JP4764560B2 - 被覆材料及び電線もしくはケーブル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の多層構造重合体粒子を含有する被覆材料、及び該被覆材料により被覆されている電線、電力ケーブル又は通信ケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電線などにおいてその導体金属の被覆材として、塩化ビニル系樹脂が中心に用いられてきた。その理由として、塩化ビニル系樹脂は可撓性(柔軟性)などの物性が適切であり、施工も容易におこなわれることが挙げられる。しかしながら、電線、電力ケーブル、通信ケーブルなどは、屋外に配置される場合も想定され、この場合耐候性の面で塩化ビニル系樹脂は市場の要求を十分満足できるものではなかった。
さらに、塩化ビニル系樹脂は分子中に塩素を多量に含むため、環境に対する負荷が大きいことが懸念され、有効な代替材料が求められている。
【0003】
塩化ビニル系樹脂以外の電線被覆材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂が検討されている。しかし、このようなオレフィン系樹脂を用いた被覆層は、従来の塩化ビニル系樹脂からなる被覆材に比べ、可撓性、印刷性、難燃剤や充填剤の分散性に劣るため、施工しにくいという欠点がある。
一方、耐熱性に優れ、廃棄時の焼却負荷が小さい、ポリエステル系樹脂も電線被覆材料としての応用が進められている。しかしポリエステル系樹脂は可撓性に乏しく、電線の加工における変形への追従性が低いという欠点を有する。そのため、加工作業時に過大な労力が必要となるうえ、さらに繰り返し変形させることによって、極めて脆弱となって破壊した部分の導体金属が露出し、漏洩事故に発展する危険性を孕んでいる。
このような現状から、塩化ビニル系樹脂に匹敵する可撓性、施工性を有し、かつ廃棄時の環境への負荷が小さい電線被覆材料が市場では求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、塩化ビニル系樹脂と同等の可撓性、施工性を有し、かつ廃棄時の環境への負荷が小さく、しかも耐候性にも優れる被覆材料、及び該被覆材料で被覆された電線、電力ケーブル又は通信ケーブルを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、被覆材料の構成成分として特定の多層構造重合体粒子を用いることにより、塩化ビニル系樹脂と同等の可撓性、施工性を有し、かつ廃棄時の環境への負荷が小さく、さらに耐候性に優れた被覆材料が得られ、それを用いて得られた電線、電力ケーブル、通信ケーブルが、屋外で使用された場合においても優れた耐久性を有すること
を見出し本発明を完成した。
【0006】
かかる本発明は、
(1)少なくとも1つの下記ゴム成分層(I)を内部に有し、かつ少なくとも1つの下記熱可塑性樹脂成分層(II)を少なくとも最外部に有する、2以上の層からなる多層構造重合体粒子であって;
(2)ゴム成分層(I)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能でメタクリル酸エステル、芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体から選ばれる単官能性単量体49.99〜0質量%及び多官能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物(i)の共重合によって形成される重合体層であり;
(3)熱可塑性樹脂成分層(II)は、メタクリル酸エステル40〜100質量%及び該メタクリル酸エステルと共重合可能でアクリル酸と脂肪族アルコールとのエステル、アクリル酸とC5もしくはC6脂環式アルコールとのエステル、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及びマレイミド系単量体から選ばれる単量体60〜0質量%からなる単量体(ii)の重合によって形成される重合体層であり;
(4)熱可塑性樹脂成分層(II)のうち最外部に位置する層を構成する重合体について、GPC法で測定された数平均分子量は1,000以上30,000以下であり;
(5)ゴム成分層(I)の総質量と熱可塑性樹脂成分層(II)の総質量との比は、層(I)/層(II)において30/70〜90/10の範囲であり;
(6)レーザー粒径解析装置により求めた平均粒子径が30nm以上150nm以下である;
多層構造重合体粒子を含有し、JIS−A硬度が65以上90以下である被覆材料で被覆された電線に関する。
【0007】
本発明はまた、上記被覆材料で被覆された電線、電力ケーブル又は通信ケーブルに関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明で使用する多層構造重合体粒子は、ゴム成分層(I)を内部に少なくとも1層有し、かつ熱可塑性樹脂成分層(II)を少なくとも最外層として有する。本発明で使用する多層構造重合体粒子を構成する層の数は、2層以上であればよく、3層で構成されていても4層以上で構成されていてもよい。2層構造の場合は、層(I)(中心層)/層(II)(最外層)の構成であり、3層構造の場合は、層(I)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)、層(I)(最内層)/層(II)(中間層)/層(II)(最外層)又は層(II)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)の構成であり、4層構造の場合には、例えば、層(I)(最内層)/層(II)(中間層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)の構成を有することができる。これらの中でも、取扱い性に優れる点において、層(I)(中心層)/層(II)(最外層)の2層構造;又は層(I)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)若しくは層(II)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)の3層構造が好ましい。
【0009】
本発明で使用する多層構造重合体粒子を構成するゴム成分層(I)は、本発明の被覆材料に柔軟性を付与する。
本発明で使用する多層構造重合体粒子を構成する、熱可塑性樹脂成分層(II)は、本発明の被覆材料に耐候性、耐熱性、耐傷つき性を付与する。さらに、多層構造重合体粒子又はそれを含有する組成物に適度な流動性を与えることで、その溶融混練性、押出成形性を良好なものとする。さらに溶融状態の多層構造重合体粒子又はそれを含有する組成物に溶融張力を与え、被覆された金属線を高速で引き取った場合でも切れることがなく、高速での引取りを可能にする。高速で引き取ることが可能であるため、該被覆材料で被覆された電線やケーブルの生産性は高いものになる。
【0010】
層(I)と層(II)の総質量比は、(I)/(II)において30/70〜90/10の範囲内である必要がある。層(I)の割合がこの範囲より小さいと多層構造重合体粒子を成形して得られる成形品における弾性回復性が不十分となる上、ダイ吐出後の形状安定性が損なわれるため、好ましくない。反対に層(I)の割合がこの範囲より大きいと層構造を完全な形態では形成しにくくなり、溶融流動性が極端に低下してしまうため、混練が困難となる。なお、層(I)の総質量とは、多層構造重合体粒子中の層(I)が1層のみの場合には該層の質量であり、層(I)が2層以上の場合にはそれらの層の質量の和である。同様に、層(II)の総質量とは、多層構造重合体粒子中の層(II)が1層のみの場合には該層の質量であり、層(II)が2層以上の場合にはそれらの層の質量の和である。層(I)と層(II)の総質量比は、(I)/(II)において50/50〜90/10の範囲内であるのが好ましく、60/40〜80/20の範囲内であるのがより好ましい。
【0011】
本発明で使用する多層構造重合体粒子における層(I)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、好ましくは55〜99.9質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%、好ましくは44.9〜0質量%、及び多官能性単量体0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜2質量%を含む単量体混合物(i)の共重合によって形成されるゴム弾性を有する重合体層である。
【0012】
層(I)を形成するために用いられるアクリル酸エステルの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート等のアクリル酸と脂肪族アルコールとのエステル、例えばC1〜C18の飽和脂肪族アルコールとのエステル;シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸とC5又はC6の脂環式アルコールとのエステル;フェニルアクリレート等のアクリル酸とフェノール類とのエステル;ベンジルアクリレート等のアクリル酸と芳香族アルコールとのエステルなどが挙げられる。
【0013】
アクリル酸エステルは、層(I)(多層構造重合体粒子が2以上の層(I)を有する場合には、それぞれの層(I))を形成するために用いられる単量体混合物(i)に対して50〜99.99質量%の範囲において、単独で又は2種以上混合して用いられる。アクリル酸エステルの量が50質量%より少ないと多層構造重合体粒子のゴム弾性が低下することになり、また、99.99質量%を超えると多層構造重合体粒子の構造が形成されなくなるので、いずれも好ましくない。
【0014】
層(I)を形成するために用いられる多官能性単量体は、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する単量体であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸等の不飽和モノカルボン酸とアリルアルコール、メタリルアルコール等の不飽和アルコールとのエステル;前記の不飽和モノカルボン酸とエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等のグリコールとのジエステル;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸等のジカルボン酸と前記の不飽和アルコールとのエステル等が包含され、具体的には、アクリル酸アリル、アクリル酸メタリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸メタリル、桂皮酸アリル、桂皮酸メタリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性単量体の中でも、メタクリル酸アリルが特に好ましい。なお、前記の「ジ(メタ)アクリレート」は、「ジアクリレート」と「ジメタクリレート」との総称を意味する。
【0015】
多官能性単量体は、層(I)(多層構造重合体粒子が2以上の層(I)を有する場合には、それぞれの層(I))を形成するために用いられる単量体混合物(i)に対して0.01〜10質量%の範囲において、単独で又は二種以上を組み合わせて用いられる。多官能性単量体の量が、10質量%より多いと、多層構造重合体粒子がゴム弾性を示さなくなり、弾性回復性が不十分となるので好ましくない。また、多官能性単量体の量が0.01質量%より少ないと、層(I)が粒子構造として形成されなくなるので好ましくない。
【0016】
層(I)を形成するためには、アクリル酸エステル及び多官能性単量体以外に、アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体を併用することができる。該他の単官能性単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート等のメタクリル酸と脂肪族アルコールとのエステル、例えばC1〜C22の飽和脂肪族アルコールとのエステル;シクロヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸とC5又はC6の脂環式アルコールとのエステル;フェニルメタクリレート等のメタクリル酸とフェノール類とのエステル、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸と芳香族アルコールとのエステルなどのメタクリル酸エステルが代表的であるが、他にも、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチル−3−エチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、3−メチル−1,3−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、シクロペンタジエン、クロロプレン、ミルセン等の共役ジエン系単量体等が挙げられる。
【0017】
これらの他の単官能性単量体は、必要に応じて、層(I)(多層構造重合体粒子が2以上の層(I)を有する場合には、それぞれの層(I))を形成するために用いられる単量体混合物(i)に対して49.99質量%以下の割合において、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。上記の他の単官能性単量体の割合が49.99質量%を超える場合は、多層構造重合体粒子の耐候性が不十分となるので好ましくない。
【0018】
本発明で使用する多層構造重合体粒子における層(II)は、メタクリル酸エステル40〜100質量%、好ましくは60〜99質量%、さらに好ましくは80〜99質量%及びそれと共重合可能な他の単量体60〜0質量%、好ましくは40〜1質量%、さらに好ましくは20〜1質量%からなる単量体(ii)の重合によって形成される熱可塑性を有する重合体層である。メタクリル酸エステルの量が40質量%未満であると多層構造重合体粒子の耐候性が不十分となる。
【0019】
層(II)を形成するために用いられるメタクリル酸エステルの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等が挙げられ、好ましくはメチルメタクリレートである。
【0020】
層(II)を形成するために用いられる共重合可能な他の単量体の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート等のアクリル酸と脂肪族アルコールとのエステル、例えばC1〜C18の飽和脂肪族アルコールとのエステル;シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸とC5又はC6の脂環式アルコールとのエステル;スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミド、N−(クロロフェニル)マレイミド等のマレイミド系単量体;前記例で示した多官能性単量体等が挙げられる。これらの中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0021】
本発明で使用する多層構造重合体粒子においては、その中に含有される層(II)のうち少なくとも粒子の最外層を構成する共重合体の数平均分子量がGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法での測定に基づいて30,000以下であることが重要である。数平均分子量が30,000を超える場合、多層構造重合体粒子を成形して得た成形品における弾性回復性が不十分となり、さらに溶融流動性が低下する場合もある。数平均分子量の下限については、必ずしも厳密な制限はないが、生産工程におけるの多層構造重合体粒子の工程通過性の点からは、数平均分子量は1,000を下回らないことが好ましい。弾性回復性及び生産工程での工程通過性の両立の点からは、数平均分子量を3,000〜20,000の範囲内とすることが特に好ましい。
【0022】
本発明で使用する多層構造重合体粒子の平均粒子径は、150nm以下である。150nmより大きいと弾性回復性が不十分となる。平均粒子径の下限値については特に限定されるものではないが、多層構造重合体粒子の所定の層構造を形成させやすい観点からは、平均粒子径は30nm以上であることが好ましい。平均粒子径は80〜120nmであることがより好ましい。
【0023】
本発明に用いられる多層構造重合体粒子は、物性面および製造簡便性の点からゴム成分層(I)が層(Ia)及び層(Ib)からなり、最内部にゴム成分層(Ia)を有し、該最内部の外部表面を覆う状態で位置する隣接部にゴム成分層(Ib)を有し、かつ最外部に熱可塑性樹脂成分層(II)を有する3層構造の多層構造重合体粒子であるのが好ましい。
【0024】
上記の好適な多層構造重合体粒子における層(Ia)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、好ましくは55〜99.9質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%、好ましくは44.9〜0質量%、及び多官能性単量体0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜2質量%からなる単量体混合物(ia)の共重合によって形成されるゴム弾性を有する重合体層である。また、層(Ib)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、好ましくは55〜99.9質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%、好ましくは44.9〜0質量%、及び多官能性単量体0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜2質量%からなる単量体混合物(ib)の共重合によって形成されるゴム弾性を有する重合体層である。層(Ia)および層(Ib)を形成するためには前述の層(I)を形成するのに用いた単量体を使用することができる。
【0025】
好ましい層構成である3層構造の多層構造重合粒子においては、ゴム成分層(Ia)及び(Ib)の質量の和と熱可塑性樹脂成分層(II)の質量との比は、〔(Ia)+(Ib)〕/(II)において、30/70〜90/10の範囲内であることが必要である。層(Ia)及び層(Ib)の質量の和の割合がこの範囲より小さいと弾性回復性及び柔軟性が不十分となり、一方層(Ia)及び層(Ib)の質量の和の割合がこの範囲より大きいと層構造を完全な形態では形成しにくくなり、溶融流動性が極端に低下してしまうため成形時の混練が困難となる。本発明の効果をより顕著なものとする目的においては、ゴム成分層(Ia)及び(Ib)の質量の和と熱可塑性樹脂成分層(II)の質量との比は、〔(Ia)+(Ib)〕/(II)において、50/50〜90/10の範囲内であることが好ましく、60/40〜80/20の範囲内であることがより好ましい。
【0026】
ゴム成分層(Ia)の質量とゴム成分層(Ib)の質量との比は、(Ia)/(Ib)において、5/95〜95/5の範囲内であることが好ましく、20/80〜80/20の範囲内であることがより好ましい。ゴム成分層(Ia)の質量とゴム成分層(Ib)の質量との比が5/95〜95/5の範囲内にある場合、一般に、良好な柔軟性とこれ以外の機械的物性とを両立させることが可能になる。
【0027】
また、良好な柔軟性とこれ以外の機械的物性とを両立させるには、さらに、単量体混合物(ia)におけるアクリル酸エステルの含有率(質量%)と単量体混合物(ib)におけるアクリル酸エステルの含有率(質量%)との差〔(ib)(単位:質量%)−(ia)(単位:質量%)又は(ia)(単位:質量%)−(ib)(単位:質量%)〕が3質量%以上の値、好ましくは4〜30質量%の範囲内の値となることが一般に望ましい。
【0028】
本発明に用いられる多層構造重合体粒子は、ゴム成分層(I)を形成させるための重合反応工程と熱可塑性樹脂成分層(II)を形成させるための重合反応工程とを所定の順序で行うことによって、中心部から外部に向かって順次層を形成させることからなる、少なくとも1つのゴム成分層を内部に有し、かつ少なくとも1つの熱可塑性樹脂成分層を少なくとも最外部に有する、2つ以上の層からなる多層構造重合体粒子を製造するための公知の製造方法に準じて、製造することができる。ただし、その際、以下の点に留意する必要がある。
【0029】
(1)ゴム成分層(I)を形成させるための重合反応工程(a)において、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%及び多官能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物(i)を共重合させること。
(2)熱可塑性樹脂成分層(II)を形成させるための重合反応工程(b)において、メタクリル酸エステル40〜100質量%及び該メタクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体60〜0質量%からなる単量体(ii)を重合させること。
【0030】
(3)該重合反応工程(b)のうち、少なくとも、最外部の熱可塑性樹脂成分層(II)を形成させるための重合反応工程において、分子量調節剤を単量体(ii)に対して0.4〜10質量%の範囲内となる割合で使用して重合反応を行うこと。
(4)全重合反応工程で使用する単量体混合物(i)の総質量と単量体(ii)の総質量との比を、単量体混合物(i)/単量体(ii)において30/70〜90/10の範囲内とすること。
(5)全ての重合反応工程が終了した時点における多層構造重合体粒子の平均粒子径が150nm以下となるように制御すること。
【0031】
本発明に用いられる多層構造重合体粒子の製造のための重合法については特に制限はなく、例えば、通常の多層構造重合体粒子を製造するための公知の重合法に準じて、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、またはこれらの組み合わせを採用することができる。
【0032】
例えば、乳化重合では公知の手段に従い、各層を形成させるための重合を行うことにより、本発明の多層構造重合体粒子を得ることができる。乳化重合の温度としては、必ずしも限定されないが一般的な範囲は0〜100℃である。ここで使用する乳化剤としては、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸のアルカリ金属塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪アルコールの硫酸エステル塩;ロジン酸カリウム等のロジン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルアリールスルホン酸等が挙げられ、これらは、1種類ないし2種類以上の組み合わせで用いられる。乳化重合によって得られる多層構造重合体粒子の平均粒子径は乳化剤の添加量等の重合条件によって影響されるので、それらの条件を適宜選択することによって、容易に最終的な多層構造重合体粒子の平均粒子径を150nm以下に制御することができる。
【0033】
乳化重合で使用する重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が一般的である。ラジカル重合開始剤の具体例としては、過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物を単独で用いることができる。また、ラジカル重合開始剤として、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機ハイドロパーオキサイド類と、遷移金属塩等の還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤を使用することもできる。
【0034】
上記のとおり、公知の乳化重合法に従って所定の単量体混合物の所定量を順次重合させることにより、所定の重合体層を、粒子の中心部から外部に向かって段階的に形成させることができるが、本発明に用いられる多層構造重合体粒子を製造するためには、少なくとも最外層を形成させるための重合反応工程において、分子量調節剤を、その工程で使用する単量体(ii)に対して0.4〜10質量%の範囲内となる割合で使用することが特に重要である。通常の多層構造重合体粒子を製造する場合、最外部の熱可塑性樹脂成分層を形成させるための重合反応において使用される分子量調節剤の使用量は、一般に単量体に対して0〜0.3質量%程度であるが、このように0.4質量%未満の場合には、その層を構成する熱可塑性樹脂成分の数平均分子量が高くなり過ぎ、多層構造重合体粒子又はそれと他の合成樹脂との樹脂組成物を成形して得られる成形品の柔軟性が不十分となり、さらに成形流動性が不十分となる場合もある。本発明の目的においては分子量調節剤の量は上記基準において高々10質量%あれば十分であり、それ以上の量を使用しても、もはやそれ以上の柔軟性付与効果の向上はなく、寧ろ多層構造重合体粒子における分子量調節剤の残存量が多くなるので望ましくない。分子量調節剤は、単量体(ii)に対して0.4〜5質量%、より好ましくは0.6〜2質量%の範囲内となる割合で用いることが望ましい。
【0035】
分子量調節剤の具体例としては、例えばn−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類;ターピノーレン、ジペンテン、t−テルピネン及び少量の他の環状テルペン類よりなるテルペン混合物;クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。これらの中でも、n−オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタンが好ましい。
【0036】
乳化重合後、生成した多層構造重合体粒子の重合反応系からの分離取得も、公知の手法に従って行うことができ、例えば、酸析法、塩析法、スプレードライ法、凍結凝固法などを採用することができる。
【0037】
本発明で使用する多層構造重合体粒子は、単独で被覆材料として用いてもよく、また、さらに他の合成樹脂を配合することにより、本発明の被覆材料に該合成樹脂の性能を付加することができる。多層構造重合体粒子と他の合成樹脂とからなる樹脂組成物において、本発明で使用する多層構造重合体粒子本来の優れた弾性回復性、適度の可撓性及び良好な機械的物性を活かしながら、さらに他の合成樹脂に由来する流動性、成形加工性、機械的強度などの好ましい性能を発現させる目的からは、多層構造重合体粒子と他の合成樹脂の質量比を、多層構造重合体粒子/他の合成樹脂において50/50〜95/5、好ましくは60/40〜95/5、より好ましくは70/30〜95/5の範囲内とすることが望ましい。
【0038】
他の合成樹脂としては特に制限はなく、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれも使用できるが、成形加工が容易であることから熱可塑性樹脂の使用が好ましい。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネン等のポリオレフィン系樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、ABS、AES(アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体)、AAS(アクリロニトリル−アクリレート−スチレン共重合体)、ACS(アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン樹脂)、MBS等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、他のアクリル系多層構造重合体粒子等のアクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマー等のポリアミド樹脂;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリアセタール;ポリフッ化ビニリデン;ポリウレタン;変性ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンスルフィド;シリコーンゴム変性樹脂等が挙げられる。これらの中で、特に、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、他のアクリル系多層構造重合体粒子等のアクリル系樹脂が好ましく用いられる。
【0039】
本発明で使用する多層構造重合体粒子には、該重合体粒子もしくはそれを含有する組成物又はそれらで被覆された電線もしくはケーブルの被覆材の物性を改善するための物性改善剤の1種又は2種以上を、所望に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、配合してもよい。かかる物性改善剤としては、特に制限はなく、例えば、充填剤、安定剤、老化防止剤、耐候性向上剤、紫外線吸収剤、可塑剤、軟化剤、滑剤、加工助剤、顔料、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、ブロッキング防止剤等が挙げられる。これらは単独で又は複数組み合わせて使用可能である。
【0040】
上記配合は、例えば、本発明で使用する多層構造重合体粒子、及び所望に応じて使用される他の合成樹脂及び/又は添加剤を、溶融混練条件下で十分に混合することにより行うことができる。これによって得られる組成物も本発明の被覆材料である。したがって、本発明の被覆材料は上記多層構造重合体粒子単独からなっいてもよいし、上記組成物からなっていてもよい。
【0041】
また、本発明の被覆材料は、JIS−A硬度が90以下であることが必要であり、85以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましい。JIS−A硬度が90を超えると被覆材料の可撓性が不足し、金属線の変形に追従できなくなるうえ、繰り返し変形させることによって、極めて脆弱となり破壊する恐れがある。また、該JIS−A硬度は65以上であることが好ましい。
【0042】
本発明の被覆材料により被覆する対象については特に制限されないが、電線、電力ケーブル、通信ケーブルなどを構成する電線被覆材料として用いることが好適である。
本発明の被覆材料で被覆された電線、電力ケーブル又は通信ケーブルの製造方法については特に制限されないが、これらは通常、押出機を使用して、本発明で使用される多層構造重合体粒子又はこれに他の合成樹脂及び/又は添加剤配合した組成物を、銅線、鉄線などの金属導体上に押出して該導体に直接被覆することにより製造することができる。金属導体としては単線、撚り線のいずれも用いることができる。製造された電線は単線で使用する他、撚り合わせたり、テープ等で束ねて使用してもよい。押出機本体としては一般に単軸スクリュー型押出機が用いられる。この押出機による電線の被覆加工の方法の一例を以下に示す。
まず、樹脂被覆を施すべき導体を押出機のクロスヘッドに導入する。一方、被覆用樹脂はホッパから押出機のシリンダ内に供給され、押出機内で溶融混練がおこなわれ、クロスヘッドに送られる。クロスヘッドの先端には所定の肉厚に被覆を施すための金型としてダイ(雌型)およびニップル(雄型)が設けられており、これらニップル、ダイの間に押出されて導体に樹脂が被覆される。
【0043】
【実施例】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例の中の各測定値は以下の評価法に従った。
多層構造重合体粒子の平均粒子径は、重合完了後のラテックスから採取した試料を用いて、レーザー粒径解析装置PAR−III(大塚電子製)を用いて動的光散乱法により測定し、キュムラント法により解析し求めた。
多層構造重合体粒子の最外層を構成する重合体成分の数平均分子量は、多層構造重合体粒子の試料を室温下にトルエン中で十分に攪拌した後、遠心分離して得られた溶液を用いて、GPC法により測定し、これにより得られた値を本発明においては最外層を構成する重合体の数平均分子量とみなした。
【0044】
シートのJIS−A硬度は、A型硬度計(オスカー製)を用いて、JIS K6301に準じて測定した。
シートの耐候性は、スガ試験機製のサンシャインウェザーメーターS80を用い、ブラックパネル温度63℃、湿度50%、スプレーサイクル18分/2時間の条件下で、2000時間の促進暴露試験を行い、試験前と試験後におけるヘイズ値(%)及び黄変度(b値)を測定し、これらの値の変化で判断した。
【0045】
[物性測定用試験片(シート)の作製方法]
実施例、比較例で用いた被覆材料をφ40mmの単軸押出機から20kg/hrの割合で押出し、幅200mmのシート製造用ダイに導いてシート状に変形させ、その後ダイから吐出した溶融樹脂を全板厚が1.0mm厚になるように調整したポリッシングロールを通過させることにより、シートの冷却および鏡面仕上げを行い、目的とするシートを得た。得られたシートを試験片を切り出し、物性試験に供した。
【0046】
[電線被覆押出加工]
φ50mm、L/D=24の単軸押出機に、内径1.8mmφのクロスヘッドダイを取り付け、直径1.0mmの銅線上に、加工速度500m/分で、厚さ約0.3mmの被覆をおこなった。各種物性の評価は次のとおり実施した。
【0047】
(1)加工性:φ50mm、L/D=24の押出機を使用して、加工速度を500m/分での、仕上がり被覆ケーブルの表面状態を目視観察した。表面荒れがなく平滑なものを「○」とし、表面にややざらつきのあるものを「△」表面荒れが著しいものを「×」とした。
(2)可撓性:上記被覆ケーブルを手で屈曲させたときの感触を示した。屈曲させた時に、元の表面状態にすぐ復元するものを「○」、元の状態に復元するがわずかに屈曲させた痕が残るものを「△」、屈曲させた時にキンクが生じるもの、外力を取り除いた後も、著しく変形が生じているものを「×」とした。
【0048】
[多層構造重合体粒子の製造例]
窒素雰囲気下、攪拌翼、冷却管及び滴下ロートを装着した重合器に、蒸留水2800質量部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8.4質量部、炭酸ナトリウム1.7質量部を加え、80℃に加熱して均一に溶解させた。次いで、同温度において、ペルオキソ二硫酸カリウム0.7質量部を加えた後、n−ブチルアクリレート420質量部、メチルメタクリレート198質量部、スチレン82質量部、アリルメタクリレート2.8質量部及びポリオキシエチレンアルキルリン酸ナトリウム3.5質量部からなる混合物を滴下ロートより60分かけて滴下し、1層目を形成した。滴下終了後、80℃で、さらに1時間反応を続け、ガスクロマトグラフィーで各単量体が99%以上消費されたことを確認した。
次いで、得られた共重合体ラテックスにペルオキソ二硫酸カリウム0.35質量部を加えた後、n−ブチルアクリレート280質量部、メチルメタクリレート14質量部、スチレン56質量部、アリルメタクリレート1.4質量部及びポリオキシエチレンアルキルリン酸ナトリウム1.8質量部からなる混合物を滴下ロートより30分かけて滴下し、2層目を形成した。滴下終了後、80℃で、さらに1時間反応を続け、単量体が99%以上消費されたことをガスクロマトグラフィーで確認した。
【0049】
次いで、得られた共重合体ラテックスにペルオキソ二硫酸カリウム0.35質量部を加えた後、メチルメタクリレート334質量部、メチルアクリレート18質量部、n−オクチルメルカプタン3.5質量部及びポリオキシエチレンアルキルリン酸ナトリウム1.8質量部を滴下ロートより30分かけて滴下し、3層目を形成した。滴下終了後、80℃で、さらに1時間反応を続け、単量体が99.9%以上消費されたことをガスクロマトグラフィーで確認して重合を終了した。得られたラテックスにおける粒子の平均粒子径は100nmであった。
このラテックスを−30℃に24時間冷却して凍結凝集させた後、凝集物を融解させ取り出した。50℃で2日間減圧乾燥して、凝集粉末状の3層型の多層構造重合体粒子〔A〕を得た。
この多層構造重合体粒子〔A〕の物性値を表1に示す。
【0050】
【表1】
Figure 0004764560
【0051】
実施例1
多層構造重合体粒子〔A〕をシート押出設備又は電線被覆押出設備に供し、それぞれ試料を作製した。シート、被覆ケーブルの物性測定結果を表2に示す。
実施例2
多層構造重合体粒子〔A〕85質量部と硬質アクリル系樹脂、パラペットG((株)クラレ製)15質量部とをドライブレンドし、シート押出設備又は電線被覆押出設備に供し、それぞれ試料を作製した。シート、被覆ケーブルの物性測定結果を表2に示す。
【0052】
比較例1
軟質塩化ビニル樹脂としてビニカコンパウンドCE65GC(三菱化学MKV株式会社製)をシート押出設備又は電線被覆押出設備に供し、それぞれ試料を作製した。シート、被覆ケーブルの物性測定結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
Figure 0004764560
【0054】
【発明の効果】
特定の多層構造重合体粒子を含有する本発明の被覆材料は、塩化ビニル系樹脂とほぼ同等の可撓性、加工性を有し、環境負荷の小さい被覆材である。さらに耐候性においては、塩化ビニル系樹脂を凌駕する被覆材であるため、該被覆材料により被覆されたケーブルは、屋外に敷設された場合でも耐候劣化を生じにくいという利点を有する。
さらに本発明の被覆材料は従来の塩化ビニル系樹脂を想定した成形設備と同様の設備で成形が可能であり、新たな設備投資を必要としないという利点も有する。

Claims (3)

  1. (1)少なくとも1つの下記ゴム成分層(I)を内部に有し、かつ少なくとも1つの下記熱可塑性樹脂成分層(II)を少なくとも最外部に有する、2以上の層からなる多層構造重合体粒子であって;
    (2)ゴム成分層(I)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能でメタクリル酸エステル、芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体から選ばれる単官能性単量体49.99〜0質量%及び多官能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物(i)の共重合によって形成される重合体層であり;
    (3)熱可塑性樹脂成分層(II)は、メタクリル酸エステル40〜100質量%及び該メタクリル酸エステルと共重合可能でアクリル酸と脂肪族アルコールとのエステル、アクリル酸とC5もしくはC6脂環式アルコールとのエステル、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及びマレイミド系単量体から選ばれる単量体60〜0質量%からなる単量体(ii)の重合によって形成される重合体層であり;
    (4)熱可塑性樹脂成分層(II)のうち最外部に位置する層を構成する重合体について、GPC法で測定された数平均分子量は1,000以上30,000以下であり;
    (5)ゴム成分層(I)の総質量と熱可塑性樹脂成分層(II)の総質量との比は、層(I)/層(II)において30/70〜90/10の範囲であり;
    (6)レーザー粒径解析装置により求めた平均粒子径が30nm以上150nm以下である;
    多層構造重合体粒子を含有し、JIS−A硬度が65以上90以下である被覆材料で被覆された電線。
  2. 該被覆材料が該多層構造重合体粒子とポリオレフィン系樹脂、エチレン系アイオノマー、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド及びシリコーンゴム変性樹脂から選ばれる他の合成樹脂とを含有する組成物からなる請求項1記載の電線
  3. 他の合成樹脂の配合量が、多層構造重合体粒子/他の合成樹脂の質量比として50/50〜95/5である請求項2記載の電線
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