JP2010076082A - 表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】高速加工およびドライ加工でさらなる長寿命化を達成することができる表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】本発明の表面被覆切削工具は、基材と、当該基材上に形成された被覆膜とを備え、被覆膜は、Ti1-x-yCrxSiyN(ただし、0<x<0.3、0<y<0.3)からなるA層と、Ti1-zAlzN(ただし、0.3<z<0.7)からなるB層とがそれぞれ交互に積層されて構成されており、A層の厚みλaおよび前記B層の厚みλbはそれぞれ2nm以上1000nm以下であり、互いに接しているA層およびB層の厚みの比であるλa/λbの値は、基材に最も近い位置においては0.4<λa/λb<0.7であって、基材側から被覆膜の最表面側に進むにしたがって連続的および/または段階的に増加していき、被覆膜の最表面に最も近い位置においては1.5<λa/λb<3となることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の表面被覆切削工具は、基材と、当該基材上に形成された被覆膜とを備え、被覆膜は、Ti1-x-yCrxSiyN(ただし、0<x<0.3、0<y<0.3)からなるA層と、Ti1-zAlzN(ただし、0.3<z<0.7)からなるB層とがそれぞれ交互に積層されて構成されており、A層の厚みλaおよび前記B層の厚みλbはそれぞれ2nm以上1000nm以下であり、互いに接しているA層およびB層の厚みの比であるλa/λbの値は、基材に最も近い位置においては0.4<λa/λb<0.7であって、基材側から被覆膜の最表面側に進むにしたがって連続的および/または段階的に増加していき、被覆膜の最表面に最も近い位置においては1.5<λa/λb<3となることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、表面被覆切削工具に関し、特に、高速加工およびドライ加工でさらなる長寿命化を達成することができる表面被覆切削工具に関する。
最近の表面被覆切削工具の動向として、地球環境保全の観点から、切削油剤を用いないドライ加工が求められていること、被削材が多様化していること、および加工能率を一層向上させるため切削速度がより高速になってきていることなどの理由から、表面被覆切削工具の刃先温度はますます高温になる傾向にある。その結果、表面被覆切削工具の寿命が短くなるため、表面被覆切削工具を構成する材料に要求される特性は厳しくなる一方である。表面被覆切削工具の長寿命化のために表面被覆切削工具を構成する材料に要求される特性としては、基材上に形成される被覆膜の安定性(被覆膜の耐酸化特性や密着性)は勿論のこと、被覆膜の耐摩耗性や潤滑性も重要となってくる。
表面被覆切削工具の耐摩耗性の改善のため、WC基超硬合金、サーメット、高速度鋼などの基材上に、TiAlNを単層または複数層積層して、被覆膜を形成することはよく知られている。しかしながら、最近の高速加工およびドライ加工においては、TiAlNのみからなる被覆膜では長寿命の表面被覆切削工具を得ることができないのが現状である。
このような問題を解決するため、特許文献1には、TiAlNまたはTiAlCNからなる層とCrNからなる層とを交互に積層することによって、耐摩耗性と靭性を両立させた表面被覆切削工具が開示されている。しかしながら、CrNからなる層は靭性改善に効果はあるものの低硬度であるため、耐摩耗性が低下し、高速加工およびドライ加工における長寿命化を達成することができないという問題があった。
また、特許文献2には、被覆膜が周期律表のIVA族元素、VA族元素、VIA族元素、AlおよびSiからなる群から選択された少なくとも1種の元素の窒化物からなるA層と、Crの窒化物からなるB層とが交互に積層されて構成されており、被覆膜の最表面側に進むにしたがって連続的および/または段階的にB層の厚みを厚くすることで高速加工およびドライ加工で長寿命化を達成した表面被覆切削工具が開示されている。しかしながら、この構成においても、高速加工およびドライ加工における表面被覆切削工具のさらなる長寿命化には限界があった。
さらに、特許文献3には、CrMeN(MeはV、Si、TiおよびBから選択される少なくとも1種以上でCrの一部を30原子%未満置換したもの)からなる層と、TiAlNからなる層とを積層している。しかしながら、CrMeNからなる層にはCrが70原子%以上含まれており、十分な硬度が得られないため、耐摩耗性が低下し、高速加工およびドライ加工における長寿命化には限界があった。
特開2002−275618号公報
特開2007−111815号公報
特許第3404003号公報
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、高速加工およびドライ加工でさらなる長寿命化を達成することができる表面被覆切削工具を提供することにある。
本発明は、基材と、基材上に形成された被覆膜とを備え、被覆膜は、Ti1-x-yCrxSiyN(ただし、0<x<0.3、0<y<0.3)からなるA層と、Ti1-zAlzN(ただし、0.3<z<0.7)からなるB層とがそれぞれ交互に積層されて構成されており、A層の厚みλaおよびB層の厚みλbはそれぞれ2nm以上1000nm以下であり、互いに接しているA層およびB層の厚みの比であるλa/λbの値は、基材に最も近い位置においては0.4<λa/λb<0.7であって、基材側から被覆膜の最表面側に進むにしたがって連続的および/または段階的に増加していき、被覆膜の最表面に最も近い位置においては1.5<λa/λb<3となる表面被覆切削工具である。
ここで、本発明の表面被覆切削工具は、基材と被覆膜との間に中間層を有しており、中間層は、Ti、Cr、TiNまたはCrNからなり、中間層の厚みは、0.1μm以上1μm以下であることが好ましい。
また、本発明の表面被覆切削工具は、被覆膜の最表面上に表面保護層を有しており、表面保護層は、TiCrSiCNからなり、表面保護層の厚みは、0.1μm以上2μm以下であることが好ましい。
また、本発明の表面被覆切削工具において、被覆膜の全体の厚みは、0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。
また、本発明の表面被覆切削工具において、被覆膜は、物理蒸着法により形成されたものであることが好ましい。
また、本発明の表面被覆切削工具において、基材は、WC基超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、窒化硼素焼結体、または酸化アルミニウムと炭化チタンとからなる基材のいずれかであることが好ましい。
本発明によれば、高速加工およびドライ加工でさらなる長寿命化を達成することができる表面被覆切削工具を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
図1に、本発明の表面被覆切削工具の一例の模式的な拡大断面図を示す。ここで、本発明の表面被覆切削工具は、基材1と基材1上に形成された被覆膜2とを備え、被覆膜2は、Ti1-x-yCrxSiyN(ただし、0<x<0.3、0<y<0.3)からなるA層3と、Ti1-zAlzN(ただし、0.3<z<0.7)からなるB層4とがそれぞれ交互に積層されて構成されている。そして、A層3の厚みλaおよびB層4の厚みλbはそれぞれ2nm以上1000nm以下であって、互いに接しているA層3とB層4との厚みの比であるλa/λbの値が、基材1に最も近い位置においては0.4<λa/λb<0.7であり、基材1側から被覆膜2の最表面側に進むにしたがって連続的および/または段階的に増加していき、被覆膜2の最表面に最も近い位置においては1.5<λa/λb<3となっている。なお、A層3およびB層4はそれぞれ2層以上形成される。
A層3は、Ti1-x-yCrxSiyN(ただし、0<x<0.3、0<y<0.3)からなることを特徴とする。ここで、A層3を構成するTi1-x-yCrxSiyNのCrの組成比を示すxを0.3未満とすることによって、A層3の硬度低下を抑えることができるとともに、A層3の耐摩耗性を向上させることができるため、高速加工およびドライ加工でさらなる長寿命化を達成することが可能な表面被覆切削工具を得ることができる。また、Siの組成比を示すyを0.3未満とすることによって、A層3の硬度をさらに高めることができるとともに、A層3の耐摩耗性を向上させることができるため、高速加工およびドライ加工でさらなる長寿命化を達成することが可能な表面被覆切削工具を得ることができる。
なお、CrNは鋼系材料との摩擦係数が低いため、被削材の加工品位の向上、ならびに高速加工時およびドライ加工時の刃先温度の上昇を抑えることができる。さらに、CrNは、TiNおよびSiNと比較して酸化開始温度が低い。それゆえ、A層3をTiNとCrNとSiNとを組み合わせたTi1-x-yCrxSiyN(ただし、0<x<0.3、0<y<0.3)から形成することによって、高速加工時の発熱による酸化摩耗の低減にも効果的であり、本発明の表面被覆切削工具の高速加工およびドライ加工における長寿命化をさらに向上させることができる傾向が大きくなる。
さらに、A層3を構成するTi1-x-yCrxSiyNのCrの組成比xを、0.05≦x≦0.25の範囲内の値とした場合には、A層3の硬度と潤滑性とのバランスをさらに向上させることができ、本発明の表面被覆切削工具の高速加工およびドライ加工における長寿命化を大幅に向上させることができる傾向が大きくなる点で好ましい。また、A層3を構成するTi1-x-yCrxSiyNのSiの組成比yを、0.05≦y≦0.25の範囲内の値とした場合には、A層3の硬度をさらに向上させることができる点で好ましい。
なお、A層3を構成するTi1-x-yCrxSiyNのCrの組成比xは、A層3におけるTi(チタン)とCr(クロム)とSi(ケイ素)との総原子数に対するCrの原子数の比を意味し、Siの組成比yは、A層3におけるTi(チタン)とCr(クロム)とSi(ケイ素)との総原子数に対するSiの原子数の比を意味する。
また、B層4は、Ti1-zAlzN(ただし、0.3<z<0.7)からなることを特徴とする。ここで、B層4を構成するTi1-zAlzNのAlの組成比を示すzを0.3<z<0.7の範囲内の値とすることによって、B層4を耐摩耗性と靭性とのバランスに優れた膜とすることができるため、高速加工およびドライ加工でさらなる長寿命化を達成することが可能な表面被覆切削工具を得ることができる。
また、B層4を構成するTi1-zAlzNのAlの組成比zを、0.4≦z≦0.65の範囲内の値とした場合には、B層4の耐摩耗性と靭性とのバランスをさらに向上させることができ、本発明の表面被覆切削工具の高速加工およびドライ加工における長寿命化を大幅に向上させることができる傾向が大きくなる点で好ましい。
なお、B層4を構成するTi1-zAlzNのAlの組成比zは、B層4におけるTi(チタン)とAl(アルミニウム)の総原子数に対するAlの原子数の比を意味する。
上述したように、B層4はTi1-zAlzNから構成されるため、耐摩耗性と靭性に優れるが、基材1上に形成される被覆膜2を耐摩耗性と靭性に優れるB層4のみから形成した場合には、本発明の表面被覆切削工具の高速加工およびドライ加工における長寿命化に限界があった。
本発明者は、硬度と潤滑性に優れるTi1-x-yCrxSiyN(ただし、0<x<0.3、0<y<0.3)からなるA層3と、耐摩耗性と靭性に優れるTi1-zAlzN(ただし、0.3<z<0.7)からなるB層4とをそれぞれ交互に積層してこれらの膜の特性を組み合わせることによって、耐摩耗性、靭性、硬度および潤滑性のすべてを兼ね備えた被覆膜2の形成を試みたが、単純に積層しただけでは十分な耐摩耗性が得られず、本発明の表面被覆切削工具の高速加工およびドライ加工における長寿命化を図ることができなかった。
本発明者が様々な検討をした結果、本発明の表面被覆切削工具の上記のA層3とB層4とから構成される被覆膜2中のAlの含有量が少ないほど、切り屑が擦過するすくい面側の摩耗を抑えることができることを見い出した。これは、Alの含有量が少ない材料ほど熱伝導率が高い膜となりやすいため、切削時に発生する熱が基材1側に伝わり、被覆膜2の表面の酸化摩耗が低減されるためと考えられる。しかしながら、被覆膜2中のAlの含有量を少なくすると、被覆膜2の靭性が低下する。
そこで、本発明者が鋭意検討した結果、被覆膜2を構成するA層3とB層4の厚みをそれぞれ変えてAlの含有量を制御することによって、耐摩耗性、靭性、硬度および潤滑性のすべてを兼ね備えた被覆膜2を得ることができる。
すなわち、被覆膜2を構成するA層3の厚みλaおよびB層4の厚みλbをそれぞれ2nm以上1000nm以下の範囲内の厚みとし、互いに接しているA層3とB層4との厚みの比であるλa/λbの値を基材1に最も近い位置においては0.4<λa/λb<0.7の範囲内の値とし、基材1側から被覆膜2の最表面側に進むにしたがって連続的および/または段階的に増加させ、被覆膜2の最表面に最も近い位置においては1.5<λa/λb<3の範囲内の値とすることによって、耐摩耗性、靭性、硬度および潤滑性のすべてを兼ね備えた被覆膜2を得ることができる。このような構成の被覆膜2を基材1上に備えることによって、高速加工およびドライ加工でさらなる長寿命化を達成することができる表面被覆切削工具を得ることができる。
ここで、本発明の表面被覆切削工具の被覆膜2を構成するA層3の厚み(A層3の1層当たりの厚み)λaおよびB層4の厚み(B層4の1層当たりの厚み)λbはそれぞれ2nm以上1000nm以下の範囲内の厚みとされる。A層3の1層当たりの厚みλaおよびB層4の1層当たりの厚みλbがそれぞれ2nm未満である場合には、A層3およびB層4の形成がそれぞれ困難となる傾向にある。また、A層3の1層当たりの厚みλaおよびB層4の1層当たりの厚みλbがそれぞれ1000nmを超える場合には、A層3およびB層4のそれぞれの層の1層当たりの厚みが大きくなりすぎてA層3とB層4とを組み合わせた効果が少なくなる。
また、本発明の表面被覆切削工具の被覆膜2の基材1側においては、耐摩耗性と靭性に優れたB層4の厚みをA層3の厚みよりも厚くされる。これは、被覆膜2の基材1側では耐摩耗性と靭性に優れたB層4の厚みを厚くすることによって、耐欠損性の向上などの高速加工時およびドライ加工時における長寿命化に関する効果を向上させるためである。より具体的には、互いに接しているA層3の厚みλaとB層4の厚みλbとの厚みの比であるλa/λbの値は、基材1に最も近い位置においては0.4<λa/λb<0.7の範囲内の値とされていればよく、本発明の表面被覆切削工具の長寿命化を図る観点からは、0.5≦λa/λb≦0.6の範囲内の値とされることが好ましい。
一方、本発明の表面被覆切削工具の被覆膜2の最表面側においては、硬度と潤滑性に優れたA層3の厚みがB層4の厚みよりも厚くされる。これは、被覆膜2の最表面側では硬度と潤滑性に優れたA層3の厚みを厚くすることによって、A層3の潤滑性に起因する刃先温度の低下や、Alの含有量の低下に起因する被覆膜2のすくい面側の酸化摩耗の低減などの高速加工時およびドライ加工時における長寿命化に関する効果を向上させるためである。さらに、被覆膜2の最表面側においてA層3の厚みを厚くすることによって、被削材の加工品位を向上させることも可能である。ここで、被覆膜2の最表面側におけるA層3の厚みおよびB層4の厚みについて、より具体的に説明すると、互いに接しているA層3の厚みλaとB層4の厚みλbとの厚みの比であるλa/λbの値は、被覆膜2の最表面側においては1.5<λa/λb<3.0の範囲内の値とされていればよく、本発明の表面被覆切削工具の長寿命化を図る観点からは、2.0≦λa/λb≦2.5の範囲内の値とされることが好ましい。
なお、本発明において、「連続的に増加」とは、たとえば図2に示すように、基材から被覆膜の最表面にかけて進むにしたがってλa/λbの値が直線状に増加する場合が挙げられるが、直線状に増加する場合に限定されず、指数関数状に増加する場合も含まれる。また、本発明において、「段階的に増加」とは、たとえば図3に示すように、基材から被覆膜の最表面にかけて進むにしたがってλa/λbの値が階段状に増加する場合が挙げられるが、図3に示す形態には限定されない。また、本発明においては、基材から被覆膜の最表面にかけて、λa/λbの値が連続的に増加する箇所と段階的に増加する箇所とが入り混じっていてもよい。
また、本発明において、被覆膜2の全体の厚みは0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。被覆膜2の全体の厚みが0.5μm未満である場合には被覆膜2の耐摩耗性が低下するおそれがある。また、被覆膜2の全体の厚みが20μmを超える場合には、被覆膜2中に残存する圧縮応力に耐え切れずに、被覆膜2が自己破壊するおそれがある。なお、被覆膜2の耐摩耗性の低下および自己破壊を有効に防止する観点からは、被覆膜2の全体の厚みは2μm以上15μm以下であることが好ましい。
また、基材1としては、WC基超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、窒化硼素焼結体、または酸化アルミニウムと炭化チタンとからなる基材のいずれかを用いることが好ましい。
また、基材1と被覆膜2の密着性を向上する観点からは、基材1と被覆膜2との間に、TiN、CrN、TiまたはCrからなる中間層を設けることが望ましい。このような中間層は、上記の基材1と被覆膜2のそれぞれに対して密着性に優れているため、基材1と被覆膜2との密着性が向上する傾向にある。
また、中間層の厚みは0.1μm以上1μm以下であることが好ましい。中間層の厚みが0.1μm未満である場合には中間層が薄すぎて基材1と被覆膜2との密着性を向上することができないおそれがあり、中間層の厚みが1μmを超えた場合には基材1と被覆膜2との密着性のさらなる向上が見られない傾向にある。
また、被覆膜2の最表面上には、TiCrSiCNからなる表面保護層を設けることも望ましい。TiCrSiCNからなる表面保護層を被覆膜2の最表面上に設けた場合には、表面保護層中のカーボンによって潤滑性を発現させるため、切削時の刃先温度の低下および加工品位の向上がさらに促進する傾向にある。なお、表面保護層を構成するTiCrSiCNにおけるTi(チタン)、Cr(クロム)、Si(シリコン)、C(炭素)およびN(窒素)の組成比は特に限定されるものではない。
また、表面保護層の厚みは0.1μm以上2μm以下であることが好ましい。表面保護層の厚みが0.1μm未満である場合には表面保護層の厚みが薄すぎて、切削開始後すぐに表面保護層が摩耗してなくなってしまうおそれがあり、2μmを超える場合には表面保護層が厚すぎて、被覆膜2から表面保護層が剥離しやすくなる。
なお、本発明において、A層3、B層4、被覆膜2、中間層および表面保護層などの厚みはそれぞれ、透過型電子顕微鏡観察により測定することが可能である。
また、結晶性の高い化合物を形成することができる成膜プロセスを用いて基材1上に被覆膜2を形成することが好ましい。そこで、種々の成膜プロセスを検討した結果、物理蒸着法を用いて被覆膜2を形成することが好ましいことが判明した。物理蒸着法としては、たとえば、スパッタリング法またはイオンプレーティング法などが挙げられるが、特に、原料となる元素のイオン化率が高いカソードアークイオンプレーティング法が最も好ましい。基材1の表面上に直接被覆膜2を形成するための成膜プロセスとしてカソードアークイオンプレーティング法を用いた場合には、被覆膜2の形成前に基材1の表面に対して金属イオンおよび/またはガスイオンによるイオンボンバードメント処理が可能となるため、基材1と被覆膜2の密着性が格段に向上する傾向にある。
以下に、本発明において、基材1上に被覆膜2を形成する方法の一例について説明する。この例は、カソードアークイオンプレーティング法により被覆膜2を形成する方法の一例である。
まず、図4にその概略を示したカソードアークイオンプレーティング装置10を用意する。
ここで、カソードアークイオンプレーティング装置10は、第1アーク蒸発源13、第2アーク蒸発源14および第3アーク蒸発源15という3つのアーク蒸発源とともに、回転テーブル11、ヒータ12およびガス導入口16を有している。
まず、回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTiCrSiターゲットを、第2アーク蒸発源14としてTiAlターゲットをセットした。
次に、カソードアークイオンプレーティング装置10内を真空引きした後にアルゴンをガス導入口16から導入し、アルゴン中でグロー放電を発生させることによってアルゴンイオンを生成する。そして、当該アルゴンイオンによって、基材1の表面をスパッタクリーンニング(ボンバード)する。
その後、カソードアークイオンプレーティング装置10からアルゴンを排気した後に回転テーブル11を回転させ、第1アーク蒸発源13としてのTiCrSiターゲットおよび第2アーク蒸発源14としてのTiAlターゲットをそれぞれイオン化させる。それと同時に、反応ガスとなる窒素をガス導入口16からカソードアークイオンプレーティング装置10内に導入し、基材1上にA層3およびB層4を交互に積層して被覆膜2を形成する。
ここで、基材1が第1アーク蒸発源13の前を通るときにはA層3が積層され、第2アーク蒸発源14の前を通るときにはB層4が積層されるため、基材1上にA層3とB層4とを交互に積層することができる。
また、基材1上への被覆膜2の形成開始直後においては、第1アーク蒸発源13のアーク電流をたとえば70Aとし、第2アーク蒸発源14のアーク電流をたとえば150Aとして、第1アーク蒸発源13のアーク電流を第2アーク蒸発源14のアーク電流よりも小さくすることによって、基材1に最も近い位置において互いに接しているA層3の厚みλaとB層4の厚みλbとの厚みの比であるλa/λbの値を0.4<λa/λb<0.7の範囲内の値とすることができる。
その後は、連続的または段階的に、第1アーク蒸発源13のアーク電流を大きく、第2アーク蒸発源14のアーク電流を小さくしながら、A層3およびB層4を交互に積層していく。
そして、被覆膜2の最表面に最も近い位置においては、第1アーク蒸発源13のアーク電流を第2アーク蒸発源14のアーク電流よりも大きくすることによって、被覆膜2の最表面に最も近い位置で互いに接しているA層3の厚みλaとB層4の厚みλbとの厚みの比であるλa/λbの値を1.5<λa/λb<3の範囲内の値とすることができる。
ここで、上記で例示した基材1上に被覆膜2を形成する方法の一例において、A層3およびB層4のそれぞれの1層当たりの厚みは、2nm以上1000nm以下の範囲内の厚みであるため、回転テーブル11の回転数、第1アーク蒸発源13のアーク電流および第2アーク蒸発源14のアーク電流などを制御することにより、A層3の1層当たりの厚みλaおよびB層4の1層当たりの厚みλbのそれぞれの厚みを制御することが可能である。
また、上記の図1に示す構成の表面被覆切削工具においては、基材1上にまずB層4を形成した後にA層3を形成し、その後、B層4とA層3とを交互に積層していき、最後にA層3を形成することによって被覆膜2を形成しているが、この構成に限定されないことは言うまでもない。
たとえば、図5の模式的拡大断面図に示す構成の表面被覆切削工具のように、基材1上にまずA層3を形成した後にB層4を形成し、その後、A層3とB層4とを交互に積層していき、最後にB層4を形成することによって被覆膜2を形成してもよい。
また、たとえば、図6の模式的拡大断面図に示す構成の表面被覆切削工具のように、基材1上にまずB層4を形成した後にA層3を形成し、その後、B層4とA層3とを交互に積層していき、最後にB層4を形成することによって被覆膜2を形成してもよい。
また、たとえば、図7の模式的拡大断面図に示す構成の表面被覆切削工具のように、基材1上にまずA層3を形成した後にB層4を形成し、その後、A層3とB層4とを交互に積層していき、最後にA層3を形成することによって被覆膜2を形成してもよい。
以下のようにして、実施例1〜実施例16および比較例1〜比較例8のそれぞれの表面被覆切削工具について作製し、それぞれ表面被覆切削工具の寿命について評価した。
また、実施例1〜実施例16および比較例1〜比較例8のそれぞれの表面被覆切削工具の中間層の構成を表1に示し、被覆膜の構成を表2に示し、表面保護層の構成を表3に示す。また、それぞれの表面被覆切削工具の寿命についての評価結果を表4に示す。
なお、表2の「組成」の欄は、実施例1〜実施例16および比較例1〜比較例8のそれぞれの表面被覆切削工具の被覆膜を構成するA層とB層の材料組成を示している。
また、表2の「基材側に最も近い位置」の欄は、実施例1〜実施例16および比較例1〜比較例8のそれぞれの表面被覆切削工具の被覆膜を構成するA層およびB層のうち、基材に最も近い位置において互いに接しているA層の厚みλa、B層の厚みλbおよびその比λa/λbを示している。
また、表2の「最表面側に最も近い位置」の欄は、実施例1〜実施例16および比較例1〜比較例8のそれぞれの表面被覆切削工具の被覆膜を構成するA層およびB層のうち、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接しているA層の厚みλa、B層の厚みλbおよびその比λa/λbを示している。
また、表2の「λa/λbの増加」の欄は、実施例1〜実施例16および比較例1〜比較例8のそれぞれの表面被覆切削工具の被覆膜を構成して互いに接しているA層の厚みλaとB層の厚みλbとの比λa/λbの値が基材側から最表面に向かってどのように増加しているかということを示している。
(実施例1)
図4に示すカソードアークイオンプレーティング装置10の回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.7Cr0.2Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としてTiターゲットをセットした。
図4に示すカソードアークイオンプレーティング装置10の回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.7Cr0.2Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としてTiターゲットをセットした。
まず、カソードアークイオンプレーティング装置10内を真空引きした後にアルゴンをガス導入口16から導入し、その真空度を3Paに維持しながら基材1を450℃まで加熱した。
次に、基材1にバイアス電圧を徐々に印加しながらバイアス電圧を−1000Vまで上げてアルゴン中でグロー放電を発生させることにより、アルゴンイオンによる基材1の表面のクリーニング処理を15分間行なった。そして、上記クリーニング処理後にカソードアークイオンプレーティング装置10からアルゴンを排気した。これにより、基材1の表面がスパッタクリーンニングされた。
次に、窒素をガス導入口16からカソードアークイオンプレーティング装置10内に導入した後、基材1に−50Vのバイアス電圧を印加した状態で、回転テーブル11を3rpmの回転速度で回転させ、第3アーク蒸発源15にアーク電流を流してアーク放電によりイオン化させ、基材1上に0.3μmの厚みのTiNからなる中間層を形成した。
次に、第1アーク蒸発源13および第2アーク蒸発源14にそれぞれアーク電流を流してアーク放電によりイオン化させ、基材1上にTi0.7Cr0.2Si0.1NからなるA層とTi0.5Al0.5NからなるB層とを交互に積層して被覆膜を形成した。
ここで、基材1が第1アーク蒸発源13の前を通るときにはA層が積層され、第2アーク蒸発源14の前を通るときにはB層が積層された。被覆膜の形成開始直後は、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流を70A、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流を150Aとして、基材1に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.5を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については連続的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については連続的に減少させることによって、λa/λbの値を連続的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流を150A、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流を70Aとして、λa/λb=2を満たすA層およびB層を形成した。
なお、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは6.5μmであった。
そして、被覆膜を形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10から窒素を一旦排気した後に、カソードアークイオンプレーティング装置10内に窒素とメタンの混合ガスを導入し、基材1に−50Vのバイアス電圧を印加した状態で、第1アーク蒸発源13にアーク電流を流してアーク放電によりイオン化させ、基材1上に0.8μmの厚みのTi0.7Cr0.2Si0.1CNからなる表面保護層を形成した。
また、基材として、6枚刃で外径10mmの超硬合金製エンドミル、外径8mmの超硬合金製ドリルおよびP20相当超硬合金製旋削用スローアウェイチップ(形状:CNMG120408N−GU)をそれぞれ用いて、それぞれの基材上に上記の被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。
そして、上記のようにして作製したエンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップのそれぞれについて、以下の切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
(i)エンドミル切削試験
被削材としてSKD11(HRC61)を用い、被削材の側面切削をダウンカットで、切削速度が200m/min、送り量が0.025mm/刃、切り込み量ap=10mm、切り込み量ae=0.6mmの条件で、エアブローをしながら切削を行なった。そして、切削長50m時点での切れ刃外周の摩耗幅(mm)を表面被覆切削工具の寿命として評価した。
被削材としてSKD11(HRC61)を用い、被削材の側面切削をダウンカットで、切削速度が200m/min、送り量が0.025mm/刃、切り込み量ap=10mm、切り込み量ae=0.6mmの条件で、エアブローをしながら切削を行なった。そして、切削長50m時点での切れ刃外周の摩耗幅(mm)を表面被覆切削工具の寿命として評価した。
(ii)ドリル切削試験
被削材としてS50Cを用い、被削材の穴加工を、切削速度が80m/min、送り量が0.25mm/rev、切削油なしの条件で、穴深さが30mmの貫通穴を形成することにより行なった。そして、切削長30m時点での先端マージン部の摩耗幅(mm)を表面被覆切削工具の寿命として評価した。
被削材としてS50Cを用い、被削材の穴加工を、切削速度が80m/min、送り量が0.25mm/rev、切削油なしの条件で、穴深さが30mmの貫通穴を形成することにより行なった。そして、切削長30m時点での先端マージン部の摩耗幅(mm)を表面被覆切削工具の寿命として評価した。
(iii)旋削用スローアウェイチップ切削試験
被削材としてSCM435(直径350mm)を用い、切削速度が300m/min、送り量が0.25mm/rev、切り込み量が1.5mm、水溶性切削油の条件で行なった。そして、切削時間15分時点での表面被覆切削工具の逃げ面の摩耗幅(mm)を表面被覆切削工具の寿命として評価した。
被削材としてSCM435(直径350mm)を用い、切削速度が300m/min、送り量が0.25mm/rev、切り込み量が1.5mm、水溶性切削油の条件で行なった。そして、切削時間15分時点での表面被覆切削工具の逃げ面の摩耗幅(mm)を表面被覆切削工具の寿命として評価した。
(実施例2)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.6Cr0.2Si0.2ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.45Al0.55ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としてCrターゲットをセットした。その後は、実施例1と同様にして、基材上に厚さ0.5μmのCrNからなる中間層を形成した後に、Ti0.6Cr0.2Si0.2NからなるA層とTi0.45Al0.55NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、さらにTi0.6Cr0.2Si0.2CNからなる表面保護層を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.6Cr0.2Si0.2ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.45Al0.55ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としてCrターゲットをセットした。その後は、実施例1と同様にして、基材上に厚さ0.5μmのCrNからなる中間層を形成した後に、Ti0.6Cr0.2Si0.2NからなるA層とTi0.45Al0.55NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、さらにTi0.6Cr0.2Si0.2CNからなる表面保護層を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
また、実施例2においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.57を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については連続的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については連続的に減少させることによって、λa/λbの値を連続的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.33を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは3.5μmであった。
そして、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10から窒素を一旦排気した後に、カソードアークイオンプレーティング装置10内に窒素とメタンの混合ガスを導入し、基材1に−50Vのバイアス電圧を印加した状態で、第1アーク蒸発源13にアーク電流を流してアーク放電によりイオン化させ、基材1上に1.2μmの厚みのTi0.6Cr0.2Si0.2CNからなる表面保護層を形成した。
(実施例3)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.85Cr0.05Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.4Al0.6ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としてTiターゲットをセットした。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.85Cr0.05Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.4Al0.6ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としてTiターゲットをセットした。
その後は、中間層の形成時に窒素を導入しなかったこと以外は実施例1と同様にして、基材上に厚さ0.2μmのTiからなる中間層を形成した後に、Ti0.85Cr0.05Si0.1NからなるA層とTi0.4Al0.6NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、さらにTi0.85Cr0.05Si0.1CNからなる表面保護層を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
また、実施例3においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.51を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については段階的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については段階的に減少させることによって、λa/λbの値を段階的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.39を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは14.8μmであった。
そして、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10から窒素を一旦排気した後に、カソードアークイオンプレーティング装置10内に窒素とメタンの混合ガスを導入し、基材1に−50Vのバイアス電圧を印加した状態で、第1アーク蒸発源13にアーク電流を流してアーク放電によりイオン化させ、基材1上に0.2μmの厚みのTi0.85Cr0.05Si0.1CNからなる表面保護層を形成した。
(実施例4)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.7Cr0.05Si0.25ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としてCrターゲットをセットした。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.7Cr0.05Si0.25ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としてCrターゲットをセットした。
その後は、中間層の形成時に窒素を導入しなかったこと以外は実施例1と同様にして、基材上に厚さ0.9μmのCrからなる中間層を形成した後に、Ti0.7Cr0.05Si0.25NからなるA層とTi0.5Al0.5NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、さらにTi0.7Cr0.05Si0.25CNからなる表面保護層を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、実施例4においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.59を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については段階的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については段階的に減少させることによって、λa/λbの値を段階的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.09を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは4.6μmであった。
そして、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10から窒素を一旦排気した後に、カソードアークイオンプレーティング装置10内に窒素とメタンの混合ガスを導入し、基材1に−50Vのバイアス電圧を印加した状態で、第1アーク蒸発源13にアーク電流を流してアーク放電によりイオン化させ、基材1上に1.8μmの厚みのTi0.7Cr0.05Si0.25CNからなる表面保護層を形成した。
(実施例5)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.9Cr0.05Si0.05ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.35Al0.65ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としてTiターゲットをセットした。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.9Cr0.05Si0.05ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.35Al0.65ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としてTiターゲットをセットした。
その後は、実施例1と同様にして、基材上に厚さ0.3μmのTiNからなる中間層を形成した後に、Ti0.9Cr0.05Si0.05NからなるA層とTi0.35Al0.65NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、さらにTi0.9Cr0.05Si0.05CNからなる表面保護層を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、実施例5においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.50を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については連続的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については連続的に減少させることによって、λa/λbの値を連続的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.00を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは2.2μmであった。
そして、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10から窒素を一旦排気した後に、カソードアークイオンプレーティング装置10内に窒素とメタンの混合ガスを導入し、基材1に−50Vのバイアス電圧を印加した状態で、第1アーク蒸発源13にアーク電流を流してアーク放電によりイオン化させ、基材1上に0.5μmの厚みのTi0.9Cr0.05Si0.05CNからなる表面保護層を形成した。
(実施例6)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.7Cr0.25Si0.05ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.55Al0.45ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としてCrターゲットをセットした。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.7Cr0.25Si0.05ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.55Al0.45ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としてCrターゲットをセットした。
その後、被覆膜上に表面保護層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、基材上に厚さ0.6μmのCrNからなる中間層を形成した後に、Ti0.7Cr0.25Si0.05NからなるA層とTi0.55Al0.45NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、実施例6においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.50を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については連続的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については連続的に減少させることによって、λa/λbの値を連続的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.40を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは4.2μmであった。
(実施例7)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.8Cr0.1Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としてTiターゲットをセットした。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.8Cr0.1Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としてTiターゲットをセットした。
その後は、中間層の形成時に窒素を導入しなかったことおよび被覆膜上に表面保護層を形成しなかったこと以外実施例1と同様にして、基材上に厚さ0.2μmのTiからなる中間層を形成した後に、Ti0.8Cr0.1Si0.1NからなるA層とTi0.5Al0.5NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、実施例7においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.60を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については連続的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については連続的に減少させることによって、λa/λbの値を連続的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.00を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは8.0μmであった。
(実施例8)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.85Cr0.05Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.4Al0.6ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.85Cr0.05Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.4Al0.6ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
その後は、中間層を形成せずに被覆膜を基材上に直接形成したこと以外は実施例1と同様にして、基材上に、Ti0.85Cr0.05Si0.1NからなるA層とTi0.4Al0.6NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、さらにTi0.85Cr0.05Si0.1CNからなる表面保護層を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、実施例8においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.51を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については連続的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については連続的に減少させることによって、λa/λbの値を連続的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.11を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは12.5μmであった。
そして、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10から窒素を一旦排気した後に、カソードアークイオンプレーティング装置10内に窒素とメタンの混合ガスを導入し、基材1に−50Vのバイアス電圧を印加した状態で、第1アーク蒸発源13にアーク電流を流してアーク放電によりイオン化させ、基材1上に1.2μmの厚みのTi0.85Cr0.05Si0.1CNからなる表面保護層を形成した。
(実施例9)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.85Cr0.05Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.4Al0.6ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.85Cr0.05Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.4Al0.6ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
その後は、中間層を形成せずに被覆膜を基材上に直接形成したこと、および被覆膜上にさらに表面保護層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、基材上に、Ti0.85Cr0.05Si0.1NからなるA層とTi0.4Al0.6NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、実施例9においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.51を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については段階的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については段階的に減少させることによって、λa/λbの値を段階的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.11を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは11.3μmであった。
(実施例10)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.8Cr0.1Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.8Cr0.1Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
その後は、中間層を形成せずに被覆膜を基材上に直接形成したこと、および被覆膜上にさらに表面保護層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、基材上に、Ti0.8Cr0.1Si0.1NからなるA層とTi0.5Al0.5NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、実施例10においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.50を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については段階的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については段階的に減少させることによって、λa/λbの値を段階的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.50を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは1.8μmであった。
(実施例11)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.8Cr0.1Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.8Cr0.1Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
その後は、中間層を形成せずに被覆膜を基材上に直接形成したこと、および被覆膜上にさらに表面保護層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、基材上に、Ti0.8Cr0.1Si0.1NからなるA層とTi0.5Al0.5NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、実施例11においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.50を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については段階的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については段階的に減少させることによって、λa/λbの値を段階的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.50を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは19.4μmであった。
(実施例12)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.9Cr0.05Si0.05ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.9Cr0.05Si0.05ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
その後は、中間層を形成せずに被覆膜を基材上に直接形成したこと、および被覆膜上にさらに表面保護層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、基材上に、Ti0.9Cr0.05Si0.05NからなるA層とTi0.5Al0.5NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、実施例12においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.44を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については連続的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については連続的に減少させることによって、λa/λbの値を連続的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.92を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは5.0μmであった。
(実施例13)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.9Cr0.05Si0.05ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.9Cr0.05Si0.05ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
その後は、中間層を形成せずに被覆膜を基材上に直接形成したこと、および被覆膜上にさらに表面保護層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、基材上に、Ti0.9Cr0.05Si0.05NからなるA層とTi0.5Al0.5NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、実施例13においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.67を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については連続的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については連続的に減少させることによって、λa/λbの値を連続的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=1.60を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは5.0μmであった。
(実施例14)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.62Cr0.28Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.62Cr0.28Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
その後は、中間層を形成せずに被覆膜を基材上に直接形成したこと、および被覆膜上にさらに表面保護層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、基材上に、Ti0.62Cr0.28Si0.1NからなるA層とTi0.5Al0.5NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、実施例14においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.53を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については段階的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については段階的に減少させることによって、λa/λbの値を段階的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.50を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは4.5μmであった。
(実施例15)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.94Cr0.03Si0.03ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.32Al0.68ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.94Cr0.03Si0.03ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.32Al0.68ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
その後は、中間層を形成せずに被覆膜を基材上に直接形成したこと、および被覆膜上にさらに表面保護層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、基材上に、Ti0.94Cr0.03Si0.03NからなるA層とTi0.32Al0.68NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、実施例15においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.53を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については段階的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については段階的に減少させることによって、λa/λbの値を段階的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.50を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは4.5μmであった。
(実施例16)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.7Cr0.06Si0.24ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.32Al0.68ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.7Cr0.06Si0.24ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.32Al0.68ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
その後は、中間層を形成せずに被覆膜を基材上に直接形成したこと、および被覆膜上にさらに表面保護層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、基材上に、Ti0.7Cr0.06Si0.24NからなるA層とTi0.32Al0.68NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、実施例16においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.53を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については段階的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については段階的に減少させることによって、λa/λbの値を段階的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.50を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは4.5μmであった。
(比較例1)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.6Cr0.35Si0.05ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.75Al0.25ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.6Cr0.35Si0.05ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.75Al0.25ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
その後は、中間層を形成せずに被覆膜を基材上に直接形成したこと、および被覆膜上にさらに表面保護層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、基材上に、Ti0.6Cr0.35Si0.05NからなるA層とTi0.75Al0.25NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、比較例1においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.57を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については連続的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については連続的に減少させることによって、λa/λbの値を連続的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.33を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは3.5μmであった。
(比較例2)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.8Cr0.1Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.25Al0.75ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.8Cr0.1Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.25Al0.75ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
その後は、中間層を形成せずに被覆膜を基材上に直接形成したこと、および被覆膜上にさらに表面保護層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、基材上に、Ti0.8Cr0.1Si0.1NからなるA層とTi0.25Al0.75NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、比較例2においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.50を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については段階的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については段階的に減少させることによって、λa/λbの値を段階的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.00を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは4.2μmであった。
(比較例3)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.65Cr0.05Si0.3ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.65Cr0.05Si0.3ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
その後は、中間層を形成せずに被覆膜を基材上に直接形成したこと、および被覆膜上にさらに表面保護層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、基材上に、Ti0.65Cr0.05Si0.3NからなるA層とTi0.5Al0.5NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、比較例3においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.50を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については連続的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については連続的に減少させることによって、λa/λbの値を連続的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.00を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは5.5μmであった。
(比較例4)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.7Cr0.25Si0.05ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.55Al0.45ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.7Cr0.25Si0.05ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.55Al0.45ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
その後は、中間層を形成せずに被覆膜を基材上に直接形成したこと、および被覆膜上にさらに表面保護層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、基材上にTi0.7Cr0.25Si0.05NからなるA層とTi0.55Al0.45NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、比較例4においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.75を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については段階的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については段階的に減少させることによって、λa/λbの値を段階的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=1.33を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは3.5μmであった。
(比較例5)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.7Cr0.25Si0.05ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.55Al0.45ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.7Cr0.25Si0.05ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.55Al0.45ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
その後は、中間層を形成せずに被覆膜を基材上に直接形成したこと、および被覆膜上にさらに表面保護層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、基材上にTi0.7Cr0.25Si0.05NからなるA層とTi0.55Al0.45NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、比較例5においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.38を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については段階的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については段階的に減少させることによって、λa/λbの値を段階的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=3.33を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは6.8μmであった。
(比較例6)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.7Cr0.25Si0.05ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.55Al0.45ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.7Cr0.25Si0.05ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14としてTi0.55Al0.45ターゲットをセットし、第3アーク蒸発源15としては何もセットしなかった。
その後は、中間層を形成せずに被覆膜を基材上に直接形成したこと、および被覆膜上にさらに表面保護層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、基材上にTi0.7Cr0.25Si0.05NからなるA層とTi0.55Al0.45NからなるB層とを交互に積層した被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
なお、比較例6においては、被覆膜の形成開始直後は、基材に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の厚みの比がλa/λb=0.48を満たすようにA層およびB層を形成した。そして、被覆膜の形成の進行に伴って、第1アーク蒸発源13に流れるアーク電流については段階的に増加させるとともに、第2アーク蒸発源14に流れるアーク電流については段階的に減少させることによって、λa/λbの値を段階的に増加させながら、A層およびB層をそれぞれ1層ずつ交互に順次積層していった。そして、被覆膜の最表面に最も近い位置において互いに接するA層およびB層の形成時においては、λa/λb=2.43を満たすようにA層およびB層を形成した。
また、被覆膜の形成は、基材上にまずA層を形成し、その後B層を形成して、A層およびB層を順次交互に形成した後、被覆膜の最表面にB層が設置されるように行なった。また、被覆膜の形成後は、カソードアークイオンプレーティング装置10内のガスを排気した。また、被覆膜全体の厚みは10.6μmであった。
(比較例7)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14および第3アーク蒸発源15としてはそれぞれ何もセットしなかった。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.5Al0.5ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14および第3アーク蒸発源15としてはそれぞれ何もセットしなかった。
その後は、基材上に4.0μmの厚みのTi0.5Al0.5Nの単層からなる被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
(比較例8)
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.8Cr0.1Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14および第3アーク蒸発源15としてはそれぞれ何もセットしなかった。
図4に示す回転テーブル11に基材1をセットするとともに、第1アーク蒸発源13としてTi0.8Cr0.1Si0.1ターゲットをセットし、第2アーク蒸発源14および第3アーク蒸発源15としてはそれぞれ何もセットしなかった。
その後は、基材上に4.0μmの厚みのTi0.8Cr0.1Si0.1Nの単層からなる被覆膜を形成し、表面被覆切削工具として、エンドミル、ドリルおよび旋削用スローアウェイチップをそれぞれ作製した。そして、これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして、切削試験を行ない、表面被覆切削工具の寿命の評価を行なった。その評価結果を表4に示す。
表1〜表4に示すように、実施例1〜実施例16の表面被覆切削工具は、比較例1〜比較例8の表面被覆切削工具と比べて、高速加工および/またはドライ加工である上記の(i)〜(iii)の切削試験においていずれも長寿命であって、高速加工およびドライ加工のいずれにも十分に対応することができることが確認された。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の表面被覆切削工具は、たとえば、ドリル、エンドミル、フライス加工用スローアウェイチップ、旋削用スローアウェイチップ、メタルソー、歯切工具、リーマまたはタップなどとして好適に用いることができる。
1 基材、2 被覆膜、3 A層、4 B層、10 カソードアークイオンプレーティング装置、11 回転テーブル、12 ヒータ、13 第1アーク蒸発源、14 第2アーク蒸発源、15 第3アーク蒸発源、16 ガス導入口。
Claims (6)
- 基材と、
前記基材上に形成された被覆膜とを備え、
前記被覆膜は、Ti1-x-yCrxSiyN(ただし、0<x<0.3、0<y<0.3)からなるA層と、Ti1-zAlzN(ただし、0.3<z<0.7)からなるB層とがそれぞれ交互に積層されて構成されており、
前記A層の厚みλaおよび前記B層の厚みλbはそれぞれ2nm以上1000nm以下であり、
互いに接している前記A層および前記B層の厚みの比であるλa/λbの値は、前記基材に最も近い位置においては0.4<λa/λb<0.7であって、前記基材側から前記被覆膜の最表面側に進むにしたがって連続的および/または段階的に増加していき、前記被覆膜の最表面に最も近い位置においては1.5<λa/λb<3となる、表面被覆切削工具。 - 前記基材と前記被覆膜との間に中間層を有しており、
前記中間層は、Ti、Cr、TiNまたはCrNからなり、
前記中間層の厚みは、0.1μm以上1μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の表面被覆切削工具。 - 前記被覆膜の最表面上に表面保護層を有しており、
前記表面保護層は、TiCrSiCNからなり、
前記表面保護層の厚みは、0.1μm以上2μm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。 - 前記被覆膜の全体の厚みは、0.5μm以上20μm以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
- 前記被覆膜は、物理蒸着法により形成されたことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
- 前記基材は、WC基超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、窒化硼素焼結体、または酸化アルミニウムと炭化チタンとからなる基材のいずれかであることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
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WO2013153614A1 (ja) | 2012-04-09 | 2013-10-17 | オーエスジー株式会社 | 切削工具用硬質被膜及び硬質被膜被覆切削工具 |
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-
2008
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US9409238B2 (en) | 2012-04-09 | 2016-08-09 | Osg Corporation | Hard coating for cutting tool, and cutting tool coated with hard coating |
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