JPH08318406A - 被覆切削工具 - Google Patents

被覆切削工具

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JPH08318406A
JPH08318406A JP12116095A JP12116095A JPH08318406A JP H08318406 A JPH08318406 A JP H08318406A JP 12116095 A JP12116095 A JP 12116095A JP 12116095 A JP12116095 A JP 12116095A JP H08318406 A JPH08318406 A JP H08318406A
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layer
base material
coating
tin
cutting tool
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JP12116095A
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Inventor
Hisanori Ohara
久典 大原
Katsuya Uchino
克哉 内野
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 母材と、それに接する炭化チタンの結晶状況
に言及し、安定した耐摩耗性を発揮する被覆切削工具を
提供すること。 【構成】 超硬合金よりなる母材の表面に化学蒸着法に
よってセラミックス被覆を形成した被覆切削工具におい
て、内側層の母材と接する第1層が窒化チタンであり、
第1層である厚さ0.1μm以上2.0μm以下の窒化チタンが
母材中の該硬質相上では0.02〜0.1μmの柱状あるいは成
長方向に長い粒状となっており、且つ母材中の該金属結
合相上では平均結晶粒径が0.01〜0.05μmの粒状の関係
になっていることを特徴とする被覆切削工具。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は強靱且つ耐摩耗性に優れ
た皮膜を形成した被覆切削工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】切削工具の使用される環境がますます過
酷になるのに伴い、炭化タングステン基超硬合金やサー
メットといった硬質母材の表面に化学蒸着法(CVD
法)や物理蒸着法(PVD法)等の手法によって各種の
セラミックス被覆を形成した、いわゆる被覆切削工具が
広く活用されるようになっている。このような被覆の実
例としては、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(Ti
N)及びアルミナ(Al23)被覆がある。これらの単
層または複層コーティングによって、切削工具の耐摩耗
性が向上するだけでなく、切削時に被削材と切削工具と
が反応することを防止でき、結果的に工具の寿命向上が
図れたことは、すでに公知の通りである。
【0003】しかし、これらの被覆切削工具を用いて加
工を行った場合、特に高速切削加工のように高温での耐
摩耗性が必要な加工、あるいは小物部品加工のように加
工数が多く被削材への食いつき回数が多い加工などで被
覆層の耐摩耗性が不足したり、被覆層の損傷が発生する
ことによる工具寿命の低下が発生していた。また、熱C
VD法による被覆ではPVD法に比べて母材との密着性
には優れるものの、母材の種類によっては、特に性能に
寄与する切り刃稜線部において母材との界面に脆化層で
あるη相が厚く析出し易く、切削中にこのη相とともに
被覆層が脱落して摩耗の進行が促進されることから、工
具寿命のばらつきを引き起こし、被覆層が十分に寿命の
向上に寄与しているとは言えない場合があった。
【0004】これらの従来から発生していた問題を解決
するために、アセトニトリル(CH3CN)等の有機C
N化合物を用いた熱CVD法による炭窒化チタン膜(T
iCN)(特公昭57−53308号公報、特公昭57
−50871号公報)が注目されている。従来の熱CV
D法(高温CVD法;HT−CVD法と称する)では、
チタン系被覆の形成中に母材から被覆へ元素(特に炭
素)の移動が生じ、母材表面に変質層(η相と呼ばれる
Co33C等の複炭化物)が生成する。この様な好まし
くない変質相の生成を抑さえるMT−CVD法(中温C
VD法)は、被覆温度がやや低く(800℃〜900℃)、気
相からのCやNの供給が十分であるために、切り刃稜線
部の界面でさえもη相が生じないとされている。
【0005】MT−CVD法を採用した特許は多数出願
されている。例えば特開平3−64469号公報、特開
平3−87368号公報では、いずれも超硬合金母材表
面に直接MT−CVD法を用いてTiCN膜を形成し、
その上にHT−CVD法によりアルミナ(Al23)や
窒化チタン(TiN)等の多層膜を形成した工具を提案
している。また、特開昭62−99467号公報におい
ては、結晶粒径が0.5μmのTiCN及び/あるいはTi
Nを0.5〜5.0μmの厚みで被覆した単層あるいは多層を
提案しており、TiCN被覆の形成方法として蒸着温度
700〜900℃におけるMT−CVD法を提案している。し
かし、母材に接する被覆層としてはTiCN層を提案し
ていた。また被覆層の微細構造については、特開昭62
−99467号公報の様に、被覆層を構成するTiCN
及び/あるいはTiNの結晶粒径が0.5μm以下であれば
最適であるとの提案はなされているが、結晶粒の形状と
粒径の評価法に関する記載がなく、現実的ではなかっ
た。
【0006】更に特開平6−8008号公報や特開平6
−8010号公報の様に、被覆層の少なくとも1層をT
iCN層とし、その構造を粒状と縦長状の組み合わせと
することが耐チッピング性に優れた工具を得るために重
要であることを開示している。また特開平6−1064
02号公報及び特開平6−108254号公報では、母
材の表面に粒状のTiCNを5〜50nm(0.005〜0.05μm
に相当)の厚さで形成することで、優れた性能の工具を
得られることを開示している。しかしいずれの先行例
も、TiCNを構成する結晶粒の平均的な形状やサイズ
に触れているにとどまり、被覆全体の機械的特性を支配
する因子である結晶粒のサイズや、TiCN以外の被覆
の粒形状の関係について言及されていない。このような
問題を解決するために、本発明者らにより特願平6−2
14807号明細書により示されるように、内側層の第
2層に含まれるTiCN被覆層を特定の構造にすること
を開示しているが、更に微視的に被覆層と母材との構造
を提供するには至っていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題
点に鑑み、CVD法によるTiCN膜のメリットを最大
限発揮させることで、従来以上に信頼性の高い被覆切削
工具を発明することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題
点を解決するために種々検討を加えた結果、まず母材の
表面に第1層としてTiNを被覆し、その上に第2層と
してTiCNを被覆することが上記問題点の解決に有効
であることを見いだした。この時、母材に接する第1層
であるTiNについては、その構造が母材中の硬質相上
と金属結合相上で異なることが極めて重要であることを
見い出した。さらにTiNを構成する結晶粒子の構造が
次の通りであることが重要である。すなわち母材に接す
る第1層である窒化チタンが、母材中の該硬質相上では
0.02〜0.1μmの柱状あるいは成長方向に長い粒状で、且
つ母材中の該金属結合相上では平均結晶粒径が0.01〜0.
05μmの粒状の関係になっていることを見い出した。
【0009】即ち、本発明は、主たる成分として元素周
期率表におけるIVa、Va、VIa族の炭化物、窒化
物、炭窒化物のうちの少なくとも1種以上の硬質相を、
周期率表のVIII族の金属により焼結した硬質合金よ
りなる母材の表面に、セラミック被覆を形成した被覆切
削工具において、内側層が、チタンの炭化物、窒化物、
炭窒化物から選ばれる2種以上を被覆した多層で構成さ
れ、外側層が、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、
酸化ハフニウム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタ
ンから選ばれる1種又は2種以上の単層又は多層で構成
されている被覆層を被覆した表面被覆切削工具におい
て、内側層の炭化チタンが、炭窒化チタンの上部に隣接
して形成されており、母材とそれに接する炭化チタンの
結晶状況が上記の関係を満足するものである。ここで、
母材となる硬質合金としては、通常用いられる炭化タン
グステン基超硬合金又はサーメットを用いる。また母材
に接する第1層はTiNであることが好ましい。
【0010】
【作用】本発明の第一の特徴は、CVD法によるTiC
Nを母材表面に直接被覆するのではなく、特定の結晶構
造を持ったTiNを介して被覆する点にある。この理由
は次の通りである。既に述べた様に、CVD法によるT
iCNと母材との密着性を向上させる為には、母材の表
面に第1層としてTiN層を被覆することが好ましく、
この時にTiNが特定の形状で成長していることが好ま
しい。母材に接する第1層のTiNは、その上にTiC
Nが成長する際の下地になっており、TiN上で成長す
るTiCN結晶の形状を左右する。
【0011】従って、TiN被覆の膜厚が0.1μmよりも
薄いと、連続した膜とならず、所定の機能を発揮しない
ため、TiN被覆の膜厚は0.1μm以上であることが好ま
しい。また第1層のTiNの厚みが2.0μmを越えると、
工具としての耐摩耗性がかえって低下するため、2.0μm
以下であることが好ましい。しかしTiNを炭素含有母
材表面に形成した場合、被覆形成中あるいは形成後に母
材から供給される炭素を吸って、TiN被覆中に若干の
炭素が混じる場合がある。この様なTiN被覆は炭素含
有量に応じてその色調が金色から紫あるいは褐色に変化
することが知られている。本発明における第1層のTi
N被覆とは、その色調が明かに金色のものを指す。母材
から炭素を吸って紫色あるいは褐色に変色したTiN被
覆は、その特性を十分発揮できないことも本発明者らに
よって確認された。
【0012】さて第1層のTiN被覆は、その上に成長
するTiCN被覆の結晶成長の核となるだけでなく、被
覆層と母材との界面に位置する重要な層である。本発明
でTiN被覆層に求められる最大の特性は、下地である
母材中に存在する硬質相及び金属結合相の上において、
優れた密着性を発揮することである。この様な密着性を
発揮するには、母材に接するTiNが・母材中の該硬質
層上では平均結晶粒径0.02〜0.1μmの柱状あるいは成長
方向に長い粒状・母材中の該金属結合相上では平均結晶
粒径が0.01〜0.05μmの粒状で規定されることが必要で
ある。ここで言う結晶粒径とは、成長方向に垂直な断面
での結晶の太さのことである。平均結晶粒径の評価は、
例えば走査型電子顕微鏡により撮影された破断面あるい
は研磨後のエッチング面の写真において、決まった寸法
の視野の中に見える結晶粒の本数を数えることにより実
施される。
【0013】例えば、破断面の組織観察においては、母
材表面と平行に測った10μm幅の視野の中に、10本の結
晶粒が見られた時には、設定した幅である10μmを10で
割ることによって、1μmと評価される。このとき、視野
からわずかでもはみ出した結晶粒については、0.5本と
数えるものとする。また成長面の組織観察においては、
母材表面に対して平行に研磨、ラッピングした面におい
て、10μm四方の視野の中に、100個の結晶粒が見られた
時には、設定した幅である10μmを100の平方根である10
で割ることによって、1μmと評価される。このとき、視
野からわずかでもはみ出した結晶粒については、0.5個
と数えるものとする。これらの組織観察の方法として
は、薄片に加工した試料を透過型電子顕微鏡で観察する
方法などの方法を用いても構わない。いずれも適切な倍
率で撮影した写真から、結晶粒径を算出する。但し、X
線回折法による結晶粒径の算出は、計算値が被覆の残留
応力等に影響され易いため、好ましくない。
【0014】さてTiN被覆層は、被覆時の条件によっ
て様々な微細構造をとるが、・母材中の該硬質相上では
0.02〜0.1μmの柱状あるいは成長方向に長い粒状・母材
中の該金属結合相上では平均結晶粒径が0.01〜0.05μm
の粒状である場合に最も耐剥離性に優れている。これ
は、下地である母材と第1層TiNとの界面において、
最も適切な元素の相互拡散の結果、この様な特定の構造
を持つと同時に母材との接合状態が改善されるためであ
ると推定される。また母材中の金属結合相の上の方が硬
質相の上よりもTiNの結晶粒子が細かいことは、切削
中の応力が働いた時に金属結合相の方が変形が大きく、
この上の被覆層の変形も大きくなることが考えられ、こ
の時に変形に対して破壊しにくいという面で好ましい。
この様な観点から、硬質相上では0.02〜0.1μmの平均結
晶粒径であれば、結晶粒子の形状は柱状あるいは成長方
向に長い粒状であっても構わない。
【0015】また、金属結合相上では、硬質相上よりも
粒子径が小さく、且つ粒状であることが必要である。粒
子サイズは、これ以上大きいと下地との密着性が低下す
ると共に破壊が大規模になるため、好ましくない。また
これよりも小さいと結晶性の低下によりTiNセラミッ
クス本来の強度が発揮されないため好ましくない。また
この様な第1層TiN上に第2層TiCNを被覆する
と、TiCNの成長が下地であるTiNの成長終了面の
影響を受け、TiNの表面に露出している結晶粒とほぼ
同じ結晶粒径を持ったTiCNを核としてTiCN結晶
が成長する。この結果得られた多層で構成された被覆層
が、優れた耐摩耗性、耐剥離性を持つものと推定され
る。これらの具体的な内容は実施例において詳しく説明
するが、いずれにしても、本発明のTiCNとTiCの
構造の関係を維持することは、安定して優れた切削性能
を示す工具を得るために必要なものである。
【0016】
【実施例】
(実施例1) 母材表面に厚さ約15μmの脱β層を持っ
たISOに示された型番コート120408形状の超硬
合金(JIS B 4053切削工具用合金成分一覧表
中のP10に該当する合金成分)の表面に、公知の熱C
VD法により厚み0.5μmのTiNを形成した後に、公知
のCVD法によりTiCNを4μm形成し、更にその上に
TiCを3μm形成した。TiN被覆形成に先立つ昇温
工程では、500℃までは雰囲気をH2:100%の200Tor
rとし、500℃以上ではN2:80%、H2:残(いずれも
流量モル比)とした大気圧下で行ない、超硬合金表面へ
の窒素富化を行なうと共に、引き続き行なったTiN被
覆の形成条件でも、TiCl4:1.5%、N2:90%、
2:残、(いずれも流量モル比)、総流量20リットル
/分、基板温度900℃、反応槽内圧力50Torrとする
ことで、第1層TiNが本発明の構造となる様にした。
【0017】一方、TiCNの形成条件は、TiC
4:1.5%、CH4:3%、N2:2%、H2:残、(いず
れも流量モル比)、総流量20リットル/分、基板温度98
0℃、反応槽圧力90Torrとした。またTiCの形成
条件は、TiCl4:1.5%、CH4:5%、H2:残、
(いずれも流量モル比)、総流量15リットル/分、基板
温度1050℃、反応槽圧力120Torrとした。この上に
TiBCN(0.5μm)、Al23(1.5μm)、TiN
(0.2μm)の順に被覆層を形成し、本発明の被覆層の
構造を持った工具を試作した。平均結晶粒径の評価は、
皮膜の断面を研磨して平滑にし、弗酸と硝酸の混合液を
用いてエッチングして結晶粒界を出し、これを高倍率の
走査型電子顕微鏡を用いて観察し、評価した。評価の結
果、本発明品である工具においては、第1層TiNが明
かに金色の色調を持っており、母材中の硬質相である炭
化タングステン粒上では太さ0.07μmの柱状形状を持
ち、母材中の金属結合相であるコバルト上では平均結晶
粒径0.03μmの粒状形状を持つことがそれぞれ確認でき
た。
【0018】本発明品に対して、被覆厚を揃えた3種類
の比較用工具を作製した。比較例1:第1層のTiNの
無いもの(TiCN厚みを4.5μmとした)比較例2:炭
化タングステン上でもコバルト上でも太さ0.12μmで均
一な柱状構造からなる下地のTiNを厚さ0.5μm形成し
たもの(TiCN厚みは4.0μm)比較例3:第1層のT
iNの結晶粒子は本発明の範囲内であるが、厚みが3.0
μmと厚いもの(TiCN厚みは1.5μmとした)本発明
品及び3つの比較例について、表1に示す条件で切削試
験を実施した。結果を表2に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】表2からわかる様に、本発明品は、耐摩耗
性に優れると同時に耐剥離性、耐欠損性にもすぐれるこ
とがわかる。一方、下地のTiN被膜のない場合(比較
例1)は、被覆の耐剥離性に劣ることが確認された。更
に第1層のTiNが太く均一な柱状結晶から構成されて
いる場合(比較例2)は、耐剥離性、耐摩耗性共に劣
り、欠損することがわかった。また第1層TiNが厚い
場合(比較例3)は、耐剥離性には優れるものの、耐摩
耗性共に劣り、寿命が短いことがわかった。
【0022】(実施例2) ISOに示された型番コー
ト120408の形状でチップブレーカー付きの形状で
ある超硬合金(JIS B 4053切削工具用合金成
分一覧表中のP30に該当する合金成分)を母材として
用い、この表面に表3に示す構造の被覆層を形成した。
ここで、本発明品における第1層のTiN被覆は実施例
1に記載したTiN被覆形成条件と同じとし、第2層の
TiCN被覆の形成は、アセトニトリル(CH3CN)
を用いたMT−CVD法により行った。更に、この上に
第3層であるTiC被覆を、公知のCVD法により実施
したもの(本発明品1と3)を作ったが、その形成条件
は実施例1のTiC被覆形成条件と同じとした。なお本
発明品2ではTiC被覆を入れなかった。なお本発明品
2では、塩化ハフニウムを原料とした酸化ハフニウム
(HfO2)を、本発明品3では、塩化ジルコニウムを
原料とした酸化ジルコニウム(ZrO2)をそれぞれ熱
CVD法により形成した。
【0023】以上の手法により得られた本発明品1〜3
について、被覆層の破断面及び研磨面を詳細に調べたと
ころ、第1層のTiN被覆がそれぞれ0.2μm、0.9μm、
1.5μmであり、いずれも明かに金色の色調を持ってお
り、母材からの炭素拡散による変色は全く認めず、本発
明に記載の構造、即ち、本発明品1:・母材中の該硬質
相上では0.03μmの成長方向に長い粒状、・母材中の該
金属結合相上では平均結晶粒径が0.02μmの粒状、本発
明品2:・母材中の該硬質相上では0.05μmの柱状、・
母材中の該金属結合相上では平均結晶粒径が0.03μmの
粒状、本発明品3:・母材中の該硬質相上では0.08μm
の柱状、・母材中の該金属結合相上では平均結晶粒径が
0.04μmの粒状の構造をそれぞれ有していた。
【0024】他方、比較例1では、下地にTiNを入れ
ずに、本発明品と同条件で基材上に直接TiCN被覆の
形成を行った。比較例2ではTiN被覆形成時の炉内圧
力を変えたことで、TiN被覆が硬質相上、結合相上を
問わず均一な太さ0.07μmの柱状結晶から構成されてい
た。また比較例3では、第1層のTiN被覆が本発明の
範囲内の結晶から構成されていたが、その被覆厚が3.2
μmと厚かった。なお本発明品と同様に、全ての比較例
におけるTiCN被覆の形成はMT−CVD法により行
った。その他の被覆については、公知の熱CVD法によ
り被覆形成を行い、表3に示す被覆厚及び被覆構造の試
料を得た。
【0025】
【表3】
【0026】表3に示した試料について、表4に示す切
削条件にて切削試験を実施した。
【0027】
【表4】
【0028】切削試験の結果を表5に示す。
【0029】
【表5】
【0030】表5より、本発明品1〜3は、耐摩耗性、
耐剥離性共に優れており、安定した寿命が得られること
がわかる。これに対して、下地の中間層としてTiN被
覆を入れなかった場合(比較例1)は、実施例1におい
ても確認した様に、耐剥離性に劣るという結果が得られ
た。次にTiN被覆を構成する柱状結晶の平均粒径が本
発明品に該当しない場合(比較例2)は、切削中に被覆
が大規模に破壊し易く、欠けを生じた。また第1層のT
iN被覆の結晶粒子が本発明の範囲内に入るが被覆厚が
厚い場合(比較例3)は、剥離は見られなかったものの
耐摩耗性にやや劣ることが分かった。これらの比較例は
全て耐摩耗性と耐剥離性を両方満足させておらず、切削
工具としては性能的に劣ることがわかる。
【0031】(実施例3) ISOに示された型番コー
ト120408の形状でJIS B4053切削工具用
合金成分一覧表中のP01に該当する炭窒化チタン基サ
ーメットを母材として用い、この表面に表6に示す構造
の被覆層を形成した。ここで、本発明品における第1層
のTiN被覆、第2層のTiCN被覆の形成は、実施例
1に記載の本発明品の被覆形成条件にて実施し、第1層
のTiN被覆を構成する結晶粒子の形状が本発明の範囲
に入っていることを確認した。比較例1では、実施例1
の比較例1と同様に、第1層のTiNを入れずに基材上
に直接TiCN被覆の形成を行なった。また比較例2で
は、実施例1の比較例2と同様に、硬質相上でも金属結
合相上でも太さ0.12μmで均一な柱状構造からなる下地
のTiN被覆を厚さ0.7μm形成した。また比較例3では
実施例1の比較例3と同様に第1層のTiN被覆の結晶
粒子は本発明の範囲内であるが、厚みを2.5μmと厚くし
た。その他の被覆については、従来の熱CVD法により
形成し、表6に示す被覆厚及び被覆構造の試料を得た。
【0032】
【表6】
【0033】表6に示した試料について、表7に示す切
削条件にて切削試験を実施した結果を表8に示す。
【0034】
【表7】
【0035】
【表8】
【0036】表8より、本発明品は耐摩耗性、耐剥離性
共に優れており、安定した寿命が得られていることがわ
かる。これに対して、下地のTiN被覆を入れなかった
場合(比較例1)は、実施例1においても確認したよう
に、耐剥離性に劣るという結果が得られた。次にTiN
被覆を構成する柱状結晶の平均粒径が本発明品に該当し
ない場合(比較例2)は、切削中に被覆が大規模に破壊
し易く、欠けを生じた。また第1層のTiN被覆の結晶
粒子が本発明の範囲内に入るが被覆厚が厚い場合(比較
例3)は、剥離は見られなかったものの耐摩耗性にやや
劣ることが分かった。これらの比較例はいずれも耐摩耗
性と耐剥離性を両方満足させておらず、切削工具として
は性能的に劣ることがわかる。
【0037】
【発明の効果】以上記した様に、本発明の被覆切削工具
は、従来の被覆切削工具に比較し、被覆層全体の耐摩耗
性が高いだけでなく、被覆層と母材との接着が強固であ
り、切削時の耐剥離性にも優れている。また、従来提案
されていた被覆構造ではCVD法によるTiCN被覆の
持つ特徴を引き出すことが困難であったのに対して、下
地の中間層であるTiNを特定の構造とし、特定の厚み
で挿入することで、被覆切削工具の性能を向上させると
共に安定させることが可能となった。以上の点を加味し
た多層被覆を超硬合金工具基材上に形成することで、前
記の様な優れた性能を持った切削工具を容易に製造する
ことができる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主たる成分として元素周期率表における
    IVa、Va、VIa族の炭化物、窒化物、炭窒化物の
    うちの少なくとも1種又は2種以上の硬質相を、周期率
    表のVIII族の金属結合相により焼結した硬質合金よりな
    る母材の表面に、内側層の母材と接する第1層が窒化チ
    タンであり、その上の第2層が炭窒化チタンであり、そ
    の上にチタンの炭化物、窒化物、炭窒化物、ホウ窒化
    物、ホウ炭窒化物から選ばれる1種又は2種以上を被覆
    した多層で構成され、外側層が、酸化アルミニウム、酸
    化ジルコニウム、酸化ハフニウム、炭化チタン、炭窒化
    チタン、窒化チタンから選ばれる1種又は2種以上の単
    層または多層で構成されている被覆層を被覆した表面被
    覆切削工具において、前記第1層である窒化チタンを構
    成する結晶粒子の形状が、母材中の該硬質相上と母材中
    の該金属結合相上では異なることを特徴とする被覆切削
    工具。
  2. 【請求項2】 前記母材と接する第1層である窒化チタ
    ンが、母材中の該硬質相上では0.02〜0.1μmの柱状ある
    いは成長方向に長い粒状となっており、且つ母材中の該
    金属結合相上では平均結晶粒径が0.01〜0.05μmの粒状
    の関係になっていることを特徴とする請求項1記載の被
    覆切削工具。
  3. 【請求項3】 前記母材と接する第1層の窒化チタンの
    厚みが0.1μm以上、2.0μm以下であることを特徴とする
    請求項2記載の被覆切削工具。
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