JP2008025119A - 水際用ブロック - Google Patents
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Abstract
【課題】河川等の護岸において水際域の環境を複雑・多様化することを可能としつつ、設置した寄せ石等が流下しづらく、また、根入れの確保と基礎工の施工性を向上させた水際用ブロックを提供すること。
【解決手段】護岸の法尻となる水際域に設置されるコンクリート製の水際用ブロックであって、底面部1の前後に対設された前面部2と後面部3の間を中詰め材R用のポット部7としつつ、前面部2が基本法面勾配ラインAを越えて前方へ突出するようポット部7上面を拡開させることにより、ポット部7上面を大開口とした。
【選択図】図2
【解決手段】護岸の法尻となる水際域に設置されるコンクリート製の水際用ブロックであって、底面部1の前後に対設された前面部2と後面部3の間を中詰め材R用のポット部7としつつ、前面部2が基本法面勾配ラインAを越えて前方へ突出するようポット部7上面を拡開させることにより、ポット部7上面を大開口とした。
【選択図】図2
Description
本発明は、河川や海などの護岸における水際域に用いられ、魚類その他の水中生物、蛍などの昆虫類に対する生態系保全機能と、植物が繁殖できる植生機能を持った護岸擁壁用のブロックに関する。
近時、とくに水中域と陸上域の移行帯となる水際域の生態系に配慮して、護岸面と河床面との接合部分となる法尻において寄せ石や置き石、あるいは袋詰め玉石を配することにより多孔質な魚巣空間を確保したり、水際植物の植生を可能とする礫や土砂を投入可能な植栽ポットを設けたブロックが提案されている。例えば、本件出願人が先に提案した生態系保全水路ブロック(特許文献1)では、L形の第一ブロックの前面にやや小型でL形の第二ブロックを備え、両ブロック間を通水可能としつつ、主に第一ブロックを植生空間とする一方で第二ブロックを魚巣空間としている。
また、特許文献2に係る護岸コンクリートブロックでは、同じブロックを多段に積み上げて魚巣と植生に共用しうるように、底面部の両側に前面部と後面部とを上部拡開状態に傾斜して対設し、それら前後面部における中間部に仕切壁を一体に配設成形したブロックが提案されている。ブロック前面側の開口部内に対して、水面下では自然石を投入して多孔質な空間を確保しつつ、水面上の空中では土砂を投入して植生を図るというように、水面下用ブロックと空中用ブロックとを区別することなく共用することができるので、水位レベルが変化しても違和感のない岸壁を得ることができるとされている。
水際域を単調化させないように設置される寄せ石や置き石は、既設護岸においても簡単に環境を付加させることができる利点がある反面、とくに増水時において流下しやすいという欠点があった。一方、寄せ石等の流下防止対策とされる袋体や鋼製かご内に玉石を充填する方法は、確かに全体が嵩張るために流下する虞は少ないものの、袋体等に詰める作業等を別途要するためにコスト増を招来する欠点があった。また、礫や土砂をポット内に充填する、いわゆる環境保全型ブロックでは同一又は類似形状のブロックを基本法面勾配ライン、すなわち、計画設計された法面先端を結んだ線の内側に納まるように積み上げるために画一的な環境にならざるをえなかった。
ところで、河川護岸の場合、基礎工は洪水による洗掘等を考慮して天端高を設定し、法覆工を安全に支持できる構造とされる。具体的には、一般に基礎工の天端高を現況最深河床高から0.5ないし1.5m程度埋め込むこととしつつ、河川規模や洗掘状況、被災事例、上下流の構造物の根入れ等を考慮して、その深さが設定されることとされている。しかるに、前記特許文献1に係る水路ブロックは、そもそも浅い水路を想定したものであるために本格的な河川に流用しづらいという難点があったし、前記特許文献2に係る護岸コンクリートブロックでは、基礎工の天端高によっては大掛かりな基礎を施工しなければならず、施工性に劣るという欠点があった。
したがって、本発明では、河川等の護岸において水際域の環境を複雑・多様化することを可能としつつ、設置した寄せ石等が流下しづらく、また、根入れの確保と基礎工の施工性を向上させた水際用ブロックの提供を主たる課題とするものである。
前記所期の課題解決を図るため、本発明に係る水際用ブロックでは、護岸の法尻となる水際域に設置されるコンクリート製のブロックとして、底面部の前後に対設された前面部と後面部の間を中詰め材用ポット部としつつ、前面部が基本法面勾配ラインを越えて前方へ突出するようポット部上面を拡開させることにより、ポット部上面を大開口とした。本発明に係る水際用ブロックは、その上部に積み上げ設置される護岸ブロックとは形状の異なるものとしたうえで、その前面部が、護岸ブロックの前端を結んだ護岸計画線を基本法面勾配ラインとしたとき、当該基本法面勾配ラインを越えて河川中央側へと突出するよう設定する。前面部から後面部に至る大きな開口部は、護岸表面から河川中央側に向けた広い範囲に亘る寄せ石の設置に対応しうるし、前面部の天端が河床面以下におさまるように設置すれば、いわゆる河川断面を侵すこともない。
ここで、前面部と後面部は、いずれも流水による洗掘が防止できるかぎりスリット状等の透孔を穿設し、護岸擁壁背面の土手や地山、あるいは河床との連続性を確保してもよい。また、底面部についてはフレーム程度にとどめ、底面全体をほぼ全開口状態としても支障はない。さらには、ブロック全体の強度との関係において、ポット部の左右に側面部を設けたり、ポット部内に1ないし複数の隔壁を設けて前面部と後面部を連結することも可能である。
より確実に寄せ石等の流下防止を図るために、前記ポット部における前面部には、その天端位置より上方に凸となる突起を複数箇所に立設させてもよい。あるいは、ポット部における左右側面部を上方向に延長することにより水制板とすることもできる。水制板は、前面部の天端位置より後面部の天端位置を高く設定することにより後面部と連続するようにしてもよいし、後面部と連続させないで水制板のみを独立して立設してもよい。
また、前記本発明に係る水際用ブロックにおいては、前面部の天端よりも前方に離隔した位置において左右方向にのびる支持腕部を設けて、該支持腕部と前面部根元部分とによって複数本の杭を立設保持させることができる。具体的には、支持腕部に上下方向の透孔を設けて杭を挿通保持させてもよいし、支持腕部の後面と前面部の前面との間に段差を設け、当該段差によるスリット隙間内において杭を挟持させるように構成してもよい。また、将来的に杭が腐食した場合の交換便宜を図るべく、塩化ビニル製等のパイプ材を鞘管とし、該鞘管のみを支持腕部等から上方に露出しないよう固定しつつ、鞘管内に対して杭を挿脱可能に形成してもよい。
そして、以上のような水際用ブロックは、根入れブロックとしての機能を確保するべく、前面部の高さが必要根入れ高さを充足するように形成できる。例えば、敷き均した砂利面や基礎コンクリートを打設した護岸の基礎工上に本発明に係る水際用ブロックを載置したとき、その前面部の天端が現況最深河床面と一致するか、当該河床面より突出するように前面部の高さを設定するべく、1mから1.5m程度の深い根入れに対応した高さとする。このとき、本発明に係る水際用ブロックを上下2分割可能に形成しておき、上部ブロックのみを浅い根入れブロックとして用いることができるようにしてもよい。
本発明に係る水際用ブロックでは、河床から水際域にかけて広範囲に亘る多孔質な寄せ石領域を確保しても、ポット部で下から包むようにして洪水時等の流下防止を図ることができる。したがって、寄せ石領域を安定維持できる結果、生物の生息空間や土砂堆積による緑化など、生態系に配慮した良好な水際環境を提供することができる。
また、前面部天端に突起を立設すれば、設置した寄せ石の流下防止効果をより高めることができるし、水制板とも相俟って水際域での河川の流れを複雑化することにより、土砂堆積を促進したり逆に洗掘・浸食させたりと、多様な環境勾配を創出することができる。さらに、支持腕部と前面部の根元部分によって複数本の杭を立設保持させれば、寄せ石の流下防止効果をより高めることができるので、寄せ石に高低の変化をもたせるなど多様な水際環境を創出することができる。
そして、本発明に係る水際用ブロックは基礎工上に直接設置することができるので、護岸の水際部分までの工期を大幅に短縮し、施工コストの削減を図ることができる。また、前面部の天端を現況最深河床面と一致又は突出させた際には、正常水位においてはポット部から盛り上げるように載置される寄せ石のみが水面上に露出することになるので、自然な雰囲気の水際景観が得られるのである。
以下、図面にしたがって本発明を詳細に説明する。図1は本発明に係る水際用ブロックの一例を示した斜視図、図2は同水際用ブロックを設置した護岸の概略断面図である。図示された例の水際用ブロックは、底面部1の前後において前面部2と後面部3とを対設し、これらと左右両側面部4,4との間に形成された空間部分を中詰め材用のポット部4としたコンクリート一体成形品であり、護岸の法尻となる水際域に設置使用される。
図2に明示されるように、現況最深河床面Gの掘削部分に形成される護岸基礎工C上に直接載置されることを考慮して、水際用ブロックの底面部2と後面部3の接合部分がなす角度は護岸計画線(護岸面の傾斜角度)に一致するよう鈍角に設定され、また、前面部2の高さD(底面部1の最下面から前面部2の天端までの高さ)は設計上要求される根入れ高さを充足する1mから1.5m程度の高さに設定される。ただ、このように深い根入れだけではなく、浅い根入れにも対応しうるように、水際用ブロックを上下2分割に形成しておいてもよい。図1の例の水際用ブロックを2分割可能に形成した例を図3に示す。
本発明に係る水際用ブロックは護岸の法尻となる水際域に単段で設置されることを想定しているので、その上方には従来どおりに護岸ブロックが多段に積み上げ設置されることになる。先の図2に示された例では、多段に積み上げる護岸ブロックとして護岸面の緑化促進に対応した従来型の緑化護岸ブロックB1〜B3を用いているが、こうした護岸ブロックB1〜B3の前端を結んだ護岸計画線を基本法面勾配ラインAとしたとき、本発明に係る水際用ブロックの前面部2が前記基本法面勾配ラインAを越えて河川中央側へと突出するよう設定されている。すなわち図2の例の前面部2は、その天端21から基本法面勾配ラインAまでの距離が水際用ブロック本来の奥行き(護岸面の厚さ)の約半分に相当するほど河川中央側へと大きく突出されている。このことと、水際用ブロックにおける左右両側面部4,4の各上縁間に仮想される天面部5と後面部3の接合部分がなす角度が直角に設定されていること、そして前面部2の天端が側面部4の前端41より低い位置に抑えられていることが相俟って、前面部2と後面部3間にあるポット部7の上面は大きく開拡し大開口をなしている。
前記ポット部7には砕石等の中詰め材Rが投入されるが、上面開口から溢れるほどに中詰め材Rを積み上げることで寄せ石として機能するわけである。こうした中詰め材Rにおける多孔質な空間が水生生物の隠れ場所となったり、堆積した土砂によって植生が図られることになるほか、前面部2に穿設された透孔22が河床と、後面部3に穿設された透孔31が背面地山や堤と、そして側面部4に穿設された透孔42が隣接する他の水際用ブロックとそれぞれ接するために、これら各部間で昆虫類や両生類等の生物、植物の移動が確保されることになる。
図4は、図1の水際用ブロックにおいて前面部2の天端21に突起23を設けた例を示した斜視図であり、図5は同ブロックを設置した護岸の概略断面図である。ポット部7の上面開口から露出するように水際部分に積み上げられた中詰め材Rは、上方に凸をなし、前面部2の天端21に沿って多数個が列状に設けられた突起23によって下側から包み込まれるようになる結果、水流による流出・流下防止が図られる。また、突起23の存在によって、寄せ石としての中詰め材Rをより高く積み上げることも可能となるので、水際域の河川の流れに変化を与えやすくなる。
さらに水際域の河川の流れを複雑化するために、本発明に係る水際用ブロックにおいては、水制板を設けることもできる。図6は図1の例の水際用ブロックにおいて水制板8を設けた例を示した斜視図であり、大きく前傾した前面部2と左右側面部4,4との間、そして左右側面部4,4の中間に立設された隔壁6と前面部2との間において、それぞれ略逆三角形状の水制板8を設けたものである。本例では、中央の隔壁6の存在によりポット部7が2区画に分けられているが、こうしたポット部7の開口面積の大小や、ポット部7内に投入する中詰め材Rの量の多少、そして水制板8の高低などを適宜選択することにより、多様な水流変化や中詰め材Rの囲い込み効果が得られることになる。例えば図7は、ポット部7内に投入する中詰め材Rの量をいくぶん少なめにし、ポット部7内上部を魚巣空間とした例を示しているが、このように中詰め材Rを少なめにすると、水制板8が露出して邪魔板的な作用を奏するのである。
図8は複数本の杭を立設保持可能とした水際用ブロックの一例を示した斜視図、図9は同ブロックの縦断面図、図10は同ブロックに複数本の杭を立設保持させた状態の斜視図である。図示された例の水際用ブロックでは、前面部2の天端21よりも前方に離隔した位置において左右方向にのびる支持腕部9を設けて、該支持腕部9と前面部2天端21との間にスリット隙間91を確保する一方、前面部2の根元部分に2か所の受け部24,24を形成している。したがって、例えば前記スリット隙間91内に対して長尺丸棒状の杭Kを上方から嵌挿すると、杭Kの下端部が前記受け部24に支持されながら、支持腕部9の後面と前面部2における天端21の前面との間に挟持されて、立設保持されることになるのである。なお、図8ないし図10に示した例の支持腕部9は水際用ブロック全体として一体的に成形されたものであるが、図11に示すような丸棒92等を別部材として装着することでも同様な効果が得られる。
図12及び図13は、ともに多数本の杭を立設保持した水際用ブロックを設置した状態を示す概略断面図であるが、ポット部7内に投入する中詰め材Rの量を調整することにより異なる機能を奏することを示している。すなわち、杭Kを立設することでポット部7内にはより大量の中詰め材Rを投入することが可能となるため、図12に示されるように、水面Wから露出した状態にまで中詰め材Rを盛り上げることにより、中詰め材Rの表面に土砂をかぶせて水際域の積極的な緑化を図ることが可能となる。他方、図13に示されるように、杭Kを立設しながらもポット部7内に投入する中詰め材Rの量を少なめにし、現況最深河床面Gのレベル程度に抑えると、列状に立設された杭K間の隙間から魚類がポット部7上部に侵入することが可能となるので魚巣空間が生まれるほか、杭Kの存在によってポット部7の上部は穏やかな水流となり、日陰や昆虫類等の休み場が生まれることになる。
本発明に係る水際用ブロックに用いられる杭Kとしては、自然景観を確保し端材の有効利用を図る観点等から伐採木材を用いるのが好ましいが、木材ゆえに腐食しやすい欠点があるために定期の交換作業が必要となる。そこで、図14に示す例のように、塩化ビニル製等のパイプ材を鞘管10として杭Kに外嵌するとよい。鞘管10は、景観に配慮して支持腕部9から上方に露出しないようにスリット隙間91内と受け部24によって固定する。固定された鞘管10内に対して杭Kを挿脱可能とすることで、定期・不定期の杭Kの交換が容易となるのである。
1 底面部
2 前面部
3 後面部
4 側面部
5 天面部
6 隔壁
7 ポット部
8 水制板
9 支持腕部
10 鞘管
21 (前面部の)天端
22 (前面部の)透孔
23 突起
24 受け部
31 (後面部の)透孔
41 前端
42 (側面部の)透孔
91 スリット隙間
92 丸棒
A 基本法面勾配ライン
B1,B2,B3 従来型の護岸ブロック
C 護岸基礎工
D 前面部の高さ
G 現況最深河床面
K 杭
W 水面
2 前面部
3 後面部
4 側面部
5 天面部
6 隔壁
7 ポット部
8 水制板
9 支持腕部
10 鞘管
21 (前面部の)天端
22 (前面部の)透孔
23 突起
24 受け部
31 (後面部の)透孔
41 前端
42 (側面部の)透孔
91 スリット隙間
92 丸棒
A 基本法面勾配ライン
B1,B2,B3 従来型の護岸ブロック
C 護岸基礎工
D 前面部の高さ
G 現況最深河床面
K 杭
W 水面
Claims (5)
- 護岸の法尻となる水際域に設置されるコンクリート製のブロックであって、底面部の前後に対設された前面部と後面部の間を中詰め材用ポット部としつつ、前面部が基本法面勾配ラインを越えて前方へ突出するようポット部上面を拡開させることにより、ポット部上面を大開口としてなる水際用ブロック。
- ポット部における前面部の天端位置より上方に凸となる突起を複数箇所に設けてなる請求項1記載の水際用ブロック。
- ポット部における左右側面部を上方向に延長することにより水制板としたことを特徴とする請求項1または2いずれか記載の水際用ブロック。
- 前面部の天端よりも前方に離隔した位置において左右方向にのびる支持腕部を設けて、該支持腕部と前面部根元部分とによって複数本の杭を立設保持可能としてなる請求項1ないし3いずれか記載の水際用ブロック。
- 前面部の高さが必要根入れ高さを充足するように設定した請求項1ないし4いずれか記載の水際用ブロック。
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---|---|---|---|
JP2006195936A JP2008025119A (ja) | 2006-07-18 | 2006-07-18 | 水際用ブロック |
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- 2006-07-18 JP JP2006195936A patent/JP2008025119A/ja active Pending
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