JP4761689B2 - 多層盛溶接方法および多層盛自動溶接装置 - Google Patents

多層盛溶接方法および多層盛自動溶接装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4761689B2
JP4761689B2 JP2002089608A JP2002089608A JP4761689B2 JP 4761689 B2 JP4761689 B2 JP 4761689B2 JP 2002089608 A JP2002089608 A JP 2002089608A JP 2002089608 A JP2002089608 A JP 2002089608A JP 4761689 B2 JP4761689 B2 JP 4761689B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
welding
groove
pulse
layer
width
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2002089608A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2003290921A (ja
Inventor
昭慈 今永
光明 羽田
信雄 柴田
正宏 小林
登志美 佐藤
清一 豊田
伸彦 秋葉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Setsubi Engineering Co Ltd
Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Setsubi Engineering Co Ltd
Hitachi Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Setsubi Engineering Co Ltd, Hitachi Ltd filed Critical Hitachi Setsubi Engineering Co Ltd
Priority to JP2002089608A priority Critical patent/JP4761689B2/ja
Publication of JP2003290921A publication Critical patent/JP2003290921A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4761689B2 publication Critical patent/JP4761689B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Arc Welding Control (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、寸法精度が悪い開先継手の厚板構造物の自動溶接に係り、特に、ギャップ幅やビード幅の大きさに対応した溶接条件パラメータを可変制御し、トーチ位置ずれを修正制御し、完全溶け込みで高温割れの無い良好な溶接を実行するに好適な多層盛溶接方法および多層盛自動溶接装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
発電プラントや化学プラントなど大型構造物には、厚板部材が多く用いられており、工場内で溶接可能なものや現地で組立溶接が必要なものもある。溶接継手の開先を機械加工によって高精度に形成可能なものもある。
【0003】
実際には、厚板構造物の多くは、大型で長尺であり、加工コストの安いガス切断加工による開先継手が用いられている。開先継手には、片面溶接が可能なV形やレ形もある。しかし、溶接歪みや残留応力などの低減に有効な両面溶接用のX開先継手が多く、そのX開先の角度は、従来から約50〜70度と広い。
【0004】
ガス切断加工の開先継手は、寸法精度が悪く、開先部のギャップ変化が大きく、溶接線も蛇行し易い形状となっている。長尺の開先継手内にギャップのない接触部分を設ければ、溶接ワークの組立作業が容易になるが、溶接時に溶け込み不足となり易い。
【0005】
このようなギャップ変化の大きい開先継手の溶接は、一般に、自動溶接が難しく、従来から熟練溶接員による手動溶接が多くなされており、溶接作業に多くの時間を要している。この手動溶接には、一般にワイヤ溶融式の直流アーク溶接法が用いられ、スパッタの発生が伴う溶接作業となる。
【0006】
厚板長尺で角度の広いX開先継手は、表側から多層盛溶接をした後に、裏側より表側の初層ビード面まで裏ハツリ加工(ガウジングやグラインダ加工)して、裏側から完全溶け込み溶接の多層盛溶接をするため、一連の溶接作業に多大な時間を要するとともに、溶接で消費するワイヤ量も増大してコスト高となっている。
したがって、溶接の工数を低減し合理化するには、開先を狭くし、裏ハツリを省略し、溶接の効率を高め、溶接を自動化する必要がある。
【0007】
まず、開先を狭くし、裏ハツリを省略できるようにするには、深溶け込み溶接が可能な新たな溶接法の導入が必要である。その際に、溶け込み不足または入熱過多による溶接割れ(高温割れ)や溶け落ちを防止するために、適正な溶接施工技術を確立する必要がある。
【0008】
溶接を自動化するには、開先部のギャップ幅や開先面積などの開先形状寸法や溶接線の位置ずれの検出が可能なセンサが必要になる。ギャップ変化や開先面積変化に対応可能な溶接条件制御やトーチ位置制御の技術を確立する必要がある。この他、自動溶接を長時間保持するには、トーチノズルへのスパッタ付着によるシールド低下を防止しなければならず、スパッタの発生が少ない溶接法が求められている。
【0009】
一方、高い電流・電圧と低い電流・電圧を交互に出力させるワイヤ溶融式のパルスアーク溶接法は、通常の直流アーク溶接法と比べて、スパッタの発生が少なく、高溶着な溶接が可能であることから、自動車部品など薄板の溶接に多く適用されており、最近では、厚板の溶接構造物にも適用されつつある。
【0010】
しかし、市販されているパルスMAG/MIG溶接電源の大半は、パルス電流の出力値が高々500A程度であり、600Aを越えるような高電流のパルス溶接電源は、極めて少ない。また、溶接母材の板厚や継手形状やワイヤの材質および径によって、適用可能なパルス溶接波形および溶接条件が異なるため、実際にスパッタが少なく、溶接欠陥がない溶接を実現するには、対象製品の継手に合った適正なパルス溶接波形および溶接施工条件を確立しなければならない。
【0011】
自動溶接の従来技術として、一般に据付け型の溶接ロボットがある。溶接パス毎にティーチングしてプレイバック溶接するには、手間と時間がかかるので、1品物の溶接には、不向きである。また、溶接ロボットの可動範囲を超える大物製品や工場外の現地で組立溶接が必要な構造物の溶接は、現実にはできない。他の自動溶接の従来技術として、例えば、特公平4−75114号公報の自動アーク溶接法では、溶接中にギャップ幅を検出しながら、そのギャップ幅の大きさに対応して溶接電流Iaを
Ia=Io−k・G
の関係式で増減制御し、また、この溶接電流Iaの大きさに応じてワイヤ送り速度Wfを
Wf=A・Ia+B・Ia
の関係式で可変制御し、溶接電圧Eを
E=El+Ea+Er
の関係式で可変制御している。特公平4−75115号公報には、溶接電流Iaおよびワイヤ送り速度Wfの変化に対応して、ビード高さが一定に保たれるように、溶接速度Vpを
Vp=Wf/[(α・Wfo/Vpo)+β・(Io−Ia)
の関係式で可変制御している。また、特開平3−47680号公報の開先倣い制御装置では、開先内の形状を検出するレーザ変位センサと、開先左右端位置およびワイヤ先端位置の情報を検出するITVカメラと、これらの情報から溶接トーチの位置を演算する手段とを備え、左右方向の位置ずれを演算し、トーチ位置を制御している。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記の特公平4−75114号公報および特公平4−75115号公報の自動アーク溶接法は、ギャップ幅の変化に対して溶け込みを所望の目標値に保って自動溶接することが可能な1つの方法として有効と考えられる。しかし、実際に溶接平均電流を数アンペア単位で可変制御することは、困難であり、また、溶接電圧およびワイヤ送り速度の微小制御も同様に難しく、過敏な制御で逆効果の動きとなって溶接を乱す可能性がある。また、対象板厚が10mm程度のステンレス鋼では、開先角度も広く、表側1パスと裏側1パスの溶接であるため、この溶接方法を、充填層や仕上層溶接が必要な厚板継手の多パス溶接や材質が異なる継手の溶接に適用することは、困難である。フラックス入りワイヤによる溶接では、ビード表面全体に形成されるフラックスの除去作業が必要となる。また、フラックス入りワイヤとソリッドワイヤとでは、ワイヤ溶融特性および適正溶接条件が異なるばかりでなく、母材材質,継手形状,ワイヤ材質などが異なると、それに適した溶接条件を新たに見出す必要がある。さらに、この自動アーク溶接法では、高速回転アーク溶接法が用いられており、通常の直流アーク溶接や高い電流と低い電流を交互に出力させるパルスアーク溶接と異なる。特開平3−47680号公報の開先倣い制御装置は、トーチずれ量を演算して左右方向のトーチ位置を制御可能な1つの装置として有効と考えられる。しかし、レーザ変位センサの場合は、開先内を走査するための回転ミラー機構や揺動機構を必要とし、装置が大型になるばかりなく、溶接速度が速くなると、検出する開先断面形状の歪みによって誤差が生じるおそれがある。また、光の強烈なアーク溶接画像と微光の開先切断画像とを両立させるための特殊なフィルタや装置が必要となる。この開先倣い制御装置では、溶接中の電流・電圧、溶接速度などの条件パラメータ制御は無く、上下方向のトーチ位置制御についても記載されていない。
【0013】
一方、特開平5−138354号公報の溶接自動倣い装置では、レーザスリット光による開先切断画像および溶接トーチを含む溶融池部のアーク溶接画像を同時に撮像するITVカメラと、このITVカメラの検出画像情報よりトーチ左右位置ずれ,ビード高さ,溶接断面積を求める演算手段とを設けて、トーチ左右位置を制御し、トーチ下端位置を制御し、溶接速度を制御している。
【0014】
しかし、開先部にギャップ変化がある開先継手に対しては、ギャップ幅の大きさに対応した高い溶接電流と低い溶接電流を出力する制御やウィービング幅を増減する制御とを同時にしないと、溶け込み不足,溶け落ち,アンダーカットが発生し、良好な溶接ビ−ドが得られない可能性が高い。
【0015】
また、開先が深いまたは広い継手の多層多パス盛溶接の場合は、撮像する画像の視野範囲を大きくする必要がある。その視野範囲の拡大に伴って、検出すべき位置や溶接断面積や形状の検出精度が著しく低下し、トーチ位置制御および速度制御に大きな誤差が生じる可能性がある。
【0016】
開先底部の溶接から開先上部の溶接をする過程で、アーク溶接画像が上昇していくので、レーザスリット光による開先切断画像がアーク溶接画像と重なり合って見えなくなり、検出不可能となるおそれがある。
【0017】
本発明者らは、特開平10−216940号公報において、多層盛溶接方法および多層盛溶接装置を提案したが、片面溶接が可能なV形やレ形の開先継手を主な対象としており、X開先継手ではなかった。したがって、X開先継手のギャップの幅が問題になることはなく、X開先継手に特有な溶け落ちや溶け込み不足の現象に悩まされることも相対的に少なかった。その結果、初層の溶接および仕上層の溶接を充填層の溶接と区別し、特別に配慮する必要性も少なかった。
【0018】
したがって、特開平10−216940号公報の多層盛溶接装置は、X開先継手に関しては、「自動」溶接装置にはならず、作業員が制御する必要があった。
【0019】
本発明の目的は、ギャップ変化や溶接線の蛇行など寸法精度の悪い開先継手の厚板構造物を対象にギャップ幅やビード幅の大きさに対応した溶接条件パラメータを可変制御し、トーチ位置ずれを修正制御し、完全溶け込みで高温割れのない良好な溶接を実行するに好適な多層盛溶接方法および多層盛自動溶接装置を提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、溶接すべき一対の厚板長尺部材を突合わせた継手部の溶接線が蛇行しまたはギャップ幅や開先断面積が変化することもあるX開先継手の溶接線方向に設置されたガイドレール上を走行し、ワイヤ溶融式の溶接トーチとトーチ駆動機構と開先部の断面形状を撮像するセンサとを搭載した自走式の溶接台車と、前記センサにより撮像された開先部の断面形状画像に基づいて、開先部のギャップ幅Gs、ビード幅Bs,開先肩幅Ws,開先面積As,開先角度θs,前記ギャップ幅Gsの初期設定時の中央位置を原点位置として前記ギャップ幅Gsの中央位置の左右及び上下の位置ずれ量ΔYs,ΔZsを検出する画像処理装置と、1パルスで1溶滴移行可能な直流パルス溶接波形の出力設定とパルス溶接の平均電流及び平均電圧の出力設定が可能なパルス溶接電源と、溶接条件を設定する溶接条件テーブルと、
前記画像処理装置により検出された検出情報に基づいて制御すべき条件パラメータ及びトーチ位置ずれを算出する溶接制御装置とを用いて多層盛溶接する多層盛溶接方法において、1.2mm径のソリッドワイヤに給電するパルス電流Ipが550〜650Aの範囲,平均電流Iaが100≦Ia≦400Aの範囲,パルス時間Tpが1.8〜1.2msの範囲の電流波形を前記パルス溶接電源に設定し、初層のパルス溶接で用いるギャップ幅範囲別の複数の平均電流又は、複数の平均電流及び複数の平均電圧を前記溶接条件テーブルに設定し、前記X開先継手の表側及び裏側の初層溶接を実行する時は、前記検出情報の中からギャップ幅Gs、開先角度θs,左右及び上下の位置ずれ量ΔYs,ΔZsを用い、ギャップ幅Gsの大きさに適した平均電流又は、平均電流及び平均電圧を前記溶接条件テーブルより選択して前記パルス溶接電源に出力させると共に、ギャップ幅Gsが0である時に初層溶接で必要な基準面積Soと、0より大きなギャップ幅Gs又は該ギャップ幅Gs及び開先角度θsとから溶接すべき溶着断面積S1を算出し、平均電流Iaからワイヤ送り速度Wfを算出し、算出した溶着断面積S1とワイヤ送り速度Wfから溶接速度Vpを求めて溶接速度Vpを制御し、前記ギャップ幅Gsに適したウィービング幅Uwと周波数fwを算出してウィービング動作を制御し、また、前記ウィービング幅Uwの中央位置で左右位置ずれ量ΔYsと上下位置ずれ量ΔZsをなくす方向にトーチ位置を修正制御する多層盛溶接方法を提案する。
【0021】
上記の多層盛溶接方法において、前記初層後の充填層及び仕上層のパルス溶接で用いる溶接パス別の平均電流又は平均電流及び平均電圧を前記溶接条件テーブルに設定し、前記X開先継手の表側と裏側の充填層及び仕上層の溶接を実行する時には、前記溶接パスに該当する平均電流又は平均電流及び平均電圧を前記溶接条件テーブルより選択して前記パルス溶接電源に出力させると共に、前記検出情報の中からビード幅Bs、開先肩幅Wsを用い、ビード幅Bsから溶接すべき溶着面積Spを算出し、平均電流Iaからワイヤ送り速度Wfを算出し、算出した溶着断面積S1とワイヤ送り速度Wfから溶接速度Vpを求めて溶接速度Vpを制御し、ビード幅Bs又は開先肩幅Wsに適したウィービング幅Uwと周波数fwを算出してウィービング動作を制御し、また、開先の右斜面33dと開先底部の右ビード面33eとが交わるb交点から1mm程度上の位置に描いた水平線と開先斜面とが交わるj点、i点間の距離を2等分した中点位置fを検出し、この中点位置fと初期設定の原点位置との偏差量を左右位置ずれ量ΔYsとして検出し、開先底部の最も深いe点の位置、又は開先の左斜面33bと開先底部の左ビード面33cとが交わるa交点を通る他の水平線と前記f点の垂直線とが交わる交点位置を検出し、この位置と初期設定の上下原点位置との偏差量を上下位置ずれ量ΔZsとして検出し、検出した前記左右位置ずれ量ΔYsと該当する溶接パスの左右トーチ位置の目標値Ysとの偏差、前記上下位置ずれ量ΔZsと該当する溶接パスの上下トーチの目標値Zpとの偏差をそれぞれなくす方向にトーチ位置を修正制御する多層盛溶接方法とすることもできる。
【0024】
本発明は、また、上記目的を達成するために、溶接すべき一対の厚板長尺部材を突合わせた継手部の溶接線が蛇行しまたはギャップ幅や開先断面積が変化することもあるX開先継手の溶接線方向に設置されたガイドレール上を走行し、ワイヤ溶融式の溶接トーチとトーチ駆動機構と開先部の断面形状を撮像するセンサとを搭載した自走式の溶接台車と、1パルス電流で1溶滴を移行させるための直流パルス溶接波形が設定可能であって、1.2mm径のソリッドワイヤに給電するパルス電流Ipが550〜650Aの範囲,平均電流Iaが100≦Ia≦400Aの範囲,パルス時間Tpが1.8〜1.2msの範囲の電流波形又は該電流波形を出力させるパルス電圧値とパルス時間の調整設定が可能であるとともに、ベース時間及びワイヤ送り速度の可変制御によってパルス溶接の平均電流,平均電圧の増減制御が可能なパルス溶接電源と、前記センサにより撮像された開先部の断面形状画像に基づいて、開先部のギャップ幅Gs、ビード幅Bs,開先肩幅Ws,開先面積As,開先角度θs,前記ギャップ幅Gsの初期設定時の中央位置を原点位置として前記ギャップ幅Gsの中央位置の左右及び上下位置ずれ量ΔYs,ΔZsを求め、また、初層後の充填層及び仕上層の溶接を実行する時には、左右及び上下位置ずれ量ΔYs,ΔZsに代えて、開先の右斜面33dと開先底部の右ビード面33eとが交わる交点から1mm程度上の位置に描いた水平線と開先斜面とが交わるj点、i点間の距離を2等分した中点位置fを検出し、この中点位置fと初期設定の原点位置との偏差量を左右位置ずれ量ΔYsとして検出し、開先底部の最も深いe点の位置、又は開先の左斜面33bと開先底部の左ビード面33cとが交わる交点を通る他の水平線と前記f点の垂直線とが交わる交点位置を検出し、この位置と初期設定の原点位置との偏差量を上下位置ずれ量ΔZsとして検出する画像処理装置と、前記X開先継手の表側及び裏側の初層と充填層及び仕上層の溶接パスで使用する複数の平均電流又は複数の平均電流及び平均電圧の溶接条件テーブルと、溶接中の計算処理で使用する溶接データを格納するデータファイルと、検出動作中に前記画像処理装置から取得する検出データを処理する検出データ処理手段と、前記溶接条件テーブルから該当する溶接パスの平均電流及び平均電圧を選択して前記パルス電源に出力させると共に,前記データファイル及び前記検出データに基づいて,溶接すべき溶着面積,ワイヤ送り速度,溶接速度,ウィービングの幅と周波数を算出し、溶接トーチの左右位置ずれ及び上下位置ずれの修正量を算出し、これらの算出結果に基づいて、溶接速度及びウィービング動作を制御するとともに、ウィービング幅の中央位置で、該当する溶接パスの左右及び上下トーチ位置の目標値Yp,Zpと前記検出の左右及び上下位置ずれ量ΔYs、ΔZsとの各偏差をそれぞれなくす方向に前記溶接台車に指令する溶接処理手段とを有する溶接制御装置とからなる多層盛自動溶接装置を提案する。
【0027】
すなわち、本発明の多層盛溶接方法では、厚板長尺部材の開先部にギャップ変化や溶接線の蛇行が伴う溶接構造物を対象に、開先断面積が小さくなるように狭開先化し、ワイヤ溶着量や溶接パス数を削減し、熱変形を軽減する。
【0028】
また、1パルス電流で1溶滴が移行可能なパルス溶接波形として、パルス電流Ipが550〜650Aの範囲,平均電流Iaが100≦Ia≦400Aの範囲,パルス時間Tpが1.8〜1.2msの範囲の電流波形をパルス溶接電源に設定することによって,スパッタの発生が少ないパルス溶接が可能となり、同時に、パルス電流Ipが550A未満のパルスアーク溶接もしくは直流アーク溶接と比べて、アーク力が増加し、溶け込みの深い溶接部を得ることも可能となる。また、初層のパルス溶接で用いるギャップ幅範囲別の複数の平均電流又は複数の平均電流及び複数の平均電圧を溶接条件テーブルに設定し、前記X開先継手の表側及び裏側の初層溶接を実行する時は、前記センサで検出されるギャップ幅の大きさに適した平均電流又は平均電流及び平均電圧を前記溶接条件テーブルより選択して前記パルス溶接電源に出力させると共に、ギャップ幅Gsが0のときの基準面積Soと、ギャップ幅Gs又は該ギャップ幅Gs及び開先角度θsとから溶接すべき溶着断面積S1を算出し、平均電流Iaからワイヤ送り速度Wfを算出し、算出した溶着断面積S1とワイヤ送り速度Wfから溶接速度Vpを求めて溶接速度Vpを制御し、前記ギャップ幅Gsに適したウィービング幅Uwと周波数fwを算出してウィービング動作を制御し、また、前記ウィービング幅Uwの中央位置で左右位置ずれ量ΔYsと上下位置ずれ量ΔZsをなくす方向にトーチ位置を修正制御することによって、開先底部にギャップ変化や溶接線の曲がりがある長尺部材のX開先継手であっても、初層の溶接開始点から終点まで自動溶接でき、良好な溶接ビードを形成することができる。
【0029】
特に、完全溶け込み溶接が必要なX開先継手の角度を30〜40度の範囲に狭く形成し、表側および裏側の初層溶接で、深溶け込みが必要なギャップのない部分では、平均電流を270A≦Ia≦330Aの範囲、溶接速度を500mm/min程度およびそれより幾分遅い領域に設定してパルス溶接し、溶接割れや融合不良など欠陥のない深溶け込みのビード断面を得ることができる。
【0030】
また、開先両壁面の溶融が必要なギャップ変化のある部分では、前記ギャップ幅が大きくなるに従って平均電流を予め定めた値ずつ減少させる制御と、溶着面積増加に必要な溶接速度を減少する制御と、溶接トーチのウィービング幅を増加する制御をするので、アーク力が抑制されて溶け落ちやアンダーカットの発生を抑制でき、ギャップ変化がある部分でも、平滑で良好な溶接ビードを得ることができる。
【0031】
同時に、位置ずれに対してトーチ位置を修正制御し、溶接線の曲がりがある長尺部材の開先継手でも溶接線左右および上下方向のトーチ位置ずれを解消でき、溶接ビードの形成不良を防止できる。
【0032】
また、前記初層後の充填層及び仕上層のパルス溶接で用いる溶接パス別の平均電流又は平均電流及び平均電圧を前記溶接条件テーブルに設定し、前記X開先継手の表側と裏側の充填層及び仕上層の溶接を実行する時には、前記溶接パスに該当する平均電流又は平均電流及び平均電圧を前記溶接条件テーブルより選択して前記パルス溶接電源に出力させると共に、前記画像処理装置で検出されるビード幅Bs又は開先面積Asと開先肩幅Wsとから溶接すべき溶着面積Spを算出し、平均電流Iaからワイヤ送り速度Wfを算出し、算出した溶着断面積S1とワイヤ送り速度Wfから溶接速度Vpを求めて溶接速度Vpを制御し、ビード幅Bs又は開先肩幅Wsに適したウィービング幅Uwと周波数fwを算出してウィービング動作を制御し、また、開先斜面とビード面とが交わる交点から1mm程度上の位置に描いた水平線と開先斜面とが交わる2点間の距離を2等分した中点位置fを検出し、中点位置fと初期設定の前記原点位置との偏差量を左右位置ずれ量ΔYsとして検出し、開先底部の最も深い点e又は開先の斜面と左底面とが交わる交点を通る他の水平線と前記f点の垂直線とが交わる交点位置を検出して初期設定の前記原点位置との偏差量を上下位置ずれ量ΔZsとして検出し、検出した左右位置ずれ量ΔYsと上下位置ずれ量ΔZsをなくす方向にトーチ位置を修正制御することによって、開先底部にギャップ変化や溶接線の曲がりがある長尺部材のX開先継手の表側と裏側の充填層及び仕上層の溶接であっても、開先幅の狭い部分も広い部分も同一のパス数で溶接でき、溶接線の曲がりやレールずれに対する左右および上下方向のトーチ位置ずれが解消でき、溶着融合不良やアンダーカットのない平滑で良好な溶接ビードを得ることができる。
【0033】
さらに、本発明の多層盛自動溶接装置では、少なくとも高電流の1パルスで1溶滴を移行させるための直流パルス溶接波形が設定可能であって、パルス電流値または前記パルス電流を出力させるパルス電圧値とパルス時間の調整設定が可能であり、ベース時間およびワイヤ送り速度の可変制御によりパルス溶接の平均電流,平均電圧の増減制御が可能なパルス溶接電源を用いている。
【0034】
パルス溶接する時は、例えば、鋼材用の1.2mm径のソリッドワイヤに給電するパルス電流値Ipを高めの550〜650A,平均電流Iaが100≦Ia≦400Aの範囲,そのパルス時間Tpを短めの1.8〜1.2msの範囲に設定し、1パルス電流で1溶滴が低電流のベース時間Tb前半に移行可能なパルス波形とし、ベース時間およびワイヤ送り速度の可変制御による平均電流Iaの増減制御を実行すると、小電流領域(平均)から大電流領域まで安定なアークおよび溶滴移行が得られ、スパッタの発生が少ない良好なパルス溶接が可能となり、アーク溶接時間,スパッタ除去作業,トーチノズル清掃回数を大幅に削減できる。さらに、パルス電流Ipが550A未満のパルスアーク溶接もしくは直流アーク溶接と比べて、アーク力が増加して溶け込みの深い溶接部を得ることができる。
【0035】
X開先継手の溶接線方向に設置されたガイドレール上を走行し、ワイヤ溶融式の溶接トーチとトーチ駆動機構と開先部の断面形状を撮像するセンサとを搭載した自走式の溶接台車によって、前記ガイドレール上を走行しながらワイヤ溶融方式の自動溶接に必要な溶接動作及び検出動作を行うことができる。また、開先部の断面形状を撮像するセンサと、センサにより撮像された断面形状画像を処理する画像処理装置により、溶接の制御に必要な検出情報を得るようにしている。
【0036】
前記センサは、溶接トーチより先行する開先上面で断面形状画像の撮像が可能であるとともに、溶接台車に搭載されている左右および上下方向に移動可能な溶接トーチと独立させた位置の溶接台車本体に設けると、溶接線左右方向に揺動させる溶接トーチの動きに影響を受けることなく、開先上面の位置で揺れのない断面形状画像を正常に抽出できる。
【0037】
前記センサから得られる開先部の断面形状画像を処理して、開先部のギャップ幅Gs、ビード幅Bs,開先肩幅Ws,開先面積As,開先角度θs,前記ギャップ幅Gsの初期設定時の中央位置を原点位置として前記ギャップ幅Gsの中央位置の左右及び上下位置ずれ量ΔYs,ΔZsを求め、又は左右及び上下位置ずれ量ΔYs,ΔZsに代えて、開先斜面とビード面とが交わる交点から1mm程度上の位置に描いた水平線と開先斜面とが交わる2点間の距離を2等分した中点位置fを検出し、中点位置fと初期設定の原点位置との偏差量を左右位置ずれ量ΔYsとして検出し、開先底部の最も深い点e又は開先の斜面と左底面とが交わる交点を通る他の水平線と前記f点の垂直線とが交わる交点位置を検出して初期設定の原点位置との偏差量を上下位置ずれ量ΔZsとして検出する画像処理装置によって、検出制度の高い検出情報が得られ、その検出情報を制御装置側で取得し処理して、溶接の制御に用いることが可能となる。
【0038】
前記X開先継手の表側及び裏側の初層と充填層及び仕上層の溶接パスで使用する複数の平均電流又は複数の平均電流及び平均電圧の溶接条件テーブルと、溶接中の計算処理で使用する溶接データを格納するデータファイルと、検出動作中に前記画像処理装置から取得する検出データを処理する検出データ処理手段と、前記溶接条件テーブルから該当する溶接パスの平均電流及び平均電圧を選択して前記パルス電源に出力させると共に,前記データファイル及び前記検出データに基づいて,溶接すべき溶着面積,ワイヤ送り速度,溶接速度,ウィービングの幅と周波数を算出し、また、溶接トーチの左右位置ずれ及び上下位置ずれの修正量を算出し、これらの算出結果に基づいて、溶接速度及びウィービング動作を制御するとともに、ウィービング幅の中央位置での溶接トーチの左右位置ずれ量ΔYsと上下位置ずれ量ΔZsをなくす方向にトーチ位置の修正制御を前記溶接台車に指令する溶接処理手段によって、開先部にギャップ変化や溶接線の曲がりがある長尺部材のX開先継手であっても、該当する溶接パスの開始点から終点まで自動溶接でき、初層から仕上層まで良好な溶接ビードを形成することができる。
【0039】
溶接対象の任意寸法の開先継手に対して、溶接前にその開先形状寸法や溶接の基準条件の入力情報を基にして、多層盛溶接で必要なパス数やパス毎のトーチ位置および溶接条件を演算および演算結果の画面表示をすると、任意寸法の多層盛溶接の計画や演算結果の事前把握が可能となり、確定後の演算結果の溶接データを用いて溶接パス毎のトーチ位置および溶接条件の指令や基本的な溶接動作が可能となる。
【0040】
トーチ位置決めとセンサ座標原点合わせの設定および結果表示の画面を設けると、溶接前に必要な初層溶接開始点でのトーチ(ワイヤ先端)位置決めとその位置座標の取得および記憶,センサ座標原点合わせを容易に実行できる。
【0041】
溶接実行中の情報をリアルタイムで表示する画面を設けると、制御されているトーチ現在位置,出力中の溶接条件,検出データを表示画面で視認できる。
【0042】
装置異常や溶接異常が生じた時にその警告表示をすると、溶接動作の強制終了処理、異常回避の操作などを容易に実行でき、装置の操作性および使い勝手を高めることができる。
【0043】
【発明の実施の形態】
次に、図1〜図21を参照して、本発明による多層盛溶接方法および多層盛自動溶接装置の実施形態を説明する。
【0044】
図1は、本発明による多層盛溶接方法を採用した多層盛自動溶接装置の一実施形態の構成を示す斜視図である。図2は、図1に示した多層盛自動溶接装置における溶接制御装置11の内部構成の一例を示すブロック図である。
【0045】
図1において、一対の厚板長尺部材を突合わせた溶接ワーク1a,1bは、多層盛溶接が必要なX開先継手である。溶接ワーク1a,1bは、コストが安いガス切断加工法により、事前に開先面を加工し、その開先面同士を突合わせてX開先継手として組立ててある。
【0046】
このため、加工面の寸法精度や組立が悪く、溶接すべき継手の長手方向には、開先部2にギャップ変化がある部分とない部分とが混在しており、溶接線にも曲がりが生じている。
【0047】
長手方向の溶接ワーク1a上に設置されたガイドレール3は、溶接台車4の走行を案内する。自走式の溶接台車4には、ワイヤ溶融式の溶接トーチ6と、ワイヤリール7に巻かれているワイヤ5を溶接トーチ6先端に送給するワイヤ送り機構8と、溶接トーチ6を左右・上下方向に任意に移動させるトーチ駆動機構9と、開先部2の断面形状を撮像する光切断式センサ10とを搭載している。
【0048】
光切断式センサ10は、溶接トーチ6より所定距離だけ先行する独立した位置の溶接台車4本体に設置しているため、溶接線左右に揺動(ウィービング動作)させる溶接トーチ6の動きに影響を受けることなく、開先上面の位置で揺れのない開先部の断面形状画像を正しく抽出できる。
【0049】
画像処理置22は、この断面形状画像を取込み、画像処理し、自動溶接の制御で必要な開先中心の左右位置ずれ,上下位置ずれ,開先部2のギャップ幅またはビード幅,開先肩幅,角度,開先面積などの情報を検出する。
【0050】
溶接制御装置11は、溶接台車4の駆動を制御し、パルス溶接電源12aの出力を制御し、光切断式センサ10と一対の画像処理装置22に検出を指令して検出データを情報処理し、溶接トーチ6の位置および溶接条件を制御し、構成機器を統括管理する。
【0051】
パルス溶接電源12aは、溶接ワイヤ溶融のための高いパルス電流と低いベース電流とを交互に繰り返し出力する定電流制御方式または定電圧制御方式または両方併用制御方式のパルス溶接電源であり、溶接トーチ6先端に送給するワイヤ5と溶接ワーク1a,1bとの間に給電する。
【0052】
パルス溶接電源12aは、少なくとも高電流の1パルスで1溶滴を移行させるための直流パルス溶接波形が設定可能であり、パルス電流値またはこのパルス電流を出力させるパルス電圧値とパルス時間との調整設定が可能である。
【0053】
また、パルス溶接の平均電流の出力制御は、ベース時間およびワイヤ送り速度の可変制御によりなされる。
【0054】
溶接中のシールドガスは、パルス溶接電源12aおよびトーチケーブル介してガスボンベ16から供給される。ガスボンベ16は、鋼材溶接の場合、Arガスを主成分とする10〜20%程度のCOガス入りの混合ガスボンベである。
【0055】
Ar+CO混合ガスの代わりに、例えば数%のOを加えたAr+CO+Oの混合ガスやAr+Oの混合ガスを使用することも可能である。
【0056】
配線ケーブル13は、パルス溶接電源12aと溶接トーチ6およびワイヤ送り機構8を接続しており、配線ケーブル14a,14bは、溶接制御装置11と溶接台車4,光切断式センサ10,パルス溶接電源12aを接続している。
【0057】
図2において、操作盤15aは、自動運転に必要な初期設定,開先継手2の形状寸法,基本溶接条件を入力設定する。画面表示装置15bは、溶接データファイル作成時の入力と演算結果とを表示し、自動溶接時に必要な溶接トーチ位置,溶接条件,センサの検出情報を表示し、その他、自動運転時に必要な情報を表示する。
【0058】
統括制御装置17は、パソコンなどからなり、任意形状寸法の開先継手2の多層盛溶接に必要なパス毎の溶接位置や溶接条件を予め決定して登録しておく溶接データファイル18bを自動作成する溶接演算プログラム18aと、溶接データファイル18bと画像処理装置22より取得した検出データとに基づき、溶接パス毎の制御および多層盛溶接を自動実行する自動運転プログラム19と、自動溶接で必要な溶接位置演算制御部20a,溶接条件演算制御部20b,溶接中のデータを記録する制御データ記録ファイル21a,検出データ記録ファイル21bなどを備えている。
【0059】
操作ペンダント24bは、各軸駆動装置24aを介して、溶接台車4や溶接トーチ6の移動操作、溶接条件の設定修正の操作に用いられ、溶接前に溶接トーチ6を開始点に移動させてトーチ(ワイヤ)位置決めし、溶接中に不具合が生じた時に、トーチ位置や溶接条件の割り込み修正、溶接停止などができるようにする。
【0060】
図3は、本発明の多層盛溶接方法において、スパッタの発生を抑制するためのパルスアーク溶接の電圧・電流波形およびワイヤ先端の溶滴移行の概要を示す図である。横軸の時間に対する縦軸には、定速送りのワイヤ,パルス電圧の波形,パルス電流の波形,ワイヤ溶滴の形成と移行の概要を示している。
【0061】
本発明においては、定速送りのワイヤに同期させて、パルス溶接電源12aより高いパルス電流Ip・電圧Vpと低いベース電流Ib・電圧Vbを交互に出力させるか、または、直流の低いベース電流Ib・電圧Vbに高電流のパルス電流Ip・電圧Vpのパルス波形を重畳して出力させる。
【0062】
このパルス電流Ip・電圧Vpの期間Tp中に、溶融させたワイヤ5先端に溶滴26を形成させ、パルス期間Tp終了後のベース電流Ib・電圧Vbの期間Tb前半に、ワイヤ溶滴26を母材29側の溶融プール27に離脱移行させる1パルスで1溶滴移行が可能な適正パルス溶接波形を出力させる。
【0063】
ワイヤ溶滴26の移行時に短絡移行が生じない程度のアーク25長を保持するように溶接平均電圧Eaを出力させ、パルスアーク溶接するので、スパッタの発生を防止でき、良好な溶接ビードを形成できる。
【0064】
なお、アーク25長が短かすぎてワイヤ先端の溶滴26が短絡移行(アーク消滅)してアーク再点弧する時や、ピーク時間が長すぎてアーク力の強いパルス電流Ipの期間Tp中に溶滴26が離脱移行する時には、溶滴26の一部がスパッタ28となって飛散する。そのスパッタの一部がトーチノズルに付着して堆積すると、ガスシールドの低下による溶接欠陥の発生に至る。
【0065】
角度の狭いX開先継手の溶接では、特にギャップのない部分で裏側まで溶融する深溶け込みと溶接割れ防止が必要であるために、パルス電流Ip値の出力が高い溶接波形を採用している。例えば、鋼材用の1.2mm径のソリッドワイヤに給電すべきパルス電流Ipを高めの550〜650A、そのパルス時間Tpを短めの1.8〜1.2msの範囲に設定して、高電流の1パルスで1溶滴をベース時間前半に移行可能としている。
【0066】
パルス電流Ip値が550A未満の溶接電源では、深溶け込み溶接が得られなかった。前記Ip値が550〜650Aの出力可能な溶接電源を使用することによって、パルス電流Ipが550A未満のパルスアーク溶接もしくは直流アーク溶接と比べて、アーク力が増加し、溶け込みの深い溶接部が得られた。なお、また、650Aを遥かに越えるような溶接電源は、トランス容量が増大することになるので好ましくない。
【0067】
パルスアーク溶接での平均電圧は、
Ea=(VpTp+VbTb)/(Tp+Tb)
で示され、また、平均電流は、
Ia=(IpTp+IbTb)/(Tp+Tb)
で示される。
【0068】
ベース時間Tbを増減させて、平均電流Iaを可変制御する。ワイヤ送り速度Wfは、その平均電流Iaとほぼ比例関係にあるので、同調させて増減し、その溶接中にワイヤ溶滴26が短絡移行しない程度のアーク25長を保持するように平均電圧Eaを調整設定すればよい。
【0069】
また、定電圧制御方式のパルス溶接電源を使用する場合は、パルス電圧Vpおよびベース電圧Vbの設定によって上記のパルス電流Ipおよびベース電流Ibを出力させればよい。このように制御すると、小電流(平均)領域から大電流領域までスパッタのないパルス溶接を良好に実行できる。
【0070】
ここでは、矩形波のパルス波形で説明したが、台形波状または鋸形波状のパルス波形でもよい。
【0071】
図4は、鋼材板厚T=32mmのX開先継手における従来方式の多層盛溶接と本発明の方法による多層盛溶接とを比較して示す図である。
【0072】
角度が60度と広い従来開先の場合(1)は、表側4パス裏側4パス溶接であるのに対して、本発明により角度を35度に狭くして開先面積を小さくすると、図4(2)に示すように、パス数の少ない表側3パス裏側3パス溶接が可能となる。
図中に記載の番号は、溶接のパス番号であり、記号のTは板厚、Hは表側の開先深さ、h1は1パス目溶接の初層ビード高さである。
【0073】
図5は、図4(2)に示した多層盛溶接における下向き姿勢での各パス毎の溶接手順を示す図である。
【0074】
(1)は、表側初層の1パス目溶接S1、(2)は、充填層で2パス目溶接S2、(3)は、仕上層で3パス目溶接S3である。また、(4)は、溶接ワークを反転した後の裏側初層の4パス目溶接S4、(5)は、充填層で5パス目溶接S5、(6)は、裏側最後の仕上層で6パス目溶接のビード断面をそれぞれ示している。立て向き上進姿勢の場合には、溶接ワークの反転作業が不要となり、下向き姿勢溶接の時よりも平均電流・電圧を減少させて充填層および仕上層を溶接することになる。
【0075】
図6は、図3に示したパルス溶接における平均電流Iaとワイヤ送り速度Wfおよび平均電圧Eaとの関係を示す図である。
【0076】
両者は、平均電流Iaに比例して増加する特性を有しており、下記(1)式および(2)式
ワイヤ送り速度
Wf=kIa+k ……(1)
平均電圧
Ea=kIa+k ……(2)
で表わされ、図5に示したX開先継手の多層盛溶接で使用される。k,kはワイヤ定数、k,kは電圧定数であり、100≦Ia≦400Aの範囲の時である。
【0077】
図7は、X開先継手(角度:35度,板厚:32mm)における初層溶接で重要な開先部のギャップ幅Gと平均電流Iaとの関係を示す図である。
【0078】
図7の○印の部分が溶け込みの良好な適正領域であり、ギャップ幅が大きくなるに従って、その適正領域は、概ね階段状に低電流側に移行する結果となっている。特に、ギャップのない(G=0)部分の溶接では、約300A前後の平均電流で裏側まで溶け込む溶接が可能である。
【0079】
しかし、約330Aを越える高電流領域では、ワイヤ溶融量の増加によって溶接ビードが高く(ビードの高さと幅の比が大きい)なり、また、溶接速度を増減させても溶接による高温割れ(◆印)が発生し易い。
【0080】
約270A未満の電流領域では、アーク力および溶接入熱の不足によって裏側まで溶かすことができずに溶け込み不足(黒△印)となる。
【0081】
ギャップ幅1mm以上の領域では、高温割れの問題がなくなるが、平均電流および溶接入熱が高すぎると、溶け落ち(●印)やアンダーカットが生じる。平均電流および溶接入熱が低すぎると溶け込み不足(黒△印)が生じることになる。
【0082】
したがって、溶け良好な適正領域は、両者の中間に存在することが分かり、開先角度が30〜40度のX開先継手に適用できる。
【0083】
ギャップ幅が広い部分での溶け落ちを確実に防止する1つの手段として、裏側の開先継手内にセラミックス性の裏当て材を用いればよい。
【0084】
図8は、ギャップなしのX開先継手で溶接速度Vpと平均電流を変化させて初層溶接をした結果を示す図である。
【0085】
溶け込みの良好な適正領域は、溶接速度Vpが500mm/min前後および幾分遅い領域、平均電流Iaが270A≦Ia≦330Aの範囲の部分に存在することが分かった。
【0086】
図9は、本発明の溶接方法で初層溶接の条件を制御する状況を示す図である。
上段は、開先部ギャップ検出画像,そのギャップの大きさ(G=0,G=5mm)に対応したパルス電流波形,溶接ビード断面を示し、下段は、ギャップ幅Gに対応した平均電流Iaおよび溶接速度Vpと平均電圧Eaとワイヤ送り速度との関係を示している。
【0087】
ギャップのない部分およびその近傍では、平均電流Iaが高い約300Aを出力させるとともに、それに比例関係にある適正な平均電圧Eaを出力させる。平均電流Iaが高いと、ワイヤ送り速度(溶融速度)Wfが速くなるために、溶接速度Vpを速くして溶接すべき溶着面積(ワイヤ溶着面積)を減少させる。
【0088】
ギャップ幅が大きくなるに従って、平均電流Iaを階段状に予め定めた値(例えば20〜40A程度)ずつ減少させてアーク力を弱めるとともに、それに適した平均電圧Eaおよびワイヤ送り速度Wfを出力させる。
【0089】
溶接速度Vpについては、ギャップ幅が大きくなるに従って溶接すべき溶着面積S1(溶着量)を増加させる必要があるため、溶接速度Vpをギャップ幅に応じて減少させる。
【0090】
図10は、X開先の深さHが16mm,角度θが35度の継手溶接におけるギャップ幅Gと開先面積[As=H2tan(θ/2)+HG]および初層の溶着面積S1とビード高さとの関係を示す図である。
【0091】
溶着面積S1を増大させる制御をすると、図4(2)および図5(1)に示したように、初層のビード高さh1を約8.5±0.5mmに形成できる。このビード高さは、概ね7≦h1≦9mmの範囲に形成すれば、初層溶接後の充填層および仕上溶接で開先表面まで均等に盛り上げることが簡単にできる。
【0092】
したがって、ここでは、ギャップが0(Go)の時の基準面積Soと、センサ側から順次取得する検出データを分類してそれぞれ平均化処理したギャップ幅Gs値またはギャップ幅Gsと開先角度θsの値とを用いて、溶接すべき溶着面積S1を(3)式または(4)式
初層の溶着面積
=So+k(Gs−Go) ……(3)
=So+k(Gs−Go)
+ktan(θs−θo) ……(4)
により求める。 は、ギャップ重み定数、k は、角度重み定数、θoは、標準角度である。
【0093】
また、その溶着面積S1に必要な溶接速度Vp(mm/min)は、平均電流Iaと相関関係のあるワイヤ送り速度Wf(m/min)およびワイヤ径d(mm)とから求めることができ、(5)式
溶接速度
=(103πηWf)/(4S) ……(5)
で示される。ηは、ワイヤ溶着定数である。
【0094】
この他に、ギャップ幅が1mm以上の領域では、開先面両壁の溶融促進と溶け落ちを防止する必要があるため、溶接トーチを溶接線方向の左右に揺動させるウィービング制御をしている。
【0095】
ギャップ幅Gsの大きさおよび溶接速度Vpに対応したウィービング幅Uwやウィービング周波数fwの増減制御
Uw=Gs−k10,fw=Vp/(60・Pu)
をする。k10はウィービングの幅定数、Puは一往復のピッチである。
【0096】
このようにしてギャップ幅の大きさに対応させて溶接条件パラメータの制御をすると、図9の中央に示した溶接ビード断面のように良好な溶接部を得ることができる。
【0097】
上記の検出項目およびそれに基づく制御方法は、図11〜図19で説明し、ウィービングの幅Uwや周波数fwなどの条件制御については、図20および図21で説明する。
【0098】
図11は、表側および裏側の初層溶接と充填層および仕上層の各溶接とで出力する平均電流Iaの溶接条件テーブルの一例を示す図である。
【0099】
初層溶接後の充填層および仕上層溶接をする時には、図11に示す他の平均電流Iaを選択して出力させるとともに、溶接中にほぼ一定時間間隔でセンサ側より検出される開先面積(残存面積)Asと開先肩幅Wsまたはビード幅Bsまたは前記開先肩幅Wsおよび前記ビード幅Bsとを用いて、溶接すべき溶着面積Sp、溶接速度Vpを算出して増減制御する。
【0100】
ここでは、溶接パスプラン演算で求めた充填層および仕上層における最小の基準面積SGoおよび基準幅Bpと、検出データのビード幅Bsを平均化Bs=(Bs1+Bs2+・・+Bsa)/aした値を用いて、ビード幅の変化に対応した溶接すべき溶着面積Spを(6)式充填/仕上層の溶着面積
Sp=SGo+k(Bs−Bp) ……(6)
で求める。kは、溶着面積に係わる定数であり、Bs<Wsの時である。
【0102】
この時の溶接速度Vpは、(8)式で求められる。
溶接速度
Vp=(103πηWf)/(4Sp) ……(8)
このように計算処理して、溶接条件パラメータをリアルタイムで制御すると、図5に示した溶接パス毎のビード断面のように良好な溶接部を得ることができる。
【0103】
初層溶接では、ギャップ幅範囲別の複数の平均電流を設定しておき、開先部のギャップ検出情報に基づいて切り換え出力できるようする。その平均電流Iaに適したワイヤ送り速度Wfおよび平均電圧Eaを前記(1)(2)式で計算する。また、充填層および仕上層で使用する平均電流Iaも溶接条件テーブルから幾つか選択可能なように設定しておく。
【0104】
下向き姿勢の多層盛溶接で高電流を選択し、立て向き姿勢の溶接で低電流を選択すると、両方の多層盛溶接ができる。
【0105】
各々の平均電流Iaとその電流に適した各平均電圧Eaの両方を編集可能な条件テーブルに設定して、開先部のギャップ検出情報に基づいて切り換え出力できるようにしてもよい。
【0106】
このように、条件テーブルを事前に準備すると、図7および図9に示した溶接条件パラメータを可変制御できる。
【0107】
一方、板厚などの寸法が異なる各々のX開先継手に対しても自動溶接ができるようにする必要があるため、ここでは、入力すべき開先寸法と図11に示した平均電流の条件テーブルとに基づいて、溶接開始点での基準となる溶接パス数やパス毎のトーチおよび溶接条件を溶接演算プログラム18aによって演算するようにしている。
【0108】
図12は、溶接データ演算結果の表示例を示す図である。その演算方法の説明は、省略するが、溶接パス毎のトーチ位置の目標値、溶接条件、積層ビードの幅や高さが分かるようになっている。
【0109】
次に、本発明の溶接制御で使用する光切断式センサによる検出方法の概要について説明する。
【0110】
図13は、光切断式センサ10および関連機器の構成を示す斜視図である。光切断式センサ10は、溶接トーチ6より先行する開先継手2の上部位置にあり、その開先面2を直角に切断する垂直方向にスリット状の光31bを照射するレーザ投光器31aと、その反射像を干渉フィルタ32bを介して撮像するカメラ32aとを備えている。
【0111】
干渉フィルタ32bは、特定波長のレーザ光のみを抽出する。投光受光制御器23は、レーザ投光器31aおよびカメラ32aを制御するとともに、撮像された光切断画像を画像処理装置22に送信する。
【0112】
画像処理装置22は、自動溶接をする時に必要な開先中心の左右位置ずれΔYs,上下位置ずれΔZs,開先肩幅Ws,開先面積As,ギャップGsまたはビード幅Bsの検出情報を抽出する溶接検出プログラムを内蔵しており、統括制御装置17からの検出指令と検出結果の報告要求に応答する。
【0113】
光切断式センサ10の筐体部分は、過熱を防止する水冷構造、支障のある微粒子の侵入を防止するガス流出構造になっており、溶接トーチ6と独立した位置の溶接台車4に固定されている。
【0114】
図14は、溶接前にするトーチ位置(ワイヤ先端位置)座標の原点とセンサ座標の原点の位置基準合わせを示す図である。
【0115】
溶接台車4を駆動して溶接トーチ6を溶接開始点に移動させ、図14(2)に示すように、ワイヤ5先端を開先継手2の中央部にあるギャップGの中心位置(●点)に合わせ、そのワイヤ位置を溶接位置座標の原点(Yp=0,Zp=0)とする。 センサ側では、図14(1)に示すように、光学式センサ10の設置位置で撮像される開先断面の線画像33を画像処理装置22で処理し、ギャップGsの中央位置(●点)を検出し、その検出位置をセンサ座標の原点(Ys=0、Zs=0)として、左右および上下方向のトーチ位置ずれをΔYs=0,ΔZs=0する。
【0116】
初層溶接の時には、開先肩幅の中心位置を他のセンサ座標の原点(Ys=0,Zs=0)として使用することも可能である。
【0117】
溶接の終了位置については、開始点からの溶接線長さ(溶接距離)を入力設定すると、所定の位置で溶接動作を終了させることができる。他の方法として、例えば溶接の終了位置を検知する検知スイッチを溶接台車側かガイドレール側か溶接母材側に設置すると、所定の位置で溶接動作を終了させることができる。
【0118】
図15は、画像処理装置22と一対の光切断式センサ10とにより検出する内容を示す図である。
【0119】
光切断式センサ10で撮像される開先断面の線画像(33a〜f)を画像処理装置22に取込んで、検出項目を抽出する。例えば、開先肩幅Wsは、左右上面33f,33aと左右の開先斜面33d,33bとが各々交わる交点(d点とc点を結ぶ長さ)の距離で求められる。
【0120】
このd点とc点の距離を2等分した中点が左右方向の開先中心である。開先斜面の角度が左右異なる場合または加工精度が悪い場合に、開先継手の上部と底部とで中心がずれることになる。
【0121】
それを避けるために、溶接部に近い位置で開先中心を求めている。すなわち、開先の右斜面33dと開先底部のビード面33eとが交わる交点(b点)より1mm程度上の位置に水平線35を描き、その水平線35と左右の開先斜面33d,33bとが交わる交点(j点とi点を結ぶ長さ)の距離を2等分した中点位置(f点)を開先中心とすると、中心ずれをなくすことができる。この中点位置f点と初期設定時の原点位置(Ys=0)との偏差(水平方向の距離)を左右位置ずれΔYsとしている。開先底部にある左側のa点と右側のb点とを結ぶ長さが開先底部の幅であり、ビード幅Bsに該当する。また、上記のように検出しているf点は、a点近傍のi点とb点近傍のj点とを結ぶ長さを2等分した開先幅中点位置であり、左右位置ずれΔYsに該当する。
【0122】
一方、開先底部の上下位置ずれΔZsについては、開先底部の最も深い位置(e点)を求め、または、開先の左斜面33bと左底面33cとが交わる交点a点を通る他の水平線と前記f点の垂直線とが交わる交点位置(e点近傍)を求めた後に、初期設定時の上下の原点位置(Zs=0)との偏差(垂直方向の距離)を計測して上下位置ずれΔZsとしている。上記のように検出しているe点は、開先底部の最も深い位置にあり、また、前記交点aを通る他の水平線と前記f点の垂直線とが交わる交点位置は、e点近傍の位置にあり、上下位置ずれ量ΔZsに該当する。また、この上下位置ずれΔZsは、前層のビード高さを加算した合計量に相当する値である。このように、溶接部に近い開先底部近傍の開先幅中点位置での左右位置ずれ量(ΔYs)を検出することにより、開先部の段差やギャップ、左右の開先角度が変化するような開先精度の良くないX開先継手であっても、上記左右及び上下位置ずれ量(ΔYs,ΔZs)の検出精度を高めることができる。
【0123】
また、開先面積As(溶接残存面積)は、まだ溶接が残っている部分の開先内の総面積を計測している。
【0124】
図16は、本発明の多層盛自動溶接装置の操作盤に表示する画面構成の一例を示す図である。(1)は多層盛溶接運転メニュー選択の初期画面51、(2)は溶接パスプラニングでの継手選択およびパスプラン作成画面52、(3)はトーチ基準位置取込み画面53、(4)はセンサ基準位置自動設定画面54、(5)は溶接線長さ設定画面55、(6)は自動溶接運転画面56を示している。
【0125】
装置起動時の初期画面51には、幾つかのメニュー表示の選択画面があり、所定の番号指定によって、図16(2)〜(7)に示した各々の画面に移行でき、また、初期画面に戻ることもできるようになっている。操作手順の概要は、以下の通りである。
【0126】
まず、1番の溶接パスプラニングを指定すると、図16(2)の画面52になり、継手選択(X開先,V開先),溶接パスプラン新規作成実行,溶接データ登録ファイルを示すようになっている。
【0127】
例えば、溶接パスプラン新規作成実行では、選択した継手用の溶接演算プログラム18aが起動し、その開先寸法の入力と図11に示した平均電流の条件テーブルを基にして、基準となる溶接パス数やパス毎のトーチおよび溶接条件を自動演算する。
【0128】
その演算結果を図12に示したように表示し、溶接データファイルが作成される。既に登録済みの溶接データファイルを指定(ファイル番号)して呼び出し示すこともできるようになっている。
【0129】
2番のトーチ基準位置取込み画面53では、溶接台車を溶接開始点に移動させて、図14(2)に示したように、開先内でトーチ位置(ワイヤ先端位置)決めをした後に、トーチ位置取込みを実行すると、制御装置11側でそのトーチ位置(Xo,Yo,Zo)を取得して結果を表示する。
【0130】
その後に、3番指定のセンサ基準位置自動設定画面54で実行を指定すると、光切断式センサ10を溶接開始点に自動で誘導するとともに、画像処理装置22側に検出指令を出して、図14(1)に示したように、開先部のギャップ幅中心と開先肩幅中心でのセンサ基準位置(Ys=0,Zs=0)とを合わせる。
【0131】
4番指定の溶接線長さ設定画面55で、溶接開始点から終了点までの溶接距離Xを入力する。溶接スタートエンド条件設定やその他必要な設定をした後に、5番指定で自動溶接運転画面56となる。
【0132】
この自動溶接運転画面56では、継手や溶接パス数と溶接すべき現在パス番号の表示、電流や電圧などの出力すべき溶接条件の表示、検出データとトーチ現在位置の表示をする。また、溶接パスの指定と実行の他に、溶接の一時停止や溶接再開も実行し、装置異常や溶接異常の発生時には、一時停止をしてその異常の内容表示や警告表示をする。
【0133】
このような操作画面および表示画面を設けることで、自動溶接運転が可能になるばかりでなく、リアルタイムで変化している溶接および検出の状況を画面で見ることができる。また、異常の内容表示や警告表示をすると、異常回避の操作などを容易にし、装置の操作性および使い勝手を高められる。
【0134】
図17は、本発明の多層盛溶接方法における検出動作および溶接制御動作の実行手順の概要を示す図である。図16(6)に示した自動溶接運転画面56で溶接実行を指定すると、実施される内容である。
【0135】
最初に溶接台車4を初期位置62に移動させ、光切断式センサ10と一対の画像処理装置22とに検出指令を出し、位置ずれや開先形状寸法の検出させるとともに、溶接トーチより先行する位置で取得した検出データの分類および平均化処理、トーチ位置の修正計算や溶接条件パラメータの補正計算の処理67を実行する。
【0136】
溶接トーチ6が溶接開始位置64に到達した地点で、パルス溶接電源12a側に指令して溶接開始65となる。
【0137】
予め定めた溶接スタート条件でアークを発生させた後に、定常の溶接条件に移行する。溶接台車4には、トーチ現在位置要求と結果報告68をさせている。また、トーチ位置修正および溶接条件補正の位置69,71に到達する毎に、溶接線左右および上下方向の位置ずれ量ΔYm、ΔZmの修正指令70とウィービング条件の補正指令72bは、溶接台車6に送信し、平均電流Iaおよび平均電圧Eaの補正指令は、パルス溶接電源12aに送信する。
【0138】
したがって、検出指令66からトーチ位置の修正計算や溶接条件パラメータの補正計算67してそれを制御70,72b,72cする一連の動作は、ほぼ一定時間間隔で溶接終了位置75aに到達するまで繰り返す75b。
【0139】
溶接終了位置75aに到達すると、予め定めた溶接エンド条件で溶接終端処理76aをした後に、溶接トーチ6を回避位置に移動77する。
【0140】
指定数の溶接パスが完了していなければ、溶接パス更新61の箇所まで戻り77b、再び初期位置62に移動する。
【0141】
溶接パス完了ならば77c、エンド78に至る。
【0142】
このように構成すると、多層盛溶接の自動運転で必要な検出動作および溶接制御動作を確実に実行できる。
【0143】
ここでは省略しているが、溶接の不具合が認められた時には、オペレータの判断で、トーチ位置ずれの割り込み修正、溶接条件パラメータの割り込み修正ができるようにしてある。また、溶接の一時停止とその溶接再開もできるので、溶接の不具合を回避することが可能になる。
【0144】
次に、本発明の多層盛溶接におけるトーチ位置の制御方法について説明する。
図18は、溶接線の位置ずれとその位置ずれ検出の概要を示す図である。図18(1)は、初層溶接で目標値とすべき溶接位置(Y1=0,Z1=0)とワイヤ5(トーチ)位置ずれΔYm,ΔZmの関係を示し、図18(2)は、光切断式センサによる位置ずれ(ΔYs,ΔZs),ギャップ幅Gsの検出を示し、図18(3)は、ガイドレール3上を走行する溶接台車4と修正すべき溶接線左右の位置ずれΔYmの関係を示す。
【0145】
溶接トーチを位置決めした後に、溶接開始点(●点)から溶接台車4が走行する過程で、図18(3)に示すように、開先継手の曲がりやガイドレール3の設置ずれなどによって、溶接トーチ6が、開先中心の溶接線36からずれることになる。
【0146】
このような開先継手を良好に自動溶接するためには、位置ずれ(ΔYs,ΔZs)の検出情報を用いて、この位置ずれをなくす方向にトーチ位置を修正する制御が必要となる。
【0147】
図19は、図18に示した溶接線左右方向のトーチ位置ずれを適正に修正する方法の制御ブロックを示す図である。
【0148】
一連の制御動作は、溶接線方向に走行しながらパルス溶接をする溶接トーチ6および溶接台車4の制御と、光切断式センサ10と一対の画像処理装置22から検出データ群の取得と、その検出データの分類や平均化の処理や位置ずれ計算38a,38bと、修正値の計算40と、位置修正の制御指令41と、トーチ現在位置43の把握などの手順からなり、溶接トーチ6が溶接終了位置に到達するまで繰り返される。
【0149】
修正位置でない時には、他の計算処理44も実行している。検出データの処理としては、ほぼ一定時間間隔(1〜2秒程度)で取得する検出データ群の中から左右方向の位置ずれΔYsの値を抽出する。その位置ずれの検出データ値は、ばらついているおそれがあるので、順次取得した値(ΔYs1,ΔYs2,・・ΔYsa)を所定数(例えばa=3点から5点)を集めて平均化の処理を(9)式
平均化
ΔYs=(ΔYs1+ΔYs2+・+ΔYsa)/a …(9)
で実行する。
【0150】
この平均化処理は、古いデータを1つ捨てて新しいデータを1つ加えて平均化する処理を繰り返し、データのバラツキを緩和する。
【0151】
また、修正すべき左右方向の位置修正量ΔYmは、トーチ位置の基準値Ypと平均化の処理をした検出データの算出値ΔYsとの偏差となり、(10)式
左右位置の修正量
ΔYm=Yp−ΔYs ……(10)
で求めることができる。
【0152】
なお、トーチ位置の目標値Ypは、図12に示した溶接パス毎の左右位置(Y1,Y2,・・Yp)の値であり、1層1パスの多層盛溶接の場合(図4)には、表側も裏側もいずれの溶接パスも開先中心が目標値となる。
【0153】
さらに、ここでは、過剰な修正や過小な修正を避けるため、上限下限領域(±C1≦ΔYm≦C2)を設けて、1回当りの修正量を抑制すると、過剰な修正動作や不要な動きが防止でき、溶接の悪化を防止できる。
【0154】
このように溶接パス毎に所定の検出および位置修正の計算処理を実行して左右方向のトーチ位置制御をリアルタイムですると、左右方向の位置ずれを解消できる。
【0155】
一方、上下方向のトーチ位置制御では、検出データ群の中から上下位置ずれΔZsの値を順次抽出して平均化処理
[ΔZs=(ΔZs1+ΔZs2+・・ΔZsa)/a]
をした検出データ値を用いる。
【0156】
初層溶接で検出される上下位置ずれの値は、ギャップ部分の位置ずれである。これに対して、充填層や仕上層の溶接で検出される上下位置ずれの値は、前層までの累計ビード高さを加算したずれ量に該当することになる。溶接パス毎のトーチ上下位置の目標値Zpは、図12に示した上下位置(Z1,Z2,・・Zp)の値である。
【0157】
したがって、修正すべき上下方向の位置修正量ΔZmは、平均化処理した検出データ値ΔZsとトーチ上下位置の目標値Zpとの偏差となり、(11)式
上下位置の修正量
ΔZm=ΔZs−Zp ……(11)
で求められる。
【0158】
また、上記と同様に、1回当りの修正量を抑制するための上限下限領域(±C3≦ΔZm≦C4)を設けると、過剰な修正動作や不要な動きを防止できる。
【0159】
このようにして、上下方向のトーチ位置制御を左右方向のトーチ位置制御と合せて実行すると、該当する溶接パス毎のトーチ位置ずれをなくし、良好な溶接ビードを得ることができる。
【0160】
溶接パス毎のトーチ位置制御や溶接条件パラメータの増減制御は、溶接開始点から終了位置に到達するまで実行すればよい。
【0161】
また、溶接開始部と溶接終端部のビード形状変化が検出結果に及ぼす影響を抑制するために、これらの制御を溶接開始点よりも所定距離(例えば10〜50mm)前進した位置から開始して、溶接終了点よりも所定距離(10〜50mm)手前の位置で可変制御を止める制御に切り換えてもよい。
【0162】
さらに、仕上層の溶接前に前層溶接で開先上面肩の一部が溶かされていて、開先形状の検出が困難な場合には、その前層溶接で検出および制御されて記憶した検出記録データを再度使用して、溶接線左右および上下方向のトーチ位置制御、溶接条件パラメータの増減制御をすると、自動溶接を持続できる。
【0163】
次に、多層盛溶接で必要なウィービング動作の制御方法について説明する。ギャップ幅またはビード幅Bsが変化する開先部の両壁を確実に溶融させるためには、溶接トーチを溶接線左右方向に揺動させるウィービング溶接の制御が必要である。
【0164】
図20は、ウィービング溶接の制御方法を示す図である。図21は、ウィービング溶接方法の制御ブロックを示す図である。
【0165】
初層溶接の時は、光切断式センサと一対の画像処理装置とで検出されるギャップ幅Gsを平均化処理した情報を用いて、ウィービング条件の増減を制御する。
【0166】
充填層溶接の時は、ビード幅Bsの検出値を平均化処理し、仕上層溶接の時には、開先肩幅Wsまたはビード幅Bsの検出値を平均化処理して用いる。
【0167】
ウィービング条件の主な制御項目は、ウィービング幅Uw,周波数fw,揺動速度Vu,左右両端の停止時間T,Tであり、溶接トーチ6が修正すべき位置41に到達した地点で、ウィービング条件の修正制御47をリアルタイムでする。
【0168】
ここでは、溶接速度Vpを増減する制御に合せて、トーチ揺動の1往復のピッチPuが一定になるようにUw,fw,Vuの値を計算処理46する。すなわち、該当する溶接パスで検出されるデータ45aの平均化処理をした検出値45b(ギャップGsまたはビード幅Bsまたは開先肩幅Ws)の大きさに比例して、ウィービング幅Uwを広くし、揺動速度Vuを速くし、また、周波数fwも溶接速度Vpに比例して大きくなるようにする。
【0169】
各層別のウィービング幅Uwは、(12)〜(14)式
初層のウィービング幅
Uw=Gs−k10 ……(12)
充填層のウィービング幅
Uw=Bs−k11 ……(13)
仕上層のウィービング幅
Uw=Ws−k12またはUw=Bs−k12 ……(14)
で求められる。ただし、k10,k11,k12は、ウィービングの幅定数である。
【0170】
また、揺動速度Vuおよび周波数fwは、(15)式および(16)式
周波数
fw=Vp/(60Pu) ……(15)
揺動速度
Vu=2Uw/[(60Pu/Vp)−(T+T)] ……(16)
で求められる。
【0171】
このように所定の検出および位置修正の計算処理を実行し、ウィービング条件の修正制御をすると、溶接パス毎にアンダーカットや融合不良のない溶接ビードが得られる。
【0172】
【発明の効果】
本発明の多層盛方法および多層盛自動溶接装置によれば、開先部のギャップ変化や溶接線の蛇行など寸法精度の悪い長尺部材のX開先継手の溶接構造物であっても、狭開先化によってワイヤ溶着量や溶接パス数の低減、熱変形の軽減ができ、また、高電流の1パルスで1溶を移行させるパルス溶接波形の出力と、ギャップ幅の大きさに対応した平均電流,平均電圧,溶接速度,ウィービングの幅や周波数の条件パラメータの適正制御によって、スパッタの少ない深溶け込み溶接、溶接割れや溶け落ちのない溶接品質を得ることができる。
【0173】
また、溶接線左右および上下方向のトーチ位置の修正制御によって、溶接線曲がりやレール設置ずれがある長尺部材の開先継手でも、溶接始点から終点まで良好な溶接ビードをパス毎に形成でき、初層から仕上層までの多層盛溶接を自動で実行でき、溶接を合理化し、工数を削減し、溶接の品質を高めることができる。
【0174】
さらに、溶接前の設定や結果表示から溶接中の動作表示や異常時の警告表示などの画面表示によって、装置の操作性および使い勝手を良くできる。
【0175】
本発明の多層盛溶接方法および多層盛自動溶接装置を発電プラントや化学プラントなどの厚板溶接構造物に適用すると、溶接の自動化,合理化,コスト削減などを達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による多層盛溶接方法を採用した多層盛自動溶接装置の一実施形態の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した多層盛自動溶接装置における溶接制御装置11の内部構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の多層盛溶接方法において、スパッタの発生を抑制するためのパルスアーク溶接の電圧・電流波形およびワイヤ先端の溶滴移行の概要を示す図である。
【図4】鋼材板厚T=32mmのX開先継手における従来方式の多層盛溶接と本発明の方法による多層盛溶接とを比較して示す図である。
【図5】図4(2)に示した多層盛溶接における下向き姿勢での各パス毎の溶接手順を示す図である。
【図6】図3に示したパルス溶接における平均電流Iaとワイヤ送り速度Wfおよび平均電圧Eaとの関係を示す図である。
【図7】X開先継手(角度:35度,板厚:32mm)における初層溶接で重要な開先部のギャップ幅Gと平均電流Iaとの関係を示す図である。
【図8】ギャップなしのX開先継手で溶接速度Vpと平均電流を変化させて初層溶接をした結果を示す図である。
【図9】本発明の溶接方法で初層溶接の条件を制御する状況を示す図である。
【図10】X開先の深さHが16mm、角度θが35度の継手溶接におけるギャップ幅Gと開先面積および初層の溶着面積S1とビード高さとの関係を示す図である。
【図11】表側および裏側の初層溶接と充填層および仕上層の各溶接とで出力する平均電流Iaの溶接条件テーブルの一例を示す図である。
【図12】溶接データ演算結果の表示例を示す図である。
【図13】光切断式センサ10および関連機器の構成を示す斜視図である。
【図14】溶接前にするトーチ位置(ワイヤ先端位置)座標の原点とセンサ座標の原点の位置基準合わせを示す図である。
【図15】画像処理装置22と一対の光切断式センサ10とにより検出する内容を示す図である。
【図16】本発明の多層盛自動溶接装置の操作盤に表示する画面構成の一例を示す図である。
【図17】本発明の多層盛溶接方法における検出動作および溶接制御動作の実行手順の概要を示す図である。
【図18】溶接線の位置ずれとその位置ずれ検出の概要を示す図である。
【図19】図18に示した溶接線左右方向のトーチ位置ずれを適正に修正する方法の制御ブロックを示す図である。
【図20】ウィービング溶接の制御方法を示す図である。
【図21】図20に示したウィービング溶接方法の制御ブロックを示す図である。
【符号の説明】
1a 溶接ワーク
1b 溶接ワーク
2 開先継手
3 ガイドレール
4 溶接台車、
5 溶接ワイヤ
6 溶接トーチ
8 ワイヤ送り機構
9 トーチ駆動機構
10 光切断式センサ
11 溶接制御装置
12a パルス溶接電源
15a 操作盤、
15b 画面表示装置
17 統括制御装置
18a 溶接データファイル
22 画像処理装置
23 投光受光制御器
24a 各軸駆動装置
25 アーク
26 ワイヤ溶滴
28 スパッタ
31a レーザ投光器
31b スリット光
32a カメラ
32b 干渉フィルタ
28 開先中心軸
33 開先形状の画像線
33a〜33f 開先形状の画像線

Claims (3)

  1. 溶接すべき一対の厚板長尺部材を突合わせた継手部の溶接線が蛇行しまたはギャップ幅や開先断面積が変化することもあるX開先継手の溶接線方向に設置されたガイドレール上を走行し、ワイヤ溶融式の溶接トーチとトーチ駆動機構と開先部の断面形状を撮像するセンサとを搭載した自走式の溶接台車と、
    前記センサにより撮像された開先部の断面形状画像に基づいて、開先部のギャップ幅Gs、ビード幅Bs,開先肩幅Ws,開先面積As,開先角度θs,前記ギャップ幅Gsの初期設定時の中央位置を原点位置として前記ギャップ幅Gsの中央位置の左右及び上下の位置ずれ量ΔYs,ΔZsを検出する画像処理装置と、
    1パルスで1溶滴移行可能な直流パルス溶接波形の出力設定とパルス溶接の平均電流及び平均電圧の出力設定が可能なパルス溶接電源と、
    溶接条件を設定する溶接条件テーブルと、
    前記画像処理装置により検出された検出情報に基づいて制御すべき条件パラメータ及びトーチ位置ずれを算出する溶接制御装置とを用いて多層盛溶接する多層盛溶接方法において、
    1.2mm径のソリッドワイヤに給電するパルス電流Ipが550〜650Aの範囲,平均電流Iaが100≦Ia≦400Aの範囲,パルス時間Tpが1.8〜1.2msの範囲の電流波形を前記パルス溶接電源に設定し、
    初層のパルス溶接で用いるギャップ幅範囲別の複数の平均電流又は、複数の平均電流及び複数の平均電圧を前記溶接条件テーブルに設定し、
    前記X開先継手の表側及び裏側の初層溶接を実行する時は、前記検出情報の中からギャップ幅Gs、開先角度θs,左右及び上下の位置ずれ量ΔYs,ΔZsを用い、ギャップ幅Gsの大きさに適した平均電流又は、平均電流及び平均電圧を前記溶接条件テーブルより選択して前記パルス溶接電源に出力させると共に、ギャップ幅Gsが0である時に初層溶接で必要な基準面積Soと、0より大きなギャップ幅Gs又は該ギャップ幅Gs及び開先角度θsとから溶接すべき溶着断面積S1を算出し、平均電流Iaからワイヤ送り速度Wfを算出し、算出した溶着断面積S1とワイヤ送り速度Wfから溶接速度Vpを求めて溶接速度Vpを制御し、前記ギャップ幅Gsに適したウィービング幅Uwと周波数fwを算出してウィービング動作を制御し、また、前記ウィービング幅Uwの中央位置で左右位置ずれ量ΔYsと上下位置ずれ量ΔZsをなくす方向にトーチ位置を修正制御することを特徴とする多層盛溶接方法。
  2. 請求項1に記載の多層盛溶接方法において、
    前記初層後の充填層及び仕上層のパルス溶接で用いる溶接パス別の平均電流又は平均電流及び平均電圧を前記溶接条件テーブルに設定し、
    前記X開先継手の表側と裏側の充填層及び仕上層の溶接を実行する時には、前記溶接パスに該当する平均電流又は平均電流及び平均電圧を前記溶接条件テーブルより選択して前記パルス溶接電源に出力させると共に、前記検出情報の中からビード幅Bs、開先肩幅Wsを用い、ビード幅Bsから溶接すべき溶着面積Spを算出し、平均電流Iaからワイヤ送り速度Wfを算出し、算出した溶着断面積S1とワイヤ送り速度Wfから溶接速度Vpを求めて溶接速度Vpを制御し、ビード幅Bs又は開先肩幅Wsに適したウィービング幅Uwと周波数fwを算出してウィービング動作を制御し、また、開先の右斜面33dと開先底部の右ビード面33eとが交わるb交点から1mm程度上の位置に描いた水平線と開先斜面とが交わるj点、i点間の距離を2等分した中点位置fを検出し、この中点位置fと初期設定の原点位置との偏差量を左右位置ずれ量ΔYsとして検出し、開先底部の最も深いe点の位置、又は開先の左斜面33bと開先底部の左ビード面33cとが交わるa交点を通る他の水平線と前記f点の垂直線とが交わる交点位置を検出し、この位置と初期設定の上下原点位置との偏差量を上下位置ずれ量ΔZsとして検出し、検出した前記左右位置ずれ量ΔYsと該当する溶接パスの左右トーチ位置の目標値Ysとの偏差、前記上下位置ずれ量ΔZsと該当する溶接パスの上下トーチの目標値Zpとの偏差をそれぞれなくす方向にトーチ位置を修正制御することを特徴とする多層盛溶接方法。
  3. 溶接すべき一対の厚板長尺部材を突合わせた継手部の溶接線が蛇行しまたはギャップ幅や開先断面積が変化することもあるX開先継手の溶接線方向に設置されたガイドレール上を走行し、ワイヤ溶融式の溶接トーチとトーチ駆動機構と開先部の断面形状を撮像するセンサとを搭載した自走式の溶接台車と、
    1パルス電流で1溶滴を移行させるための直流パルス溶接波形が設定可能であって、1.2mm径のソリッドワイヤに給電するパルス電流Ipが550〜650Aの範囲,平均電流Iaが100≦Ia≦400Aの範囲,パルス時間Tpが1.8〜1.2msの範囲の電流波形又は該電流波形を出力させるパルス電圧値とパルス時間の調整設定が可能であるとともに、ベース時間及びワイヤ送り速度の可変制御によってパルス溶接の平均電流,平均電圧の増減制御が可能なパルス溶接電源と、
    前記センサにより撮像された開先部の断面形状画像に基づいて、開先部のギャップ幅Gs、ビード幅Bs,開先肩幅Ws,開先面積As,開先角度θs,前記ギャップ幅Gsの初期設定時の中央位置を原点位置として前記ギャップ幅Gsの中央位置の左右及び上下位置ずれ量ΔYs,ΔZsを求め、また、初層後の充填層及び仕上層の溶接を実行する時には、左右及び上下位置ずれ量ΔYs,ΔZsに代えて、開先の右斜面33dと開先底部の右ビード面33eとが交わる交点から1mm程度上の位置に描いた水平線と開先斜面とが交わるj点、i点間の距離を2等分した中点位置fを検出し、この中点位置fと初期設定の原点位置との偏差量を左右位置ずれ量ΔYsとして検出し、開先底部の最も深いe点の位置、又は開先の左斜面33bと開先底部の左ビード面33cとが交わる交点を通る他の水平線と前記f点の垂直線とが交わる交点位置を検出し、この位置と初期設定の原点位置との偏差量を上下位置ずれ量ΔZsとして検出する画像処理装置と、
    前記X開先継手の表側及び裏側の初層と充填層及び仕上層の溶接パスで使用する複数の平均電流又は複数の平均電流及び平均電圧の溶接条件テーブルと、溶接中の計算処理で使用する溶接データを格納するデータファイルと、検出動作中に前記画像処理装置から取得する検出データを処理する検出データ処理手段と、前記溶接条件テーブルから該当する溶接パスの平均電流及び平均電圧を選択して前記パルス電源に出力させると共に,前記データファイル及び前記検出データに基づいて,溶接すべき溶着面積,ワイヤ送り速度,溶接速度,ウィービングの幅と周波数を算出し、溶接トーチの左右位置ずれ及び上下位置ずれの修正量を算出し、これらの算出結果に基づいて、溶接速度及びウィービング動作を制御するとともに、ウィービング幅の中央位置で、該当する溶接パスの左右及び上下トーチ位置の目標値Yp,Zpと前記検出の左右及び上下位置ずれ量ΔYs、ΔZsとの各偏差をそれぞれなくす方向に前記溶接台車に指令する溶接処理手段とを有する溶接制御装置とからなる多層盛自動溶接装置。
JP2002089608A 2002-03-27 2002-03-27 多層盛溶接方法および多層盛自動溶接装置 Expired - Fee Related JP4761689B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002089608A JP4761689B2 (ja) 2002-03-27 2002-03-27 多層盛溶接方法および多層盛自動溶接装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002089608A JP4761689B2 (ja) 2002-03-27 2002-03-27 多層盛溶接方法および多層盛自動溶接装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003290921A JP2003290921A (ja) 2003-10-14
JP4761689B2 true JP4761689B2 (ja) 2011-08-31

Family

ID=29235151

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002089608A Expired - Fee Related JP4761689B2 (ja) 2002-03-27 2002-03-27 多層盛溶接方法および多層盛自動溶接装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4761689B2 (ja)

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7092462B2 (ja) 2017-03-15 2022-06-28 住友重機械工業株式会社 多層溶接方法および多層溶接継手
KR102155053B1 (ko) * 2019-05-30 2020-09-11 한국생산기술연구원 용접부 용입 제어장치
CN111645071B (zh) * 2020-05-21 2023-04-11 济南重工股份有限公司 一种基于plc的机器人焊接控制系统及控制方法
CN114654054A (zh) * 2020-12-23 2022-06-24 中国核工业二三建设有限公司 核电非能动安全壳冷却辅助水箱的自动焊接方法
CN112846460B (zh) * 2021-01-07 2022-10-28 辽宁石油化工大学 一种用于现场修复金属管道的减应力焊接方法
CN114682886B (zh) * 2022-04-28 2024-03-19 河南鼎力杆塔股份有限公司 一种角铁塔包钢的焊接方法
CN114789448A (zh) * 2022-05-31 2022-07-26 杭州固建机器人科技有限公司 一种钢构件焊接装置及其焊接方法
CN115026389B (zh) * 2022-06-30 2023-07-25 郑州煤矿机械集团股份有限公司 一种适合液压支架掩护梁弯盖板坡口焊缝的焊接方法
CN114951916B (zh) * 2022-06-30 2023-07-25 郑州煤矿机械集团股份有限公司 一种机器人下坡焊接掩护梁弯盖板的方法
CN117532226B (zh) * 2023-12-05 2024-06-07 南京曜石软件技术有限公司 一种多层道厚壁构件机器人焊接层道智能规划方法

Family Cites Families (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS61132274A (ja) * 1984-12-03 1986-06-19 Ishikawajima Harima Heavy Ind Co Ltd 多層盛自動溶接装置
JPS61262463A (ja) * 1985-05-16 1986-11-20 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 多層振分け自動溶接方法
JPH0659545B2 (ja) * 1986-03-14 1994-08-10 三菱重工業株式会社 自動溶接方法
JP2895289B2 (ja) * 1991-11-25 1999-05-24 三菱重工業株式会社 溶接自動倣い装置
JP3281959B2 (ja) * 1993-03-02 2002-05-13 住友金属工業株式会社 溶接部検査方法
JP3117374B2 (ja) * 1994-11-25 2000-12-11 三菱重工業株式会社 ビード形状の自動制御方法
JP3077547B2 (ja) * 1995-02-16 2000-08-14 日本鋼管株式会社 狭開先のルートギャップ幅検出方法
JPH0910939A (ja) * 1995-06-22 1997-01-14 Shin Meiwa Ind Co Ltd 溶接ロボットにおける溶接条件設定装置
JPH09262663A (ja) * 1996-03-28 1997-10-07 Tokyo Gas Co Ltd 円周自動溶接方法
JPH1058139A (ja) * 1996-08-20 1998-03-03 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 管交差部溶接方法
JP3837578B2 (ja) * 1997-01-30 2006-10-25 株式会社日立製作所 溶接トーチの位置倣い制御方法及び溶接方法
JP3787401B2 (ja) * 1997-01-30 2006-06-21 株式会社日立製作所 多層盛溶接の制御方法及び多層盛溶接装置
JP2000024777A (ja) * 1998-07-14 2000-01-25 Hitachi Ltd 開先形状検出装置
JP4696325B2 (ja) * 1998-12-04 2011-06-08 株式会社日立製作所 自動溶接及び欠陥補修方法並びに自動溶接装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2003290921A (ja) 2003-10-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4109911B2 (ja) 多層盛溶接方法
CA2515228C (en) Control system using working robot, and work processing method using this system
JP4696325B2 (ja) 自動溶接及び欠陥補修方法並びに自動溶接装置
JP3733485B2 (ja) 自動開先倣い溶接装置および方法
CN105473267B (zh) 利用热焊丝tig定位热控制进行焊接的系统和方法
US4613743A (en) Arc welding adaptive process control system
JP4933935B2 (ja) 片面溶接装置および片面溶接方法
JP4761689B2 (ja) 多層盛溶接方法および多層盛自動溶接装置
JP2009195977A (ja) 自動溶接制御方法及び自動溶接装置
KR101991607B1 (ko) 수평 필렛 용접 방법, 수평 필렛 용접 시스템 및 프로그램
JP5385401B2 (ja) 開先の切断装置および切断方法
WO2020039948A1 (ja) 溶接制御装置、表示制御装置、溶接システム、溶接制御方法及びプログラム
JP2005095915A (ja) 円周多層盛溶接方法及び自動溶接装置
JP2006192437A (ja) 溶接装置
JP4117526B2 (ja) X開先継手の多層盛溶接方法
JP3323028B2 (ja) 自動溶接装置及び溶接方法
JP2006159226A (ja) 裏波溶接方法
JP4788094B2 (ja) 自動溶接装置
JP4341172B2 (ja) 多層盛溶接におけるトーチ位置の制御方法
JP3263631B2 (ja) 初層溶接方法
JP2904249B2 (ja) 溶接ロボットによる溶接方法
JP2000351071A (ja) 自動溶接システム
KR20110032753A (ko) 능동형 횡향 자동 용접 방법
JPH0929435A (ja) 溶接装置
JP2895289B2 (ja) 溶接自動倣い装置

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20020328

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040810

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070626

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070703

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070903

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090512

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090713

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100406

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100604

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110517

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110607

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140617

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313115

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees