JP4778527B2 - 環境保全用ブロック - Google Patents

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本発明は環境保全用ブロックに関するものであり、特に、河川、海岸、湖沼等の護岸用擁壁、あるいは、道路や公園の法面の護岸用擁壁等に使用される環境保全ブロックに関するものである。
従来、河川、海岸、湖沼等の護岸擁壁では、河川等が本来有している植生の回復、及び、保全を図る目的からコンクリート内部に土砂を充填できる構造のコンクリートブロックが用いられている。
これらコンクリートブロックには、上下に貫通した空洞部を有するポット型のコンクリートブロック(例えば、特許文献1参照)や、ブロック下部に底板を有する緑化用のコンクリートブロック(例えば、特許文献2参照)、ブロック前面に植栽用の貫通孔を有するコンクリートブロック(例えば、特許文献3参照)等が知られている。これらのコンクリートブロックは、いずれもコンクリート内に胴込み土砂を蓄えることができる空間を有し、該空間内の土砂に植生を施すことができる構成になっている。
実公昭4−2196号公報。 実開平5−3356号公報。 特開2002−294658号公報。
上述したように、特許文献1,特許文献2,特許文献3に記載の発明は、いずれもコンクリート内に胴込み土砂を蓄えて植生を施すことができる繁茂可能な空間を有するものの、以下に述べるような問題点があった。
特許文献1で知られるような上下に貫通した空洞部を有するポット型のコンクリートブロックは、空洞部が完全に上下に連続しているため、一部の土砂が流出すると、結果として全体の土砂の流出に繋がる。
特許文献2で知られるようなブロック下部に底板を有する緑化用のコンクリートブロックは、底板を有するため、上記ポット型のコンクリートブロックに比べて一部の土砂流出が全体に繋がることはない。しかしながら、ブロック内の土砂は、底板の影響により各段で途切れてしまい、連続性が保たれない。また、法面前面部が大きく開いているため、該法面前面部から土砂が流出する可能性がある。
特許文献3で知られるようなブロック前面に植栽用の貫通孔を有するコンクリートブロックは、貫通孔が法面に対して直角に設けられる。これは植物の種子の定着のしやすさという点では、あまり好ましくない。また、前面部からの土砂の流出の危険性を軽減する目的で、前面部に設けられた貫通孔はあまり大きな面積を有するものではないので、植生がしにくい。
そこで、植生に適した環境を作り、河川等が本来有している植生の回復、及び、保全を図ることができる擁壁を簡単に構築可能な環境保全用ブロックを提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、植生可能な擁壁を構成する環境保全用ブロックであって、
左右の側面壁と、該左右の側面壁の左右幅よりも左右幅が大きく、かつ、左右の両端部が前記左右の側面壁よりも左右方向に突出した状態で配設された前面壁及び後面壁と、前記左右の側面壁と前記前面壁と前記後面壁とにより囲まれる土砂充填空間の底部を閉塞して配設された底面壁とを有するブロック体として構成されているとともに、
該ブロック体の前記左右の側面壁の外側2箇所には上下及び1側が開口しているコンクリート充填空間を設け、前記前面壁には該前面壁より斜め前方に突出して上面が水平であり、開口され、前記土砂充填空間に連通している前面突出空間を形成して成る前面突き出し部を設け、前記底面壁には1個若しくは複数個の上下に貫通した水抜き孔を設けて成る環境保全用ブロックにおいて、
上記水抜き孔は、上記土砂充填空間側の入口を広く、上記低壁裏面側の出口に向かって幅が徐々に狭まる形状をしており、
上記左右の側面壁の何れか一方の側面壁には、左右に貫通する吊り上げ用の側面孔が設けられて成り、
且つ、前記前面突き出し部の上面開口部直下の内面に昇降用凹部を設け、
上記環境保全用ブロックは、下段のブロックの上側に、該下段のブロックのコ
ンクリート充填空間と上段のブロックのコンクリート充填空間が上下で一致させて積み上げる構造の用に供する環境保全用ブロックを提供する。
この構成によれば、このブロックが護岸等に沿って適宜積み上げられたとき、前面突き出し部により作られている前面突出空間の上面開口部分が前面壁より前方に飛び出し、該前面突出空間に入れられた胴込め土砂の上部(上面開口部)に植物の種子等が定着しやすい水平面ができる。また、前面突き出し部の粗度により流速が低減されるため、開口部からの胴込め土砂の流出が抑えられる。さらに、底壁面に1個もしくは複数個の貫通孔を設けることで、上下のブロック間における土砂の連続性が確保できる。加えて、左右の側面壁の外側2箇所に設けたコンクリート充填空間を上下、または/及び、左右で隣接し合う位置に積み上げられているブロック同士を互いに対峙させ、その後、該コンクリート充填空間内にコンクリートを充填すると、上下、または/及び、左右のブロック同士が互いに連結される。
この構成によれば、土砂充填空間側の入口が広く、上記底壁裏面側の出口が徐々に狭まる形状としたことにより、土砂充填空間に入れられた土砂が下部ブロック側に流出しにくくなる。
この構成によれば、河川内等に人が転落したようなとき、昇降用凹部に手や足等を引っかけて護岸につかまることができる。
請求項1記載の発明は、ブロックが護岸等に沿って適宜積み上げられたとき、前面壁より前方に飛び出している前面突出空間内に土砂の水平面ができ、この土砂の水平面が植物の種子等が定着しやすい環境を提供するので、さらに植生を繁茂にする環境が提供できる。また、前面突き出し部が、流速を低減させ、土砂の流出を抑える。しかも、上面に開口を有する構成にしているので、土砂の流出が少ない。さらに、底壁面に1個もしくは複数個の貫通孔を設けることで、上下のブロック間における土砂の連続性が確保でき、植生という点から見ても水の供給が連続的に行われ、よりよい生息環境を提供することができる。加えて、左右の側面壁の外側2箇所に設けたコンクリート充填空間内にコンクリートを充填して、上下、または/及び、左右のブロック同士を簡単、かつ、強固に連結して、強度の高い擁壁を構築することができるという利点がある。
の発明は、土砂充填空間側の入口が広く、上記底壁裏面側の出口が徐々に狭まる形状としたことにより、土砂充填空間に入れられた土砂が下部ブロック側に流出しにくいので、上記の効果に加えて、常に定量の土砂を確保し、植生の繁茂と擁壁の安定性に寄与できるという利点がある。また、一方の側面壁には、左右に貫通する吊り上げ用の側面孔が設けられているので、ブロックの施工に際し、上記側面孔にフック等の掛金を掛けて吊り下げることができ、ブロック施工の便宜に資することができる。
の発明は、河川内等に人が転落したようなとき、昇降用凹部に手や足等を引っかけて護岸につかまり、安全に陸へと脱出することができるので、上記の効果に加えて、安全性が確保できるという利点がある。
植生に適した環境を作り、河川等が本来有している植生の回復、及び、保全を図ることができる擁壁を簡単に構築可能な環境保全用ブロックを提供するという目的を達成するために、植生可能な擁壁を構成する環境保全用ブロックにおいて、左右の側面壁と、該左右の側面壁の左右幅よりも左右幅が大きく、かつ、左右の両端部が前記左右の側面壁よりも左右方向に突出した状態で配設された前面壁及び後面壁と、前記左右の側面壁と前記前面壁と前記後面壁とにより囲まれる土砂充填空間の底部を閉塞して配設された底面壁とを有するブロック体として構成されているとともに、該ブロック体の前記左右の側面壁の外側2箇所には上下及び1側が開口しているコンクリート充填空間を設け、前記前面壁には該前面壁より斜め前方に突出して上面が開口され、かつ、前記土砂充填空間に連通している前面突出空間を形成して成る前面突き出し部を設け、前記底面壁には1個若しくは複数個の上下に貫通した水抜き孔を設けて成る構成としたことにより実現した。
以下、本発明の環境保全用ブロックについて、好適な実施例をあげて説明する。図1〜図5は本発明の一実施の形態に係る環境保全用ブロック(以下、単に「ブロック」という)を示し、図1は正面側より見た該ブロックの斜視図、図2は該ブロックの正面図、図3は該ブロックの平面図、図4は該ブロックの側面図、図5は図2のA−A線断面に相当する該ブロックの断面図である。
図1〜図5において、ブロック1は、コンクリート材による成形品であり、左右の側面壁2,2と、該左右の側面壁2,2の前側端部にそれぞれ左右方向に延びて直角に配設された前面壁3と、該左右の側面壁2,2の後側端部にそれぞれ左右方向に延びて直角に配設された後面壁4と、該左右の側壁2,2と該前面壁3と該後面壁4とにより囲まれた土砂充填空間5の底部を閉塞して配設されている底面壁6とを一体に設けて、1つのブロック体として形成されている。
前記前面壁3と前記後面壁4の左右幅は、前記左側の側面壁2と前記右側の側面壁2の幅の間隔よりも十分大きく、そして、前面壁3及び後面壁4は、左右の両端部3a,3b、4a,4bを該左右の側面壁2,2よりも左右方向外側に大きく突出した状態にして設けられている。これにより、一方の側面壁2の外側には、該側面壁2と前面壁3の端部3aと後面壁4の端部4aとで囲まれ、かつ、上下面と一側面がそれぞれ開口されたコンクリート充填空間7aが設けられている。また、他方の側面壁2の外側には、該側面壁2と前面壁3の端部3bと後面壁4の端部4bとで囲まれ、かつ、上下面と一側面がそれぞれ開口されたコンクリート充填空間7bが設けられている。
さらに、前記後面壁4には、該後面壁4の上端より下端(底面壁6)側に向かって切欠された背面切欠部8が設けられ、前記左右の側面壁2,2のうち、一方の側面壁2には左右に貫通している吊り上げ用の側面孔9が設けられている。また、図3及び図5に示すように、前記底面壁6の略中央部には、上下方向に貫通して水抜き孔10が設けられている。該水抜き孔10は、平面視四角形の孔で、土砂充填空間5側の入口から底面壁6の裏面(
下面)側出口に向かって幅が徐々に狭まる逆四角錐の形状をなしている。なお、水抜き孔
10は、逆四角錐の他に、逆円錐形若しくは多角錐等であってもよく、その数も必要に応じて1個以上、複数個設けてもよい。
また、前記前面壁3の上部には前面突き出し部11が設けられている。該前面突き出し部11は、該前面壁3の上下方向における途中の位置から該前面壁3の一部を斜め前方に折り曲げて外側に突出させた状態にして形成されている。そして、該突き出し部11は、該前面壁3の外側に突き出した上部に上面が開口された上面開口部12aを有する空間で、かつ、前記土砂充填空間5と連通している前面突出空間12を形成している。該前面突出空間12は、ブロック1が上下方向に積み重ねられたときに、上面開口部12aが前面壁3から前方へ水平に突出した状態で配置される。加えて、突き出し部11の内面には、図3に示すように、左右方向に延びる溝状に形成された昇降用凹部13が設けられている。該昇降用凹部13は、前面突き出し部11の先端を人が手で掴まるときに、指を掛けるのに適した大きさ、及び、深さに設定されている。なお、該昇降用凹部13は救助用としても用いることができる。
図6及び図7は、以上のように構成されているブロック1を使用して護岸擁壁を構築した一例を示し、図6は護岸擁壁の側面断面図、図8は図6のB−B線断面に相当する護岸擁壁の断面拡大図である。
次に、図1〜図5に示したブロック1を使用して構築した護岸擁壁50の一例を図6及び図7を用いて説明する。構築に当たっては、まず、図6に示すように、構築位置に砕石等の突き固めにより所要範囲にわたって基礎工事51が施され、その上に図示しない適宜の型枠が立てられて基礎コンクリート52が打設形成される。
前面壁3を外側、後面壁4を内側にし、また、土砂充填空間5の上面開口部12aを水平に保持して1段目のブロック1を積み、法面53上に裏込め砕石54が詰める。このとき、左右の隣り合うブロック1,1のコンクリート充填空間7a,7b同士を突き合わせ、さらに図7に示すように、該コンクリート充填空間7a,7b内に胴込みコンクリート55を流し込んで、隣り合うブロック1,1同士を固定して補強する。続いて、図7に示すように、上面開口部12aが略水平に維持されているブロック1,1…の土砂充填空間5内と前面突出空間12内に現地発生の胴込め土砂56を詰め込んで上面開口部12aと水平に胴込め土砂56を内在させることで、1段目の護岸擁壁50が構築される。
また、1段目の護岸擁壁50が形成されたら、1段目のブロック1の上側に、1段目のブロック1のコンクリート充填空間7a,7bと2段目のブロック1のコンクリート充填空間7a,7bを上下で一致させるとともに、土砂充填空間5の上面開口部12aを水平に保持して、2段目の隣り合う左右のブロック1,1のコンクリート充填空間7a,7b同士を突き合わせる。次いで、該コンクリート充填空間7a,7b内に胴込みコンクリート55を流し込み、左右のブロック1,1間と上下のブロック1,1間を同時に固定して補強する。続いて、上面開口部12aが略水平に維持されている2段目のブロック1,1…の土砂充填空間5内と前面突出空間12内に現地発生の胴込め土砂56を詰め込んで上面開口部12aと水平に胴込め土砂56を内在させると、2段目の護岸擁壁50が構築される。以下、同様にして、3段目、4段目…を構築して行き、所定段の構築を終えたら、天端に天端コンクリート57を打設すると終了し、図6に示す護岸擁壁50が形成される。
このように構築された護岸擁壁50は、前面突き出し部11により形成された前面突出空間12に内在された胴込め土砂56が、前面壁3の外側に突き出している前面突出空間12の上面開口部12a内に露出される。したがって、該上面開口部12内に露出している胴込め土砂56上に現地本来の植生を繁茂させることができ、環境保全型の護岸擁壁を実現することができる。なお、図7に示すように、水中部に当たる根入部ブロック14等
には、植生の繁茂等は不要であるので、コンクリートのみの構造にもできる。
また、このように構築された護岸擁壁50は、ブロック1が護岸に沿って適宜積み上げられたとき、前面壁3より前方に飛び出している前面突出空間12に内在された土砂の上面は水平に保たれるので、植物の種子等が定着しやすい環境を提供できる。さらに、水が護岸上を流れ下るとき、前面突き出し部11がブロック1上の表面流速を抑えて土砂の流出を防ぐので、植生をより一層繁茂に適する環境が作られる。しかも、上面に開口を有する構成にしているので、土砂の流出が少なくて済む。さらに、底壁面6に1個もしくは複数個の水抜き孔(貫通孔)10を設けることで、上下のブロック間における土砂の連続性が確保でき、植生という点から見ても水の供給が連続的に行われることで、よりよい生息環境を提供することができる。
なお、水抜き孔(貫通孔)10は、土砂充填空間側の入口が広く、底壁裏面側の出口が徐々に狭まる形状としたことにより、土砂充填空間に入れられた土砂が下部ブロック側に流出しにくいので、常に定量の土砂を確保し、植生の繁茂と擁壁の安定性に寄与できるという利点がある。
加えて、左右の側面壁2,2の外側2箇所に設けたコンクリート充填空間7a,7b内にコンクリートを充填して、上下、及び、左右のブロック1,1,1間を互いに簡単、かつ、強固に連結することができるので、大きな強度を有する護岸擁壁を構築することができる。また、河川内等に人が転落したようなとき、昇降用凹部13に手や足等を引っかけて護岸につかまり、安全に陸へと脱出することができるので、安全性も確保できる。
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
本発明の一実施の形態に係る環境保全用ブロックの斜視図。 同上ブロックの正面図。 同上ブロックの平面図。 同上ブロックの側面図。 図2のA−A線に相当する同上ブロックの断面図。 本発明のブロックを使用して形成された護岸擁壁の側断面図。 図6において根入れ部を現場打ちした状態を示す側断面図。 図6のB−B線断面に相当する護岸擁壁の断面拡大図。
符号の説明
1 環境保全用ブロック
2 側面壁
3 前面壁
3a,3b 端部
4 後面壁
4a,4b 端部
5 土砂充填空間
6 底面壁
7a,7b コンクリート充填空間
8 背面切欠部
9 側面孔
10 水抜き孔
11 前面突き出し部
12 前面突出空間
12a 上面開口部
13 昇降用凹部
14 根入部ブロック
50 護岸擁壁
51 基礎工事
52 基礎コンクリート
53 法面
54 裏込め砕石
55 コンクリート
56 胴込め土砂

Claims (1)

  1. 植生可能な擁壁を構成する環境保全用ブロックであって、
    左右の側面壁と、該左右の側面壁の左右幅よりも左右幅が大きく、かつ、左右の両端部が前記左右の側面壁よりも左右方向に突出した状態で配設された前面壁及び後面壁と、前記左右の側面壁と前記前面壁と前記後面壁とにより囲まれる土砂充填空間の底部を閉塞して配設された底面壁とを有するブロック体として構成されているとともに、
    該ブロック体の前記左右の側面壁の外側2箇所には上下及び1側が開口しているコンクリート充填空間を設け、前記前面壁には該前面壁より斜め前方に突出して上面が水平であり、開口され、前記土砂充填空間に連通している前面突出空間を形成して成る前面突き出し部を設け、前記底面壁には1個若しくは複数個の上下に貫通した水抜き孔を設けて成る環境保全用ブロックにおいて、
    上記水抜き孔は、上記土砂充填空間側の入口を広く、上記底面壁裏面側の出口に向かって幅が徐々に狭まる形状をしており、
    上記左右の側面壁の何れか一方の側面壁には、左右に貫通する吊り上げ用の側面孔が設けられて成り、
    且つ、前記前面突き出し部の上面開口部直下の内面に昇降用凹部を設け、
    上記環境保全用ブロックは、下段のブロックの上側に、該下段のブロックのコンクリート充填空間と上段のブロックのコンクリート充填空間が上下で一致させて積み上げる構造の用に供することを特徴とする環境保全用ブロック。
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