JP2004091741A - 熱可塑性樹脂組成物、成形品及び積層体 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物、成形品及び積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】製膜性に優れ、得られる成形品が柔軟性、薄膜性等に優れた、アクリル系熱可塑性樹脂組成物の提供。
【解決手段】多層構造重合体粒子(A)100質量部と、メタクリル酸メチルとこれと共重合可能な他のビニル系単量体との特定質量比の(共)重合体であって、特定極限粘度を有するメタクリル系熱可塑性樹脂(B)0.05〜10質量部とを混合及び/又は混練して得られる熱可塑性樹脂組成物であって、(A)がアクリル酸エステル及び多官能性単量体を含む単量体混合物の共重合によって形成されるゴム成分層(I)とメタクリル酸エステル及び任意成分としての他の単量体からなる単量体の重合によって形成される熱可塑性樹脂成分層(II)とを有し、(1)最外層を構成する層(II)の数平均分子量、(2)層(I)/層(II)の質量比及び(3)平均粒子径が特定値を有する熱可塑性樹脂組成物、及び該組成物から得られる成形品、及び積層体。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は特定の多層構造体粒子と特定のメタクリル系熱可塑性樹脂とを混合/又は混練して得られ、それ自身製膜性に優れ、それから得られる成形品、特にフィルム又はシートが柔軟性、薄膜性、耐候性等に優れる熱可塑性樹脂組成物に関する。本発明はまた、かかる熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる成形品、特にフィルムもしくはシート、及び積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリル樹脂は透明性に優れており、美しい外観と耐候性を有するうえに、成形が容易であることから、電機部品、車両部品、光学用部品、装飾品、看板などの用途に幅広く用いられている。しかし、アクリル樹脂の用途が拡大するに伴い、その用途に応じたさらなる性能向上の検討が行われている。この中で、近年は、特にコストの低減を意識したフィルムやシートなどの薄物成形品への展開が積極的に図られようとしているが、アクリル系樹脂は硬度が高く使用用途が限定されているのが現状である。
透明軟質シートとしては軟質塩化ビニル系樹脂フィルムがあらゆる用途で使用されているが、該樹脂フィルムは、樹脂軟化剤として配合されている可塑剤のブリードによる性能低下や、近年、廃棄、焼却時の環境への負荷が問題視されている。
なお、以下に詳述する本発明の熱可塑性樹脂組成物の必須成分の1つである多層構造重合体粒子(A)は、その基本的構成について、例えば特開平11−292940号公報に開示されている。
【0003】
【特許文献】
特開平11−292940号公報(請求項1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アクリル系樹脂が本来有する優れた耐候性などの特長を保持しつつ、それ自身製膜性に優れ、それから得られる成形品、特にフィルム又はシートが柔軟性、薄膜性等に優れた、アクリル系樹脂組成物としての、熱可塑性樹脂組成物を提供することである。本発明の目的は、さらに、上記熱可塑性樹脂組成物から得られ、耐候性、柔軟性、薄膜性等に優れた、成形品、特にフィルムもしくはシート、及びかかるフィルムもしくはシートを1構成成分層として用いる積層体を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の検討を行った。その結果、特定の多層構造重合体粒子と特定のメタクリル系熱可塑性樹脂を組み合わせることにより、耐候性等を維持しつつ、柔軟性、製膜性、薄膜性等を改善し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
かかる本発明は、
(1)少なくとも1つの下記ゴム成分層(I)を内部に有し、かつ少なくとも1つの下記熱可塑性樹脂成分層(II)を少なくとも最外部に有する、2以上の層からなる多層構造重合体粒子であって;
(2)ゴム成分層(I)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%及び多官能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物(i)の共重合によって形成される重合体層であり;
(3)熱可塑性樹脂成分層(II)は、メタクリル酸エステル40〜100質量%及び該メタクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体60〜0質量%からなる単量体(ii)の重合によって形成される重合体層であり;
(4)熱可塑性樹脂成分層(II)のうち最外部に位置する層を構成する重合体について、GPC法で測定された数平均分子量は30,000以下であり;
(5)ゴム成分層(I)の総質量と熱可塑性樹脂成分層(II)の総質量との比は、層(I)/層(II)において30/70〜90/10の範囲であり;
(6)平均粒子径が150nm以下である;
ことを特徴とする多層構造重合体粒子(A)100質量部と、
メタクリル酸メチルとこれと共重合可能な他のビニル系単量体との、前者/後者の質量比で60/40〜100/0の、(共)重合体であって、極限粘度が3〜6dl/gであるメタクリル系熱可塑性樹脂(B)0.05〜10質量部とを
混合及び/又は混練して得られる熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0007】
本発明はまた、上記熱可塑性樹脂組成物に、下記に規定するメタクリル系熱可塑性樹脂(C)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物、すなわち
(1)少なくとも1つの下記ゴム成分層(I)を内部に有し、かつ少なくとも1つの下記熱可塑性樹脂成分層(II)を少なくとも最外部に有する、2以上の層からなる多層構造重合体粒子であって;
(2)ゴム成分層(I)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%及び多官能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物(i)の共重合によって形成される重合体層であり;
(3)熱可塑性樹脂成分層(II)は、メタクリル酸エステル40〜100質量%及び該メタクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体60〜0質量%からなる単量体(ii)の重合によって形成される重合体層であり;
(4)熱可塑性樹脂成分層(II)のうち最外部に位置する層を構成する重合体について、GPC法で測定された数平均分子量は30,000以下であり;
(5)ゴム成分層(I)の総質量と熱可塑性樹脂成分層(II)の総質量との比は、層(I)/層(II)において30/70〜90/10の範囲であり;
(6)平均粒子径が150nm以下である
ことを特徴とする多層構造重合体粒子(A)100質量部と、
メタクリル酸メチルとこれと共重合可能な他のビニル系単量体との、前者/後者の質量比で60/40〜100/0の、(共)重合体であって、極限粘度が3〜6dl/gであるメタクリル系熱可塑性樹脂(B)0.05〜10質量部と
メタクリル酸メチルとこれと共重合可能な他のビニル系単量体との、前者/後者の質量比で80/40〜100/0の、(共)重合体であって、極限粘度が0.1〜1.0dl/gであるメタクリル系熱可塑性樹脂(C)1〜100質量部とを
混合及び/又は混練して得られる熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0008】
本発明はさらに、上記熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品、特にフィルム又はシートに関する。本発明はさらに、上記熱可塑性樹脂組成物から得られる層及び他の熱可塑性樹脂から得られる層を有する積層体に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明で使用する多層構造重合体粒子(A)は、ゴム成分層(I)を内部に少なくとも1層有し、かつ熱可塑性樹脂成分層(II)を少なくとも最外層として有する。本発明で使用する多層構造重合体粒子(A)を構成する層の数は、2層以上であればよく、3層で構成されていても4層以上で構成されていてもよい。2層構造の場合は、層(I)(中心層)/層(II)(最外層)の構成であり、3層構造の場合は、層(I)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)、層(I)(最内層)/層(II)(中間層)/層(II)(最外層)又は層(II)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)の構成であり、4層構造の場合には、例えば、層(I)(最内層)/層(II)(中間層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)の構成を有することができる。これらの中でも、取扱い性に優れる点において、層(I)(中心層)/層(II)(最外層)の2層構造;又は層(I)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)若しくは層(II)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)の3層構造が好ましい。
【0010】
また、層(I)と層(II)との総質量比は、(I)/(II)において30/70〜90/10の範囲内にあることが必要である。層(I)の割合がこの範囲より小さいと多層構造重合体粒子(A)を成形して得られる成形品における弾性回復性が不十分となり、一方層(I)の割合がこの範囲より大きいと層構造を完全な形態では形成しにくくなり、溶融流動性が極端に低下してしまうため、他の成分(物性改善剤等)との混練及び成形が困難となる。なお、層(I)の総質量とは、多層構造重合体粒子(A)中の層(I)が1層のみの場合には該層の質量であり、層(I)が2層以上の場合にはそれらの層の質量の和である。同様に、層(II)の総質量とは、多層構造重合体粒子(A)中の層(II)が1層のみの場合には該層の質量であり、層(II)が2層以上の場合にはそれらの層の質量の和である。層(I)と層(II)との総質量比は、(I)/(II)において50/50〜90/10の範囲内にあることが好ましく、60/40〜90/10の範囲内にあることがより好ましい。
【0011】
本発明で使用する多層構造重合体粒子(A)における層(I)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、好ましくは55〜99.9質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%、好ましくは44.9〜0質量%、及び多官能性単量体0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜2質量%からなる単量体混合物(i)の共重合によって形成されるゴム弾性を有する重合体層である。
【0012】
層(I)を形成するために用いられるアクリル酸エステルの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート等のアクリル酸とC〜C18の飽和脂肪族アルコールとのエステル;シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸とC又はCの脂環式アルコールとのエステル;フェニルアクリレート等のアクリル酸とフェノール類とのエステル;ベンジルアクリレート等のアクリル酸と芳香族アルコールとのエステルなどが挙げられる。アクリル酸エステルは、層(I)(多層構造重合体粒子(A)が2以上の層(I)を有する場合には、それぞれの層(I))を形成するために用いられる単量体混合物(i)に対して50〜99.99質量%の範囲において、単独で又は2種以上混合して用いられる。アクリル酸エステルの量が50質量%より少ないと多層構造重合体粒子(A)のゴム弾性が低下することになり、また、99.99質量%を超えると多層構造重合体粒子(A)の構造が形成されなくなるので、いずれも好ましくない。
【0013】
層(I)を形成するために用いられる多官能性単量体は、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する単量体であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸等の不飽和モノカルボン酸とアリルアルコール、メタリルアルコール等の不飽和アルコールとのエステル;前記の不飽和モノカルボン酸とエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等のジオールとのジエステル;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸等のジカルボン酸と前記の不飽和アルコールとのエステル等が包含され、具体的には、アクリル酸アリル、アクリル酸メタリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸メタリル、桂皮酸アリル、桂皮酸メタリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性単量体の中でも、メタクリル酸アリルが特に好ましい。なお、前記の「ジ(メタ)アクリレート」は、「ジアクリレート」と「ジメタクリレート」との総称を意味する。
【0014】
多官能性単量体は、層(I)を形成するために用いられる単量体混合物(i)に対して0.01〜10質量%の範囲において、単独で又は二種以上を組み合わせて用いられる。多官能性単量体の上記使用量は、多層構造重合体粒子(A)が2以上の層(I)を有する場合には、原則として、それぞれの層(I)において満足される必要がある。ただし、2以上の層(I)の少なくとも2つが隣り合っている場合、例えば多層構造重合体粒子(A)が層(I)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)より構成されている場合には、隣接層(I)同士、例えば上記層(I)(最内層)と層(I)(中間層)は、隣接層全体として上記量的関係(すなわち、単量体混合物(i)に対して多官能性単量体0.01〜10質量%)を満足していればよい。すなわち、隣接層(I)の一方では多官能性単量体の量が0.01質量%未満(0質量%も含む)である場合があり得る。この場合、多官能性単量体の量が0.01質量%未満である層(I)は、隣接層(I)全体の内側(多層構造重合体粒子(A)の中心により近い側)にある場合よりも、もっとも外側にある場合の方が、本発明の熱可塑性樹脂組成物のより良い流動性の観点から好ましい。
多官能性単量体の量が、10質量%より多いと、多層構造重合体粒子(A)がゴム弾性を示さなくなり、弾性回復性が不十分となるので好ましくない。また、多官能性単量体の量が0.01質量%より少ないと、層(I)が粒子構造として形成されなくなるので好ましくない。
【0015】
層(I)を形成するためには、アクリル酸エステル及び多官能性単量体以外に、アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体を併用することができる。該他の単官能性単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート等のメタクリル酸とC〜C22の飽和脂肪族アルコールとのエステル;シクロヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸とC又はCの脂環式アルコールとのエステル;フェニルメタクリレート等のメタクリル酸とフェノール類とのエステル、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸と芳香族アルコールとのエステルなどのメタクリル酸エステルが代表的であるが、他にも、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチル−3−エチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、3−メチル−1,3−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、シクロペンタジエン、クロロプレン、ミルセン等の共役ジエン系単量体等が挙げられる。これらの単量体は、必要に応じて、層(I)(多層構造重合体粒子(A)が2以上の層(I)を有する場合には、それぞれの層(I))を形成するために用いられる単量体混合物(i)に対して49.99質量%以下の割合において、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。上記の他の単官能性単量体の割合が49.99質量%を超える場合は、多層構造重合体粒子(A)の耐候性が不十分となるので好ましくない。
【0016】
本発明で使用する多層構造重合体粒子(A)における層(II)は、メタクリル酸エステル40〜100質量%、好ましくは60〜99質量%、さらに好ましくは80〜99質量%、及びそれと共重合可能な他の単量体60〜0質量%、好ましくは40〜1質量%、さらに好ましくは20〜1質量%からなる単量体(ii)の重合によって形成される熱可塑性を有する重合体層である。メタクリル酸エステルの量が40質量%未満であると多層構造重合体粒子(A)の耐候性が不十分となる。
【0017】
層(II)を形成するために用いられるメタクリル酸エステルの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等が挙げられ、好ましくはメチルメタクリレートである。
【0018】
層(II)を形成するために用いられる共重合可能な他の単量体の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート等のアクリル酸とC〜C18の飽和脂肪族アルコールとのエステル;シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸とC又はCの脂環式アルコールとのエステル;スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミド、N−(クロロフェニル)マレイミド等のマレイミド系単量体;前記例で示した多官能性単量体等が挙げられる。これらの中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0019】
本発明で使用する多層構造重合体粒子(A)においては、層(I)はゴム弾性を有する重合体成分から構成され、層(II)は熱可塑性を有する重合体成分から構成されるように、それぞれ、上記した単量体の種類及び使用割合の範囲内で適宜条件を選択すればよい。
【0020】
本発明で使用する多層構造重合体粒子(A)においては、その中に含有される層(II)のうち少なくとも粒子の最外層を構成する共重合体の数平均分子量がGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法での測定に基づいて30,000以下であることが重要である。数平均分子量が30,000を超える場合、多層構造重合体粒子(A)を成形して得た成形品における弾性回復性が不十分となり、さらに溶融流動性が低下する場合もある。数平均分子量の下限については、必ずしも厳密な制限はないが、生産工程における多層構造重合体粒子(A)の通過性の点からは、数平均分子量は1,000を下回らないことが好ましい。弾性回復性及び生産工程での通過性の両立の点からは、数平均分子量を3,000〜20,000の範囲内とすることが特に好ましい。
【0021】
本発明で使用する多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径は、150nm以下である。150nmより大きいと弾性回復性が不十分となる。また、溶融流動性が良くない場合もある。平均粒子径の下限値については特に限定されるものではないが、多層構造重合体粒子(A)の所定の層構造を形成させやすい観点からは、平均粒子径は30nm以上であることが好ましい。平均粒子径はさらに好ましくは80〜120nmである。
【0022】
本発明で使用する多層構造重合体粒子(A)としては、特に物性面および製造の簡便性の点から最内部にゴム成分層(Ia)を有し、該最内部の外部表面を覆う状態で位置する隣接部にゴム成分層(Ib)を有し、かつ最外部に熱可塑性樹脂成分層(II)を有する3層構造の多層構造重合体粒子(A)が好ましい。
層(Ia)及び(Ib)を形成するために用いられるアクリル酸エステル、多官能性単量体及び該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体としては、前述の層(I)を形成するために用いられる単量体を使用することができる。
【0023】
本発明の好ましい態様の多層構造重合体粒子(A)を成形して得た成形品において、優れた弾性回復性と良好な柔軟性及び他の機械的物性とを両立させるには、単量体混合物(ia)におけるアクリル酸エステルの含有率(質量%)と単量体混合物(ib)におけるアクリル酸エステルの含有率(質量%)との差〔(ia)(単位:質量%)−(ib)(単位:質量%)又は(ib)(単位:質量%)−(ia)(単位:質量%)〕が3質量%以上の値となることが一般に好ましく、(ia)(単位:質量%)−(ib)(単位:質量%)が3質量%以上の値となることがより好ましい。
【0024】
本発明の好ましい態様の多層構造重合体粒子(A)においては、層(Ia)及び層(Ib)がゴム弾性を有する重合体成分から構成され、層(II)が熱可塑性を有する重合体成分から構成されるように、それぞれ上記したような単量体の種類及び使用割合の範囲内で適宜条件を選択すればよい。
【0025】
本発明の好ましい態様の多層構造重合体粒子(A)においては、ゴム成分層(Ia)及び(Ib)の質量の和と熱可塑性樹脂成分層(II)の質量との比は、〔(Ia)+(Ib)〕/(II)において、30/70〜90/10の範囲内である。層(Ia)及び層(Ib)の質量の和の割合がこの範囲より小さいと多層構造重合体粒子(A)を成形して得られる成形品における弾性回復性及び柔軟性が不十分となり、反対に層(Ia)及び層(Ib)の質量の和の割合がこの範囲より大きいと層構造を完全な形態では形成しにくくなり、溶融流動性が極端に低下してしまうため成形が困難となる。本発明の効果をより顕著なものとする目的においては、ゴム成分層(Ia)及び(Ib)の質量の和と熱可塑性樹脂成分層(II)の質量との比は、〔(Ia)+(Ib)〕/(II)において、50/50〜90/10の範囲内であることが好ましく、60/40〜90/10の範囲内であることがより好ましい。
【0026】
また、本発明の好ましい態様の多層構造重合体粒子(A)においては、ゴム成分層(Ia)の質量とゴム成分層(Ib)の質量との比は、(Ia)/(Ib)において、5/95〜95/5、好ましくは20/80〜80/20の範囲内である。ゴム成分層(Ia)の質量とゴム成分層(Ib)の質量との比が5/95〜95/5の範囲内である場合、一般に、優れた弾性回復性と適度な柔軟性及びこれ以外の機械的物性とを両立させることができる。
【0027】
なお、本発明の好ましい態様の多層構造重合体粒子(A)は、最内部のゴム成分層(Ia)、その隣接部のゴム成分層(Ib)及び最外部の熱可塑性樹脂成分層(II)の3層を基本構成とするが、層(Ib)と層(II)との間に1つ以上の任意の重合体層が介在していてもよい。ただし、本発明の効果を特に顕著に発揮させる目的においては、ゴム成分層(Ia)、ゴム成分層(Ib)及び熱可塑性樹脂成分層(II)の質量の和が多層構造重合体粒子(A)全体の質量に対して80%以上であることが好ましく、多層構造重合体粒子(A)がゴム成分層(Ia)、ゴム成分層(Ib)及び熱可塑性樹脂成分層(II)のみから構成されることがより好ましい。
【0028】
本発明で使用する多層構造重合体粒子(A)において、特に透明性が重視される場合には、その中に含有されるゴム成分層(I)を構成するすべての層について、中心から数えてn層目の単量体混合物の水に対する溶解度A及びこれと隣接するn+1層目の単量体混合物の水に対する溶解度An+1との間に次式の関係が成立するよう単量体混合物を構成する単量体の種類及び質量分率を選択することが好ましい。
|A−An+1|≦0.36
(式中、Aは中心から数えてn番目の層を形成する単量体混合物を構成する各単量体における質量分率と室温での水に対する溶解度(g/100gHO)との積の総和を表し、An+1はn+1番目の層を形成する単量体混合物を構成する各単量体における質量分率と室温での水に対する溶解度(g/100gHO)との積の総和を表す。)
本発明において好ましく用いられる単量体の例及びその20℃における水に対する溶解度を示すと、メチルメタクリレート:1.6g/100gHO、n−ブチルアクリレート:0.08g/100gHO、スチレン:0.04g/100gHO等である。
−An+1の絶対値が0.36以下である場合、多層構造重合体粒子(A)を成形して得た成形品における透明性が向上する。
【0029】
本発明で使用する多層構造重合体粒子(A)においては、その中に含有される任意の1つの層(I)を構成する共重合体の屈折率と任意の1つの層(II)を構成する重合体の屈折率との間のすべての組合せにおいて次式の関係を成り立たせるよう、各層を形成する単量体混合物(i)又は単量体(ii)を構成する単量体の種類及び質量分率を選択することが好ましい。
|n(I)−n(II)|<0.005
各層を構成する共重合体の屈折率は、「POLYMER HANDBOOK」(Wiley Interscience, New York)等の公知の文献から室温におけるホモポリマーの屈折率(例:ポリメチルメタクリレート1.4893、ポリn−ブチルアクリレート1.466、ポリスチレン1.59、ポリメチルアクリレート1.472等)を引用し、共重合組成割合に応じて加成則により求めることができる。
(I)−n(II)の絶対値が0.005未満である場合、多層構造重合体粒子(A)を成形して得た成形品における透明性が向上する。n(I)−n(II)の絶対値は、0.001以下であるのがより好ましい。
【0030】
層(I)及び層(II)を形成する単量体の組成は、層(I)がゴム弾性を有する重合体成分から構成され、層(II)が熱可塑性を有する重合体成分から構成されるように、それぞれ、上記した単量体の種類及び使用割合の範囲内で適宜条件を選択すればよい。また、層(I)を構成する相互に隣接し相互に組成が異なる少なくとも2層のゴム成分層は、ゴム成分層のうちの最外部に存在する層の屈折率を、その内側に隣接するゴム成分層の屈折率とその外側に隣接する熱可塑性樹脂成分層の屈折率との中間になるように、形成する単量体の種類及び量を相異させておくのが、多層構造重合体粒子(A)の透明性の点から好ましい。
【0031】
本発明で使用する多層構造重合体粒子(A)は、ゴム成分層を形成させるための重合反応工程と熱可塑性樹脂成分層を形成させるための重合反応工程とを所定の順序で行うことによって、中心部から外部に向かって順次層を形成させることからなる、少なくとも1つのゴム成分層を内部に有し、かつ少なくとも1つの熱可塑性樹脂成分層を少なくとも最外部に有する、2以上の層からなる多層構造重合体粒子(A)を製造するための公知の製造方法に準じて製造することができる。その際、以下の点に留意する。
【0032】
(1)ゴム成分層(I)を形成させるための重合反応工程(a)において、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%及び多官能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物(i)を共重合させること。
(2)熱可塑性樹脂成分層(II)を形成させるための重合反応工程(b)において、メタクリル酸エステル40〜100質量%及び該メタクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体60〜0質量%からなる単量体(ii)を重合させること。
【0033】
(3)該重合反応工程(b)のうち、少なくとも、最外部の熱可塑性樹脂成分層(II)を形成させるための重合反応工程において、分子量調節剤を単量体(ii)に対して、好ましくは0.4〜10質量%の範囲内となる割合で使用して重合反応を行うこと。
(4)全重合反応工程で使用する単量体混合物(i)の総質量と単量体(ii)の総質量との比を、単量体混合物(i)/単量体(ii)において30/70〜90/10の範囲内とすること。
(5)全ての重合反応工程が終了した時点における多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径が150nm以下となるように制御すること。
【0034】
さらに、本発明の好ましい態様の多層構造重合体粒子(A)は、多層構造重合体粒子(A)を製造するための公知の製造方法に準じ、ゴム成分層(Ia)を形成させるための重合反応操作、ゴム成分層(Ib)を形成させるための重合反応操作及び熱可塑性樹脂成分層(II)を形成させるための重合反応操作を含む、所定の重合体層を形成させるための重合反応操作を所定の順序で行うことにより、中心部から外部に向かって順次層を形成させることによって製造することができる。その際、以下の点に留意する。
【0035】
(1)ゴム成分層(Ia)及び(Ib)をそれぞれ形成させるための重合反応操作(a)及び(b)において、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%、及び多官能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物(ia)及び(ib)をそれぞれ共重合させること。
(2)単量体混合物(ia)におけるアクリル酸エステルの含有率(質量%)と単量体混合物(ib)におけるアクリル酸エステルの含有率(質量%)との差が3質量%以上となるよう設定すること。
(3)熱可塑性樹脂成分層(II)を形成させるための重合反応操作(c)において、メタクリル酸エステル40〜100質量%及び該メタクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体60〜0質量%からなる単量体(ii)を重合させること。
(4)上記重合反応操作(c)において、層(II)を構成する重合体の数平均分子量が30,000以下となるように反応条件を制御すること。
(5)単量体混合物(ia)と単量体混合物(ib)の質量の和と単量体(ii)の質量との比が、〔(ia)+(ib)〕/(ii)において30/70〜90/10の範囲内となるよう設定すること。
(6)単量体混合物(ia)の質量と単量体混合物(ib)の質量との比が、(ia)/(ib)において5/95〜95/5の範囲内となるよう設定すること。
(7)すべての重合反応操作が終了した時点における多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径が150nm以下となるように制御すること。
【0036】
本発明で使用する多層構造重合体粒子(A)を製造するための重合法については特に制限はなく、例えば、通常の多層構造重合体粒子(A)を製造するための公知の重合法に準じて、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、又はこれらの組み合わせを採用することができる。
【0037】
例えば、乳化重合では公知の手段に従い、各層を形成させるための重合を行うことにより、多層構造重合体粒子(A)を得ることができる。乳化重合の温度としては、必ずしも限定されないが一般的な範囲は0〜100℃である。ここで使用する乳化剤としては、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸のアルカリ金属塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪アルコールの硫酸エステル塩;ロジン酸カリウム等のロジン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルアリールスルホン酸等;ポリオキシエチレンアルキルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩が挙げられ、これらは、1種類ないし2種類以上の組合せで用いられる。乳化重合で使用する重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が一般的である。ラジカル重合開始剤の具体例としては、過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物を単独で用いることができる。また、ラジカル重合開始剤として、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機ハイドロパーオキサイド類と、遷移金属塩等の還元剤との組合せによるレドックス系開始剤も使用することができる。
【0038】
上記のとおり、公知の乳化重合法に従って所定の単量体混合物の所定量を順次重合させることにより、所定の重合体層を、粒子の中心部から外部に向かって段階的に形成させることができるが、本発明の多層構造重合体粒子(A)を製造するためには、少なくとも最外層を形成させるための重合反応工程において、分子量調節剤を、その工程で使用する単量体(ii)に対して、好ましくは0.4〜10質量%の範囲内となる割合で使用する。通常の多層構造体粒子を製造する場合、最外部の熱可塑性樹脂成分層を形成させるための重合反応において使用される分子量調節剤の使用量は、一般に単量体に対して0〜0.3質量%程度であるが、このように0.4質量%未満の場合には、その層を構成する熱可塑性樹脂成分の数平均分子量が高くなり過ぎ、多層構造重合体粒子(A)を成形して得られる成形品の弾性回復性が不十分となり、さらに成形流動性が不十分となる場合もある。分子量調節剤の量は上記基準において高々10質量%あれば十分であり、それ以上の量を使用しても、もはやそれ以上の弾性回復性付与効果の向上はなく、むしろ多層構造重合体粒子(A)における分子量調節剤の残存量が多くなるので望ましくない。分子量調節剤の量は、単量体(ii)に対して0.4〜5質量%の範囲内であるのが好ましく、0.6〜2質量%の範囲内であるのがより好ましい。
【0039】
分子量調節剤の具体例としては、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類;ターピノーレン、ジペンテン、t−テルピネン及び少量の他の環状テルペン類よりなるテルペン混合物;クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。これらの中でも、n−オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタンが好ましい。
【0040】
乳化重合によって得られる多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径は乳化剤の添加量等の重合条件によって影響されるので、それらの条件を適宜選択することによって、容易に最終的な多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径を150nm以下に制御することができる。
【0041】
乳化重合後、生成した多層構造重合体粒子(A)の重合反応系からの分離取得も、公知の手法に従って行うことができ、例えば、酸析法、塩析法、スプレードライ法、凍結凝固法などを採用することができる。なお、分離取得された多層構造重合体粒子(A)は、熱可塑性樹脂成分からなる最外層において粒子間相互で部分的に融着していても差し支えない。
【0042】
本発明の熱可塑性樹脂組成物のもう1つの必須成分であるメタクリル系熱可塑性樹脂(B)は、本発明の熱可塑性樹脂組成物をフィルム状に成形する際において、製膜性および薄膜性に効果を発揮する。
かかるメタクリル系熱可塑性樹脂(B)は、メタクリル酸メチルとこれと共重合可能な他のビニル系単量体との、前者/後者の質量比で60/40〜100/0、好ましくは70/30〜90/10の、(共)重合体である。メタクリル酸メチルの割合が60/40より少ないと製膜性が不十分になる。
【0043】
ここでこれと共重合可能な他のビニル系単量体としては、特に制限はなく、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等の、メタクリル酸メチルを除くメタクリル酸エステル;酢酸ビニル;スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のα、β−不飽和カルボン酸;N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物などを挙げることができる。これらのビニル系単量体は各単独でもしくは2種以上併用して用いることができる。
【0044】
メタクリル系熱可塑性樹脂(B)は、また、クロロホルム溶液中20℃で3〜6dl/gの極限粘度を有することが必要である。3dl/g未満では熱可塑性樹脂組成物のフィルム製膜性の十分な改善効果が認められず、6dl/gを超えると溶融流動性の低下や未溶融に起因する、フィルム、シート等の成形品の透明性の低下を招きやすく好ましくない。
【0045】
メタクリル系熱可塑性樹脂(B)を製造するための重合法については、特に制限がなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合等の公知の重合方法を採用することができる。乳化重合法を用いた場合、メタクリル系熱可塑性樹脂(B)は、通常、0.05〜0.5μm程度の粒子径を有する重合体粒子として製造することができる。
【0046】
メタクリル系熱可塑性樹脂(B)は、単一組成および単一極限粘度のいわゆる単層粒子であっても、また、組成または極限粘度の異なる2層以上の多層構造粒子であってもよい。メタクリル系熱可塑性樹脂(B)として好ましい構造としては、単層粒子、又は内層に低極限粘度の層を有し、外層に極限粘度5dl/g以上の高極限粘度の層を有する2層構造粒子が挙げられる。多層構造粒子の場合の極限粘度は、単層粒子の場合と同様の方法により測定することができ、その値が3〜6dl/gの範囲に入っていればよい。多層構造粒子は、例えば乳化重合法により、中心部から外部に向って順次、組成又は極限粘度の異なる層を形成させることにより製造することができる。
【0047】
メタクリル系熱可塑性樹脂(B)の配合量は、アクリル系多層重合体粒子(A)100質量部に対し、0.05〜10質量部であり、好ましくは0.1〜5質量部であり、さらに好ましくは0.5〜4質量部である。メタクリル系熱可塑性樹脂(B)が0.05質量部未満であればフィルム製膜性の十分な改善効果が認められず、一方、10質量部を超えると溶融流動性の低下を招きやすくなる。
【0048】
本発明の、多層構造重合体粒子(A)とメタクリル系熱可塑性樹脂(B)とを必須成分とする、熱可塑性樹脂組成物には、さらに、メタクリル系熱可塑性樹脂(C)を配合することができる。メタクリル系熱可塑性樹脂(C)を配合することによって、製膜性がさらに向上する。
【0049】
かかるメタクリル系熱可塑性樹脂(C)は、メタクリル酸メチルとこれと共重合可能な他のビニル系単量体との、前者/後者の質量比で80/20〜100/0、好ましくは85/15〜97/3の、(共)重合体である。メタクリル酸メチルの割合が80/20より少ないと製膜性のさらなる向上が達成されない。
ここでこれと共重合可能な他のビニル系単量体としては、特に制限はなく、例えば、メタクリル系熱可塑性樹脂(B)の定義に示される上記「これと共重合可能な他のビニル系単量体」と同様なものを用いることができ、(B)で用いるものと同一の単量体であっても異なる単量体であってもよい。
【0050】
メタクリル系熱可塑性樹脂(C)は、また、クロロホルム溶液中20℃で0.1〜1.0dl/gの極限粘度を有することが必要であり、0.2〜0.8dl/gの極限粘度を有することが好ましい。極限粘度が0.1dl/g未満では得られる熱可塑性樹脂組成物を溶融成形する際の粘り強さが低下し、1.0dl/gを超えると溶融成形する際の流動性が低下する。
【0051】
メタクリル系熱可塑性樹脂(C)を製造するための重合法については、特に制限がなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合等の公知の重合方法を採用することができる。
【0052】
メタクリル系熱可塑性樹脂(C)の配合量は、アクリル系多層重合体粒子(A)100質量部に対し、1〜100質量部であり、好ましくは5〜70質量部であり、さらに好ましくは10〜50質量部である。メタクリル系熱可塑性樹脂(C)が1質量部未満であれば製膜性のさらなる向上の効果が得られず、100質量部を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品の柔軟性が損なわれる。
【0053】
メタクリル系熱可塑性樹脂(C)は、上記の条件が満たされる限り、一般にメタクリル樹脂として市販されているもの、及びISO 8257−1:1997(E)「プラスチック−ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)成形用および押し出し用材料」(”Plastics−Poly(Methyl Methacrylate)(PMMA)moulding and extrusion material−”)に規定されている材料を包含する。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、該組成物又はそれを成形して得られる成形品の物性を改善するための種々の物性改善剤の1種又は2種以上を、所望に応じて、本発明の効果を損なわない程度において、配合してもよい。かかる物性改善剤としては、特に制限はなく、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、染料、顔料、滑剤などが挙げられる。
【0055】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は上記多層構造重合体粒子(A)及び上記メタクリル系熱可塑性樹脂(B)、及び使用する場合のメタクリル系熱可塑性樹脂(C)、及び所望される場合の物性改善剤を混合及び/又は混練、好ましくは混合又は混合後混練することにより製造することができる。この際、混合機としてはタンブラー、ミキサー、ブレンダー等、混練機としてはスクリュー押出機等を用いることができる。
【0056】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は溶融成形が可能であり、熱可塑性樹脂を成形するのに一般に採用されている成形方法および成形装置を用いて成形することができる。例えば、粉体またはペレットなどの形状にして、押出成形、射出成形、インフレーション法、ブロー成形、プレス成形、カレンダー成形、溶融積層成形などによって、各種成形品、例えば、フィルム、シート、板、管、棒、その他の任意の形状の三次元構造の成形品や積層体を製造することができる。成形後の成形品は、一般に、離型性に優れるため、本発明の熱可塑性樹脂組成物はフィルム、シート又は微細な形状の成形品の製造に好適である。また、成形品は、一般に、弾性回復に優れるため、自動車内装用の軟質部材、包装フィルム、デスクマット等の用途に好適に使用される。
【0057】
本発明の熱可塑性樹脂組成物から成形した成形品は、JIS K7105に準じて測定したヘイズ値が10%以下であることが好ましい。
【0058】
特に、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、従来、アクリル系樹脂から製造するには適さないとされていたフィルムやシートなどの薄物の成形品の製造に適しており、厚みのムラが少なくて製膜性に優れているうえに、薄膜化が可能である。本発明の熱可塑性樹脂組成物からフィルム、シートなどを製造するに際しては、Tダイによる押出成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法などの公知の成形方法を採用することができる。
【0059】
本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られるフィルムやシートの厚さについては、特に制限はないが、1000〜20μm程度であるのが通常であり、特に300〜20μm程度の薄い厚さのものを容易に得ることができる。
【0060】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られるフィルム、シート、板等の成形品は他の熱可塑性重合体との接着性に優れているので、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、それから得られる層及び他の熱可塑性重合体から得られる層を有する積層体とするのに適している。このような積層体の製造法については、特に制限がなく、例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物と他の熱可塑性重合体とを溶融共押出して積層体を製造する方法、他の熱可塑性重合体から予めフィルム、シート、板などを製造しておき、その上に本発明の熱可塑性樹脂組成物を押出被覆して積層体を製造する方法、他の熱可塑性重合体から予め製造したフィルム、シート、板などを型内に配置した状態で本発明の熱可塑性樹脂組成物を射出成形などにより型内に導入して積層体を製造する方法、他の熱可塑性重合体から予め製造したフィルム、シート、板などと本発明の熱可塑性樹脂組成物とをプレス成形して積層体を製造する方法などを挙げることができる。
【0061】
本発明の積層体に使用する他の熱可塑性樹脂としてはポリオレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂を挙げることができる。ポリオレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ABS、AES(アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体)、AAS(アクリロニトリル−アクリレート−スチレン共重合体)、ACS(アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体)、MBS、ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、他のアクリル系多層構造重合体粒子等のアクリル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリカーボネート;エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸もしくはアクリル酸エステル共重合体;エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体等のエチレン−メタクリル酸エステル共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;エチレン−ビニルアルコール共重合体;ポリビニルアルコール;エチレン系アイオノマー;ポリフッ化ビニリデン等を挙げることができる。
【0062】
本発明の積層体における、本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られる層と他の熱可塑性樹脂から得られる層の構成については、特に制限はなく、それぞれ1層ずつのみから構成される場合のみならず、1層と2層もしくはそれ以上の複数層、2層もしくはそれ以上の複数層と2層もしくはそれ以上の複数層とから構成されていてもよい。またそれらの層の並び方も任意であり、本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られる層と他の熱可塑性樹脂から得られる層とが交互に並んでいても、一方の単層もしくは複数層に続いて他方の複数層が並んでいても、ランダムに並んでいてもよい。
【0063】
本発明の積層体の厚さについては、特に制限はないが、1000〜20μm程度が通常であり、300〜30μm程度が好ましい。また、本発明の積層体における、本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られる層の合計の厚さについては、特に制限はないが、900〜15μm程度が通常であり、250〜25μm程度が好ましい。本発明の積層体における、他の熱可塑性樹脂から得られる層の合計の厚さについては、特に制限はないが、100〜3μm程度が通常であり、50〜5μm程度が好ましい。
【0064】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例の中の各測定値は以下の評価法に従った。
多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径は、重合完了後のラテックスから採取した試料を用いて、レーザー粒径解析装置PAR−III(大塚電子製)を用いて動的散乱法により測定し、キュムラント法により解析し求めた。
最外層を構成する重合体成分の数平均分子量としては、多層構造重合体粒子(A)の試料を室温下にトルエン中で十分に攪拌した後、遠心分離して得られた溶液を用いてGPC法により測定した数平均分子量を、本発明において最外層を構成する重合体成分の数平均分子量とみなした。
【0065】
フィルムは、小型2軸混練機(15mmφ、L/D=28)(東洋精機)、Tダイ(リップ150mm×0.5mm)を用い、シリンダー温度220℃、冷却ロール40℃の条件下で製造し、以下の4項目の方法で評価を行った。
(1)フィルム薄膜性
以下の式で表されるフィルム歪量により、冷却ロール引取り速度を増加させ、フィルムが破断した時の歪量で評価した。
フィルム歪量=ln(V/V
(ここで、V=Tダイからの吐出速度、V=冷却ロールの引き取り速度)
フィルム歪量の値は大きいほどフィルム薄膜性に優れている。
【0066】
(2)フィルム製膜性
上記のフィルム破断時の歪量から僅かに歪量を低下させた条件で得られたフィルムの最大幅(Wmax)と最小幅(Wmin)から、次式によりフィルム幅変動率を求め、下記の評価基準にしたがってフィルム製膜性を評価した。
フィルム幅変動率=(Wmax−Wmin)/Wmax×100(%)
[評価基準]
○:フィルム幅変動率が5%未満であり、フィルム製膜性が極めて良好である。
△:フィルム幅変動率が5〜20%であり、フィルム製膜性がほぼ良好である。
×:フィルム幅変動率が20%を超え、フィルム製膜性が極めて不良である
【0067】
(3)柔軟性
柔軟性の評価は、金型温度200℃の条件下で厚さ3mmのプレスシートを作製し、A型硬度計(オスカー製)を用いて、JIS K 6253に準じて硬度を測定することにより行った。
(4)フィルムの透明性
フィルムのヘイズ(%)を、厚さ0.2mm直読ヘイズコンピューター(スガ試験機製)を用いて、JIS K 7105に準じて測定した。
【0068】
製造例1(多層構造重合体粒子(A−1)の製造)
窒素雰囲気下、攪拌翼、冷却管及び滴下ロートを装着した重合器に、蒸留水200質量部、乳化剤としてのネオペレックスF−25(花王製)0.6質量部、及び炭酸ナトリウム0.1質量部を加え、80℃に加熱して均一に溶解させた。次いで、同温度において、ペルオキソ二硫酸カリウム0.05質量部を加えた後、アクリル酸n−ブチル30質量部、メタクリル酸メチル13.5質量部、スチレン6.5質量部、メタクリル酸アリル0.2質量部、及び乳化剤としてのアデカコールCS−141E(旭電化製)0.25質量部からなる混合物を滴下ロートより1時間かけて滴下し、1層目を形成した。滴下終了後、同温度でさらに1時間反応を続け、ガスクロマトグラフィーで各単量体がすべて消費されたことを確認した。
【0069】
次いで、得られた共重合体ラテックスにペルオキソ二硫酸カリウム0.025質量部を加えた後、アクリル酸n−ブチル20質量部、メタクリル酸メチル0.5質量部、スチレン4.5質量部、メタクリル酸アリル0.1質量部、及び乳化剤としてのアデカコールCS−141E(旭電化製)0.125質量部からなる混合物を滴下ロートより30分間かけて滴下し、2層目を形成した。滴下終了後さらに80℃で1時間反応を続け、ガスクロマトグラフィーで各単量体がすべて消費されたことを確認した。
【0070】
さらに、得られた共重合体ラテックスにペルオキソ二硫酸カリウム0.025質量部を加えた後、メタクリル酸メチル23.75質量部、アクリル酸メチル1.25質量部、n−オクチルメルカプタン0.25質量部、及び乳化剤としてのアデカコールCS−141E(旭電化製)0.125質量部からなる混合物を滴下ロートより30分間かけて滴下し、3層目を形成した。滴下終了後さらに80℃で1時間反応を続け、ガスクロマトグラフィーで各単量体がすべて消費されたことを確認し、重合を終了した。得られたラテックスにおける多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径は104nmであった。
【0071】
このラテックスを−20℃に24時間冷却して凝集させた後、凝集物を取り出し、40℃の熱水で3回洗浄した。60℃で2日間減圧乾燥して、凝集粉末状の3層型多層構造重合体粒子(A−1)を得た。なお、最外層を構成する重合体成分の数平均分子量は、18,000であった。
【0072】
製造例2(メタクリル系熱可塑性樹脂(B−1)の製造)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水200質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリム1質量部及び炭酸ナトリム0.05質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム0.02質量部を投入し、5分間攪拌した後、メタクリル酸メチル95質量部、アクリル酸エチル5質量部からなる単量体混合物を200分かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合添加率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行ってメタクリル系超高分子重合体としてのメタクリル系熱可塑性樹脂を含むエマルジョンを得た。粒子径は0.09μmであった。
続いて、このメタクリル系熱可塑性樹脂を含むエマルジョンを−30℃で4時間かけて凍結させた。凍結したエマルジョンの2倍量の80℃温水に凍結エマルジョンを投入、溶解してスラリーとした後、20分間80℃に保持した後、脱水し、80℃で乾燥して粉体形状のメタクリル系熱可塑性樹脂(B−1)を得た。得られた重合体0.1gを100mlのクロロホルムに溶解し、20℃の温度で極限粘度を測定した結果4dl/gであった。
【0073】
製造例3(メタクリル系熱可塑性樹脂(C−1)の製造)
攪拌機、温度計、加熱・冷却ジャケットを備えた重合層内に、脱イオン水100質量部、メタクリル酸メチル86.5質量部、アクリル酸メチル13.5質量部、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1質量部、連鎖移動剤としてノルマルオクチルメルカプタン0.32質量部、少量の分散剤及びpH調整剤を加えた。激しく攪拌しながら70℃に加熱し、70℃で100分保持した。ゲル化により、重合液温度が上昇し、重合液温度が最高温度に達してから30分保持した後、重合を終了させ、メタクリル系熱可塑性樹脂(C−1)を得た。得られた重合体0.1gを100mlのクロロホルムに溶解し、20℃の温度で極限粘度を測定した結果、0.51dl/gであった。
【0074】
実施例1
製造例1で得られた粉末状の3層型多層構造重合体粒子(A−1)100質量部、製造例2で得られたメタクリル系熱可塑性樹脂(B−1)1質量部、酸化防止剤(イルガノックス1010、チバガイギー製)0.3質量部、紫外線吸収剤(JF−77、城北化学製)0.1質量部、及びエチレンビスオレイン酸アミド(スリパックス O、日本化成製)0.3質量部をスーパーミキサーにて混合し、25φベント付き2軸押出し機を用い、200℃にてペレット化した。得られたペレットを上記した方法でフィルム化あるいはプレス成形し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0075】
実施例2
実施例1において、メタクリル系熱可塑性樹脂(B−1)を5質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、フィルム化あるいはプレス成形し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0076】
実施例3
実施例2において、極限粘度5.2dl/gのメタクリル系熱可塑性樹脂(B−2)(パラロイドK−125P、呉羽化学製)に変更した以外は実施例2と同様にして、フィルム化あるいはプレス成形し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0077】
実施例4
実施例1において、メタクリル系熱可塑性樹脂(C−1)を20質量部追加した以外は実施例1と同様にして、フィルム化あるいはプレス成形し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0078】
比較例1
製造例1で得られた粉末状の3層型多層構造重合体粒子(A−1)100質量部、酸化防止剤(イルガノックス1010、チバガイギー製)0.3質量部、紫外線吸収剤(JF−77、城北化学製)0.1質量部、及びエチレンビスオレイン酸アミド(スリパックス O、日本化成製)0.3質量部をスーパーミキサーにて混合した後、実施例1と同様にしてフィルム化あるいはプレス成形し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0079】
比較例2
実施例3において、メタクリル系熱可塑性樹脂(B−2)の使用量を15質量部に変更した以外は実施例3と同様にして、フィルム化あるいはプレス成形し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0080】
比較例3
実施例4において、メタクリル系熱可塑性樹脂(B−1)を用いなかった以外は実施例4と同様にして、フィルム化あるいはプレス成形し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
Figure 2004091741
【0082】
上記表1から明らかなように、実施例1〜4で得られた本発明に従う熱可塑性樹脂組成物は、薄膜性(フィルム破断時歪量)、製膜性(フィルム幅変動率)及び柔軟性(硬度)に優れ、さらに透明性(ヘイズ)にも優れていた。これに対し、メタクリル系熱可塑性樹脂(B)を欠く以外実施例1と同様にして作製した比較例1の熱可塑性樹脂組成物は、硬度及び透明性は実施例1と同程度であったが、薄膜性及び製膜性で劣っていた。メタクリル系熱可塑性樹脂(B)(B−2を使用)を本発明で規定するより多く使用した以外実施例3と同様にして作製した比較例2の熱可塑性樹脂組成物は、薄膜性及び製膜性は実施例3と同程度であったが、柔軟性で劣り、さらに透明性でも劣っていた。メタクリル系熱可塑性樹脂(B)を欠く以外実施例4と同様にしたして作製した比較例3の熱可塑性樹脂組成物は、柔軟性及び透明性は実施例4と同程度であったが、薄膜性及び製膜性で劣っていた。すなわち、実施例の熱可塑性樹脂組成物は薄膜性、製膜性及び柔軟性において優れており、さらに透明性においても優れていたが、比較例の熱可塑性樹脂組成物は薄膜性、製膜性及び柔軟性の少なくとも1つで劣っており、さらに透明性でも劣る場合があった。
【0083】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、アクリル系樹脂が本来有する優れた耐候性などの特長を保持しつつ、それ自身製膜性に優れ、それから得られる成形品、特にフィルム又はシートが柔軟性、薄膜性等に優れる。本発明のフィルムもしくはシート等の成形品は、柔軟性、薄膜性、耐候性等に優れる。本発明の積層体は、かかる優れた性質を有する本発明のフィルムもしくはシートを1構成層とするものである。

Claims (9)

  1. (1)少なくとも1つの下記ゴム成分層(I)を内部に有し、かつ少なくとも1つの下記熱可塑性樹脂成分層(II)を少なくとも最外部に有する、2以上の層からなる多層構造重合体粒子であって;
    (2)ゴム成分層(I)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%及び多官能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物(i)の共重合によって形成される重合体層であり;
    (3)熱可塑性樹脂成分層(II)は、メタクリル酸エステル40〜100質量%及び該メタクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体60〜0質量%からなる単量体(ii)の重合によって形成される重合体層であり;
    (4)熱可塑性樹脂成分層(II)のうち最外部に位置する層を構成する重合体について、GPC法で測定された数平均分子量は30,000以下であり;
    (5)ゴム成分層(I)の総質量と熱可塑性樹脂成分層(II)の総質量との比は、層(I)/層(II)において30/70〜90/10の範囲であり;
    (6)平均粒子径が150nm以下である;
    ことを特徴とする多層構造重合体粒子(A)100質量部と、
    メタクリル酸メチルとこれと共重合可能な他のビニル系単量体との、前者/後者の質量比で60/40〜100/0の、(共)重合体であって、クロロホルム溶液中20℃での極限粘度が3〜6dl/gであるメタクリル系熱可塑性樹脂(B)0.05〜10質量部とを
    混合及び/又は混練して得られる熱可塑性樹脂組成物。
  2. (1)少なくとも1つの下記ゴム成分層(I)を内部に有し、かつ少なくとも1つの下記熱可塑性樹脂成分層(II)を少なくとも最外部に有する、2以上の層からなる多層構造重合体粒子であって;
    (2)ゴム成分層(I)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%及び多官能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物(i)の共重合によって形成される重合体層であり;
    (3)熱可塑性樹脂成分層(II)は、メタクリル酸エステル40〜100質量%及び該メタクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体60〜0質量%からなる単量体(ii)の重合によって形成される重合体層であり;
    (4)熱可塑性樹脂成分層(II)のうち最外部に位置する層を構成する重合体について、GPC法で測定された数平均分子量は30,000以下であり;
    (5)ゴム成分層(I)の総質量と熱可塑性樹脂成分層(II)の総質量との比は、層(I)/層(II)において30/70〜90/10の範囲であり;
    (6)平均粒子径が150nm以下である
    ことを特徴とする多層構造重合体粒子(A)100質量部と、
    メタクリル酸メチルとこれと共重合可能な他のビニル系単量体との、前者/後者の質量比で60/40〜100/0の、(共)重合体であって、クロロホルム溶液中20℃での極限粘度が3〜6dl/gであるメタクリル系熱可塑性樹脂(B)0.05〜10質量部と
    メタクリル酸メチルとこれと共重合可能な他のビニル系単量体との、前者/後者の質量比で80/40〜100/0の、(共)重合体であって、クロロホルム溶液中20℃での極限粘度が0.1〜1.0dl/gであるメタクリル系熱可塑性樹脂(C)1〜100質量部とを
    混合及び/又は混練して得られる熱可塑性樹脂組成物。
  3. メタクリル系熱可塑性樹脂(B)における共重合可能な他のビニル系単量体がアクリル酸エステル、メタクリル酸メチルを除くメタクリル酸エステル、酢酸ビニル、芳香族ビニル化合物、ニトリル、α,β−不飽和カルボン酸及びマレイミド化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. メタクリル系熱可塑性樹脂(C)における共重合可能な他のビニル系単量体がアクリル酸エステル、メタクリル酸メチルを除くメタクリル酸エステル、酢酸ビニル、芳香族ビニル化合物、ニトリル、α,β−付保不和カルボン酸及びマレイミド化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項2又は3記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 物性改善剤を配合した請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品。
  7. 成形品がフィルム又はシートである請求項6記載の成形品。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物から得られる層及び他の熱可塑性樹脂から得られる層を有する積層体。
  9. 他の熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン系アイオノマー及びポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂である請求項8記載の積層体。
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