JP4080481B2 - 表面被覆切削工具およびその製造方法 - Google Patents

表面被覆切削工具およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ドリル、エンドミル、フライス加工用または旋削加工用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマまたはタップなどの切削工具に関し、特にその表面に耐摩耗性を有する被覆を形成した切削工具およびその製造方法に関するものである。
最近の切削工具の動向として、地球環境保全の観点から切削油剤を用いないドライ加工が求められていること、被削材が多様化していること、加工能率を一層向上させるため切削速度がより高速になってきていることなどの事情があり、工具刃先温度はますます高温になる傾向である。その結果工具寿命は短くなるので、工具材料に要求される特性は厳しくなる一方である。
特に、工具材料の要求特性として、高温での被覆膜の安定性(耐酸化特性や被覆膜の密着性)はもちろんのこと、切削工具寿命に関係する耐摩耗性、すなわち被覆膜の高温における硬度の向上や潤滑油剤に変わる被覆膜の潤滑特性が一段と重要になっている。
ここで、一般的な切削工具の刃先の構造について説明する。図1に切削工具の典型的刃先の断面模式図を示す。図1において、工具1は基材2と基材2の表面上に形成された被覆3とを含む。また、刃先は工具のすくい面4と工具の逃げ面5とによって構成され、多くの場合、すくい面4と逃げ面5とがつくる角度は鋭角または直角である。このような工具刃先に被覆を形成すると、被覆の膜厚は図に示されるように、すくい面膜厚6、逃げ面膜厚7に比べ、刃先稜線部の膜厚8が最も厚くなる。
さらに、工具刃先での理想的な摩耗進行を図2(a)〜(c)を用いて説明する。工具としての理想的な摩耗は、まず、図2(a)のように被覆が膜厚8で示した鋭角または直角の部分から除々に摩耗し、やがて図2(b)の様に基材に達したのち、ついには図2(c)の様に被覆と基材とが共に露出して摩耗することである。
しかし、発明者らが詳細に工具摩耗部を調査した結果、刃先先端の摩耗は上述の図2のようには進行せず、切削初期に図3のように刃先稜線部分が既に、線Xで示すチッピングにより基材まで無くなっており、基材の部分10が完全に露出、その形態から欠損していることがわかった。また、その欠陥部分の基材11はすでに酸化しており、いくら膜の耐酸化性や耐摩耗性が良くとも、切削初期に基材が露出してしまっては工具寿命を著しく向上させることは難しいと考えられる。
従って、高速加工やドライ加工といった過酷な条件での切削工具においては、被覆膜の耐酸化性を向上させることはもちろんであるが、切削初期に起こる刃先の欠損やチッピング、すなわち基材の露出をいかに抑制させるかが非常に重要である。
一方、下記非特許文献1には、耐摩耗性および表面保護機能改善のため、WC基超硬合金、サーメット、高速度鋼等の切削工具や耐摩耗性工具等の硬質基材の表面には、硬質被覆層としてTiAlの窒化物を単層または複数層形成することが開示されている。
しかし、最近の高速加工およびドライ加工では、工具の刃先温度が900℃以上に達するため、TiAlN被膜では十分な工具寿命が得られないのが現状である。
また、下記特許文献1および下記特許文献2には、耐熱性向上のため、Siを適量含有したTiを主成分とする窒化物、炭窒化物、窒酸化物または炭窒酸化物と、TiおよびAlを主成分とする窒化物、炭窒化物、窒酸化物または炭窒化物の積層被膜とが、切削工具に適用されることが開示されている。TiSi系被膜は最表面にSiを含有する緻密な酸化保護膜が形成され、TiAl系被膜より耐熱性が優れる。
しかしながら、TiSi系被膜自身は脆性が高いため、切削時の衝撃で被膜全体が破壊または剥離することが問題であった。当該特許文献に記載の発明においては、基材と被膜の密着性を向上させるため、基材直上にはTiNやTiAlを主成分とする被膜を形成しているが、切削が進行するにつれ被膜が摩耗し、TiNやTiAlを主成分とする被膜が表面に露出すると、酸化の進行が速くなり、基材内部まで酸化して工具寿命に至り、問題であった。
さらに、下記特許文献3には、TiSiの窒化物を基材直上に配しているが、当該文献3に開示される成膜条件では膜中の圧縮応力が非常に高く、基材との圧力差による被膜の密着強度が極端に低下することが問題であった。
特許第3347687号公報 特許第3248897号公報 特許第3480086号公報 神戸製鋼技報Vo.41 No.3(1991)第10頁
本発明は上記従来の技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、基材直上に従来より密着性の高いTiSi系被膜を形成するとともに、被膜の積層を特定の構造とすることにより被覆膜に潤滑性機能を付与し、これにより、高速、ドライ加工時の工具刃先温度を低下させることができ、あわせて更なる長寿命が達成可能な表面被覆切削工具およびその製造方法を提供することにある。
本発明の1つの局面によれば、基材と、該基材の表面上に積層形成された被覆膜とを備える表面被覆切削工具であって、被覆膜は、基材直上に形成されるTiSi(ただし、0.1<b<0.3,a+b=1)の窒化物からなるA層と、該A層直上に形成されるAlTi(ただし、0.4<c<0.75、0<e<0.3、c+d+e=1)(該MはSi,Cr,V,Y,Zr,B,Zn,MoおよびMnからなる群より選択される元素の一種以上)の窒化物、炭窒化物、窒酸化物または炭窒化物からなるB層と、該B層直上に形成されるTiSi(ただし、0<g<0.3、f+g=1)の炭窒化物からなるC層とからなることを特徴とする表面被覆切削工具が提供される。
好ましくは、被覆は、その全体の膜厚が0.5μm以上10μm以下の範囲内である。
好ましくは、被覆は、A層の膜厚が0.05μm以上1.0μm以下の範囲内である。
好ましくは、被覆は、B層およびC層の膜厚がそれぞれ独立して0.05μm以上6μm以下の範囲内である。
好ましくは、基材が、WC基超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、窒化硅素焼結体、酸化アルミニウムおよび炭化チタンからなる群より選択されるいずれかの材料を1つ以上用いてなる基材である。
本発明の別の局面によれば、基材と、該基材の表面上に積層形成された被覆膜とを備える表面被覆切削工具の製造方法であって、基材直上に、TiSi(ただし、0.1<b<0.3,a+b=1)の窒化物からなるA層を形成する工程と、A層直上に、AlTi(ただし、0.4<c<0.75、0<e<0.3、c+d+e=1)(該MはSi,Cr,V,Y,Zr,B,Zn,MoおよびMnからなる群より選択される元素の一種以上)の窒化物、炭窒化物、窒酸化物または炭窒化物からなるB層を形成する工程と、B層直上に、TiSi(ただし、0<g<0.3、f+g=1)の炭窒化物からなるC層を形成する工程と、を包含する、表面被覆切削工具の製造方法が提供される。
好ましくは、A層を積層形成する工程は、物理的蒸着法を用いて行われ、その際、バイアス電圧15〜25Vの範囲内であり、窒素ガスの圧力が3〜6Paの範囲内であり、基材温度が450℃以上に設定される。
好ましくは、C層を形成する工程は、物理的蒸着法を用い、その際、バイアス電圧を200V以上に設定する。
本発明の表面被覆切削工具によれば、被覆膜に特定の構造を付与することにより、耐摩耗性、耐酸化性、耐熱性を向上することができ、もって切削工具の寿命を向上させることができる。
本発明について図4を用いて説明する。図4に示すように、本発明の表面被覆切削工具1は、基材2と、基材の表面上に積層形成された被覆膜とを備える。被覆膜は、基材直上に形成されるTiSi(ただし、0<b<0.3,a+b=1)の窒化物からなるA層12と、該A層12直上に形成されるAlTi(ただし、0.4<c<0.75、0<e<0.3、c+d+e=1)(MはSi,Cr,V,Y,Zr,B,Zn,MoおよびMnからなる群より選択される元素の一種以上)の窒化物、炭窒化物、窒酸化物または炭窒化物からなるB層と、当該B層直上に形成されるTiSi(ただし、0<g<0.3、f+g=1)の炭窒化物であるC層とからなることを特徴とする。
このように、本発明の表面被覆切削工具1は、基材2とTiSi(ただし、0<b<0.3,a+b=1)の窒化物からなるA層12との密着性を従来よりも強固にし、さらに、当該A層直上に、AlTi(ただし、0.4<c<0.75、0<e<0.3、c+d+e=1)(MはSi,Cr,V,Y,Zr,B,Zn,MoおよびMnからなる群より選択される元素の一種以上)の窒化物、炭窒化物、窒酸化物または炭窒化物からなるB層を形成し、当該B層直上にTiSi(ただし、0<g<0.3、f+g=1)の炭窒化物であるC層を形成することにより、被覆膜全体として優れた耐摩耗性、耐酸化性、耐熱性を達成でき、したがって、切削工具としての寿命を向上させることができるものである。
(被覆
本発明の表面被覆切削工具において、被覆中、TiSi(ただし、0<b<0.3,a+b=1)の窒化物からなるA層が基材直上に形成される。当該A層は、耐酸化性に優れており、被覆膜の摩耗が進行しても、基材の酸化を保護することができる。
本発明において、当該A層は従来の同一組成の膜に比べて基材との密着性を大幅に向上させていることに特徴を有する。すなわち、従来より、当該膜は一般にアークイオンプレーティング法などの物理的蒸着法により成膜しているが、TiSiNは圧縮残留応力が高く、基材との応力差が大きいため剥離しやすい。
本発明者らは、物理的蒸着法において、基材に印加するバイアス電圧を0〜30Vの範囲内に設定し、窒素ガスの圧力を3〜6Paの範囲内に設定し、基材温度を450℃以上に設定することにより、TiSiNの応力が低減され、よって基材との密着性が大幅に改善されることを見いだした。
上記の条件は当該分野において従来では想到し難い値であり、すなわち、本発明において、上記条件は従来に比して、バイアス電圧が非常に低く、窒素ガス圧力が非常に高く、基材温度も比較的高く設定されている。
すなわち、従来の技術常識では、成膜の際、本発明に規定するように、バイアス電圧を低く設定すると、被覆膜中の圧縮応力が低すぎ、被覆膜の強度が極端に低下するおそれがあり、窒素ガス圧を高くすると、真空ポンプの排気能力が不十分で炉内圧力が不安定になるおそれがあり、基材温度を高くすると、被覆膜中の圧縮応力が開放されて、膜強度が低下するおそれがあった。この点で、本発明において、このような条件に設定したことは、当業者が容易に想定できる技術的設計事項の範囲からかけはなれたものといえる。
より好ましくは、基材に印加するバイアス電圧は、15〜25Vの範囲内であり、窒素ガスの圧力は、4〜5Paの範囲内であり、基材温度は、500℃以上である。
本発明において、A層は、TiSi(ただし、0<b<0.3,a+b=1)の窒化物の組成を有する。A層中にTiSiの組成とすることで、高硬度かつ高耐熱性であるという優れた効果を得ることができる。また、これを窒化物とすることで、基材との密着性に優れた膜とすることができる。
本発明において、上記A層の組成:TiSi(ただし、0<b<0.3,a+b=1)において、0<b<0.3としている。Siが30原子%以上であると、すなわち、bが0.3を超えると、A層の靭性が低下するため好ましくない。より好ましくは、0.1<b<0.25である。ここで、a,bは、TiとSiとの原子の組成比を示す。
本発明において、A層の膜厚は、0.05μm以上1.0μm以下であることが好ましい。0.05μm未満であると、耐熱性の効果が低減され、また、1.0μmを超えると被膜自身の脆性が高いため切削時の衝撃で破壊してしまうおそれがある。より好ましくは、0.1μm以上0.3μm以下である。
本発明において、上記A層直上には、B層が形成される。当該B層について以下に説明する。
本発明において、B層は、AlTi(ただし、0.4<c<0.75、0<e<0.3、c+d+e=1)(MはSi,Cr,V,Y,Zr,B,Zn,MoおよびMnからなる群より選択される元素の一種以上)の窒化物、炭窒化物、窒酸化物または炭窒化物からなる。AlTiの組成を有することにより、耐摩耗性と靭性とをバランスよく達成することができる。また、当該B層には、金属元素Mとして、Si,Cr,V,Y,Zr,B,Zn,MoおよびMnからなる群より選択される元素の一種以上を含むことにより、さらに硬度が向上する。
本発明におけるB層中のMは、Si,Cr,V,Y,Zr,B,Zn,MoおよびMnの元素を用いることができるが、これらの元素は、AlTiの窒化物、炭窒化物において、固溶元素として働き、結晶をゆがませるという共通の特徴を有するので、いずれの元素を用いても、硬度を向上する効果を発揮することができる。特に、SiまたはCrは、耐熱性向上の観点から好ましい元素である。
本発明におけるB層において、AlTiは、0.4<c<0.75、0<e<0.3、c+d+e=1の組成比を有する。Alが40原子%以下であると、耐熱性が低下するおそれがあり、75原子%を超えると、すなわち、cが0.75を超えると、被覆膜の強度が低下するおそれがある。より好ましくは、0.45<c<0.65である。ここで、c,d,eは、上記原子の組成比を示す。
また、本発明にけるB層において、上記に規定したMは、組成比が30原子%を超えると、B層の靭性が低下するため好ましくない。より好ましくは、0.03<e<0.1である。
また、当該B層の膜厚は、0.05μm〜6μmの範囲内であることが好ましい。0.05μm未満であると、成膜時のガス種の切り替え、バイアス電圧の制御などの安定した成膜が難しいため、成膜が困難であり、また、6μmを超えると、被覆膜中の圧縮応力におより、被膜自身が自己破壊しやくすなり、強度が低下するため好ましくない。より好ましくは、2μm〜4μmの範囲内である。
次に、上記B層直上に形成されるC層について説明する。本発明におけるC層は、TiSi(ただし、0<g<0.3、f+g=1)の炭窒化物である。このような組成を有するC層は、TiSiの組成により優れた耐熱性および潤滑性を発揮し、また、炭窒化物とすることにより、当該被膜中に炭素が分散する構造となるため、窒化物に比べて摩擦係数が低く、潤滑性をさらに向上することができる。
本発明におけるC層において、Siが30原子%以上であると、被覆膜の強度が低下するおそれがあり問題である。より好ましくは、0.1<g<0.25である。
本発明におけるC層は、物理的蒸着法、具体的にはアークイオンプレーティング法を用いて成膜することができるが、従来ではバイアス電源を30〜100V程度としていたため、反応ガスであるメタンやアセチレンガスが十分分解されず、緻密なTiSiの炭窒化物が得られていないのが現状であった。このような膜は部分的に炭素が析出した構造となり、耐熱性および強度が低下してしまう。
本発明においては、当該C層の成膜条件として、バイアス電圧を200V以上という従来に比して非常に高い値に設定することで、耐熱性および潤滑性の両者において優れ、かつ緻密なTiSiの炭窒化物を成膜することが可能となった。このような高いバイアス電圧に設定することは、バイアス電圧を高くすると、成膜速度が著しく低下するおそれがあるという従来の技術常識から考えて、極めて画期的であるといえる。
上述のようにして、本発明による当該C層に優れた潤滑性および耐熱性を付与することにより、工具の刃先温度を低下させて、被覆膜全体としての酸化を防止することができ、あわせて、被削材が切れ刃に溶着することを抑制し、加工面の粗さも向上する。
また、当該C層の膜厚は、0.05μm〜6μmの範囲内であることが好ましい。0.05μm未満であると、成膜時のガス種の切り替え、バイアス電圧の制御などの安定した成膜が難しいため、成膜が困難であり、また、6μmを超えると、被覆膜中の圧縮応力により被膜自身が自己破壊しやすくなり強度が低下するため好ましくない。より好ましくは、1.0μm〜3.0μmの範囲内である。
本発明において、上記のようにA層とB層とC層とを基材上にこの順番で積層することにより、高速加工やドライ加工において工具の性能を向上させることができる。具体的には、A層のみ、B層のみまたはC層のみのような単層構造の場合は、切削時に発生する衝撃によって被覆膜全体が破壊したり、剥離したりすることがあり、極端に工具寿命が低下する問題があるが、上記のようにA,B,Cの3層の積層構造とすることにより、切削時の衝撃による被覆膜の破壊が、それぞれの層間、すなわち、B層とC層との間またはA層とB層との間で抑えられるので、被覆膜の破壊単位が小さくなるというメリットがある。また、B層とC層との格子定数の違いから、それぞれの結晶に歪みが発生し、硬度が上昇する効果も得ることができる。
本発明において、被覆膜の全体の膜厚は、0.5μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましい。0.5μm未満であると、耐摩耗性が低減するおそれがあり、10μmを超えると被覆膜の靭性が低下するおそれがある。より好ましくは、2.5μm以上6.0μm以下である。
本発明において、上述した各層の膜厚および被覆全体の膜厚の測定法としては、工具を切断し、その断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察して求めることができる。
本発明において、被覆の最上層は、C層である。当該C層は、紫色を呈するので、工具としての意匠性を良好にすることができ、商業上有用である。
本発明において、被覆膜を基材の表面に被覆するためには、結晶性の高い化合物を形成することができる成膜プロセスにより作製されることが不可欠である。そこで、種々の成膜方法を検討した結果、物理的蒸着法を用いることが好ましい。当該物理的蒸着法には、バランストおよびアンバランストマグネトロンスパッタリング法、イオンプレーティング法などがあるが、特に、原料元素のイオン率が高いカソードアークイオンプレーティングが一番適している。このカソードアークイオンプレーティングを用いると、被覆を形成する前に、基材表面に対して金属のイオンボンバードメント処理が可能となるため、基材と被覆との密着性が格段によくなるので、密着性という意味からも好ましいプロセスである。
(基材)
本発明における基材は、WC基超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、窒化硅素焼結体、酸化アルミニウムおよび炭化チタンからなる群より選択されるいずれかの材料を1つ以上用いてなる基材である。
特に、表面被覆切削工具は、ドリル、エンドミル、フライス加工用または旋削加工用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマまたはタップであることが好ましい。
本実施例により本発明の表面被覆切削工具についてより詳細に説明し、さらに、当該工具の耐摩耗性等の特性がいかに改善されるかを具体的に説明する。実施例において、被覆膜中の組成はXPS(X線光電子分光分析装置)を用いて測定し、被覆膜の硬度はナノインデンター(MTS社製Nano Indenter XP)により確認した。また、被覆膜における膜厚は、上述のとおり、SEMを用いて測定した。
なお、本実施例においては、工具の被覆膜の形成は、カソードアークイオンプレーティング法を用いて行なっているが、これ以外、例えばバランストまたはアンバランストスパッタリング法によっても成膜することは可能である。
<表面被覆切削工具の作製>
(1)基材の洗浄
基材として、グレードがJIS規格K10の超硬合金製エンドミル(φ10、6枚刃)、グレードがJIS規格K30の超硬合金製ドリル(φ8)、グレードがJIS規格P30の超硬合金フライス用スローアウェイチップ(形状:SDKN42)を用意し、これを図5に示すようなカソードアークイオンプレーティング装置に装着した。
図5および図6の装置において、チャンバ101内に、被覆膜を構成するA層、B層およびC層用のアーク式蒸発源106,107,111、および基材を設置するための回転式基材ホルダ104が取り付けられている。アーク式蒸発源106,107,111は、それぞれアーク電源108,109が取り付けられている。また、基材ホルダ104には、バイアス電源110が取り付けられている。また、チャンバ101内には、反応ガス105が投入される口が設けられ、また、チャンバ101内の圧力を調節するための口103から真空ポンプによりガスを吸引できる構造となっている。
図5の装置において、まず、真空ポンプによりチャンバ101内を減圧するとともに、基材を回転させながら装置内に設置されたヒーターにより温度を500℃に加熱し、チャンバ内の圧力が1.0×10−4Paとなるまで真空引きを行なった。次に、アルゴンガスを導入してチャンバ101内の圧力を3.0Paに保持し、基板バイアス電源110の電圧を徐々に上げながら、−1000Vとし、基材の表面のクリーニングを15分間行なった。その後、アルゴンガスを排気した。
(2)被覆膜の成膜
次いで、金属蒸発源であるターゲットとして、TiSi、AlTi(該MはSi,Cr,V,Y,Zr,B,Zn,MoおよびMnからなる群より選択される元素の一種以上)およびTiSiを106,107,111のいずれかに設置した。なお、当該Mは目的とする組成に応じて上記の中から適宜選択したものを用いた。なお、原子の組成比を示すa,b,c,d,e,f,gは、それぞれ表中に示している。
基材102を中央で回転させた状態で、反応ガスとして窒素ガスを導入させながら、基板温度500℃、反応ガス圧5Pa、基板バイアス電圧を−20Vに維持したまま、アーク式蒸発源であるTiSiターゲットから金属イオンを発生させA層を形成した。
次に、上記A層が形成された後、B層を成膜した。A層直上にB層を積層形成するために、チャンバ内の圧力が2.6PaになるようにNガスを導入し、基板温度500℃、基材バイアス電圧を−70Vに設定した。そして、AlTiMターゲットをアーク放電によりイオン化し、Nガスと反応させて(AlTiM)Nを積層した。
次いで、B層直上にC層を積層形成するために、チャンバ内の圧力を2.6PaになるようにNガスおよびCHガスを導入し、基板温度500℃、基材バイアス電圧を−200Vとした。TiSiターゲットをアーク放電によりイオン化し、NガスおよびCHガスと反応させてTiSiCN膜を成膜した。
このようにして、A層、B層およびC層を積層形成した。なお、成膜時間を制御することにより、A,B,C各層の膜厚を制御することができる。
このようにして形成した本発明に従う被覆膜について表1に示し、あわせて従来の切削工具については表2に示す。
下記表1および表2に示す表面被覆切削工具のそれぞれについて、次に示す試験を行い評価した。
<エンドミル切削試験>
エンドミル切削試験は、基材として6枚刃、外径10mmの超硬合金製エンドミルを用い、被削材はSKD61(HRC53)、側面切削をダウンカットで切削速度:200m/min、送り量:0.025mm/tooth、切り込み量:Ad=10mm、Rd=0.6mm、エアーブローで行った。工具の寿命は切れ刃外周の摩耗幅が0.1mmを超えた時点での切削距離とした。当該試験においては、距離が長いほうが寿命が長いことを示す。
<ドリル切削試験>
ドリル切削試験は、基材として外径8mmの超硬合金製ドリルを用い、被削材をS50Cとしてこれに穴加工を行い、切削速度:70m/min、送り量:0.25mm/rev、穴深さ:30mmの貫通穴、切削油なしの条件で行った。工具寿命は先端マージン部の摩耗幅が0.2mmを超えた時点での加工穴数とした。当該試験においては、穴数が多いほうが工具の寿命が長いことを示す。
<フライス切削試験>
フライス切削条件は、基材としてP30相当超硬合金製スローアウェイチップ(形状:SDKN42)のものを用い、直系160mmの正面フライスを行った。被削材をSCM435とし、切削速度:250mm/min、送り量:0.3mm/tooth、切り込み量:2mm、切削油なしの条件で行った。工具寿命は、逃げ面の摩耗幅が0.2mmを超えた時点での切削距離とした。当該試験において、距離が長いほうが工具の寿命が長いことを示す。
Figure 0004080481
Figure 0004080481
表1および表2の結果より、本発明に従う表面被覆切削工具は、従来の切削工具と比べて、工具寿命が著しく向上しており、高速加工およびドライ加工等の厳しい切削条件においても十分な性能を発揮することができる。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
従来の切削工具の刃先稜線部分の模式図である。 切削工具の摩耗の理想的な進行について示す模式図である。 従来の切削工具において生じるチッピングの例を示す模式図である。 本発明の表面被覆切削工具の刃先部分の模式図である。 アークイオンプレーティング法に用いる装置の例を示す概略断面図である。 図5の装置の概略上面図である。
符号の説明
1 工具、2 基材、3 被覆、4 工具すくい面、5 工具にげ面、6 すくい面の膜厚、7 逃げ面の膜厚、8 稜線部の膜厚、10 基材の露出部分、11 基材の酸化部分、12 A層、13 B層、14 C層、101 チャンバ、102 基材、103 口、104 回転式基材ホルダ、105 反応ガス、106,107,111 アーク式蒸発源、108,109 アーク電源、110 バイアス電源。

Claims (8)

  1. 基材と、該基材の表面上に積層形成された被覆膜とを備える表面被覆切削工具であって、
    前記被覆膜は、基材直上に形成されるTiSi(ただし、0.1<b<0.3,a+b=1)の窒化物からなるA層と、該A層直上に形成されるAlTi(ただし、0.4<c<0.75、0<e<0.3、c+d+e=1)(該MはSi,Cr,V,Y,Zr,B,Zn,MoおよびMnからなる群より選択される元素の一種以上)の窒化物、炭窒化物、窒酸化物または炭窒化物からなるB層と、該B層直上に形成されるTiSi(ただし、0<g<0.3、f+g=1)の炭窒化物からなるC層とからなることを特徴とする、表面被覆切削工具。
  2. 前記被覆は、その全体の膜厚が0.5μm以上10μm以下の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記被覆は、前記A層の膜厚が0.05μm以上1.0μm以下の範囲内であることを特徴とする、請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記被覆は、前記B層および前記C層の膜厚がそれぞれ独立して0.05μm以上6μm以下の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  5. 前記基材が、WC基超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、窒化硅素焼結体、酸化アルミニウムおよび炭化チタンからなる群より選択されるいずれかの材料を1つ以上用いてなる基材であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  6. 基材と、該基材の表面上に積層形成された被覆膜とを備える表面被覆切削工具の製造方法であって、
    基材直上に、TiSi(ただし、0.1<b<0.3,a+b=1)の窒化物からなるA層を形成する工程と、
    前記A層直上に、AlTi(ただし、0.4<c<0.75、0<e<0.3、c+d+e=1)(該MはSi,Cr,V,Y,Zr,B,Zn,MoおよびMnからなる群より選択される元素の一種以上)の窒化物、炭窒化物、窒酸化物または炭窒化物からなるB層を形成する工程と、
    前記B層直上に、TiSi(ただし、0<g<0.3、f+g=1)の炭窒化物からなるC層を形成する工程と、
    を包含する、表面被覆切削工具の製造方法。
  7. 前記A層を積層形成する工程は、物理的蒸着法を用いて行われ、その際、バイアス電圧15〜25Vの範囲内であり、窒素ガスの圧力が3〜6Paの範囲内であり、基材温度が450℃以上に設定されることを特徴とする、請求項6に記載の表面被覆切削工具の製造方法。
  8. 前記C層を形成する工程は、物理的蒸着法を用い、その際、バイアス電圧を200V以上に設定することを特徴とする、請求項6または7に記載の表面被覆切削工具の製造方法。
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