JP4775987B2 - 有色米由来の色素抽出液の製造方法及びその利用 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有色米の色素抽出液の製造方法及びその利用方法に関し、更に詳細には、鮮やかな赤色を呈し、且つ香味に優れた酒類、飲料、及び食品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の食生活における消費者の嗜好は多様化傾向にあり、酒類業界においても味覚だけでなく、外観において優れているものが求められている。このため、現在までに様々な製品が各メーカーから提供されており、今後もこの傾向は続くものと考えられる。酒類におけるこのような傾向の対応の一つとして色素を含有した酒類、いわゆる着色酒類が販売されており、特にリキュール類では様々な色のものが販売されている。
【0003】
一方、清酒においても嗜好の多様化に対応するために新たなタイプの製品が求められており、その一つとして従来とは異なる色の清酒、すなわち着色清酒を挙げることができる。しかし、清酒に色素を含有させる場合には酒税法上の制約があるため色素の添加を行うことができず、実質上色素の由来は米麹、酵母、又は原料米といった製造原料によるものでなければならない。このため、製造原料の少なくとも一部を酒税法上使用可能であり且つ色素を含有する原料に替えて清酒を製造する方法が提案されている。
【0004】
色素含有の米麹及び酵母を用いる方法としては、紅麹を60%以上のアルコールに浸漬して色素を抽出して清酒醪に添加する方法(特公昭50−2760号)、及び清酒酵母に変異処理を行うことにより赤色色素を生産するアデニン要求性酵母を分離し、これを清酒製造に用いる方法(特公昭59―23788号)が提案されている。しかし、これらの方法では、紅麹菌〔モナスカス属(Monascus属)〕及びアデニン要求性酵母の増殖速度は遅いために雑菌汚染に対する管理が難しいという欠点を有する。更に、紅麹の製造には一般的な黄麹菌〔アスペルギルス オリーゼ(Aspergillus oryzae)〕用の製麹装置とは異なる装置が必要であり、また上槽後の清酒に麹臭があるといった欠点も有する。また、アデニン要求性酵母により生成された清酒はその色素が退色し易いといった欠点も有する。
【0005】
有色米を原料米の一部に使用してこれに含まれる色素を抽出する方法も幾つか提案されている(特公昭60−28272号、特開平4−53481号、及び特開平4−53482号)。これらは有色米玄米の表層部分に多量に含まれているアントシアニン色素を利用する方法であり、着色清酒を製造するために、有色米玄米、その破砕物、又は有色米の糠を使用し、酸及び/又はアルコール、又は水の存在下、抽出温度を常温又はそれ以上に設定して抽出が行われてきた。抽出温度が高い程、赤色を呈するアントシアニン色素の抽出は抽出効率が高くなるが、同時に黄色を呈する色素の抽出効率も高くなる。その結果、上槽後の清酒は褐色となり、外見上好ましいものとは言えない。更に、前記抽出方法では遊離脂肪酸等の抽出効率も高くなり、上槽後の清酒に不快臭が生ずる原因となっていた。
【0006】
したがって、簡単な方法で有色米中に含まれるアントシアニン色素を効率的且つ選択的に抽出する方法、及び鮮やかな赤色を呈する清酒の開発に対する要望は強いにも関わらず、現在までに十分満足できる方法は見出されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況にかんがみてなされたものであり、有色米に含まれるアントシアニン色素を効率的且つ選択的に抽出し、これを用いて新たなタイプの酒類、飲料、及び食品を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すると、本発明の第1の発明は、糖類を含む含水エタノールに加熱していない生の有色米材料を浸漬することを特徴とする有色米由来の色素抽出液の製造方法に関し、第2の発明は第1の発明の製造方法を製造工程に包含することを特徴とする酒類、飲料、又は食品の製造方法に関し、第3の発明は、第2の発明により得られる清酒に関する。
【0009】
本発明者らは、有色米に含まれるアントシアニン色素を抽出する方法について鋭意検討を行った。その結果、糖類を含む含水エタノール溶液に加熱していない生の有色米を浸漬することにより赤色を呈するアントシアニン色素を低温で効率的且つ選択的に抽出できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明における有色米とは、玄米表層に赤褐色の色素が含まれる米を示し、具体的には、赤米、黒米、紫黒米を挙げることができる。そして有色米材料とは、この有色米由来の抽出用材料を意味し、それの例としては有色米の玄米、これを粉砕した米粉、糠、及びこれらの混合物を使用することができる。
【0011】
本発明においては、有色米の色素を抽出するための抽出溶媒として、糖類を含む含水エタノールを用いる。含水エタノールに糖類を含有させることにより赤色色素を効率的且つ選択的に抽出することができる。含水エタノールのエタノール濃度は赤色色素の抽出が可能であれば特に限定はないが、終濃度が40v/v%を超えると有色米に含まれる黄色色素の抽出率が高まり、色調が悪くなる。また、生成酒に好ましくない香りを付与する遊離脂肪酸の抽出量も多くなる。したがって、最終エタノール濃度は40v/v%を超えないようにすることが好ましい。用いる糖類の種類及び濃度には特に限定はないが、好ましくは全糖として5w/v%以上であり、5〜18w/v%がより好ましい。抽出溶媒中の全糖は、塩酸加水分解後グルコースを標準品として、ソモギ−ネルソン(SOMOGYI−NELSON)法により求めることができる。また、水及びエタノール以外の成分が実質的に糖類である場合は、比重及びエタノール濃度を求めてエキス分を換算し、これを全糖としてもよい。後述するような固液混合物は、遠心分離法等による固液分離後の液体中の全糖を求める。
【0012】
更に本発明では、糖類として、穀物の液化及び/又は糖化を行うことにより得られる固液混合物(以下、糖化物という)又はこれを固液分離することによって得られる溶液(以下、糖化液という)、あるいは糖類を主成分として含有する固形物及び/又はシラップ、又はこれらを精製したものを用いることができる。ここで言う穀物は、ジャポニカ米(糯米、粳米)、インディカ米(糯米、粳米)、大麦、小麦、ライ麦、燕麦、ヒエ、アワ、コウリャン、ソバ、トウモロコシ、モロコシ、マイロ等の穀類、サツマイモ、サトイモ、タロイモ、キャッサバ等の芋類、並びに前記穀類及び芋類等より得られるでんぷん類を示す。これらの穀物原料は単独、併用、あるいは穀物原料に糖類を主成分とする固形物又はシラップを混合したものを用いることができる。穀類及び芋類は、粒状物、細断物、粉体物、又はこれらの混合物を用いることができ、更に、粒状物を精白した穀類及び表皮を除いた芋類の前記形状の原料を用いてもよい。液化及び/又は糖化工程は常法に従って実施すればよく、穀物原料に含まれるデンプンの湖化を液化及び/糖化工程の前に行ってもよい。糖類を主成分とする固形物及び/又はシラップ、又はこれらの精製物は市販品を用いればよく、1種類又は何種類かのものを併用して用いることができる。
【0013】
本発明では、抽出は低温で行うことが好ましく、具体的には20℃以下で行うことが好ましく、10℃〜20℃がより好ましい。20℃を超える温度での抽出は有色米に含まれる黄色色素の抽出率が高くなり、前述の様な好ましくない結果となる。このため、糖化物又は糖化液の温度が抽出温度より高い場合は、抽出を行う前に該糖化物又は該糖化液を冷却する必要がある。この方法は特に限定はないが、冷却装置及び/又は温度調節装置を有するタンクを用いて行うのが好ましい。
【0014】
糖化物又は糖化液を冷却する工程を行う前に酸を加えてもよい。これにより冷却工程及び抽出工程中の腐敗を防止する効果が得られる。用いる酸は食品添加物として認可されているものであればよく、具体例として、乳酸、クエン酸、DL−酒石酸、DL−リンゴ酸、フマル酸、等を挙げることができる。これらの使用量は特に限定はないが、0.1〜1.0w/v%であることが好ましい。
【0015】
このようにして得られた抽出溶媒に有色米材料を浸漬するが、有色米材料の使用量は抽出溶媒に有色米材料が十分に浸漬し、且つ必要な赤色色素が得られる量であれば問題はない。具体的には、抽出溶媒100ml当り有色米の玄米又はその破砕物を5〜80g浸漬するのが好ましく、5〜60gがより好ましい。有色米の糠においては赤色色素が含まれる表層の割合が高くなるので、浸漬量は玄米又はその破砕物より少なくすることができる。具体的には、前記の添加量に相当する量を下記数式(1)により求めればよい。
【数1】
但し、糠及び玄米の単位はg、並びに精米歩合の単位は%である。更に、このときに生じた精白米を用いて糖化物又は糖化液を調製してもよい。
【0016】
有色米材料の浸漬方法に限定はなく、糖化物又は糖化液を冷却する工程で既に有色米材料を浸漬している場合は、この工程は省略することができる。抽出中のかくはんの有無は限定しないが、抽出効率を上昇させるために時々かくはんするのが好ましい。抽出時間は特に限定はしないが、有色米の玄米では12〜24時間が好ましく、有色米の粉砕物及び糠では、表面積が大きくなることにより抽出効率が良くなるため玄米より短い時間で行うことができる。例えば、有色米の糠では4時間の抽出で十分である。
【0017】
本発明では、色素抽出液の赤色色素、すなわちアントシアニン色素、及び黄色色素の抽出量の指標として、それぞれ光路長10mmにおける波長520nmの吸光度(OD520)及び波長420nmの吸光度(OD420)を測定する。そしてこれらの値より、鮮やかな赤色の指標としてOD520とOD420との比(OD520/OD420)を求め、OD520/OD420が高い程、鮮やかな赤色を呈していると判定する。
【0018】
このようにして得られた色素抽出液は、有色米中の赤色を呈するアントシアニン色素が効率的に抽出されており、そのまま、濃縮によるエタノール除去、固液分離、固液分離後精製、又はこれらの組合せ等の処理を行って酒類、飲料、及び食品の製造に用いることができる。使用できる酒類は特に制限はなく、具体的には清酒、リキュール類、及び雑酒、等を挙げることができる。これら酒類の製造は特に限定はなく、常法に従って実施すればよい。例えば、清酒の場合、四段醪を冷却後醸造用アルコール及び有色米材料を加えて抽出し、これを通常の方法で醸造した清酒醪に加えて上槽すればよい。
【0019】
飲料は、炭酸飲料、果実飲料、コーヒー飲料、ミネラルウォーター、フルーツシラップ、乳飲料、乳酸菌飲料、粉末清涼飲料等が該当する。これらの製造方法は常法により行えばよい。炭酸飲料を例にとってみると、先ず、果糖ぶどう糖液糖、砂糖、及び水を混合して砂糖を溶解させる。これに本発明の色素抽出液、香料、及び酸味料を混合する。更に、水と一定の割合で混合、冷却、及び炭酸ガス圧入を経て、充填、打栓、及び殺菌することにより得ることができる。
【0020】
本発明における食品は、調味料、乳製品、果実加工品、漬物類、ジャム、チューインガム、冷菓、氷菓、錠菓、及び菓子類等を示す。これらの製造方法は常法で行えばよい。菓子類として、ドロップ製造は以下の一例により行うことができる。砂糖と水飴の混合物を煮詰め、本発明の色素抽出液、酸味料、及び香料等を加えてかくはんする。これを予備成型及び成型を経て冷却することにより得ることができる。梅干の製造例は以下の通りである。生梅を洗浄及び選別後、塩漬、乾燥、熟成、洗浄、及び脱塩を行う。これを本発明の色素抽出液、糖類、食塩、蛋白加水分解物、調味料、及び酸味料等から成る調味液に漬込み、液切りをすることにより得ることができる。
【0021】
かくして得られた酒類、飲料、及び食品は鮮やかな赤色を呈する香味の優れたものとなる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1
糖類添加効果(1)
抽出温度を10、20、及び40℃、抽出溶媒中のエタノール濃度(EtOH)を終濃度20、40、及び60v/v%、並びに抽出溶媒中の糖類として、グルコース濃度(Glc.)を終濃度0(無添加)及び10w/v%に設定し、これらを組合せた抽出条件で有色米中の赤色色素を抽出した。すべての抽出溶媒には乳酸0.1w/v%を含有し、抽出溶媒100mlに有色米材料として秋田県産黒米の玄米5gを浸漬した。24時間浸漬後、遠心分離法により固液分離し、上清の0.8μmフィルター通過液のOD520及びOD420を測定してOD520/OD420を算出した。各抽出溶媒の測定結果をそれぞれ表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1より、グルコースを10w/v%添加した抽出条件では抽出温度及びエタノール濃度のすべての組合せにおいてグルコース0w/v%(無添加)よりもOD520/OD420が高い値であった。したがって、抽出溶媒にグルコースを添加することにより得られる抽出液は、グルコースを添加しないで得られるものよりも鮮やかな赤色を呈することが明らかになった。抽出温度が40℃では20℃及び10℃と比べてOD520/OD420が低い結果であった。更に、同一抽出温度におけるエタノール濃度40%と60%とを比べた場合、エタノール濃度60%ではOD520/OD420は減少し、OD520は同等又はわずかに減少していた。したがって、抽出温度は20℃以下で実施するのが好ましく、エタノール濃度は40v/v%以下で実施することか好ましいことが明らかになった。
【0026】
実施例2
糖類添加効果(2)
有色米として秋田県産黒米を使用し、該有色米の玄米及び糠(精米歩合85%)を用いて抽出条件を検討した。抽出溶媒に添加する糖類としてのグルコース濃度(Glc.)は終濃度10w/v%及び0w/v%(無添加)とした。抽出溶媒中のエタノール濃度は40v/v%、抽出温度は20℃、浸漬時間は4時間とし、更に玄米のみ24時間浸漬も行った。すべての抽出溶媒には乳酸0.1w/v%を添加し、抽出溶媒100ml当り玄米5g、又は糠0.75g〔数式(1)に基づいて算出〕を浸漬した。浸漬後の固液分離及び吸光度の測定は実施例1と同様に行い、OD520/OD420を算出した。各条件におけるOD520、OD420、及びOD520/OD420を表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
表2より玄米において、浸漬時間に関係なく糖類の添加によるOD520/OD420の増加が認められた。しかし、浸漬時間が4時間と24時間では抽出率に大きな差があり、4時間では浸漬時間が不十分であることが明らかになった。一方、糠においては浸漬時間が4時間で糖類の添加によるOD520/OD420の増加が認められ、且つ赤色色素が十分に抽出されていた。
【0029】
実施例3
抽出溶媒中のグルコース濃度の検討
グルコース濃度(Glc.)0、5、10、及び18w/v%、エタノール40v/v%、並びに乳酸0.1w/v%を含有する抽出溶媒100mlに秋田産黒米の玄米5gを浸漬し、10℃で抽出を行った。浸漬時間12時間後、24時間後、及び70時間後について、実施例1と同様に固液分離及び吸光度の測定を行い、OD520/OD420を算出した。各条件におけるOD520、OD420、及びOD520/OD420を表3に示す。
【0030】
【表3】
【0031】
浸漬時間を一定にした場合、OD520/OD420はグルコース濃度に依存して増加した。一方、OD520はグルコース濃度10w/v%までは増加したが、10w/v%を超えると減少傾向を示した。グルコース濃度を一定にした場合、OD520/OD420は浸漬時間が24時間までは増加したが、72時間では減少していた。一方、OD520は時間に依存して増加した。これらの結果から、グルコース濃度は5〜18w/v%の範囲では高い方が良いこと、及び浸漬時間は12〜24時間が良いことが明らかになった。
【0032】
実施例4
有色米材料の浸漬量の検討
グルコース濃度10w/v%、及びエタノール40v/v%からなる抽出溶媒100mlに有色米として秋田県産黒米の玄米を表4に示す量を浸漬し、20℃で抽出した。20時間浸漬後、実施例1と同様に固液分離及びフィルターろ過を行った。本実験では玄米の量が異なるため色素抽出液のpHが大きく異なること、及び色素抽出液のOD520が非常に大きいため正確な測定ができないことから、N/10 HClで表4の希釈倍率で希釈し、pHを1にしてOD520を測定した。これに希釈倍率を乗じた値を色素量とした。OD520、希釈倍率、及び色素量を表4に示す。
【0033】
【表4】
【0034】
表4より、抽出される色素量は浸漬する玄米量に比例して増加した。しかし、この比例関係は玄米量が80gまでについて成り立つが、玄米量が100gの場合には色素量は減少していた。更に、浸漬中にかくはんを行うためには抽出溶媒100ml当り玄米量80gが最大量であり、この量でもかくはんはかなり困難を要するものであった。よって、かくはんを行うには抽出溶媒100ml当り玄米量60g以下で行うのが好ましい。したがって、抽出溶媒100ml当りの有色米玄米の浸漬量は、5〜80gが好ましく、より好ましくは5〜60gであることが明らかになった。
【0035】
実施例5
穀類糖化物を用いた有色米材料の色素抽出
穀類糖化物として清酒四段醪を調製した。滋賀県産日本晴の75%精白米30gを常法により浸漬、水切り、及び蒸きょうし、これと汲水45ml及び糖化酵素としてグルクSB〔天野製薬(株)〕15mgとを混合して55℃で18時間糖化して四段醪を調製した。これを冷却し、90w/v%乳酸0.45g及び67v/v%エタノール103mlを加え、これに有色米として秋田県産黒米の玄米30gを浸漬し、20℃で17時間抽出した。対照として、前述の75%精白米の代りに秋田県産黒米の玄米30gを用いて同様に四段醪を調製し、乳酸、67v/v%醸造用アルコールを添加した(比較例1)。四段醪の重ボーメ度、エタノール濃度(EtOH)、エキス分(Ex)、OD520、及びOD420を測定し、OD520/OD420を算出した。重ボーメ度は第四回改正国税庁所定分析法注解に基づいて測定し、エタノール濃度は簡易アルコール分析器AL−2型〔理研計器(株)〕を用いて測定した。OD520、OD420、OD520/OD420は実施例1に従って行い、エキス分は重ボーメ度とエタノール濃度より算出した。これらの結果を表5に示す。
【0036】
【表5】
【0037】
表5より、重ボーメ度、グルコース濃度、エタノール濃度、エキス分、及びpHの差は僅かであるにもかかわらず、実施例5におけるOD520/OD420は比較例1の1.5倍であり、鮮やかな赤色を呈するものであった。更に、実施例5におけるOD520は比較例1の3.1倍であり、赤色を呈する色素が多量に抽出されていた。従って、精白米を用いて穀類糖化物を調製し、該糖化物を用いて得られる有色米の色素抽出液は鮮やかな赤色を呈することが明らかになった。
【0038】
実施例6
色素抽出液を用いる清酒製造
実施例5で得られた色素抽出液を、掛米及び麹米に滋賀県産日本晴の75%精白米を用いて常法により得た上槽直前の清酒醪400mlに混合し、かくはん後遠心分離法により上槽して原酒を得た。この原酒に割水を行ってエタノール濃度15v/v%の清酒を得た(実施例6)。対照として、比較例1で得られた色素抽出液を実施例6と同様に実施した(比較例2)。これらの清酒について、日本酒度、エタノール濃度(EtOH)、pH、OD520、及びOD420を測定し、OD520/OD420を算出した。また、エタノール濃度15v/v%割水を行った清酒について官能評価を行った。日本酒度は第四回改正国税庁所定分析法注解に基づき、エタノール濃度は簡易アルコール分析器AL−2型〔理研計器(株)〕を用いて測定した。OD520、OD420、及びOD520/OD420は実施例1と同様に測定した。官能評価は評価項目を色、味、香り、及び総合評価について4点法(1点;優、2点;良、3点;可、4点;不可)により行い、パネラー12名による平均点を求めた。これらの結果を表6に示す。
【0039】
【表6】
【0040】
表6より、pHに差が見られないにも関わらず、実施例6と比較例2とのOD520及びOD520/OD420の差は大きく、清酒の色は実施例6では濃い鮮やかな赤色〜赤紫色を呈していたのに対し、比較例2では薄い褐色であった。官能評価より、実施例6はすべての評価項目において比較例2より優れた結果であった。実施例6は「色が美しく鮮やかである。」、「果実系の甘い香りがする。」、「すっきりした味である。」等のコメントに対し、比較例2では「色が薄い。」、「酸化した油臭がする。」、「雑味がある。」等のコメントであった。従って、実施例5の色素抽出液を用いて製造した清酒は鮮やかな赤色を呈し、且つ香味の優れたものになることが明らかになった。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、糖類及びエタノールを含む水溶液を用いることにより、有色米材料のアントシアニン色素を効率よく抽出することができ、該抽出液を用いて酒類、飲料、及び食品を製造すると、有色米特有の鮮やかな赤色を呈し、且つ香味に優れたものを得ることができる。
Claims (6)
- 糖類を含む含水エタノール中に加熱していない生の有色米材料を浸漬する工程を包含することを特徴とする有色米由来の色素抽出液の製造方法。
- 抽出溶媒中のエタノールの濃度が、40v/v%以下であり、糖類の濃度が5〜18w/v%であることを特徴とする請求項1記載の有色米由来の色素抽出液の製造方法。
- 抽出温度が20℃以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の有色米由来の色素抽出液の製造方法。
- 糖類が穀類の液化及び/又は糖化により得られるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の有色米由来の色素抽出液の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法を製造工程に包含することを特徴とする酒類、飲料、又は食品の製造方法。
- 請求項5に記載の製造方法により得られる清酒。
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