JP3837578B2 - 溶接トーチの位置倣い制御方法及び溶接方法 - Google Patents
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Description
本発明は、光学式センサを用いて溶接開先形状を検出し、該形状を基に溶接トーチを位置決めして多層溶接を行うのに好適な溶接トーチの位置倣い制御方法及び溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
発電プラントや化学プラントなどの大型構造物の溶接作業は、特に高品質な溶接結果が必要とされているため熟練溶接工が行っている。しかし、熟練溶接工の高齢化及び人員不足の問題があり、溶接作業の自動化が求められている。そこで、溶接の自動化を図るためには適正な溶接制御が必要であり、特に溶接トーチの位置倣い制御が重要になってくる。これまでに、アークセンサや光学式センサを使った溶接トーチの位置倣い制御方法が考えだされている。しかし、アークセンサを使う方法では、不確定要素の電圧の変化により位置を制御するために、不安定なアーク及び電圧変動が生じると良好な溶接ビードが得られず、特に、多層盛の溶接ではトーチ位置を適切に制御するのは困難である。
【0003】
これに対して、光学式センサは、電圧変動の影響を受けないため、多層盛溶接のトーチ位置の倣い制御に適している。
光学式センサを用いて開先形状を求める技術が、例えば、特開昭62−214869号公報の記載の自動溶接方法で開示されている。この方法では、光学式距離センサを溶接線に略直角な方向に揺動させて、開先の位置、形状を検出する。その際、光学式距離センサの出力信号を平均化して形状信号とし、この形状信号を多重平均化し微分処理して、開先の特徴点を求め、その特徴点を基にしてトーチ位置を決める。なお、センサが誤検出した時の処理方法は記載されておらず、また開先が浅くなってセンサ検出が困難または不可能になった時の対処方法も記載されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
光学式センサでは、開先面に埃、錆、汚れ等の異物が付着したり、あるいは加工きずがあって開先の状態が悪いと、検出データにばらつきが生じ、また、誤検出によって異常に突出したデータが生じることがあり、溶接トーチの位置倣い制御に支障をきたすために溶接結果に悪影響を及ぼす。また、多層盛溶接によって開先が浅くなると、開先肩が溶け易くなるためにセンサ検出が困難になり、位置倣い制御ができなくなるという問題がある。
【0005】
上記した特開昭62−214869号に開示の自動溶接方法では、光学式距離センサで検出される形状信号に多重平均化及び微分処理を施しているので、断面形状は滑らかな線が得られる。しかし、誤検出に対する処理がなされてないため、異常に突出した検出値が発生した時にはその値に引っ張られて正常な断面形状と異なってしまう。また、多層盛の場合、溶接が進行して開先が浅くなり開先の肩が溶けてしまうと、開先の検出すべき点が捉えにくくなりばらつきが大きくなるか検出不可能となる。
【0006】
そこで、本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その目的は、光学式センサが異常値を検出した時や、溶接が進行して開先が浅くなり正確な開先検出が不可能になった時でも適切なトーチ位置の倣い制御を行うことができる、自動多層盛溶接に適した溶接トーチの位置倣い制御方法及び溶接方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の第1の溶接トーチの位置倣い制御方法は、2つのワークの突合せ部に形成した溝状開先の長手方向である溶接線近傍に、この溶接線に対して上下左右に移動可能な溶接トーチと該溶接トーチより先行する位置の開先の断面形状を撮像する光学式センサとを搭載した溶接ヘッドを設置した後、光学式センサで開先断面を撮像し、この開先断面を画像処理装置で処理しながら、溶接ヘッドと2つのワークを相対的に溶接線方向に移動させると共に、溶接トーチを、予め規定した開先断面内の基準位置を基に設定した複数の溶接パスそれぞれの位置と溶接順序のプログラムにしたがって、位置決めし、順次に溶接を行う多層溶接における溶接トーチの位置倣い制御方法において、溶接スタート点でプログラムに従って第1溶接パスに対応して溶接ヘッドを位置決めした後、溶接スタート点を初め、溶接ヘッドが一定時間相対移動するごとに光学式センサの移動点の開先断面の基準位置を画像処理装置により求め、該移動点の開先断面の基準位置と溶接スタート点のそれとの差異を求め、順次に求めた差異の所定数を平均化し、この平均化した差異だけ位置ずれした値を特定基準位置とし、かつ特定基準位置を溶接ヘッドが一定時間相対移動するごとに算出し、溶接スタート点の基準位置と特定基準位置との位置ずれ分を相殺するように特定移動点で溶接トーチの位置を修正することを特徴とする。
【0008】
第1の溶接トーチの位置倣い制御方法において、多層溶接のうち開先の上面近傍で開先内の溶接を行う際に、この溶接前の層で求めた特定基準位置を用いるとよい。
【0009】
また本発明の第2の溶接トーチの位置倣い制御方法は、上記第1の溶接トーチの位置倣い制御方法のように光学式センサ及び画像処理装置により順次求めた所定数の差異を平均化した後、さらに所定数の差異のうち、この平均化した差異に設けた許容幅から外れる差異を除外し、残りの差異を再度平均化し、再度平均化した差異だけ位置ずれした値を補正基準位置とし、かつ補正基準位置を溶接ヘッドが一定時間相対移動するごとに算出し、溶接スタート点の基準位置と補正基準位置との位置ずれ分を相殺するように特定移動点で溶接トーチの位置を修正することを特徴とする。
【0010】
第2の溶接トーチの位置倣い制御方法において、多層溶接のうち開先の上面近傍で開先内の溶接を行う際に、この溶接前の層で求めた補正基準位置を用いるとよい。
【0011】
本発明の第3の溶接トーチの位置倣い制御方法は、第1の溶接トーチの位置倣い制御方法と同様に、開先断面の基準位置の差異を求め、順次に求めた差異の所定数を平均化し、該平均化した差異だけ位置ずれした値を特定基準位置とし、かつ特定基準位置を溶接ヘッドが一定時間相対移動するごとに算出し、溶接トーチの左右方向については溶接スタート点の基準位置と特定基準位置との位置ずれ分を相殺するように特定移動点で溶接トーチの位置を修正し、かつ溶接トーチの上下方向については溶接トーチとワーク間に形成されるアークの電圧を基に溶接トーチの位置を修正することを特徴とする。
【0012】
以上説明したように、光学式センサ側より取得した検出データに異常値を削除する平均化処理を施すことにより、検出データの正常化が図れ、溶接トーチの位置倣い制御を正確に行うことができる。
【0013】
また、溶接部の開先が浅くなる、あるいは開先肩が溶けて開先情報が正常に検出できなくなった場合でも、事前の検出値を用いて溶接トーチ位置を制御することにより、自動溶接を継続させることが可能になる。
【0014】
さらに、溶接方向に対して直角方向の溶接トーチ位置の制御は光学式センサの情報に基づいて行わせ、上下方向の溶接トーチ位置の制御は溶接トーチの電極−母材間のアーク電圧値に基づいて行わせることにより、良好な制御を行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の溶接トーチの位置倣い制御方法を、図面により具体的に説明する。図1は本発明の方法を採用する全姿勢多層盛溶接装置の構成図である。
この全姿勢多層盛溶接装置は、2つの固定管である溶接ワーク1、1の突合せ部位に形成された溝状開先継手の長手方向(溶接線方向という)に略平行に設置され、溶接ワーク1、1の一方に取り付けられたレール2と、この溶接レール2上を走行する溶接ヘッド5と、溶接ヘッド5に上下/左右方向に駆動可能に搭載された溶接トーチ3と、溶接トーチ3より先行する位置に設置され溶接トーチ3と一体的に横方向に駆動される光学式センサ4と、溶接ヘッド5の駆動制御及び溶接電源の出力制御を行う操作ペンダント7付きの溶接制御装置6と、装置全体の運転管理を行う統括制御装置8と、光学式センサ4が検出した画像を処理する画像処理装置9とから構成されている。なお、光学式センサ4は溶接トーチに対し横方向位置が調整できるように構成されている。なお、光学式センサ4を溶接ヘッド5に直接搭載して、画像処理を行うように構成してもよい。
【0016】
この全姿勢多層盛溶接装置では、統括制御装置8の指令によって、光学式センサ4から開先継手に投光された光線の反射像をカメラで撮像し、その撮像した像を画像処理装置9に画像処理させ、その画像処理データを基に溶接トーチ位置の修正量を算出し、溶接ヘッド5に溶接トーチ位置の修正動作を行わせるようにしている。上記のような固定管の溶接においては、レール2を溶接線に対して平行に設置することが難しく、これが開先継手内に対する溶接トーチの位置、すなわち溶接トーチのねらい位置が所定の位置からずれる原因となる。そこで、この全姿勢多層盛溶接装置では、溶接線に対するレールの位置ずれを相殺する方向に溶接トーチ位置の修正制御を行う。なお、ここで溶接制御装置6と統括制御装置8とを分けて記載しているがこの統括制御装置8を溶接制御装置6内に組み込んで一体化しても良い。
【0017】
図2はスリット光切断方式の光学式センサで検出した開先形状を模式的に示す図である。図中の太線で示す形状が多層盛溶接途中の開先形状の画像である。開先形状の検出原理は、光学式センサ4からスリット光線を、溶接線に直交して開先継手を横断するように照射し、その反射像を斜め上からカメラで撮像し、撮像した画像に画像処理を施して、溶接トーチの位置倣い制御に必要な開先中心ずれ(ΔXs)、開先肩幅(Ws)、最大開先深さ(Hs)、開先角度(θi)などの情報を検出する。X軸方向(左右方向)の溶接トーチ位置は、例えば、1層1パスの多層盛溶接の場合は両肩の中間点を上下に通る開先中心線CL上となる。この開先中心線CLである基準位置に対して、レールの設置誤差や溶接変形により、溶接中に溶接トーチの位置ずれが生じると、そのずれ量(開先中心ずれΔXs)を修正する制御を行う必要がある。
【0018】
ここで溶接トーチ3の座標と画像処理装置9の画面の座標との関係について説明する。図2中で2点鎖線で示す溶接前の初期開先において、溶接スタート点で溶接トーチの電極先端を開先継手の左右中心かつ開先底のO点(X=0、Z=0)にセットする。一方、光学式センサ4が検出した画像を表示する画面上に示された溶接スタート点での開先画像において、O点と開先肩幅との交点Cに対応する点を画像の基準位置として画面上に表示され、記憶される。なお、溶接線に対するレールの位置ずれはX方向にでることから、以降、主として溶接トーチのX方向の倣い制御について述べる。
【0019】
図3、図4により自動多層盛溶接における溶接トーチの位置倣い制御を説明する。図3は溶接トーチの位置倣い制御のブロック線図、図4は溶接トーチの位置倣い制御における演算処理を示す図である。
【0020】
(a)溶接トーチの位置倣い制御方法は、まず、溶接ヘッド3をレール2にそって走行させ、ほぼ一定時間(あるいは一定距離)間隔で光学式センサ4で溶接ワークの開先形状を検出し、開先中心ずれ(ΔXs)、開先肩幅(Ws)、最大開先深さ(Hs)、開先角度(θi)などの検出データを得る。なお、溶接する構造物の形状によっては、溶接ヘッドを固定位置に設置し、構造物を移動させて、検出データを得る。
【0021】
(b)溶接トーチ位置の検出値(Xs)の演算処理は、多層盛溶接を1層1パスで行う1層1パス溶接と、多層盛溶接を1層2パス以上で行う1層多パス溶接とに分けて行う。1層1パス溶接の場合は、溶接トーチを単純に開先中心に持ってくればよく、
Xs=ΔXs ……(1)
(1)式で求められる。
【0022】
1層多パス溶接の場合には、そのパス数に応じて割り付けた所定の位置に溶接トーチを持っていく必要がある。図5は V形開先における溶接パスの順序と各パスでの溶接トーチねらい位置の目標値(X,Z座標)を示すもので、溶接パスの順序を数字で、溶接トーチねらい位置を点で示している。溶接トーチねらい位置の目標値は、積層幅と積層高さから算出し、積層幅を各層のパス数で分割しそれぞれの中央の位置にしている。溶接パス毎の溶接条件は予め演算され、また、目標とする溶接トーチ位置の座標として溶接トーチ位置の目標値が予め演算されるようになっており、表1のような情報が溶接装置に与えられる。
【0023】
【表1】
【0024】
1層多パス溶接において、溶接トーチを開先中心から左右方向にシフトする量をΔXp’とすると、溶接トーチ位置は(2)式で求められる。この時のシフト量ΔXp’は、溶接される積層ビード幅及びパス数(例えばa=2〜5)によって変化することになり、開先肩幅Ws、開先角度θi、最大開先深さHsとの関係から(3)式で求められる。
Xs=ΔXs+ΔXp’ ……(2)
ΔXp’={[Ws-2・Hs(tanθi/2)]}/2・a+C7}{[(a+1)-2・n]}……(3)
ここでC7は定数であり、また、n及びaは変数である。
【0025】
なお、開先中心ずれ、開先肩幅、開先深さ及び積層ビード幅は、溶接パス毎に変化するが、開先角度はその変化が小さいので、実用的には初期値をそのまま使ってもよい。
【0026】
(c)次に、検出データの平均化処理は、光学式センサにより得られた検出データ(Xs)を複数個ずつ単純平均し、その単純平均した値にバンド幅βを設けた許容値から外れた検出データを異常値とみなして削除し、残った正常な検出データに再度平均する処理を施してトーチ位置の検出値を算出する。すなわち、ここで一定時間間隔で検出及び算出されるn個の検出データをX1,X2,……Xnとすると単純平均の値Xsnは、特定基準位置として(4)式で求められる。また、異常値を削除するためのバンド幅をβとすると、正常な検出データとみなす許容範囲Xaは(5)式となる。
Xsn=(X1+X2+………+Xn)/n ……(4)
Xa=Xsn ±β ……(5)
この許容範囲よりも大きい値又は小さい値の検出データXsは異常値とみなして削除する。
【0027】
削除された検出データをm個とすると、m個削除後の平均値Xsは、補正基準位置として
Xs=(X1+X2+………+Xn-m)/(n−m) ……(6)
(6)式より求められる。このXsは1〜nの検出値の(n/2)番目のデータとして用いる。ただしn/2は切上げの整数である。なお、溶接スタート点近傍で検出値の個数が規定数に達しない場合は、当該測定値の前後同数の測定値を用いて平均値を求め、(4)式で求めた平均値に対応させる。
【0028】
このように異常値を削除する平均化処理を行うことによって正常な検出データのみを抽出することができる。この平均化処理は検出データを取り込む毎に新しいデータ(X(n+1))と最も古いデータ(X1)とを入れ替えながらリアルタイム(1〜3秒間隔)で繰り返される。なお、実用上、開先部が清浄な面であれば、(5)式で求めた補正基準位置の代わりに(4)式で求めた特定基準位置を用いることもできる。
【0029】
(d)溶接トーチ位置の修正量(ΔXm)は下記の(7)式で求められ、この修正量を修正すべき位置に溶接トーチが到達したところで溶接トーチ位置の修正制御を行う。
ΔXm=Xp−Xs ……(7)
ここでXpは、予め決められた目標値(表1参照)で、Xsは(6)式により求めたものである。この一連の溶接処理は溶接終了位置に到達するまで繰り返し行われる。
【0030】
図6の(a)、(b)、(c)は、検出データの平均化処理の一例をグラフで示すもので、検出データの一部分を抽出したものである。図6(a)は光学式センサで検出した溶接トーチ位置の生検出データ(例えば開先中心ずれΔXs)による溶接線を示したグラフである。この検出データをそのまま使って溶接トーチに倣い動作を行わせると大きな倣いずれによって溶接結果に悪影響が生じる。図6(b)は生検出データを(4)式により単純平均して得た溶接線と適正な溶接線とを比較したグラフである。このように単純平均による溶接線は滑らかにはなるが、光学式センサが誤って異常値(異常に大きい値または小さい値)を検出した時に、その異常値も平均化に加えているために、本来あるべき適正な溶接線から離れてしまう。
【0031】
これに対して図6(c)は、(5)式、(6)式を用いて、異常値除去後の平均化処理を行った溶接線のグラフである。このように許容範囲(±β)から外れた検出データを異常値と見なして除去することによって、適正な溶接線と一致するように正常値が抽出できるので倣いずれの防止が図れる。
【0032】
ここで、平均化処理に必要な検出データの個数及び異常値を削除するためのバンド幅について述べる。例えば、平均化に使用する検出データの個数を4個にした場合、大きく突出したデータが1つあると、1/4の重みで単純平均されて、4個の平均値は適正な溶接線から大きく離れてしまう。このような場合に基準のバンド幅を設けて異常値を外そうとすると、異常値の前後にある正常な値までも外してしまう結果となる。これに対して、検出データの個数を5個以上にした場合には、突出したデータの一つの重みが1/5以下に減少することになる。このため、一つ突出したデータがあってもその影響が減少すると共に、適切なバンド幅を設けることによって突出したデータを除外することができる。このように平均化する検出データの個数を増加するに従って突出したデータの影響は小さくなっていくが、検出データの個数が多すぎると、特に検出値の正負が反転するような箇所では、溶接トーチ位置倣い制御の感度が低下することになる。
【0033】
実験の結果によれば、13個以上ではその感度低下が著しく、溶接結果に支障が生じることが判った。従って、異常値の削除と制御感度の確保が両立できる適正な個数nは、5≦n≦12であった。また、異常値を削除するバンド幅βについては溶接トーチ位置の倣い精度αを満たすように設定すれば良く、下記の(8)式で示される。
0<β≦α ……(8)
例えば、溶接トーチ位置の倣い精度αを0.2mm以下とする。
【0034】
以上のように演算処理を行うことにより溶接トーチ位置の修正量を求めることができ、溶接トーチ位置を適正に制御することが可能となる。
【0035】
図7は、図3に示す溶接トーチの位置倣い制御を全姿勢多層盛溶接装置(図1)に適用して、管径約300mm、管厚約18mmについて実測した倣い精度の一例を示す。
【0036】
1層1パス溶接における開先中心ずれに対する溶接トーチ位置倣いの軌跡を示しており、横軸には配管の全姿勢溶接における溶接走行位置を角度で示している。この結果から明らかなように、本発明の制御方法を用いることにより倣い精度±0.2mmで適正の制御を行うことができる。また、その後の1層多パス溶接においても同様の倣い精度で制御することが可能である。
【0037】
一方、上下方向の溶接トーチ位置の制御については、図示していないが上記した方法と同様な処理方法(△X、Xの値を△Z、Zの値に置き換える)により行うことが可能である。また、溶接トーチを揺動させて行う溶接では、開先形状検出から溶接トーチの修正制御までの処理が素早く行われなければならないために、処理時間の速い電極−母材間のアーク電圧の情報を用いたAVC(Automatic Voltage Control)制御の方が有効である。ここでは、AVC方式を用いて上下方向の溶接トーチ位置制御を行うようにした。
【0038】
多層盛溶接において、より上の層を溶接するにしたがい溶接開先が溶接金属により埋められて、特徴点である開先肩が判定できなくなるため、光学式センサから検出のエラー信号が多発したり、開先肩が溶けて正常に検出できなくなる(これを検出不可能な場合とする)。図8は多層盛のうち部材表面近くの溶接で開先が浅くなった時の溶接部断面を示す。
【0039】
そこで、センサ検出が不可能になった時でも溶接トーチの位置倣い制御が可能な方法について説明する。図9にその位置倣い制御方法の一例を示す。ここでは、溶接パス毎にセンサ側より取得した検出データ及び溶接トーチの位置倣い制御データ(これを検出値と称する)を記憶させておく。そして、センサ検出が不可能になった場合、あるいは溶接開先が浅くなると予想される指定したパスに到達した場合、事前に記憶していた検出値を基に予め演算された溶接トーチ位置の目標値との差から溶接トーチ位置の修正量を算出し、適正な溶接トーチ位置の決定及び位置倣い制御を行うようにした。なお、事前に記憶していた検出値は前パスだけでなく、いくつか前のパスまでさかのぼって使用しても良い。このように、事前に記憶した検出値を利用することにより、センサ検出が困難な状態になっても、溶接トーチの位置倣い制御をしながら溶接することができる。本発明の制御方法は配管継手の円周溶接だけでなく、平板開先継手の直線溶接においても、適正に位置倣い制御を行うことができる。また、ここでは、溶接ヘッドがレール上を移動して固定管の溶接ワーク外周を回るようになっているが、逆に溶接ワークを回しても、回転速度から溶接ヘッドと溶接ワークの位置関係が判るので本発明の制御方法を適用することができる。平板の場合においても同様である。
【0040】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の制御方法を用いることにより、溶接開先の検出データの正常化が図れ、溶接トーチの位置倣い制御に必要な適正修正量が求められ溶接トーチの位置倣い制御を適正に行うことができる。また、開先情報が検出できなくなった場合でも、事前に記憶した検出値から溶接トーチ位置の修正量を算出することにより、自動溶接を継続させることが可能となる。さらに、溶接方向に対して左右方向の溶接トーチ位置の制御は光学式センサの情報に基づいて行い、上下方向の溶接トーチ位置の制御は電極−母材(ワーク)間のアーク電圧の情報に基づいて行うことにより、溶接トーチの上下左右の位置を適正に制御でき、全パスに亙って良好な溶接結果が得られ、溶接自動化による作業改善及び能率向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶接トーチの位置倣い制御方法を用いる溶接装置の構成図である。
【図2】スリット光切断方式の光学式センサで検出された開先形状の模式図である。
【図3】本発明の溶接トーチの位置倣い制御ブロック線図である。
【図4】本発明の溶接トーチの位置倣い制御の演算処理を示す図である。
【図5】多層溶接における溶接パスの順序と溶接トーチの目標位置を示す図である。
【図6】本発明に係わる検出データの平均化処理結果の一例を示すグラフである。
【図7】本発明に係わる溶接トーチの位置倣い制御結果の一例を示すグラフである。
【図8】本発明に係わる多層盛溶接の溶接部断面を示す図である。
【図9】本発明に係わる多層盛溶接部の表面近傍でセンサ検出が不可能になった時の溶接トーチ位置倣い制御のブロック線図である。
【符号の説明】
1 溶接ワーク
2 レール
3 溶接トーチ
4 光学式センサ
5 溶接ヘッド
6 溶接制御装置
7 操作ペンダント
8 統括制御装置
9 画像処理装置
Claims (4)
- 光学式センサで溶接トーチより先行する位置の開先断面形状を撮像し、
該撮像された開先断面形状の情報を画像処理装置で処理しながら、前記溶接トーチを移動させ、
2つのワークの突合せ部に形成した溝状開先の多層盛溶接を行う溶接トーチの位置倣い制御方法において、
溶接スタート点で光学式センサと溶接トーチを有する溶接ヘッドを位置決めし、
前記溶接スタート点での開先断面の基準位置を画像処理装置により求め、
前記溶接ヘッドが一定時間相対移動するごとに光学式センサの移動点の開先断面の基準位置を画像処理装置により求め、
該移動点の開先断面の基準位置と溶接スタート点の開先断面の基準位置との差異を求め、
順次に求めた差異の所定数の平均を求め、該平均化した差異だけ位置ずれした値を特定基準位置とし、
溶接スタート点の基準位置と特定基準位置との位置ずれ分を相殺するように溶接トーチ位置を修正することを特徴とする溶接トーチの位置倣い制御方法。 - 光学式センサで溶接トーチより先行する位置の開先断面を撮像し、
該撮像された情報を画像処理装置で処理しながら、前記溶接トーチを移動させ
2つのワークの突合せ部に形成した溝状開先の多層溶接を行う溶接トーチの位置倣い制御方法において、
溶接スタート点で光学式センサと溶接トーチを有する溶接ヘッドを位置決めし、
前記溶接スタート点での開先断面の基準位置を画像処理装置により求め、
前記溶接ヘッドが一定時間相対移動するごとに光学式センサの移動点の開先断面の基準位置を画像処理装置により求め、
該移動点の開先断面の基準位置と溶接スタート点の開先断面の基準位置との差異を求め、
順次に求めた差異のうち予め定められた許容幅から外れる差異を除外して所定数の平均を求め、
又は、順次に求めた差異の所定数を平均化し、所定数の差異のうち、該平均化した差異を基準とする許容幅から外れる差異を除外し、残りの差異を再度平均化し、
該再度平均化又は前記平均化した差異だけ位置ずれした値を特定基準位置とし、
溶接スタート点の基準位置と特定基準位置との位置ずれ分を相殺するように溶接トーチ位置を修正することを特徴とする溶接方法。 - 請求項1または2に記載された溶接トーチの位置倣い制御方法において、
前記溝状開先の多層盛溶接のうち、開先内上部又はその近傍の溶接を行う時、或いはセンサ検出が不可能な時に、該溶接前の層の溶接時に算出して記憶した特定基準位置、又は該溶接前の層の溶接時に記憶した検出値に基づいて再度求めた特定基準位置を用いて、前記位置ずれ分を相殺するように溶接トーチ位置を修正することを特徴とする溶接トーチの位置倣い制御方法。 - 請求項1ないし3のいずれかに記載された溶接トーチの位置倣い制御方法において、
溶接トーチとワーク間に形成されるアークの電圧を基に溶接トーチの上下方向の位置を修正することを特徴とする溶接トーチの位置倣い制御方法。
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