JP4770540B2 - セラミックペースト、その製造方法、およびそのセラミックペーストを用いた積層型セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents
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バインダ樹脂と、
一般式C6H4(COOR)(COOR’)で表されるフタル酸エステル系可塑剤と、を含み、
前記一般式C6H4(COOR)(COOR’)において、炭化水素基Rに含まれる炭素数、および炭化水素基R’に含まれる炭素数の少なくともいずれかが、8〜10であることを特徴とする。
セラミック粉体と、分散剤と、バインダ樹脂と、一般式C6H4(COOR)(COOR’)で表されるフタル酸エステル系可塑剤と、を含むセラミックペーストの製造方法であって、
前記一般式C6H4(COOR)(COOR’)において、炭化水素基Rに含まれる炭素数、および炭化水素基R’に含まれる炭素数の少なくともいずれかが、8〜10であり、
前記セラミック粉体と、前記分散剤とを含む混合物を分散処理する工程と、
分散処理後の前記混合物に対して、前記バインダ樹脂および前記フタル酸エステル系可塑剤を同時に添加する工程と、を有する。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図、
図2A、図2B、図2C、図3A、図3Bは、図1に示す積層セラミックコンデンサの製造方法の1製造過程を示す要部断面図である。
まず、本発明に係る方法により製造される積層セラミック電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構構成について説明する。
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。
まず、図2Aに示すように、キャリアシート20を準備し、その上に、剥離層22を形成する。
次に、図2Aに示すように、キャリアシート20上に形成した剥離層22の表面に、内部電極層12aを所定パターンで形成する。内部電極層12aは、図1に示す内部電極層12を構成することになる。
図2Aに示すように、内部電極層12aを形成する前後に、剥離層22の表面において内部電極層12aのパターンが形成されない部分に、内部電極層12aと実質的に同じ厚みの余白パターン層24を形成する。
次に、図2Aに示すように、キャリアシート26の表面に接着層28を形成する。キャリアシート26は、キャリアシート20と同様なシートで構成される。
次に、本実施形態に係るセラミックペーストを作製する。このセラミックペーストをキャリアシートに塗布することによって、グリーンシートを形成する。
次に、図3Aに示すように、キャリアシート30上に、セラミックペーストを塗布して、グリーンシート10aを形成する。このグリーンシート10aは、図1に示す誘電体層10を構成することになる。
次に、図3Bに示すように、キャリアシート20上に形成された内部電極層12aおよび余白パターン層24を、接着層28を介して、グリーンシート10aの表面に押し付け、加熱加圧する。その結果、積層体ユニットUが得られる。この積層体ユニットUを複数形成する。
次に、外層用グリーンシートを積層した積層体に対して、加熱しながら最終加圧を行う。最終加圧時の圧力は、好ましくは10〜200MPaである。また、加熱温度は、40〜100℃が好ましい。その後に、積層体を所定の寸法に切断し、グリーンチップを形成する。グリーンチップ50aの寸法は、特に限定されないが、通常、縦(0.6〜5.6mm)×横(0.3〜5.0mm)×厚み(0.1〜1.9mm)程度である。
次に、グリーンチップに対して、脱バインダ処理、焼成処理、および誘電体層を再酸化するための熱処理を行う。
昇温速度:5〜300℃/時間、特に10〜50℃/時間、
保持温度:200〜800℃、特に350〜600℃、
保持時間:0.5〜20時間、特に1〜10時間、
雰囲気 :加湿したN2 とH2 との混合ガス。
昇温速度:50〜500℃/時間、特に200〜300℃/時間、
保持温度:1100〜1300℃、特に1150〜1250℃、
保持時間:0.5〜8時間、特に1〜3時間、
冷却速度:50〜500℃/時間、特に200〜300℃/時間、
雰囲気ガス:加湿したN2 とH2 との混合ガス等。
冷却速度:50〜500℃/時間、特に100〜300℃/時間、
雰囲気用ガス:加湿したN2 ガス等。
得られた焼結体(図1のコンデンサ素体4)の側面に対して、例えばバレル研磨、サンドプラスト等にて研磨を施す。この研磨によって、焼成処理、あるいは熱処理において酸化した内部電極層12の端部を除去し、酸化していない内部電極層12を焼結体の側面に露出させる。その結果、内部電極層12と、後工程で形成される各外部電極6、8との間に、導通不良が発生することを防止できる。
次に、バレル処理後の焼結体の側面に、外部電極用ペーストを焼きつけて、図1の外部電極6、8を形成する。外部電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したN2 とH2 との混合ガス中で600〜800℃にて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、外部電極6、8上にめっき等を行うことによりパッド層を形成する。なお、外部電極用ペーストは、上記した内部電極用ペーストと同様にして調製すればよい。
まず、以下の成分を所定の比率で混合して、誘電体原料を得た。BaTiO3(平均粒径0.2μm/堺化学工業社製BT02粉):100mol%、Y2O3 :2.0mol%、MgO:2.0mol%、MnO:0.4mol%、V2O5 :0.1mol%、(Ba0.6Ca0.4)SiO3 :3.0mol%。
試料2においては、可塑剤として、DOPの構造異性体であるフタル酸ジノルマルオクチル(略記号:DNOP)を用いた。なお、用いたフタル酸ジノルマルオクチルは、化学式C6H4(COOC8H17)2 で表される。すなわち、フタル酸ジノルマルオクチルは、エステル基として、2つのCOOC8H17 基を有する。これらのエステル基はそれぞれ、炭化水素基Rとして、ノルマルオクチル基C8H17 を有する。この炭化水素基Rは、化学式CnH2n+1 (炭素数n=8)で表される直鎖状アルキル基である。
試料3においては、可塑剤として、フタル酸ジメチル(略記号:DMP)を用いた。なお、用いたフタル酸ジメチルは、化学式C6H4(COOCH3)2 で表される。すなわち、フタル酸ジメチルは、エステル基として、2つのCOOCH3 基を有する。これらのエステル基はそれぞれ、炭化水素基Rとして、メチル基CH3 を有する。この炭化水素基Rは、化学式CnH2n+1 (炭素数n=1)で表されるアルキル基である。
試料4においては、可塑剤として、フタル酸ジエチル(略記号:DEP)を用いた。なお、用いたフタル酸ジエチルは、化学式C6H4(COOC2H5)2 で表される。すなわち、フタル酸ジエチルは、エステル基として、2つのCOOC2H5 基を有する。これらのエステル基はそれぞれ、炭化水素基Rとして、エチル基C2H5 を有する。この炭化水素基Rは、化学式CnH2n+1 (炭素数n=2)で表されるアルキル基である。
試料5においては、可塑剤として、フタル酸ジブチル(略記号:DBP)を用いた。なお、用いたフタル酸ジブチルは、化学式C6H4(COOC4H9)2 で表される。すなわち、フタル酸ジブチルは、エステル基として、2つのCOOC4H9 基を有する。これらのエステル基はそれぞれ、炭化水素基Rとして、ブチル基C4H9 を有する。この炭化水素基Rは、化学式CnH2n+1 (炭素数n=4)で表されるアルキル基である。
試料6においては、可塑剤として、フタル酸ジイソノニル(略記号:DINP)を用いた。なお、用いたフタル酸ジイソノニルは、化学式C6H4(COOC9H19)2 で表される。すなわち、フタル酸ジイソノニルは、エステル基として、2つのCOOC9H19 基を有する。これらのエステル基はそれぞれ、炭化水素基Rとして、ノニル基C9H19 を有する。この炭化水素基Rは、化学式CnH2n+1 (炭素数n=9)で表されるアルキル基である。
試料7においては、可塑剤として、フタル酸ジイソデシル(略記号:DIDP)を用いた。なお、用いたフタル酸ジイソデシルは、化学式C6H4(COOC10H21)2 で表される。すなわち、フタル酸ジイソデシルは、エステル基として、2つのCOOC10H21 基を有する。これらのエステル基はそれぞれ、炭化水素基Rとして、デシル基C10H21を有する。この炭化水素基Rは、化学式CnH2n+1 (炭素数n=10)で表されるアルキル基である。
試料8においては、可塑剤として、フタル酸ジトリデシル(略記号:DTDP)を用いた。なお、用いたフタル酸ジトリデシルは、化学式C6H4(COOC13H27)2 で表される。すなわち、フタル酸ジトリデシルは、エステル基として、2つのCOOC13H27 基を有する。これらのエステル基はそれぞれ、炭化水素基Rとして、トリデシル基C13H27 を有する。この炭化水素基Rは、化学式CnH2n+1 (炭素数n=13)で表されるアルキル基である。
試料9においては、可塑剤として、フタル酸ベンジルブチル(略記号:BBP)を用いた。なお、用いたフタル酸ベンジルブチルは、化学式C6H4(COOC4H9)(COOCH2C6H5)で表される。すなわち、フタル酸ベンジルブチルは、2つの異なるエステル基として、COOC4H9 基およびCOOCH2C6H5 基を有する。エステル基COOC4H9はブチル基C4H9 を有し、エステル基COOCH2C6H5はベンジル基CH2C6H5 を有する。
試料12においては、1次調合の段階で、誘電体粉末に対して可塑剤を添加した。それ以外は試料1と同様の条件で、試料12の積層セラミックコンデンサを作製した。
シート光沢度の測定
グリーンシートのサンプル5枚に対して、シート光沢度(単位:%)を測定し、その平均値を求めた。シート光沢度は、光沢度計(日本電飾工業(株)製VGS−1D)を用いて、角度60°で測定した。シート光沢度が大きい程、グリーンシートの表面は平滑である。
グリーンシートのサンプル5枚に対して、シート表面粗さ(Ra)を測定し、その平均値を求めた。シート表面粗さ(単位:μm)は、サーフコーダー(小阪研究所(株)製SE−30D)を用いて測定した。シート表面粗さが小さい程、グリーンシートの表面は平滑である。
積層体ユニットのサンプル2個をプレスして得た積層体(プレスしたスタック体)5個に対して、スタック力(単位:N/cm2)を測定して、その平均値を求めた。なお、測定では、インストロン5543の引張試験機を用いた。また、スタック力とは、積層体において、層間(グリーンシートと内部電極層との間、あるいはグリーンシート間)に剥離を生じさせるために要する力である。スタック力が大きい程、層間(グリーンシート)の接着性が良い。
積層体ユニットのサンプル5個に対して、キャリアシートの剥離強度(単位:N/cm)を測定し、その平均値を求めた。剥離強度の測定では、積層体ユニットにおけるキャリアシートの一端を、積層体ユニットの積層面に対して90度の方向に、8mm/分の速度で引き上げ、キャリアシートが、積層体ユニットから剥離する際に、キャリアシートに作用する力(N/cm)を測定した。この力をキャリアシートの剥離強度とした。剥離強度を低くすることにより、積層体ユニットからのキャリアシートの剥離を良好に行うことができ、また、剥離時における積層体ユニットの破損も有効に防止することができる。よって、剥離強度は、低い程好ましい。
積層体サンプルを切断してグリーンチップサンプルを形成した。切断の際に、層間の剥離が起こったグリーンチップの数を調べた。得られた全グリーンチップ数に対する、層間の剥離が起こったグリーンチップ数の割合(切断時不具合率、単位:%)を求めた。
加熱処理後の焼結体のサンプルに対して、割れの有無を調べた。得られた全サンプル数に対する、割れを起こしたサンプル数の割合(割れ不良率、単位:%)を求めた。
積層セラミックコンデンサのサンプル100個に対して、ショート不良率(単位:%)を測定した。測定では、絶縁抵抗計(HEWLETT PACKARD社製E2377Aマルチメーター)を使用した。測定においては、各サンプルの抵抗値を測定し、抵抗値が100kΩ以下となったサンプルを、ショート不良を起こしたサンプルとした。全測定サンプルに対する、ショート不良を起こしたサンプルの比率を、ショート不良率とした。
セラミックペーストが、一般式C6H4(COOR)(COOR’)で表されるフタル酸エステル系可塑剤を含み、炭化水素基Rに含まれる炭素数、および炭化水素基R’に含まれる炭素数の少なくともいずれかnが、8〜10である試料1、2、6、7においては、nが8未満の試料3〜5に比べて、シート光沢度が大きいことが確認された。また、試料1、2、6、7においては、試料3〜5に比べて、シート表面粗さが小さいことが確認された。すなわち、試料1、2、6、7においては、試料3〜5に比べて、グリーンシートの表面平滑性が優れていることが確認された。
セラミックペーストにおける可塑剤の含有量を、表3に示す値としたこと以外は、試料1と同様の条件で、試料13〜19の積層セラミックコンデンサを作製した。また、試料13〜19に対して、試料1と同様の測定を行った。結果を表4に示す。
試料15〜17においては、セラミックペーストにおけるフタル酸エステル系可塑剤の含有量を、バインダ樹脂(アクリル樹脂)100重量部に対して、30PHRより大きく80PHRより小さくした(すなわち、40〜70PHRとした)。試料15〜17においては、試料13、14、18、19に比べて、シート光沢度が大きいことが確認された。また、試料15〜17においては、試料18、19に比べて、シート表面粗さが小さいことが確認された。すなわち、試料15〜17においては、試料13、14、18、19に比べて、グリーンシートの表面平滑性が優れていることが確認された。
4… コンデンサ素体
6… 第1外部電極
8… 第2外部電極
10… 誘電体層
10a… グリーンシート
12、12a… 内部電極層
U… 積層体ユニット
Claims (8)
- バインダ樹脂と、
一般式C6H4(COOR)(COOR’)で表されるフタル酸エステル系可塑剤と、を含み、
前記バインダ樹脂がアクリル樹脂であり、
前記一般式C6H4(COOR)(COOR’)において、炭化水素基Rに含まれる炭素数、および炭化水素基R’に含まれる炭素数の少なくともいずれかが、8〜10であり、
前記セラミックペーストにおける前記フタル酸エステル系可塑剤の含有量が、前記バインダ樹脂100重量部に対して、30重量部より大きく80重量部より小さいセラミックペーストであって、
前記セラミックペーストが、
平均粒径が0.1〜0.3μmであるセラミック粉体と、分散剤とを含む混合物(前記バインダ樹脂および前記フタル酸エステル系可塑剤を除く)を分散処理する工程と、
分散処理後の前記混合物に対して、前記バインダ樹脂および前記フタル酸エステル系可塑剤を同時に添加する工程と、を有する製造方法により得られることを特徴とするセラミックペースト。 - 前記一般式C6H4(COOR)(COOR’) において、エステル基COORと、エステル基COOR’とが同一であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックペースト。
- 前記炭化水素基R、および前記炭化水素基R’の少なくともいずれかが、アルキル基であることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミックペースト。
- セラミック粉体と、分散剤と、バインダ樹脂と、一般式C6H4(COOR)(COOR’)で表されるフタル酸エステル系可塑剤と、を含むセラミックペーストの製造方法であって、
前記バインダ樹脂がアクリル樹脂であり、
前記セラミック粉体の平均粒径が0.1〜0.3μmであり、
前記一般式C6H4(COOR)(COOR’)において、炭化水素基Rに含まれる炭素数、および炭化水素基R’に含まれる炭素数の少なくともいずれかが、8〜10であり、
前記セラミックペーストにおける前記フタル酸エステル系可塑剤の含有量が、前記バインダ樹脂100重量部に対して、30重量部より大きく80重量部より小さく、
前記セラミック粉体と、前記分散剤とを含む混合物(前記バインダ樹脂および前記フタル酸エステル系可塑剤を除く)を分散処理する工程と、
分散処理後の前記混合物に対して、前記バインダ樹脂および前記フタル酸エステル系可塑剤を同時に添加する工程と、を有することを特徴とするセラミックペーストの製造方法。 - 前記一般式C6H4(COOR)(COOR’) において、エステル基COORと、エステル基COOR’とが同一であることを特徴とする請求項4に記載のセラミックペーストの製造方法。
- 前記炭化水素基R、および前記炭化水素基R’の少なくともいずれかが、アルキル基であることを特徴とする請求項4または5に記載のセラミックペーストの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックペーストを用いてグリーンシートを形成する工程を有する積層セラミック電子部品の製造方法。
- 前記グリーンシートの乾燥後の厚みが3μm以下であることを特徴とする請求項7に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
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