JP2010207919A - すぐれた切屑排出性を示す表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】超硬合金、サーメット、立方晶窒化ほう素基超高圧焼結体からなる切削工具基体表面に、幅10〜100nm、高さ0.2〜2μmの柱状晶を有し、さらに、原子間力顕微鏡により表面形状を測定した場合、幅10〜100nm、高さ20nm以下の均一な凹凸を有し、かつ、1μm×1μmの領域における平均面粗さを測定した場合、5nm以下の平均面粗さを有するTiN層からなる硬質被覆層を蒸着形成する。
【選択図】 図3
Description
また、特許文献2においては、TiN等の硬質被覆層を物理蒸着(PVD)法で蒸着形成した被覆ドリルにおいて、切屑排出溝表面に600番より細かいWA砥粒(ホワイトアランダム)を噴きつけることにより、切屑排出溝の微細突起除去を行い、切削性能の向上を図っている。
例えば、上記従来の被覆ドリルにおいては、TiC、TiN、TiCN、TiAlN等の硬質被覆層をアークイオンプレーティング(AIP)法やスパッタリング(SP)法により蒸着形成することにより、耐摩耗性の向上、工具寿命の延命化を図っているが、従来被覆ドリルにおいては、硬質被覆層を形成した後に、切屑排出性を高めるために、切屑排出溝を後処理することによって表面平滑性を高めることが必要とされ、被覆ドリルの製造に多大の労力を要していた。
さらに、このような後処理を行ったとしても、その加工精度によってバラツキが生じやすく、特に、高速切削穴あけ加工条件下では、満足できる切屑排出性を得られないばかりか、工具寿命も短命であるという問題点があった。
上記従来の被覆工具は、図2に示されるPVD装置の1種であるSP装置に上記の工具基体を装着し、例えば、
装置内加熱温度:300〜500℃、
工具基体に印加する直流バイアス電圧:−50〜−100V、
カソード電極:金属Ti、
スパッタリング電力:3〜6kW、
装置内ガス流量:窒素(N2)ガス+アルゴン(Ar)ガス、
装置内ガス圧力:0.3〜1.5Pa、
の条件で、硬質被覆層として上記TiN層(以下、従来TiN層という)を形成することにより製造されている。
工具基体温度:室温〜100 ℃、
蒸発源:金属Ti、
プラズマガン放電電力:10〜15 kW、
反応ガス流量:窒素(N2)ガス 50〜150 sccm、
放電ガス:アルゴン(Ar)ガス 30〜60 sccm、
工具基体に印加する直流バイアス電圧: 0 V
という特定の条件で蒸着を行うと、この結果形成されたTiN層(以下、改質TiN層という)は、図3にその模式図を示すように、特別の後処理を施すことなく蒸着ままで、前記従来TiN層に比してすぐれた表面平滑性(ナノサイズの表面平滑性)を備え、その結果、高速穴あけ加工等の高速切削条件下においても、すぐれた切屑排出性を有し、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮することを見出した。
「 超硬合金、サーメットあるいは立方晶窒化ほう素基超高圧焼結体からなる切削工具基体の表面に、0.2〜2μmの層厚のチタン窒化物層からなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
上記チタン窒化物層は、幅10〜100nm、高さ0.2〜2μmの柱状晶を有し、さらに、原子間力顕微鏡により上記チタン窒化物層の表面形状を測定した場合、幅10〜100nm、高さ20nm以下の均一な凹凸を有し、かつ、1μm×1μmの領域における平均面粗さを測定した場合、5nm以下の平均面粗さを有することを特徴とする表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
また、改質TiN層からなる硬質被覆層の層厚が0.2μm未満では、所望の耐摩耗性を確保するのに不十分であり、一方その層厚が2μmを越えると、後述するような表面平滑性にすぐれた硬質被覆層を形成することが困難となり、切屑排出性も低下してくることからなることから、改質TiN層の平均層厚を0.2〜2μmと定めた。
工具基体温度:室温〜100 ℃、
蒸発源:金属Ti、
プラズマガン放電電力:10〜15 kW、
反応ガス流量:窒素(N2)ガス 50〜150 sccm、
放電ガス:アルゴン(Ar)ガス 30〜60 sccm、
工具基体に印加する直流バイアス電圧: 0 V、
蒸着時間: 30〜150 min、
のような特定の条件に調整して蒸着すると、すぐれた表面性状(ナノサイズの表面平滑性)を備えた改質TiN層が形成される。
この改質TiN層を走査型電子顕微鏡により観察すると、幅10〜100nm、高さ0.2〜2μmの柱状晶の改質TiNの形成が観察される。
図3に、改質TiN層からなる硬質被覆層の膜厚方向縦断面模式図を示す。
この改質TiNの柱状晶の幅及び高さは、上記蒸着条件のうちの、特に、蒸着時間によって影響を受けるが、30〜150minの蒸着によって、上記の幅、高さの柱状晶の改質TiNが形成される。
なお、改質TiN層の層厚0.2〜2μmは、ここでいう柱状晶の高さ0.2〜2μmに対応するものである。
図4(b)は、改質TiN層表面組織状態を示す走査型電子顕微鏡写真、同(c)に改質TiN層の膜厚方向断面組織状態を示す走査型電子顕微鏡写真の一例である。
つまり、この発明における改質TiN層は、蒸着形成後に何らかの後処理を施すことを必要とせず、蒸着ままで面粗さが小さく表面平滑性に優れたものであるから、このような改質TiN層を、例えば、被覆ドリルの硬質被覆層として形成した場合には、切屑排出性にすぐれた被覆ドリルを得ることができ、これを高速切削(穴あけ加工)条件下での被覆ドリルとして用いた場合には、長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮するものである。
なお、改質TiN層の柱状晶に関連して述べたと同様に、前記特定の条件で蒸着することによって、表面平滑性に優れたこの発明の改質TiN層を蒸着形成することができるが、他の方法によって、この発明の改質TiN層(即ち、所定サイズの柱状晶、凹凸サイズ、平均面粗さ)を形成することを何ら排除するものではない。
特に、この発明の被覆工具を被覆ドリルとして用いたような場合には、高速穴あけ加工において、切屑排出性がすぐれるため、特に優れた耐欠損性を発揮する。
なお、ここでは被覆ドリルを中心にして説明するが、被覆ドリルに限らず、被覆インサート、被覆エンドミル等の各種の被覆工具に適用できるものである。
なお、表2に、本発明被覆ドリル1〜8の改質TiN層の形成条件である圧力勾配型Arプラズマガンを利用したイオンプレーティングの各種条件を示す。
なお、表3には、従来被覆ドリル1〜8の従来TiN層の形成されるスパッタリング条件を示す。
表4、表5に、それぞれの測定値を示した。
表面形状測定は、幅10〜100nmの領域における凹凸高さを測定することにより行い、また、平均面粗さ測定は、1μm×1μmの領域において平均面粗さRaを測定することにより行った。
従来被覆ドリル1〜8の従来TiN層について、粗大粒子の存在により原子間力顕微鏡による表面形状、平均面粗さ測定が不可能であったため、レーザー顕微鏡(KEYENCE製VK−9710)により10μm×10μmの領域において平均面粗さを測定した。4、表5に、それぞれの測定値を示した。
なお、いずれの測定も、5点測定の平均値である。
これに対して、表5から、従来被覆ドリル1〜8の従来TiN層は、平均粒径0.1〜0.5μmの柱状結晶を有し、その平均面粗さは20〜50nmであって、蒸着ままでは表面平滑性が極めて不十分であることがわかり、高速穴あけ加工に用いる場合には、切屑排出溝に表面を平滑にするための後処理が必要であることは明らかである。
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmの、JIS・SS400の板材、
切削速度: 150 m/min.、
送り: 0.03 mm/rev、
穴深さ: 10 mm、
の条件での軟鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、75m/min.および0.015mm/rev)、
を行い(水溶性切削油使用)、先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表4にそれぞれ示した。
これに対して、表3、5、6から、従来被覆ドリル1〜8においては、表面平滑性が劣るため、高速穴あけ切削加工条件下では摩耗、欠損等により、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
Claims (1)
- 超硬合金、サーメットあるいは立方晶窒化ほう素基超高圧焼結体からなる切削工具基体の表面に、0.2〜2μmの層厚のチタン窒化物層からなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
上記チタン窒化物層は、幅10〜100nm、高さ0.2〜2μmの柱状晶を有し、さらに、原子間力顕微鏡により上記チタン窒化物層の表面形状を測定した場合、幅10〜100nm、高さ20nm以下の均一な凹凸を有し、かつ、1μm×1μmの領域における平均面粗さを測定した場合、5nm以下の平均面粗さを有することを特徴とする表面被覆切削工具。
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