JP6532278B2 - ミズゴケ湿原再生方法及び再生基盤 - Google Patents

ミズゴケ湿原再生方法及び再生基盤 Download PDF

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Description

本発明はミズゴケ湿原再生方法及び再生基盤に関し,とくに野外の自然環境下でミズゴケ湿原を再生する方法及び再生するための基盤に関する。
湿地は一般に富栄養の低層湿地と貧栄養の高層湿原とに区分けされ,低層湿原は主要な構成植物がヨシ類であるのに対し,高層湿原は主要な構成植物がミズゴケ類であることからミズゴケ湿原と呼ばれる(非特許文献1参照)。ミズゴケ湿原は,近年になって準絶滅危惧種であるオオミズゴケ等の希少な動植物の生息・生育が認識され,特有の生態系が様々な機能を有することも注目されている。しかし,従来の開発等によってミズゴケ湿原は徐々に減少しており,とくに日本の中部地方以南の地域では減少が著しく,現存しているミズゴケ湿原も今後の開発や植生遷移等によって失われる可能性がある。このため,例えばダム等の開発工事においてミズゴケ湿原の保護・保全が重要な課題となる場合があり,その場所で保全することができない場合は代替場所にミズゴケ湿原を移植・再生することが必要となる。
従来から,例えば図7に示すように,休耕田その他の圃場40を利用してミズゴケを保全・再生する方法が提案されている(特許文献1及び2参照)。図7(A)の圃場40は,遮水工が施された底部41a及び周囲側部41bで囲まれた帯水部41と,その帯水部41に通水口41cを介して連通する有水部42とで構成されており,有水部42に貯留する水Wの量を水位センサー等で調整することにより,通水口41cを介して帯水部41内に配置した帯水材(例えば砂礫等)43を常に所定水位WL(図7(B)参照)に湿潤させることができる。帯水材43の表面43aには多数の穴43bを設け,その穴43bの各々に図7(B)に示すようなミズゴケ栽培基を埋め込む。
図7(B)のミズゴケ栽培基は,帯水材43の穴43bの内部に充填する乾燥ミズゴケAの集合物を有し,その乾燥ミズゴケAの集合物上に生きたミズゴケ(生長ミズゴケ)Pを植え込んだものである。乾燥ミズゴケAは,非常に優れた揚水力によって帯水材43の所定水位WL(及び有水部42)から水Wを吸い上げ,吸い上げた水Wを植え込んだ生長ミズゴケPのパイプのような茎部と接触させることにより,生長ミズゴケの生長点を含む部分(主に葉部と枝部)を効率的に成長させる。従って,図7(A)の帯水部41上の多数の穴43bでそれぞれミズゴケPを成長させ,帯水部41の全体をミズゴケが繁茂する湿原に転換することができる。
図7のようなミズゴケの保全・再生方法によれば,例えば開発工事においてミズゴケ湿原が消滅するおそれがある場合に,図7(A)のような圃場40を代替場所に設けてミズゴケ湿原を移植・再生することが期待できる。また,ミズゴケだけでなく,ミズゴケ湿原を構成する他の特有の植物(モウセンゴケ等)の養生を行うことも期待でき,ミズゴケと共に他の植物を移植・再生することも期待できる。更に,図7(B)のようなミズゴケ栽培基を例えば浮輪状の発泡スチロール製枠体に嵌め込み,図7(A)の帯水部41を除いた有水部42に浮かべることにより,帯水部41に代えて又は加えて,有水部位42の水面をミズゴケの浮遊圃場とすることも提案されている。
特許第4780560号号公報 特開2005−304472号公報
高田雅之「湿地の博物学」北海道大学出版会,2014年12月10日発行
しかし,上述した図7の従来方法は,有水部42の水位等の人為的な維持管理を必要とするものであり,水位その他の条件を人為的に管理できない自然環境下で適用することは難しい問題点がある。例えば多量の降雨により図7の有水部42の水位が著しく上がると,側部41bを越えて帯水部41に水が流れ込み,植え込んだ生長ミズゴケPが水没し又は流水により流される可能性がある。また,流水とともに土砂が流れ込むとミズゴケPを死滅させ,或いは死滅しないまでも富栄養化や地下水流の変化を引き起こしてミズゴケ以外の植生種への遷移が進行する可能性がある。すなわち従来方法は,ミズゴケ湿原の一時的な再生は可能であるとしても,再生したミズゴケ湿原を人手によらず自然条件下で長期間維持することは困難である。
また,自然環境下でミズゴケ湿原を形成するためには流水が継続的に供給される河川,池沼,湧水地等の立地を利用せざるを得ないが,図7の従来方法は,様々な立地の自然流水を利用することが難しい問題点もある。例えば,ミズゴケ湿原中の水流(地下水流)はゆっくり流れるのに対し,地表の河川等の水流は相対的に速いので,例えば河川等の速い水流を帯水部41に導入してもミズゴケ湿原を再生できない可能性がある。また,増水等によって河川等の流速が大きくなると,帯水部41の帯水材43が徐々に浸食され,ミズゴケ湿地の基盤自体が破壊されてしまう可能性もある。自然環境下でミズゴケ湿原を再生するためには,自然環境下で利用できる水流からミズゴケの生育条件を作り出し,その生育条件を上述したように長期間維持することが重要である。
そこで本発明の目的は,自然環境下でミズゴケの生育に適した条件を作り出して維持できるミズゴケ湿原再生方法及び再生基盤を提供することにある。
図1の実施例を参照するに,本発明によるミズゴケ湿原再生方法は,自然環境下で水流が継続的に供給される地点Gの周囲地盤Eにその地点Gの想定最高水位HWLより高くなり且つ当該地点Gの想定最低水位LWLより低い部分又は地盤高さEの部分に通水口18を有するように通水性の外郭10を構築し,外郭10の内側底部にその地点Gの想定最低水位LWLより低い窪地又は地盤高さEより低い窪地22を有し且つ通水口18から供給される水流条件を調整するように通水性の底部構造体20を設け,底部構造体20上に乾燥ミズゴケ又はその他の植物遺体Bを少なくとも一部分にその地点Gの想定最高水位HWLより高い部位31が形成されるように積み上げて生育基盤30とし,生育基盤30の表面上に生きたミズゴケPを植え込むことによりミズゴケ湿原を再生してなるものである。
図1の実施例を参照するに,本発明によるミズゴケ湿原再生基盤は,自然環境下で水流が継続的に供給される地点Gの周囲地盤Eにその地点Gの想定最高水位HWLより高くなり且つ当該地点Gの想定最低水位LWLより低い部分又は地盤高さEの部分に通水口18を有するように構築した通水性の外郭10,外郭10の内側底部にその地点Gの想定最低水位より低い窪地又は地盤高さEより低い窪地22を有し且つ通水口18から供給される水流条件を調整するように設けた通水性の底部構造体20,及び底部構造体20上に乾燥ミズゴケ又はその他の植物遺体Bを少なくとも一部分にその地点Gの想定最高水位HWLより高い部位31が形成されるように積み上げた生育基盤30を備え,生育基盤30の表面上に生きたミズゴケPを植え込むことによりミズゴケ湿原を再生してなるものである。
好ましい実施例では,外郭10及び底部構造体20を,図1に示すような石積み構造,図2に示すようなコンクリート構造,木組み構造,樹脂構造,金属構造,又はこれらの組み合わせ構造とする。望ましくは,図3に示すように,外郭10の下端を地盤E中に埋設する。
更に好ましい実施例では,図4に示すように,外郭10を地点Gの想定最高水位HWLより高い周囲壁15とその内側底壁16とからなる容器構造とし,底部構造体20を容器底壁16上に設けるか又は容器底壁16と一体成形する。図2及び図5に示すように,必要に応じて,外郭10の内側地盤E又は容器底壁16と底部構造体20との間には遮水層29を設けることができる。
更に望ましい実施例では,図6に示すように,生育基盤30を,底部構造体20上に植物遺体Bを地点Gの想定最低水位LWLより低い部位32とその地点Gの想定最高水位HWLより高い部位31とが形成されるように積み上げた傾斜表面付き生育基盤とする。
本発明によるミズゴケ湿原再生方法及び再生基盤は,自然環境下で水流が継続的に供給される地点Gの周囲地盤Eにその地点Gの想定最高水位HWLより高くなり且つ当該地点Gの想定最低水位LWLより低い部分又は地盤高さEの部分に通水口18を有するように通水性の外郭10を構築し,その外郭10の内側に地点Gの想定最低水位LWLより低い窪地又は地盤高さEより低い窪地22を有し且つ通水口18から供給される水流条件を調整するように通水性の底部構造体20を設け,その底部構造体20上に乾燥ミズゴケ又はその他の植物遺体Bを少なくとも一部分にその地点Gの想定最高水位HWLより高い部位31が形成されるように積み上げて生育基盤30とし,その生育基盤30の表面上に生きたミズゴケ(生長ミズゴケ)Pを植え込んでミズゴケ湿原を再生するので,次の効果を奏する。
(イ)生育基盤30の周囲に想定最高水位HWLより高い通水性の外郭10を構築することにより,増水時等にも水が越流して流れ込むおそれをなくし,生長ミズゴケPが基盤30から流れ出し又は土砂等に覆われることを防止でき,増水後にミズゴケPを人為的に洗い流す手間を省くことができる。
(ロ)また,外郭10の内側に想定最低水位LWLより低い窪地22を有する通水性の底部構造体20を設け,その底部構造体20上に生育基盤30を配置することにより,基盤30に対する水の供給遮断を防止し,灌水作業等の手間を省くことができる。
(ハ)通水性の外郭10及び底部構造体20を介して生育基盤30に水を供給することにより,それらの通水効率(フィルター効果)によって生育基盤30に供給される水流を十分に緩やかなものとし,生育基盤30の内部にミズゴケの生育に適した水流条件を作り出すことができる。
(ニ)通水性の外郭10及び底部構造体20によってミズゴケの生育に適した生育基盤30を作り出し,増水や雨水時にも生育基盤30の生息条件を安定的に維持できるので,自然環境下でも人手をかけずに生育基盤30の全体を覆うミズゴケ湿原を再生することができる。
(ホ)また,人手をかけずに土砂の流入を防止し,生育基盤30を大型の草本植物や木本植物が生育しにくい貧栄養状態に保つことができるので,植生遷移や草原化を防ぎながら生育基盤30上の再生したミズゴケ湿原を長期間安定的に維持することができる。
(ヘ)石積み構造だけでなく,周囲の水流状況や気候等に応じて外郭10及び底部構造体20をコンクリート構造(例えばポーラスコンクリート構造),木組み構造,樹脂構造,金属構造等とすることが可能であり,様々な自然環境下において水流作用で浸食されにくいミズゴケ湿原を再生することができる。
以下,添付図面を参照して本発明を実施するための形態及び実施例を説明する。
石積み構造を利用した本発明のミズゴケ湿地再生基盤の一実施例の説明図である。 コンクリート構造を利用した本発明のミズゴケ湿地再生基盤の他の実施例の説明図である。 コンクリート構造を利用した本発明のミズゴケ湿地再生基盤の更に他の実施例の説明図である。 容器構造を利用した本発明のミズゴケ湿地再生基盤の他の実施例の説明図である。 傾斜地盤Eに設けた本発明のミズゴケ湿地再生基盤の他の実施例の説明図である。 水位変動が不明な地盤Eに設けた本発明のミズゴケ湿地再生基盤の他の実施例の説明図である。 従来のミズゴケ湿地の再生方法の一例の説明図である。
図1は,例えばダム等の開発現場にミズゴケ湿原が存在する場合に,周辺の自然環境下において水が継続的に供給される地点Gを選択し,その地点Gにミズゴケ湿原再生基盤1aを造成して元のミズゴケ湿原を移植・再生する方法の実施例を示す。ミズゴケ湿原を再生すべき地点G(以下,再生地点Gという)の一例は,例えば開発現場の周辺の湧水地,河川,水路,池沼等である。好ましくは,元のミズゴケ湿原の内部の地下水の水位・流速等を調査し,同程度の水位・流速等が得られる再生地点Gを選択する。以下に説明するように,本発明の再生基盤1は後述する外郭10及び底部構造体20によって基盤内部の地下水の流速・水位等を調整することが可能であり,元の湿原よりも流れの強い河川,水路,斜面の遊水池等を利用して湿原を再生することができる。
図示例のミズゴケ湿原再生基盤1aは,再生地点Gの周囲の地盤E上に構築した通水性の外郭10と,外郭10の内側地盤E上に設けた通水性の底部構造体20と,底部構造体20の上に乾燥ミズゴケその他の植物遺体Bを積み上げて形成した生育基盤30とを有する。図1(A)は,外郭10及び底部構造体20を共に岩石,礫等を積み上げた石積み構造として一体的に構築した再生基盤1aを示しており,図1(A)の断面図においてハッチングを設けた石積み構造が外郭10に相当し,その内側のハッチングのない石積み構造が底部構造体20に相当する。図1(B)は外郭10の平面形状が円形であることを示しているが,外郭10の平面形状にとくに制限はなく,再生地点Gの環境に応じて楕円形,方形等,多角形等の任意の形状とすることができる。
ミズゴケ再生基盤1aの外郭10は,再生地点Gにおける水位が最高になった場合でも内側の生育基盤30に水が越流しないように,地点Gの想定最高水位HWLより高くなるように構築する。例えば,図1(B)の平面形状の周縁全周にわたって頂端を想定最高水位HWLより高くする。また,最低水位になった場合でも内側の生育基盤30に水が供給できるように,少なくとも地点Gの想定最低水位LWLより低い部分に1つ以上の通水口18を設ける。好ましくは,供給された水が内側に滞留せず排水できるように,必要に応じて外郭10に給水用及び排水用の複数の通水口18を設ける。もっとも,図示例のように石積み構造であるときは岩石又は礫の隙間から水が進入するので外郭10に通水口18をとくに設ける必要はなく,十分な通水性が保てるならば岩石又は礫の径の大きさにもとくに制限はない。大径の岩石又は礫を用いる場合は,外郭10の内側に積み上げる植物遺体Bが流出しないように,大径の岩石又は礫の隙間に小さな径の岩礫を設置することが望ましい。
外郭10は,石積み構造に限らず,図2に示すようなコンクリート構造とすることができる。図2のミズゴケ湿原再生基盤1bは,コンクリート構造の外郭10と,石積み構造の底部構造体20とを組み合わせたものである。或いは,再生地点Gの環境に応じて十分な耐浸食性が得られる対策を施すことができれば,外郭10を木組み構造,樹脂構造,金属構造とし,又はこれらと石積み構造,コンクリート構造との組み合わせとすることも可能である。石積み構造以外の外郭10には,最低水位LWLよりも低い部位に少なくとも1つ,好ましくは複数の通水口18を設ける。もっとも,外郭10の全体を通水機能のあるポーラスコンクリート(多孔質コンクリート)製とするか,或いは最低水位LWLよりも低い部位のみを通水性のあるポーラスコンクリートで構成すれば,コンクリート構造であっても外郭10に通水口18を設ける必要はなくなる。
コンクリート構造の外郭10は,浸食を受けやすい河川内,水路内,斜面の湧水地(図4参照)又はこれらに接する部分に再生基盤1を造成する場合に有効である。好ましくは,図2のように外郭10を地盤Eに固定するアンカー14を設け,外郭10の耐浸食性を高める。コンクリート構造でなくとも,石積み構造,木組み構造,樹脂構造,金属構造の外郭10をアンカー14によって地盤Eに固定することは,再生基盤1の耐浸食性を高め,内側の生育基盤30の安定化を図るために有効である。石積み構造の対浸食性は,例えば水流の当たる場所に重量のある石を配置するか,石をモルタル等で固定することにより高めることも可能である。
外郭10の内側に設ける底部構造体20には,図1(A)及び図2に示すように,その上に積み上げる生育基盤30の底部が常に水に浸るように,再生地点Gの想定最低水位LWLより低い窪地22を設ける。生育基盤30は,底部構造体20の上部に乾燥ミズゴケその他の植物遺体Bを積み上げることにより形成する。生育基盤30は生きたミズゴケ(生長ミズゴケ)Pを植え込む場所であり,例えば図7の場合と同様に乾燥ミズゴケAの集合物を底部構造体20上に積み上げて生育基盤30とすることができる。或いは,元のミズゴケ湿原から植物遺体Aである地中の泥炭を掘り出し,その泥炭を再生地点Gの底部構造体20上に積み上げて生育基盤30としてもよい。そのような泥炭も,乾燥ミズゴケと同様に非常に優れた揚水力によって水を吸い上げることができる。
図1(A)及び図2は石積み構造の底部構造体20を示しており,外郭10の内側の底面及び側面に乾燥ミズゴケA又は植物遺体Bが流出しない程度の粒径の岩石又は礫を積み上げて底部構造体20としたものである。底部構造体20を石積み構造とすることにより,とくに通水口18等を設けることなく十分な通水性を確保することができる。ただし,外郭10の場合と同様に,底部構造体20も石積み構造に限られるものではなく,ポーラスコンクリート製又は適当な通水口18を設けたコンクリート構造,又は適当な通水口18を設けた木組み構造,樹脂構造,金属構造とすることができる。必要に応じて,図2に示すように,外郭10の内側地盤Eと底部構造体20との間に遮水層29を設けることができる。
また,生長ミズゴケPを植え込む生育基盤30は,最低水位LWLの時でも少なくとも底部が水に浸ることが必要であり,かつ,想定される最高水位HWLよりも高い部位31を設けることが望ましい。その最高水位HWLよりも高い部位31に生長ミズゴケPを植え込むことで,生長ミズゴケPは生育基盤30の揚水力によって底部構造体20から常に水を供給され,かつ,最高水位HWLの時でも生長ミズゴケPの水没を避けることができる。ただし,生長ミズゴケPが短時間水没して生育に問題がないことが知られており,生長ミズゴケPを植え込む部位は最高水位HWLよりも高い部位31に限るわけではない。
外郭10及び底部構造体20を通水性とすることにより,生育基盤30の内部に少なくとも再生地点Gの最低水位LWLより高い水位を確保できる。ただし,再生地点Gで供給される水が少ない場合は,生育基盤30の内部の水位が十分に確保できず,最高水位HWLよりも高い部位31に植え込んだ生長ミズゴケPまで十分な水を吸い上げることが難しい可能性がある。このように生育基盤30の内部を流れる水位が不足する場合は,例えば図3のミズゴケ湿原再生基盤1bに示すように,外郭10の下端を地盤E中に埋設することにより生育基盤30の内部の水位を上げることができる。図3は,生育基盤30の水位が元のミズゴケ湿原の地下水と同程度となるように,外郭10を所定深さだけ地盤E中に埋め込み,再生地点Gの想定最低水位LWLに対する生育基盤30の位置を鉛直方向に調整したものである。
また,通水性の外郭10及び底部構造体20は,生育基盤30の内部の流速を調整する機能を果たすこともできる。すなわち,再生地点Gに供給される水流に応じて,外郭10及び底部構造体20に与える通水流量を調整することにより,例えば再生地点Gの水流が元の湿原よりも流れの強い河川,水路,斜面の遊水池等であっても,外郭10及び底部構造体20の通水効率によって生育基盤30の内部を流れる水流を十分に緩やかなものとし,生育基盤30の内部にミズゴケの生育に適した元の湿原と同様の水流条件を作り出すことができる。更に,通水性の外郭10及び底部構造体20はある程度フィルター効果を有しており,生息基盤30に土砂が流入することを防止し,生育基盤30を貧栄養状態に保つ機能も果たすことも期待できる。
本発明のミズゴケ湿原再生基盤1は,想定最高水位HWLより高い通水性の外郭10を有するので,増水時等にも水が越流して流れ込むおそれがなく,生長ミズゴケPが基盤30から流れ出し又は土砂等に覆われることを防止できる。また,想定最低水位LWLより低い窪地22を有する通水性の底部構造体20上に生育基盤30を配置するので,最高水位HWLの時でも生育基盤30に対する水の供給を維持することができる。更に,通水性の外郭10及び底部構造体20を介して生育基盤30に水を供給することにより,生育基盤30の内部の流速・水位等を元のミズゴケ湿原と同様に調整することができ,生育基盤30の内部にミズゴケの生育に適した水流条件を作り出すことができる。
こうして本発明の目的である「自然環境下でミズゴケの生育に適した条件を作り出して維持できるミズゴケ湿原再生方法及び再生基盤」を提供することができる。
図4は,外郭10として,コンクリート製,樹脂製,木製,又は金属製の容器を用いた本発明のミズゴケ湿原再生基盤1cの実施例を示す。図示例の再生基盤1cの外郭10は,地点Gの想定最高水位HWLより高い周囲壁15とその内側底壁16とからなる容器構造を用いたものであり,その容器の周囲壁15の頂端を周縁全周にわたって想定最高水位HWLより高くし,想定最低水位LWLよりも低い部位に少なくとも1つ,好ましくは複数の通水口18を設けたものである。容器構造の通水口18は,浮力や水流によって基盤1cが浮き上がることを防ぐためにも必要である。ただし,容器自体を通水性のあるポーラスコンクリート製とするか,又は容器の想定最低水位LWLよりも低い部位をポーラスコンクリート製とすれば,通水口18を設けなくても足りる。
図示例の容器内部の底面及び側面には,生育基盤30の乾燥ミズゴケA又は植物遺体Bが流出しない程度の粒径の岩石又は礫を積み上げて底部構造体20としている。底部構造体20は,浮力や水流によって外郭10(容器)が移動しないように地盤Eに固定する機能も果たす。底部構造体20だけでは固定力が不足する場合は,必要に応じて外郭10(容器)にアンカー14(図2参照)を含めることができる。或いは,容器内部の底面及び側面に,例えばポーラスコンクリート製の底部構造体20を一体成形することも可能である。
図4のように容器構造の外郭10を用いることにより,例えば工場等で製造した外郭10を再生地点Gに持ち込んでミズゴケ再生基盤1cを造成することができ,再生基盤の造成作業の迅速化,効率化を図ることが期待できる。底部構造体20が一体成形された容器を用いることにより,造成作業の一層の迅速化,効率化を図ることもできる。また,外郭10に底壁16を含めることにより,外郭10の内側地盤Eと底部構造体20との間に遮水層29(図2参照)を設ける手間も必要もなくなり,地盤Eの影響を受けにくい再生基盤1cを容易に造成することが可能となる。
図5は,常時水流のある傾斜地盤E上の再生地点Gに造成した本発明のミズゴケ湿原再生基盤1dの実施例を示す。図示例の再生基盤1dは,再生地点Gの周囲の傾斜地盤Eに構築した外郭10を有し,水流等で移動しないように外郭10をアンカー14で固定している。外郭10の斜面上部の常時水流が当たる外縁部の最下部に水を取り入れる通水口(給水口)18を設け,斜面下部の外縁部に水を排出する通水口(排水口)19を設けている。排水用の通水口19は,給水用の通水口18とよりも地盤面からの比高が高く,給水用の通水口18とほぼ水平となる高さに設けることが望ましい。
外郭10の内側には,生育基盤30の乾燥ミズゴケA又は植物遺体Bが流出しない程度の粒径の岩石又は礫を積み上げて底部構造体20とする。外郭10の内側の斜面下部側に有る程度の貯水をする必要があるので,外郭10の内側地盤Eと底部構造体20との間には遮水層29を設けることが望ましい。底部構造体20には想定最低水位LWLより低い窪地22を設け,底部構造体20上に積み上げる生息基盤30の底部を常に水に浸る構造とする。図5に示すように,本発明によれば,従来あまり利用されていなかった湧水のある傾斜地盤E等を利用してミズゴケ再生基盤1cを造成することが可能であり,湧水のある傾斜地等にミズゴケ湿原を再生することができる。
図6は,水位変動の範囲が不明であるような地盤E上の再生地点Gに造成した本発明のミズゴケ湿原再生基盤1eの実施例を示す。図示例の再生基盤1eは,図2と同様の外郭10を有するが,外郭10の内側に設ける底部構造体20には,想定最低水位LWLより低い窪地22を含めると共に,その窪地22から想定最高水位HWLの近くまで上昇するような傾斜面を形成する。そして,底部構造体20上に植物遺体Bを想定最低水位LWLより低い部位32とその地点Gの想定最高水位HWLより高い部位31とが形成されるように積み上げることにより,傾斜表面付き生育基盤30を形成する。
図示例の生育基盤30において,傾斜表面の水分状態は内側地盤E(すなわち地下水の水位)からの比高に応じて異なるので,生育基盤30の表面にある程度の幅で異なる水分状態を作り出すことができる。このような水分状態の異なる生育基盤30の傾斜表面上に生きたミズゴケ(生長ミズゴケ)Pを植え込むことで,水位変動の範囲が不明であっても,少なくとも一部分においてミズゴケPの生育に適した水分条件が得られ,その部分を中心としてミズゴケを生長・増殖させて湿原を再生することができる。
1…ミズゴケ湿原再生基盤
10…外郭 11…石積み
12…周囲壁 14…アンカー
15…容器(周囲側壁) 16…容器内側底壁
18,19…通水口
20…底部構造体 21…石積み
22…窪地 29…遮水層
30…生育基盤 31…高部位
32…低部位
40…ミズゴケ栽培用の人工圃場
41…帯水部 41a…底部
41b…側部 41c…通水口
42…有水部 43…帯水材(砂礫)
43a…帯水材の表面 43b…穴
45…ミズゴケ栽培基
A…乾燥ミズゴケ B…植物遺体
E…地盤 G…湿原再生地点
P…ミズゴケ Pa…ミズゴケの茎部
W…水 HWL…最高水位
LWL…最低水位 WL…水位

Claims (8)

  1. 自然環境下で水流が継続的に供給される地点の周囲地盤に当該地点の想定最高水位より高くなり且つ当該地点の想定最低水位より低い部分又は地盤高さの部分に通水口を有するように通水性の外郭を構築し,前記外郭の内側底部に当該地点の想定最低水位より低い窪地又は地盤高さより低い窪地を有し且つ前記通水口から供給される水流条件を調整するように通水性の底部構造体を設け,前記底部構造体上に乾燥ミズゴケ又はその他の植物遺体を少なくとも一部分に当該地点の想定最高水位より高い部位が形成されるように積み上げて生育基盤とし,前記生育基盤の表面上に生きたミズゴケを植え込むことによりミズゴケ湿原を再生してなるミズゴケ湿原再生方法。
  2. 請求項1の再生方法において,前記外郭及び底部構造体を,石積み構造,コンクリート構造,木組み構造,樹脂構造,金属構造,又はこれらの組み合わせ構造としてなるミズゴケ湿原再生方法。
  3. 自然環境下で水流が継続的に供給される地点の周囲地盤に当該地点の想定最高水位より高くなり且つ当該地点の想定最低水位より低い部分又は地盤高さの部分に通水口を有するように構築した通水性の外郭,前記外郭の内側底部に当該地点の想定最低水位より低い窪地又は地盤高さより低い窪地を有し且つ前記通水口から供給される水流条件を調整するように設けた通水性の底部構造体,及び前記底部構造体上に乾燥ミズゴケ又はその他の植物遺体を少なくとも一部分に当該地点の想定最高水位より高い部位が形成されるように積み上げた生育基盤を備え,前記生育基盤の表面上に生きたミズゴケを植え込むことによりミズゴケ湿原を再生してなるミズゴケ湿原再生基盤。
  4. 請求項3の再生基盤において,前記外郭及び底部構造体を,石積み構造,コンクリート構造,木組み構造,樹脂構造,金属構造,又はこれらの組み合わせ構造としてなるとしてなるミズゴケ湿原再生基盤。
  5. 請求項3又は4の再生基盤において,前記外郭の下端を地盤中に埋設してなるミズゴケ湿原再生基盤。
  6. 請求項3から5の何れかの再生基盤において,前記外郭を前記地点の想定最高水位より高い周囲壁とその内側底壁とからなる容器構造とし,前記底部構造体を容器底壁上に設けるか又は容器底壁と一体成形してなるミズゴケ湿原再生基盤。
  7. 請求項3から6の何れかの再生基盤において,前記外郭の内側地盤と底部構造体との間に遮水層を設けてなるミズゴケ湿原再生基盤。
  8. 請求項3から7の何れかの再生基盤において,前記生育基盤を,前記底部構造体上に前記植物遺体を前記地点の想定最低水位より低い部位と当該地点の想定最高水位より高い部位とが形成されるように積み上げた傾斜表面付き生育基盤としてなるミズゴケ湿原再生基盤。
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