JPH10263903A - 炭化チタン被覆工具 - Google Patents

炭化チタン被覆工具

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JPH10263903A
JPH10263903A JP7750397A JP7750397A JPH10263903A JP H10263903 A JPH10263903 A JP H10263903A JP 7750397 A JP7750397 A JP 7750397A JP 7750397 A JP7750397 A JP 7750397A JP H10263903 A JPH10263903 A JP H10263903A
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JP
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gas
titanium carbide
carbide
film
ray diffraction
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Application number
JP7750397A
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English (en)
Inventor
Toshio Ishii
敏夫 石井
Masayuki Gonda
正幸 権田
Hiroshi Ueda
広志 植田
Nobuhiko Shima
順彦 島
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Moldino Tool Engineering Ltd
Proterial Ltd
Original Assignee
Hitachi Metals Ltd
Hitachi Tool Engineering Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 等価X線回折強度PR(200)やPR(2
20)の値が小さい周期律表IVa、Va、VIa族金属の
炭化物からなる非酸化膜、特にTiの炭化物層を被覆す
ることにより、切削特性等の品質が安定した炭化チタン
被覆工具を提供する。 【解決手段】 基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa
族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、並びに酸化アルミ
ニウムのいずれか一種の単層皮膜または二種以上の多層
皮膜を有しその少なくとも一層がチタンの炭化物からな
る炭化チタン被覆工具において、前記チタンの炭化物層
の等価X線回折強度PR(111)、PR(200)、
PR(220)、PR(311),PR(222)のう
ちPR(311)が最も大きいことを特徴とする炭化チ
タン被覆工具。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は炭化チタン被覆工具
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、被覆工具は超硬質合金、高速度
鋼、特殊鋼よりなる基体表面に硬質皮膜を化学蒸着法
や、物理蒸着法により成膜することにより作製される。
このような被覆工具は皮膜の耐摩耗性と基体の強靭性と
を兼ね備えており、広く実用に供されている。特に、高
硬度材を高速で切削する場合に、切削工具の刃先温度は
1000℃前後まで上がるとともに、被削材との接触に
よる摩耗や断続切削等の機械的衝撃に耐える必要があ
り、耐摩耗性と強靭性とを兼ね備えた被覆工具が重宝さ
れている。
【0003】硬質皮膜には、耐摩耗性と靭性に優れた周
期律表IVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒
化物からなる非酸化膜や耐酸化性に優れた酸化膜が単層
あるいは多層膜として用いられる。非酸化膜では例えば
TiC、TiN、TiCNが利用され、酸化膜では特に
α型酸化アルミニウムやκ型酸化アルミニウム等が利用
されている。特に、周期律表IVa、Va、VIa族金属の
炭化物からなる非酸化膜は硬度が高く、耐摩耗性に優れ
るのが特長であり被覆工具に多用されているが、その欠
点は酸化されやすく特性が安定しないことである。
【0004】このため従来より特開昭56−15676
7や特許番号2535866号、特許番号255610
1号等が提案されている。特開昭56−156767で
は工具または部品の表面にチタン、ジルコニウム、ハフ
ニウムまたはこれらの合金の炭化物、窒化物またはこれ
らに酸素を固溶させた化合物を被覆したものからなり、
部品の表面に対して<220>の方向に強く配向し、
{220}面からのX線回折ピークと2番目に強い回折
ピークとの強度比が100:15以下であることを特徴
とする高硬度物質被覆品が提案されている。また、特許
番号2556101号ではX線回折における1番目のピ
ーク高さが(200)面に現れ、2番目のピーク高さが
(220)面に現れ、さらに3番目のピーク高さが(1
11)面に現れるピーク高さ分布を有するTiの炭化物
を被覆したものが提案されており、また、この特許番号
2556101号では従来のTiC層ではX線回折にお
ける最高のピーク高さが(200)面に現れ、同2番目
が(111)面に、同3番目が(220)面に現れると
記述されている。また、特開平2−159363、特開
平5−287323、特開平5−295517では基体
と接する第一層に(111)面の配向の強いTiの炭化
物、窒化物、炭窒化物の膜あるいはB1型化合物を用い
ることを提案している。また、特開平8−281502
では(200)面に対する(111)面の強度比が2〜
60の周期律表4a、5a、6a族の炭化物、窒化物、
炭酸化物、窒酸化物からなる硬質膜が提案されている。
【0005】上記のように従来の周期律表IVa、Va、
VIa族金属の炭化物からなる非酸化膜、特にTiの炭化
物層はX線回折時の最高ピークがいずれも(200)面
や(220)面に現れ(311)面や(111)面の強
度は低いのが特徴である。また、(111)面の強度が
高い膜を用いる場合においても、基体と接する第一層の
(111)面の強度が高いことが必須になっていたり、
あるいは、(111)面と(200)面間のX線回折強
度比のみを規定しその他の(220)面、(311)面
等を考慮していないものである。また、これら従来例の
多くはイオンプレーティング方法により硬質膜を成膜す
るものでありこの場合化学反応を用いて成膜するCVD
方法により成膜した例は記載されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の被覆工具に
おける非酸化膜(硬質皮膜)の欠点を踏まえて、本発明
が解決しようとする課題は等価X線回折強度PR(20
0)やPR(220)の値が小さい周期律表IVa、V
a、VIa族金属の炭化物からなる非酸化膜、特にTiの
炭化物層を被覆することにより、切削特性等の品質が安
定した炭化チタン被覆工具を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は成膜条件を
鋭意検討し、(200)面や(220)面の配向即ち等
価X線回折強度PR(200)やPR(220)が小さ
い周期律表IVa、Va、VIa族金属の炭化物からなる非
酸化膜、特にTiの炭化物層を被覆した工具の切削特性
等が優れることを見出し、本発明に想到した。
【0008】すなわち本発明は、基体表面に周期律表の
IVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、
並びに酸化アルミニウムのいずれか一種の単層皮膜また
は二種以上の多層皮膜を有しその少なくとも一層がチタ
ンの炭化物からなる炭化チタン被覆工具において、前記
チタンの炭化物層の等価X線回折強度PR(111)、
PR(200)、PR(220)、PR(311),P
R(222)のうちPR(311)が最も大きいことを
特徴とする炭化チタン被覆工具である。また、本発明
は、基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭
化物、窒化物、炭窒化物、並びに酸化アルミニウムのう
ちの二種以上の多層皮膜を有しその多層皮膜の基体表面
側から第二層以降の少なくとも一層がチタンの炭化物か
らなる炭化チタン被覆工具において、前記チタンの炭化
物層の等価X線回折強度PR(111)、PR(20
0)、PR(220)、PR(311),PR(22
2)のうちPR(111)が最も大きいことを特徴とす
る炭化チタン被覆工具である。また、前記チタンの炭化
物層の下地がチタンの炭窒化物層であることを特徴とす
るものである。また、前記チタンの炭化物層の表面に酸
化アルミニウム膜を被覆していることを特徴とするもの
であり、前記酸化アルミニウム膜の表面にチタンの窒化
膜が形成されていることを特徴とするものである。ま
た、周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化
物、炭窒化物のうちの少なくとも一種以上とFe、N
i、Co、W、Mo、Crのうちの少なくとも一種以上
とよりなる超硬質合金を基体とすることを特徴とするも
のである。
【0009】
【発明の実施の形態】図2は代表的な本発明品の一例を
示すものであり、後述の実施例の条件により基体表面に
TiNとTiCNを成膜した後、TiC層を成膜した炭
化チタン被覆工具の皮膜部分を試料面にして2θ−θ走
査法により測定したX線回折パターンを示したものであ
る。図1は後に詳説するように図2のX線回折パターン
から求めた各(hkl)面の等価X線回折強度PR(h
kl)値を図示したものである。X線源にはCuのKα
1(波長λ=1.5405A)を用いた。図1から本発
明品のTiC層の等価X線回折強度はPR(111)、
PR(200)、PR(220)、PR(311)、P
R(222)のうちPR(311)あるいはPR(11
1)が最も大きく、(311)面あるいは(111)面
の配向が最も強いことがわかる。
【0010】等価ピーク強度PR(hkl)はTiの炭
化物層の(hkl)面からのX線ピーク強度を定量的に
評価するために次式により定義したものである。ここで
I(hkl)は(hkl)面による実測時のX線回折強
度を表し、I0(hkl)はASTMファイル No.3
2−1383 (Powder Diffractio
n File Published by JCPDS
International Center for
Diffraction Data)に記載されてい
るTiCのX線回折強度であり、配向が等方的である粉
末粒子の(hkl)面からのX線回折強度を表してい
る。表1はASTMファイル No.32−1383に
記載されているTiCのX線回折強度I0(hkl)とd
定数からX線源に上記CuKα1線を用いた時に得られ
る2θ値を計算したものをまとめたもので、等方的に配
向しているTiC粉末粒子の2θ値とX線回折強度を表
している。
【0011】
【表1】
【0012】本発明におけるPR(hkl)は、AST
Mファイルに記載された等方粒子のX線ピーク強度に対
するX線回折で実測した皮膜の(hkl)面からのX線
回折ピーク強度の相対強度を示しており、PR(hk
l)値が大きい程(hkl)面からのX線ピーク強度が
他のピーク強度よりも強く、(hkl)面方向に測定物
(皮膜)が配向していることを示す。 PR(hkl)={I(hkl)/I0(hkl)}/[Σ
{I(hkl)/I0(hkl)}/5] 但し、(hkl)=(111)、(200)、(22
0)、(311)、(222) 図1、図2等より、本発明の炭化チタン被覆工具におけ
るTiの炭化物層のPR(hkl)を測定すると後述の
実施例で詳説するように、そのTiの炭化物層はPR
(111)、PR(200)、PR(220)、PR
(311)、PR(222)のうちPR(311)また
はPR(111)が大きく、(311)面または(11
1)面の配向が最も強いことがわかる。
【0013】本発明における被覆方法には既知の成膜方
法を適用することが可能である。例えば、通常の化学蒸
着法(熱CVD)、プラズマを付加した化学蒸着法(P
ACVD)、イオンプレーティング法等を用いることが
できる。用途は切削工具に限るものではなく、Tiの炭
化物膜を含む単層あるいは多層の硬質皮膜により被覆さ
れた耐摩耗材や金型、溶湯部品等でも良い。また酸化ア
ルミニウム膜はκ型酸化アルミニウム単相、α型酸化ア
ルミニウム単相に限るものではなく他の酸化物、例えば
κ型酸化アルミニウムとα型酸化アルミニウムとの混合
膜やκ型酸化アルミニウム、α型酸化アルミニウムとγ
型酸化アルミニウム、θ型酸化アルミニウム、δ型酸化
アルミニウム、χ型酸化アルミニウム等、他の酸化アル
ミニウムとの混合膜あるいは酸化アルミニウムと酸化ジ
ルコニウム等他の酸化物との混合膜であっても同様の効
果が得られる。
【0014】本発明においてTiの炭化物膜または酸化
アルミニウム膜は必ずしも最外層である必要はなく、例
えば更にその上に少なくとも一層のチタン化合物(例え
ばTiN層等)を被覆しても良い。
【0015】次に本発明による被覆工具を実施例によっ
て具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に
限定されるものでない。
【0016】(実施例1)WC72%,TiC8%,
(Ta,Nb)C11%,Co9%(%はいずれも重量
%を示す。)の組成よりなる切削工具用超硬基板をCV
D炉内にセットし、その表面に、化学蒸着法によりH2
キャリヤーガスとTiCl4ガスとN2ガスとを原料ガス
に用い0.3μm厚さのTiNを900℃でまず形成
し、次に、H2キャリヤーガスとTiCl4ガスとCH3
CNガスを原料ガスに用い6μm厚さのTiCN膜を9
00℃で成膜した後、950〜1020℃でCH4/T
iCl4ガスの容積比が4〜10のTiCl4ガスとCH
4ガスとH2キャリヤーガスとをトータル2,200ml
/分で120分間流してTiC膜を成膜し本発明品(被
覆工具)No.1〜3を作製した。作製した膜のX線回
折を理学電気(株)製のX線回折装置(RU−300
R)を用いて2θ−θ法により2θが20〜90°の範
囲内で行った。X線源には上記CuKα1線のみを用
い、Kα2線とノイズとは装置に内蔵されたソフトによ
り除去し、実施例1の一例を示す図2のX線回折結果を
得た。図2と同様のX線回折パターンから求めた本発明
品No.1〜3のTiC膜の各(hkl)面ピークのX
線回折強度I(hkl)の測定値を表2の本発明品欄
に、その各X線回折強度I(hkl)から式(1)によ
り求めた等価X線強度比PR(hkl)値を表3のN
o.1〜3にまとめた。図1は表3中のNo.1〜3に
まとめた本発明品No.1〜3の等価X線強度比PR
(hkl)値を図示したものである。
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】表3のNo.1〜3と図1より、本発明品
はPR(111)、PR(200)、PR(220)、
PR(311)、PR(222)のうちPR(111)
あるいはPR(311)が最も大きく(111)面や
(311)面の配向が最も強いことがわかる。なお、実
測される2θ値は表1にまとめたASTMファイルに記
載されている2θ値の前後で微妙に異なるため、図2等
のX線回折パターンにおいてTiC(炭化チタン)のピ
ークを同定するときは、2θ値とともに、その前後のW
Cのピーク、TiCNのピーク、TiNのピーク、κ-A
l2O3のピーク、α-Al2O3のピーク等との位置関係も考慮
して決定した。
【0020】(従来例1)Tiの炭化物膜の等価X線強
度比PR(hkl)値の差異による炭化チタン膜被覆工
具の切削特性への影響を明らかにするために、実施例1
と同様にWC72%,TiC8%,(Ta,Nb)C1
1%,Co9%(%はいずれも重量%を示す。)の組成
よりなる切削工具用超硬基板をCVD炉内にセットし、
その表面に、化学蒸着法によりH2キャリヤーガスとT
iCl4ガスとN2ガスとを原料ガスに用い0.3μm厚
さのTiNを900℃でまず形成し、次に、H2キャリ
ヤーガスとTiCl4ガスとCH3CNガスを原料ガスに
用い6μm厚さのTiCN膜を900℃で成膜した後、
950〜1020℃でCH4/TiCl4ガスの容積比が
2〜3のTiCl4ガスとCH4ガスとH2キャリヤーガ
スとをトータル2,200ml/分で120分間流して
TiC膜を成膜し従来品(従来の被覆工具)No.4、
5を作製した。作製した膜のX線回折パターンを実施例
1と同様にして測定し得られた炭化チタン膜の各ピーク
の測定値I(hkl)を表2のNo.4、5に、等価X
線強度比PR(hkl)値を表3のNo.4、5に各々
示した。表3より、従来品No.4、5はPR(20
0)値やPR(220)値が最大であり、(200)面
や(220)面の配向が強いことがわかる。
【0021】次に、実施例1および従来例1の条件で製
作した切削工具(スローアウェイチップ)を用いて、以
下の条件で連続切削し、平均逃げ面摩耗量が0.4m
m、クレーター摩耗が0.1mmのどちらかに達した時
間を寿命と判断した。 被削材 FC25(HB230) 切削速度 180m/min 送り 0.3mm/rev 切り込み 1.5mm 水溶性切削油使用 この切削試験の結果を表4に示した。表4より、従来例
1の条件で作製した従来品のスローアウェイチップN
o.4、5はいずれもは20分以内の切削で寿命に達し
ているのに対して、実施例1の条件で作製した本発明に
よるスローアウェイチップのNo.1〜3の寿命はいず
れも30〜40分間切削できる良好なもので、切削耐久
特性が優れていることが判明した。また、表4におい
て、切削寿命が35分以上のものはPR(111)、P
R(200)、PR(220)、PR(311)、PR
(222)のうちでPR(311)値が最も強く、次い
でPR(111)値が強いことがわかった。
【0022】
【表4】
【0023】(実施例2)上記実施例1の手順で、化学
蒸着法によりH2キャリヤーガスとTiCl4ガスとN2
ガスとを原料ガスに用い0.3μm厚さのTiNを90
0℃でまず形成し、次に、H2キャリヤーガスとTiC
4ガスとCH3CNガスを原料ガスに用い6μm厚さの
TiCN膜を900℃で成膜した後、950〜1020
℃でCH4/TiCl4ガスの容積比が4〜10のTiC
4ガスとCH4ガスとH2キャリヤーガスとをトータル
2,200ml/分で120分間流してTiC膜を成膜
し、次いで、AlCl3ガスとH2ガス2l/分とCO2
ガス100ml/分およびH2Sガス8ml/分とをC
VD炉内に流し1010℃でκ型酸化アルミニウムを成
膜した。その後、H2ガス4l/分とTiCl4ガス50
ml/分とN2ガス1.3l/分を流し1010℃で窒
化チタニウム膜を成膜し本発明品(被覆工具)No.2
1、22を作製した。作製した膜のX線回折パターンを
実施例1と同様にして測定した実施例2の一例を示す図
3のX線回折結果を得た。また、図3と同様のX線回折
パターンから求めた本発明品No.21、22の炭化チ
タン膜の各ピークのX線回折強度I(hkl)の測定値
を表5に、そのX線回折強度I(hkl)から式(1)
により求めた等価X線強度比PR(hkl)値を表6に
まとめた。表6より、本発明品はPR(111)、PR
(200)、PR(220)、PR(311)、PR
(222)のうちPR(111)あるいはPR(31
1)が最も大きく(111)面や(311)面の配向が
最も強いことがわかる。
【0024】
【表5】
【0025】
【表6】
【0026】(従来例2)また、実施例2と同様の手順
で、化学蒸着法によりH2キャリヤーガスとTiCl4
スとN2ガスとを原料ガスに用い0.3μm厚さのTi
Nを900℃でまず形成し、次に、H2キャリヤーガス
とTiCl4ガスとCH3CNガスを原料ガスに用い6μ
m厚さのTiCN膜を900℃で成膜した後、950〜
1020℃でCH4/TiCl4ガスの容積比が2〜3の
TiCl4ガスとCH4ガスとH2キャリヤーガスとをト
ータル2,200ml/分で120分間流してTiC膜
を成膜し、次いで、AlCl3ガスとH2ガス2l/分と
CO2ガス100ml/分およびH2Sガス8ml/分と
をCVD炉内に流し1010℃でκ型酸化アルミニウム
を成膜した。その後、H2ガス4l/分とTiCl4ガス
50ml/分とN2ガス1.3l/分を流し1010℃
で窒化チタニウム膜を成膜し従来品(従来の被覆工具)
No.23、24を作製した。作製した膜のX線回折パ
ターンを実施例2と同様にして測定し得られた炭化チタ
ン膜の各ピークのX線回折強度の測定値I(hkl)と
その測定値I(hkl)から求めたPR(hkl)を表
5、表6のNo.23、24にまとめた。表6より、従
来品23、24はPR(200)やPR(220)がP
R(111)および/またはPR(311)よりも大き
く、(200)面や(220)面の配向が強いことがわ
かる。
【0027】次に、実施例2および従来例2の条件で製
作した切削工具(スローアウェイチップ)を用いて、以
下の条件で連続切削し、平均逃げ面摩耗量が0.4m
m、クレーター摩耗が0.1mmのどちらかに達した時
間を寿命と判断した。 被削材 S53C 切削速度 250m/min 送り 0.35mm/rev 切り込み 2.0mm 水溶性切削油無使用 この切削試験の結果を表7に示した。表7より、従来例
2の条件で作製した従来品No.23、24のスローア
ウェイチップは20分間以内の切削で寿命に達している
のに対して、実施例2の条件で作製した本発明によるス
ローアウェイチップNo.21、22の寿命はいずれも
30〜40分間切削できる良好なもので、切削耐久特性
が優れていることが判明した。
【0028】
【表7】
【0029】(実施例3)上記実施例1の手順で、化学
蒸着法によりH2キャリヤーガスとTiCl4ガスとN2
ガスとを原料ガスに用い0.3μm厚さのTiNを90
0℃でまず形成し、次に、H2キャリヤーガスとTiC
4ガスとCH3CNガスを原料ガスに用い8μm厚さの
TiCN膜を900℃で成膜した後、950〜1020
℃でCH4/TiCl4ガスの容積比が3〜10のTiC
4ガスとCH4ガスとH2キャリヤーガスとをトータル
2,200ml/分で90分間流してTiC膜を成膜
し、次いで、AlCl3ガスとH2ガス2l/分とCO2
ガス100ml/分およびH2Sガス8ml/分とをC
VD炉内に流し1020℃でα型酸化アルミニウムを成
膜し本発明品(被覆工具)No.41、42を作製し
た。作製した膜のX線回折パターンを実施例1と同様に
して測定して得た実施例3の一例を図4に示す。また、
図4と同様のX線回折パターンから求めた本発明品N
o.41、42の炭化チタン膜の各ピークのX線回折強
度I(hkl)の測定値を表8に、そのX線回折強度I
(hkl)から式(1)により求めた等価X線強度比P
R(hkl)値を表9のNo.41、42にまとめた。
表9のNo.41、42より、本発明品No.41、4
2はPR(111)、PR(200)、PR(22
0)、PR(311)、PR(222)のうちPR(1
11)あるいはPR(311)が最も大きく(111)
面や(311)面の配向が最も強いことがわかる。
【0030】(従来例3)また、実施例3と同様の手順
で、化学蒸着法によりH2キャリヤーガスとTiCl4
スとN2ガスとを原料ガスに用い0.3μm厚さのTi
Nを900℃でまず形成し、次に、H2キャリヤーガス
とTiCl4ガスとCH3CNガスを原料ガスに用い8μ
m厚さのTiCN膜を900℃で成膜した後、950〜
1020℃でCH4/TiCl4ガスの容積比が2〜3の
TiCl4ガスとCH4ガスとH2キャリヤーガスとをト
ータル2,200ml/分で90分間流してTiC膜を
成膜し、次いで、AlCl3ガスとH2ガス2l/分とC
2ガス100ml/分およびH2Sガス8ml/分とを
CVD炉内に流し1020℃でα型酸化アルミニウムを
成膜し従来品(従来の被覆工具)No.43、44を作
製した。作製した膜のX線回折パターンを実施例3と同
様にして測定し得られた炭化チタン膜の各ピークのX線
回折強度の測定値Iとその測定値Iから求めたPR(h
kl)値を表8、表9のNo.43、44にまとめた。
表9のNo.43、44はPR(200)やPR(22
0)がPR(111)、PR(311)よりも高く(2
20)面や(200)面の配向が強いことがわかる。
【0031】
【表8】
【0032】
【表9】
【0033】次に、実施例3および従来例3の条件で製
作した切削工具(スローアウェイチップ)を用いて、実
施例1、従来例1と同様にしてFC25材を連続切削
し、平均逃げ面摩耗量が0.4mm、クレーター摩耗が
0.1mmのどちらかに達した時間を寿命と判断した。
この切削試験の結果、従来例4の条件で作製した従来品
No.43、44のスローアウェイチップは20分間の
切削で寿命に達しているのに対して、実施例4の条件で
作製した本発明によるスローアウェイチップNo.4
1、42の寿命はいずれも30〜40分間切削できる良
好なもので、切削耐久特性が優れていることが判明し
た。またPR(311)が最も強い時に切削寿命が40
分を越え特に切削耐久特性が優れることがわかった。
【0034】(実施例4)上記実施例1と同様にWC7
2%,TiC8%,(Ta,Nb)C11%,Co9%
(%はいずれも重量%を示す。)の組成よりなる切削工
具用超硬基板をCVD炉内にセットし、その表面に、化
学蒸着法により980℃でCH4/TiCl4ガスの容積
比が7のTiCl4ガスとCH4ガスとH2キャリヤーガ
スとをトータル2,200ml/分で120分間流して
2μm厚さのTiC膜を成膜した本発明品(被覆工具)
を製作した。作製した膜のX線回折パターンを実施例1
と同様にして測定し得られた一例を図5に示すととも
に、図5と同様のX線回折パターンから求めた本発明品
の炭化チタン膜の各ピークのX線回折強度Iの測定値を
表10のNo.51に、そのX線回折強度Iから式
(1)により求めた等価X線強度比PR(hkl)値を
表11のNo.51にまとめた。表11より、本発明品
No.51はPR(111)、PR(200)、PR
(220)、PR(311)、PR(222)のうちP
R(311)が大きく、PR(111)が略2番目相当
であり、(311)面の配向が最も強いことがわかる。
【0035】
【表10】
【0036】
【表11】
【0037】(従来例4)上記実施例4と同一ロットの
基板表面に、化学蒸着法により980℃でCH4/Ti
Cl4ガスの容積比が3のTiCl4ガスとCH4ガスと
2キャリヤーガスとをトータル2,200ml/分で
20分間流して2μm厚さのTiC膜を成膜した従来品
(従来の被覆工具)No.52を製作した。作製した膜
のX線回折パターンから求めた炭化チタン膜の各ピーク
のX線回折強度Iの測定値を表10のNo.52に、そ
のX線回折強度Iから式(1)により求めた等価X線強
度比PR(hkl)値を表11のNo.52にまとめ
た。表11より、本従来品No.52はPR(200)
がPR(111)、PR(220)、PR(311)、
PR(222)よりも大きく(200)面の配向が強い
ことがわかる。
【0038】次に、実施例4および従来例4の条件で製
作した切削工具(スローアウェイチップ)を用いて、実
施例1、従来例1と同様にして連続切削し、平均逃げ面
摩耗量が0.4mm、クレーター摩耗が0.1mmのど
ちらかに達した時間を寿命と判断した。この切削試験の
結果、従来例4の条件で作製した従来品のスローアウェ
イチップNo.52は平均10分間の切削で寿命に達し
ているのに対して、実施例4の条件で作製した本発明に
よるチップNo.51の寿命は平均20分間切削でき、
切削耐久特性が優れていることが判明した。
【0039】以上より、等価X線回折強度PR(11
1)、PR(200)、PR(220)、PR(31
1)、PR(222)のうちでPR(311)あるいは
PR(111)が最大であるチタンの炭化物層を被覆す
ることにより切削耐久特性に優れた炭化チタン被覆工具
を得られることがわかる。本発明においてはTiの炭化
膜の組成はTiCに限るものではなく微量(不可避)の
添加物、不純物が含まれたものでも上記実施例と同様の
作用効果が得られることは勿論である。また、下地膜は
TiCNに限るものではなく、例えばTiN膜上にTi
の炭化膜を成膜した場合も上記実施例と同様の作用効果
が得られた。また、工具の形状はスローアウェイ型の切
削工具に限るものではなく、他の形状例えばエンドミル
形状等他の形状であっても同様の効果が得られ、ロール
等の耐摩耗材においても同様の効果が確認された。
【0040】
【発明の効果】上述のように、本発明によれば、炭化チ
タン膜の密着性が良く、機械特性の優れた長寿命の炭化
チタン被覆工具が実現でき、極めて有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる炭化チタン被覆工具の等価X線
回折強度比の一例を示す図である。
【図2】本発明に係わる炭化チタン被覆工具のX線回析
パターンの一例を示す図である。
【図3】本発明に係わる炭化チタン被覆工具のX線回析
パターンの一例を示す図である。
【図4】従来例に係わる炭化チタン被覆工具のX線回析
パターンを示す図である。
【図5】本発明に係わる炭化チタン被覆工具のX線回析
パターンの一例を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 植田 広志 千葉県成田市新泉13番地の2日立ツール株 式会社成田工場内 (72)発明者 島 順彦 千葉県成田市新泉13番地の2日立ツール株 式会社成田工場内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa
    族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、並びに酸化アルミ
    ニウムのいずれか一種の単層皮膜または二種以上の多層
    皮膜を有しその少なくとも一層がチタンの炭化物からな
    る炭化チタン被覆工具において、前記チタンの炭化物層
    の等価X線回折強度PR(111)、PR(200)、
    PR(220)、PR(311),PR(222)のう
    ちPR(311)が最も大きいことを特徴とする炭化チ
    タン被覆工具。
  2. 【請求項2】 基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa
    族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、並びに酸化アルミ
    ニウムのうちの二種以上の多層皮膜を有しその多層皮膜
    の基体表面側から第二層以降の少なくとも一層がチタン
    の炭化物からなる炭化チタン被覆工具において、前記チ
    タンの炭化物層の等価X線回折強度PR(111)、P
    R(200)、PR(220)、PR(311),PR
    (222)のうちPR(111)が最も大きいことを特
    徴とする炭化チタン被覆工具。
  3. 【請求項3】前記チタンの炭化物層の下地がチタンの炭
    窒化物層であることを特徴とする請求項1または2に記
    載の炭化チタン被覆工具。
  4. 【請求項4】前記チタンの炭化物層の表面に酸化アルミ
    ニウム膜を被覆していることを特徴とする請求項1乃至
    3のいずれかに記載の炭化チタン被覆工具。
  5. 【請求項5】 前記酸化アルミニウム膜の表面にチタン
    の窒化膜が形成されていることを特徴とする請求項4に
    記載の炭化チタン被覆工具。
  6. 【請求項6】 周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭
    化物、窒化物、炭窒化物のうちの少なくとも一種以上と
    Fe、Ni、Co、W、Mo、Crのうちの少なくとも
    一種以上とよりなる超硬質合金を基体とすることを特徴
    とする請求項1乃至5のいずれかに記載の炭化チタン被
    覆工具。
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