JPH07145483A - 耐摩耗性被覆部材 - Google Patents

耐摩耗性被覆部材

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JPH07145483A
JPH07145483A JP31445893A JP31445893A JPH07145483A JP H07145483 A JPH07145483 A JP H07145483A JP 31445893 A JP31445893 A JP 31445893A JP 31445893 A JP31445893 A JP 31445893A JP H07145483 A JPH07145483 A JP H07145483A
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wear
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 基材の表面上に、Ti含有の炭酸化物,窒酸
化物,炭窒酸化物でなる非化学量論組成の被膜を被覆
し、硬度,耐摩耗性,耐剥離性,耐熱性および耐欠損性
を高めた耐摩耗性被覆部材を提供する。 【構成】 基材上に、(Tia,Mb)(CX,NY
Z)Rで表わされる非化学量論組成の酸素含有被膜が被
覆されていることを特徴とする耐摩耗性被覆部材。(但
し、Mは、Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,
Wの中の少なくとも1種の元素を示し、aおよびbは金
属元素であるTiとMとのそれぞれの原子比を表わし、
X,YおよびZは非金属元素であるCとNとOのそれぞ
れの原子比を表わし、RはTiとMとを合計した金属元
素に対するCとNとOとを合計した非金属元素の原子比
を表わし、それぞれは、a+b=1、1≧a>0、X+
Y+Z=1、1>X≧0、1>Y≧0、1>Z>0、
1.8≧R≧1.01の関係にある。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属,合金またはセラ
ミックス焼結体の基材上に、非化学量論組成のセラミッ
クスの被膜を被覆して、耐摩耗性,高硬度性,耐剥離
性,高靭性,耐食性,装飾性のある構造用部材として適
する被覆体に関し、具体的には、例えば旋削工具,フラ
イス工具,エンドミル,ドリルに代表される切削工具、
スリッター,製缶工具,金型に代表される耐摩耗工具ま
たは釣具,時計用部材,メガネの枠,タイピン,ブロー
チに代表される装飾部品に適する耐摩耗性被覆部材に関
する。
【0002】
【従来の技術】金属,合金またはセラミックス焼結体の
基材上に、周期律表の4a,5a,6a族金属の炭化
物,窒化物およびこれらの相互固溶体の中の1種の単層
または2種以上の多層でなる被膜を被覆した被覆部材が
多数提案され、その中の1部が実用されている。
【0003】これらの被覆部材は、被膜の優れた耐摩耗
性と基材の優れた靭性とを有効に利用しようとしたもの
であるが、基材の材質によっては基材と被膜との付着性
に劣ること、多層にすると被膜間の付着性が劣ること、
または被膜自体の特性が劣るという問題がある。
【0004】これらの問題点を解決しようとしたものの
1つに、基材上に、化学蒸着法(CVD法)または物理
蒸着法(PVD法)により、酸素を含有した被膜を被覆
した被覆部材があり、その代表的なものに、特開昭51
−144314号公報,特開昭51−144388号公
報,特開昭53−89804号公報,特開昭53−89
805号公報,特開昭57−98670号公報および特
開昭57−98673号公報がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】金属,合金またはセラ
ミックス焼結体の基材上に、酸素を含有した被膜を被覆
した被覆部材の内、特開昭51−144314号公報お
よび特開昭51−144388号公報には、超硬合金の
表面にTi,Zr,Hfの炭酸化物,窒酸化物または炭
窒酸化物の被膜を被覆した被覆超硬合金部品について記
載されている。これら両公報に記載の被覆超硬合金部品
は、被膜中に酸素を含有させることにより耐摩耗性を高
めようとしたものではあるが、被膜中の金属元素に対す
る非金属元素の原子比が1.0以下、特に化学量論組成
に近似した被膜からなり、被膜中の酸素元素含有量の調
整が困難であること、および耐摩耗性を高めるという効
果が弱いという問題がある。
【0006】特開昭53−89804号公報および特開
昭53−89805号公報には、超硬合金の表面にTi
C,TiN,TiCNの単層または複層を被覆し、その
上にCVD法で生成したTiの炭窒酸化物を被覆した被
覆超硬合金製品について記載されている。これら両公報
に記載の被覆超硬合金製品は、その表面上に被覆された
Tiの炭窒酸化物の被膜が化学量論組成からなるため
に、耐摩耗性が劣り、しかも被膜の組成成分の調整が困
難となり、そのバラツキも大きく製造管理上からも問題
がある。
【0007】特開昭57−98670号公報には、超硬
合金の表面にTiの炭窒酸化物の内層とAl23の外層
を被覆した被覆超硬合金であって、該内層は炭素,窒素
および酸素の非金属元素中の酸素が原子比で0.9を超
えて含有し、金属元素であるTiに対する非金属元素の
合計が原子比で1を超える非化学量論組成からなる被覆
超硬合金切削工具について記載されている。同公報に記
載の被覆超硬合金工具は、非化学量論組成でなるTiの
炭窒酸化物の内層が被覆されており、この内層とAl2
3の外層との接着性を高めているものではあるが、外
層が摩滅すると、内層中の酸素含有量が多いために急激
に摩耗が進行し、短寿命になるという問題がある。
【0008】特開昭57−98673号公報には、超硬
合金の表面にCVD法で生成したTiの炭窒酸化物を被
覆した被覆超硬合金製品について記載されている。同公
報に記載の被覆超硬合金製品は、その表面上に被覆され
たTiの炭窒酸化物の被覆が化学量論組成からなるため
に、前述の特開昭53−89804号公報,および特開
昭53−89805号公報と同様に、耐摩耗性に劣り、
しかも被膜の組成成分の調整が困難となり、そのバラツ
キも大きく、製造管理上からも問題がある。
【0009】本発明は、上述のような問題点を解決した
もので、具体的には、基材の表面上に最適な特性を有す
る非化学量論組成の被膜を被覆し、硬度,耐摩耗性,耐
剥離性,耐熱性および耐欠損性を高めた耐摩耗性被覆部
材の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は、超硬合金ま
たはサーメットの表面上にTiの化合物を被覆した被覆
部材の寿命を向上させるための検討を行っていたとこ
ろ、Tiの化合物でなる被膜の組成成分を調整するこ
と、具体的には最適な酸素含有量と最適な非化学量論組
成からなる被膜にすること、さらにその被膜の構成を調
整すること、具体的には被膜の表面部における被膜中の
酸素含有量を多くし、内部になるほど少なくなるように
漸減させて最適に調整させることにより、耐剥離性に優
れた高硬度な被膜を得ることができ、寿命を顕著に向上
することができるという知見を得て、本発明を完成する
に至ったものである。
【0011】すなわち、本発明の耐摩耗性被覆部材は、
金属,合金またはセラミックス焼結体の基材上に、(T
ia,Mb)(CX,NY Z)R(但し、Tiはチタ
ン、MはZr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W
の中の少なくとも1種の元素を示し、Cは炭素、Nは窒
素、Oは酸素を示し、aおよびbは金属元素であるTi
とMとのそれぞれの原子比を表わし、X,YおよびZは
非金属元素であるCとNとOのそれぞれの原子比を表わ
し、RはTiとMとを合計した金属元素に対するCとN
とOとを合計した非金属元素の原子比を表わし、それぞ
れは、a+b=1、1≧a>0、X+Y+Z=1、1>
X≧0、1>Y≧0、0.8≧Z>0、1.8≧R≧
1.01の関係にある。)の式で表わされる非化学量論
組成の酸素含有被膜が被覆されていることを特徴とす
る。
【0012】本発明の被覆部材における基材は、具体的
には、例えば周期律表の4a,5a,6a族の金属,C
u,Al,Fe,Ni,Coの金属、ステンレス鋼,高
速度鋼,耐熱合金,Ti合金,Al合金,Cu合金また
はサーメット,超硬合金に代表される焼結合金、Al2
3基セラミックス焼結体,Si34基セラミックス焼
結体,サイアロン基セラミックス焼結体,ZrO2基セ
ラミックス焼結体,SiC基セラミックス焼結体,Al
N基セラミックス焼結体を挙げることができる。
【0013】これらの基材の表面上に被覆される(Ti
a,Mb)(CX,NY Z)Rの式で表わされる酸素
含有被膜は、具体的には、例えばTi(C,O)R,T
i(N,O)R,Ti(C,N,O)R,(Ti,Z
r)(C,O)R,(Ti,Zr)(N,O)R,(T
i,Zr)(C,N,O)R,(Ti,Hf)(C,
O)R,(Ti,Hf)(N,O)R,(Ti,Hf)
(C,N,O)R,(Ti,V)(C,O)R,(T
i,V)(N,O)R,(Ti,V)(C,N,O)
R,(Ti,Ta)(C,O)R,(Ti,Ta)
(N,O)R,(Ti,Ta)(C,N,O)R,(T
i,Nb)(C,N,O)R,(Ti,W)(C,O)
R,(Ti,W)(N,O)R,(Ti,W)(C,
N,O)R,(Ti,Cr)(C,N,O)R,(T
i,Mo)(C,N,O)R,(Ti,Zr,Ta)
(C,N,O)R,(Ti,Ta,W)(C,N,O)
R,を挙げることができる。
【0014】この(Tia,Mb)(CX,NY Z
Rの式で表わされる酸素含有被膜におけるRが1.01
未満になるか、またはRが1.8を超えて多くなると、
硬さおよび耐摩耗性の低下が顕著になることから、Rは
1.01〜1.8と定めたものであり、特に高硬度性お
よび優れた耐摩耗性を保持させるために、Rは1.05
〜1.7が好ましいことである。
【0015】(Tia,Mb)(CX,NY Z)Rの
式で表わされる酸素含有被膜におけるZが零になると、
耐摩耗性,耐酸化性および耐溶着性の低下が著しくな
り、逆にZが0.8を超えて多くなると硬さおよび耐摩
耗性の低下が顕著になることから、1>Z>0と定めた
ものであり、特に高硬度性および優れた耐摩耗性を保持
させるために、0.5≧Z>0が好ましいことである。
また、この酸素含有被膜におけるYが1になると、相対
的にXおよびZが零となり、さらにXが1になると、相
対的にYおよびZが零となり、その結果耐摩耗性および
耐溶着性の低下が著しくなるために、1>X≧0、1>
Y≧0と定めたものであり、0.8≧Z>0であること
からしてX+Y≠0からなるものである。
【0016】(Tia,Mb)(CX,NY Z)Rの
式で表わされる酸素含有被膜におけるaが零になると、
相対的にbが1となり、耐すきとり摩耗性の低下が著し
くなることから、1≧a>0と定めたものであり、特に
耐すきとり摩耗性を高めるために1≧a>0.5からな
ることが好ましい。
【0017】この酸素含有被膜の膜厚さは、基材の表面
上に被覆する被膜の構成および用途や形状等によって異
なり、例えば被膜の構成がこの酸素含有被膜のみからな
り、かつ被膜へ及ぼす衝撃が弱いような用途の場合に
は、酸素含有被膜の膜厚さを厚くする方向が好ましく、
逆に被膜の構成がこお酸素含有被膜と他の膜質でなる被
膜との組合わせからなり、かつ被膜へ及ぼす衝撃が強い
ような用途の場合には、酸素含有被膜の膜厚さを薄くす
る方向で使い分けることが好ましく、具体的には、0.
5〜15μm厚さの酸素含有被膜からなり、特に1〜1
0μm厚さの酸素含有被膜が好ましい。
【0018】この酸素含有被膜は、その表面から内部の
全体に亘って略均一な被膜構成成分にすることも好まし
いが、特に2μm以上の膜厚さからなる場合には、その
表面部から内部に向って、酸素元素が減少している被膜
組成成分にすることが耐剥離性および耐摩耗性からの好
ましい。
【0019】本発明の被覆部材は、基材の表面に直接、
上述の酸素含有被膜を被覆する被膜構成とすることも好
ましく、また基材と酸素含有被膜との間に金属,合金ま
たは他のセラミックスの被膜を介在させること、具体的
には、基材と酸素含有被膜との間にTiの炭化物,窒化
物,炭窒化物,またはZr,Hf,V,Nb,Ta,C
r,Mo,Wの元素の中の少なくとも1種とTiとの複
合炭化物,複合窒化物,複合炭窒化物から選ばれた1種
の単層または2種以上の多層でなる内層を介在させるこ
とも基材と被膜との付着性から好ましい。この内層は、
具体的には、TiC,TiN,Ti(C,N),(T
i,M)C,(Ti,M)N,(Ti,M)(C,N)
(但し、MはZr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,M
o,Wの中の少なくとも1種を示す)からなり、その膜
厚さが0.1〜3μm、その組成成分が化学量論組成、
または金属元素に対する非金属元素の少ない場合もしく
は多い場合からなる非化学量論組成であってもよい。
【0020】また、本発明の被覆部材における別の被膜
構成としては、前述した酸素含有被膜をTiの炭化物,
窒化物,炭窒化物の中の1種の被膜で挟んだサンドイッ
チ構造とすること、またはこの3層のサンドイッチ構造
の被膜を2段以上繰り返して積層することも被膜の強度
向上から好ましい。
【0021】さらに、前述した酸素含有被膜の表面に酸
化アルミニウム,チタン・アルミニウムの窒化物,炭窒
化物,窒酸化物,炭窒酸化物の中の1種の単層または2
種以上の多層でなる外層を被覆すること、または上述の
サンドイッチ構造の被膜や積層構造の被膜の表面に上述
の外層を被覆することも耐熱性、特に切削工具における
耐クレータ摩耗性を高めるために好ましいことである。
【0022】以上、詳述してきた本発明の被覆部材にお
ける総被膜厚さは、用途や形状により種々選定すること
ができるが、耐剥離性から20μm以下、好ましくは1
0μm以下であり、特に切削工具のような大きな衝撃が
加わる用途では5μm以下の総被膜厚さでなることが好
ましい。
【0023】本発明の被覆部材における被膜は、できる
だけ微細粒からなっていることが好ましく、特に酸素含
有被膜が粒径の微細化の尺度となるX線回折線の半価
幅、具体的にはCu−Kα線による(111)および/
または(200)結晶面の半価幅が0.6以上からなる
ことが好ましい。
【0024】本発明の被覆部材は、従来から市販または
提案されている各種の基材を用いて、従来から行われて
いるCVD法やPVD法を応用することにより作製する
ことができる。具体的には、CVD法やPVD法におけ
るガス圧の調整、特に酸素元素を供給するためのガス圧
の調整が重要である。また、イオンプレーティング法や
スパッタ法のPVD法により、本発明の被覆部材を作製
すると、被膜に大きな圧縮応力を残留させやすく、そう
すると、耐欠損性が顕著に優れることから好ましいこと
である。
【0025】
【作用】本発明の被覆部材は、基材上の被覆された酸素
含有被膜の含有酸素量および金属元素に対する非金属元
素の原子比が被膜の硬さを高める作用をし、その結果間
接的に耐摩耗性を高める作用となり、特にPVD法によ
り作製された酸素含有被膜の場合には、被膜に大きい圧
縮応力を残留させる作用が生じ、その結果被膜の強度お
よび耐摩耗性を高める間接的作用がある。
【0026】
【実施例1】イオンプレーティング装置の反応容器内
に、市販の超硬合金(JIS規格、P30相当材種、S
DKN42ZTN形状)の基材を設置した後、加熱工
程、Arのエッチング工程および被覆工程を施して、本
発明品1〜5と比較品1〜3を得た。この内、本発明品
1〜5は、基材を設置した電子加熱式反応容器内を1×
10-5Torr真空排気した後、Arガスを導入し、2
×10-3Torrの圧力とし、本発明品1,2,4,5
については、出力10kwで60分間電子加熱し、本発
明品3については、出力12kwで60分間電子加熱
し、本発明品1,2の基材温度を400℃、本発明品3
の基材温度を380℃、本発明品4の基材温度を390
℃、本発明品5の基材温度を395℃に保持する加熱工
程と、圧力1×10-3TorrのArガス中、直流電圧
300Vを印加してグロー放電を発生させて、基材表面
を30分間Arイオンボンバード処理によるArのエッ
チング工程と、表1に示したそれぞれの被覆条件(窒素
ガス純度5N使用)による被覆工程でもって作製した。
【0027】比較品1〜3は、基材を設置した抵抗加熱
式反応容器内を1×10-5Torr真空排気した後、A
rガスを導入し、比較品1,2については、4×10-4
〜1×10-4Torrの圧力、出力20kw、60分間
加熱により500℃に保持し、比較品3については、4
×10-5〜1×10-5Torrの圧力、出力10kw、
60分間加熱により500℃に保持する加熱工程と、比
較品1,2については、圧力8×10-2TorrのAr
ガス中、直流電圧600Vを印加して基材表面を10分
間Arイオンボンバード処理し、比較品3については、
4×10-2TorrのArガス中、直流電圧1000V
を印加して基材表面を20分間Arイオンボンバード処
理によるArのエッチング工程と、表1に示したそれぞ
れの被覆条件による被覆工程でもって作製した。
【0028】こうして得た本発明品1〜5および比較品
1〜3のそれぞれの被膜厚さは、走査型電子顕微鏡で調
べたところ、約3.5μmであり、被膜組成成分は、X
線回折装置およびグロー放電スペクトル分析装置により
解析し、表2に示した。また、それぞれの被膜表面から
の硬さ、CuーKα線によるX線回折法による被膜の残
留応力および被膜の(111)結晶面における半価幅を
求めて表2に併記した。
【0029】次に、本発明品1〜5および比較品1〜3
を用いて、被削材:S48C(HB=224〜24
2)、工具形状:SDKN42ZTN、切削速度:13
0m/min、切込み:1mm、送り:0.2mm/r
ev、湿式旋削による切削条件でもって100分間切削
し、そのときのそれぞれの逃げ面摩耗量を測定し、表2
に併記した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【実施例2】実施例1で用いた同一装置および基材を用
いて、同様の工程を施して、本発明品6〜11および比
較品4〜7を得た。この内、本発明品6,11は、実施
例1の本発明品1,2と同様の加熱条件、Arのエッチ
ング条件で処理した後、表3に示した被覆条件(基材の
表面に第1層、第2層、第3層と順次被覆)による被覆
工程を施して作製した。本発明品7は、Arエッチング
工程中のボンバード処理時間を20分間とした以外は、
本発明品6,11と同様の加熱条件,Arのエッチング
条件で処理した後、表3に示した被覆条件による被覆工
程を施して作製した。本発明品8は、加熱工程中の出力
8.5kw、加熱時間70分、基材温度380℃、Ar
のエッチング工程中のボンバード処理時間を25分間と
した以外は、本発明品6,11と同様の加熱条件,Ar
のエッチング条件で処理した後、表3に示した被覆条件
による被覆工程を施して作製した。本発明品9は、加熱
工程中の出力8.5kw、加熱温度350℃とした以外
は、本発明品6,11と同様の加熱条件,Arのエッチ
ング条件で処理した後、表3に示した被覆条件による被
覆工程を施して作製した。本発明品10は、加熱工程中
の加熱時間65分間,加熱温度410℃とした以外は、
本発明品6,11と同様の加熱条件,Arのエッチング
条件で処理した後、表3に示した被覆条件による被覆工
程を施して作製した。
【0033】比較品4,5,7は、実施例1の比較品
1,2と同様の加熱条件,Arのエッチング条件で処理
した後、表4に示した被覆条件による被覆工程を施して
作製した。比較品6は、加熱工程中の出力18kw、加
熱温度450℃とした以外は、比較品1,2と同様の加
熱条件,Arのエッチング条件で処理した後、表3に示
した被覆条件による被覆工程を施して作製した。
【0034】こうして得た本発明品6〜11と比較品4
〜7のそれぞれの被膜を実施例1に記載した方法で調べ
た結果、第1層の膜厚略1μm、第2層の膜厚略2μ
m、第3層の膜厚略0.3μmからなっており、被膜組
成成分,被膜硬さ,被膜の残留応力を表5に示した。ま
た、本発明品6〜11と比較品4〜7を用いて、実施例
1における湿式旋削による切削条件でもって切削試験を
行い、その結果を表5に併記した。
【0035】次に、本発明品8と比較品4の被覆部材で
なる直径8mmのスパイラルドリルを用いて、被削材:
SCM440(HB=230〜250)、切削速度:6
0m/min、送り:0.2mm/rev、加工深さ:
30mm、の条件で15m、穴あけ加工を行った結果、
本発明品8の平均逃げ面摩耗量は、0.15mmであっ
たのに対し、比較品4の逃げ面摩耗量は、0.2mmで
あった。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【実施例3】逃げ面の被膜構成が実施例2における本発
明品8の内、第2層厚さのみ1μmの他は略本発明品8
の被膜構成からなる本発明品12と、逃げ面の被膜構成
が実施例2における比較品4の内、第2層厚さのみ1μ
mの他は略比較品4の被膜構成に相当し、すくい面の被
膜構成が比較品4の被膜構成からなる比較品8とを用い
て、被削材:SCM(HB=240〜260、6穴
付)、切削速度:150m/min、送り:0.25m
m/刃、切込み:2mm、工具形状:SDKN42ZT
N、乾式フライス切削を行った結果、本発明品12は、
加工長さ4m時における最大逃げ摩耗量が0.05mm
で、正常摩耗であったのに対し、比較品8は、加工長さ
4m時における最大逃げ面摩耗量が0.1mmで、被膜
の剥離が少々発生していた。
【0040】
【実施例4】市販の高速度鋼,Ti合金,窒素含有炭化
チタン(TiC−TiN)基サーメット,窒化ケイ素基
セラミックス,酸化アルミニウム基(Al23−Ti
C)セラミックスの基材をそれぞれ用いて、実施例1に
おける本発明品2と略同様に処理して被覆部材を作製
し、それぞれを本発明品13,14,15,16,17
とした。
【0041】比較として、本発明品13〜17で用いた
同一基材を用いて、実施例1における比較品1と略同様
に処理して被覆部材を作製し、それぞれを比較品9,1
0,11,12,13とした。
【0042】こうして得た本発明品13〜17と比較品
9〜13の被膜の組成成分および被膜硬さを実施例1で
行った方法で調べたところ、本発明品13〜17は、本
発明品2と略同様で2850±50(HV)の高硬度被
膜であったのに対し、比較品9〜13は、比較品1と略
同様で被膜硬さ2500±50(HV)であった。
【0043】
【発明の効果】本発明の被覆部材は、化学量論組成に近
似した被膜からなる従来の被覆部材に比べて、被膜の硬
さが約8〜17%高く、被膜の残留圧縮応力が約38〜
94%高く、切削試験における耐摩耗性が38〜117
%も向上し、被膜の耐剥離性も優れており、長寿命にな
るという効果があり、酸素含有量の多い非化学量論組成
の被膜からなる従来の被覆部材に比べて、被膜の硬さが
約109〜119%高く、被膜の残留圧縮応力が約26
3〜338%高く、切削試験における耐摩耗性が3.2
〜4.3倍も向上し、被膜の耐剥離性も優れており、長
寿命になるという顕著な効果がある。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属,合金またはセラミックス焼結体の
    基材上に、次式(A)で表わされる非化学量論組成の酸
    素含有被膜が被覆されていることを特徴とする耐摩耗性
    被覆部材。 (Tia,Mb)(CX,NY Z)R ‥‥‥(A) 〔但し、(A)式中のTiはチタン、MはZr,Hf,
    V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wの中の少なくとも1種
    の元素を示し、Cは炭素、Nは窒素、Oは酸素を示し、
    aおよびbは金属元素であるTiとMとのそれぞれの原
    子比を表わし、X,YおよびZは非金属元素であるCと
    NとOのそれぞれの原子比を表わし、RはTiとMとを
    合計した金属元素に対するCとNとOとを合計した非金
    属元素の原子比を表わし、それぞれは、a+b=1、1
    ≧a>0、X+Y+Z=1、1>X≧0、1>Y≧0、
    0.8≧Z>0、1.8≧R≧1.01の関係にあ
    る。〕
  2. 【請求項2】 上記(A)式で表わされる酸素含有被膜
    は、1≧a≧0.5、0.5≧Z>0、1.7≧R≧
    1.05の関係にあることを特徴とする請求項1記載の
    耐摩耗性被覆部材。
  3. 【請求項3】 上記(A)式で表わされる酸素含有被膜
    は、該酸素含有被膜の表面部から内部に向って、酸素元
    素が減少していることを特徴とする請求項1または2記
    載の耐摩耗性被覆部材。
  4. 【請求項4】 金属,合金またはセラミックス焼結体の
    基材上に、次式(A)で表わされる非化学量論組成の酸
    素含有被膜が被覆されており、該基材と該酸素含有被膜
    との間に、Tiの炭化物,窒化物,炭窒化物,またはZ
    r,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wの元素の中
    の少なくとも1種とTiとの複合炭化物,複合窒化物,
    複合炭窒化物から選ばれた1種の単層または2種以上の
    多層でなる内層が被覆されていることを特徴とする耐摩
    耗性被覆部材。 (Tia,Mb)(CX,NY Z)R ‥‥‥(A) 〔但し、(A)式中のTiはチタン、MはZr,Hf,
    V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wの中の少なくとも1種
    の元素を示し、Cは炭素、Nは窒素、Oは酸素を示し、
    aおよびbは金属元素であるTiとMとのそれぞれの原
    子比を表わし、X,YおよびZは非金属元素であるCと
    NとOのそれぞれの原子比を表わし、RはTiとMとを
    合計した金属元素に対するCとNとOとを合計した非金
    属元素の原子比を表わし、それぞれは、a+b=1、1
    ≧a>0、X+Y+Z=1、1>X≧0、1>Y≧0、
    0.8≧Z>0、1.8≧R≧1.01の関係にあ
    る。〕
  5. 【請求項5】 上記(A)式で表わされる酸素含有被膜
    は、1≧a≧0.5、0.5≧Z>0、1.7≧R≧
    1.05の関係にあることを特徴とする請求項4記載の
    耐摩耗性被覆部材。
  6. 【請求項6】 上記(A)式で表わされる酸素含有被膜
    は、該酸素含有被膜の表面部から内部に向って、酸素元
    素が減少していることを特徴とする請求項4または5記
    載の耐摩耗性被覆部材。
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