JP3384110B2 - 被覆切削工具とその製造方法 - Google Patents

被覆切削工具とその製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超硬合金等の母材の表
面に強靱かつ耐摩耗性に優れる被覆を形成した被覆切削
工具及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】超硬合
金、サーメット及びセラミックの表面に炭化チタン(T
iC)等の被覆層を蒸着することにより切削工具の寿命
を向上させることが行われており、一般に熱化学蒸着法
(以下熱CVD法)、プラズマCVD法を用いて生成さ
れた被覆層等が広く普及している。しかし、これらの被
覆切削工具を用いて加工を行った場合、特に高速切削加
工のように高温での被覆層の耐摩耗性が必要な加工、あ
るいは小物部品加工のように加工数が多く被削材への食
いつき回数が多い加工等で被覆層の耐摩耗性が不足した
り、被覆層の損傷が発生することによる工具寿命の低下
が発生していた。また熱CVD法による被覆膜では母材
との密着性には優れるものの、母材の種類によっては、
特に性能に寄与する切り刃稜線部において母材との界面
に脆化層であるη相が厚く析出しやすく、切削中にこの
η相とともに被覆層が脱落して摩耗の進行が発生するこ
とから、工具寿命のばらつきを引き起こし、被覆層が十
分に寿命の向上に寄与しているとは言えない場合があっ
た。
【0003】これらの被覆切削工具において、その耐摩
耗性や耐剥離性に影響を与える因子として被覆を形成す
る成分中の塩素含有量及び配向性がある。一般に、熱C
VD法やプラズマCVD法による炭化チタンや窒化チタ
ン(TiN)の被覆はチタン源として四塩化チタン(T
iCl4 )、炭素源としてメタン(CH4 )、窒素源と
して窒素ガス(N2 )等を用いて行われる。従って、こ
れらのガスを用いた被覆においては四塩化チタンに起因
する塩素が被覆層中に取り込まれ、膜質の劣化をもたら
す。これまでの膜中の塩素に関する報告としては、プラ
ズマCVD法を利用し、低温側で被覆を行っている、
“表面技術、vol.40、No.10、1989、p
51〜55”及び、表面技術、vol.40、No.
4、1989、p33〜36”等がある。この報告はプ
ラズマCVDによる〜700℃までの成膜によって膜中
の塩素量のレベルを、1原子%程度まで低減することが
でき、これにより良好な膜質が得られるというものであ
る。
【0004】また、特開平4−13874号公報には、
炭化チタン被覆層において基体表面から0.5μm未満
の部分で塩素含有量が0.025〜0.055原子%、
0.5μm以上の部分で0.055〜1.1原子%であ
る2層とすることにより膜密着度に優れ、耐摩耗性に優
れる炭化チタン膜が得られることが報告されている。し
かし、該公報記載の方法では、原料ガスとして四塩化チ
タン及び炭素源としてメタンからの遊離炭素(C)とを
利用しているので、四塩化チタンに由来する塩素(C
l)とメタンに由来する遊離炭素とが膜中に取り込まれ
膜の特性に悪影響を与える。特に膜中でのCの析出は膜
の耐摩耗性を低下させるので好ましくないが、0.05
5原子%以上の塩素が存在すると炭素の析出がなく耐摩
耗性に優れる炭化チタン膜が得られるとしている。した
がってこの方法では含有塩素量を、密着性を高めるため
に基体界面付近で0.025〜0.055原子%とし、
界面から離れた部分で0.055原子%以上という2層
構造にする必要があった。しかもこの場合は、塩素の存
在自体が耐摩耗性低下の原因となるため、得られる皮膜
の耐摩耗性はなお十分とはいえないものであった。
【0005】従来、熱CVD法による被覆層を設けた被
覆切削工具を用いて断続加工や部品加工を行った場合、
母材と膜間の隔離及び、膜中での膜自体の損傷が生じ、
これによる母材の露出あるいは欠損が発生する場合が多
かったがこの膜自体の損傷の原因の一つとして被覆層の
配向性が考えられる。通常、熱CVDによる炭化チタン
等の被覆層は(220)面に強く配向していることが知
られている(日本金属学会誌、第41巻、第6号、19
77、P542〜545等)が、(220)面は岩塩型
構造をもつ炭化チタン等においては、このような加工に
おける切り刃刃先温度である約600℃以下においては
1次すべり面であり、この面方向に破壊が生じ易い。こ
れに加え、母材との界面付近では被覆層中に母材と被覆
層の熱膨張係数の差による引張残留応力が特に大きくか
かっていることから、加工中に被削材や切り粉により膜
表面に平行な方向に擦られることにより、膜に剪断応力
がかかると母材との界面付近での膜中での破壊が非常に
生じ易い状態にあると考えられる。
【0006】前記のη相による問題を解決するものとし
てアセトニトリル(CH3 CN)等の有機CN化合物を
用いた熱CVD法による炭窒化チタン膜の形成方法が注
目されている(特開昭50−117809、特開昭50
−109828各号公報など)。この方法は、従来の熱
CVD法に比べて、やや低い温度でのコーティングが可
能であることから、一般に中温CVD法(MT−CVD
法)と呼ばれている。従来の熱CVD法(高温CVD
法;HT−CVD法と称する)では、チタン系皮膜の形
成中に母材から皮膜へと元素(特に炭素)の移動が生
じ、母材表面に変質層(η相と呼ばれるCo3 3 C等
の複炭化物)が生成する。この様にHT−CVD法にお
いて元素が移動する原因としては、被覆温度が高い(通
常1000℃〜1050℃)ことがまず考えられる。特
に炭素の移動については、温度が高いことに加えて、皮
膜形成中に気相からの炭素の供給が不十分であるため
に、形成中の皮膜と母材表面との間に、炭素の濃度勾配
が生じ、皮膜が母材から炭素を吸うという現象が生じて
いることなどが考えられている。これに対してMT−C
VD法は、被覆温度がやや低く(800℃〜900
℃)、気相からのCやNの供給が十分であるために、切
り刃稜線部の界面でさえもη相が生じないとされてい
る。
【0007】ところが、本発明者らが炭窒化チタン(T
iCN)膜で被覆した超硬合金部材について研究を進め
る間に、MT−CVD法による炭窒化チタン膜と超硬合
金母材との密着性は、しばしば不安定になることが明ら
かとなった。これについて鋭意分析を進めた中から、そ
の原因が、MT−CVD法による炭窒化チタン皮膜の形
成中に、反応生成物として生じる塩素ガスによって、超
硬合金母材表面の結合相であるコバルト(Co)が腐食
(エッチング)されていることが判明した。またアセト
ニトリル等の有機CN化合物の熱分解は、母材表面の化
学結合状態に影響を受け易く、しばしば遊離炭素の生成
を生じる。このような遊離炭素の発生は皮膜と母材との
密着性を低下させ、先に述べた界面変質層の発生と複合
することで、MT−CVD法による被覆切削工具の性能
を不安定にしているのであった。超硬合金を基体としそ
の表面に炭化チタン、窒化チタン、炭窒化チタンを多層
膜に被覆した被覆超硬合金において、基体に隣接する最
内層を0.1〜1.0μmの窒化チタンとした被覆超硬
合金も開示されているが(特開昭61− 170559
号公報)、これはPVD法による被膜に関するものであ
り、膜中の塩素含有量や結晶の配向性の影響については
検討されていない。
【0008】本発明の目的は前記従来技術における問題
点を解決し、従来の被覆切削工具に比較して耐摩耗性が
高く、被覆膜と母材との接着が強固で切削時の耐剥離性
に優れた被覆切削工具及びその製造方法を提供すること
にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、母材と接
する最内層が炭窒化チタン又は母材と接する窒化チタン
とその直上の炭窒化チタンである被覆層を有する被覆切
削工具における前記問題点を解決するため、種々検討を
重ねた結果、被覆を形成する成分、特に母材と接する炭
窒化チタン又は母材と接する窒化チタンとその直上の炭
窒化チタンの塩素含有量を所定量以下とするか、これら
の炭窒化チタンの配向性を特定範囲内とすることによ
り、従来の被覆切削工具に比較し、切削における耐摩耗
性を大きく向上させるとともに、膜自体の耐摩耗性の向
上と、膜の破壊強度の向上が可能になり、工具の寿命を
安定させかつ飛躍的に向上させることができることを見
出し、本発明を完成するに至った。
【0010】本発明の第1は、炭化タングステン基超硬
合金、炭窒化チタン基サーメット、窒化珪素基セラミッ
クス又は酸化アルミニウム基セラミックスよりなる母材
の表面に内層及び外層よりなる被覆層を有し、該内層が
母材と接する炭窒化チタンの単層もしくは母材と接する
厚さ0.1〜2μmの窒化チタンとその直上の炭窒化チ
タンとの二重層又はさらに前記単層もしくは二重層の炭
窒化チタンの上にチタンの炭化物、窒化物、炭窒化物、
ホウ窒化物、ホウ炭窒化物から選ばれる一種以上を被覆
された多重層で構成され、該外層が酸化アルミニウム、
酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、炭化チタン、炭窒
化チタン、窒化チタンから選ばれる一種以上の単層又は
多重層で構成されてなる被覆切削工具において、次の
(1)ないし(13)の構成を有する被覆切削工具であ
る。 (1)前記内層における塩素含有量が内層全体の平均で
0.05原子%以下であることを特徴とする被覆切削工
具。 (2)前記内層の母材と接する炭窒化チタンにおける塩
素含有量又は母材と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チ
タンとその直上の炭窒化チタンとにおける平均塩素含有
量が0.05原子%以下であることを特徴とする前記
(1)の被覆切削工具。
【0011】(3)前記母材と接する炭窒化チタン又は
母材と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直上の
炭窒化チタンにおけるX線回折角2θ=20°〜140
°の間に回折ピークが現れる面のうち、(220)面と
の面間角度が30°〜60°である面(hkl)の回折
ピーク強度の合計I(hkl)と、(220)面のピー
ク強度I(220)との比率I(hkl)/I(22
0)の値が母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜3
μmまでの平均で 2.5≦I(hkl)/I(220)≦7.0であり、
かつ母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜20μm
までの平均で 2.5≦I(hkl)/I(220)≦15.0である
ことを特徴とする被覆切削工具。 (4)前記内層の母材と接する炭窒化チタン又は母材と
接する厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直上の炭窒化
チタンにおいて、X線回折角2θ=20°〜140°の
間に回折ピークが現れる面のうち、(220)面との面
間角度が30°〜60°である面(hkl)の回折ピー
ク強度の合計I(hkl)と、(220)面のピーク強
度I(220)との比率I(hkl)/I(220)の
値が母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜3μmま
での平均で 2.5≦I(hkl)/I(220)≦7.0であり、
かつ母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜20μm
までの平均で 2.5≦I(hkl)/I(220)≦15.0である
ことを特徴とする前記(1)又は(2)の被覆切削工
具。
【0012】(5)前記母材と接する炭窒化チタン又は
母材と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直上の
炭窒化チタンのX線回折における(311)面のピーク
強度をI(311)、(220)面のピーク強度をI
(220)としたとき、I(311)/I(220)の
値が、母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜3μm
までの平均で 0.5≦I(311)/I(220)≦1.5であり、
かつ母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜20μm
までの平均で 0.5≦I(311)/I(220)≦6.0であるこ
とを特徴とする被覆切削工具。 (6)前記内層の母材と接する炭窒化チタン又は母材と
接する厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直上の炭窒化
チタンにおいて、X線回折における(311)面のピー
ク強度I(311)と(220)面のピーク強度I(2
20)との比率I(311)/I(220)の値が、母
材表面あるいは窒化チタン表面から0〜3μmまでの平
均で 0.5≦I(311)/I(220)≦1.5であり、
かつ母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜20μm
までの平均で 0.5≦I(311)/I(220)≦6.0であるこ
とを特徴とする前記(1)ないし(4)のいずれかの被
覆切削工具。
【0013】(7)前記母材と接する炭窒化チタン又は
母材と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直上の
炭窒化チタンのX線回折における(111)面のピーク
強度をI(111)、(220)面のピーク強度をI
(220)としたとき、I(111)/I(220)の
値が、母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜3μm
までの平均で 1.0≦I(111)/I(220)≦4.0であり、
かつ母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜20μm
までの平均で 1.0≦I(111)/I(220)≦8.0であるこ
とを特徴とする被覆切削工具。 (8)前記内層の母材と接する炭窒化チタン又は母材と
接する厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直上の炭窒化
チタンにおいて、X線回折における(111)面のピー
ク強度I(111)と(220)面のピーク強度I(2
20)との比率I(111)/I(220)の値が、母
材表面あるいは窒化チタン表面から0〜3μmまでの平
均で 1.0≦I(111)/I(220)≦4.0かつ母材
表面あるいは窒化チタン表面から0〜20μmまでの平
均で 1.0≦I(111)/I(220)≦8.0であるこ
とを特徴とする前記(1)ないし(6)のいずれかの被
覆切削工具。
【0014】(9)前記母材と接する炭窒化チタン又は
母材と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直上の
炭窒化チタンのX線回折における(311)面のピーク
強度をI(311)、(111)面のピーク強度をI
(111)、(220)面のピーク強度をI(220)
としたとき、{I(111)+I(311)}/I(2
20)の値が、母材表面あるいは窒化チタン表面から0
〜3μmまでの平均で 2.0≦{I(111)+I(311)}/I(22
0)≦5.5であり、かつ母材表面あるいは窒化チタン
表面から0〜20μmまでの平均で 2.0≦{I(111)+I(311)}/I(22
0)≦14.0であることを特徴とする被覆切削工具。 (10)前記内層の母材と接する炭窒化チタン又は母材
と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直上の炭窒
化チタンにおいて、X線回折における(311)面のピ
ーク強度I(311)、(111)面のピーク強度I
(111)及び(220)面のピーク強度I(220)
の関係式{I(111)+I(311)}/I(22
0)の値が、母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜
3μmまでの平均で 2.0≦{I(111)+I(311)}/I(22
0)≦5.5であり、かつ母材表面あるいは窒化チタン
表面から0〜20μmまでの平均で 2.0≦{I(111)+I(311)}/I(22
0)≦14.0であることを特徴とする前記(1)ない
し(8)のいずれかの被覆切削工具。
【0015】(11)前記内層の母材と接する炭窒化チ
タン又は母材と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チタン
の直上の炭窒化チタンの厚みが1〜20μmであること
を特徴とする前記(1)ないし(10)のいずれかの被
覆切削工具。 (12)前記母材が炭化タングステン基超硬合金又は炭
窒化チタン基サーメットであり、切り刃稜線部における
被覆層と母材の界面最表面のη相の厚みが1μm以下で
あることを特徴とする前記(1)ないし(11)のいず
れかの被覆切削工具。 (13)前記内層及び外層の合計膜厚が2〜100μm
であることを特徴とする前記(1)ないし(12)のい
ずれかの被覆切削工具。
【0016】本発明の第2は、炭化タングステン基超硬
合金,炭窒化チタン基サーメット,窒化珪素基セラミッ
クス又は酸化アルミニウム基セラミックスよりなる母材
の表面に内層及び外層よりなる被覆層を有し、該内層が
母材と接する炭窒化チタンの単層もしくは母材と接する
厚さ0.1〜2μmの窒化チタンとその直上の炭窒化チ
タンとの二重層又はさらに前記単層もしくは二重層の炭
窒化チタンの上にチタンの炭化物、窒化物、炭窒化物、
ホウ窒化物、ホウ炭窒化物から選ばれる一種以上を被覆
された多重層で構成され、該外層が酸化アルミニウム、
酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、炭化チタン、炭窒
化チタン、窒化チタンから選ばれる一種以上の単層又は
多重層で構成されてなる被覆切削工具を製造する方法に
おいて、次の(14)ないし(17)の構成を有する被
覆切削工具の製造方法である。 (14)前記母材と接する炭窒化チタン又は母材と接す
る厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直上の炭窒化チタ
ンを被覆する方法として、チタン源として四塩化チタ
ン、炭窒素源として有機CN化合物を用い、窒素が26
%以上の濃度の雰囲気下で行う化学蒸着法により、80
0〜950℃の温度範囲で被覆することを特徴とする被
覆切削工具の製造方法。 (15)前記母材と接する炭窒化チタン又は母材と接す
る厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直上の炭窒化チタ
ンを被覆する方法として、チタン源として四塩化チタ
ン、炭窒素源として有機CN化合物を用いる化学蒸着法
により、950〜1050℃の温度範囲で被覆すること
を特徴とする被覆切削工具の製造方法。 (16)前記母材と接する炭窒化チタン又は母材と接す
る厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直上の炭窒化チタ
ンを被覆する方法として、チタン源として四塩化チタ
ン、炭窒素源として有機CN化合物を用い、窒素が26
%以上の濃度の雰囲気下で行う化学蒸着法により、80
0〜950℃の温度範囲で被覆することを特徴とする前
記(1)ないし(13)のいずれかの被覆切削工具の製
造方法。 (17)前記母材と接する炭窒化チタン又は母材と接す
る厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直上の炭窒化チタ
ンを被覆する方法として、チタン源として四塩化チタ
ン、炭窒素源として有機CN化合物を用いる化学蒸着法
により、950〜1050℃の温度範囲で被覆すること
を特徴とする前記(1)ないし(13)のいずれかの被
覆切削工具の製造方法。
【0017】
【作用】本発明の被覆切削工具においては、被覆層中の
塩素量を内層の平均で0.05原子%以下という極微量
に抑えることにより、初めて工具寿命の飛躍的向上だけ
ではなく、安定性の飛躍的向上が可能となった。これは
一つには、このレベルまで被覆層中の塩素量を低減させ
ることにより膜の硬度が飛躍的に向上し、膜自体の耐摩
耗性が著しく向上すること、また、もう一つには、母材
と膜の界面の密着度及び、内層と外層の間の密着度が著
しく向上し、切削時にこれらの界面の剥離に起因する摩
耗の進行が生じない為である。特に切削時の界面剥離に
ついては、母材と被覆層との界面の剥離の発生による母
材の露出が顕著な工具寿命の低下やばらつきの原因につ
ながることから、内層の中でも母材と直接接する炭窒化
チタン中の塩素量の平均、あるいは母材と接する窒化チ
タンとその直上の炭窒化チタンとの塩素量の平均量を
0.05原子%以下に抑えることが望ましい。なお、膜
中塩素量の測定方法としてはAgClを標準試料として
電子線プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用い
て測定することができる。
【0018】従来、前記のように被覆膜中の塩素量レベ
ルを1原子%程度に低減して良好膜質にする報告や、塩
素含量の異なる2層構成の炭化チタン被覆とする報告は
あったが、被覆層全体の塩素量を0.05原子%以下と
いう低レベルにすることについては検討されていなかっ
た。本発明は被覆層全体中の塩素を0.05原子%以下
のレベルに低減することにより初めて飛躍的な耐摩耗性
の向上と切削における母材と膜との界面における耐剥離
性の向上が可能となることを見出した結果に基づくもの
である。本発明ではこの範囲の低塩素が必須であり、こ
れにより初めて、さらに高硬度で耐摩耗性に優れ、密着
度に優れる被覆層が得られるようになったのである。
【0019】本発明の被覆切削工具は、内層において母
材直上に炭窒化チタンを直接被覆する構造、あるいは窒
化チタンを0.1〜2μm被覆し、その上に炭窒化チタ
ンを被覆する構造を有するが、これによる効果の一つと
して成膜時の核生成の安定により塩素の悪影響を除去で
きることが挙げられる。炭窒化チタン及び窒化チタンは
成膜時の核生成が母材の状態にあまり影響されず、非常
に均一である。核生成が不均一であると、成膜反応時に
四塩化チタンの還元により発生する塩素が母材と被覆層
の界面に偏析して被覆層の耐剥離性の低下の原因とな
る。また、母材が超硬合金やサーメットである場合は母
材表面付近の結合相(コバルトやニッケル等)が塩素に
より腐食され、これにより母材の表面付近での強度が低
下し、工具寿命の低下の原因となる。ただし、母材と接
する層として窒化チタンを被覆する構造の場合には、窒
化チタンの厚みとしては0.1μm未満では窒化チタン
の成膜が母材位置によらず十分に均一な状態にまでは至
っておらず、このため、この上に被覆した炭窒化チタン
が部分的に直接母材上に核生成する箇所が発生してしま
い、窒化チタンと炭窒化チタンの核生成が母材上で混在
した不均一状態になり、したがって塩素の悪影響を排除
する効果が十分現れない結果となってしまう。また、逆
に2μmを超えると切削時の耐摩耗性に対し悪影響を及
ぼす。したがって、母材に接する膜としては、炭窒化チ
タンを直接被覆する構造あるいは母材直上に厚みが0.
1〜2μmである窒化チタンを被覆し、その上に炭窒化
チタンを被覆する構造とすることが必要である。
【0020】母材直上に窒化チタン膜を形成させる場
合、適切な条件を設定することにより膜粒度を非常に細
かくすることができ、それに伴い、その上の炭窒化チタ
ン膜の粒度も細かくなる傾向にある。また、MT−CV
D法により炭窒化チタン膜を形成させる場合、ガス条件
を一定にしておくと、母材合金炭素量の違いや焼結時の
表面付近の脱炭量の違いなどにより表面付近の炭素量が
異なる合金を母材として使用した場合に、界面付近に遊
離炭素が析出する可能性もあるが、窒化チタン膜を介在
させることにより、このような影響が緩和される。
【0021】また、本発明の被覆切削工具では、内層の
母材と接する窒化チタン直上の炭窒化チタン層あるいは
母材と直接接する炭窒化チタン層の配向性を特定の範囲
内に収めていることも特徴の一つである。前記のように
熱CVD法による炭化チタン等の被覆は、1次滑り面で
ある(220)面に配向する傾向があり、工具として加
工時に膜の破壊が生じやすいという問題があった。本発
明において、母材と接する窒化チタン直上の炭窒化チタ
ン、あるいは母材と接する炭窒化チタンにおけるI(h
kl)/I(220)の値は、X線回折角2θ=20°
〜140°の間に回折ピークが現れる面のうち、(22
0)面との面間角度が30°〜60°である面(hk
l)の回折ピーク強度の合計I(hkl)と、(22
0)面のピーク強度I(220)との比率をとったもの
である。(220)面との面間角度φは、炭窒化チタン
が立方晶結晶構造であることから、次の式で表される。
【0022】
【数1】cosφ=(2×h+2×k)/{23/2 ×
(h2 +k2 +l2 1/2
【0023】すなわち、I(hkl)はI(hkl)=
I(111)+I(200)+I(311)+I(42
2)+I(511)を意味する((222)面は(11
1)面と等価であるので除く)。1次滑り面である(2
20)面に対し傾いた面(30°〜60°)の配向性を
X線強度比で、母材表面あるいは窒化チタン表面から0
〜3μmの平均、0〜20μmの平均ともに2.5≦I
(hkl)/I(220)となるように制御することが
必要であり、これにより切削中の剪断に対する強度が非
常に強くなる。また、被覆層形成初期の段階で配向性が
強すぎると、この場合も下地の表面における核生成に影
響し、密着度の低下が発生するため、(hkl)面の配
向性はX線強度比で、母材表面あるいは窒化チタン表面
から0〜3μmの厚みの位置での平均でI(hkl)/
I(220)≦7.0、かつ0〜20μmの厚みの位置
での平均でI(hkl)/I(220)≦15.0の範
囲に制御する必要がある。本発明の切削工具において
は、母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜3μm及
び0〜20μmまでの範囲の母材と接する窒化チタン直
上の炭窒化チタン、あるいは母材と接する炭窒化チタン
における(hkl)面の配向性を前記範囲に制御するこ
とにより、下地との界面の密着度を向上させると同時に
切削中の膜自体の損傷を抑えることが可能となった。さ
らに、前記効果は、母材と接する窒化チタン直上の炭窒
化チタン、あるいは母材と接する炭窒化チタンの配向を
以下に示すような範囲に制御することにより、より大き
くなる。
【0024】本発明において、母材と接する窒化チタン
直上の炭窒化チタン、あるいは母材と接する炭窒化チタ
ンにおけるI(311)/I(220))の値はX線回
折における(311)面と(220)のピークの強度比
をとったものであるが、配向のない炭窒化チタン粉末に
おけるX線の強度比がI(311)/I(220)=
0.5であるから、本発明の範囲である0.5以上は、
(220)よりも(311)面に配向していることを意
味している。(311)面は1次滑り面に対し約32°
の角度を持つ面であり、この面の配向性をX線強度の比
で母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜3μm及び
0〜20μmの平均ともに0.5≦I(311)/I
(220)に制御することが必要であり、これにより切
削中の剪断に対する強度が非常に強くなる。逆に、被覆
層生成初期の段階で被覆層の配向性が強すぎると、この
場合も下地表面における核生成に影響し、密着度の低下
が発生するため、(311)面の配向性はX線強度比で
0〜3μmの平均でI(311)/I(220)≦1.
5、かつ0〜20μmの平均でI(311)/I(22
0)≦6.0の範囲に制御する必要がある。本発明の切
削工具においては、0〜3μm、及び0〜20μmまで
の炭窒化チタン層の(311)面の配向性を上記範囲に
制御することにより、膜と母材の界面の密着度を向上さ
せると同時に切削中の膜自体の損傷を抑えることが可能
となった。
【0025】また本発明においては、X面回折における
(111)面のピーク強度をI(111)、(220)
面のピーク強度をI(220)としたとき、母材と接す
る窒化チタン直上の炭窒化チタン、あるいは母材と接す
る炭窒化チタンにおいてI(111)/I(220)の
値が、 0〜3μmまでの平均 1.0≦I(111)/I(2
20)≦4.0 かつ 0〜20μmまでの平均 1.0≦I(111)/I
(220)≦8.0であることを特徴としている。0〜
3μm、及び0〜20μmまでの範囲の内層の母材と接
する窒化チタン直上の炭窒化チタン、あるいは母材と接
する炭窒化チタン層の(111)面の配向性を上記範囲
に制御することにより、(311)面に配向している場
合と同様に切削中の膜自体の損傷を抑えることが可能に
なる。
【0026】さらにこの効果は、母材表面あるいは窒化
チタン表面から0〜3μmまでの平均で 2.0≦{I(111)+I(311)}/I(22
0)≦5.5 かつ、0〜20μmまでの平均で 2.0≦{I(111)+I(311)}/I(22
0)≦14.5の範囲、すなわち(220)面に対して
傾いた面である(311)と(111)面に配向させる
ことにより大きくなる。
【0027】ただし、膜厚が20μmを越え、6.0<
I(311)/I(220)、8.0<I(111)/
I(220)または14.0<{I(111)+I(3
11)}となると、今度は配向性が強すぎ、外層を被覆
する際の核生成状態に影響を及ぼし、加工時の被覆層界
面で剥離につながるため好ましくない。また、被覆層生
成初期の段階で被覆層の配向性が強すぎると、この場合
も下地上での炭窒化チタンの核生成に影響し、これらの
界面での密着度の低下が発生するため、(311)面の
配向性はX線強度比で0〜3μmの平均 I(311)/I(220)≦1.5、 I(111)/I(220)≦4.0 又は {I(111)+I(311)}/I(220)≦5.
5に制御する必要がある。
【0028】母材と接する窒化チタン直上の炭窒化チタ
ン、あるいは母材と接する炭窒化チタン被覆層の膜厚の
範囲は、1μmより薄いと界面付近での膜中における破
壊を防止する効果が小さくなり、20μmを越えると上
述のように配向性が強くなりすぎる影響がでるため1〜
20μmが好ましい範囲である。
【0029】なお、I(hkl)/I(220)等の各
面の強度を求める方法としては、CrやV等の管球を用
いた通常のX線回折法を用いる。ただし、超硬合金に被
覆した炭窒化チタンの比較的薄い位置でのX線ピーク強
度を求める際にはX線が母材中まで侵入するため炭化タ
ングステン(WC)のピークが現れるが、炭化タングス
テンの(111)面のピークと炭窒化チタンの(31
1)面のピーク位置が重なっているため、これらの分離
ができない(最もピーク分離しやすいVの管球を用いて
も分離できない)。このことから、炭化タングステンの
粉末回折パターンを用い(母材の炭化タングステンには
通常配向がない)、炭化タングステンの最強ピークであ
る(101)面と(111)面のピーク比(ASTMカ
ードからI 0 WC(101)/I0 WC(111)=0.2
5)からIWC(111)を求め(I WC(111)=0.
25×IWC(101))、これを(311)の位置での
ピーク強度から引くことによりI(311)を求める。
【0030】なお、母材と接する層として窒化チタンを
0.1〜2μm被覆する効果として、先述の塩素の悪影
響除去の効果以外に、窒化チタンの成膜時の核生成の安
定化(核生成が母材の状態にあまり影響されず、非常に
緻密かつ均一)による、その上の炭窒化チタンの配向性
制御の効果が挙げられる。これにより、炭窒化チタンの
配向性を、母材の種類、組成、表面状態等によらず安定
に、本発明の範囲に制御することができる。ただし、厚
みとしては、0.1μm未満ではこの効果が十分現れ
ず、配向性の制御が難しくなり、2μm以上では今度は
切削時の耐摩耗性に対し、悪影響を及ぼす。従って、窒
化チタンの厚みは0.1〜2μmの範囲にする必要があ
る。
【0031】本発明の切削工具のように被覆層中の塩素
含有量が0.05原子%以下である、及び/またはX線
回折における母材と接する窒化チタン直上の炭窒化チタ
ン、あるいは母材と接する炭窒化チタンのピーク強度の
比が前記の範囲内に入り、下地への接着力が強く、耐摩
耗性、耐剥離性に優れた炭窒化チタン被覆膜を形成させ
るために好ましい製造方法として、Ti源として四塩化
チタン、炭窒素源として有機CN化合物を用いる化学蒸
着法により、950〜1050℃の温度範囲で炭窒化チ
タンの被覆層を形成する方法がある。この950〜10
50℃という成膜形成温度範囲は、従来のメタンや窒素
を炭窒素源とする熱CVD法とほぼ同じ程度の高温の温
度範囲ではあるが、本発明の原料を用いてのこのような
高い温度領域での検討は過去に報告はない。
【0032】950〜1050℃という温度領域で従来
の熱CVD法により被覆層を形成すると母材の種類によ
っては切り刃稜線部にη相が厚く析出し、切削加工中に
このη相ごと被覆相が脱落することにより工具寿命の低
下が発生しやすかったのに対し、本発明では有機CN化
合物を炭窒素源に用いることにより、この温度範囲での
被覆においても切り刃稜線部のη相の厚みを1μm以下
という極微量に制御することが可能となった。これは本
発明の有利な特徴の一つである。さらに、このような温
度範囲で有機CN化合物を用いて炭窒化チタンの被覆を
行うことによって、耐摩耗性、被覆層中での耐破壊性、
母材と被覆層の界面の密着度に非常に優れる炭窒化チタ
ン被膜の生成が可能になった。従来、窒化チタンを厚め
に被覆すると耐摩耗性が低下してしまうため、比較的低
温側で窒化チタン(TiN)を耐摩耗性を悪影響を及ぼ
さない約2μmまでの膜厚範囲に薄く被覆し、η相の析
出を抑えようとしても、その上に熱CVD法を用いて炭
窒化チタン(TiCN)等を被覆するとη相が析出して
しまうという問題があった。これに対し、本発明に従い
母材に接する窒化チタンの厚みを0.1〜2μmの範囲
内とし、その上に有機CN化合物を用いて従来より高温
で炭窒化チタンを被覆することにより、窒化チタンの厚
みが0.1〜2μmという薄さであっても炭窒化チタン
被覆形成もかかわらずη相発生がかなりのレベルで抑え
られることが判明した。
【0033】また本発明の方法のもう一つの特徴は、本
発明の温度範囲で有機CN化合物を用いて炭窒化チタン
の被覆を行なうことにより、耐摩耗性、被覆層中での耐
破壊性に非常に優れる炭窒化チタンの生成を可能にした
点である。有機CN化合物を用いた化学蒸着法は従来も
行われていたが、比較的低温側で炭窒化チタンの被覆が
可能であることからη相の析出を避けることが可能であ
るということがこの従来プロセスの特徴と考えられてお
り、一般に800〜900℃程度の低温側の温度で行な
われていた。しかしこのような温度範囲の被覆では被覆
層中の塩素量が多く膜自体の硬度が低い、耐摩耗性の低
い被覆層しか生成することができなかった。また、この
ような低温側での被覆では膜の耐剥離性の不足が生じて
いた。逆に、1050℃を越える高温側の温度で有機C
N化合物を用いて被覆を行うと、通常の熱CVD法と同
様に、切り刃稜線部における母材表面部のη相が厚く析
出し、また配向性についても(220)面の配向性が強
くなり、膜中の破壊や、η相からの被覆相の脱落が発生
し、工具寿命の低下につながることが今回の検討で明ら
かになった。従って成膜の温度範囲としては本発明範囲
の950〜1050℃で良好な膜質が得られるのであ
る。しかし、混合ガス中のN2 量を26%以上とするこ
とにより、800〜950℃程度の低温でも、本発明の
範囲の配向を有する、耐膜中破壊性、高密着度の膜を得
ることが可能となった。
【0034】上述の本発明方法によって被覆膜の密着強
度(母材と内層の密着度及び内層と外層の密着度)及び
切削加工における被覆層の耐破壊性を向上させることが
可能となったことから、従来実用化されている被覆切削
工具の被覆層の厚みがせいぜい10〜15μm程度であ
るのに対し、本発明によればはるかに厚い100μmま
での厚膜が剥離や膜中での破壊が発生することなく使用
できることが確認できた。但し、100μmを越えると
送りの小さい加工等で被覆層中での破壊が生じることが
多くなるので好ましくない。また、15μmを越える厚
膜被覆層の場合は、被覆後に被覆層中の引張残留応力を
低減させるような処理と組み合わせると、特に効果的で
ある。この処理は被覆後、被覆層表面に機械的衝撃や熱
的衝撃を与える等して、被覆層の膜厚方向のき裂をコー
ティング後の状態に比べ増加させることにより被覆層中
の引張残留応力を緩和し、被覆層の耐破壊性を向上させ
るのに効果があり、特に軽切削の様に被覆層への負担が
大きい加工では、効果が大きい。以下に本発明を実施例
を用いて具体的に説明する。
【0035】
【実施例】 (実施例1)ISO P10のCNMG120408の
形状の炭化タングステン基超硬合金を母材として用い、
この表面に表1のA1〜H1、P1、Q1、R1に示す
構造の被覆層を生成した。この時、内層の母材に接する
窒化チタンの生成は950℃で、四塩化チタン:1%、
窒素(N2 ):50%、水素(H2 ):49%の混合ガ
ス気流中で行った。内層の炭窒化チタンの生成は表1に
示す900〜1100℃の各温度で行い、ガス条件はす
べてH2 :95%、四塩化チタン:4%、アセトニトリ
ル(CH3CN):1〜3%、炉内圧力60Torrの
混合ガス気流中で行った。被覆層の厚みは保持時間を変
化させることによって調整した。これらの発明品の膜中
の塩素量、配向性及び切り刃稜線部におけるη相の析出
厚みを表2に示す。なお、比較として本発明品A1と同
じ膜構造で、内層の炭窒化チタンを、炭窒素源としてメ
タンと窒素(N2 )を用いた従来の熱CVD法により1
000℃で作製した比較品Iを表中に同時に示した。な
お、膜中の塩素量は、AgClを標準試料としてEPM
Aにより測定した。
【0036】これらのサンプルを用い、下に示す切削条
件1、2で膜自体の耐摩耗性及び膜剥離を含む耐摩耗
性、剥離損傷について評価を行った。その結果を表3に
示す。これらの結果から、本発明品のA1〜H1,P
1,Q1、R1では比較品Iに比べ耐摩耗性、耐剥離
性、耐膜中破壊性の点で優れていることがわかる。な
お、本発明品の中で、G1では膜中の残留塩素量が多
く、耐摩耗性、耐剥離性がやや劣りぎみになっている
が、耐膜中破壊性が比較品Iに比べると大きく向上して
おり、これは配向性が本発明の範囲にある効果である。
また、本発明品のH1では(311)の配向性が弱く、
耐膜中破壊性が若干劣るが耐摩耗性は比較品Iに比べ大
きく向上しており、膜中残留塩素量を本発明の範囲内に
収めた効果が認められる。なお、H1では膜中の塩素量
が少ないにもかかわらず被覆層の耐剥離性が若干劣るの
はη層の厚みに起因するものと考えられる。また、P
1、R1の結果から(111)の配向性が本発明の範囲
内であることの効果が、またQ1の結果から(311)
の配向性が本発明の範囲内にあることによる膜中破壊に
対する効果がわかる。
【0037】切削条件1 被削材:SCM415(HB=210) 切削速度:300m/min 送り:0.35mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:30分 切削油:水溶性切削条件2 被削材:SCM415(HB=180) 切削速度:250m/min 送り:0.3mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:1pass=10秒で300回繰り返し 切削油:水溶性
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】(実施例2)ISO P10のCNMG1
20408の形状の炭窒化チタン基サーメットを母材と
して用い、この表面に表1のA1,C1,E1,P1,
Q1と同じ構造の被覆層を生成し、サンプルA2,C
2,E2,P2,Q2を作製し、実施例1の条件1、2
と同じ切削条件で評価を行った。その結果を表4に示
す。比較として、表1のA1と同じ膜構造の被膜を従来
の熱CVD法により1000℃でサーメット母材に被覆
したサンプルI2を評価した結果を同時に示す。なお、
これらの膜の膜厚、塩素量、配向性は表1、2の結果と
同じであったが、いずれのサンプルにも切り刃稜線部に
η相は見られなかった(I2のサンプルのみ、被覆層中
にバインダーのNiに起因すると思われる金属相の析出
が若干見られた)。これらの結果から、比較品I2では
内層の塩素量及び母材に接する窒化チタンとその直上の
炭窒化チタン中の塩素量が多いことから膜自身の耐摩耗
性の不足及び膜の剥離が、また、炭窒化チタン層の配向
性が本発明の範囲からはずれていることから被覆層中で
の膜の破壊が生じている。これに対し、本発明品のA
2,C2,E2,P2,Q2では耐摩耗性、耐剥離性、
耐膜中破壊性ともに優れる結果となっていることがわか
る。
【0042】
【表4】
【0043】(実施例3)CNMG120408の形状
の窒化珪素系セラミックスを母材として用い、この表面
に表1のA1,C1,E1,P1,Q1と同じ構造の被
覆層を生成し、サンプルA3,C3,E3,P3,Q3
を作製し、下に示す切削条件3、4で評価を行った。そ
の結果を表5に示す。比較として、表1のA1と同じ膜
構造の被膜を従来の熱CVD法により1000℃で窒化
珪素系セラミック母材に被覆したサンプルI3を評価し
た結果を同時に示す。なお、これらの膜の塩素量、配向
性は表1、2の結果と同じであったが、いずれのサンプ
ルにも切り刃稜線部にη相は見られなかった。また、膜
厚についてはI3の内層の炭窒化チタンの厚みのみ6μ
mであったが、それ以外は表1の結果と同じであった。
これらの結果から、比較品I3では内層の塩素量及び母
材に接する窒化チタンとその直上の炭窒化チタン中の塩
素量が多いことから膜自身の耐摩耗性の不足及び膜の剥
離が、また、炭窒化チタンの配向性が本発明の範囲から
はずれていることから被覆層中での膜の破壊が生じてい
る。これに対し、本発明品のA3,C3,E3,P3,
Q3では耐摩耗性、耐剥離性、耐膜中破壊性ともに優れ
る結果となっていることがわかる。
【0044】切削条件3 被削材:FC25 切削速度:500m/min 送り:0.25mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:30分 切削油:なし切削条件4 被削材:FC25 切削速度:400m/min 送り:0.3mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:1pass=10秒で300回繰り返し 切削油:なし
【0045】
【表5】
【0046】(実施例4)CNMG120408の形状
の酸化アルミニウム基セラミックスを母材として用い、
この表面に表1のA1,C1,E1,P1,Q1と同じ
構造の被覆層を生成し、サンプルA4,C4,E4,P
4,Q4を作製し、実施例3の切削条件3、4と同じ切
削条件で評価を行った。その結果を表6に示す。比較と
して、表1のA1と同じ膜構造の被膜を従来の熱CVD
法により1000℃で酸化アルミニウム基セラミック母
材に被覆したサンプルI4を評価した結果を同時に示
す。なお、これらの膜の塩素量、配向性は表1、2の結
果と同じであったが、いずれのサンプルにも切り刃稜線
部にη相は見られなかった。また、膜厚についてはI4
の内層の炭窒化チタンの厚みのみ6μmであったが、そ
れ以外は表1の結果と同じであった。これらの結果か
ら、比較品I4では内層の塩素量及び母材に接する窒化
チタンとその直上の炭窒化チタン中の塩素量がともに多
いことから膜自身の耐摩耗性の不足からの先端落ち及び
膜の剥離が、また、炭窒化チタン層の配向性が本発明の
範囲からはずれていることから被覆層中での膜の破壊が
生じている。これに対し、本発明品のA4,C4,E
4,P4,Q4では耐摩耗性、耐剥離性、耐膜中破壊性
ともに優れる結果となっていることがわかる。
【0047】
【表6】
【0048】(実施例5)ISO P30 CNMG1
20408の形状の炭化タングステン基超硬合金を母材
とし、その表面に実施例1と同じガス条件で1000℃
において被覆を行うことにより表7に示すような厚膜の
膜構造の本発明品のサンプルJ1〜L1を作製した。ま
た、被覆後サンプルJ1に鉄粉を用いたショットピーニ
ング処理を施し、被覆層中の引張残留応力をゼロまで低
減させたサンプルJ2も同時に作製した。また、比較の
ために膜厚が本発明の範囲を越えている比較品M、N、
及び内層の炭窒化チタンをCとN2 を炭窒素源とした従
来の熱CVD法で1000℃で本発明品と同じ厚みに被
覆した比較品Oを表中に同時に示した。これらのサンプ
ルの膜中の塩素量、母材に接する窒化チタン直上の炭窒
化チタンの配向性及び切り刃稜線部におけるη相析出厚
みを表8に示す。これらのサンプルを用い、下に示す切
削条件5、6で加工を行った結果を表9に示す。この結
果から比較サンプルMでは内層の炭窒化チタンの膜厚が
厚く、配向性が本発明品の範囲を越えていることから被
覆層中での剥離が発生し、摩耗が進行していることがわ
かる。また、比較サンプルNでは全体膜厚が本発明品の
範囲を越えていることから被覆層中での破壊が多くなっ
ていることがわかる。また、従来の熱CVD法による比
較サンプルOは全く使用に耐えないことがわかる。な
お、本発明品のJ1とJ2との比較から、このような厚
膜の領域では被覆後に残留応力を除去する処理を行うこ
とが耐剥離性、耐膜中破壊性の向上に効果があることが
わかる。
【0049】切削条件5 被削材:SCM415(HB=210) 切削速度:500m/min 送り:0.20mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:30分 切削油:水溶性切削条件6 被削材:SCM415(HB=180) 切削速度:600m/min 送り:0.15mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:1pass=10秒で150回繰り返し 切削油:水溶性
【0050】
【表7】
【0051】
【表8】
【0052】
【表9】
【0053】(実施例6)ISO P10のCNMG1
20408の形状の炭化タングステン基超硬合金を母材
として用い、この表面に表10のa1〜h1、p1〜r
1に示す構造の被覆層を生成した。この時、第1層目の
炭窒化チタンの生成は表10に示す900〜1100℃
の各温度で行い、ガス条件はすべてH2 :95%、四塩
化チタン:4%、アセトニトリル(CH3 CN):2
%、炉内圧力60Torrの混合ガス気流中で行った。
被覆層の厚みは保持時間を変化させることによって調整
した。これらの発明品の膜中の塩素量、配向性及び切り
刃稜線部におけるη相の析出厚みを表11に示す。な
お、比較として本発明品a1と同じ膜構造で、第1層目
の炭窒化チタンを、炭窒素源としてメタンとN2 を用い
た従来の熱CVD法により1000℃で作成した比較品
iを表中に同時に示した。
【0054】これらのサンプルを用い、下に示す切削条
件7、8で膜自体の耐摩耗性及び膜剥離を含む耐摩耗
性、剥離損傷について評価を行った。その結果を表12
に示す。 これらの結果から、本発明品のa1〜h1、
p1〜r1では比較品iに比べ耐摩耗性、耐剥離性、耐
膜中破壊性の点で優れていることがわかる。なお、本発
明品の中で、g1では膜中の残留塩素量が多く、耐摩耗
性、耐剥離性がやや劣りぎみになっているが、耐膜中破
壊性が比較品iに比べると大きく向上しており、これは
配向性が本発明の範囲にある効果である。また、本発明
品のh1では(311)の配向性が弱く、耐膜中破壊性
が若干劣るが耐摩耗性は比較品iに比べ大きく向上して
おり、膜中残留塩素量を本発明の範囲内に収めた効果が
認められる。なお、h1では膜中の塩素量が少ないにも
かかわらず被覆層の耐剥離性が若干劣るのはη層の厚み
に起因するものと考えられる。
【0055】切削条件7 被削材:SCM415(HB=210) 切削速度:300m/min 送り:0.35mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:30分 切削油:水溶性切削条件8 被削材:SCM415(HB=180) 切削速度:250m/min 送り:0.3mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:1pass=10秒で300回繰り返し 切削油:水溶性
【0056】
【表10】
【0057】
【表11】
【0058】
【表12】
【0059】(実施例7)ISO P10のCNMG1
20408の形状の炭窒化チタン基サーメットを母材と
して用い、この表面に表10のa1、c1、e1と同じ
構造の被覆層を生成し、サンプルa2、c2、e2を作
製し、実施例6の条件7、8と同じ切削条件で評価を行
った。その結果を表13に示す。比較として、表10の
a1と同じ膜構造の被膜を従来の熱CVD法により10
00℃でサーメット母材に被覆したサンプルi2を評価
した結果を同時に示す。なお、これらの膜の膜厚、塩素
量、配向性は表10、11の結果と同じであったが、い
ずれのサンプルにも切り刃稜線部にη相は見られなかっ
た(i2のサンプルのみ、被覆層中にバインダーのNi
に起因すると思われる金属相の析出が若干見られた)。
これらの結果から、比較品i2では内層、第1層の塩素
量が多いことから膜自身の耐摩耗性の不足および膜の剥
離が、また、第1層の配向性が本発明の範囲からはずれ
ていることから被覆層中での膜の破壊が生じている。こ
れに対し、本発明品のa2、c2、e2では耐摩耗性、
耐剥離性、耐膜中破壊性ともに優れる結果となっている
ことがわかる。
【0060】
【表13】
【0061】(実施例8)CNMG120408の形状
の窒化珪素系セラミックスを母材として用い、この表面
に表10のa1、c1、e1と同じ構造の被覆層を生成
し、サンプルa3、c3、e3を作製し、下に示す切削
条件9、10で評価を行った。その結果を表5に示す。
比較として、表10のa1と同じ膜構造の被膜を従来の
熱CVD法により1000℃で窒化珪素系セラミック母
材に被覆したサンプルi3を評価した結果を同時に示
す。なお、これらの膜の塩素量、配向性は表10、11
の結果と同じであったが、いずれのサンプルにも切り刃
稜線部にη相は見られなかった。また、膜厚については
i3の第1層の炭窒化チタンの厚みのみ6μmであった
が、それ以外は表10の結果と同じであった。これらの
結果から、比較品i3では内層、第1層の塩素量が多い
ことから膜自身の耐摩耗性の不足および膜の剥離が、ま
た、第1層の配向性が本発明の範囲からはずれているこ
とから被覆層中での膜の破壊が生じている。これに対
し、本発明品のa3、c3、e3では耐摩耗性、耐剥離
性、耐膜中破壊性ともに優れる結果となっていることが
わかる。
【0062】切削条件9 被削材:FC25 切削速度:500m/min 送り:0.25mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:30分 切削油:なし切削条件10 被削材:FC25 切削速度:400m/min 送り:0.3mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:1pass=10秒で300回繰り返し 切削油:なし
【0063】
【表14】
【0064】(実施例9)CNMG120408の形状
の酸化アルミニウム基セラミックスを母材として用い、
この表面に表10のa1、c1、e1と同じ構造の被覆
層を生成し、サンプルa4、c4、e4を作製し、実施
例8の切削条件9、10と同じ切削条件で評価を行っ
た。その結果を表15に示す。比較として、表10のa
1と同じ膜構造の被膜を従来の熱CVD法により100
0℃で酸化アルミニウム基セラミック母材に被覆したサ
ンプルi4を評価した結果を同時に示す。なお、これら
の膜の塩素量、配向性は表10、11の結果と同じであ
ったが、いずれのサンプルにも切り刃稜線部にη相は見
られなかった。また、膜厚についてはi4の第1層の炭
窒化チタンの厚みのみ6μmであったが、それ以外は表
10の結果と同じであった。これらの結果から、比較品
i4では内層、第1層の塩素量が多いことから膜自身の
耐摩耗性の不足からの先端落ちおよび膜の剥離が、ま
た、第1層の配向性が本発明の範囲からはずれているこ
とから被覆層中での膜の破壊が生じている。これに対
し、本発明品のa4、c4、e4では耐摩耗性、耐剥離
性、耐膜中破壊性ともに優れる結果となっていることが
わかる。
【0065】
【表15】
【0066】(実施例10)ISO P30 CNMG
120408の形状の炭化タングステン基超硬合金を母
材とし、その表面に実施例6と同じガス条件で1000
℃において被覆を行うことにより表16に示すような厚
膜の膜構造の本発明品のサンプルj1〜l1を作製し
た。また、被覆後サンプルj1に鉄粉を用いたショット
ピーニング処理を施し、被覆層中の引張残留応力をゼロ
まで低減させたサンプルj2も同時に作製した。また、
比較のために膜厚が本発明の範囲を越えている比較品
m、n、および第1層の炭窒化チタンをCとN2 を炭窒
素源とした従来の熱CVD法で1000℃で本発明品と
同じ厚みに被覆した比較品oを表中に同時に示した。こ
れらのサンプルの膜中の塩素量、第1層の炭窒化チタン
の配向性及び切り刃稜線部におけるη相析出厚みを表1
7に示す。これらのサンプルを用い、下に示す切削条件
11、12で加工を行った結果を表18に示す。この結
果から比較サンプルmでは第1層の炭窒化チタンの膜厚
が厚く、配向性が本発明品の範囲を越えていることから
被覆層中での剥離が発生し、摩耗が進行していることが
わかる。また、比較サンプルnでは全体膜厚が本発明品
の範囲を越えていることから被覆層中での破壊が多くな
っていることがわかる。また、従来の熱CVD法による
比較サンプルoは全く使用に耐えないことがわかる。な
お、本発明品のj1とj2との比較から、このような厚
膜の領域では被覆後に残留応力を除去する処理を行うこ
とが耐剥離性、耐膜中破壊性の向上に効果があることが
わかる。
【0067】切削条件11 被削材:SCM415(HB=210) 切削速度:500m/min 送り:0.20mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:30分 切削油:水溶性切削条件12 被削材:SCM415(HB=180) 切削速度:600m/min 送り:0.15mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:1pass=10秒で150回繰り返し 切削油:水溶性
【0068】
【表16】
【0069】
【表17】
【0070】
【表18】
【0071】(実施例11)ISO P20 CNMG
120408の形状の炭化タングステン基超硬合金を母
材として用い、この表面にTiN(0.5μm)/Al
2 3 (2.0μm)/TiBCN(0.5μm)/T
iC(3μm)/TiCN(6μm)/母材からなる構
造(上層のTiNとAl2 3 層が外層)の被覆層を生
成したサンプルX1〜X5、及びTiN(0.5μm)
/Al2 3 (2.0μm)/TiBCN(0.5μ
m)/TiC(3μm)/TiCN(6μm)/TiN
(0.5μm)/母材からなる構造(上層のTiNとA
2 3 層が外層)の被覆層を形成したサンプルY1〜
Y5を作製した。ここでY1〜Y5の母材に接するTi
Nの生成は、900℃で四塩化チタン1%、窒素
(N2 )50%、水素(H2 )残りの混合ガス気流中で
行った。また、X1〜X5及びY1〜Y5における内層
の炭窒化チタンの生成はそれぞれ番号順に800、85
0、900、940及び1050℃の温度で、四塩化チ
タンを4%、N2 を26〜60%とし、アセトニトリル
を0.4〜1%に変化させ、残りをH2 とした混合ガス
気流中で行った。被覆層の厚みは、保持時間を変えるこ
とにより前記の膜厚に調整した。なお、内層のTiCN
及びTiN中の平均塩素量はX1〜X4及びY1〜Y4
で0.1〜0.15%であり、X5とY5については
0.05%以下であった。これらの本発明品の膜中の配
向性を表19に示す。さらに、同一膜構造でTiCNの
生成条件をアセトニトリル0.1%、790℃、N2
0%とし、他は前記と同じ条件で作製した比較サンプル
Z1(X1〜X5と同一膜構造)及びZ2(Y1〜Y5
と同一膜構造)の膜の配向性も表19に示した。なお、
Z1及びZ2ともTiCN及びTiN中の塩素量は0.
2%を超えていた。これらのサンプルを用いて切削条件
13、14に示す条件で加工した結果を表20に示す。
この結果から本発明品のX1〜X5及びY1〜Y5はZ
1及びZ2に比べ、耐摩耗性、耐剥離性、耐膜中破壊性
のバランスが大きく向上しており、本発明の範囲内に配
向を制御した効果が明らかである。
【0072】切削条件13 被削材:SCM435(HB=230) 切削速度:160m/min 送り:0.35mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:30分 切削油:水溶性切削条件14 被削材:SCM415(HB=140) 切削速度:350m/min 送り:0.35mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:1pass=10秒で500回繰り返し 切削油:水溶性
【0073】
【表19】
【0074】
【表20】
【0075】(実施例12)ISO P10のCNMG
120408の形状の炭窒化チタン基サーメットを母材
として用い、この表面に表19のX1、X4、Y1、Y
4(以上本発明品)とZ1、Z2と同条件で同構造の被
覆層を生成させ、サンプルX6、X7、Y6、Y7、Z
3、Z4を作製し、実施例11の切削条件13、14と
同じ条件で切り込みのみ0.5mmに変更した切削条件
13′、14′で評価した。その結果を表21に示す。
なお、被覆層の配向及び膜中の塩素量は、実施例11の
サンプルと同じであった。この結果、本発明品では従来
品に比べ、耐摩耗性、耐剥離性、耐膜中破壊性のバラン
スが向上していることがわかる。
【0076】
【表21】
【0077】(実施例13)CNMG120408の形
状の窒化珪素系セラミックスを母材として用い、この表
面に表19のX1、X4、Y1、Y4(以上本発明品)
とZ1、Z2と同条件で同構造の被覆層を生成させ、サ
ンプルX8、X9、Y8、Y9、Z5、Z6を作製し、
切削条件15、16で評価した。その結果を表22に示
す。なお、被覆層の配向及び膜中の塩素量は、実施例1
1のサンプルと同じであった。この結果、本発明品では
従来品に比べ、耐摩耗性、耐剥離性、耐膜中破壊性のバ
ランスが向上していることがわかる。
【0078】切削条件15 被削材:FC25 切削速度:600m/min 送り:0.30mm/rev 切り込み:1mm 切削時間:30分 切削油:なし切削条件16 被削材:FC25 切削速度:300m/min 送り:0.30mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:1pass=5秒で500回繰り返し 切削油:なし
【0079】
【表22】
【0080】(実施例14)SNMN120408の形
状のウィスカー入りアルミナ基セラミックスを母材とし
て用い、この表面に表19のX1、X4、Y1、Y4
(以上本発明品)とZ1、Z2と同条件で同構造の被覆
層を生成させ、サンプルX10、X11、Y10、Y1
1、Z7、Z8を作製し、切削条件17、18で評価し
た。その結果を表23に示す。なお、被覆層の配向及び
膜中の塩素量は、実施例11のサンプルと同じであっ
た。この結果、本発明品では従来品に比べ、耐摩耗性、
耐剥離性、耐膜中破壊性のバランスが向上していること
がわかる。
【0081】切削条件17 被削材:FCD70 切削速度:350m/min 送り:0.30mm/rev 切り込み:1mm 切削時間:30分 切削油:なし切削条件18 被削材:FCD70 切削速度:250m/min 送り:0.30mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:1pass=5秒で500回繰り返し 切削油:なし
【0082】
【表23】
【0083】(実施例15)ISO P30のCNMG
120408の形状の炭化タングステン基超硬合金を母
材として用い、この表面にTiN(0.5μm)/Al
2 3 (3.0μm)/TiBCN(0.5μm)/T
iCN(20μm)/母材からなる構造(上層のTiN
とAl2 3 層が外層)の被覆層を生成したサンプルX
12〜X13、及びTiN(0.5μm)/Al2 3
(2.0μm)/TiBCN(0.5μm)/TiCN
(20μm)/TiN(0.5μm)/母材からなる構
造(上層のTiNとAl2 3 層が外層)の被覆層を形
成したサンプルY12〜Y13を作製した。ここでY1
2〜Y13の母材に接するTiNの生成は、750℃で
四塩化チタン1%、窒素(N2 )45%、アンモニア
(NH3 )5%、水素(H 2 )残りの混合ガス気流中で
行った。また、X12〜X13及びY12〜Y13にお
ける内層の炭窒化チタンの生成はそれぞれ番号順に80
0及び950℃の温度で、四塩化チタンを4%、N2
26%に固定し、アセトニトリルを0.4〜1%に変化
させ、残りをH2 とした混合ガス気流中で行った。被覆
層の厚みは、保持時間を変えることにより前記の膜厚に
調整した。なお、内層のTiCN及びTiN中の平均塩
素量はX12及びY12で0.1〜0.15%であり、
X13とY13についてはTiCN及びTiN中の平均
及び内層中の平均とも0.05%以下であった。これら
の本発明品の膜中の配向性を表24に示す。さらに、同
一膜構造でTiCNの生成条件をメタン(CH4 )10
%、窒素(N2 )5%、四塩化チタン1%、残り水素
(H2 )のガス気流中で1000℃で作製した比較サン
プルZ9(X6と同一膜構造)及びZ10(Y6と同一
膜構造)の膜の配向性も表24に同時に示した。これら
のサンプルを用いて切削条件19、20に示す条件で加
工した結果を表25に示す。この結果から本発明品のX
12〜X13及びY12〜Y13はZ9及びZ10に比
べ、耐摩耗性、耐剥離性、耐膜中破壊性のバランスが大
きく向上しており、本発明の範囲内に配向を制御した効
果が明らかである。
【0084】切削条件19 被削材:SCM415(HB=200) 切削速度:150m/min 送り:0.35mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:30分 切削油:水溶性切削条件20 被削材:SCM415(HB=140) 切削速度:300m/min 送り:0.35mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:1pass=5秒で1000回繰り返し 切削油:水溶性
【0085】
【表24】
【0086】
【表25】
【0087】
【発明の効果】本発明の被覆切削工具は、従来の被覆切
削工具に比較し、被覆膜自体の耐摩耗性が高く、被覆膜
と母材との接着が強固で切削時の耐剥離性が優れてい
る。また、従来品では被覆層の厚みは10〜15μm程
度であったのに対し、被覆層の厚みを100μm程度ま
で厚くすることが可能となった。さらに、本発明の製造
法によれば、前記のような優れた特性を有する切削工具
を容易に製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−256503(JP,A) 特開 昭54−152281(JP,A) 特開 平3−97866(JP,A) 特開 平1−104773(JP,A) 特開 平3−87368(JP,A) 特開 昭63−156623(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23B 27/14 C23C 16/30 C23C 28/04

Claims (17)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チ
    タン基サーメット、窒化珪素基セラミックス又は酸化ア
    ルミニウム基セラミックスよりなる母材の表面に内層及
    び外層よりなる被覆層を有し、該内層が母材と接する炭
    窒化チタンの単層もしくは母材と接する厚さ0.1〜2
    μmの窒化チタンとその直上の炭窒化チタンとの二重層
    又はさらに前記単層もしくは二重層の炭窒化チタンの上
    にチタンの炭化物、窒化物、炭窒化物、ホウ窒化物、ホ
    ウ炭窒化物から選ばれる一種以上を被覆された多重層で
    構成され、該外層が酸化アルミニウム、酸化ジルコニウ
    ム、酸化ハフニウム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化
    チタンから選ばれる一種以上の単層又は多重層で構成さ
    れてなる被覆切削工具において、前記内層における塩素
    含有量が内層全体の平均で0.05原子%以下であるこ
    とを特徴とする被覆切削工具。
  2. 【請求項2】 前記内層の母材と接する炭窒化チタンに
    おける塩素含有量又は母材と接する厚さ0.1〜2μm
    の窒化チタンとその直上の炭窒化チタンとにおける平均
    塩素含有量が0.05原子%以下であることを特徴とす
    る請求項1記載の被覆切削工具。
  3. 【請求項3】 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チ
    タン基サーメット、窒化珪素基セラミックス又は酸化ア
    ルミニウム基セラミックスよりなる母材の表面に内層及
    び外層よりなる被覆層を有し、該内層が母材と接する炭
    窒化チタンの単層もしくは母材と接する厚さ0.1〜2
    μmの窒化チタンとその直上の炭窒化チタンとの二重層
    又はさらに前記単層もしくは二重層の炭窒化チタンの上
    にチタンの炭化物、窒化物、炭窒化物、ホウ窒化物、ホ
    ウ炭窒化物から選ばれる一種以上を被覆された多重層で
    構成され、該外層が酸化アルミニウム、酸化ジルコニウ
    ム、酸化ハフニウム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化
    チタンから選ばれる一種以上の単層又は多重層で構成さ
    れてなる被覆切削工具において、前記母材と接する炭窒
    化チタン又は母材と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チ
    タンの直上の炭窒化チタンにおけるX線回折角2θ=2
    0°〜140°の間に回折ピークが現れる面のうち、
    (220)面との面間角度が30°〜60°である面
    (hkl)の回折ピーク強度の合計I(hkl)と、
    (220)面のピーク強度I(220)との比率I(h
    kl)/I(220)の値が母材表面あるいは窒化チタ
    ン表面から0〜3μmまでの平均で 2.5≦I(hkl)/I(220)≦7.0であり、
    かつ母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜20μm
    までの平均で 2.5≦I(hkl)/I(220)≦15.0である
    ことを特徴とする被覆切削工具。
  4. 【請求項4】 前記内層の母材と接する炭窒化チタン又
    は母材と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直上
    の炭窒化チタンにおいて、X線回折角2θ=20°〜1
    40°の間に回折ピークが現れる面のうち、(220)
    面との面間角度が30°〜60°である面(hkl)の
    回折ピーク強度の合計I(hkl)と、(220)面の
    ピーク強度I(220)との比率I(hkl)/I(2
    20)の値が母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜
    3μmまでの平均で 2.5≦I(hkl)/I(220)≦7.0であり、
    かつ母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜20μm
    までの平均で 2.5≦I(hkl)/I(220)≦15.0である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆切削工
    具。
  5. 【請求項5】 炭化タングステン基超硬合金,炭窒化チ
    タン基サーメット,窒化珪素基セラミックス又は酸化ア
    ルミニウム基セラミックスよりなる母材の表面に内層及
    び外層よりなる被覆層を有し、該内層が母材と接する炭
    窒化チタンの単層もしくは母材と接する厚さ0.1〜2
    μmの窒化チタンとその直上の炭窒化チタンとの二重層
    又はさらに前記単層もしくは二重層の炭窒化チタンの上
    にチタンの炭化物、窒化物、炭窒化物、ホウ窒化物、ホ
    ウ炭窒化物から選ばれる一種以上を被覆された多重層で
    構成され、該外層が酸化アルミニウム、酸化ジルコニウ
    ム、酸化ハフニウム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化
    チタンから選ばれる一種以上の単層又は多重層で構成さ
    れてなる被覆切削工具において、前記母材と接する炭窒
    化チタン又は母材と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チ
    タンの直上の炭窒化チタンのX線回折における(31
    1)面のピーク強度をI(311)、(220)面のピ
    ーク強度をI(220)としたとき、I(311)/I
    (220)の値が、母材表面あるいは窒化チタン表面か
    ら0〜3μmまでの平均で 0.5≦I(311)/I(220)≦1.5であり、
    かつ母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜20μm
    までの平均で 0.5≦I(311)/I(220)≦6.0であるこ
    とを特徴とする被覆切削工具。
  6. 【請求項6】 前記内層の母材と接する炭窒化チタン又
    は母材と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直上
    の炭窒化チタンにおいて、X線回折における(311)
    面のピーク強度I(311)と(220)面のピーク強
    度I(220)との比率I(311)/I(220)の
    値が、母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜3μm
    までの平均で 0.5≦I(311)/I(220)≦1.5であり、
    かつ母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜20μm
    までの平均で 0.5≦I(311)/I(220)≦6.0であるこ
    とを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の被
    覆切削工具。
  7. 【請求項7】 炭化タングステン基超硬合金,炭窒化チ
    タン基サーメット,窒化珪素基セラミックス又は酸化ア
    ルミニウム基セラミックスよりなる母材の表面に内層及
    び外層よりなる被覆層を有し、該内層が母材と接する炭
    窒化チタンの単層もしくは母材と接する厚さ0.1〜2
    μmの窒化チタンとその直上の炭窒化チタンとの二重層
    又はさらに前記単層もしくは二重層の炭窒化チタンの上
    にチタンの炭化物、窒化物、炭窒化物、ホウ窒化物、ホ
    ウ炭窒化物から選ばれる一種以上を被覆された多重層で
    構成され、該外層が酸化アルミニウム、酸化ジルコニウ
    ム、酸化ハフニウム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化
    チタンから選ばれる一種以上の単層又は多重層で構成さ
    れてなる被覆切削工具において、前記母材と接する炭窒
    化チタン又は母材と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チ
    タンの直上の炭窒化チタンのX線回折における(11
    1)面のピーク強度をI(111)、(220)面のピ
    ーク強度をI(220)としたとき、I(111)/I
    (220)の値が、母材表面あるいは窒化チタン表面か
    ら0〜3μmまでの平均で 1.0≦I(111)/I(220)≦4.0であり、
    かつ母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜20μm
    までの平均で 1.0≦I(111)/I(220)≦8.0であるこ
    とを特徴とする被覆切削工具。
  8. 【請求項8】 前記内層の母材と接する炭窒化チタン又
    は母材と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直上
    の炭窒化チタンにおいて、X線回折における(111)
    面のピーク強度I(111)と(220)面のピーク強
    度I(220)との比率I(111)/I(220)の
    値が、母材表面あるいは窒化チタン表面から0〜3μm
    までの平均で 1.0≦I(111)/I(220)≦4.0かつ母材
    表面あるいは窒化チタン表面から0〜20μmまでの平
    均で 1.0≦I(111)/I(220)≦8.0であるこ
    とを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の被
    覆切削工具。
  9. 【請求項9】 炭化タングステン基超硬合金,炭窒化チ
    タン基サーメット,窒化珪素基セラミックス又は酸化ア
    ルミニウム基セラミックスよりなる母材の表面に内層及
    び外層よりなる被覆層を有し、該内層が母材と接する炭
    窒化チタンの単層もしくは母材と接する厚さ0.1〜2
    μmの窒化チタンとその直上の炭窒化チタンとの二重層
    又はさらに前記単層もしくは二重層の炭窒化チタンの上
    にチタンの炭化物、窒化物、炭窒化物、ホウ窒化物、ホ
    ウ炭窒化物から選ばれる一種以上を被覆された多重層で
    構成され、該外層が酸化アルミニウム、酸化ジルコニウ
    ム、酸化ハフニウム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化
    チタンから選ばれる一種以上の単層又は多重層で構成さ
    れてなる被覆切削工具において、前記母材と接する炭窒
    化チタン又は母材と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チ
    タンの直上の炭窒化チタンのX線回折における(31
    1)面のピーク強度をI(311)、(111)面のピ
    ーク強度をI(111)、(220)面のピーク強度を
    I(220)としたとき、{I(111)+I(31
    1)}/I(220)の値が、母材表面あるいは窒化チ
    タン表面から0〜3μmまでの平均で 2.0≦{I(111)+I(311)}/I(22
    0)≦5.5であり、かつ母材表面あるいは窒化チタン
    表面から0〜20μmまでの平均で 2.0≦{I(111)+I(311)}/I(22
    0)≦14.0であることを特徴とする被覆切削工具。
  10. 【請求項10】 前記内層の母材と接する炭窒化チタン
    又は母材と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直
    上の炭窒化チタンにおいて、X線回折における(31
    1)面のピーク強度I(311)、(111)面のピー
    ク強度I(111)及び(220)面のピーク強度I
    (220)の関係式{I(111)+I(311)}/
    I(220)の値が、母材表面あるいは窒化チタン表面
    から0〜3μmまでの平均で 2.0≦{I(111)+I(311)}/I(22
    0)≦5.5であり、かつ母材表面あるいは窒化チタン
    表面から0〜20μmまでの平均で 2.0≦{I(111)+I(311)}/I(22
    0)≦14.0であることを特徴とする請求項1ないし
    8のいずれかに記載の被覆切削工具。
  11. 【請求項11】 前記内層の母材と接する炭窒化チタン
    又は母材と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直
    上の炭窒化チタンの厚みが1〜20μmであることを特
    徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の被覆切
    削工具。
  12. 【請求項12】 前記母材が炭化タングステン基超硬合
    金又は炭窒化チタン基サーメットであり、切り刃稜線部
    における被覆層と母材の界面最表面のη相の厚みが1μ
    m以下であることを特徴とする請求項1ないし11のい
    ずれかに記載の被覆切削工具。
  13. 【請求項13】 前記内層及び外層の合計膜厚が2〜1
    00μmであることを特徴とする請求項1ないし12の
    いずれかに記載の被覆切削工具。
  14. 【請求項14】 炭化タングステン基超硬合金,炭窒化
    チタン基サーメット,窒化珪素基セラミックス又は酸化
    アルミニウム基セラミックスよりなる母材の表面に内層
    及び外層よりなる被覆層を有し、該内層が母材と接する
    炭窒化チタンの単層もしくは母材と接する厚さ0.1〜
    2μmの窒化チタンとその直上の炭窒化チタンとの二重
    層又はさらに前記単層もしくは二重層の炭窒化チタンの
    上にチタンの炭化物、窒化物、炭窒化物、ホウ窒化物、
    ホウ炭窒化物から選ばれる一種以上を被覆された多重層
    で構成され、該外層が酸化アルミニウム、酸化ジルコニ
    ウム、酸化ハフニウム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒
    化チタンから選ばれる一種以上の単層又は多重層で構成
    されてなる被覆切削工具を製造する方法において、前記
    母材と接する炭窒化チタン又は母材と接する厚さ0.1
    〜2μmの窒化チタンの直上の炭窒化チタンを被覆する
    方法として、チタン源として四塩化チタン、炭窒素源と
    して有機CN化合物を用い、窒素が26%以上の濃度の
    雰囲気下で行う化学蒸着法により、800〜950℃の
    温度範囲で被覆することを特徴とする被覆切削工具の製
    造方法。
  15. 【請求項15】 炭化タングステン基超硬合金,炭窒化
    チタン基サーメット,窒化珪素基セラミックス又は酸化
    アルミニウム基セラミックスよりなる母材の表面に内層
    及び外層よりなる被覆層を有し、該内層が母材と接する
    炭窒化チタンの単層もしくは母材と接する厚さ0.1〜
    2μmの窒化チタンとその直上の炭窒化チタンとの二重
    層又はさらに前記単層もしくは二重層の炭窒化チタンの
    上にチタンの炭化物、窒化物、炭窒化物、ホウ窒化物、
    ホウ炭窒化物から選ばれる一種以上を被覆された多重層
    で構成され、該外層が酸化アルミニウム、酸化ジルコニ
    ウム、酸化ハフニウム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒
    化チタンから選ばれる一種以上の単層又は多重層で構成
    されてなる被覆切削工具を製造する方法において、前記
    母材と接する炭窒化チタン又は母材と接する厚さ0.1
    〜2μmの窒化チタンの直上の炭窒化チタンを被覆する
    方法として、チタン源として四塩化チタン、炭窒素源と
    して有機CN化合物を用いる化学蒸着法により、950
    〜1050℃の温度範囲で被覆することを特徴とする被
    覆切削工具の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記母材と接する炭窒化チタン又は母
    材と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直上の炭
    窒化チタンを被覆する方法として、チタン源として四塩
    化チタン、炭窒素源として有機CN化合物を用い、窒素
    が26%以上の濃度の雰囲気下で行う化学蒸着法によ
    り、800〜950℃の温度範囲で被覆することを特徴
    とする請求項1ないし13のいずれかに記載の被覆切削
    工具の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記母材と接する炭窒化チタン又は母
    材と接する厚さ0.1〜2μmの窒化チタンの直上の炭
    窒化チタンを被覆する方法として、チタン源として四塩
    化チタン、炭窒素源として有機CN化合物を用いる化学
    蒸着法により、950〜1050℃の温度範囲で被覆す
    ることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記
    載の被覆切削工具の製造方法。
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