JP3798328B2 - 複合成形体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、柔軟性に優れる熱可塑性樹脂とこれより硬度が高くポリオレフィン系樹脂以外である熱可塑性樹脂とからなる複合成形体に関する。さらに詳しくは、特定の多層構造重合体粒子からなり複合面の接着性に優れた軟質部と、例えばABS樹脂のような硬度が高い熱可塑性樹脂からなる硬質部とを一体化することにより得られる複合成形体に関する。本発明の複合成形体は各種パッキン、窓枠、スイッチカバー、ウェザーストリップ、自動車のサイドプロテクター、家具部品などの用途に広く利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、建築資材、家具資材、電気・電子部品、農業・土木資材、車両資材、パイプ、ホース、日用品、雑貨、文具などの用途には塩化ビニル樹脂が用いられている。塩化ビニル樹脂は経済性、成形加工性に優れることが広く使われている一因である。また、硬質及び軟質の塩化ビニル樹脂を共押出で一体化することにより製造される複合押出成形品も一般的に使用されている。しかし塩化ビニル樹脂は耐候性に劣ることから、窓枠、ウェザーストリップなど屋外用途で使用される場合、その耐久性が問題となる。また、使用年数を経るに連れて、柔軟性を向上させるために添加している硬度調整用可塑剤の表面への移行が問題視される。加えて近年、廃棄、焼却時の環境へ負荷の問題から塩化ビニル樹脂の代替材料が求められている。
【0003】
塩化ビニル樹脂の代替材料としては、熱可塑性弾性体(サーモプラスチックエラストマー、TPE)の適用が進められている。しかし、TPEは、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂と熱融着で接着させることができない。
そのため、TPEと熱可塑性樹脂の複合成形体を製造しようとする場合、両者の接合部に接着剤を用いる方法、両者の接合部に凹凸の嵌合部を設けて接合する方法などが用いられている。
しかし接着剤を用いる方法は、接着剤の塗布工程を必要とするため工程が複雑になるうえ、接着剤の劣化もあり接着強度が弱いという問題を有する。また接合部に凹凸の嵌合部を設ける方法は、金型の構造が複雑になるうえ、最終製品である複合成形体の形状が制限されるため好ましくない。
したがって、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂と良好な接着性を有する軟質樹脂が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、屋外での使用にも耐え得る耐候性を有し、環境への負荷が小さく、複合面の接着性に優れた複合成形体、特にABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、硬質アクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂を硬質部とする複合成形体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の多層構造重合体粒子が、それより硬度が高くポリオレフィン系樹脂以外である熱可塑性樹脂、特にポリスチレン樹脂(ABS樹脂、ポリスチレン等)、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂と熱融着により良好な接着性を有することを見出し、さらに研究を重ねて本発明を完成した。
【0006】
かかる本発明は、多層構造重合体粒子からなる軟質部と、該軟質部よりJIS−A硬度が高くポリオレフィン系樹脂以外である熱可塑性樹脂からなる硬質部とを熱融着してなる複合成形体であって、該多層構造重合体粒子が
(1)少なくとも1つの下記ゴム成分層(I)を内部に有し、かつ少なくとも1つの下記熱可塑性樹脂成分層(II)を少なくとも最外部に有する、2以上の層からなる多層構造重合体粒子であって;
(2)ゴム成分層(I)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%及び多官能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物(i)の共重合によって形成される重合体層であり;
【0007】
(3)熱可塑性樹脂成分層(II)は、メタクリル酸エステル40〜100質量%及び該メタクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体60〜0質量%からなる単量体(ii)の重合によって形成される重合体層であり;
(4)熱可塑性樹脂成分層(II)のうち最外部に位置する層を構成する重合体について、GPC法で測定された数平均分子量は30,000以下であり;
(5)ゴム成分層(I)の総質量と熱可塑性樹脂成分層(II)の総質量との比は、層(I)/層(II)において30/70〜90/10の範囲であり;
(6)平均粒子径が150nm以下である;
ことを特徴とする多層構造重合体粒子である複合成形体に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明で使用する多層構造重合体粒子は、ゴム成分層(I)を内部に少なくとも1層有し、かつ熱可塑性樹脂成分層(II)を少なくとも最外層として有する。本発明で使用する多層構造重合体粒子を構成する層の数は、2層以上であればよく、3層で構成されていても4層以上で構成されていてもよい。2層構造の場合は、層(I)(中心層)/層(II)(最外層)の構成であり、3層構造の場合は、層(I)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)、層(I)(最内層)/層(II)(中間層)/層(II)(最外層)又は層(II)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)の構成であり、4層構造の場合には、例えば、層(I)(最内層)/層(II)(中間層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)の構成を有することができる。これらの中でも、取扱い性に優れる点において、層(I)(中心層)/層(II)(最外層)の2層構造;又は層(I)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)若しくは層(II)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)の3層構造が好ましい。
【0009】
本発明で使用する多層構造重合体粒子を構成するゴム成分層(I)は、本発明の複合成形体の軟質部に柔軟性を付与するのみならず、特に異形押出成形においては溶融状態において、多層構造重合体粒子の芯材として機能することにより、ダイから吐出された溶融状態の成形品の形状安定性を良好なものとする。ゴム成分層(I)の存在により、ダイ吐出後の成形品の形状が崩れることがなく、細部形状が正確な複合成形品を得ることができる。
【0010】
本発明で使用する多層構造重合体粒子を構成する、熱可塑性樹脂成分層(II)は、本発明の複合成形体の硬質部を構成する熱可塑性樹脂との接着性に寄与し、さらに軟質部に耐候性、耐熱性、耐傷つき性を付与する。さらに、多層構造重合体に適度な流動性を与えることで、その溶融混練性、成形加工性を良好なものとする。
【0011】
本発明で使用する多層構造重合体粒子の特徴は、ゴム成分層(I)と熱可塑性樹脂成分層(II)の構成を変えることにより、押出成形、射出成形それぞれに適した材料設計が可能なことである。一例を挙げると、ゴム成分層(I)の割合が増えると、溶融混練性とダイ吐出後の形状保持性を併せ持つ、異形押出成形に適した材料とすることが可能である。一方、熱可塑性樹脂成分層(II)が増えると、流動性が向上し、射出成形に適した材料とすることができる。すなわち、本発明の多層構造重合体粒子は、硬質部を形成するABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、硬質アクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂との接着性に優れ、さらに成形方法にあわせた材料設計の自由度が極めて高く、しかも加硫ゴムのような煩雑な加硫工程を経ずに柔軟性に優れるという利点を有する。
【0012】
層(I)と層(II)の総質量比は、(I)/(II)において30/70〜90/10の範囲内である必要がある。層(I)の割合がこの範囲より小さいと多層構造重合体粒子又はそれと他の成分(すなわち、後述の他のアクリル系樹脂及び/又は物性改善剤)との樹脂組成物を成形して得られる成形品における弾性回復性が不十分となるため、好ましくない。反対に層(I)の割合がこの範囲より大きいと層構造を完全な形態では形成しにくくなり、溶融流動性が極端に低下してしまうため、混練が困難となる。なお、層(I)の総質量とは、多層構造重合体粒子中の層(I)が1層のみの場合には該層の質量であり、層(I)が2層以上の場合にはそれらの層の質量の和である。同様に、層(II)の総質量とは、多層構造重合体粒子中の層(II)が1層のみの場合には該層の質量であり、層(II)が2層以上の場合にはそれらの層の質量の和である。層(I)と層(II)の総質量比は、(I)/(II)において50/50〜90/10の範囲内であるのが好ましく、60/40〜80/20の範囲内であるのがより好ましい。
【0013】
本発明で使用する多層構造重合体粒子における層(I)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、好ましくは55〜99.9質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%、好ましくは44.9〜0質量%、及び多官能性単量体0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜2質量%からなる単量体混合物(i)の共重合によって形成されるゴム弾性を有する重合体層である。
【0014】
層(I)を形成するために用いられるアクリル酸エステルの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート等のアクリル酸と脂肪族アルコール、例えばC1〜C18の飽和脂肪族アルコールとのエステル;シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸とC5又はC6の脂環式アルコールとのエステル;フェニルアクリレート等のアクリル酸とフェノール類とのエステル;ベンジルアクリレート等のアクリル酸と芳香族アルコールとのエステルなどが挙げられる。
【0015】
アクリル酸エステルは、層(I)(多層構造重合体粒子が2以上の層(I)を有する場合には、それぞれの層(I))を形成するために用いられる単量体混合物(i)に対して50〜99.99質量%の範囲において、単独で又は2種以上混合して用いられる。アクリル酸エステルの量が50質量%より少ないと多層構造重合体粒子のゴム弾性が低下することになり、また、99.99質量%を超えると多層構造重合体粒子の構造が形成されなくなるので、いずれも好ましくない。
【0016】
層(I)を形成するために用いられる多官能性単量体は、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する単量体であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸等の不飽和モノカルボン酸とアリルアルコール、メタリルアルコール等の不飽和アルコールとのエステル;前記の不飽和モノカルボン酸とエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等のグリコールとのジエステル;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸等のジカルボン酸と前記の不飽和アルコールとのエステル等が包含され、具体的には、アクリル酸アリル、アクリル酸メタリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸メタリル、桂皮酸アリル、桂皮酸メタリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性単量体の中でも、メタクリル酸アリルが特に好ましい。なお、前記の「ジ(メタ)アクリレート」は、「ジアクリレート」と「ジメタクリレート」との総称を意味する。
【0017】
多官能性単量体は、層(I)(多層構造重合体粒子が2以上の層(I)を有する場合には、それぞれの層(I))を形成するために用いられる単量体混合物(i)に対して0.01〜10質量%の範囲において、単独で又は二種以上を組み合わせて用いられる。多官能性単量体の量が、10質量%より多いと、多層構造重合体粒子がゴム弾性を示さなくなり、弾性回復性が不十分となるので好ましくない。また、多官能性単量体の量が0.01質量%より少ないと、層(I)が粒子構造として形成されなくなるので好ましくない。
【0018】
層(I)を形成するためには、アクリル酸エステル及び多官能性単量体以外に、アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体を併用することができる。該他の単官能性単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート等のメタクリル酸と脂肪族アルコールとのエステル、例えばC1〜C22の飽和脂肪族アルコールとのエステル;シクロヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸とC5又はC6の脂環式アルコールとのエステル;フェニルメタクリレート等のメタクリル酸とフェノール類とのエステル、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸と芳香族アルコールとのエステルなどのメタクリル酸エステルが代表的であるが、他にも、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチル−3−エチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、3−メチル−1,3−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、シクロペンタジエン、クロロプレン、ミルセン等の共役ジエン系単量体等が挙げられる。
【0019】
これらの他の単官能性単量体は、必要に応じて、層(I)(多層構造重合体粒子が2以上の層(I)を有する場合には、それぞれの層(I))を形成するために用いられる単量体混合物(i)に対して49.99質量%以下の割合において、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。上記の他の単官能性単量体の割合が49.99質量%を超える場合は、多層構造重合体粒子の耐候性が不十分となるので好ましくない。
【0020】
本発明で使用する多層構造重合体粒子における層(II)は、メタクリル酸エステル40〜100質量%、好ましくは60〜99質量%、さらに好ましくは80〜99質量%及びそれと共重合可能な他の単量体60〜0質量%、好ましくは40〜1質量%、さらに好ましくは20〜1質量%からなる単量体(ii)の重合によって形成される熱可塑性を有する重合体層である。メタクリル酸エステルの量が40質量%未満であると多層構造重合体粒子の耐候性が不十分となる。
【0021】
層(II)を形成するために用いられるメタクリル酸エステルの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等が挙げられ、好ましくはメチルメタクリレートである。
【0022】
層(II)を形成するために用いられる共重合可能な他の単量体の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート等のアクリル酸と脂肪族アルコールとのエステル、例えばC1〜C18の飽和脂肪族アルコールとのエステル;シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸とC5又はC6の脂環式アルコールとのエステル;スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミド、N−(クロロフェニル)マレイミド等のマレイミド系単量体;前記例で示した多官能性単量体等が挙げられる。これらの中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0023】
本発明で使用する多層構造重合体粒子においては、その中に含有される層(II)のうち少なくとも粒子の最外層を構成する重合体の数平均分子量がGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法での測定に基づいて30,000以下であることが重要である。数平均分子量が30,000を超える場合、多層構造重合体粒子を成形して得た成形品における弾性回復性が不十分となり、さらに溶融流動性が低下する場合もある。数平均分子量の下限については、必ずしも厳密な制限はないが、生産工程におけるの多層構造重合体粒子の通過性の点からは、数平均分子量は1,000を下回らないことが好ましい。弾性回復性及び生産工程での通過性の両立の点からは、数平均分子量を3,000〜20,000の範囲内とすることが特に好ましい。
【0024】
本発明で使用する多層構造重合体粒子の平均粒子径は、150nm以下である。150nmより大きいと弾性回復性が不十分となる。平均粒子径の下限値については特に限定されるものではないが、多層構造重合体粒子の所定の層構造を形成させやすい観点からは、平均粒子径は30nm以上であることが好ましい。平均粒子径は80〜120nmであることがさらに好ましい。
【0025】
本発明に用いられる多層構造重合体粒子は、物性面および製造簡便性の点からゴム成分層(I)が層(Ia)及び層(Ib)からなり、最内部にゴム成分層(Ia)を有し、該最内部の外部表面を覆う状態で位置する隣接部にゴム成分層(Ib)を有し、かつ最外部に熱可塑性樹脂成分層(II)を有する3層構造の多層構造重合体粒子であるのが好ましい。
【0026】
上記の好適な多層構造重合体粒子における層(Ia)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、好ましくは55〜99.9質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%、好ましくは44.9〜0質量%、及び多官能性単量体0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜2質量%からなる単量体混合物(ia)の共重合によって形成されるゴム弾性を有する重合体層である。また、層(Ib)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、好ましくは55〜99.9質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%、好ましくは44.9〜0質量%、及び多官能性単量体0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜2質量%からなる単量体混合物(ib)の共重合によって形成されるゴム弾性を有する重合体層である。層(Ia)および(Ib)を形成するためには前述の層(I)を形成するのに用いた単量体を使用することができる。
【0027】
好ましい層構成である3層構造の多層構造重合粒子においては、ゴム成分層(Ia)及び(Ib)の質量の和と熱可塑性樹脂成分層(II)の質量との比は、〔(Ia)+(Ib)〕/(II)において、30/70〜90/10の範囲内であることが必要である。層(Ia)及び層(Ib)の質量の和の割合がこの範囲より小さいと弾性回復性及び柔軟性が不十分となり、一方層(Ia)及び層(Ib)の質量の和の割合がこの範囲より大きいと層構造を完全な形態では形成しにくくなり、溶融流動性が極端に低下してしまうため成形時の混練が困難となる。本発明の効果をより顕著なものとする目的においては、ゴム成分層(Ia)及び(Ib)の質量の和と熱可塑性樹脂成分層(II)の質量との比は、〔(Ia)+(Ib)〕/(II)において、50/50〜90/10の範囲内であることが好ましく、60/40〜80/20の範囲内であることがより好ましい。
【0028】
ゴム成分層(Ia)の質量とゴム成分層(Ib)の質量との比は、(Ia)/(Ib)において、5/95〜95/5の範囲内であることが好ましく、20/80〜80/20の範囲内であることがより好ましい。ゴム成分層(Ia)の質量とゴム成分層(Ib)の質量との比が5/95〜95/5の範囲内にある場合、一般に、良好な柔軟性とこれ以外の機械的物性とを両立させることが可能になる。
【0029】
また、良好な柔軟性とこれ以外の他の機械的物性とを両立させるには、さらに、単量体混合物(ia)におけるアクリル酸エステルの含有率(質量%)と単量体混合物(ib)におけるアクリル酸エステルの含有率(質量%)との差〔(ib)(単位:質量%)−(ia)(単位:質量%)又は(ia)(単位:質量%)−(ib)(単位:質量%)〕が3質量%以上の値、好ましくは4〜30質量%の範囲内の値となることが一般に望ましい。
【0030】
本発明に用いられる多層構造重合体粒子は、ゴム成分層(I)を形成させるための重合反応工程と熱可塑性樹脂成分層(II)を形成させるための重合反応工程とを所定の順序で行うことによって、中心部から外部に向かって順次層を形成させることからなる、少なくとも1つのゴム成分層を内部に有し、かつ少なくとも1つの熱可塑性樹脂成分層を少なくとも最外部に有する、2つ以上の層からなる多層構造重合体粒子を製造するための公知の製造方法に準じて、製造することができる。ただし、その際、以下の点に留意する必要がある。
【0031】
(1)ゴム成分層(I)を形成させるための重合反応工程(a)において、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%及び多官能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物(i)を共重合させること。
(2)熱可塑性樹脂成分層(II)を形成させるための重合反応工程(b)において、メタクリル酸エステル40〜100質量%及び該メタクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体60〜0質量%からなる単量体(ii)を重合させること。
【0032】
(3)該重合反応工程(b)のうち、少なくとも、最外部の熱可塑性樹脂成分層(II)を形成させるための重合反応工程において、分子量調節剤を単量体(ii)に対して0.4〜10質量%の範囲内となる割合で使用して重合反応を行うこと。
(4)全重合反応工程で使用する単量体混合物(i)の総質量と単量体(ii)の総質量との比を、単量体混合物(i)/単量体(ii)において30/70〜90/10の範囲内とすること。
(5)全ての重合反応工程が終了した時点における多層構造重合体粒子の平均粒子径が150nm以下となるように制御すること。
【0033】
本発明に用いられる多層構造重合体粒子の製造のための重合法については特に制限はなく、例えば、通常の多層構造重合体粒子を製造するための公知の重合法に準じて、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、またはこれらの組み合わせを採用することができる。
【0034】
例えば、乳化重合では公知の手段に従い、各層を形成させるための重合を行うことにより、本発明の多層構造重合体粒子を得ることができる。乳化重合の温度としては、必ずしも限定されないが一般的な範囲は0〜100℃である。ここで使用する乳化剤としては、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸のアルカリ金属塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪アルコールの硫酸エステル塩;ロジン酸カリウム等のロジン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルアリールスルホン酸等が挙げられ、これらは、1種類ないし2種類以上の組み合わせで用いられる。乳化重合によって得られる多層構造重合体粒子の平均粒子径は乳化剤の添加量等の重合条件によって影響されるので、それらの条件を適宜選択することによって、容易に最終的な多層構造重合体粒子の平均粒子径を150nm以下に制御することができる。
【0035】
乳化重合で使用する重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が一般的である。ラジカル重合開始剤の具体例としては、過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物を単独で用いることができる。また、ラジカル重合開始剤として、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機ハイドロパーオキサイド類と、遷移金属塩等の還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤を使用することもできる。
【0036】
上記のとおり、公知の乳化重合法に従って所定の単量体混合物の所定量を順次重合させることにより、所定の重合体層を、粒子の中心部から外部に向かって段階的に形成させることができるが、本発明に用いられる多層構造重合体粒子を製造するためには、少なくとも最外層を形成させるための重合反応工程において、分子量調節剤を、その工程で使用する単量体(ii)に対して0.4〜10質量%の範囲内となる割合で使用することが特に重要である。通常の多層構造重合体粒子を製造する場合、最外部の熱可塑性樹脂成分層を形成させるための重合反応において使用される分子量調節剤の使用量は、一般に単量体に対して0〜0.3質量%程度であるが、このように0.4質量%未満の場合には、その層を構成する熱可塑性樹脂成分の数平均分子量が高くなり過ぎ、多層構造重合体粒子又はそれと他の合成樹脂との樹脂組成物を成形して得られる成形品の柔軟性が不十分となり、さらに成形流動性が不十分となる場合もある。本発明の目的においては分子量調節剤の量は上記基準において高々10質量%あれば十分であり、それ以上の量を使用しても、もはやそれ以上の柔軟性付与効果の向上はなく、寧ろ多層構造重合体粒子における分子量調節剤の残存量が多くなるので望ましくない。分子量調節剤は、単量体(ii)に対して0.4〜5質量%、より好ましくは0.6〜2質量%の範囲内となる割合で用いることが望ましい。
【0037】
分子量調節剤の具体例としては、例えばn−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類;ターピノーレン、ジペンテン、t−テルピネン及び少量の他の環状テルペン類よりなるテルペン混合物;クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。これらの中でも、n−オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタンが好ましい。
【0038】
乳化重合後、生成した多層構造重合体粒子の重合反応系からの分離取得も、公知の手法に従って行うことができ、例えば、酸析法、塩析法、スプレードライ法、凍結凝固法などを採用することができる。
【0039】
本発明の複合成形体の軟質部を構成する多層構造重合体粒子は、単独でシート状に成形した試験片における、JIS K 6301に規定するA型硬度計により測定した硬度が80未満、好ましくは60〜75の範囲内となるように、用いる単量体の種類及び割合を選択することが望ましい。
本発明で使用する多層構造重合体粒子は、単独で複合成形体の軟質部を形成させることができるが、該軟質部を形成するに際し、これに、一般にこれよりJIS−A硬度の高いポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、他のアクリル系多層構造重合体粒子等の他のアクリル系樹脂を配合することにより、硬質部として用いられる熱可塑性樹脂との接着性を損なうことなく軟質部の硬度を調整することができる。該軟質部のJIS−A硬度は、硬質部より硬度が低い範囲内で、90未満、好ましくは80未満であることが望ましい。
【0040】
本発明で使用する多層構造重合体粒子本来の優れた弾性回復性、適度の柔軟性及び良好な機械的物性、透明性を活かしながら、硬度調整を行うには、多層構造重合体粒子と他のアクリル系樹脂の質量比を、多層構造重合体粒子/他のアクリル系樹脂において50/50〜95/5、好ましくは60/40〜95/5の範囲内とすることが望ましい。ただし、多層構造重合体粒子と他のアクリル系樹脂とからなる樹脂組成物に該多層構造重合体粒子由来の性能を少なくとも部分的に発現させれば十分である場合には、該多層構造重合体粒子の含有率が5質量%以上であり、かつ該他のアクリル系樹脂の含有率が95質量%以下となる範囲内において両者の混合割合を適宜設定することができる。
【0041】
本発明で使用する多層構造重合体粒子を成形して軟質部を形成するに際し、該多層構造重合体粒子又は該軟質部の物性を改善するための物性改善剤の1種又は2種以上を、所望に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、配合してもよい。かかる物性改善剤としては、特に制限はなく、例えば、ゴム、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、フィラー(ガラス繊維等の繊維補強剤、無機充填剤等)等が挙げられる。
【0042】
上記配合は、例えば、本発明で使用する多層構造重合体粒子、及び所望に応じて使用される他のアクリル系樹脂及び/又は物性改善剤を、溶融混練条件下で十分に混合することにより行うことができる。
【0043】
本発明の複合成形体の硬質部は、軟質部よりもJIS−A硬度が高くポリオレフィン系樹脂以外である熱可塑性樹脂よりなる。かかる熱可塑性樹脂としては、シート状に成形した試験片におけるJIS−A硬度が80以上、好ましくは90以上であるのが望ましく、例えば、ABS、AES(アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体)、AAS(アクリロニトリル−アクリレート−スチレン共重合体)、ACS(アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン樹脂)、MBS、ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、他のアクリル系多層構造重合体粒子等のアクリル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリカーボネート;エチレン系アイオノマー;及びポリフッ化ビニリデンなどから選択することができる。
【0044】
本発明の複合成形体は軟質部のある面の一部又は全部と硬質部のある面の一部又は全部とが熱融着した形態にあり、例えば図1や図2に示した形態が例示される。複合成形体における軟質部及び硬質部の肉厚は特に制限されないが、軟質部が0.01〜10mm、硬質部が0.1〜50mmであるのが好ましい。
【0045】
本発明の複合成形体は、例えば、Tダイラミネート成形法、共押出成形法、カレンダー成形法、ブロー成形法、インサート射出成形法、二色射出成形法などの従来一般的に用いられている、溶融を伴う成形法を用いて製造することができ、建築資材、家具資材、電気・電子部品、農業・土木資材、車輌資材、パイプ、ホース、日用品、雑貨、文具などの分野に用いられる複合成形体として有用である。
【0046】
以下に、本発明の複合成形体の具体的な使用例を示す。
建築資材および家具資材の分野においては、雨樋付属品、デッキ材、窓枠、壁、天井材、窓枠プロファイル、出隅、見切、建築用ガスケット、発泡建材、塗れ縁、廻り縁、幅木、階段手すり、家具用化粧縁、レール材、テーブルエッジ、一般目地、浴室目地、ジョイナー、アングル、階段滑り止め、エアコン等の置き台、カーテンボックス、ドアパネル、棚板、ドアの戸当たり等の用途が挙げられる。
電気・電子部材分野においては、配線ダクト、保護具、冷蔵庫ガスケット、マグネット、照明器具、ICキャリアケース、各種弱電部材等の用途が挙げられる。
農業・土木資材分野においては、ドレインパイプ、金属補強入りパイプ、牧場柵、止水板等の用途が挙げられる。
車輌資材分野においては、車輌用緩衝部材、補強入り緩衝剤、アオリ板、フラッシュモール等の用途が挙げられる。
パイプ・ホース分野においては、透明パイプ、透明サンクションダクトホース、丸棒、板材等の用途が挙げられる。
日曜品・雑貨・文具分野においては、額縁材、グリップ、サインペン、ボールペン軸、風呂蓋、マジックキャッチャー、グリップテープ、スダレ、スノコ等の用途が挙げられる。
【0047】
【実施例】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例、比較例の中の各測定値は以下の評価法に従った。
多層構造重合体粒子の平均粒子径は、重合完了後のラテックスから採取した試料を用いて、レーザー粒径解析装置PAR−III(大塚電子製)を用いて動的光散乱法により測定し、キュムラント法により解析し求めた。
多層構造重合体粒子の最外層を構成する重合体成分の数平均分子量は、多層構造重合体粒子の試料を室温下にトルエン中で十分に攪拌した後、遠心分離して得られた溶液を用いて、GPC法により測定し、得られた値を、本発明においては最外層を構成する重合体成分の数平均分子量とみなした。
重合体の硬度(JIS−A硬度)はA型硬度計(オスカー製)を用いて、JIS K 6301に準じて測定した。
【0048】
多層構造重合体粒子の製造例
窒素雰囲気下、攪拌翼、冷却管及び滴下ロートを装着した重合器に、蒸留水2800質量部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム8.4質量部、炭酸ナトリウム1.7質量部を加え、80℃に加熱して均一に溶解させた。次いで、同温度において、ペルオキソ二硫酸カリウム0.7質量部を加えた後、n−ブチルアクリレート420質量部、メチルメタクリレート198質量部、スチレン82質量部、アリルメタクリレート2.8質量部及びポリオキシエチレンアルキルリン酸ナトリウム3.5質量部からなる混合物を滴下ロートより60分かけて滴下し、1層目を形成した。滴下終了後、80℃で、さらに1時間反応を続け、ガスクロマトグラフィーで各単量体が99%以上消費されたことを確認した。
次いで、得られた共重合体ラテックスにペルオキソ二硫酸カリウム0.35質量部を加えた後、n−ブチルアクリレート280質量部、メチルメタクリレート14質量部、スチレン56質量部、アリルメタクリレート1.4質量部及びポリオキシエチレンアルキルリン酸ナトリウム1.8質量部からなる混合物を滴下ロートより30分かけて滴下し、2層目を形成した。滴下終了後、80℃で、さらに1時間反応を続け、単量体が99%以上消費されたことをガスクロマトグラフィーで確認した。
【0049】
次いで、得られた共重合体ラテックスにペルオキソ二硫酸カリウム0.35質量部を加えた後、メチルメタクリレート334質量部、メチルアクリレート18質量部、n−オクチルメルカプタン3.5質量部及びポリオキシエチレンアルキルリン酸ナトリウム1.8質量部を滴下ロートより30分かけて滴下し、3層目を形成した。滴下終了後、80℃で、さらに1時間反応を続け、単量体が99.9%以上消費されたことをガスクロマトグラフィーで確認して重合を終了した。得られたラテックスにおける粒子の平均粒子径は100nmであった。
このラテックスを−30℃に24時間冷却して凍結凝集させた後、凝集物を融解させ取り出した。50℃で2日間減圧乾燥して、凝集粉末状の3層型の多層構造重合体粒子〔A〕を得た。
この多層構造重合体粒子〔A〕の物性値を表1に示す。
【0050】
【表1】
Figure 0003798328
【0051】
実施例1
テクノポリマー製のABS樹脂「テクノABS YT−683」(JIS−A硬度約100)を40mmφの単軸押出機(メイン押出機)から20kg/hrの割合で押出し、一方、22mmφの単軸押出機(サブ押出機)より、多層構造重合体粒子[A]を2kg/hrの割合で押出した。押出された層状物についてこれらをフィードブロック中で合流させ、幅200mmのシート製造用ダイに導いてシート状の複合成形体にした。その後、ダイから吐出した積層樹脂を複合成形体の全板厚が1mmになるように調整したポリッシングロールを通過させることにより、シート状の複合成形体の冷却および鏡面仕上げを行い、目的とする2層からなる積層シートを得た。得られた複合成形体における多層構造重合体粒子[A]からなる樹脂層の厚みは50μmであった。得られたシート状の複合成形体の断面図を図1に示す。
得られたシート状の複合成形体について、オートグラフによる三点曲げ試験を行ったところ、両者の層間剥離は認められず、良好な接着性を有していた。
【0052】
実施例2
メイン押出機に供給する熱可塑性樹脂を出光石油化学(株)製のポリカーボネート(JIS−A硬度約100)、「タフロンA−1900」に変えた以外は実施例1と同様にして2層のシート状の複合成形体を得た。
得られたシート状の複合成形体について、オートグラフによる三点曲げ試験を行ったところ、両者の層間剥離は認められず、良好な接着性を有していた。
【0053】
実施例3
メイン押出機に供給する熱可塑性樹脂を(株)クラレ製のポリメチルメタクリレート樹脂「パラペットG」(JIS−A硬度約100)に変えた以外は実施例1と同様にして2層のシート状の複合成形体を得た。
得られたシート状の複合成形体について、オートグラフによる三点曲げ試験を行ったところ、両者の層間剥離は認められず、良好な接着性を有していた。
【0054】
実施例4
メイン押出機に供給する熱可塑性樹脂をイーストマンケミカルジャパン社製のPET−G樹脂「GN071」(JIS−A硬度約100)に変えた以外は実施例1と同様にして2層のシート状の複合成形体を得た。
得られたシート状の複合成形体について、オートグラフによる三点曲げ試験を行ったところ、両者の層間剥離は認められず、良好な接着性を有していた。
【0055】
比較例1
サブ押出機に供給する熱可塑性樹脂をオレフィン系エラストマー、三井化学製のミラストマー6030N(JIS−A硬度70)に変えた以外は実施例1と同様にして2層のシート状の複合成形体を得た。
得られたシート状の複合成形体は、両者の界面から容易に剥離した。
【0056】
実施例5
φ40mm、L/D=32の単軸押出機、およびφ22mm、L/D=32の単軸押出機にアダプタ、二色異形押出用ダイをセットし、冷却水槽、引取機を設置した二色異形押出成形品製造設備を使用した。φ40mm押出機にテクノポリマー製のABS樹脂、テクノABS YT−683を投入し、かつφ22mm押出機に多層構造重合体粒子[A]を投入し、二色異形押出成形品を作製した。図2に複合成形体の断面図を示す。該断面図における軟質部の厚みは2mmで接合部からの長さは33mmであり、硬質部の厚みは2mmで幅は33mmである。
引張試験による接着強度の測定を試みたが、両層は完全に溶融接着し、界面から剥離せず材料破壊を生じたため、接着強度の測定は不可能であった。
【0057】
実施例6
実施例5と同じ異形押出成形品製造設備を用い、φ40mm押出機に出光石油化学製のポリスチレン樹脂、HH32(JIS−A硬度約100)を投入、かつφ22mm押出機に多層構造重合体粒子[A]を投入し、二色異形押出成形品を作製した。
実施例5と同様な引張試験では、材料破壊を生じ、両層の界面が完全に溶融接着することが確認された。
【0058】
実施例7
実施例5と同じ異形押出成形品製造設備を用い、φ40mm押出機に宇部サイコン(株)製のAES樹脂「SE40」(JIS−A硬度約100)を投入、かつφ22mm押出機に多層構造重合体粒子[A]を投入し、二色異形押出成形品を作製した。
実施例5と同様な引張試験では、材料破壊を生じ、両層の界面が完全に溶融接着することが確認された。
【0059】
比較例2
実施例と同様の異形押出成形品製造設備を用い、φ40mm押出機にテクノポリマー製のABS樹脂、テクノABS YT−683を投入し、かつφ22押出機にオレフィン系エラストマー、三井化学製のミラストマー6030Nを投入した。
両層はダイから出た時点で剥離し、二色異形押出成形品を得ることはできなかった。
【0060】
実施例8
メインシリンダー(L/D=20)及びサブシリンダー(L/D=20)をL字型に配した射出成形機に、2つのキャビティーを有する二色成形用金型を取り付け、メインシリンダー(シリンダー温度250℃)へ実施例1で用いたABS樹脂、サブシリンダー(シリンダー温度220℃)へ多層構造重合体粒子[A]を供給して、金型(温度30℃)の第1キャビティーにABS樹脂を成形後、第2キャビティーに多層構造重合体粒子[A]を成形して、箱型中空状(縦100mm×横60mm×高さ15mm、肉厚1.5mm)の二色成形体を作製した。
得られた二色成形体より溶融接着部分のみからなる二層シート状(軟質部0.5mm厚、硬質部1mm厚)の試験片を切り出して、実施例1と同様に曲げ試験を行ったところ、両者の層間剥離は認められず、良好な接着性を有していた。
【0061】
実施例9
メインシリンダー(L/D=20)及びサブシリンダー(L/D=20)をL字型に配した射出成形機に、2つのキャビティーを有する二色成形用金型を取り付け、メインシリンダー(シリンダー温度220℃)へポリプラスチック(株)社製ポリアセタール樹脂「ジュラコンM90−44」、サブシリンダー(シリンダー温度220℃)へ多層構造重合体粒子[A]を供給して、金型(温度30℃)の第1キャビティーにポリアセタール樹脂を成形後、第2キャビティーに多層構造重合体粒子[A]を成形して、箱型中空状(縦100mm×横60mm×高さ15mm、肉厚1.5mm)の二色成形体を作製した。
得られた二色成形体より溶融接着部分のみからなる二層シート状(軟質部0.5mm厚、硬質部1mm厚)の試験片を切り出して、実施例1と同様に曲げ試験を行ったところ、両者の層間剥離は認められず、良好な接着性を有していた。
【0062】
実施例10
メインシリンダー(L/D=20)及びサブシリンダー(L/D=20)をL字型に配した射出成形機に、2つのキャビティーを有する二色成形用金型を取り付け、メインシリンダー(シリンダー温度265℃)へ旭化成工業(株)社製ポリアミド樹脂「レオナ1300S」、サブシリンダー(シリンダー温度220℃)へ多層構造重合体粒子[A]を供給して、金型(温度30℃)の第1キャビティーにポリアセタール樹脂を成形後、第2キャビティーに多層構造重合体粒子[A]を成形して、箱型中空状(縦100mm×横60mm×高さ15mm、肉厚1.5mm)の二色成形体を作製した。
得られた二色成形体より溶融接着部分のみからなる二層シート状(軟質部0.5mm厚、硬質部1mm厚)の試験片を切り出して、実施例1と同様に曲げ試験を行ったところ、両者の層間剥離は認められず、良好な接着性を有していた。
【0063】
【発明の効果】
本発明で使用する多層構造重合体粒子からなる軟質部と、該軟質部より硬度が高い熱可塑性樹脂、特にABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート、硬質アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂などから選ばれる熱可塑性樹脂からなる硬質部とを熱融着により複合してなる複合成形体は、両層の界面が、硬質塩化ビニル樹脂、軟質塩化ビニル樹脂からなる複合成形体と同等の優れた接着性で、完全に融着している。本発明の複合成形体はまた、従来の塩化ビニル樹脂複合体の製造設備をそのまま用いて製造でき、したがって製造に際し、新たな設備投資を必要としないという利点を有する。さらに、軟質部がアクリル系樹脂の特徴である耐候性を有するので、塩化ビニル樹脂複合体では従来不可能であった屋外での使用も可能になる。しかも軟質部の形成に際し、多層構造重合体粒子と一般の硬質アクリル系樹脂とをブレンドすることにより、軟質部の硬度を自由に調整できることから、得られる体の用途はさらに広がる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたシート状の複合成形体の断面図を示す。
【図2】実施例5で得られた複合成形体の断面図を示す。

Claims (4)

  1. 多層構造重合体粒子からなる軟質部と、該軟質部よりJIS−A硬度が高くポリオレフィン系樹脂以外である熱可塑性樹脂からなる硬質部とを熱融着してなる複合成形体であって、該多層構造重合体粒子が
    (1)少なくとも1つの下記ゴム成分層(I)を内部に有し、かつ少なくとも1つの下記熱可塑性樹脂成分層(II)を少なくとも最外部に有する、2以上の層からなる多層構造重合体粒子であって;
    (2)ゴム成分層(I)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%及び多官能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物(i)の共重合によって形成される重合体層であり;
    (3)熱可塑性樹脂成分層(II)は、メタクリル酸エステル40〜100質量%及び該メタクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体60〜0質量%からなる単量体(ii)の重合によって形成される重合体層であり;
    (4)熱可塑性樹脂成分層(II)のうち最外部に位置する層を構成する重合体について、GPC法で測定された数平均分子量は30,000以下であり;
    (5)ゴム成分層(I)の総質量と熱可塑性樹脂成分層(II)の総質量との比は、層(I)/層(II)において30/70〜90/10の範囲であり;
    (6)平均粒子径が150nm以下である;
    ことを特徴とする多層構造重合体粒子である複合成形体。
  2. 複合成形体の硬質部を構成する熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート、エチレン系アイオノマー及びポリフッ化ビニリデンから選ばれる請求項1記載の複合成形体。
  3. 軟質部が、他のアクリル系樹脂を多層構造重合体粒子/他のアクリル系樹脂の質量比として50/50〜95/5の割合で含有する請求項1又は2記載の複合成形体。
  4. 軟質部が物性改善剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合成形体。
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