JP2002273607A - 多層被覆工具 - Google Patents

多層被覆工具

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JP2002273607A
JP2002273607A JP2001075825A JP2001075825A JP2002273607A JP 2002273607 A JP2002273607 A JP 2002273607A JP 2001075825 A JP2001075825 A JP 2001075825A JP 2001075825 A JP2001075825 A JP 2001075825A JP 2002273607 A JP2002273607 A JP 2002273607A
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film
titanium carbonitride
aluminum nitride
tool
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JP2001075825A
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Toshio Ishii
敏夫 石井
Yuzo Fukunaga
有三 福永
Shiro Okayama
史郎 岡山
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Moldino Tool Engineering Ltd
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Hitachi Tool Engineering Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】工具基体表面上に周期律表の4a、5a、6a
族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化
物、炭窒酸化物、並びに酸化アルミニウム、酸化ジルコ
ニウム等の層を設け、それら皮膜の耐クラック性をより
一層高めた被覆工具を提供する。 【構成】炭窒化チタン層と窒化アルミニウム層とからな
る複層構造の層を単位層とし、前記単位層を工具基体上
に少なくとも1単位層以上被覆してなることを特徴とす
る多層被覆工具である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、切削工具や耐摩工
具等として用いる被覆工具に関するものであり、より詳
しくは、工具基体表面上に、周期律表の4a、5a、6
a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸
化物、炭窒酸化物、並びに酸化アルミニウム、酸化ジル
コニウムの層のうち、いずれか二種以上の層からなる多
層膜を有し、該多層膜の中に炭窒化チタン膜及び窒化ア
ルミニウム膜を少なくともそれぞれ一層以上有する多層
被覆工具に関する。
【0002】
【従来の技術】超硬合金、高速度鋼、あるいは特殊鋼な
どからなる工具基体の表面に、単層又は多層の硬質皮膜
を施した被覆工具は、皮膜の耐摩耗性と基体の強靭性と
を兼ね備えているため、広く実用に供されている。特
に、高速で切削する場合や切削液を用いずに旋削加工す
る場合には、切削工具の刃先温度が1000℃前後にま
で達するため、高温環境下における被削材との接触によ
る摩耗や断続切削等の機械的衝撃に耐える必要があり、
耐摩耗性と靭性の両特性に優れた被覆工具が常用されて
いる。
【0003】一般に、被覆工具の硬質皮膜としては、耐
摩耗性及び靭性に優れることが要求されるため、周期律
表4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、又は炭窒
化物からなる膜が用いられており、また耐酸化性に優れ
る酸化アルミニウム膜なども用いられている。これら硬
質皮膜は、良く知られているように、CVD法あるいは
PVD法により成膜される。PVD法は、多数の元素を
含有する膜を比較的容易に成膜できるという特長を有す
るが、CVD法により成膜した皮膜に比べて、基体と膜
の間、及び皮膜相互間の密着性が劣るという欠点があ
る。これに対して、CVD法は、化学反応を用いて成膜
するために多数の元素を含有する膜を成膜することが困
難であるという欠点はあるが、600〜1050℃の高
温で成膜するために、膜の密着性が高いこと、高い温度
で使用しても膜特性の劣化が少ないこと、などの特長が
ある。
【0004】このため、切削加工時に刃先が比較的高い
温度まで上昇する旋削工具等の皮膜としては、CVD法
で成膜されたTiC、TiN、TiCN、Al2O3膜
などが実用化されているにすぎない。これら実用化され
ている皮膜のうち、TiC、TiN、TiCN膜は、常
温で測定したビッカース硬度Hvが約3200、210
0、2700と硬く、耐摩耗性が優れているため、旋削
用工具の皮膜として多用されている。しかし、これらの
膜のうちTiCN膜は、高硬度材を切削し、刃先の温度
が1000℃を越える高温に達した場合、酸化しやす
く、また膜中にクラックが入り結晶粒の脱落等により、
工具寿命が劣る欠点がある。
【0005】このような炭窒化チタン膜の特性を改善し
たものとして、例えば、TiCN層のX線回折における
最高ピーク強度を示す面を規定したもの(特開平6−1
58324号公報、特開平6−158325号公報、及
び特開平7−62542号公報)や、膜中の塩素の含有
量を規定したもの(特開平7−100701号公報)等
が提案されており、本願出願人も膜厚や組織等を特定し
たものを提案した(特許第2660180号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記本願発
明者らが先に提案した発明、すなわち、炭窒化チタン硬
質膜に係る発明を更に発展させ、耐摩耗性、耐チッピン
グ性、高温硬度等が優れ、工具寿命の永い被覆工具を提
供することを課題とするものである。すなわち、上記実
状を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、従来に
比して膜の耐酸化性や耐クラック性が優れており、格段
に工具寿命の優れる炭窒化チタン膜を有する被覆工具を
提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述したような従来の発
明は、いずれも、チタンの炭窒化物層自体に着目し、そ
れらを改善した内容のものが多い。本願発明者らは、多
層膜を構成する個々の膜の特性改善を検討するとともに
膜相互の関連性についても検討した結果、高温耐摩耗性
が優れた炭窒化チタン膜と、高温耐酸化性に優れた窒化
アルミニウム膜とを組み合わせることにより、両者の特
長を併せ持つとともに、耐クラック性をより一層高める
ことができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】すなわち、本発明は、炭窒化チタン層と窒
化アルミニウム層とからなる複層構造の層を単位層と
し、前記単位層を工具基体上に少なくとも1単位層以上
被覆してなることを特徴とする多層被覆工具である。
【0009】本発明によれば、超硬合金やサーメット、
高速度鋼、特殊鋼等からなる周知の工具基体を用い、少
なくとも一単位層、好ましくは二単位層以上の複合構造
の層を含むように多層膜を構成することにより、優れた
工具寿命を持つ多層被覆工具が得られる。その理由は明
確ではないが、高温耐摩耗性と靱性とが優れた炭窒化チ
タン膜と、高温での安定性が優れた窒化アルミニウム膜
とを組み合わせることにより、炭窒化チタン層により優
れた靱性と高温耐摩耗性が得られ、窒化アルミニウム層
により切削中に刃先温度が高温になった場合でも窒化ア
ルミ中のアルミニウムが酸化して高温でも安定な酸化ア
ルミニウムに変化することにより、優れた耐酸化性が得
られるものと考えられる。更に、これらが層状に分かれ
て積層形成されているために、単位層における外側の膜
中にクラックが発生したとしても両膜の境界領域で遮断
され、膜厚方向に伝搬し難くなることによって、耐クラ
ック性が向上し、優れた工具寿命を持つ被覆層が得られ
るものと考えられる。
【0010】本発明において、前記炭窒化チタン層と窒
化アルミニウム層とからなる複層構造の単位層は、多層
膜中に少なくとも1単位層以上存在する必要があるが、
二単位層以上を含有していることが好ましく、三単位層
以上含有していることが最も好ましい。こうすることに
より、炭窒化チタンと窒化アルミニウム層間でクラック
が膜厚方向には走りにくくなるため、耐クラック性が向
上して、更に良好な工具寿命を持つ被覆層が得られる効
果があると考えられる。この効果は、二単位層更には三
単位層以上で複層構造を構成することにより更に顕著に
現れる。また、本発明において、単位層における窒化ア
ルミニウム層は、炭窒化チタン層の上に成膜されている
ことが好ましい。工具摩耗が進行しても、耐酸化性に富
む窒化アルミニウム層が外側に存在することにより、高
温での酸化を防止し、内層が酸化することを防止すると
ともに耐クラック性も良好であるなど、両層の特長がよ
り顕著に現れる効果がある。
【0011】本発明において、上記単位層における炭窒
化チタン層と窒化アルミニウム層は、その膜厚比(炭窒
化チタン層/窒化アルミニウム層)を0.5〜50の範
囲とするのが良く、好ましくは0.5〜30の範囲とす
る。膜厚比が、0.5未満では複層構造の層とする効果
が少なく、50を越えると膜が柔らかくなりすぎ耐摩耗
性が低くなる。好ましい範囲では、耐クラック、耐酸化
性、及び膜硬度のバランスが特に良くなり、優れた工具
特性を得ることが出来る。
【0012】本発明において、複層構造の単位層を構成
する炭窒化チタン層と窒化アルミニウム層の間に、炭化
チタン、窒化チタン、窒化チタンアルミニウム等の極薄
層を挿入し、両層間の密着性を更に高めることも可能で
ある。
【0013】また本発明において、前記複層構造単位層
の中の炭窒化チタン層は、(422)面又は(311)
面からの等価X線回折強度比PRが最大であることが好
ましい。こうすることにより、前記炭窒化チタン層が高
い結晶性を持つとともに、耐摩耗性と靭性とが更に優れ
ることになり、更に良好な工具寿命が得られる。このよ
うな膜は、炭窒化チタン層の成膜条件を最適化すること
によって成膜できる。例えば、炭窒化チタン層の成膜温
度を700℃から920℃の温度範囲では(422)面
や(311)面の等価X線回折強度比PRが大きくなり
やすく、更に成膜温度を高めるに連れて(111)面や
(220)面の等価X線回折強度比PRが大きくなる傾
向が現れる。
【0014】炭窒化チタンのX線回折は、JCPDSフ
ァイル(Powder Diffraction File Published by JCPDS
International Center for Diffraction Data)に記載
がない。このため、後述する実施例等においては、Ti
CとTiNのX線回折データ(JCPDSファイルN
o.29−1361とNo.38−1420)及び本発
明品を実測して得たX線回折パターンから求めた表1の
面指数と2θ値を基準にして同定した。また、等方粒子
のX線回折強度比I0は表1中に示すようにTiCとT
iNの平均値とした。
【0015】
【表1】
【0016】ここでX線回折パターンはX線源にCuK
α1線(λ=0.15405nm)を用い、試料の工具
表面平坦部の皮膜部分を測定面として、2θ−θ走査法
により2θ=10〜145°の範囲で測定する。バック
グランドは装置に内蔵されたソフトにより除去した。ま
た、炭窒化チタンの格子定数が0.42〜0.44の範
囲で変動するため、表1の2θ値を基準にして、測定し
たX線回折ピークに現れているTiC、TiN、WCの
ピーク(JCPDSファイルNo.25−1047)等
のピークとの位置関係をも考慮して炭窒化チタンのX線
回折ピークを決定した。
【0017】等価X線回折強度比PR(hkl)は炭窒
化チタンの(hkl)面からのX線回折ピーク強度を定
量的に評価するために次式より定義した。この値は表1
に記載された等方粒子のX線回折ピーク強度I0(hk
l)に対する実測した皮膜のX線回折ピーク強度I(h
kl)の相対強度を示している。PR(hkl)値が大
きい程(hkl)面からのX線回折ピーク強度が他のX
線回折ピーク強度よりも強く、皮膜の(hkl)面が基
体と平行方向に強く配向していることを示している。
【0018】
【式1】
【0019】また、本発明において、炭窒化チタン層と
窒化アルミニウム層から成る単位層を構成する炭窒化チ
タン層は、その膜厚方向に細長い柱状組織を持つことが
好ましい。炭窒化チタン層が膜厚方向に細長く連続する
ことで結晶粒の粗大化が防止でき良好な工具寿命が得ら
れる。このような炭窒化チタン層を成膜するには、原料
ガスとして、好ましくは有機CN化合物ガス、チタンの
ハロゲン化ガス、アルミニウムのハロゲン化ガス、及び
アンモニアガスを用い、700〜980℃の温度で、熱
CVD法により成膜することにより製造できる。
【0020】また、本発明において、複層構造の単位層
を構成する炭窒化チタン層の粒界と窒化アルミニウム層
の粒界とが膜厚方向に略連続していることが好ましい。
二層の結晶粒界が膜厚方向に略連続している事により、
炭窒化チタン層と窒化アルミニウム層との間により優れ
た密着性が得られ、層間の剥がれやクラックの伝搬が少
なくなり、より優れた工具寿命が得られる。このような
炭窒化チタンと窒化アルミニウムの単位層は、例えば、
両層間の成膜温度を同一にし、原料ガスを連続的に変化
させることにより製造できる。
【0021】本発明の多層被覆工具において、上記炭窒
化チタン層はTiCNに限るものではない。これらの成
分に例えばCr、Ta、Nb、Zr、Hf、Mg、Y、
Si、Bを単独又は複数組み合わせて各元素を0.3〜
30質量%添加した層でも良い。0.3質量%未満では
これらを添加する効果が現れず、30質量%を超えると
炭窒化チタン層の硬度が低くなる等の欠点が現れる。ま
た、上記複層構造の単位層には、本発明の効果を消失し
ない範囲でWやCo等の不可避の不純物を例えば数質量
%程度まで含むことが許容される。
【0022】また、本発明の被覆工具において、上記複
層構造の多層膜は窒化チタン膜上に形成されていること
に限るものではなく、下地膜として例えば炭化チタン膜
や窒化アルミニウム膜、窒化ジルコニウム膜を成膜した
場合も略同様の作用効果を得ることができる。
【0023】更に、本発明の被覆工具において、炭窒化
チタン層と窒化アルミニウム層とからなる複層構造の単
位層は、必ずしも最外層膜である必要はない。例えば、
さらにその上にα型酸化アルミニウム膜、κ型酸化アル
ミニウム膜、酸化ジルコニウム膜、あるいはこれらの複
合膜、更にはチタン化合物(例えば窒化チタン膜や炭窒
化チタン膜及びその多層膜)やジルコニウム等の化合物
(例えば窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化アル
ミニウム及びその多層膜)等を被覆してもよい。
【0024】また、本発明の多層被覆工具において、炭
窒化チタン層と窒化アルミニウム層とから構成される複
層構造の単位層は、熱CVD法により成膜されたもので
あり、膜の残留応力が引張応力であることが好ましい
が、プラズマCVD法あるいはアークイオンプレーティ
ング法等のPVD法によってもよい。ただし、プラズマ
CVD法で成膜すると、膜中の塩素量が2質量%を越え
てしまい、膜硬度と耐摩耗性が低下して工具寿命が低下
する欠点が現れ易い。また、PVD法で成膜する場合に
は、膜の残留応力が圧縮応力になるとともに膜の下地に
対する密着性が低下し、膜剥離しやすくなり、工具寿命
が低下する欠点が現れる。
【0025】
【発明の実施の態様】以下、本発明の多層被覆工具を、
実施例等によって具体的に説明するが、これら実施例に
より本発明が限定されるものではない。
【0026】(実施例1)WC:72質量%、TiC:
8質量%、(Ta、Nb)C:11質量%、Co:9質
量%の組成よりなる超硬合金製スローアウェイチップ上
に、熱CVD法により成膜温度900℃で厚さ0.4μ
mの窒化チタン層をまず形成した。次に、成膜温度85
0℃、TiClガス:1.5vol%、CHCNガ
ス:1.0vol%、Nガス:45vol%、残りH
キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分6000
mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力:5.0kPaで
厚さ1μmの炭窒化チタン層を成膜した。続いて、成膜
温度850℃、AlClガス:1.5vol%、NH
ガス:1.0vol%、Nガス:45vol%、残
りHキャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分60
00mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力:5.0kP
aで窒化アルミニウムを成膜した。この炭窒化チタン層
と窒化アルミニウム層とから成る複層構造を一組の単位
層として、1組〜6組の単位層を積層して、全厚が10
μmの炭窒化チタン層及び窒化アルミニウム層からなる
多層膜を成膜した。なお、複層構造部の全膜厚が10μ
mになるように、成膜する組数が1組から6組へと多く
なるにつれて、炭窒化チタン層と窒化アルミニウム両者
の成膜時間を均等に短縮した。
【0027】図1は、本発明例である試料番号4の皮膜
部破断面を、走査電子顕微鏡により撮影したものであ
る。炭窒化チタン層(より膜厚の厚い部分)と窒化アル
ミニウム層(同薄い層)とから構成された単層が3組被
覆されており、炭窒化チタン層は膜厚方向に細長い柱状
組織を持っていること、また、炭窒化チタン層の結晶粒
界と窒化アルミニウム層の結晶粒界が膜厚方向にほぼ連
続していることがわかる。
【0028】図2は試料番号4の工具表面平坦部におけ
る皮膜部分のX線回折パターン測定結果である。図2の
X線回折パターンから求めた本発明例の炭窒化チタン膜
の、各ピークの2θ値とX線回折強度及び各2θ値から
求めた格子定数を表2にまとめて示す。図3は図2と表
2より求めた試料番号4の炭窒化チタン膜の各(hk
l)面の等価X線回折強度比PR(hkl)をまとめて
示したものである。本試料の等価X線回折強度比PRは
(422)面が最大であり、次いで(311)が大きい
ことがわかる。
【0029】
【表2】
【0030】また、比較のため、以下の試料を作製し
た。即ち、基体上に厚さ0.4μmの窒化チタン膜を成
膜した後、続いて厚さ10μmの炭窒化チタン単層を成
膜した試料(試料番号7)、及び、同様に基体上に厚さ
0.4μmの窒化チタン膜と厚さ10μmの窒化アルミ
ニウム単層を成膜した試料(試料番号8)を作製した。
【0031】上記のようにして得られた本発明の多層被
覆工具及び比較例品を用いて、以下の条件で連続切削を
行い、被覆工具の工具寿命を評価した。 被削材:FC250(HB230) 切削速度:320m/分 送り:0.25mm/rev 切り込み:2.0mm 乾式切削 ここで、切削状況を2分間隔で調べ、平均逃げ面摩耗量
が0.35mm、クレーター摩耗が0.1mm、境界摩
耗が0.5mmのどれかに達した時間を連続切削寿命と
判断し、これを工具寿命とした。
【0032】得られた多層被覆工具について、炭窒化チ
タン層と窒化アルミニウム層とからなる複層構造の単位
層の層数(組数)、炭窒化チタン層の組織、炭窒化チタ
ン層の等価X線回折強度比PRが最大である面、及び連
続切削寿命等を表3にまとめて示す。
【0033】
【表3】
【0034】表3より、本発明による多層被覆工具は、
いずれも連続切削寿命が16分以上と長く優れているこ
とがわかる。また、表3より、炭窒化チタン層と窒化ア
ルミニウム層とからなる複層構造の単位層が二単位層以
上の多層膜構造を形成しているもの(試料番号1〜5)
が、単位層が1組のみのもの(試料番号6)より工具寿
命が1.6倍以上優れており、更には、単位層が3組
(試料番号4)の場合には連続切削寿命が30分以上と
約1.9倍以上優れ、更に優れた工具寿命が得られるこ
とが判る。即ち、複層構造を構成する単位層の組数は2
組以上が好ましく、更には3組以上が最も好ましいこと
がわかった。
【0035】また、比較例である試料番号7では、膜の
酸化あるいは膜中にクラックが発生したためか、膜のク
レーター摩耗が進行し、連続切削寿命は8分であった。
また、試料番号8では、膜の硬度が低いためか、逃げ面
摩耗が急速に進行し、連続切削寿命は5分であった。こ
れに対して、本発明例の、1組の単位層を被覆した試料
番号6の連続切削寿命は16分であり、炭窒化チタン単
層(試料番号7)ないしは窒化アルミニウム単層(試料
番号8)を被覆している従来例よりも2倍ないしは3倍
以上優れていることがわかる。
【0036】(実施例2)本発明において、炭窒化チタ
ン層と窒化アルミニウム層とからなる複層構造の単位層
を構成する炭窒化チタン層の等価X線回折強度比PRが
最大である面の相違による影響を明らかにするため、炭
窒化チタン層と窒化アルミニウム層の各成膜温度を同時
に880℃、930℃、950℃に高める以外は、実施
例1と同じ条件で成膜した3組の単位層を持つ本発明被
覆工具(試料番号9、10、11)を作製した。これら
試料の単位層の組数、炭窒化チタン層の組織とX線回折
強度比PRが最大である面の指数、及び連続切削寿命の
評価結果を表4にまとめて示す。
【0037】
【表4】
【0038】炭窒化チタン層と窒化アルミニウム層とか
らなる単位層の組数が同じ3組である表3中の試料番号
4と、表4の試料番号9、10、11とを比較すること
により、単位層を構成する炭窒化チタン層の等価X線回
折強度比PRが最大である面が(422)面又は(31
1)面であるときの方が連続切削寿命が30分、28分
と長く、(111)面及び(220)面が最大であると
きよりも工具寿命が1.5倍以上優れていることがわか
る。即ち、単位層を構成する炭窒化チタン層の等価X線
回折強度比PRが最大である面が(422)面又は(3
11)面であることが好ましいことがわかった。
【0039】(実施例3)本発明例の炭窒化チタン層と
窒化アルミニウム層とからなる複層構造の単位層におけ
る炭窒化チタン層が、膜厚方向に細長い柱状組織と粒状
組織である場合との工具寿命への影響を明らかにするた
め、実施例1と同じ切削工具用超硬合金基体に、厚さ
0.4μmの窒化チタン膜を成膜した。次に、成膜温度
980℃、原料ガスをTiClガス:1.5vol
%、CHガス2.5vol%、Nガス:45vol
%、残りHキャリヤーガスで構成された原料ガスを毎
分6000mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力:5.
0kPaで炭窒化チタン層を成膜した。続いて、成膜温
度900℃、原料ガスをAlClガス:1.5vol
%、NHガス:1.0vol%、Nガス:45vo
l%、残りHキャリヤーガスで構成された原料ガスを
毎分6000mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力:
5.0kPaで窒化アルミニウム層を成膜した。この炭
窒化チタン層と窒化アルミニウム層とからなる複層構造
の層を1単位層として、3組の単位層からなり全厚が1
0μmの炭窒化チタン層と窒化アルミニウム層からなる
皮膜を成膜し、試料番号12とした。この試料の炭窒化
チタン層は、膜厚方向に細長くはなく、粒状であった。
また、実施例1と同一の方法で評価した連続切削寿命は
18分であった。
【0040】本試料と、炭窒化チタン層と窒化アルミニ
ウム層からなる複層構造の単位層数が同じ3組である試
料番号4とを比較することにより、単位層を構成する炭
窒化チタン層が、膜厚方向に細長い柱状組織である場合
(試料番号4、連続切削寿命30分)の方が、細長い柱
状組織でない場合(試料番号12、18分)より工具寿
命が約1.7倍優れていることがわかる。即ち、単位層
を構成する炭窒化チタン層が膜厚方向に細長い柱状組織
を有していることが好ましいことがわかった。
【0041】(実施例4)本発明例の炭窒化チタンと窒
化アルミニウム層とからなる単位層を構成する炭窒化チ
タン層の結晶粒界と、その上に形成された窒化アルミニ
ウム層の結晶粒界とが膜厚方向に略連続していることの
工具寿命への影響を明らかにするため、実施例1と同じ
成膜条件で切削工具用超硬合金工具基体の表面に厚さ
0.4μmの窒化チタン膜を成膜した後、成膜温度85
0℃で、TiClガス:1.5vol%、CHCN
ガス:1.0vol%、Nガス:45vol%、残り
キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分600
0mlだけCVD炉内に流して、成膜圧力:5.0kP
aで炭窒化チタン層を成膜した。続いて、成膜温度70
0℃又は1000℃で原料ガスをAlClガス:1.
5vol%、NHガス:1.0vol%、Nガス:
45vol%、残りHキャリヤーガスで構成された原
料ガスを毎分6000mlだけCVD炉内に流し、成膜
圧力:5.0kPaで窒化アルミニウム層を成膜した。
この炭窒化チタン層と窒化アルミニウム層とを一組の単
位層を、繰り返し成膜して、三組の単位層を全厚で10
μm成膜することにより試料番号13と試料番号14と
を製作した。試料番号13の窒化アルミニウム層の成膜
温度は700℃、試料番号14は1000℃である。
【0042】これら試料の、皮膜断面の結晶形態をSE
Mで観察した結果、試料番号13の窒化アルミニウム層
はアモルファス状であり、試料番号14は巨大結晶粒か
ら成っており、単位層を構成する窒化アルミニウム層と
炭窒化チタン層の粒界は膜厚方向に連続していなかっ
た。また、これらの試料を実施例1と同じ条件で連続切
削寿命を評価した結果、試料番号13、14はそれぞれ
14分と15分であった。
【0043】炭窒化チタン層と窒化アルミニウム層とか
らなる単位層の組数が同じ3組である試料番号4(実施
例1、連続切削寿命30分)と試料番号13、14(同
14,15分)とを比較することにより、単位層を構成
する炭窒化チタン層の粒界と窒化アルミニウム層の粒界
とが連続である場合の工具寿命が不連続であるよりも2
倍以上優れていることがわかる。即ち、単位層を構成す
る炭窒化チタン層の粒界と窒化アルミニウム層の粒界と
が連続であることが好ましいことがわかった。
【0044】
【発明の効果】上述のように、本発明によれば、従来に
比して膜の耐酸化性や耐クラック性が優れ、格段に工具
寿命の優れる炭窒化チタン層及び窒化アルミニウム層を
有する多層被覆工具を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の多層被覆工具のセラミック材
料の組織を示す顕微鏡写真の一例を示す。
【図2】図2は本発明の多層被覆工具のX線回折パター
ンの一例を示す。
【図3】図3は、本発明の多層被覆工具の等価X線回折
強度比PRの一例を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3C046 FF02 FF03 FF10 FF13 FF16 4K030 AA03 AA09 AA13 AA17 AA18 BA38 BA41 BB12 CA03 FA10 LA22

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭窒化チタン層と窒化アルミニウム層とか
    らなる複層構造の層を単位層とし、前記単位層を工具基
    体上に少なくとも1単位層以上被覆してなることを特徴
    とする多層被覆工具。
  2. 【請求項2】請求項1記載の多層被覆工具において、上
    記単位層を構成する炭窒化チタン層の等価X線回折強度
    比PRが最大である面が(422)面又は(311)面
    であることを特徴とする多層被覆工具。
  3. 【請求項3】請求項1又は2記載の多層被覆工具におい
    て、上記単位層を構成する炭窒化チタン層が、膜厚方向
    に細長い柱状組織を有することを特徴とする多層被覆工
    具。
  4. 【請求項4】請求項1乃至3のいずれかに記載の多層被
    覆工具において、上記単位層を構成する炭窒化チタン層
    の粒界と窒化アルミニウム層の粒界とが膜厚方向に略連
    続していることを特徴とする多層被覆工具。
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