JP2005335040A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、被削材の溶着を少なくするとともに切削抵抗を低減させ、以って被膜の剥離やチッピング、欠損等の異常損傷を防止し、安定かつ長寿命の表面被覆切削工具を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の表面被覆切削工具は、基材表面に直接接するように被膜が形成されたものであって、該被膜は、物理的蒸着法(PVD法)により形成されており、該被膜表面の面粗さは、該表面被覆切削工具の断面から観察する方法で測定される基準長さ5μmに対して、最大面粗さRmaxが0.01μm≦Rmax≦0.2μmであり、該被膜の刃先稜線部分の近傍の最小厚みt、該被膜の掬い面側または逃げ面側の最大厚みTとした場合に、0≦t/T≦0.8となることを特徴とするものである。
【選択図】 図3

Description

本発明は、ドリル、エンドミル、ドリル用刃先交換型チップ、エンドミル用刃先交換型チップ、フライス加工用刃先交換型チップ、旋削加工用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどの切削工具に関し、特にその表面に耐摩耗性等を向上させる被膜を形成した表面被覆切削工具に関する。
昨今の切削加工では、高速、高精度、高能率加工への追求に加え、環境対策としてのゼロエミッション加工としてドライ加工も志向されている。加えて、工業技術の進歩にともない、航空機、宇宙開発、原子力発電などに使用される難削材や新素材を多く使用する産業の活動がますます活発化し、質的な多様化と量的な拡大が一層進むと見られ、これらの切削加工についても当然その対応が求められている。
従来よりこのような課題に対して、種々の表面被覆切削工具が数多く提案され、また実用化されてきた。たとえば、超硬合金を基体とし、その表面にCVD法により種々の被覆膜を形成した表面被覆切削工具が提案されている(特許文献1)。
この表面被覆切削工具においては、その被覆膜が工具の掬い面側および逃げ面側から切刃稜に向かって滑らかに薄くなる構成を有している。そして、このような構成を有することにより、上記被覆膜の靭性と耐摩耗性が向上し、工具が安定かつ長寿命化するとされている。
しかしながら、このような表面被覆切削工具においてさえ、切削対象の被削材の種類によってはその被削材が上記被覆膜に溶着することがあり、その溶着物を除去する際に被覆膜も同時に剥離するという問題があった。
一方、物理的蒸着法により被膜が形成された表面被覆切削工具は、切削条件等により切削抵抗が高くなる場合があり、特にそのような物理的蒸着法により被膜が形成されたドリルにおいては切粉排出性が悪く欠損に至ることもあることからその改善が求められていた。
特公平5−9201号公報
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、被削材の溶着を少なくするとともに切削抵抗を低減させ、以って被膜の剥離やチッピング、欠損等の異常損傷を防止し、安定かつ長寿命の表面被覆切削工具を提供することにある。
本発明者は、従来の表面被覆切削工具において上記のような問題が生じるメカニズムを鋭意研究したところ、その原因の一つとして表面被覆切削工具の面粗さが関係し、それを制御することが必要であるとの知見を得、さらに基材の表面を被覆する被膜のミクロな表面状態、つまり刃先稜線部分近傍の膜厚分布が大きく影響することをつきとめた。
また、この被膜の表面においてマイクロクラック(微小なひび割れ)が多数発生すると上記のような問題の発生が助長されること、およびこのマイクロクラックは被膜の形成方法に依存して発生し、特に化学的蒸着法(CVD法)により形成する場合にその発生が顕著になることをつきとめた。
さらに、本発明者は、基材上における被膜の膜厚分布を制御することにより、意外にもチッピング、欠損等の異常損傷を防止できるとの知見を得た。
本発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。すなわち、本発明の表面被覆切削工具は、基材表面に直接接するように被膜が形成されている表面被覆切削工具において、該被膜は、物理的蒸着法(PVD法)により形成されており、該被膜表面の面粗さは、該表面被覆切削工具の断面から観察する方法で測定される基準長さ5μmに対して、最大面粗さRmaxが0.01μm≦Rmax≦0.2μmであり、該被膜の刃先稜線部分の近傍の最小厚みt、該被膜の掬い面側または逃げ面側の最大厚みTとした場合に、0≦t/T≦0.8となることを特徴とするものである。
また、上記被膜は、掬い面側および逃げ面側から刃先稜線部分に向かって滑らかに薄くなっていることが好ましい。
また、上記被膜は、複数の層によって形成されることが好ましく、この複数の層のうち少なくとも1の層は、元素周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、AlおよびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の炭化物、窒化物、酸化物、炭酸化物、炭窒化物、窒酸化物、炭窒酸化物またはこれらの固溶体により形成されることが好ましく、さらに好ましくはTiCN、TiNまたはTiAlNのいずれかにより形成されることが好適である。
また、上記基材は、超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、窒化硅素焼結体、または酸化アルミニウムと炭化チタンとからなる混合体のいずれかであることが好ましい。
本発明の表面被覆切削工具は、上記のような構成を有することにより、被削材の溶着を少なくするとともに切削抵抗を低減させ、以って被膜の剥離やチッピング、欠損等の異常損傷を防止し、安定かつ長寿命な使用を可能としたものである。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明では、図面を用いて説明しているが、本願の図面において同一の参照符号を付したものは、同一部分または相当部分を示している。
<表面被覆切削工具>
本発明の表面被覆切削工具は、基材表面に直接接するように被膜が形成されたものである。図1に示したように、このような表面被覆切削工具1は、たとえば四角チップ状の形状を有したものとすることができるが、その形状は特に限定されるものではない。
図2は、図1のII−II断面を示す断面図であるが、基材2の表面に直接接するように被膜3が形成されており、掬い面側4と逃げ面側5との接線部分が刃先稜線部分6となっていることを示している。なお、本発明において刃先稜線部分6の近傍とは、この刃先稜線部分6を中心として掬い面側4および逃げ面側5にそれぞれ1mmの幅を有する範囲をいうものとする。
このような本発明の表面被覆切削工具は、ドリル、エンドミル、ドリル用刃先交換型チップ、エンドミル用刃先交換型チップ、フライス加工用刃先交換型チップ、旋削加工用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどの切削工具として好適に用いることができる。
<基材>
本発明の表面被覆切削工具に用いられる基材は、この種の用途の基材として従来公知のものであればいずれのものも使用することができる。たとえば、超硬合金(WC基超硬合金)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化硅素、窒化硅素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなど)、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、窒化硅素焼結体、または酸化アルミニウムと炭化チタンとからなる混合体のいずれかであることが好ましい。
これらの各種基材の中でも、後述の被膜が物理的蒸着法により形成される関係から、特に超硬合金、サーメット、立方晶型窒化硼素焼結体を選択することが好ましい。
<被膜>
本発明の被膜は、上記の基材の表面に直接接するように形成されるものである。このように形成されている限り、必ずしも上記基材を全面に亘って被覆している必要はなく、上記基材の表面に該被膜が形成されていない部分が含まれていても差し支えない。
このような被膜は、工具の耐摩耗性や耐酸化性等の諸特性を向上させる作用を付与するために形成されるものであり、たとえば元素周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、AlおよびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の炭化物、窒化物、酸化物、炭酸化物、炭窒化物、窒酸化物、炭窒酸化物またはこれらの固溶体により構成されるものである。
特に、耐摩耗性に優れるTiCN、TiNまたはTiAlN等をその好適な組成として例示することができる。
また、このような被膜は、単層で形成されていてもよいが、複数の層によって形成されていてもよい。このように被膜が複数の層によって形成されている場合、各層の組成は同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
このように被膜が複数の層によって形成されている場合、その複数の層のうち少なくとも1の層は、たとえば元素周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、AlおよびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の炭化物、窒化物、酸化物、炭酸化物、炭窒化物、窒酸化物、炭窒酸化物またはこれらの固溶体により形成されていることが好ましく、上記で好適な組成として例示したTiCN、TiNまたはTiAlNのいずれかにより形成されていることが特に好ましい。
<被膜の形成方法>
本発明の上記被膜は、物理的蒸着法(PVD法)により形成することが必要である。このように物理的蒸着法を採用したことにより、化学的蒸着法によって被膜を形成した場合に被膜表面に生じるマイクロクラックを有効に防止することが可能となった。
物理的蒸着法の採用により、なぜマイクロクラックの発生が有効に防止できるのか、その詳細なメカニズムは未だ十分には解明されていないが、本発明者は、基材上に金属イオンが堆積して被膜が形成される際、次々に金属イオンが被膜内部に打ち込まれることにより被膜に圧縮応力が残存するためではないかと考えている。
本発明は、このように物理的蒸着法の採用により被膜表面のマイクロクラックを有効に防止し、かつ後述のように被膜表面の面粗さを特定の範囲のものとするとともにその厚みを特定のものとしたことにより、被削材の溶着を少なくするとともに切削抵抗を低減させ、以って被膜の剥離やチッピング、欠損等の異常損傷を防止し、安定かつ長寿命な使用を可能としたものである。
このような物理的蒸着法としては、たとえば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等、従来公知の方法を特に限定することなく採用することができる。特に、それらの各種方法の中でもアーク式イオンプレーティング法またはマグネトロンスパッタリング法を採用することが好ましい。
ここで、アーク式イオンプレーティング法とは、金属を陰極とし、真空チャンバーを陽極としてアークプラズマ化し、金属を蒸発、イオン化させると同時に基材に負の電圧をかけることによりイオンを引き出し、基材表面に金属イオンを堆積する方法をいう。なお、この方法において、真空中に窒素を入れ、金属と反応させれば該金属の窒化化合物が形成されることになる。たとえば金属としてチタンを用い、窒素と反応させれば窒化チタン(TiN)が形成される。
このようなアーク式イオンプレーティング法にも種々のものがあるが、特に、原料元素のイオン率が高いカソードアークイオンプレーティング法を採用することが特に好ましい。
このカソードアークイオンプレーティング法を用いると、被膜を形成する前に基材表面に対して金属のイオンボンバードメント処理が可能となるため、被膜の密着性が飛躍的に向上する。このため、密着性という意味からもカソードアークイオンプレーティング法は好ましいプロセスである。
一方、マグネトロンスパッタリング法とは、真空チャンバー内を高真空にした後、Arガスを導入してターゲット−基材間に高電圧を印加しグロー放電を生じさせ、このグロー放電によりイオン化したArをターゲットに向けて加速照射させターゲットをスパッタすることにより、スパッタされたターゲット原子が基材上に堆積されることによって成膜される方法をいう。このようなマグネトロンスパッタリング法には、バランスドマグネトロンスパッタリング法、アンバランスドマグネトロンスパッタリング法等がある。
<被膜表面の面粗さ>
上記被膜表面の面粗さは、平滑であることが必要であり、上記表面被覆切削工具の断面から観察する方法で測定される基準長さ5μmに対して、最大面粗さRmaxが0.01μm≦Rmax≦0.2μmの範囲の数値で示されるものであることが好ましい。より好ましくは、その下限が0.03μm、さらに好ましくは0.05μm、その上限が0.18μm、さらに好ましくは0.15μmである。
最大面粗さRmaxが0.2μmを超えると、切削時において被削材の溶着量が増大し、またこの点Rmaxは小さくなればなる程好ましいといえるが、Rmaxが0.01μm未満の場合には、切削時における被削材の溶着量の減少度合いに大差なく、工具の製造効率を考慮すると却って経済的に不利となる。
ここで面粗さとは、上記基材上に被膜を形成した後これを切断し、ラッピングした後に金属顕微鏡や電子顕微鏡等を用いて観察される被膜表面の凹凸状況をいい、工具全体の巨視的なうねり等は排除される概念である。したがって、上記基準長さとは、金属顕微鏡や電子顕微鏡等を用いて観察される被膜表面の範囲を規定した特定の範囲(長さ)をいう。
また最大面粗さRmaxとは、上記のような被膜表面の凹凸状況において、基準長さを5μmとした範囲内で観察した場合の最大凹凸差をいい、上記のような巨視的なうねり等は排除されたものである。
本発明の被膜表面の面粗さは、被膜形成後において好ましくはブラシ、ブラストまたはバレル等による種々の表面研磨加工工程を施すことにより得られるものである。
本発明は、このように被膜表面の面粗さを特定の範囲のものとすることにより、上述のマイクロクラックの発生防止ならびに後述の被膜厚の特定化と相俟って、被削材の溶着を少なくするとともに切削抵抗を低減させ、以って被膜の剥離やチッピング、欠損等の異常損傷を防止し、安定かつ長寿命な使用を可能としたものである。
<被膜の厚み>
本発明の被膜の厚みは、以下のような数値によって規定される。すなわち、図3および図4に示したように、上記被膜の刃先稜線部分6の近傍の最小厚みt、該被膜の掬い面側4または逃げ面側5の最大厚みTとした場合に、0≦t/T≦0.8となることを特徴とするものである。
なお、図3は、図2の断面図において刃先稜線部分6を部分的に拡大した断面図であり、図4は、異なった基材形状を有する場合の刃先稜線部分6を部分的に拡大した断面図である。
通常、刃先稜線部分6における被膜の厚みは、掬い面側4や逃げ面側5の厚みに比し厚くなるのであるが、本発明においては、後述の研磨加工の採用によりその部分の厚みを逆に薄くしたことを特徴とするものである。これにより、該被膜の靭性および耐摩耗性が飛躍的に向上することになる。
上記t/Tで表される数値の下限値は、より好ましくは0.1であり、さらに好ましくは0.2である。またその上限値は、より好ましくは0.7であり、さらに好ましくは0.6である。
上記t/Tが0.8を超えると、該被膜の靭性および耐摩耗性の向上効果が期待できなくなるばかりか、刃先稜線部分近傍にチッピング、欠損等の異常損傷を生じる原因となる。この点、上記t/Tは一般に小さい方が好ましく、0になる場合(すなわち刃先稜線部分6の近傍において被膜が形成されない場合)が含まれる。
このように本発明の表面被覆切削工具の被膜は、上記のような特定範囲で規定される厚みを有していることが好ましく、かつ掬い面側および逃げ面側から刃先稜線部分に向かって滑らかに薄くなっていることが好ましい。
このように被膜を掬い面側および逃げ面側から刃先稜線部分に向かって滑らかに薄くするためには、いかなる方法を採用しても差し支えないが、たとえば掬い面側および逃げ面側の適当な部分をラッピングした後、刃先稜線部分およびその近傍に対してバフ砥石または砥粒を伴った樹脂よりなるブラシを回転させながら押し当てて研磨する研磨加工を実行することにより得ることができる。
なお、本発明においては、被膜が複数の層によって形成されている場合、上記被膜の刃先稜線部分6の近傍の最小厚みtとなっている部分と、該被膜の掬い面側4または逃げ面側5の最大厚みTとなっている部分との間で、被膜の構成(積層状態)が異なる場合がある。しかし、このように被膜の構成が異なる場合であっても、本願発明の範囲を逸脱するものではない。
本発明は、このように被膜の厚みを特定範囲のものに規定することにより、上述のマイクロクラックの発生防止ならびに被膜の表面粗さの特定化と相俟って、被削材の溶着を少なくするとともに切削抵抗を低減させ、以って被膜の剥離やチッピング、欠損等の異常損傷を防止し、安定かつ長寿命な使用を可能としたものである。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の被膜の化合物組成および厚みはXPS(X線光電子分光分析装置)によって確認した。また、以下では被膜をカソードアークイオンプレーティング法により形成しているが、例えばバランスドまたはアンバランスドスパッタリング法によっても成膜することは可能である。
<実施例1〜5>
<表面被覆切削工具の作製>
表面被覆切削工具として、図5および図6に示したドリル用刃先交換型チップを以下のようにして作成した。なお、図5はドリル用刃先交換型チップ12を備えたドリル11の概略側面図(全長約140mm)であり、図6は図5のドリル用刃先交換型チップ12のみを拡大した概略上面図である。
まず、この表面被覆切削工具(ドリル用刃先交換型チップ)の基材として、グレードがJIS規格K30のWC基超硬合金を使用し、これをカソードアークイオンプレーティング装置に装着した。
続いて、真空ポンプにより該装置のチャンバー内を減圧するとともに、該装置内に設置されたヒーターにより上記基材の温度を650℃に加熱し、チャンバー内の圧力が1.0×10-4Paとなるまで真空引きを行なった。
次に、アルゴンガスを導入してチャンバー内の圧力を3.0Paに保持し、上記基材の基板バイアス電源の電圧を徐々に上げながら−1500Vとし、基材の表面のクリーニングを15分間行なった。その後、アルゴンガスを排気した。
次いで、上記基材表面に直接接するように形成される被膜の化合物組成として、以下の表1に記載した化合物組成および厚み(厚みは掬い面側の最大厚みとして示す)となるように金属蒸発源である合金製ターゲットをセットするとともに、反応ガスとして窒素またはメタン(炭素源として)のいずれか1以上のガスを導入させながら、基材(基板)温度650℃、反応ガス圧2.0Pa、基板バイアス電圧を−200Vに維持したまま、カソード電極に100Aのアーク電流を供給し、アーク式蒸発源から金属イオンを発生させることにより、第1層から順番に基材上に積層させ(第1層は基材上に積層させ、第2層は第1層上に積層させ、第3層は第2層上に積層させるようにして)上記基材表面に直接接するように被膜を形成した。
Figure 2005335040
次いで、上記のようにして得られた表面被覆切削工具に対して、その被膜の全面に亘って#1500のダイヤモンドペーストを用いて研磨加工を行なった。続いて、掬い面側および逃げ面側の適当な部分をラッピングした後、そのラッピングされていない部分および刃先稜線部分とその近傍部分に対して、#1500のダイヤモンドペーストを用いて研磨加工を行なうことにより、基材上において被膜を掬い面側および逃げ面側から刃先稜線部分に向かって滑らかに薄くするようにして形成した。このようにして表1に示すように実施例1〜5の本発明に係る表面被覆切削工具(ドリル用刃先交換型チップ)を得た。
その後、このようにして得られた表面被覆切削工具を切断し、被膜表面の面粗さを、該表面被覆工具の断面から観察する方法で測定される基準長さを5μmとすることにより測定した最大面粗さRmaxを表2に示す。
また、上記のXPSを用いて、被膜の刃先稜線部分の近傍の最小厚みt、該被膜の掬い面側または逃げ面側の最大厚みTを測定することにより、t/T値を求めた結果を併せて表2に示す。
なお、比較のため、実施例1において、被膜表面の最大面粗さRmaxを0.30μmとする以外は全て実施例1と同様にして製造された表面被覆切削工具を比較例1として製造した。また、実施例1において、t/T値を1.0とする以外は全て実施例1と同様にして製造された表面被覆切削工具を比較例2として製造した。
Figure 2005335040
<表面被覆切削工具の寿命評価>
上記で作製した実施例1〜5および比較例1〜2の表面被覆切削工具のそれぞれについて、以下に示す条件による湿式の穴あけ試験を行なった。そして、刃先の逃げ面摩耗幅が0.2mmを超える切削距離を測定した。この切削距離が長いもの程、工具寿命が長くなることを示している。これらの結果を上記の表2に示す。
なお、切削条件は、被削材としてS50Cを用い、切削速度120m/min、送り量0.15mm/rev、切り込み70mmとした。
表2から明らかなように、実施例1〜5の本発明に係る表面被覆切削工具は、比較例1〜2の表面被覆切削工具に比し、切削距離が長く、表面被覆切削工具の寿命が大きく向上していることを確認した。また、実施例1〜5の本発明に係る表面被覆切削工具においては、チッピング、欠損等の異常損傷の発生も一切確認されなかった。
<実施例6〜10>
<表面被覆切削工具の作製>
表面被覆切削工具として、エンドミル用刃先交換型チップを以下のようにして作製した。
まず、この表面被覆切削工具(エンドミル用刃先交換型チップ)の基材として、グレードがJIS規格K10のWC基超硬合金を使用し、この基材に対して実施例1〜5と同様にしてカソードアークイオンプレーティング法により表1に示されている実施例1〜5と同じ積層構成の被膜をそれぞれ形成し、実施例1〜5と同様の研磨加工を施すことにより、実施例6〜10の本発明の表面被覆切削工具(エンドミル用刃先交換型チップ)を作製した。
このようにして得られた実施例6〜10の表面被覆切削工具(エンドミル用刃先交換型チップ)について、実施例1〜5と同様にして被膜表面の最大面粗さRmaxとt/T値とを測定した。その結果を以下の表3に示す。
なお、比較のため、実施例6において、被膜表面の最大面粗さRmaxを0.35μmとする以外は全て実施例6と同様にして製造された表面被覆切削工具を比較例3として製造した。また、実施例6において、t/T値を1.0とする以外は全て実施例6と同様にして製造された表面被覆切削工具を比較例4として製造した。
<表面被覆切削工具の寿命評価>
上記で作製した実施例6〜10および比較例3〜4の表面被覆切削工具のそれぞれについて、以下に示す条件による乾式のエンドミル切削試験を行なった。そして、刃先の逃げ面摩耗幅が0.1mmを超える切削距離を測定した。この切削距離が長いもの程、工具寿命が長くなることを示している。これらの結果を以下の表3に示す。
なお、切削条件は、被削材としてS50Cを用い、切削速度100m/min、送り量0.2mm/tooth、Ad(軸方向の切り込み量)2mm、Rd(半径方向の切り込み量)10mmとした。
Figure 2005335040
表3から明らかなように、実施例6〜10の本発明に係る表面被覆切削工具は、比較例3〜4の表面被覆切削工具に比し、切削距離が長く、表面被覆切削工具の寿命が大きく向上していることを確認した。また、実施例6〜10の本発明に係る表面被覆切削工具においては、チッピング、欠損等の異常損傷の発生も一切確認されなかった。
<実施例11〜15>
<表面被覆切削工具の作製>
表面被覆切削工具として、フライス加工用刃先交換型チップを以下のようにして作製した。
まず、この表面被覆切削工具(フライス加工用刃先交換型チップ)の基材として、グレードがJIS規格P30のWC基超硬合金であって、フライス加工用刃先交換型チップとしての形状がJIS規格のSDKN42であるものを使用し、この基材に対して実施例1〜5と同様にしてカソードアークイオンプレーティング法により表1に示されている実施例1〜5と同じ積層構成の被膜をそれぞれ形成し、実施例1〜5と同様の研磨加工を施すことにより、実施例11〜15の本発明の表面被覆切削工具(フライス加工用刃先交換型チップ)を作製した。
このようにして得られた実施例11〜15の表面被覆切削工具(フライス加工用刃先交換型チップ)について、実施例1〜5と同様にして被膜表面の最大面粗さRmaxとt/T値とを測定した。その結果を以下の表4に示す。
なお、比較のため、実施例11において、被膜表面の最大面粗さRmaxを0.24μmとする以外は全て実施例11と同様にして製造された表面被覆切削工具を比較例5として製造した。また、実施例11において、t/T値を1.0とする以外は全て実施例11と同様にして製造された表面被覆切削工具を比較例6として製造した。
<表面被覆切削工具の寿命評価>
上記で作製した実施例11〜15および比較例5〜6の表面被覆切削工具のそれぞれについて、以下に示す条件による乾式の連続切削試験および断続切削試験を行なった。そして、刃先の逃げ面摩耗幅が0.2mmを超える時間を切削時間として測定した。この切削時間が長いもの程、工具寿命が長くなることを示している。これらの結果を以下の表4に示す。
なお、切削条件は、被削材としてSCM435を用い、切削速度200m/min、送り量0.2mm/tooth、切り込み2mmとした。
Figure 2005335040
表4から明らかなように、連続切削試験においても断続切削試験においても実施例11〜15の本発明に係る表面被覆切削工具は、比較例5〜6の表面被覆切削工具に比し、切削時間が極めて長く、表面被覆切削工具の寿命が大きく向上していることを確認した。また、実施例11〜15の本発明に係る表面被覆切削工具においては、チッピング、欠損等の異常損傷の発生も一切確認されなかった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の表面被覆切削工具の形状を概念的に示した斜視図である。 図1のII−II断面を示した断面図である。 図2の刃先稜線部分を部分的に拡大して示した断面図である。 異なった基材形状を有する表面被覆切削工具の刃先稜線部分を部分的に拡大して示した断面図である。 ドリルの概略側面図である。 ドリル用刃先交換型チップの概略上面図である。
符号の説明
1 表面被覆切削工具、2 基材、3 被膜、4 掬い面側、5 逃げ面側、6 刃先稜線部分、11 ドリル、12 ドリル用刃先交換型チップ。

Claims (9)

  1. 基材表面に直接接するように被膜が形成されている表面被覆切削工具において、
    前記被膜は、物理的蒸着法により形成されており、
    前記被膜表面の面粗さは、前記表面被覆切削工具の断面から観察する方法で測定される基準長さ5μmに対して、最大面粗さRmaxが0.01μm≦Rmax≦0.2μmであり、
    前記被膜の刃先稜線部分の近傍の最小厚みt、前記被膜の掬い面側または逃げ面側の最大厚みTとした場合に、0≦t/T≦0.8となることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記被膜は、掬い面側および逃げ面側から刃先稜線部分に向かって滑らかに薄くなっていることを特徴とする請求項1記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記被膜は、複数の層によって形成されることを特徴とする請求項1記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記複数の層のうち少なくとも1の層は、元素周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、AlおよびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の炭化物、窒化物、酸化物、炭酸化物、炭窒化物、窒酸化物、炭窒酸化物またはこれらの固溶体により形成されることを特徴とする請求項3記載の表面被覆切削工具。
  5. 前記複数の層のうち少なくとも1の層は、TiCN、TiNまたはTiAlNのいずれかにより形成されることを特徴とする請求項3記載の表面被覆切削工具。
  6. 前記基材は、超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、窒化硅素焼結体、または酸化アルミニウムと炭化チタンとからなる混合体のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の表面被覆切削工具。
  7. 前記表面被覆切削工具は、ドリル用刃先交換型チップであることを特徴とする請求項1記載の表面被覆切削工具。
  8. 前記表面被覆切削工具は、エンドミル用刃先交換型チップであることを特徴とする請求項1記載の表面被覆切削工具。
  9. 前記表面被覆切削工具は、フライス加工用または旋削加工用刃先交換型チップであることを特徴とする請求項1記載の表面被覆切削工具。
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