JP2004148503A - 酸化アルミニウム被覆工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】 α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1とその下地(基体側の膜)である非酸化膜3との間にあり両膜に直接接触する薄い結合層2の両界面の密着性あるいは結合層2自体の機械強度を高めることにより、切削特性等の品質が安定した長寿命の酸化アルミニウム被覆工具を提供する。
【解決手段】 基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、酸炭化物、酸窒化物および酸炭窒化物のいずれか一種の単層皮膜または二種以上からなる多層皮膜、並びに結合層とα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜とが形成されている酸化アルミニウム被覆工具において、前記結合層が少なくとも針状、棒状、板状のいずれかの突起を持つ組織を有し、かつ、前記結合層の[110]結晶軸と前記酸化膜を主に構成するα型酸化アルミニウムの(100)面に垂直な軸とが略並行であることを特徴とする酸化アルミニウム被覆工具。
【選択図】 図1

Description

本発明は、切削用及び耐摩耗用の酸化アルミニウム被覆工具に関するものである。
一般に、被覆工具は超硬質合金、高速度鋼、特殊鋼よりなる基体表面に硬質皮膜を化学蒸着法や、物理蒸着法により成膜することにより作製される。このような被覆工具は皮膜の耐摩耗性と基体の強靭性とを兼ね備えており、広く実用に供されている。特に、高硬度材を高速で切削する場合に、切削工具の刃先温度は1000℃前後まで上がるとともに、被削材との接触による摩耗や断続切削等の機械的衝撃に耐える必要があり、耐摩耗性と強靭性とを兼ね備えた被覆工具が重宝されている。
硬質皮膜には、耐摩耗性と靭性に優れた周期律表IVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物からなる非酸化膜や耐酸化性に優れた酸化膜が単層あるいは多層膜として用いられる。非酸化膜では例えばTiC、TiN、TiCNが利用され、酸化膜では特にα型酸化アルミニウムやκ型酸化アルミニウム等が利用されている。炭化物、窒化物、炭窒化物等からなる非酸化膜の欠点は酸化され易いことであり、この欠点を補うため、非酸化膜上に耐酸化性に優れた酸化アルミニウム等の酸化膜を形成する多層膜構造を持たせることにより非酸化膜の酸化を防止することが行われている。
この非酸化膜/酸化膜の多層膜構造の欠点は非酸化膜と酸化膜との間の密着性が低いこと、あるいは高温で機械強度が安定しないことである。前記酸化膜としてκ型酸化アルミニウム膜を用いた場合、このκ型酸化アルミニウムは前記非酸化膜との密着性は比較的良好でありしかも1000〜1020℃と比較的低温で成膜できる長所はあるものの、準安定状態のアルミナであるため高温での使用時にα型酸化アルミニウムに変態するため体積が変化し、酸化膜中にクラックが入り、膜が剥がれるという欠点がある。これに対して、前記酸化膜としてα型酸化アルミニウムを用いた場合、このα型酸化アルミニウムは高温でも安定なアルミナ膜であり高温特性に優れる長所があるものの、非酸化膜の上に直接成膜するためには高温で成膜する必要があり、α型酸化アルミニウムの結晶粒径が大きくなり機械特性が低下する欠点がある。
このため従来より、前記非酸化膜の表面を酸化させ酸化膜生成の基点を形成した後に酸化アルミニウムを形成することにより1000〜1020℃と比較的低温でα型酸化アルミニウムを得る手法が常用されている。図3はこのような非酸化膜と酸化膜の界面近傍を模式的に示したものであり、基体側に形成された非酸化膜3とα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1との間に結合層2が存在している。上記の通り結合層2は一般に非酸化膜3の表面を酸化させることにより作製され、その厚さは1μm以下と薄い。このため、一見非酸化膜3の上に直接酸化膜1が形成されているように見えるが、本発明では非酸化膜3上に形成された酸化層をその機能と特性を明確にするためその製法に関わらず全て結合層2として表記する。
上記のように結合層2を非酸化膜3表面の酸化により形成した後に成膜したα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1は密着強度が充分ではなく、切削時に酸化膜1がその下地である非酸化膜3から早期に剥がれる事故が発生することがある。このためα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1と基体側に形成された非酸化膜3との間の密着強度を高めるために結合層2の形成方法に種々の工夫がなされてきた。
例えば、特開平6−316758号では鋳鉄に対する切削性能を向上させるため、下地にTiCN層(図3の3)を形成した後、酸化ポテンシャルがH2Oの20ppm未満の濃度であるH2キャリアガスを用い、CO2、CO及びAlCl3の順序に反応ガスを順次供給することによりアルミナの核形成を開始させ、核形成時の温度を約1000℃にしてα−アルミナ膜を形成することにより、(012)面からの等価X線強度TC(012)が1.3より大きいアルミナ層を提案している。この場合、TiCN層(図3の3)の表面にまず酸化ポテンシャルがH2Oの20ppm未満の濃度であるH2キャリアガスおよびCO2ガス、COガスを流すことによりTiCN層表面が酸化されることにより結合層(図3の2)が形成され、その後、更にAlCl3を加えて流すことによりα−アルミナ膜が形成されているものと考えられる。
また、他の工夫としては、耐摩耗性と耐欠損性を高めるために、X線回折で(220)面に最強ピークが現れるTiの炭化物、炭窒化物、および炭窒酸化物のうちの一種の単層または二種以上の複層からなる内層と、κ型酸化アルミニウム、またはκ型酸化アルミニウムとα型酸化アルミニウムからなる外層とで構成された表面被覆硬質合金製切削工具が特開昭63−195268号公報により提案されている。
しかし、これらの提案はいずれもTiCN層表面を酸化することにより結合層(図3の2)を形成し、その後、更にAlCl3を加えて流すことによりα−アルミナ膜を形成(特開平6−316758号)したり、X線回折で(220)面に最強ピークが現れるTiの炭化物、炭窒化物、および炭窒酸化物のうちの一種の単層または二種以上の複層からなる内層上にκ型酸化アルミニウム、またはκ型酸化アルミニウムとα型酸化アルミニウムからなる外層を形成(特開昭63−195268)するものであり、結合層の組織の形状に関しては何ら考慮されていない。また、特開昭63−195268はκ型酸化アルミニウムを主にする酸化膜を外層に用いるものであり、α型酸化アルミニウムは従来例に記載されているがその有効性が認められておらず、一般にTiC膜等との密着性の高いκ型酸化アルミニウムに対して密着性が劣り、膜剥がれを生じやすいα型酸化アルミニウムには適用出来ないものである。また、その内層のX線回折の最強ピークを(220)面とのみ規定しており他の(111)面、(311)面に関しては考慮されていない。
また、酸化アルミニウムの下層の結晶粒の形状を規定したものとしては特開平7−328808、特開平7−328809、特開平7−328810、特開平7−331443、特開平8−1410、特開平8−1411があるがいずれもκ型酸化アルミニウムを主とする酸化膜に関するものであり密着性が劣り、膜剥がれを生じやすいα型酸化アルミニウムには適用出来ないものである。また、酸化層に直接接触する結合層中の酸化層(例えばTiCO、TiCNO等。)はいずれも粒状の結晶形状をもっており、唯一縦長状の結晶形状を持つTiCNはその上には直接α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜を形成出来ないものである。
また、酸化アルミニウムの下層の結晶形状を規定したものとしては特開平7−314207があり、炭化チタンまたは炭窒酸化チタンからなる結晶粒が粒状の組織を有する上層上に結晶粒が粒状の組織を有する酸化アルミニウムからなる最上層を形成した表面被覆WC基超硬合金製切削工具が提案されているが、炭化チタンまたは炭窒酸化チタンの結晶粒形は粒状であり、針状、棒状、板状のいずれでもなくアンカー効果等による密着性の向上は期待出来ないものである。
特開平6−316758号公報 特開昭63−195268号公報 特開平7−328808号公報 特開平7−328809号公報 特開平7−328810号公報 特開平7−331443号公報 特開平8−1410号公報 特開平8−1411号公報
本発明者等は超硬等の基板上にα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜を含む多層膜を形成して作製した切削工具を切削テストし、その破損部を詳細に評価した結果、上記のようにα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1が下地である非酸化膜3との界面の結合層部分(図3の2)から剥がれたり、酸化膜1自体にクラックが入り結晶粒が脱落したりしていることがわかった。
一般に、前記結合層2はTiC、TiN、TiCN膜等より成る非酸化膜3の表面をH2OとCO2との混合ガスで酸化することにより作製しているが次のような理由から品質の良いα型酸化アルミニウムを主とした酸化膜被覆工具を安定して生産することは困難である。即ち、結合層2成膜時に、CO2等による酸化性ガスの濃度が高いと主にTi23(X線パターンはASTM No.10−63参照)やTi35(ASTMNo.11−217)あるいはTiO2(ASTMファイル No.21−1276)が形成され、下地との密着強度が低く、酸化層(結合層)自体がもろく機械強度が低くなる欠点が生じる。一方、CO2等による酸化性ガスの濃度を下げてTi23、Ti35、TiO2が形成されないように非酸下膜3の酸化を行うと下地であるTiC、TiN、TiCN等の非酸化膜3表面の酸化が不十分になり、酸化アルミニウムの成膜温度が1020℃以下ではκ型酸化アルミニウムが形成されα型酸化アルミニウムが安定して形成されず、一方酸化アルミニウムの成膜温度を1030℃以上にするとα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1の粒径が粗大化するとともに、中心線平均面粗さRaや最大面粗さRmaxも荒くなり被覆工具の特性が低下する欠点が生じる。
上記問題を踏まえて、本発明が解決しようとする課題は、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1とその下地(基体側の膜)である非酸化膜3との間にあり両膜に直接接触する薄い結合層2の両界面の密着性あるいは結合層2自体の機械強度を高めることにより、切削特性等の品質が安定した長寿命の酸化アルミニウム被覆工具を提供することである。
本発明らは上記課題を解決するために先に特願平8−192795、特願平8−334948を提案し、更なる改善策を鋭意研究してきた結果、下地であるTiC、TiN、TiCN等の非酸化膜3とα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1との間に形成する薄い結合層2を下記のように改質することで非酸化膜3およびα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1との密着性が改善され、上記問題点が解消することを見出し、本発明に想到した。
すなわち本発明は、基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、酸炭化物、酸窒化物および酸炭窒化物のいずれか一種の単層皮膜または二種以上からなる多層皮膜、並びに結合層とα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜とが形成されている酸化アルミニウム被覆工具において、前記結合層が少なくとも針状、棒状、板状のいずれかの突起を持つ組織を有し、かつ、前記結合層の[110]結晶軸と前記酸化膜を主に構成するα型酸化アルミニウムの(100)面に垂直な軸とが略並行であることを特徴とする酸化アルミニウム被覆工具である。また、前記結合層が立方晶であることを特徴とする酸化アルミニウム被覆工具である。また、前記結合層が基体表面の接線と平行方向に(111)面、(220)面、(311)面の配向が強く、(200)面の配向が相対的に弱いことを特徴とするものである。また、前記結合層の等価X線回折強度PR(200)がPR(111)、PR(220)、PR(311)のいずれかよりも小さいことを特徴とするものである。また、前記結合層の等価X線回折強度PR(111)、PR(200)、PR(220)、PR(311)、PR(222)のうちPR(311)あるいはPR(111)が最も大きいことを特徴とするものである。また、前記結合層(図3の2)の結晶粒がツイン構造を持っていることを特徴とするものである。また、前記各膜間の密着性が高まるように、前記結合層(図3の2)の(111)面格子縞と前記酸化膜(図3の1)を主に構成するα型酸化アルミニウムの(003)面格子縞とが界面において連続していることを特徴とするのものである。ここで、格子縞とは、透過電子顕微鏡(TEM)で結晶を高倍率で観察したときに得られる格子像の縞模様の縞のことを云う。二つ以上の相接する膜(結晶)の格子像を撮影しようとした時、これらの膜の結晶方位が共に透過電子顕微鏡の入射ビームと大略平行な時にのみ両者の結晶の格子像が同時に観察される。α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1の格子縞と結合層2の格子縞とが界面において連続しているということは即ち両結晶の結晶方位が共に入射ビームに大略平行であり、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1と結合層2の両者がエピタキシャルの関係にあることを示している。両膜の結晶方位が平行でなく片一方の結晶方位のみが透過電子顕微鏡の入射ビームに平行なときは、その結晶のみの格子像が得られ、平行でないもう片一方の結晶の格子像は得られない。また、両膜の結晶方位が平行であっても両膜が直接接触しておらず他の物質が介在している場合には、両膜の格子像は得られるものの間にある介在物により格子縞が途中で中断し両者の格子縞は連続しない。また、本発明は結合層の表面付近において大略二つの三角形の境界上に板状、針状、棒状のいずれか一種または二種以上の結晶が形成されている組織を有していることを特徴とするものである。また、本発明はα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の表面にチタンの窒化膜が形成されていることを特徴とするものである。また、本発明は周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物のいずれか一種または二種以上とFe、Ni、Co、W、Mo、Crのいずれか一種または二種以上とを主体とする超硬質合金を基体とすることを特徴とする酸化アルミニウム被覆工具である。
上述のように、本発明によれば、基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、酸炭化物、酸窒化物および酸炭窒化物のいずれか一種の単層皮膜または二種以上からなる多層皮膜上に、針状、棒状、板状の突起を示す組織を持つ結合層を介してα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜が形成され、かつ結合層の[110]結晶軸と前記酸化膜を主に構成するα型酸化アルミニウムの(100)面に垂直な軸とが略並行であることにより、アンカー効果によりα-Al2O3膜との間に優れた密着性が確保でき、結合層とα-Al2O3間に優れた密着性が得られ、機械特性の優れた長寿命の酸化アルミニウム被覆工具が実現できる。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
以下に本発明を詳説する。図1は代表的な本発明の被覆工具においてα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜(図3の1)とこの酸化膜に直接接触しているTiC/TiCO結合層(図3の2)との界面近傍を(株)日立製作所製の透過電子顕微鏡(H−9000UHR)により400万倍で観察したものの一例である。この本発明品は後述の実施例1の条件で基体表面にTiNとTiCNを成膜した後、TiC層を薄く成膜しそのまま連続してTiCの成膜に用いた構成ガスにさらにCO2ガスを追加して反応させてTiCO層を成膜することによりTiC層/TiCO層よりなる結合層を作製した後、その表面上にα型酸化アルミニウムを成膜したものである。また、図2は図1に対応した模式図である。図1から求めた格子縞間隔と同箇所の透過電子線回折像や電子線エネルギー損失分析(EELS)の結果および後述の図5等から、図1の中央部の結合層2の針状、棒状または板状の突起となる結晶はTi、C、Oからなり結晶構造が立方晶であるTiCOであること、およびその両側(図2で示される1−1、1−2)はAlとOとからなり結晶構造が六方晶であるα−Al23であることが確認された。すなわち、図1の右側から左方向に順に、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1−1、この酸化膜1−1と結合層2との界面4、結合層2、結合層2内の双晶(すなわちツイン構造部)の境界5、結合層2、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1−2が写っている。また、格子縞間隔および格子縞間の角度を解析した結果、格子縞6はTiCOの(111)結晶面からなり、格子縞7はα−Al23の(003)結晶面からなることが確認された。さらに、TiCO結晶粒はその中央部の直線状界面(図2の5で示される部分)で二つに分かれておりツイン構造を持つことがわかる。また、図2の2で示される部分はTiCOの[110]結晶軸方向から、図2の1−1で示される部分はα−Al23の(100)面に垂直な軸方向から各々電子線を入射したときに観察される結晶組織を示しており、両者が同時に観察されていることからTiCOの[110]結晶軸とα−Al23の(100)面に垂直な軸とが略平行になっていることがわかる。また、図1、図2よりTiCOの(111)面による格子縞6とα−Al23の(003)面による格子縞7とがTiCOとα−Al23の1−1との界面4において連続であることがわかる。
次に、本発明品の代表的な皮膜部分を試料面にして2θ−θ走査法のX線回析方法により測定を行った。X線源にはCuのKα1(波長λ=1.5405A)を用いた。図4はこのX線回折結果を示したものである。図4より本発明品の結合層はTiCと同じ立方晶構造を持ち面間距離即ち2θ値もほとんどTiCと同じであり、(111)面、(222)面、(311)面のX線回折強度が強く、(200)面のX線回折強度が弱いことがわかる。ここで、結合層のX線回折パターンを測定する時、酸化膜等の膜厚が厚く結合層のX線回折強度が充分とれない場合は、酸化膜表面を軽く研磨し酸化膜の膜厚を薄くした状態でX線回折することで結合層のX線回折強度を確保しても良い。
結合層の(hkl)面からのX線ピーク強度を定量的に評価するために次式により(hkl)面による等価ピーク強度PR(hkl)を定義した。ここでI(hkl)は(hkl)面による実測時のX線回折強度を表し、I0(hkl)はASTMファイル No.32−1383 (Powder Diffraction File Published by JCPDS International Center for Diffraction Data)に記載されているTiCのX線回折強度であり、配向が等方的である粉末粒子の(hkl)面からのX線回折強度を表している。PR(hkl)は、ASTMのデータに記載された等方粒子のX線ピーク強度に対する、X線回折で実測した皮膜の(hkl)面からのX線回折ピーク強度の相対強度を示しており、PR(hkl)値が大きい程(hkl)面からのX線ピーク強度が他のピーク強度よりも強く、(hkl)方向に測定サンプルが配向していることを示す。
PR(hkl)={I(hkl)/I0(hkl)}/[Σ{I(hkl)/I0(hkl)}/5]但し、(hkl)=(111)、(200)、(220)、(311)、(222)
図4等より、結合層のPR(hkl)を測定すると後述の実施例(表1、図15)で詳説するように、本発明品の結合層のPR(111)値、PR(220)値とPR(311)値とが大きく、PR(200)値は小さい値に留まり、(200)面の配向が弱く、(111)、(220)、(311)面への配向が強いことがわかる。なお、結合層の配向は透過電子顕微鏡を用いて結合層の複数個の結晶粒子をその結合層と大略垂直方向から電子線回折像を取り解析することによっても求められる。この場合、10個の結晶粒子を観察し、その過半が(111)、(220)、(311)面からなり(200)面が3個以下であれば(200)面の配向が小さいと考えられる。
本発明品のα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の密着性や機械特性が優れる理由は明確ではないが次のことが考えられる。本発明品のα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜は図1のように結合層2の形状が針状、棒状または板状結晶の形を示しており、そのまわりにα型酸化アルミニウム1が形成されることによりいわゆるアンカー効果が期待される。また、結合層2の[110]軸とα型酸化アルミニウム1の(100)面に垂直な軸とがミクロ観察可能な略平行関係にある、あるいは、TiCOの(111)面格子縞6とα型酸化アルミニウムの(003)面格子縞7とが連続であること、すなわち、結合層2からα型酸化アルミニウム1がエピタキシャルに成長していることにより両者の密着性が優れることが期待される。結合層2がTi、C、N、O等からなる立方晶であることで立方晶であるTiC、TiCN、TiN等の下地膜(図3の3)とエピタキシャル関係になり易く、下地膜3との密着性が確保でき、しかも機械強度が低くその部分から膜剥がれが生じ易くなるTi23(結晶構造は三方晶系)、Ti35(結晶構造は単斜晶系)あるいはTiO2(結晶構造は斜方晶系)を結合層に用いることを避けることができる。また、結合層(図3の2)が(111)、(311)、(220)面方向に配向し、(200)面方向の配向が弱いこと、あるいは、結合層2がツイン構造を持つことにより、結合層2の表面付近が針状あるいは板状の結晶構造を取り易くなり、前記の様にアンカー効果により酸化膜(図3の1)との密着性が高まったものと考えられる。なお、上記内容は結合層あるいはα型酸化アルミニウムの界面付近の全ての領域で成立する必要はなく、透過電子顕微鏡により結合層近傍を5万倍で観察したときに上記内容が成立した部分が局部的に存在すれば、本発明による優れた作用効果を獲得することが可能である。また、結合層2の表面付近において大略が三角形の一辺を共有した二つの三角形の境界上に板状または針状、棒状の結晶が形成されている組織を有していることにより、結合層が(111)、(311)、(220)面方向に配向し(200)面方向の配向が弱くなる、あるいは、結合層2がツイン構造を持ち易くなり、結合層2の表面の針状、棒状あるいは板状の形状を持つ結晶粒子によるアンカー効果により高い密着性が得られ、膜剥がれを起こし難く、長寿命の酸化アルミニウム被覆工具を得ることができる。結合層2の表面付近の組織は結合層2を成膜後その上の酸化膜等を成膜せず、その試料表面の組織を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)で観察することにより確かめられる。あるいは結合層2上に酸化膜等を成膜した後でも試料の裏、表面を研磨しミリング加工した後結合層近傍を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)あるいは透過電子顕微鏡で観察することによっても確かめられるが、この場合は結合層の一部しか観察されないため、大略三角形状の組織や板状、針状、棒状の結晶粒子の断面が観察されることにより上記組織を持つことが確認できる。
本発明のα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜は、必ずしも最外層である必要はなく、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の上に更に少なくとも一層のチタン化合物(例えばTiN層等。)を被覆しても良い。
本発明における被覆方法には既知の成膜方法を適用することが可能である。例えば、通常の化学蒸着法(熱CVD)、プラズマを付加した化学蒸着法(PACVD)等を用いることができる。用途は切削工具に限るものではなく、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜を含む単層あるいは多層の硬質皮膜により被覆された耐摩耗材や金型、溶湯部品等でも良い。酸化膜はα型酸化アルミニウム単相に限るものではなく、α型酸化アルミニウムが主であれば、他の酸化物、例えばα型酸化アルミニウムとκ型酸化アルミニウムとの混合膜やγ型酸化アルミニウム、θ型酸化アルミニウム、δ型酸化アルミニウム、χ型酸化アルミニウム等、他の構造の酸化アルミニウムとの混合膜あるいはα型酸化アルミニウムと酸化ジルコニウム等他の酸化物との混合膜であっても同様の作用効果を得ることが可能である。なお、本発明のα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜とは、80vol%以上のα型酸化アルミニウム(α−Al23)を含むものをいう。
次に本発明による酸化アルミニウム被覆工具を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものでないことは言うまでもない。
(実施例1)WC72%,TiC8%,(Ta,Nb)C11%,Co9%(%はいずれも重量%を示す。)の組成よりなる切削工具用超硬基板をCVD炉内にセットし、その表面に、化学蒸着法によりH2キャリヤーガスとTiCl4ガスとN2ガスとを原料ガスに用い0.3μm厚さのTiNを900℃でまず形成し、次に、H2キャリヤーガスとTiCl4ガスとCH3CNガスを原料ガスに用い6μm厚さのTiCN膜を900℃で成膜することにより非酸化膜(図3の3)を形成した後、950〜1020℃でH2キャリヤーガスとTiCl4ガスとCH4ガスとをトータル2,200ml/分を5〜30分間流してまず成膜し、そのまま連続して本構成ガスに更に2.2〜110ml/分のCO2ガスを追加して5〜30分間成膜することによりTiC層とTiCO層とが薄く積層されたTiC/TiCO結合層(図3の2−1、2−2)を作製した。その後、続いてAl金属小片を詰め350℃に保温した小筒中にH2ガスを310ml/分とHClガス130ml/分とを流すことにより発生させたAlCl3ガスとH2ガス2l/分とCO2ガス100ml/分とをCVD炉内に流し1010〜1020℃で反応させることにより所定の厚さの酸化アルミニウム膜(図3の1)を成膜し本発明品を作製した。
図5は実施例1の代表的な酸化アルミニウム被覆工具において観察された、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜(図3の1に対応。)、結合層(図3の2に対応。)、下地膜(図3の3に対応。)近傍の透過電子顕微鏡(TEM)写真の一例である。また、図6は図5に対応した模式図である。図5、図6より、非酸化膜であるTiCNの結晶粒(図6の3はその一部)上に結合層(図6の2はその一部)が形成されその上にα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜(図6の1はその一部)が形成されている。図6に示される2a、2b部分から図5の本発明の結合層2が平坦部とともに針状、棒状、または板状の突起形状を一部に持つことがわかる。ここで、図5の透過電子顕微鏡写真は成膜面の膜断面を厚さ20μm以下に研磨した後更にイオンミリングにより膜断面の厚さを極端に薄くした状態で電子線を膜断面を透過させることによって観察したものである。このため、結合層の針状、棒状、または板状等の突起部分が観察される確率は低く、図5のように結合層2と酸化膜1との大部分の界面が平坦に写り、突起形状部は一部(2a、2b)にのみ観察される結果になっている。図5のように、一視野に一乃至二箇所の突起部分が観測されると言うことはかなりの頻度で針状、棒状、または板状の突起部分が結合層2中にあると考えられる。なお、上記図1は図5の2a部、すなわち、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1と結合層2との界面近傍の格子像写真を示したものである。したがって、上記図1、図5より本発明品の結合層2が立方晶の結晶構造を持ち、その一部は針状、棒状または板状結晶の形状を示しており、そのまわりにα型酸化アルミニウム1が形成されていること、また、結合層2がツイン構造を持っていること、また、結合層2の[110]軸とα型酸化アルミニウム1の(100)面に垂直な軸とが略平行関係にあり、TiCOの(111)面格子縞6とα型酸化アルミニウムの(003)面格子縞7とが界面4において連続であること、すなわち、結合層2からα型酸化アルミニウムの1−1部分がエピタキシャルに成長していることがわかる。また、この実施例1で作製した被覆膜の代表的なX線回折結果は上記図4に示したものである。図4から求めた結合層の測定値、各ピークの測定値IとASTMファイルに記載されている強度値I0との比I/I0 、式(1)により求めた等価X線強度比PR(hkl)値を表1にまとめた。また、図15のデータ曲線(a)は、図4および表1から求めたPR(hkl)値を図示したものである。図4、表1、図15のデータ曲線(a)より、実施例1で作製した代表的な本発明品の結合層は(200)面のI/I0値が0.51、PR(200)値が0.10と小さく(200)面の配向が弱いこと、および(311)面、(220)面、(111)面の順に配向が強いことがわかる。なお、表1に記した2θの値はX線源にKα1線を用いた時に得られる2θ値をASTMに記載されているTiCのd定数から計算したものである。実測される2θ値はその前後で微妙に異なるため、図4等において結合層のピークを同定するときは、2θ値とともに、その前後のWCのピーク、TiCNのピーク、α-Al2O3、κ-Al2O3のピーク等との位置関係も考慮して決定した。
Figure 2004148503
(実施例2)上記実施例1と同様の手順で、0.3μm厚さのTiNを900℃で、6μm厚さのTiCN膜を900℃で各々形成した後、TiC/TiCO結合層を950〜1010℃で成膜した。次いで、AlCl3ガスとH2ガス2l/分とCO2ガス100ml/分およびH2Sガス8ml/分とをCVD炉内に流し1010℃で酸化アルミニウムを成膜し、その後、H2ガス4l/分とTiCl4ガス50ml/分とN2ガス1.3l/分を流し1010℃で窒化チタニウム膜を形成した本発明の酸化アルミニウム被覆工具を作製した。また、結合層の成膜状態を観察するために、上記と同一の条件でTiN、TiCN、TiC/TiCO結合層までを成膜した後、酸化アルミニウム膜を成膜せずに試料を取り出しその試料表面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を図11の組織写真に示した。また、図11に対応した模式図を図12に示した。図1、図12より、この実施例2でTiN,TiCN,TiC/TiCO結合層まで成膜した状態で観察した結合層表面は大略三角形の一辺を共有した二つの三角形(例えば、図12の2c、2dで示される部分)の境界線上に板状または針状、棒状の結晶(例えば、図12の2eで示される部分)が成長していることがわかる。透過電子顕微鏡で観察した結果、この三角形の結晶粒子は(111)面あるいは(311)面が基体表面の接線と大略平行方向に成長したものであり、二つの三角形の境界上に成長した板状または針状、棒状の結晶粒子は主に(110)面が三角形の結晶粒子の(111)面や(311)面と大略垂直方向に成長していることが確認された。また、このTiC/TiCO結合層まで成膜した試料のX線回折パターンを実施例1と同様の条件で測定した結果を図13に示した。図13から求めた結合層の各ピークの測定値IとASTMファイルに記載されている強度値I0との比I/I0 、PR(hkl)値を表2にまとめた。図15のデータ曲線(b)は、図13および表2から求めたPR(hkl)値を図示したものである。図13、表2、図15のデータ曲線(b)より、本結合層は(200)面のI/I0値が4.68、PR(200)値が0.28と低く(200)面の配向が弱いこと、および(111)面、(311)面、(220)面の順に配向が強いことがわかる。
Figure 2004148503
図7は実施例2において結合層の上にそのまま更に酸化膜と窒化チタニウム膜を形成した本発明の被覆工具のミクロ組織の一例を示すものであり、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜(図3の1に対応。)と結合層(図3の2に対応。)近傍の透過電子顕微鏡(TEM)写真(倍率30万倍)である。また、図8は図7に対応した模式図である。図7、図8より、結合層2の一部が針状、棒状、ないしは板状の突起形状(図8の2fで示される部分)を示し、ツイン構造(双晶)を持ち、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1がそのまわりに形成されていることがわかる。図9は図7の2f部近傍を倍率300万倍に拡大して観察したものであり、左方向が膜表面方向である。また、図10は図9に対応した模式図である。図9、図10ではその上から下に向かって上記図2と同様に順に、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1と結合層2との界面4、結合層2、結合層2の双晶の境界5、結合層2、α型酸化アルミニウムを主とする酸化膜1が写っている。そして、図9の結合層2がツイン構造を持ち、結合層2の格子縞9と酸化膜1の格子縞10とが連続であることが図9の上右側の界面(図10で4と記されている部分)近傍からわかる。また、この本発明品のX線回折パターンを実施例1と同一の条件で測定した結果を図14に示した。図14から求めた結合層の測定値、各ピークの測定値IとASTMファイルの強度値I0との比I/I0 、PR(hkl)値を表3にまとめた。図15のデータ曲線(c)は、図14および表3から求めたPR(hkl)値を図示したものである。図14、表3、図15のデータ曲線(c)より、本結合層は(200)面のI/I0 値が0.86、PR(200)値が0.08と低く(200)面の配向が弱いこと、および(111)面、(311)面、(220)面の順に配向が強いことがわかる。
Figure 2004148503
次に、実施例1および実施例2の条件で製作した本発明品の切削工具各5個を用いて、鋳物の被削材を以下の条件で1時間連続切削試験した後に酸化アルミニウム被覆膜の剥離状況を倍率200倍の光学顕微鏡により観察し、評価した。
被削材 FC25(HB230)
切削速度 300 m/min
送り 0.3 mm/rev
切り込み 2.0 mm
水溶性切削油使用
この切削試験の結果、上記本発明品はいずれも1時間連続切削後もアルミナ膜の剥離が見られず切削工具として優れていることが判明した。また、上記本発明品の切削工具各5個を以下の条件で断続切削し、1,000回衝撃切削後に刃先先端の欠け状況を倍率50倍の実体顕微鏡で観察し、評価した。
被削材 SCM材
切削条件 100 m/min
送り 0.3 mm/rev
切り込み 2.0 mm
切削試験後、上記本発明品はいずれも刃先に欠損不良を発生すること無く使用でき、長寿命であった。
(従来例1)結合層の作製方法の差異によるα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜の密着性および切削特性への影響を明らかにするために、本発明品と同様にWC72%、TiC8%、(Ta、Nb)C11%、Co9%(%はいずれも重量%を示す。)の組成よりなる切削工具用超硬基板の表面に0.3μm厚さのTiN膜と6μm厚さのTiCN膜を形成した後、H2キャリヤーガスとTiCl4ガスとCH4ガスを原料ガスに用い1010℃で5〜30分間反応させTiC膜を成膜した後、TiCl4ガスとCH4ガスとを止め、作製したTiC膜上にH2キャリヤーガスとCO2ガスとを流して1010℃で15分間TiC膜を酸化することにより結合層を作製した。その後、実施例1と同一の条件で1020℃でH2ガス、AlCl3ガスおよびCO2ガスにより所定の厚さの酸化アルミニウム膜を成膜した従来の酸化アルミニウム被覆工具を作製した。
従来例1において、結合層を作製した後、1020℃でH2ガス、AlCl3ガスおよびCO2ガスにより酸化アルミニウム膜を作製した従来品の結合層近傍を透過電子顕微鏡で観察したところ、結合層とα型酸化アルミニウムとの界面には針状、棒状あるいは板状の突起形状を示す結晶は見られなかった。
また、従来例1で作製した酸化アルミニウム被覆工具の表面の酸化アルミニウム層を研磨により薄くした後上記2θ−θ法によりその皮膜のX線回折を行ったところ、結合層ではTi23(三方晶系)、Ti35(単斜晶系)のX線回折ピークが観察され、立方晶系の結合層を示すX線回折ピークは観察されなかった。
(従来例2)また、従来例1と同様にして結合層を作製した後、1010℃でAlCl3ガス、H2ガス、CO2ガス、H2Sガスにより所定の厚さの酸化アルミニウム膜を成膜し、その後、H2ガス4l/分とTiCl4ガス50ml/分とN2ガス1.3l/分を流し1010℃で窒化チタニウム膜を形成した従来の被覆工具を作製した。また、結合層の成膜状態を観察するために、上記従来例1と同一の条件でTiN、TiCN、結合層までを成膜した後、酸化アルミニウム膜を成膜せずに試料を取り出しその試料表面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察したところ、結合層表面には粒状の結晶のみが観察され、上記本発明品で観察されたような大略三角形の一辺を共有した二つの三角形の境界上に板状または針状、棒状の結晶は観察されなかった。また、作製したこの試料のX線回折を上記実施例2と同一条件で行った結果、PR(200)値が1以上を示し、(200)面の配向が強かった。
従来例1、2で作製した切削工具各5個を用いて上記実施例と同一の条件で連続切削試験を行った結果、この従来例品はいずれも10分間連続切削後に酸化アルミニウム膜の剥離が見られた。また、従来例1、2で作製した切削工具各5個を上記実施例と同一条件で断続切削し、1,000回衝撃切削後に刃先先端の欠け状況を倍率50倍の実体顕微鏡で観察した結果、いずれにも大きな欠けが発生しており、切削工具として劣っていることが判明した。
以上より、結合層の組織形態、配向および格子縞等のミクロ組織を制御することにより高密着性の酸化アルミニウム膜を被覆した工具を得られることがわかる。また、結合層の組成はTiC/TiCOに限るものではなく、TiN/TiNO、TiCN/TiCNO、TiC/TiCNO、TiCN/TiCOのいずれかまたはこれらを組み合わせた複数層でも上記実施例と同様の作用効果が得られた。また、下地膜はTiCNに限るものではなく、結合層中の非酸化膜(図3の2−2、例えばTiC/TiCO結合層中のTiC)と同一物(TiC)でも上記実施例と同様の作用効果が得られた。
本発明に係わる酸化アルミニウム被覆工具のセラミック材料の組織写真の一例である。 図1に対応した模式図である。 酸化アルミニウム被覆工具の膜構成を説明するための模式図である。 本発明に係わる酸化アルミニウム被覆工具のX線回析パターンの一例を示す図である。 本発明に係わる酸化アルミニウム被覆工具のセラミック材料の組織写真の他の例である。 図5に対応した模式図である。 本発明に係わるセラミック材料の組織写真の一例である。 図7に対応した模式図である。 図7の局部を拡大した本発明に係わるセラミック材料の組織写真である。 図9に対応した模式図である。 本発明に係わるセラミック材料(結合層表面)の組織写真の一例である。 図11に対応した模式図である。 本発明に係わる結合層以下の膜のX線回折パターンの一例を示す図である。 本発明に係わる酸化アルミニウム被覆工具のX線回折パターンの他の例を示す図である。 本発明に係わる結合層のX線回析強度比を示す図である。
符号の説明
1 酸化膜、2 結合層、3 非酸化膜(下地膜)

Claims (11)

  1. 基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、酸炭化物、酸窒化物および酸炭窒化物のいずれか一種の単層皮膜または二種以上からなる多層皮膜、並びに結合層とα型酸化アルミニウムを主とする酸化膜とが形成されている酸化アルミニウム被覆工具において、前記結合層が少なくとも針状、棒状、板状のいずれかの突起を持つ組織を有し、かつ、前記結合層の[110]結晶軸と前記酸化膜を主に構成するα型酸化アルミニウムの(100)面に垂直な軸とが略並行であることを特徴とする酸化アルミニウム被覆工具。
  2. 前記結合層が立方晶であることを特徴とする請求項1に記載の酸化アルミニウム被覆工具。
  3. 前記結合層が基体表面の接線と平行方向に(111)面、(220)面、(311)面の配向が強く、(200)面の配向が相対的に弱いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸化アルミニウム被覆工具。
  4. 前記結合層の等価X線回折強度PR(200)がPR(111)、PR(220)、PR(311)のいずれかよりも小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の酸化アルミニウム被覆工具。
  5. 前記結合層の等価X線回折強度PR(111)、PR(200)、PR(220)、PR(311)、PR(222)のうちPR(311)が最も大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の酸化アルミニウム被覆工具。
  6. 前記結合層の等価X線回折強度PR(111)、PR(200)、PR(220)、PR(311)、PR(222)のうちPR(111)が最も大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載の酸化アルミニウム被覆工具。
  7. 前記結合層がツイン構造の組織を持っていることを特徴とする請求項1乃至請求項6いずれかに記載の酸化アルミニウム被覆工具。
  8. 前記各膜間の密着性が高まるように、前記結合層の結合層の(111)面格子縞と前記酸化膜を主に構成するα型酸化アルミニウムの(003)面格子縞とが界面において連続していることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の酸化アルミニウム被覆工具。
  9. 結合層の表面付近において大略二つの三角形の境界上に板状、針状、棒状のいずれか1種または二種以上の結晶が形成されている組織を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の酸化アルミニウム被覆工具。
  10. 前記α型酸化アルミニウムを主とする前記酸化膜の表面にチタンの窒化膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の酸化アルミニウム被覆工具。
  11. 周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物のいずれか一種または二種以上とFe、Ni、Co、W、Mo、Crのいずれか一種または二種以上とを主体とする超硬質合金を基体とすることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の酸化アルミニウム被覆工具。
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