JP2002370105A - 酸化アルミニウム被覆工具 - Google Patents

酸化アルミニウム被覆工具

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JP2002370105A
JP2002370105A JP2001185450A JP2001185450A JP2002370105A JP 2002370105 A JP2002370105 A JP 2002370105A JP 2001185450 A JP2001185450 A JP 2001185450A JP 2001185450 A JP2001185450 A JP 2001185450A JP 2002370105 A JP2002370105 A JP 2002370105A
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aluminum oxide
coated
film
plane
ray diffraction
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JP2001185450A
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Hiroyuki Kodama
浩亨 児玉
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Tungaloy Corp
Original Assignee
Toshiba Tungaloy Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 切削工程の短縮化に対する要求が強く、これ
に伴い過酷な条件下での断続切削が強いられる傾向にあ
る。従来の酸化アルミニウム被膜を含む被膜が被覆され
た切削工具はこれら過酷な条件下では切れ刃の耐欠損性
が不十分であり、さらに寿命増加が望まれるようになっ
た。また酸化アルミニウム被膜を含む複合硬質膜が被覆
された金型に代表される耐摩耗工具についても生産性向
上のため寿命増加が望まれるようになった。 【解決手段】 α型酸化アルミニウムの(012)結晶
面が最強のX線回折強度であり、I(012)/I(1
04)>2、I(012)/I(110)>7.5、お
よびI(012)/I(116)>3の関係にある酸化
アルミニウム被覆工具は、非常に耐欠損性に優れ工具特
性が優れることを見出した。耐欠損性に代表される優れ
た工具特性の酸化アルミニウム被覆工具を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は超硬合金基材また
はサーメット基材の表面に物理蒸着法および/または化
学蒸着法により形成された金属化合物のいずれか一種の
単層膜または二種以上からなる多層膜であって、少なく
とも一層のα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜から
なる被膜を被覆した耐欠損性に優れた酸化アルミニウム
被覆工具に関する。
【0002】
【従来の技術】被覆工具のなかでも酸化アルミニウム被
覆切削工具は広く実用されている。高速、高送りで切削
する領域では超硬合金を基材に用い、下層にチタン化合
物膜を被覆し、上層に酸化アルミニウム被膜を被覆した
被覆切削工具が使用されてきた。近年、鋳鉄切削に対し
てκ型酸化アルミニウム被覆切削工具よりもα型酸化ア
ルミニウム被覆切削工具が耐摩耗性に優れることが明ら
かになった。α型酸化アルミニウム被覆切削工具の切削
性能向上を目的に特開平7−108405、特開平10
−204639が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】特開平7−10840
5に酸化アルミニウム層の(104)面におけるX線回
折強度をI(104)と表し、(030)面におけるX
線回折強度をI(030)と表し、(012)面におけ
るX線回折強度をI(012)と表すとI(030)/
I(104)>1、I(012)/I(030)>1な
る関係にあるα型結晶を主体とした結晶構造の酸化アル
ミニウムで構成されている表面被覆切削工具が示されて
いる。20〜30vol%のCO2ガスを含む反応ガス
を用いるとI(030)/I(104)>1、I(01
2)/I(030)>1であるような酸化アルミニウム
が生成されるとしている。
【0004】特開平10−204639にα型酸化アル
ミニウム単位層が2θで25.5度、同35.5度、同
37.2度および68.4度のいずれかの1番高いX線
回折強度(H1)と同じX線回折パターンにおける2番
目に高いX線回折強度(H2)の比(H1)/(H2)
が1.5〜2.7であるX線回折パターンを示すα型酸
化アルミニウム複合層で構成したことを特徴とする表面
被覆超硬合金製切削工具が開示されている。
【0005】近年、切削工程の短縮化に対する要求が強
く、これに伴い過酷な条件下での断続切削が強いられる
傾向にある。以上のような従来の酸化アルミニウム被膜
を含む被膜が被覆された切削工具はこれら過酷な条件下
では切れ刃の耐欠損性が不十分であり、さらに寿命増加
が望まれるようになった。また酸化アルミニウム被膜を
含む複合硬質膜が被覆された金型に代表される耐摩耗工
具についても生産性向上のため寿命増加が望まれるよう
になった。
【課題を解決するための手段】
【0006】酸化アルミニウム被覆部材の研究におい
て、α型酸化アルミニウムの(012)面のX線回折強
度が、(104)面と(110)面と(116)面のX
線回折強度より一定値以上高いほど耐欠損性が向上する
という知見を得た。α型酸化アルミニウムの(012)
面のX線回折強度が他の面のX線回折強度に比べ一定値
以上高い被膜は(012)面が優先成長したことを示し
ている。(012)面に優先成長した被膜は組織が柱状
を示すようになり被膜自身にクラックが入りやすいこと
が分かった。コーティング時の基材と被膜の熱膨張率の
差によって被膜には残留応力が生じるが、被膜にクラッ
クが入ることによって被膜の引張残留応力が解放され
る。そのためクラックが入りやすい被膜を持つ被覆部材
は入りにくい被膜を持つ被覆部材に比べて引張残留応力
が低減するため耐欠損性に優れる。クラックの入りやす
さは結晶粒界接合強度が低いことを示すと考えられる。
発明者は(012)面に優先成長した被膜は結晶粒界の
接合強度が低い柱状晶からなる組織を持つため被膜自身
にクラックが入りやすくことを見出した。(104)
面、(110)面または(116)面のX線回折強度が
本発明以上に高くなると被膜にクラックが入りにくくな
り、この被膜を被覆した部材は耐欠損性が低下した。ま
とめると酸化アルミニウム被膜X線回折強度比と耐欠損
性が関係し、α型酸化アルミニウムの(012)面のX
線回折強度が(104)面、(110)面、(116)
面のX線回折強度より一定値以上大きいほど耐欠損性が
向上するという知見を得た。
【0007】
【発明の実施の態様】酸化アルミニウムを被覆する方法
として物理蒸着法(以後PVD法と表示する)、化学蒸
着法(以後CVD法と表示する)を用いることができる
が、特に高温で被覆するCVD法によって作製された酸
化アルミニウムについて効果が高い。用途としてはスロ
ーアウェイチップに代表される切削工具や金型に代表さ
れる耐摩耗工具が挙げられる。こうした応力がかかりや
すい工具に今回発明した酸化アルミニウム被膜を応用す
ると効果が高く、例えば切削工具の場合、初期欠損が減
少し、耐摩耗工具に応用すると寿命が増加する。
【0008】酸化アルミニウム被覆工具に用いられる基
材としては硬さと靱性を兼ね備えた部材、セラミック
ス、合金鋼、超硬合金、サーメットがある。その中でも
超硬合金、サーメットが好ましい。超硬合金、サーメッ
トはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、
W、Al、Siの炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、
炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物、ホウ化物を含む硬質
相とCo,Ni,Feを含む結合相と不可避不純物から
なる部材である。基材として用いられる超硬合金は靱性
を持たせるため表面近傍に脱β層を設けることは好まし
い。これらの部材に対して工具形状の精密さを持たせる
ため、湿式研削加工、乾式研削加工、ブラスト加工に代
表される機械的加工や電解研磨に代表される化学的加工
をすることは好ましい。超硬合金、サーメットなどの基
材に対して、直接酸化膜を被覆しても良いが、基材側に
金属化合物を被覆した後、酸化膜を被覆しても良い。前
記金属化合物としてはTi、Zr、Hf、V、Nb、T
a、Cr、Mo、W、Al、Siの一種または二種以上
の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、炭酸化物、窒酸
化物、炭窒酸化物、ホウ化物が挙げられる。これらの下
層膜を基材の超硬合金、サーメットなどに被覆する場
合、基材から下層膜中に結合相の成分、例えばW、C、
Co、Mo、Cr、Vが拡散する場合もあるが、この場
合でも本発明のα型酸化アルミニウム被膜の本質的な効
果は変わらない。なお、酸化アルミニウム被膜の上には
耐凝着性改善のため前記金属化合物を被覆することもよ
い。
【0009】本発明においてα型酸化アルミニウムを主
とする酸化膜とは、α型酸化アルミニウムを酸化膜のX
線回折強度の総計の50%以上が前記α型酸化アルミニ
ウムのX線回折強度からなり、残りがAl,Si,Z
r,Cr,Ti、Yの一種または二種以上からなる酸化
物と1at%以下の微量添加物と1at%以下の不可避
不純物によって構成される酸化膜をいう。α型酸化アル
ミニウム被膜を主とする酸化膜は単層膜あるいは複層膜
にする場合でもよく他の元素を含む被膜と複層膜にした
場合も同様の効果がある。酸化膜はα型酸化アルミニウ
ムに限るものではなく他の結晶型酸化アルミニウム、例
えばκ型酸化アルミニウム、γ型酸化アルミニウム、θ
型酸化アルミニウム、δ型酸化アルミニウム、χ型酸化
アルミニウム等やアモルファスの酸化アルミニウムを含
有してもよく、酸化アルミニウム以外の酸化膜、例えば
酸化シリコン、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化チ
タン、酸化イットリウムとの混合膜でも同様な効果が得
られる。また酸化アルミニウムの20at%以下が、シ
リコン原子、ジルコニウム原子、クロム原子、チタン原
子、イットリア原子に置換された固溶体からなる被膜で
も同様な効果が得られ、α型酸化アルミニウムを主とす
る酸化膜には1at%以下の微量添加物として炭素、炭
化物、窒化物、ホウ化物を含んでもよく、1at%以下
の不可避不純物として硫黄、硫化物、セレン、テルル、
チタン、塩素を含んでも良い。
【0010】α型酸化アルミニウム被膜のX線回折強度
を測定するため、通常のCu管球を装備したX線回折装
置を用いた。測定範囲は20度〜80度であり、Kα1
によるX線回折強度を測定した。測定した面は(01
2)面から(1.0.10)面であった。表1はα型酸
化アルミニウムの結晶面に対する面間隔d、2θ値、標
準X線回折強度I0をまとめたものである。面間隔と標
準X線回折強度I0はJCPDSカードのNo.10−
173から転記し、2θ値はCuのKα1線を用いた時
に測定される値を面間隔dから計算により求めたもので
ある。
【表1】
【0011】表2はTiC、TiN、Ti(C0.6,N
0.4)(以下TiCNと表略する)の(111)と(2
22)の面間隔d、2θ値、標準X線回折強度I0をま
とめたものである。TiCの面間隔dと標準X線回折強
度I0はJCPDSカードのNo.32−1383から
転記し、TiNの面間隔dと標準X線回折強度I0はJ
CPDSカードのNo.38−1420から転記し、T
iCNの面間隔dはTiC,TiNから計算により求め
た。TiCNの2θ値はCuのKα1線を用いた時に測
定される値を面間隔dから計算により求めたものであ
る。
【表2】
【0012】表1、2から分かるようにTiCNの(2
22)面の2θ値(76.85度)とα型酸化アルミニ
ウムの(1.0.10)面の2θ値(76.88度)と
はその差が0.03度であり分離することができない。
このためTiCNの(222)面は(111)面と結晶
構造上同一であることを用いてTiCNの(222)面
のX線回折強度を1式により求め、2式により、この値
を実測された76.9度近傍のX線回折強度I(76.
9゜)から差し引くことによりα型酸化アルミニウムの
(1.0.10)面のX線回折強度I(1.0.10)
を求めた。 (1式) TiCNのI(222)=I(111)×I0(222)/I0(111) =I(111)×17/80 (2式) α型酸化アルミニウムのI(1.0.10) =I(76.9゜)−TiCNのI(111)×17/80 ここで、TiCNの標準X線回折強度I0(hkl)は
TiCの値を採用した。α型酸化アルミニウムの各面に
ついてX線回折強度を得た後、I(012)/I(10
4)、I(012)/I(110)、I(012)/I
(113)、I(012)/I(116)、I(01
2)/I(124)、I(012)/I(030)、I
(012)/I(1.0.10)をもとめた。
【0013】α型酸化アルミニウム被膜の(012)面
のX線回折強度が最強であり、かつ(012)面のX線
回折強度をI(012)、(104)面のX線回折強度
をI(104)、(110)面のX線回折強度をI(1
10)、(113)面のX線回折強度をI(113)、
(116)面のX線回折強度をI(116)、(12
4)面のX線回折強度をI(124)、(030)面の
X線回折強度をI(030)、(1.0.10)面のX
線回折強度をI(1.0.10)としたときにI(01
2)/I(104)>2、I(012)/I(110)
>7.5、およびI(012)/I(116)>3なる
関係にある場合、耐欠損性が向上する。その中でもI
(012)/I(104)>10、I(012)/I
(110)>8、およびI(012)/I(116)>
10が好ましい。他の面のX線強度比については、前記
のX線強度比よりも耐欠損性と相関は低いが、I(01
2)/I(113)>2、I(012)/I(124)
>8、I(012)/I(030)>6、またはI(0
12)/I(1.0.10)>2なる関係にあることが
望ましい。このようなX線強度比を示すα型酸化アルミ
ニウム被膜の組織は柱状晶を示した。この場合の柱状晶
とは基材表面に対して平行な方向で測定した粒径より基
材表面に対して垂直な方向で測定した粒径の方が長い結
晶のことをいう。今回の発明品を切削工具に用いた場
合、応力が集中するエッジ部の初期欠損が生じにくく、
耐摩耗工具に用いた場合エッジ付近の欠けが生じにくく
なった。
【0014】通常のCVD法で原料ガスAlCl3−C
2−CO−H2−HCl系を用いた場合、本発明品はコ
ーティング温度を上げるほど、またはHCl分圧を上げ
るほど得られやすい。なお、原料ガスAlCl3−CO2
−CO−H2−HCl系に成膜速度を上げるためH2S,
SO2などの硫化物やセレン、テルルを加えてもよく、
添加物としてCH4、N2、TiCl4を加えてもよい。
2O合成にCO2のほかにNO2を使用してもよい。し
かしながら、PVD法、CVD法とも被膜の生成は使用
する炉の大きさや炉内でのガスの流れ方、ガス純度など
各種要因によって微妙に影響を受けるため、炉に応じて
各種パラメーターを調整する。
【0015】被覆部材の被膜に存在するクラックは高倍
率のSEM観察でも観察できるが、被膜表面を鏡面研磨
したのちフッ化水素と硝酸を含んだ水溶液で数分間腐食
するとクラックが広がり観察しやすくなる。今回の発明
は被膜に応力がかかった場合にその効果が明確になるた
め、切削試験前後のクラック間隔を調べた。
【0016】
【発明の実施の形態】
【実施試験1】母材超硬合金としては89.3WC−
2.0TiC−3.3TaC−0.4NbC−5.0C
o合金(重量%)、その形状としてJIS規格CNMG
120408を用意した。基材表面を洗浄後、外熱式C
VD装置内に担時し、原料ガスは純度99.9vol%
以上の高純度ガスを使用し、従来から用いられているC
VD法で0.5μmの厚さのTiNと8.0μmの厚さの
TiCNをコーティング温度900℃で被覆し、0.5
μmの厚さのTiAlCOをコーティング温度1000
℃で被覆した。次いで下層の表面に表3に示したガス条
件、温度、圧力および流量で酸化膜を被覆した。酸化膜
をX線回折したところ、α型酸化アルミニウム被膜であ
った。
【0017】
【表3】
【0018】次いでα型酸化アルミニウム被膜表面には
0.5μmの厚さのTiNをコーティング温度1000
℃で被覆して発明品1〜9、比較品1〜3を作製した。
表4にα型酸化アルミニウム被膜の(012)面、(1
04)面、(110)面、(113)面、(024)
面、(116)面、(124)面、(030)面、
(1.0.10)面のX線回折強度の百分率と膜厚を示
した。
【0019】
【表4】
【0020】X線回折強度比と切削試験前の刃先部クラ
ック間隔を表5に記載した。発明品1〜9および比較品
1〜3を、円筒形にV型の4本の溝を入れたFCD60
0(248HB)を被削材に用いて、切削速度:V=1
50m/min、切り込み:d=2mm、送り:f=
0.3mm/rev.、水溶性切削油使用という切削条
件で断続試験を行い、切削試験後の刃先部のクラック間
隔とコーナー摩耗が0.4mmに達するとき、または刃
先部分が欠損に至るまでの切削パス数の3回の平均値を
表5に記載した。被膜の配向性と耐欠損性は非常によく
対応していることが分かる。切削試験結果と試験前のク
ラック間隔の相関はあまり高くないが、切削試験後のク
ラック間隔および配向性と試験結果は相関が高い。
【0021】
【表5】
【0022】
【実施試験2】母材超硬合金としては89.1WC−
2.2TiC−2.8TaC−0.4NbC−5.5C
o合金(重量%)、その形状としてJIS規格CNMG
120408を用意した。基材表面を洗浄後、外熱式C
VD装置内に担時し、原料ガスは純度99.9vol%
以上の高純度ガスを使用し、従来から用いられているC
VD法で0.5μmの厚さのTiNと6.0μmの厚さの
TiCNをコーティング温度900℃で被覆し、0.5
μmの厚さのTiAlCOをコーティング温度1000
℃で被覆した。次いで下層膜の表面にコーティング温度
を980℃、炉内圧力13.3kPa、ガス流量20
l/min、原料ガス成分のAlCl3を2〜5mol
%、CO2とCOを混合したガスを3〜30mol%、
HClを1〜6mol%、H2Sを0〜1mol%、H2
を94〜58mol%の範囲で変えてα型酸化アルミニ
ウム被膜を被覆した。α型酸化アルミニウム被膜表面に
は0.5μmの厚さのTiNをコーティング温度100
0℃で被覆して発明品10〜17、比較品4〜7を作製
した。表6にはα型酸化アルミニウム被膜の(012)
面、(104)面、(110)面、(113)面、(0
24)面、(116)面、(124)面、(030)
面、(1.0.10)面のX線回折強度の百分率と膜厚
を示した。
【0023】
【表6】
【0024】X線回折強度比と切削試験前の刃先部クラ
ック間隔を表7に記載した。発明品10〜17および比
較4〜6を、円筒形にV型の4本の溝を入れたS45C
(241HB)を被削材に用いて、切削速度:V=15
0m/min、切り込み:¥d=2mm、送り:f=
0.3mm/rev.、水溶性切削油使用という切削条
件で断続試験を行い、切削試験後の刃先部のクラック間
隔とコーナー摩耗が0.4mmに達するとき、または刃
先部分が欠損に至るまでの切削パス数の5回の平均値を
表7に記載した。被膜の配向性と耐欠損性は非常によく
対応していることが分かる。切削試験結果と試験前のク
ラック間隔の相関はあまり高くないが、切削試験後のク
ラック間隔および配向性と試験結果は相関が高い。
【0025】
【表7】
【0026】
【発明の効果】以上のように本発明の酸化アルミニウム
被覆工具は被膜にクラックが入りやすいため、優れた工
具特性を実現できる。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成13年7月5日(2001.7.5)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 酸化アルミニウム被覆工具
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は超硬合金基材また
はサーメット基材の表面に物理蒸着法および/または化
学蒸着法により形成された金属化合物のいずれか一種の
単層膜または二種以上からなる多層膜であって、少なく
とも一層のα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜から
なる被膜を被覆した耐欠損性に優れた酸化アルミニウム
被覆工具に関する。
【0002】
【従来の技術】被覆工具のなかでも酸化アルミニウム被
覆切削工具は広く実用されている。高速、高送りで切削
する領域では超硬合金を基材に用い、下層にチタン化合
物膜を被覆し、上層に酸化アルミニウム被膜を被覆した
被覆切削工具が使用されてきた。近年、鋳鉄切削に対し
てκ型酸化アルミニウム被覆切削工具よりもα型酸化ア
ルミニウム被覆切削工具が耐摩耗性に優れることが明ら
かになった。α型酸化アルミニウム被覆切削工具の切削
性能向上を目的に特開平7−108405、特開平10
−204639が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】特開平7−10840
5に酸化アルミニウム層の(104)面におけるX線回
折強度をI(104)と表し、(030)面におけるX
線回折強度をI(030)と表し、(012)面におけ
るX線回折強度をI(012)と表すとI(030)/
I(104)>1、I(012)/I(030)>1な
る関係にあるα型結晶を主体とした結晶構造の酸化アル
ミニウムで構成されている表面被覆切削工具が示されて
いる。20〜30vol%のCO2ガスを含む反応ガス
を用いるとI(030)/I(104)>1、I(01
2)/I(030)>1であるような酸化アルミニウム
が生成されるとしている。
【0004】特開平10−204639にα型酸化アル
ミニウム単位層が2θで25.5度、同35.5度、同
37.2度および68.4度のいずれかの1番高いX線
回折強度(H1)と同じX線回折パターンにおける2番
目に高いX線回折強度(H2)の比(H1)/(H2)
が1.5〜2.7であるX線回折パターンを示すα型酸
化アルミニウム複合層で構成したことを特徴とする表面
被覆超硬合金製切削工具が開示されている。
【0005】近年、切削工程の短縮化に対する要求が強
く、これに伴い過酷な条件下での断続切削が強いられる
傾向にある。以上のような従来の酸化アルミニウム被膜
を含む被膜が被覆された切削工具はこれら過酷な条件下
では切れ刃の耐欠損性が不十分であり、さらに寿命増加
が望まれるようになった。また酸化アルミニウム被膜を
含む複合硬質膜が被覆された金型に代表される耐摩耗工
具についても生産性向上のため寿命増加が望まれるよう
になった。
【課題を解決するための手段】
【0006】酸化アルミニウム被覆部材の研究におい
て、α型酸化アルミニウムの(012)面のX線回折強
度が、(104)面と(110)面と(116)面のX
線回折強度より一定値以上高いほど耐欠損性が向上する
という知見を得た。α型酸化アルミニウムの(012)
面のX線回折強度が他の面のX線回折強度に比べ一定値
以上高い被膜は(012)面が優先成長したことを示し
ている。(012)面に優先成長した被膜は組織が柱状
を示すようになり被膜自身にクラックが入りやすいこと
が分かった。コーティング時の基材と被膜の熱膨張率の
差によって被膜には残留応力が生じるが、被膜にクラッ
クが入ることによって被膜の引張残留応力が解放され
る。そのためクラックが入りやすい被膜を持つ被覆部材
は入りにくい被膜を持つ被覆部材に比べて引張残留応力
が低減するため耐欠損性に優れる。クラックの入りやす
さは結晶粒界接合強度が低いことを示すと考えられる。
発明者は(012)面に優先成長した被膜は結晶粒界の
接合強度が低い柱状晶からなる組織を持つため被膜自身
にクラックが入りやすいことを見出した。(104)
面、(110)面または(116)面のX線回折強度が
本発明以上に高くなると被膜にクラックが入りにくくな
り、この被膜を被覆した部材は耐欠損性が低下した。ま
とめると酸化アルミニウム被膜X線回折強度比と耐欠損
性が関係し、α型酸化アルミニウムの(012)面のX
線回折強度が(104)面、(110)面、(116)
面のX線回折強度より一定値以上大きいほど耐欠損性が
向上するという知見を得た。
【0007】
【発明の実施の態様】酸化アルミニウムを被覆する方法
として物理蒸着法(以後PVD法と表示する)、化学蒸
着法(以後CVD法と表示する)を用いることができる
が、特に高温で被覆するCVD法によって作製された酸
化アルミニウムについて効果が高い。用途としてはスロ
ーアウェイチップに代表される切削工具や金型に代表さ
れる耐摩耗工具が挙げられる。こうした応力がかかりや
すい工具に今回発明した酸化アルミニウム被膜を応用す
ると効果が高く、例えば切削工具の場合、初期欠損が減
少し、耐摩耗工具に応用すると寿命が増加する。
【0008】酸化アルミニウム被覆工具に用いられる基
材としては硬さと靱性を兼ね備えた部材、セラミック
ス、合金鋼、超硬合金、サーメットがある。その中でも
超硬合金、サーメットが好ましい。超硬合金、サーメッ
トはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、
W、Al、Siの炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、
炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物、ホウ化物を含む硬質
相とCo,Ni,Feを含む結合相と不可避不純物から
なる部材である。基材として用いられる超硬合金は靱性
を持たせるため表面近傍に脱β層を設けることは好まし
い。これらの部材に対して工具形状の精密さを持たせる
ため、湿式研削加工、乾式研削加工、ブラスト加工に代
表される機械的加工や電解研磨に代表される化学的加工
をすることは好ましい。超硬合金、サーメットなどの基
材に対して、直接酸化膜を被覆しても良いが、基材側に
金属化合物を被覆した後、酸化膜を被覆しても良い。前
記金属化合物としてはTi、Zr、Hf、V、Nb、T
a、Cr、Mo、W、Al、Siの一種または二種以上
の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、炭酸化物、窒酸
化物、炭窒酸化物、ホウ化物が挙げられる。これらの下
層膜を基材の超硬合金、サーメットなどに被覆する場
合、基材から下層膜中に結合相の成分、例えばW、C、
Co、Mo、Cr、Vが拡散する場合もあるが、この場
合でも本発明のα型酸化アルミニウム被膜の本質的な効
果は変わらない。なお、酸化アルミニウム被膜の上には
耐凝着性改善のため前記金属化合物を被覆することもよ
い。
【0009】本発明においてα型酸化アルミニウムを主
とする酸化膜とは、α型酸化アルミニウムを主とする酸
化膜のX線回折強度の総計の50%以上が前記α型酸化
アルミニウムのX線回折強度からなり、残りがAl,S
i,Zr,Cr,Ti、Yの一種または二種以上からな
る酸化物と1at%以下の微量添加物と1at%以下の
不可避不純物によって構成される酸化膜をいう。α型酸
化アルミニウム被膜を主とする酸化膜は単層膜あるいは
多層膜にする場合でもよく他の元素を含む被膜と多層膜
にした場合も同様の効果がある。酸化膜はα型酸化アル
ミニウムに限るものではなく他の結晶型酸化アルミニウ
ム、例えばκ型酸化アルミニウム、γ型酸化アルミニウ
ム、θ型酸化アルミニウム、δ型酸化アルミニウム、χ
型酸化アルミニウム等やアモルファスの酸化アルミニウ
ムを含有してもよく、酸化アルミニウム以外の酸化膜、
例えば酸化シリコン、酸化ジルコニウム、酸化クロム、
酸化チタン、酸化イットリウムとの混合膜でも同様な効
果が得られる。また酸化アルミニウムの20at%以下
が、シリコン原子、ジルコニウム原子、クロム原子、チ
タン原子、イットリア原子に置換された固溶体からなる
被膜でも同様な効果が得られ、α型酸化アルミニウムを
主とする酸化膜には1at%以下の微量添加物として炭
素、炭化物、窒化物、ホウ化物を含んでもよく、1at
%以下の不可避不純物として硫黄、硫化物、セレン、テ
ルル、チタン、塩素を含んでも良い。
【0010】α型酸化アルミニウム被膜のX線回折強度
を測定するため、通常のCu管球を装備したX線回折装
置を用いた。測定範囲は20度〜80度であり、Kα1
によるX線回折強度を測定した。測定した面は(01
2)面から(1.0.10)面であった。表1はα型酸
化アルミニウムの結晶面に対する面間隔d、2θ値、標
準X線回折強度I0をまとめたものである。面間隔と標
準X線回折強度I0はJCPDSカードのNo.10−
173から転記し、2θ値はCuのKα1線を用いた時
に測定される値を面間隔dから計算により求めたもので
ある。
【表1】
【0011】表2はTiC、TiN、Ti(C0.6,N
0.4)(以下TiCNと表略する)の(111)面と
(222)面の面間隔d、2θ値、標準X線回折強度I
0をまとめたものである。TiCの面間隔dと標準X線
回折強度I0はJCPDSカードのNo.32−138
3から転記し、TiNの面間隔dと標準X線回折強度I
0はJCPDSカードのNo.38−1420から転記
し、TiCNの面間隔dはTiC,TiNから計算によ
り求めた。TiCNの2θ値はCuのKα1線を用いた
時に測定される値を面間隔dから計算により求めたもの
である。
【表2】
【0012】表1、2から分かるようにTiCNの(2
22)面の2θ値(76.85度)とα型酸化アルミニ
ウムの(1.0.10)面の2θ値(76.88度)と
はその差が0.03度であり分離することができない。
このためTiCNの(222)面は(111)面と結晶
構造上同一であることを用いてTiCNの(222)面
のX線回折強度を1式により求め、2式により、この値
を実測された76.9度近傍のX線回折強度I(76.
9゜)から差し引くことによりα型酸化アルミニウムの
(1.0.10)面のX線回折強度I(1.0.10)
を求めた。
【1式】 TiCNのI(222)=I(111)×I0(222)/I0(111) =I(111)×17/80
【2式】 α型酸化アルミニウムのI(1.0.10) =I(76.9゜)−TiCNのI(111)×17/80 ここで、TiCNの標準X線回折強度I0(hkl)は
TiCの値を採用した。α型酸化アルミニウムの各面に
ついてX線回折強度を得た後、I(012)/I(10
4)、I(012)/I(110)、I(012)/I
(113)、I(012)/I(116)、I(01
2)/I(124)、I(012)/I(030)、I
(012)/I(1.0.10)をもとめた。
【0013】α型酸化アルミニウム被膜の(012)面
のX線回折強度が最強であり、かつ(012)面のX線
回折強度をI(012)、(104)面のX線回折強度
をI(104)、(110)面のX線回折強度をI(1
10)、(113)面のX線回折強度をI(113)、
(116)面のX線回折強度をI(116)、(12
4)面のX線回折強度をI(124)、(030)面の
X線回折強度をI(030)、(1.0.10)面のX
線回折強度をI(1.0.10)としたときにI(01
2)/I(104)>2、I(012)/I(110)
>7.5、およびI(012)/I(116)>3なる
関係にある場合、耐欠損性が向上する。その中でもI
(012)/I(104)>10、I(012)/I
(110)>8、およびI(012)/I(116)>
10が好ましい。他の面のX線強度比については、前記
のX線強度比よりも耐欠損性と相関は低いが、I(01
2)/I(113)>2、I(012)/I(124)
>8、I(012)/I(030)>6、またはI(0
12)/I(1.0.10)>2なる関係にあることが
望ましい。このようなX線強度比を示すα型酸化アルミ
ニウム被膜の組織は柱状晶を示した。この場合の柱状晶
とは基材表面に対して平行な方向で測定した粒径より基
材表面に対して垂直な方向で測定した粒径の方が長い結
晶のことをいう。今回の発明品を切削工具に用いた場
合、応力が集中するエッジ部の初期欠損が生じにくく、
耐摩耗工具に用いた場合エッジ付近の欠けが生じにくく
なった。
【0014】通常のCVD法で原料ガスAlCl3−C
2−CO−H2−HCl系を用いた場合、本発明品はコ
ーティング温度を上げるほど、またはHCl分圧を上げ
るほど得られやすい。なお、原料ガスAlCl3−CO2
−CO−H2−HCl系に成膜速度を上げるためH2S,
SO2などの硫化物やセレン、テルルを加えてもよく、
添加物としてCH4、N2、TiCl4を加えてもよい。
2O合成にCO2のほかにNO2を使用してもよい。し
かしながら、PVD法、CVD法とも被膜の生成は使用
する炉の大きさや炉内でのガスの流れ方、ガス純度など
各種要因によって微妙に影響を受けるため、炉に応じて
各種パラメーターを調整する。
【0015】被覆部材の被膜に存在するクラックは高倍
率のSEM観察でも観察できるが、被膜表面を鏡面研磨
したのちフッ化水素と硝酸を含んだ水溶液で数分間腐食
するとクラックが広がり観察しやすくなる。今回の発明
は被膜に応力がかかった場合にその効果が明確になるた
め、切削試験前後のクラック間隔を調べた。
【0016】
【発明の実施の形態】
【実施試験1】母材超硬合金としては89.3WC−
2.0TiC−3.3TaC−0.4NbC−5.0C
o合金(重量%)、その形状としてJIS規格CNMG
120408を用意した。基材表面を洗浄後、外熱式C
VD装置内に担時し、原料ガスは純度99.9vol%
以上の高純度ガスを使用し、従来から用いられているC
VD法で0.5μmの厚さのTiNと8.0μmの厚さの
TiCNをコーティング温度900℃で被覆し、0.5
μmの厚さのTiAlCOをコーティング温度1000
℃で被覆した。次いで下層の表面に表3に示したガス条
件、温度、圧力および流量で酸化膜を被覆した。酸化膜
をX線回折したところ、α型酸化アルミニウム被膜であ
った。
【0017】
【表3】
【0018】次いでα型酸化アルミニウム被膜表面には
0.5μmの厚さのTiNをコーティング温度1000
℃で被覆して発明品1〜9、比較品1〜3を作製した。
表4にα型酸化アルミニウム被膜の(012)面、(1
04)面、(110)面、(113)面、(024)
面、(116)面、(124)面、(030)面、
(1.0.10)面のX線回折強度の百分率と膜厚を示
した。
【0019】
【表4】
【0020】X線回折強度比と切削試験前の刃先部クラ
ック間隔を表5に記載した。発明品1〜9および比較品
1〜3を、円筒形にV型の4本の溝を入れたFCD60
0(248HB)を被削材に用いて、切削速度:V=1
50m/min、切り込み:d=2mm、送り:f=
0.3mm/rev.、水溶性切削油使用という切削条
件で断続試験を行い、切削試験後の刃先部のクラック間
隔とコーナー摩耗が0.4mmに達するとき、または刃
先部分が欠損に至るまでの切削パス数の3回の平均値を
表5に記載した。被膜の配向性と耐欠損性は非常によく
対応していることが分かる。切削試験結果と試験前のク
ラック間隔の相関はあまり高くないが、切削試験後のク
ラック間隔および配向性と試験結果は相関が高い。
【0021】
【表5】
【0022】
【実施試験2】母材超硬合金としては89.1WC−
2.2TiC−2.8TaC−0.4NbC−5.5C
o合金(重量%)、その形状としてJIS規格CNMG
120408を用意した。基材表面を洗浄後、外熱式C
VD装置内に担時し、原料ガスは純度99.9vol%
以上の高純度ガスを使用し、従来から用いられているC
VD法で0.5μmの厚さのTiNと6.0μmの厚さの
TiCNをコーティング温度900℃で被覆し、0.5
μmの厚さのTiAlCOをコーティング温度1000
℃で被覆した。次いで下層膜の表面にコーティング温度
を980℃、炉内圧力13.3kPa、ガス流量20
l/min、原料ガス成分のAlCl3を2〜5mol
%、CO2とCOを混合したガスを3〜30mol%、
HClを1〜6mol%、H2Sを0〜1mol%、H2
を94〜58mol%の範囲で変えてα型酸化アルミニ
ウム被膜を被覆した。α型酸化アルミニウム被膜表面に
は0.5μmの厚さのTiNをコーティング温度100
0℃で被覆して発明品10〜17、比較品4〜7を作製
した。表6にはα型酸化アルミニウム被膜の(012)
面、(104)面、(110)面、(113)面、(0
24)面、(116)面、(124)面、(030)
面、(1.0.10)面のX線回折強度の百分率と膜厚
を示した。
【0023】
【表6】
【0024】X線回折強度比と切削試験前の刃先部クラ
ック間隔を表7に記載した。発明品10〜17および比
較4〜6を、円筒形にV型の4本の溝を入れたS45C
(241HB)を被削材に用いて、切削速度:V=15
0m/min、切り込み:d=2mm、送り:f=0.
3mm/rev.、水溶性切削油使用という切削条件で
断続試験を行い、切削試験後の刃先部のクラック間隔と
コーナー摩耗が0.4mmに達するとき、または刃先部
分が欠損に至るまでの切削パス数の5回の平均値を表7
に記載した。被膜の配向性と耐欠損性は非常によく対応
していることが分かる。切削試験結果と試験前のクラッ
ク間隔の相関はあまり高くないが、切削試験後のクラッ
ク間隔および配向性と試験結果は相関が高い。
【0025】
【表7】
【0026】
【発明の効果】以上のように本発明の酸化アルミニウム
被覆工具は被膜にクラックが入りやすいため、優れた工
具特性を実現できる。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基材表面に単層膜または多層膜の被膜が被
    覆された被覆工具において、該被膜は、少なくとも一層
    がα型酸化アルミニウム(六方晶構造)を含む酸化膜か
    らなり、該酸化膜をX線回折したときにおけるα型酸化
    アルミニウムの結晶面は、(012)結晶面が最強のX
    線回折強度であり、(012)結晶面、(104)結晶
    面、(110)結晶面、(116)結晶面におけるX線
    回折強度をそれぞれI(012)、I(104)、I
    (110)、I(116)としたときに、I(012)
    /I(104)>2、I(012)/I(110)>
    7.5、およびI(012)/I(116)>3の関係
    にある酸化アルミニウム被覆工具。
  2. 【請求項2】前記被膜の少なくとも一層は柱状晶である
    ことを特徴とする請求項1記載の酸化アルミニウム被覆
    工具。
  3. 【請求項3】前記基材は超硬合金、サーメットでなるこ
    とを特徴とする請求項1または2記載の酸化アルミニウ
    ム被覆工具。
  4. 【請求項4】前記被膜はTi、Zr、Hf、V、Nb、
    Ta、Cr、Mo、W、Al、Siの一種または二種以
    上からなる炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、炭酸化
    物、窒酸化物、炭窒酸化物、ホウ化物のいずれかによっ
    て構成される一種の単層膜または二種以上の多層膜が含
    まれている請求項1〜3のいずれか記載の酸化アルミニ
    ウム被覆工具。
  5. 【請求項5】前記被膜は、Tiの炭化物、窒化物、炭窒
    化物、AlとTiを含む窒化物、炭窒化物、炭酸化物、
    窒酸化物、炭窒酸化物の中の少なくとも一種の下層膜を
    含み、該下層膜が前記基材と前記酸化膜との間に介在さ
    れている請求項1〜4のいずれか記載の酸化アルミニウ
    ム被覆工具。
  6. 【請求項6】前記被膜は前記下層膜と前記酸化膜の他
    に、Tiの窒化物、炭酸化物、炭酸化物、炭窒酸化物の
    中の少なくとも一層でなる最外層を含み、該酸化膜の表
    面に該最外層が被覆されている請求項1〜5のいずれか
    記載の酸化アルミニウム被覆工具。
  7. 【請求項7】前記酸化膜は柱状晶であることを特徴とす
    る請求項1〜6記載の酸化アルミニウム被覆工具。
  8. 【請求項8】前記酸化アルミニウム被覆工具が切削工具
    に用いられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか
    記載の酸化アルミニウム被覆工具。
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