JP4761335B2 - TiZr炭窒化物皮膜被覆工具の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、TiZr炭窒化物皮膜被覆工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、被覆工具は超硬合金、高速度鋼、特殊鋼からなる基体表面に硬質皮膜を化学蒸着法(以下、CVD法と略記する。)や、物理蒸着法(以下、PVD法と略記する。)により成膜して作製される。このような被覆工具は皮膜の耐摩耗性と基体の強靭性とを兼ね備えており、広く実用に供されている。特に、高速で切削する場合や切削液を用いずに旋削加工する場合には、切削工具の刃先の温度が1000℃前後まで上がり、被削材との接触による摩耗や断続切削等の機械的衝撃に耐える必要があり、膜の密着性が優れ、耐摩耗性と強靭性とが優れた被覆工具が重宝されている。
【0003】
硬質皮膜には、耐摩耗性と靭性とが優れる、周期律表4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物からなる非酸化膜や、耐酸化性に優れる酸化アルミニウム膜が単層膜あるいは複層膜として一般に用いられている。
【0004】
これら硬質皮膜は、CVD法あるいはPVD法により成膜されている。PVD法の特長は、多数の元素を含有する膜を比較的容易に成膜できることであり、欠点は、CVD膜に比べて膜の密着性が劣ることである。これに対して、CVD法の欠点は、化学反応を用いて成膜するために、多数の元素を含有する膜を成膜することが困難なことであり、長所は、成膜温度が750〜1050℃と高いため膜の密着性が高いこと、また、より高温で使用しても膜特性の劣化が少ないことである。実際に、切削加工時に刃先が1000℃前後まで昇温する旋削工具に使用されている皮膜は、CVD法で成膜されたTiC、TiN、Ti(CN)、Al2O3膜に限定されているのが実状である。
【0005】
先述の、TiC、TiN、Ti(CN)膜は、常温で測定したビッカース硬度Hvが約3200、2100、2700と硬く、耐摩耗性が優れているのが特長である。しかし、高温での膜硬度が低く、乾式切削等により刃先の温度が1000℃前後に達すると膜硬度が低下し、耐摩耗性が急激に低下する欠点を有している。
【0006】
また、これらTiC、TiN、Ti(CN)膜の特性を改善するため(TiAl)Nや(TiZr)N、(TiZr)C膜等、2種類以上の金属成分を含有した膜が検討され、(TiAl)N膜は実用化されているが、これらはいずれも、スパッタ法やイオンプレーティング法等のPVD法、またはプラズマCVD法で成膜したものであり、成膜温度が低く、当該膜が圧縮応力を有しており膜の密着性が低い、あるいは膜中に塩素が残留しており膜の硬度が低く、耐摩耗性が劣る欠点がある。
【0007】
引張残留応力を有するZr含有膜を熱CVD法で成膜する例は特開平1−252305、特開平5−177412、特開平5−177413で開示されている。しかし、これらはいずれもZrC、ZrN、Zr(CN)、Zr(CO)、Zr(CNO)と、金属成分がZrのみからなるCVD膜を用いており、(TiZr)N、(TiZr)C、(TiZr)(CN)等、Zrと他の金属成分との混合膜は検討していない。ZrC膜等、Zr単独からなる膜の硬度は、後述のように、室温における膜硬度が低く、湿式切削や低速で切削し刃先温度が高温にならないときに、耐摩耗性が劣る欠点がある。
【0008】
TiとZrの両者を含有するCVD膜としては、特開平3−267361によってTi−Zr−N膜が開示されているが、プラズマCVD法を用いており、膜中に塩素が残留するため、膜硬度が低く、工具として耐摩耗性が劣る欠点がある。また、基板にアルミナ板を用いており、基板自体の靭性が低いため、工具として使用時に欠落を生じ易く、切削耐久特性が劣る欠点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記の、従来膜被覆工具の欠点を踏まえて、本発明が解決しようとする課題は、高温においても膜硬度が急激に低下せず、膜の密着性と耐摩耗性とが優れた膜を被覆した工具を実現し、従来に比して格段に切削耐久特性の優れるTiZr炭窒化物皮膜被覆工具を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究してきた結果、高温で成膜することにより引張残留応力と優れた密着性を有し、しかも、Zr含有により高温における膜硬度の低下が少なく、膜中の塩素量が少ないことにより中温から高温全体における膜硬度が高まり耐摩耗性が優れ、優れた切削耐久特性を持つ工具を実現できることを見出し、本発明に想到した。
【0011】
すなわち本発明は、基体上にTiとZrの炭窒化物の皮膜を有する被覆工具の製造方法において、該TiZr炭窒化物皮膜を、熱化学蒸着法で、該Ti源として塩化チタンガス、該Zr源として塩化ジルコニウムガス、該炭窒化物の炭素、窒素源として、CH 3 CNガスを0.6〜5vol%とN 2 ガスを25〜45vol%を用いて、圧力20〜100Torr、成膜温度750〜980℃、で形成し、該TiZr炭窒化物皮膜は引張残留応力を有し、Zrを0.3〜30質量%、塩素量が0.1〜2質量%、残り:Ti、及び、不可避不純物からなるものとすることを特徴とするTiZr炭窒化物皮膜被覆工具の製造方法である。
【0012】
更に、TiZr炭窒化物皮膜の表面に、更に、(a)TiN膜、TiC膜、Ti(CO)膜、(b)酸化アルミニウム膜、酸化アルミニウムと酸化ジルコニウムとの混合膜のいずれか、を前記(a)膜の上に、前記(b)膜を被覆すること、該基体が超硬合金であることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のTiZr炭窒化物皮膜は、金属成分が主にチタンであることにより、常温での膜硬度が高いチタン含有膜(例えば、TiC、Ti(CN)膜等)の特長と高温での膜硬度が高いジルコニウム含有膜、両者の特長が得られ、耐摩耗性が優れた、良好な切削耐久特性が実現される。
次に、TiZr炭窒化物皮膜中に、Zrが0.3〜50質量%含まれていることが好ましい。また、1〜40質量%含まれていることが更に好ましく、5〜30質量%含有されていることが最も好ましい。膜中に、Zrが0.3〜50質量%含有されていることにより、Zr含有の良好な耐熱特性や高温高硬度の特長が実現されていると判断される。0.3質量%以下ではZr含有の効果が小さく、50質量%を超えるとTiCやTi(CN)膜に比べて常温での膜硬度が低下し、結果的に切削耐久特性が低下する傾向があらわれる。また、Zrが1〜40質量%含有されている場合は、Zr含有の良好な耐熱特性や高温高硬度の特長が顕著に実現されていると判断される。また、Zrが5〜30質量%含有されていることにより、Zr含有の良好な耐熱特性や高温高硬度の特長が最も顕著にあらわれ、最も良好な切削耐久特性が実現されていると判断される。
【0014】
更に、TiZr炭窒化物皮膜の表面に、更に、該TiZr炭窒化物皮膜の表面に、更に、(a)TiN膜、TiC膜、Ti(CO)膜、(b)酸化アルミニウム膜、酸化アルミニウムと酸化ジルコニウムとの混合膜のいずれか、を前記(a)膜の上に、前記(b)膜を被覆することが好ましい。前記(b)膜の酸化アルミニウム膜、酸化ジルコニウム膜、または酸化アルミニウムと酸化ジルコニウムからなる複合膜を被覆することにより、その下層に成膜されている前記単層皮膜や前記多層皮膜の酸化が防止され、優れた切削耐久特性が実現されていると判断される。
【0015】
該基体が超硬合金であることが好ましい。超硬合金を基体とすることにより本発明の被覆工具全体の靭性、硬度、耐熱性がバランス良く高まり、被覆工具として良好な切削耐久特性が実現される。
【0016】
TiZr炭窒化物皮膜が熱CVD法により成膜されていることが好ましい。少なくとも、TiZr炭窒化物皮膜が、成膜温度が高い熱化学蒸着法法により成膜されていることにより、緻密で膜の密着性、耐摩耗性に優れた、良好な切削耐久特性が実現される。
【0017】
表1はTiCとZrCの常温での硬度と融点をまとめたものである。常温でのビッカース硬度Hvは、TiCが3200と高く、ZrCは2700と少し低下するのに対して、融点はTiCが3420Kに対してZrCは3803Kと高い。ZrCとTiCとは両者の欠点を補完しあう関係にあると考えられる。
【0018】
【表1】
【0019】
本発明のTiZr炭窒化物皮膜の用途は切削工具に限るものではなく、TiZr炭窒化物皮膜を含む単層膜あるいは複層膜や多層膜の硬質皮膜を被覆した耐摩耗材や金型、溶湯部品等でもよい。
【0020】
TiZr炭窒化物皮膜は、例えば(TiZr)(CN)に、Cr、Ta、Nb、Hf、Mg、Y、Si、Bを単独または複数組み合わせて各元素を0.3〜10質量%添加した膜でも良い。0.3質量%未満ではこれらを添加する効果が現れず、10質量%を超えるとTiZr炭窒化物皮膜の高温硬度の効果が低くなる欠点が現れる。また、Zr供給用のガスはZrCl4、ZrCl3、ZrCl2ガス等の塩化ジルコニウムに限るものではなく、他のハロゲン化ジルコニウムやZr(t−OC4H9)等の有機金属ガスを用いてもよい。また、上記膜には本発明の効果を消失しない範囲で不可避の添加物、不純物を例えば数質量%程度まで含むことが許容される。
【0021】
TiZr炭窒化物皮膜の表面に、更に被覆する酸化アルミニウム膜としてκ型酸化アルミニウム単相またはα型酸化アルミニウム単相の膜を用いることができる。また、κ型酸化アルミニウムとα型酸化アルミニウムとの混合膜でもよい。また、κ型酸化アルミニウムおよび/またはα型酸化アルミニウムと、γ型酸化アルミニウム、θ型酸化アルミニウム、δ型酸化アルミニウム、χ型酸化アルミニウムの少なくとも一種以上とからなる混合膜でもよい。また、酸化アルミニウムと酸化ジルコニウム等に代表される他の酸化物との混合膜でもよい。
【0022】
TiZr炭窒化物皮膜、酸化アルミニウム膜の表面に、更に、TiN膜やTi(CN)膜およびその多層膜を被覆してもよい。
【0023】
(実施例1)
比較例1、本発明例2〜16及び比較例17〜25として、WC72質量%、TiC8質量%、(TaNb)C11質量%、Co9質量%の組成よりなるスローアウェイインサートCNMG120408の切削工具用超硬合金基体をCVD炉内にセットし、その表面に、熱CVD法により、H2キャリヤーガスとTiCl4ガスとN2ガスとを原料ガスに用い0.3μm厚さのTiN膜を900℃でまず形成した。
続いて、成膜温度750〜980℃で、TiCl4ガスを0.3〜2.5vol%、ZrCl4ガスを0.3〜2.5vol%、CH3CNガスを0.6〜5vol%、N2ガスを25〜45vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分5500mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力20〜100Torrで、(TiZr)(CN)膜を6μm厚さ成膜した。
【0024】
比較例1、本発明例2〜16及び比較例17〜25のTiZr炭窒化物皮膜の組成分析結果と膜残留応力の符号を表2にまとめて示す。
組成は、堀場製作所製のエネルギー分散形X線分析装置EMAX−7000を用い測定した。測定は膜表面の組成を分析したが、EDXの測定深さが約2μmであるのに対して(TiZr)(CN)膜の膜厚が6μmと厚いため、(TiZr)(CN)膜のみの組成が分析されていると考えられる。
膜の残留応力は理学電気(株)製のX線回折装置(RU−200BH)と応力測定用ソフト(ManualNo.MJ13026A01)を用いて並傾法(X線の走査面と応力の測定方向面とが平行)とΨ一定法(θ−2θ連動スキャン)により測定した。
一般に、膜の残留応力σは、X線応力測定法による並傾法を用いて、次式に示す応力計算式により求められる。
σ=−(1/2){E/(1+ν)}cotθ0{d(2θ)/d(sin2Ψ)}・・(1)
ここで、Eは弾性定数、νはポアソン比、θ0は無歪みの格子面からの標準ブラッグ回折角、Ψは回折格子面法線と試料面法線との傾き、θは測定試料の角度がΨの時のブラッグ回折角である。
(1)式より、応力の符合(±)の決定には2θ−sin2Ψ線図の勾配のみが必要とされ、弾性定数Eやポアソン比ν、cotθo(常に+)の正確な値は必要としないことがわかる。CVD法で成膜した時、膜の残留応力の符合は+で引張応力を持ち、PVD法で成膜した時は、符合が−で圧縮残留応力を有している。
【0025】
【表2】
【0026】
表2より、比較例1、本発明例2〜16及び比較例17〜25は、Zrが0.1〜90質量%含有されており、塩素量は0.1〜2質量%であることがわかる。金属成分の内、Zr以外の大部分はTiであり、他には、WあるいはCoが数質量%以下検出されるだけであった。
【0027】
膜の密着性は、比較例1、本発明例2〜16及び比較例17〜25、各5個を用いて、以下の条件で30秒間切削した後、膜剥離の有無を観察することにより評価した。
被削材 FC25(HB230)
切削速度 300m/分
送り 0.3mm/rev
切り込み 1.0mm
水溶性切削油使用
連続切削寿命は、上記の条件で更に連続切削し、平均逃げ面摩耗量が0.4mm、クレーター摩耗が0.1mmのどちらかに達した時間を連続切削寿命時間と判断した。
表2より、比較例1、本発明例2〜16及び比較例17〜25は、いずれも、30秒間切削後も膜剥離が生じておらず、膜密着性が優れていることがわかる。連続切削テストにおいて、比較例1、本発明例2〜16及び比較例17〜25は、いずれも連続切削寿命が20分以上と長く優れていることがわかる。比較例1、本発明例2〜16及び比較例17〜25は、塩素量が0.1〜2質量%であり、塩素量が1質量%以下の時は、連続切削寿命が更に長くなり、更に優れていることがわかる。
本発明例2〜16及び比較例17〜20のZr含有量が0.3〜50質量%では、連続切削寿命が30分以上と長く優れた工具特性が得られ、本発明例4〜16及び比較例17、18のZr含有量が1〜40質量%では、連続切削寿命が35分以上と更に長くなり更に優れた工具特性が得られ、本発明例5〜16のZr含有量が5〜30質量%では40分以上と最も長くなっており最も優れた工具特性が得られることがわかる。
【0028】
(従来例1)
従来例1として、ジルコニウム含有膜におけるジルコニウム含有の有無による切削耐久特性への影響を明らかにするために、実施例1と同じ基体に、同一条件でTiN膜を形成し、更に、成膜温度750〜980℃でTiCl4ガスを0.3〜2.5vol%、CH3CNガスを0.6〜5vol%、N2ガスを25〜45vol%、残H2キャリヤーガスで構成される原料ガスを毎分5500mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力20〜100Torrで、6μm厚さのTi(CN)膜を成膜した。
従来例1は、膜残留応力の符号は+で引張残留応力を有している。従来例1、5個を用いて実施例1と同一の条件で切削耐久特性を評価した結果、30秒間切削後に膜剥離は見られなかったものの、連続切削寿命は10分と短く、実施例1の本発明例・比較例よりも切削耐久特性が劣ることがわかった。
【0029】
(従来例2)
従来例2として、TiZr炭窒化物皮膜が、本発明のように引張残留応力を有している場合と、圧縮残留応力を有している場合との差違による切削耐久特性への影響を明らかにするために、実施例1と同一の基体をアークイオンプレーティング装置内にセットし、その表面に、TiターゲットとN2ガスを用いることによりTiN膜を550℃でまず形成した。続いて、(TiZr)ターゲットおよびC2H2とN2との混合ガスを用いて550℃で(TiZr)(CN)膜を3μm厚さ成膜した。
【0030】
従来例2の膜残留応力は符号が−であり、圧縮残留応力が働いていることがわかった。従来例2、5個を用いて実施例1と同一の条件で切削耐久特性を評価した結果、30秒間切削中に全て膜剥離が発生し、膜の密着性が実施例1の本発明例・比較例よりも劣ることがわかった。
【0031】
(従来例3)
従来例3として、TiZr炭窒化物皮膜中に含まれる塩素量の差違による切削耐久特性への影響を明らかにするために、実施例1と同一の基体をプラズマCVD装置内にセットし、その表面に、H2キャリヤーガスとTiCl4ガスとN2ガスとを原料ガスに用い0.3μm厚さのTiNを700℃でまず形成した。続いて、成膜温度500〜650℃で、TiCl4ガスを0.3〜2.5vol%、ZrCl4ガスを0.3〜2.5vol%、CH4ガスを3〜6vol%、N2ガスを32vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分5500mlだけプラズマCVD炉内に流し、成膜圧力75Torrで、(TiZr)(CN)膜をプラズマCVD法により6μm厚さ成膜した。
【0032】
従来例3をEDXにより分析した結果、膜中に含まれる塩素量は2質量%を超えていることがわかった。従来例3の条件で作製した切削工具各5個を用いて実施例1と同一の条件で切削耐久特性を評価した結果、10分以内で連続切削寿命に達し、膜の耐摩耗性が実施例1の本発明例・比較例よりも劣ることがわかった。
【0033】
(実施例2)
実施例2として、実施例1と同一の基体をCVD炉内にセットし、実施例1、本発明例5〜16と同様に、0.3μm厚さのTiN膜、6μm厚さの(TiZr)(CN)膜を成膜した。更に、950〜1020℃でTiCl4ガスとCH4ガスとH2キャリヤーガスとをトータル2200ml/分で60分間流して成膜し、そのまま連続して本構成ガスにさらに2.2〜550ml/分のCO2とCOの混合ガスを追加して5〜30分間成膜することによりTiCおよびTi(CO)を作製した。続いてAlCl3ガスとH2ガス2l/分とCO2とCOの混合ガス500ml/分とをCVD炉内に流し、1010〜1020℃で30分間反応させることにより酸化アルミニウム膜を成膜した。その後、AlCl3ガスとZrCl4ガスおよびH2ガス2l/分とCO2とCOの混合ガス500ml/分とをCVD炉内に流し、1000℃で2時間反応させることにより酸化アルミニウムと酸化ジルコニウムとの混合膜を成膜した。この酸化アルミニウムと酸化ジルコニウムとの混合膜の表面に、更に、H2キャリヤーガスとTiCl4ガスとN2ガスとにより0.5μm厚さのTiNを1000℃で成膜した。
【0034】
実施例2の組成と残留応力を実施例1と同一の方法で測定した。但し、組成の測定は、試料の膜断面を研磨し、EDX装置により(TiZr)(CN)膜の断面部分のみを分析した。組成の測定結果は、Zr量が5〜30質量%、塩素量が2質量%以下であった。また、膜は全て、残留応力の符号が+であり、引張残留応力を有していた。
【0035】
(従来例4)
従来例4として、TiZr炭窒化物皮膜による切削耐久特性への影響を明らかにするために、実施例2の本発明例と同一の組成と形状よりなる切削工具用超硬合金基板をCVD炉内にセットし、その表面に、実施例2と同じ条件でTiN膜を形成した。続いて、750〜980℃でTiCl 4 ガスを0.3〜2.5vol%、CH 3 CNガスを0.6〜5vol%、N 2 ガスを25〜45vol%、残H 2 キャリヤーガスで構成されZrCl 4 ガスを含有しない原料ガスを毎分5500mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力20〜100Torrで、6μm厚さのTiCN膜を成膜した。その後、実施例2と同じ条件でチタンの炭化物および炭酸化物からなる膜、続いてAlCl3ガスとH2ガス2l/分とCO2とCOの混合ガス500ml/分とをCVD炉内に流し、1010〜1020℃で2時間反応させることにより所定の厚さの酸化アルミニウム膜を成膜し、従来例4を作製した。
【0036】
従来例4は、膜残留応力の符号は+で引張残留応力を有した。
【0037】
実施例2と従来例4の膜密着性と連続切削寿命特性を評価するため、以下の条件で切削テストを行った。
被削材S53C(HS35)
切削速度250m/min
送り0.2mm/rev
切り込み1.5mm
水溶性切削油使用
【0038】
膜の密着性は、実施例2と従来例4で製作した切削工具各5個を用いて、上記の切削条件で30秒間切削した後、膜剥離の有無を観察することにより評価した。連続切削寿命は、上記の条件で更に連続切削し、平均逃げ面摩耗量が0.4mm、クレーター摩耗が0.1mmのどちらかに達した時間を連続切削寿命時間と判断した。
【0039】
切削テストの結果、実施例2と従来例4は、いずれも、30秒間切削後も膜剥離が生じておらず、膜密着性が優れていた。しかし、連続切削テストにおいては、従来例41は20分以内の切削で寿命に達したのに対して、実施例2はいずれも30分以上切削でき、優れた切削耐久特性を示すことが判明した。
【0040】
【発明の効果】
上述のように、本発明によれば、高温での膜硬度が高いZrを含有し、膜中の塩素量が少なく、しかも引張残留応力を有する膜が形成されており、耐摩耗性と膜密着性が優れ、優れた切削耐久特性を示すTiZr炭窒化物皮膜被覆工具を実現することができる。
Claims (3)
- 基体上にTiとZrの炭窒化物の皮膜を有する被覆工具の製造方法において、該TiZr炭窒化物皮膜を、熱化学蒸着法で、該Ti源として塩化チタンガス、該Zr源として塩化ジルコニウムガス、該炭窒化物の炭素、窒素源として、CH 3 CNガスを0.6〜5vol%とN 2 ガスを25〜45vol%を用いて、圧力20〜100Torr、成膜温度750〜980℃、で形成し、該TiZr炭窒化物皮膜は引張残留応力を有し、Zrを0.3〜30質量%、塩素量が0.1〜2質量%、残り:Ti、及び、不可避不純物からなるものとすることを特徴とするTiZr炭窒化物皮膜被覆工具の製造方法。
- 請求項1記載のTiZr炭窒化物皮膜被覆工具の製造方法において、該基体のTiZr炭窒化物皮膜の表面に、更に、(a)TiN膜、TiC膜、Ti(CO)膜のいずれかと、(b)酸化アルミニウム膜、酸化アルミニウムと酸化ジルコニウムとの混合膜のいずれかを、前記(a)膜の上に、前記(b)膜を被覆したことを特徴とするTiZr炭窒化物皮膜被覆工具の製造方法。
- 請求項1又は2記載のTiZr炭窒化物皮膜被覆工具の製造方法において、該基体が超硬合金であることを特徴とするTiZr炭窒化物皮膜被覆工具の製造方法。
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1999
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