JP5928968B2 - 麦芽飲料およびその製造方法、ならびに不快な香味のマスキング方法 - Google Patents

麦芽飲料およびその製造方法、ならびに不快な香味のマスキング方法 Download PDF

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Description

本発明は、麦芽飲料およびその製造方法、ならびに不快な香味のマスキング方法に係り、特に、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁を含む麦芽飲料およびその製造方法、ならびに不快な香味のマスキング方法に関する。
麦芽飲料の1つであるビールは、数え切れないほどの種類が存在し、原料、製造方法(発酵方法)、色等について多くの相違点を有する。よって、ビールは、当該相違点に基づいて様々な角度から分類することができる。
ここで、ビールを色に基づいて大きく2つに分類すると、ピルスナービール等に代表される淡色ビールと、黒ビール、スタウト等に代表される濃色ビールと、に分類することができる。
この濃色ビールは、色や豊かな香味を付与することを目的に、比較的高温下で焙燥された麦芽を原料として使用する。しかし、麦芽を高温で焙燥することにより、オフフレーバー(焦臭、スス焦げ臭等)や、エグ味といった不快な香味が発生してしまう。そして、これらの不快な香味がビール自体に移行してしまう場合がある。
前記のような事情を考慮し、例えば、特許文献1には、原料となる麦芽を組織ごとに分画して、分画した画分を任意の割合で使用することにより、麦芽飲料の香味を制御することができる麦芽飲料の製造方法が提案されている。
特開2008−43292号公報
特許文献1に係る技術は、麦芽を組織別に分離し、組織別に分離した麦芽を適切に選り分ける必要がある。よって、特許文献1に係る技術は、麦芽飲料を製造するに際して、麦芽を組織別に分離するための装置と、分離した麦芽を選り分ける装置と、が必要となる。したがって、特許文献1に係る技術は、設備投資費の増大を招き、その結果として、麦芽飲料の製造コストを上昇させてしまう。
また、特許文献1に係る技術は、組織別に分離した麦芽のうち、必要としない組織を除外しなければならないことから、原料ロスが増大するため、麦芽飲料の製造コストをさらに上昇させてしまう。
加えて、特許文献1に係る技術は、麦芽飲料を製造するに際して、従来必要ではなかった工程(麦芽を分離する工程、選り分ける工程)が必要となることから、製造時間が長期化してしまうため、麦芽飲料の製造効率を低下させてしまう。
そこで、本発明は、麦芽飲料の製造コストの上昇や製造効率の低下を抑えつつ、オフフレーバー(焦臭、スス焦げ臭等)や、エグ味といった不快な香味がマスキングされた麦芽飲料および麦芽飲料の製造方法、ならびに、これらの不快な香味を抑えるマスキング方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁に、カラメル色素等の着色料を加えることにより、当該着色料がオフフレーバーや、エグ味といった不快な香味をマスキングすることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る麦芽飲料は、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁と、着色料と、を含む麦芽飲料であって、前記麦芽飲料の色度について、前記麦汁由来の色度に対する前記着色料由来の色度の比率(前記着色料由来の色度/前記麦汁由来の色度)が、1.00以上10.00以下であり、前記麦芽飲料の色度が40以上であり、前記着色料がカラメル色素であることを特徴とする。
このように、本発明に係る麦芽飲料は、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁と、着色料と、を含むことから、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁が有するオフフレーバーや、エグ味といった不快な香味を、着色料によりマスキングすることができる。
このように、本発明に係る麦芽飲料は、着色料としてカラメル色素を用いることにより、オフフレーバーや、エグ味といった不快な香味のマスキング効果をより確実なものとすることができる。
また、本発明に係る麦芽飲料は、エタノール含有量が1体積%未満であることが好ましい。そして、本発明に係る麦芽飲料は、麦芽非発酵飲料であることが好ましい。
ここで、麦芽飲料が麦芽非発酵飲料である場合、通常、当該麦芽非発酵飲料は、麦汁を発酵させる工程を経ずに製造されるため、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁の有するオフフレーバーや、エグ味といった不快な香味が低減されずに飲料中に移行してしまう。つまり、オフフレーバーや、エグ味といった不快な香味をマスキングしなければならないという課題が明確となる「麦芽非発酵飲料」という麦芽飲料に、本発明に係る麦芽飲料を適用することにより、不快な香味のマスキング効果を極めて顕著に発揮する。
また、本発明に係る麦芽飲料は、前記麦汁の色度に対する前記着色料の色度の比率(前記着色料の色度/前記麦汁の色度)が、0.50以上であることが好ましい。
このように、本発明に係る麦芽飲料は、麦汁の色度に対する着色料の色度の比率を所定値以上に規制することにより、オフフレーバーや、エグ味といった不快な香味を、より適切に着色料によりマスキングすることができる。
本発明に係る麦芽飲料の製造方法は、濃色麦芽を含んだ麦芽または当該麦芽由来の麦汁と、着色料と、を調合する調合工程を含む、麦芽飲料の製造方法であって、前記麦芽飲料の麦汁由来の色度に対する前記着色料由来の色度の比率(前記着色料由来の色度/前記麦汁由来の色度)が、1.00以上10.00以下であり、前記麦芽飲料の色度が40以上であり、前記着色料がカラメル色素であることを特徴とする。
このように、本発明に係る麦芽飲料の製造方法は、濃色麦芽を含んだ麦芽または当該麦芽由来の麦汁と、着色料と、を調合する調合工程を含むことから、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁が有するオフフレーバーや、エグ味といった不快な香味を、着色料によりマスキングすることができる。
このように、本発明に係る麦芽飲料の製造方法は、着色料としてカラメル色素を用いることにより、オフフレーバーや、エグ味といった不快な香味のマスキング効果をより確実なものとすることができる。
本発明に係る不快な香味のマスキング方法は、濃色麦芽を含んだ麦芽または当該麦芽由来の麦汁に、着色料を含有させる不快な香味のマスキング方法であって、前記マスキング方法の対象となる麦芽飲料の麦汁由来の色度に対する前記着色料由来の色度の比率(前記着色料由来の色度/前記麦汁由来の色度)が、1.00以上10.00以下であり、前記着色料がカラメル色素であることを特徴とする。
このように、本発明に係る不快な香味のマスキング方法は、濃色麦芽を含んだ麦芽または当該麦芽由来の麦汁に、着色料を含有させることから、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁が有するオフフレーバーや、エグ味といった不快な香味を、着色料によりマスキングすることができる。
このように、本発明に係る不快な香味のマスキング方法は、着色料としてカラメル色素を用いることにより、オフフレーバーや、エグ味といった不快な香味のマスキング効果をより確実なものとすることができる。
本発明に係る麦芽飲料は、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁と、着色料と、を含むことから、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁が有するオフフレーバー(焦臭、スス焦げ臭等)や、エグ味といった不快な香味を、着色料によりマスキングすることができる。
また、本発明に係る麦芽飲料は、製造時に、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁と、着色料と、を調合する工程が増えるだけであるため、設備投資費の増大や原料ロスを招くおそれはなく、製造コストの上昇を抑えることができるとともに、製造時間が長期化するおそれもないため、製造効率の低下も抑えることができる。
本発明に係る麦芽飲料の製造方法は、濃色麦芽を含んだ麦芽または当該麦芽由来の麦汁と、着色料と、を調合する調合工程を含むことから、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁が有するオフフレーバー(焦臭、スス焦げ臭等)や、エグ味といった不快な香味を、着色料によりマスキングすることができる。
本発明に係る不快な香味のマスキング方法は、濃色麦芽を含んだ麦芽または当該麦芽由来の麦汁に、着色料を含有させることから、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁が有するオフフレーバー(焦臭、スス焦げ臭等)や、エグ味といった不快な香味を、着色料によりマスキングすることができる。
以下、本発明に係る麦芽飲料およびその製造方法、ならびに不快な香味のマスキング方法を実施するための形態(実施形態)について説明する。
[麦芽飲料]
本発明に係る麦芽飲料とは、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁と、着色料と、を含む飲料である。
そして、麦芽飲料は、エタノール含有量が1体積%以上の麦芽アルコール飲料と、エタノール含有量が1体積%未満(0.00体積%も含む)の麦芽ノンアルコール飲料と、に分類できる飲料である。
また、麦芽飲料は、麦芽発酵飲料と、麦芽非発酵飲料と、に分類できる飲料でもある。
(麦芽)
麦芽としては、大麦麦芽及び/又は小麦麦芽を好ましく使用することができる。そして、大麦麦芽及び小麦麦芽は、それぞれ大麦及び小麦を発芽させることにより得られる。
(麦芽発酵飲料)
麦芽発酵飲料は、麦芽を含む原料を使用し、発酵を行うことにより製造される麦芽飲料である。この場合、本飲料は、例えば、麦芽を含む原料を使用して麦汁を調製する工程と、当該麦汁の発酵を行う工程とを含む方法により製造される。そして、発酵は、例えば、アルコール発酵又は乳酸発酵であることとしてもよく、アルコール発酵であることが好ましい。
ここで、アルコール発酵は、例えば、麦汁に1×10〜3×10cells/mLの範囲内の所定濃度で酵母を添加して発酵液を調製し、当該発酵液を0〜40℃の範囲内の所定温度で維持することにより行う。また、アルコール発酵後に、さらに熟成を行うこととしてもよい。
なお、本飲料は、発泡性麦芽発酵飲料であることとしてもよい。
(麦芽非発酵飲料)
麦芽非発酵飲料は、麦芽を含む原料を使用するが、前記のような発酵を行わずに製造される麦芽飲料である。
なお、本飲料は、発泡性麦芽非発酵飲料であることとしてもよい。
(麦芽アルコール飲料)
麦芽アルコール飲料とは、前記のとおりエタノール含有量が1体積%以上の飲料であり、例えば、1〜20体積%であることとしてもよい。
なお、本飲料は、発泡性麦芽アルコール飲料であることとしてもよい。また、本飲料は、麦芽発酵アルコール飲料であることとしてもよい。また、本飲料は、麦芽非発酵アルコール飲料であることとしてもよい。また、本飲料は、発泡性麦芽発酵アルコール飲料であることとしてもよい。また、本飲料は、発泡性麦芽非発酵アルコール飲料であることとしてもよい。
(麦芽ノンアルコール飲料)
麦芽ノンアルコール飲料とは、前記のとおりエタノール含有量が1体積%未満(0.00体積%も含む)の飲料であり、例えば0.05体積%未満であることとしてもよい。
なお、本飲料は、発泡性麦芽ノンアルコール飲料であることとしてもよい。また、本飲料は、麦芽発酵ノンアルコール飲料であることとしてもよい。また、本飲料は、麦芽非発酵ノンアルコール飲料であることとしてもよい。また、本飲料は、発泡性麦芽発酵ノンアルコール飲料であることとしてもよい。また、本飲料は、発泡性麦芽非発酵ノンアルコール飲料であることとしてもよい。
ここで、麦芽発酵飲料は、麦汁を発酵させる工程を経て製造されるが、この麦汁の発酵時に、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁の有するオフフレーバーや、エグ味といった不快な香味が、若干、低減される。一方、麦芽非発酵飲料は、通常、麦汁を発酵させる工程を経ずに製造されるため、麦芽発酵飲料と比較して、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁の有するオフフレーバーや、エグ味といった不快な香味が全く低減されずに飲料中に移行してしまう。
つまり、麦芽飲料の中でも麦芽非発酵飲料において、オフフレーバーや、エグ味といった不快な香味をマスキングしなければならないという課題が明確に現れることとなる。
言い換えると、本発明に係る麦芽飲料は、麦芽非発酵飲料に適用するのが好ましく、極めて顕著な効果(オフフレーバーや、エグ味といった不快な香味のマスキング)を発揮することとなる。
(麦汁)
麦汁は、例えば、麦芽と水とを混合することにより調製される。より具体的には、麦汁は、例えば、少なくとも麦芽と水(好ましくは湯)とを混合し、当該麦芽に含まれる成分を抽出することにより調製される。また、麦芽以外の原料を混合しても良い。麦芽以外の原料としては、例えば、大麦及び/又は小麦等(例えば、大麦、小麦、豆類、米類、いも類、とうもろこし及びその他の穀物からなる群より選択される1種以上)、糖類、水あめ等を使用することとしてもよい。
また、麦汁は、糖化を行うことにより調製されることとしてもよい。より具体的には、麦汁は、例えば、麦芽と水とを混合し、得られた混合液の糖化を行うことにより調製される。糖化は、麦芽及び水を含む混合液を、当該麦芽に含まれる消化酵素(例えば、デンプン分解酵素、タンパク質分解酵素)が働く温度(例えば、30〜80℃)に維持することにより行う。
また、麦汁は、麦芽エキスと水とを混合することにより調製されることとしてもよい。より具体的には、麦汁は、例えば、少なくとも麦芽エキスと水(好ましくは湯)とを混合することにより調製される。
麦芽エキスは、麦芽由来成分を含む組成物である。すなわち、麦芽エキスは、麦芽から、糖分及び窒素分等を含むエキス分を抽出することにより得られる麦芽抽出物である。
なお、麦芽エキスは、例えば、麦芽からエキス分を冷水又は湯で抽出することにより調製される。また、麦芽エキスは、麦芽からエキス分を抽出し、次いで糖化を行うことにより調製されることとしてもよい。また、麦芽エキスは、麦芽の抽出後又は糖化後に、濃縮して調製されることとしてもよい。また、麦芽エキスとしては、市販の麦芽エキスを使用することとしてもよい。
(苦味原料)
麦汁は、苦味原料を含有されていてもよい。苦味原料としては、例えば、ホップ及び/又は苦味料を好ましく使用することができる。ホップを使用する場合、例えば、生ホップ、乾燥させたホップの球果を圧縮して得られるプレスホップ、乾燥させたホップの球果を粉砕して得られるホップパウダー、当該ホップパウダーをペレット状に圧縮して得られるホップペレットを使用することができる。
(濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁)
濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁とは、使用する麦芽のうち、濃色麦芽を少なくとも一部として含んだ麦芽から製造された麦汁である。
なお、麦芽全体に対する濃色麦芽の割合は、特に限定されないが、麦芽飲料のオフフレーバーや、エグ味が強くなる1質量%(麦芽全体に対する濃色麦芽の質量%)以上の場合に、本発明の効果(オフフレーバーや、エグ味といった不快な香味のマスキング)が顕著に発揮されることとなる。
ここで、濃色麦芽とは、発芽した緑麦芽を比較的高温下(100℃以上)で焙燥したものであり、例えば、ミュンヘン麦芽、カラメル麦芽、黒麦芽等である。そして、濃色麦芽は、1種類の濃色麦芽で構成されていてもよいし、2種類以上の濃色麦芽で構成されていてもよい。
特に、濃色麦芽の中でも黒麦芽は、最終的には、180〜240℃まで加熱して製造されることから、当該黒麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁は、オフフレーバーや、エグ味といった不快な香味が発生し易い。
つまり、濃色麦芽の中でも黒麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁において、オフフレーバーや、エグ味といった不快な香味をマスキングしなければならないという課題が明確に現れることとなる。
言い換えると、本発明に係る麦芽飲料は、黒麦芽を使用するものに適用するのが好ましく、極めて顕著な効果(オフフレーバーや、エグ味といった不快な香味のマスキング)を発揮することとなる。
なお、濃色麦芽以外の麦芽は、特に限定されないが、例えば、ピルスナー麦芽等の淡色麦芽である。そして、濃色麦芽以外の麦芽は、1種類の淡色麦芽で構成されていてもよいし、2種類以上の淡色麦芽で構成されていてもよい。
(着色料)
着色料とは、食品を美化し魅力を増すため、食品の着色を目的に使用する食品添加物をいう。そして、この着色料が、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁のオフフレーバーやエグ味といった不快な香味をマスキングする役目を果たす。また、この着色料は、麦芽飲料の色合いを調整することもできる。
着色料は、黒色又は褐色の着色料が好ましく、例えば、イカ墨色素、植物炭末色素、ココア色素、カカオ色素、コウリャン色素、タマリンド色素、カキ色素、カラメル色素を使用することができる。また、カラメル色素を使用することが特に好ましい。
(カラメル色素)
カラメル色素とは、砂糖、ブドウ糖等の食用炭水化物を熱処理して得られる食品用着色料である。
また、カラメル色素は、粉末状、ペースト状、または液体状のいずれの形態のものであってもよい。
なお、市販品のカラメル色素は、池田糖化株式会社、仙波糖化株式会社、天野実業株式会社、昭和化学工業などから入手することができる。
(麦汁の色度に対する着色料の色度の比率)
麦汁の色度に対する着色料の色度の比率(着色料の色度/麦汁の色度)とは、詳細には、着色料の色度として算出される数値を、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁の色度として算出される数値で割った値である。
なお、試験・研究の結果から、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁の色度が上昇すると、当該麦汁の色度の上昇に略比例して、麦芽飲料のオフフレーバーや、エグ味が強くなる傾向があることを見出した。さらに、当該麦汁の色度の上昇に比例するように、着色料の色度を上昇させ(つまり、着色料の含有量を増やし)、麦汁の色度に対する着色料の色度の比率を所定値以上とすることによって、麦芽飲料のオフフレーバーや、エグ味といった不快な香味を適切にマスキングすることができることを見出し、前記のような計算式を規定した。
麦汁の色度に対する着色料の色度の比率を0.50以上とすることにより、麦芽飲料のオフフレーバーや、エグ味といった不快な香味を適切にマスキングすることができる。
したがって、麦汁の色度に対する着色料の色度の比率は、0.50以上であることが好ましい。
また、麦汁の色度に対する着色料の色度の比率を1.00以上とすることで麦芽飲料のオフフレーバーや、エグ味といった不快な香味をより確実にマスキングすることができるが、20.00を超えると、当該マスキングの効果は飽和してしまう。
したがって、麦汁の色度に対する着色料の色度の比率は、1.00以上であることがより好ましく、20.00以下であることがさらに好ましく、10.00以下が特に好ましい。
なお、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁の色度が、麦芽飲料のオフフレーバーや、エグ味といった不快な香味が強くなる20以上の場合に本発明の効果(オフフレーバーや、エグ味といった不快な香味のマスキング)が顕著に発揮されることとなる。
ここで、色度とは、EBC(European Brewery Convention:欧州ビール醸造協議会)にて定められた色度であり、波長430nmにおける吸光度の測定結果に基づいて算出することができる。詳細には、ビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)が規定する「ビール分析法 8.8色度 8.8.2吸光度法」に従って算出することができる。
(その他)
麦芽飲料は、前記麦汁や着色料以外にも、従来公知の麦芽飲料に使用されているもの、例えば、甘味料、酸味料、香料、調味料、酵母エキス、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、食物繊維、酸化防止剤(ビタミンC)等が含有されていてもよい。
なお、本発明に係る麦芽飲料は、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁と、着色料と、を含有することから、濃色麦芽を含まない麦芽由来の麦汁を含んで構成される麦芽飲料と比較して濃色を呈する。
そして、濃色麦芽(黒麦芽)を多く含んだ麦芽由来の麦汁は、オフフレーバーや、エグ味といった不快な香味が強くなることから、濃色麦芽(黒麦芽)を多く含んだ麦芽由来の麦汁を含有する濃色麦芽飲料(色度が20以上の飲料であり、特に、黒ビール、黒ノンアルコールビール)に、本発明に係る麦芽飲料を適用するのが好ましい。
[麦芽飲料の製造方法]
麦芽飲料の製造方法とは、濃色麦芽を含んだ麦芽または当該麦芽由来の麦汁と、着色料と、を調合する調合工程を含むことを特徴とする。
詳細には、以下の通りである。
本発明に係る麦芽飲料のうち、麦芽発酵飲料(ビール等)の製造方法は、大麦から麦芽飲料の原料となる麦芽を製造する工程である製麦工程と、麦芽、ホップ、副原料から麦汁を製造する工程である仕込工程と、麦汁に酵母を加え発酵、熟成させる発酵・貯酒工程と、をこの工程順に行うとともに、前記調合工程を、仕込工程中、または、仕込工程の後であって発酵・貯酒工程の前、または、発酵・貯酒工程の後に行うというものである。
また、本発明に係る麦芽飲料のうち、麦芽非発酵飲料(ノンアルコールビール等)の製造方法は、大麦から麦芽飲料の原料となる麦芽を製造する工程である製麦工程と、麦芽、ホップ、副原料から麦汁を製造する工程である仕込工程と、をこの工程順に行うとともに、前記調合工程を、仕込工程中、または、仕込工程の後に行うというものである。
前記各工程において、明示していない条件については、従来公知の条件を用いればよく、本発明の効果を奏する限りにおいて、その条件を適宜変更できることは言うまでもない。また、前記各工程以外にも、ろ過工程等の従来公知の工程を行ってもよい。
[麦芽飲料のマスキング方法]
麦芽飲料のマスキング方法とは、濃色麦芽を含んだ麦芽または当該麦芽由来の麦汁に、着色料を含有させる方法である。
濃色麦芽を含んだ麦芽または当該麦芽由来の麦汁に、着色料を含有させることにより、濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁が有するオフフレーバーや、エグ味といった不快な香味をマスキングすることができる。
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明に係る麦芽飲料およびその製造方法、ならびに不快な香味のマスキング方法について説明する。
[麦汁]
まず、淡色麦芽のみを原料として製造した麦汁(麦汁A)と、淡色麦芽と黒麦芽を原料として製造した麦汁(麦汁B)と、を準備した。
なお、麦芽から麦汁を製造する方法については、麦芽に湯を加えて糖化を行い、その後、ホップを添加して煮沸を行なうというものであり、発酵は行っていない。
麦汁Aと麦汁Bのエキスについては12重量%、苦味価については40BUに調整した。
[カラメル色素]
カラメル色素については、粉末状の市販品を水で希釈して使用した。
[サンプルの調整]
前記の麦汁A、麦汁Bを所定の比率で混合することにより、色度の異なる麦汁を調整した。
その後、調整後の麦汁に所定量のカラメル色素を含有させて、カラメル色素の色度/麦汁の色度が所定の値となるように調整した。
最終的に、全量350ml、エキス8重量%、苦味価25BU、となるように、炭酸水で調整を行い、各サンプルを製造した。
なお、製造した各サンプルは、エタノール含有量が0.05体積%未満であった。
[色度、エキス、苦味価の算出方法]
実施例における色度は、ビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)が規定する「ビール分析法 8.8色度 8.8.2吸光度法」に従って算出した。詳細には、脱ガスしたサンプルを10mm(光路長)のセルに入れ、430nmの単色光で吸光度を測定し、その値にファクターを乗じることによりEBC色度を算出した。
実施例におけるエキスは、ビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)が規定する「ビール分析法 7.2エキス」に従って算出した。詳細には、20℃での比重を振動式密度計を使用して測定し、前記文献に記載されているエキス表によりエキス分を算出した。
実施例における苦味価は、ビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)が規定する「ビール分析法 8.15 苦味価」に従って算出した。詳細には、脱ガスしたサンプルに酸を加えた後、イソオクタンで抽出し、得られたイソオクタン層の吸光度を純粋なイソオクタンを対照に275nmで計測し、ファクターを乗じることにより苦味価(BU)を算出した。
[試験方法および評価基準]
調整した各サンプルについて、パネリスト6名による官能試験を行った。この官能試験は、不快な香味であるオフフレーバー(焦臭、スス焦げ臭等)とエグ味に関するものであった。
オフフレーバーの評価基準については、感じない場合を「1」、かなり強く感じる場合を「5」として、1〜5の5段階で評価した。
また、エグ味の評価基準についても、オフフレーバーの評価基準と同様、感じない場合を「1」、かなり強く感じる場合を「5」として、1〜5の5段階で評価した。
そして、パネリスト6名の結果を集計し、オフフレーバーとエグ味とのそれぞれの評価値の平均値を算出した。
なお、評価値の平均値が小数点第2位まであるものは、小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位までの数値に統一して表記した。
各サンプルに対するオフフレーバーとエグ味とのそれぞれの評価を表1〜表3に示す。
表中の「カラメル色度/麦汁色度」とは、カラメル色素由来色度(カラメル色素の色度)/麦汁由来色度(麦汁の色度)を示し、「サンプル色度」とは、個々のサンプル全体の色度を示す。
なお、「カラメル色度/麦汁色度」が小数点第3位まであるものは、小数点第3位を四捨五入し、小数点第2位までの数値に統一して表記した。
Figure 0005928968
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表1は、カラメル色素を使用せず、各サンプルの麦汁の色度を変化させた場合の結果を示す。
表1の結果より、麦汁の色度が上昇するに従い、つまり、黒麦芽を原料の一部として使用した麦汁(麦汁B)の比率が増加するに従い、オフフレーバーおよびエグ味の両方の値も上昇することがわかった。
この結果より、麦芽飲料における黒麦芽の含有比率が増加する程、サンプルのオフフレーバーとエグ味とが強くなることがわかった。
また、表1の結果より、麦汁の色度が20となった時点で(サンプルNo.1−3)、オフフレーバーが2.2、エグ味が2.3と「2.0」を超え、いずれも「やや感じる」という結果となった。
つまり、麦汁の色度が20以上となる麦芽飲料に対して、オフフレーバーとエグ味とをマスキングする必要があることがわかった。
表2は、各サンプルの麦汁の色度を固定した状態で、カラメル色素の色度を変化させた場合の結果を示す。
表2の結果より、カラメル色素の色度/麦汁の色度が上昇するに従い、つまり、カラメル色素の含有量が増加するに従い、オフフレーバーおよびエグ味の両方の値が低下することがわかった。
この結果より、カラメル色素の色度/麦汁の色度が上昇する程(カラメル色素の含有量が増加する程)、サンプルのオフフレーバーとエグ味とがマスキングされていることがわかった。
また、表2の結果より、カラメル色素の色度/麦汁の色度が0.67となった時点で(サンプルNo.2−1)、オフフレーバーが2.5となり、表1のサンプルNo.1−4と比較して、オフフレーバーの値が低下し、マスキングされていることが分かった。
そして、カラメル色素の色度/麦汁の色度が1.00となった時点で(サンプルNo.2−2)、オフフレーバーおよびエグ味の両方の値が大きく低下して「2.0」以下となり、オフフレーバーおよびエグ味を感じなくなった。
つまり、カラメル色素の色度/麦汁の色度が0.67以上となる場合において、特に、カラメル色素の色度/麦汁の色度が1.00以上となる場合において、麦芽飲料の不快な香味であるオフフレーバーやエグ味を適切にマスキングできることがわかった。
表3は、各サンプルの麦汁の色度とカラメル色素の色度とを変化させつつ、カラメル色素の色度/麦汁の色度を固定した場合の結果を示す。
表3の結果より、カラメル色素の色度/麦汁の色度を1.00とすることにより、麦汁の色度が高い場合(サンプルNo.3−3)であっても、オフフレーバーおよびエグ味の両方の値が大きく低下して、「2.0」以下となり、オフフレーバーおよびエグ味を感じなくなった。
以上、本発明に係る麦芽飲料およびその製造方法、ならびに不快な香味のマスキング方法について、発明を実施する形態および実施例により詳細に説明したが、本発明の趣旨はこれらの説明に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。

Claims (6)

  1. 濃色麦芽を含んだ麦芽由来の麦汁と、着色料と、を含む麦芽飲料であって、
    前記麦芽飲料の色度について、前記麦汁由来の色度に対する前記着色料由来の色度の比率(前記着色料由来の色度/前記麦汁由来の色度)が、1.00以上10.00以下であり、
    前記麦芽飲料の色度が40以上であり、
    前記着色料がカラメル色素であることを特徴とする麦芽飲料。
  2. 前記麦汁由来の色度が20以上であることを特徴とする請求項1に記載の麦芽飲料。
  3. 濃色麦芽を含んだ麦芽または当該麦芽由来の麦汁と、着色料と、を調合する調合工程を含む、麦芽飲料の製造方法であって、
    前記麦芽飲料の麦汁由来の色度に対する前記着色料由来の色度の比率(前記着色料由来の色度/前記麦汁由来の色度)が、1.00以上10.00以下であり、
    前記麦芽飲料の色度が40以上であり、
    前記着色料がカラメル色素であることを特徴とする麦芽飲料の製造方法。
  4. 前記麦芽飲料の麦汁由来の色度が20以上であることを特徴とする請求項に記載の麦芽飲料の製造方法。
  5. 濃色麦芽を含んだ麦芽または当該麦芽由来の麦汁に、着色料を含有させる不快な香味のマスキング方法であって、
    前記マスキング方法の対象となる麦芽飲料の麦汁由来の色度に対する前記着色料由来の色度の比率(前記着色料由来の色度/前記麦汁由来の色度)が、1.00以上10.00以下であり、
    前記着色料がカラメル色素であることを特徴とする不快な香味のマスキング方法。
  6. 前記麦芽飲料の麦汁由来の色度が20以上であることを特徴とする請求項に記載の不快な香味のマスキング方法。
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