キックパルスKP3では、スイッチング素子Q1、Q2、およびQ6をオン、オフするPWM駆動制御により、U相とV相からW相にキックパルス電流を流す。このように、3回のキックパルスにより、ロータ位置をわずかにずらしている。
2回目の探索ステップDS2では、再度1回目の探索パルスDS1と同様に、図22の状態F1A、F2A、F3Aの順番で、探索パルスを印加する。1回目および2回目では、中性点差電圧検出部13Aは、ロータ位置を検出できない。3回目に、スイッチング素子Q1、Q2、およびQ6をオンすることにより、U相とV相からW相に探索パルスを印加する。負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力がローレベルとなり、閾値超過信号S22Aが転流制御部16Aに送られる。ロータ位置が240度付近にあると判定され、このときの探索通電相を保存する。次に、SP1に示す1回目の起動ステップで、スイッチング素子Q2およびQ4をオンすることにより、V相からU相に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。
3回目の探索ステップDS3では、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。起動時は一般的に回転速度が低いため、転流を生じる頻度は、ロータ位置の探索回数に比べて十分に低い。DS3では、再び負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力がローレベルとなり、このときの探索通電相を保存する。次に、2回目の起動ステップSP2で、起動ステップSP1と同様に、V相からU相に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。4回目の探索ステップDS4および3回目の起動ステップSP3についても、同様にV相からU相に起動パルスを与える。
5回目の探索ステップDS5は、2回の探索パルスからなる。このうち1回目の探索パルスは、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。このとき負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力としてローレベルを得られない。従って5回目の探索ステップDS5における2回目の探索パルスとして、電気角60度だけロータが回転した300度付近にあると想定して、スイッチング素子Q2、Q4、およびQ6をオンすることにより、V相からU相とW相に探索パルスを印加する。正の閾値S12BA1を与えられた比較器22Aの出力はハイレベルとなり、ロータ位置が300度付近にあると判定され、このときの探索通電相を保存する。次に、4回目の起動ステップSP4で、スイッチング素子Q3およびQ4をオンすることにより、W相からU相に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。以降、6回目の探索ステップDS6および5回目の起動ステップSP5についても、同様にW相からU相に起動パルスを与える。
7回目の探索ステップDS7は、2回の探索パルスからなる。このうち1回目の探索パルスは、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。このとき正の閾値S12BA1を与えられた比較器22Aの出力としてハイレベルを得られない。従って7回目の探索ステップDS7における2回目の探索パルスとして、電気角60度だけロータが回転した0度付近にあると想定して、スイッチング素子Q2、Q3、およびQ4をオンすることにより、V相とW相からU相に探索パルスを印加する。負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力はローレベルとなり、ロータ位置が0度付近にあると判定され、このときの探索通電相を保存する。次に、6回目の起動ステップSP6で、スイッチング素子Q3およびQ5をオンすることにより、W相からV相に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。
8回目の探索ステップDS8は、2回の探索パルスからなる。1回目の探索パルスは、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。このとき負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力としてローレベルを得られない。従って8回目の探索ステップDS8における2回目の探索パルスとして、電気角60度だけロータが回転した60度付近にあると想定して、スイッチング素子Q3、Q4、およびQ5をオンすることにより、W相からU相とV相に探索パルスを印加する。このとき正の閾値S12BA1を与えられた比較器22Aの出力は、ハイレベルとなる。従って8回目の探索ステップDS8における2回目の探索パルスとして、電気角60度だけロータが回転した60度付近にあると判定される。次に、準定常ステップAP1として示すように、スイッチング素子Q1およびQ5をオンすることにより、U相からV相にPWM制御に基づいて駆動電流を供給し、ロータの回転を加速する。
ここで、1回目の60度正回転転流を確認した5回目の探索ステップDS5、2回目の60度正回転転流を確認した7回目の探索ステップDS7を経て、8回目の探索ステップDS8にて3回目の60度正回転転流を確認した。これら3回の60度の正回転転流をもって回転起動が成功したと判定すれば、準定常ステップAP1の後は、逆起電圧モードにより、逆起電圧による位置検出に基づいて、通常の加速トルクを印加することができる。
図27の説明では、3回の60度の正回転転流をもって、回転起動が成功したものと判定したが、3回以外の回数や、60度以外の電気角の正回転転流をもって、ロータの回転起動が成功したと判定してもよい。また、3回の60度の正回転転流の期間中に得られる回転速度が、所定値に達することをもって、回転起動が成功したと判定してもよい。
また探索起動モードから逆起電圧モードに変化した直後に加速トルクを印加するため、電流プロファイルを形成し、逆起電圧のゼロクロスを検出する電流ゼロ期間を設ける必要がある。この電流ゼロ期間は、探索起動モードにおける60度毎の転流周期に基づいて、予め逆起電圧のゼロクロスが予測されるタイミングで設定される。
(第2の実施形態の変形例2)
第2の実施形態の変形例2では、探索パルス電流が減少する場合について、上述の第2の実施形態と異なる点を中心に、説明する。その他の構成、動作、および効果は、第2の実施形態と同様である。
図20において、探索パルスがモータ1に印加される動作を説明する。探索パルスは、基本的には、選択した各高電位側スイッチング素子Q1、Q2、Q3と各低電位側スイッチング素子Q4、Q5、Q6とをオン状態にすることにより、巻線端子間に所定電圧を所定時間幅だけ印加することで与えられる。PWM制御部17は、パルス発生器18からのオンパルスS18により、セットされるPWM制御信号S17を生成し、転流制御部16Aに送る。転流制御部16Aは、選択した探索通電相の探索角度範囲内にあるPWM制御信号S17に基づいて、スイッチング素子をPWMオン状態にする。探索パルスの印加によりモータ巻線に流れ始める探索パルス電流は、電流検出抵抗RDで電圧に変換される。電流検出抵抗RDの両端電圧は、増幅器19を介して、電流検出信号S7として生成される。探索指令信号生成部9は、探索パルスの所定値を表す探索指令信号S9を生成する。比較部6は、電流検出信号S7と探索指令信号S9と比較し、電流検出信号S7の値が、探索指令信号S9の値に達した時点のタイミングで、オフパルスS6を生成する。PWM制御信号S17は、PWM制御部17において、オフパルスS6によりリセットされる。
一方、探索パルスの印加により、中性点差電圧検出部13Aには中性点差電圧が現れ、その絶対値が所定の閾値を超えるまで大きくなる。中性点差電圧検出部13Aは、中性点差電圧と所定の閾値との差の極性が、中性点差電圧の極性と一致する場合、閾値超過信号S22Aを生成し、転流制御部16Aに送る。転流制御部16Aは、PWM制御信号S17のリセットされるタイミングで、閾値超過信号S22Aをラッチするとともに、探索パルスをPWMオフ状態にする。
図10Aは、上述した探索パルス電流値の設定の様子を示している。図10A(a)、(b)、および(c)は、電流検出信号S7として検出される探索パルス電流SF10P、閾値超過信号S22A(SF10Qとして図示)、および閾値超過信号SF10Qをラッチした信号(SF10Rとして図示)であり、探索パルス電流SF10Pが増加する場合を示している。探索パルス電流SF10Pが探索指令信号S9の値(Ithとして図示)に達した時点86で、オフパルスS6が生成される。オフパルスS6は、閾値超過信号SF10Qをラッチするとともに、探索パルスをPWMオフ状態にする。
図9において、探索パルスは、上述したように、探索通電相の探索角度範囲内に印加される。中性点差電圧の絶対値は、探索角度範囲内において、安定的に所定の閾値以上となる。中性点差電圧が極大値や極小値などの極値となるロータ位置は、探索角度範囲の外側にある。したがって、極値におけるロータ位置の誤検出を、防止することができる。仮にロータ位置が図9の0度付近の位置にあり、誤って探索パルス電流を流すとする。この場合、図9の0度付近の各極大値P3M4、P3M3を誤検出し、探索パルス電流SF10Pの増加に伴って、閾値超過信号SF10Qは、図10A(b)のようにチャタリング状態87を呈する。このように、閾値超過信号SF10Qには、探索パルス電流SF10Pの大きさに依存して、チャタリング状態87と、論理レベルの安定した安定状態88とが存在する。閾値超過信号SF10Qが安定状態88にある期間に含まれる時点86で、閾値超過信号SF10QをオフパルスS6でラッチすることにより、探索ステップの誤動作を防止することができる。
図10Bは、サンプリングパルスを用いる別の構成による動作を示している。図10B(a)、(b)、および(c)は、電流検出信号S7として検出される探索パルス電流SF10A、サンプリングパルスSF10B、および閾値超過信号S22AをサンプリングパルスSF10Bでラッチした信号(SF10Cとして図示)であり、探索パルス電流SF10Aが増加する場合を示している。サンプリングパルスSF10Bは、図1Bに示す転流制御部16B内のタイマー30により生成される。タイマー30は、PWM制御信号S17がオンパルスS18によりセットされる時点を始点として計時し、所定の遅延時間後、サンプリングパルスSF10Bを生成する。探索パルス電流SF10Aの形はほぼ一定であるため、サンプリングパルスSF10Bは、探索パルス電流SF10Aが一定値に達する時点で生成される。探索パルス電流SF10Aが探索指令信号S9の値(Ithとして図示)に達した時点で、転流制御部16Bは、サンプリングパルスSF10Bにより閾値超過信号S22Aをラッチするとともに、探索パルスをPWMオフ状態にする。
ここで特に具体的に図示していないが、オフパルスS6(SF10Bとして図示)を得る構成例を説明する。2つの比較回路において、探索指令信号S9(Ithとして図示)を一方の比較回路における非反転入力端子に入力し、探索指令信号S9より若干低い所定の閾値電圧を他方の比較回路における反転入力端子に入力する。この2つの比較回路の他方の2つの入力端子に、探索パルス電流SF10Aを共通に入力する。2つの比較回路の出力を論理積回路に入力すれば、この論理積回路の出力は、探索パルス電流SF10Aが探索指令信号S9近傍を横切る時に発生するパルス状信号となる。このパルス状信号は、探索パルス電流SF10Aの増加時と減少時の2回発生するため、マスク回路により減少時のパルス状信号を出力禁止にすれば、オフパルスS6が得られる。
次に、図10B(d)、(e)は、電流検出信号S7として検出される探索パルス電流SF10D、サンプリングパルスSF10E、および閾値超過信号S22AをサンプリングパルスSF10Eでラッチした信号(SF10Fとして図示)であり、探索パルス電流SF10Dが減少する場合を示している。サンプリングパルスSF10Eは、図1Bに示す転流制御部16B内のタイマー30により生成される。タイマー30は、PWM制御信号S17がオンパルスS18によりセットされる時点を始点として計時し、所定の遅延時間後、サンプリングパルスSF10Eを生成する。探索パルス電流SF10Dの形はほぼ一定であるため、サンプリングパルスSF10Eは、探索パルス電流SF10Dが一定値に達する時点で生成される。探索パルス電流SF10Dが探索指令信号S9の値(Ithとして図示)に達した時点で、転流制御部16Bは、サンプリングパルスSF10Eにより閾値超過信号S22Aをラッチする。
オフパルスS6としては、上述したSF10Bを同様に用いる。ここで特に具体的に図示していないが、サンプリングパルスSF10Eを得る構成例を説明する。2つの比較回路において、探索指令信号S9(Ithとして図示)を一方の比較回路における非反転入力端子に入力し、探索指令信号S9より若干低い所定の閾値電圧を他方の比較回路における反転入力端子に入力する。この2つの比較回路の他方の2つの入力端子に、探索パルス電流SF10Dを共通に入力する。2つの比較回路の出力を論理積回路に入力すれば、この論理積回路の出力は、探索パルス電流SF10Dが探索指令信号S9近傍を横切る時に発生するパルス状信号となる。このパルス状信号は、探索パルス電流SF10Dの増加時と減少時の2回発生するため、マスク回路により増加時のパルス状信号を出力禁止にすれば、サンプリングパルスSF16Eが得られる。
起動パルスは、ロータ位置の判定結果に基づいて、起動通電相に対して付与される。起動パルスの与え方について、図11を用いて説明する。上述までの説明では、探索パルスおよび起動パルスは、図11(a)に示すように、それぞれ1つのパルスからなるとした。しかし特に起動パルスを与える期間は長くなり、過大な電流上昇を伴う場合があり、信頼性上問題がある。そこで図11(b)に示すように、PWM駆動をすることが可能である。起動指令信号生成部10からの起動指令信号S10に基づいて、電流ピーク値に達すればPWMオフし、所定時間経過後に再度PWMオンする。これにより、ほぼ一定の電流レベルを保つことができ、信頼性を維持することができる。探索パルスについても、図11(a)に示すように電流値をPWM制御することも可能であり、ロータ位置の誤検出防止に効果がある。
以上では、探索パルス電流の大きさが増大傾向にある場合を基本に、説明した。次に、探索パルス電流の大きさが減少傾向にある場合にも、ロータ位置の検出は可能であることを説明する。
図28は、3相通電において、探索パルス電流が増大する場合と減少する場合における中性点差電圧の波形図である。ロータ位置を横軸として、U相端子からV相端子とW相端子の方向に、探索パルスを印加する場合を示している。M7は、探索パルス電流が増大傾向にある場合の中性点差電圧で、図21のM3に対応する。M8は、探索パルス電流が減少傾向にある場合の中性点差電圧である。
中性点差電圧は、インダクタンスと電流変化の積として検出されるので、ロータが同じ位置にある場合、電流増加時の中性点差電圧M7と電流減少時の中性点差電圧M8とは、逆極性になる。すなわち電流増加時の中性点差電圧M7、および電流減少時の中性点差電圧M8の閾値を設定する場合、同じロータ位置に対して、互いに逆極性の所定の閾値を設定すればよい。
例えば図11(b)において、PWMオン状態の後、PWMオフ状態になるが、PWMオン状態とPWMオフ状態とで、極性が逆の中性点差電圧を検出することができる。図22の説明において、ロータ位置が180度にあるとき、探索パルスをU相端子からV相端子とW相端子方向に流した場合、電流が増加するPWMオン期間では、正の閾値S12BA1を与えられた比較器22Aの出力はハイレベルになる。しかし電流が減少するPWMオフ期間では、負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力はローレベルになる。すなわち図22は、探索起動ステップにおいて、PWMオン期間における各状態を表しており、PWMオフ期間では、中性点差電圧検出部13Aの閾値の極性を、すべて反転したものとなる。このように、PWMオン期間とPWMオフ期間の両方、またはいずれか一方を利用することで、さらに柔軟な構成にすることができる。
(第2の実施形態の変形例3)
第2の実施形態の変形例3では、キックパルスが探索パルスを兼用する場合について、上述の第2の実施形態と異なる点を中心に、説明する。その他の構成、動作、および効果は、第2の実施形態と同様である。
図29は、キックパルスを含む探索パルスと起動パルスの印加の様子を、模式的に示す。図29では、1回目の探索ステップでロータ位置が判定できない場合、2回目の探索ステップとして、60度位相の異なる3相通電のキックパルスを3回挿入する。すなわち2回目の探索ステップで、探索パルス機能を兼用したキックパルスを印加し、ロータを若干移動させるとともに、中性点差電圧検出部13Aによりロータ位置を探索する。その結果、3回目のキックパルスで、ロータ位置が判明する。ただし既述したように、3回目以降の探索ステップにおいて、1回目の探索パルスは、前回の探索ステップにおいてロータ位置判定できた探索通電相を用い、これが外れた場合、2回目の探索パルスには、ロータが60度正回転した探索通電相を用いる。図29において、横軸は時間軸であり、図29(a)、(b)、および(c)は、それぞれU相巻線電流、V相巻線電流、およびW相巻線電流を示している。
図29(d)は、図22の起動通電相系列に対応する、比較器22Aの出力結果であり、図29(e)は、ロータ位置の判定結果である。図29(d)における正、負、および0は、所定の正の閾値S12BA1を与えられた比較器22Aの出力がハイレベルであること、所定の負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力がローレベルであること、および所定の正の閾値S12BA1を与えられた比較器22Aの出力がハイレベルでなく、所定の負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力がローレベルでないこと、をそれぞれ示す。ここで比較器22Aは、所定の正の閾値S12BA1と、所定の負の閾値S12BA2とを、適切に切替えて使用する。図29(e)における240、300、0、および60は、ロータ位置の判定結果が240度付近、300度付近、0度付近、および60度付近、であることをそれぞれ示す。
図29では、1回目の探索ステップに、探索パルスを6回印加可能な図23、図31の探索ステップを適用する。1回目の探索ステップ以降には、図33(a)の後続探索起動ステップを適用する。
図29において、DS1は、1回目の探索ステップである。図23の6種類の探索通電相内において、図31のフローチャートに基づいて、図22の状態F1A、F2A、F3Aの順番で、探索パルスを印加する。図29では、6種類の探索通電相の全部に対して探索パルスを印加したが、中性点差電圧検出部13Aは、ロータ位置を検出できなかった。
次に、2回目の探索ステップDS2において、ロータ位置をわずかずらすため、3相通電でPWM駆動制御され、60度位相が異なるキックパルスを、KP1、KP2、KP3の順に計3回印加し、同時にロータ位置を探索する。
キックパルスKP1では、スイッチング素子Q1、Q3、およびQ5をオン、オフするPWM駆動制御により、U相とW相からV相にキックパルス電流を流す。キックパルスKP2では、スイッチング素子Q1、Q5、およびQ6をオン、オフするPWM駆動制御により、U相からV相とW相にキックパルス電流を流す。キックパルスKP3では、スイッチング素子Q1、Q2、およびQ6をオン、オフするPWM駆動制御により、U相とV相からW相にキックパルス電流を流す。このように、3回のキックパルスにより、ロータ位置をわずかにずらしている。
1回目のキックパルスKP1および2回目のキックパルスKP2では、中性点差電圧検出部13Aは、ロータ位置を検出できない。3回目のキックパルスKP3で、負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力がローレベルとなり、閾値超過信号S22Aが転流制御部16Aに送られる。ロータ位置が240度付近にあると判定され、このときの探索通電相を保存する。次に、SP1に示す1回目の起動ステップで、スイッチング素子Q2およびQ4をオンすることにより、V相からU相に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。
3回目の探索ステップDS3では、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。起動時は一般的に回転速度が低いため、転流を生じる頻度は、ロータ位置の探索回数に比べて十分に低い。DS3では、再び負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力がローレベルとなり、このときの探索通電相を保存する。次に、2回目の起動ステップSP2で、起動ステップSP1と同様に、V相からU相に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。4回目の探索ステップDS4および3回目の起動ステップSP3についても、同様にV相からU相に起動パルスを与える。
5回目の探索ステップDS5は、2回の探索パルスからなる。このうち1回目の探索パルスは、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。このとき負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力としてローレベルを得られない。従って5回目の探索ステップDS5における2回目の探索パルスとして、電気角60度だけロータが回転した300度付近にあると想定して、スイッチング素子Q2、Q4、およびQ6をオンすることにより、V相からU相とW相に探索パルスを印加する。正の閾値S12BA1を与えられた比較器22Aの出力はハイレベルとなり、ロータ位置が300度付近にあると判定され、このときの探索通電相を保存する。次に、4回目の起動ステップSP4で、スイッチング素子Q3およびQ4をオンすることにより、W相からU相に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。以降、6回目の探索ステップDS6および5回目の起動ステップSP5についても、同様にW相からU相に起動パルスを与える。
7回目の探索ステップDS7は、2回の探索パルスからなる。このうち1回目の探索パルスは、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。このとき正の閾値S12BA1を与えられた比較器22Aの出力としてハイレベルを得られない。従って7回目の探索ステップDS7における2回目の探索パルスとして、電気角60度だけロータが回転した0度付近にあると想定して、スイッチング素子Q2、Q3、およびQ4をオンすることにより、V相とW相からU相に探索パルスを印加する。負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力はローレベルとなり、ロータ位置が0度付近にあると判定され、このときの探索通電相を保存する。次に、6回目の起動ステップSP6で、スイッチング素子Q3およびQ5をオンすることにより、W相からV相に起動パルスを印加し、ロータに好適な起動トルクを与える。
8回目の探索ステップDS8は、2回の探索パルスからなる。1回目の探索パルスは、前回保存した探索通電相で探索パルスを印加する。このとき負の閾値S12BA2を与えられた比較器22Aの出力としてローレベルを得られない。従って8回目の探索ステップDS8における2回目の探索パルスとして、電気角60度だけロータが回転した60度付近にあると想定して、スイッチング素子Q3、Q4、およびQ5をオンすることにより、W相からU相とV相に探索パルスを印加する。このとき正の閾値S12BA1を与えられた比較器22Aの出力は、ハイレベルとなる。従って8回目の探索ステップDS8における2回目の探索パルスとして、電気角60度だけロータが回転した60度付近にあると判定される。次に、準定常ステップAP1として示すように、スイッチング素子Q1およびQ5をオンすることにより、U相からV相にPWM制御に基づいて駆動電流を供給し、ロータの回転を加速する。
ここで、1回目の60度正回転転流を確認した5回目の探索ステップDS5、2回目の60度正回転転流を確認した7回目の探索ステップDS7を経て、8回目の探索ステップDS8にて3回目の60度正回転転流を確認した。これら3回の60度の正回転転流をもって回転起動が成功したと判定すれば、準定常ステップAP1の後は、逆起電圧モードにより、逆起電圧による位置検出に基づいて、通常の加速トルクを印加することができる。
図27の説明では、3回の60度の正回転転流をもって、回転起動が成功したものと判定したが、3回以外の回数や、60度以外の電気角の正回転転流をもって、ロータの回転起動が成功したと判定してもよい。また、3回の60度の正回転転流の期間中に得られる回転速度が、所定値に達することをもって、回転起動が成功したと判定してもよい。
また探索起動モードから逆起電圧モードに変化した直後に加速トルクを印加するため、電流プロファイルを形成し、逆起電圧のゼロクロスを検出する電流ゼロ期間を設ける必要がある。この電流ゼロ期間は、探索起動モードにおける60度毎の転流周期に基づいて、予め逆起電圧のゼロクロスが予測されるタイミングで設定される。
第2の実施形態の変形例3では、キックパルスをPWM駆動制御し、その間も探索ステップを実施することで、ロータ位置をずらす動作とロータ位置の探索を同時にすることできる。これにより、早くロータ位置を探索することでき、通常の探索ステップへの復帰が早くなる。また、キックパルスによる逆転等の動作を最小限に短縮し、迅速で確実なモータ起動を提供可能とする。
以上、実施の形態において展開した説明は、すべて本発明を具体化した一例であり、本発明はこれらの例に限定されるものではない。