JP4759804B2 - 液晶表示素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、液晶表示素子の製造方法に関し、特に、画素電極上に均一かつ極薄の配向膜を形成可能な液晶表示素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子は薄型、軽量および低消費電力などの利点を有するため、近年、広く普及している。またその一方で、さらなる高品質の液晶表示素子の提供が要望されている。
【0003】
高品質の液晶表示素子を提供するためには、たとえば配向膜形成時に立体的障害となる画素間段差を周囲に有する微小画素上に、均一かつ極薄の配向膜をいかにして形成するかが問題となる。液晶表示素子の配向膜は、量産性に優れている印刷法により、ポリイミドに代表される有機材料からなるワニス(溶液)を画素電極上に印刷することにより形成されるのが一般的である。
【0004】
たとえば、透過型液晶表示素子においては、印刷法により画素電極上に均一な配向膜が形成できる。これは、ポリイミドワニス(配向材料を有機溶液等により希釈した溶液)が、配向膜を形成する下地となるITO(Indium Thin Oxide)などの透明電極に対して高い親和性を有するため、すなわち、ポリイミドワニスをITOなどの透明電極に塗布した場合、良好な塗れ性が得られるためである。
【0005】
一方、近年、開発が盛んに行われ、商品化されつつあるSi基板をベースとした反射型液晶表示素子においては、印刷法により画素電極上に均一な配向膜を形成することは困難である。これは、ポリイミドワニスが、配向膜を形成する際の下地となる高反射率特性を有する金属材料表面(一般的に金属自然酸化膜および他の有機汚染物質等が混在)に対して、具体的にはAl等からなる金属材料表面に対して親和性が低いため、すなわちポリイミドワニスを金属材料表面に塗布した場合、塗れ性が悪いためである。
【0006】
このため、たとえば、スパッタリング法あるいは電子ビーム法を用いて、反射型画素電極上に酸化珪素または酸化アルミニウムの薄膜を成膜することにより、金属材料表面の塗れ性の改善を図る方法が提案されている(特開平10−177176号公報参照)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述したような方法により反射型画素電極上に酸化珪素または酸化アルミニウムの薄膜を成膜すると、液晶表示素子を低コスト、高スループットで製造することは困難である。
【0008】
また、ポリイミドで代表される有機系配向材料の薄膜均一性の良否は、液晶表示素子の性能および歩留まりに多大な影響を及ぼすため、印刷、塗布むらを抑制し、さらに配向膜の均一性を高めることが重要な課題となっている。さらに、液晶表示素子の駆動電圧を低減するために、配向膜を極薄膜化することも重要な課題となっている。
【0009】
したがって、この発明の目的は、製造コストを低減でき、量産性にも優れた液晶表示素子の製造方法を提供することにある。
【0010】
また、この発明の目的は、画素電極上に均一性が高くかつ極薄の配向膜を形成できる液晶表示素子の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、配向制御膜を形成する前段で、画素電極表面をUVオゾン処理し、配向制御膜を形成するようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、配向制御膜を形成する前段で、画素電極表面を酸素プラズマ処理し、配向制御膜を形成するようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項1の発明は、画素電極作製直後に画素電極表面に保護膜を形成し、配向制御膜を形成する直前で保護膜をすべて剥離し、保護膜が剥離された画素電極表面を熱酸化処理し、配向制御膜を形成する液晶表示素子の製造方法である。
【0014】
請求項1に係る発明によれば、画素電極作成直後に画素電極表面に保護膜を形成し、配向制御膜を形成する前に保護膜を剥離し、保護膜が剥離された画素電極表面を、高温酸化処理するようにしたので、均一かつ極薄の配向膜を画素電極表面上に形成できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この参考発明の参考形態および発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、参考形態および実施形態の全図において、同一または対応する部分には同一の符号を付ける。
【0016】
図1はこの参考発明の第1の参考形態による反射型液晶表示素子の構成を示す断面図である。図1に示すように、この参考発明の第1の参考形態による液晶表示素子は、アクティブマトリクス基板1、対向基板2、配向膜3、配向膜4、液晶層5およびスペーサ6からなる。
【0017】
アクティブマトリクス基板1は、基板11、素子12、絶縁膜13、絶縁膜14および画素電極15からなる。基板11は、たとえばシリコン基板である。基板11上に設けられた素子12は、たとえばC−MOS素子である。素子12上に設けられた絶縁膜13および絶縁膜14は、例えばSiO2、SiNなどからなる絶縁膜である。絶縁膜14上に設けられた画素電極15は、たとえば可視光波長領域において高反射率特性を有するAl材料からなる膜厚60〜100nm程度の反射型画素電極である。したがって、画素電極15間における画素間段差31は、60〜100nm程度となる。また、図2に示すように、画素電極15は、たとえば9.3μm×9.3μmの正方形の形状を有する。ここで、画素電極15間の距離は、たとえば0.7μmである。この画素電極15はたとえばスパッタリングにより形成される。
【0018】
対向基板2は基板21および透明電極22からなる。基板21は、たとえばガラス基板である。基板21上に形成された透明電極22は、たとえばインジウムと錫の合金の酸化物(ITO)からなる。
【0019】
画素電極15上に設けられた配向膜3および透明電極22上に設けられた配向膜4は、たとえば膜厚が15nmのポリイミド系有機化合物からなる。この参考発明の第1の参考形態においては、具体的にはポリイミド系有機化合物としてJALS−682(JSR製)を用いる。
【0020】
アクティブマトリクス基板1と対向基板2との間に挟持された液晶層5は、たとえば垂直液晶からなる。スペーサ6は対向基板2とアクティブマトリクス基板1との間の隙間、すなわち液晶層の厚みを一定に保つためのものであり、たとえば直径1μmの球形のガラスである。このスペーサ6は、たとえばアクティブマトリクス基板1の表面あるいは対向基板2の表面1mm2につき100個程度となるように散布されている。
【0021】
次に、上述のように構成された液晶表示素子における配向膜3の形成方法について説明する。
【0022】
図3はこの参考発明の第1の参考形態における配向膜3の形成方法を説明するため模式図である。フレキソ印刷は、図3に示すように、アニロックスロール43および印刷版用ロール45を用いて行われる。ここで、アニロックスロール43には、ディスペンサ41により供給されたポリイミドワニス42をアニロックスロール43上に均一に形成するためのドクターブレード44が備えられている。また、印刷版用ロール45には、アクティブマトリクス基板1に印刷するパターンが形成された印刷版(樹脂凸版)46が備えられている。なお、膜厚調整は配向制御材料の固形分濃度を変えることにより行われる。
【0023】
まず、アクティブマトリクス基板1を真空チャンバー内に搬入し、その所定位置に載置する。次に、低圧水銀ランプを用い、画素電極15にUVオゾン処理を行う。ここで、低圧水銀ランプが照射する光の波長は、たとえば185nmおよび254nmである。なお、低圧水銀ランプによる光の照射は、画素電極15の材料の光学特性などが劣化しない時間範囲内で行う。たとえば、1〜10分間(表面照射パワー:〜50mW/cm2)の範囲内で行う。
【0024】
具体的には、UVオゾン処理は以下のように行われる。まず、チャンバー内の酸素が185nmの波長の光を吸収し、オゾンが発生する。次に、発生したオゾンが254nmの波長の光を吸収し、励起酸素原子と酸素分子とに解離する。一方、画素電極15上に付着あるいは混合している有機物は、185nmの光により分解される。次に、分解物は上述した励起酸素原子と反応し、揮発性物質である二酸化炭素および水などになる。
【0025】
上述したUVオゾン処理前に、金属自然酸化物が画素電極15の表面上に生長し、さらにこの成長した金属自然酸化物上に汚染物質(有機物など)が付着あるいは混在しているが、上述したUVオゾン処理により画素電極15の表面上の有機物などを排除できる。これにより、UVオゾン処理前には30度以上ある画素電極表面上に対するポリイミドの接触角を、5度以下まで低減できる。
【0026】
次に、アクティブマトリクス基板1を真空チャンバより取り出し、印刷テーブル47の所定位置に載置する。次に、図3に示すように、アニロックスロール43とドクターブレード44との間に、ディスペンサ41により所定量のワニス42を供給する。次に、アニロックスロール43とドクターブレード44の押し込み量を調整し、アニロックスロール43を回転させ、ドクターブレード44によりアニロックスロール43上にワニス42を均一に形成する。
【0027】
次に、アニロックスロール43と同期して回転する印刷版用ロール45に取り付けられた印刷版46に、ワニス42を転写する。ここで、アニロックスロール43と印刷版用ロール45の押し込み量は予め最適化されている。
【0028】
次に、アクティブマトリクス基板1を載置した印刷テーブル47を印刷版用ロール45の回転と同期して搬送し、印刷版46上に転写されたワニス42をアクティブマトリクス基板1に転写する。ここで、印刷版用ロール45とアクティブマトリクス基板1の押し込み量は予め調整されている。
【0029】
次に、画素電極15上に形成された配向膜3をプリベークすることにより、レベリングを行う。ここで、配向膜3のプリベークは、たとえば50℃の温度により、15分間行われる。
【0030】
最後に、画素電極15上に形成された配向膜3をポストベークする。ここで、配向膜3のポストベークは、たとえば180℃の温度により、60分間行われる。これにより、溶媒を完全に除去し、固形分のみを残すことができる。
【0031】
上述したベーク処理後に、触針式の段差測定機により配向膜3の膜厚分布を測定した。測定の結果、段差は有効面内において1nm以下であり、画素電極面内においても1nm以下であった。すなわち、上述した処理により、配向膜3の均一表面粗さ(配向膜3の厚さ15nmに対する段差の割合)を、7%以下に制御できる。
【0032】
次に、この参考発明の第2の参考形態について説明する。液晶表示素子の構成は第1の参考形態と同様であるのでここでは省略する。
【0033】
以下、この参考発明の第2の参考形態における配向膜3の形成方法について説明する。
【0034】
まず、アクティブマトリクス基板1を真空チャンバー内に搬入し、その所定位置に載置する。次に、画素電極15に酸素プラズマ処理(反応性ドライエッチング(RIE,reactive ion etching))を行う。
【0035】
上述した酸素プラズマ処理前に、金属自然酸化物が画素電極15の表面上に生長し、さらにこの成長した金属自然酸化物上に汚染物質(有機物など)が付着あるいは混在しているが、上述した酸素プラズマ処理により画素電極15の表面上の有機物などを排除できる。これにより、処理前には30度以上ある画素電極15表面上に対するポリイミドの接触角を、5度以下まで低減できる。以下の工程は第1の参考形態と同様であるので説明を省略する。
【0036】
ベーク処理後に、触針式の段差測定機により配向膜3の膜厚分布を測定した。測定の結果、上述した第1の参考形態における測定結果と同様に、段差は有効面内において1nm以下であり、画素電極面内においても1nm以下であった。すなわち、上述した処理により、配向膜3の均一表面粗さ(配向膜3の厚さ15nmに対する段差の割合)を、7%以下に制御できる。
【0037】
さらに、第1の参考形態における配向膜3の面内均一性と、第2の参考形態における配向膜3との面内均一性との比較を行った。その結果、第2の参考形態において作成された配向膜3、すなわち酸素プラズマ処理後に形成された配向膜3のほうが、面内均一性が高いことが分かった。
【0038】
次に、この参考発明の第3の参考形態について説明する。液晶表示素子の構成は第1の参考形態と同様であるのでここでは省略する。ただし、この第3の参考形態においては、配向膜3はたとえば膜厚が30nmのポリイミド系有機化合物からなる。また、配向膜3および配向膜4のポリイミド系有機化合物として、AL1254(JSR製)を用いる。
【0039】
以下、この参考発明の第3の参考形態における配向膜3の形成方法について説明する。
【0040】
まず、画素電極15に剥離処理を行い、金属表面層を完全に露出させる。具体的には、アルゴンおよび酸素プラズマによるRIEを行い、金属表層面を完全に露出させる。これにより、画素電極15表面上に付着あるいは混在した金属自然酸化物および有機物を強制的に排除できる。
【0041】
次に、アクティブマトリックス基板1をクリーンオーブン中に搬入し、所定位置に載置する。次に、クリーンオーブン中に酸素を導入しながら熱酸化処理を行う。ここで、この熱酸化処理はたとえばクリーンオーブン中の温度を200℃で、1時間保持することにより行われる。これにより、画素電極15上に一定の膜厚の金属酸化物を成長させることができる。
【0042】
上述した処理により、画素電極15に対するポリイミドの接触角を、30度から5度以下まで低減できる。以下の工程は第1の参考形態と同様であるので説明を省略する。
【0043】
ベーク処理後に、触針式の段差測定機により配向膜3の膜厚分布を測定した。測定の結果、段差は有効面内において2nm以下であり、画素電極15面内においても2nmであった。すなわち、上述した処理により、配向膜3の均一表面粗さ(配向膜3の厚さ30nmに対する段差の割合)を、7%以下に制御できる。
【0044】
次に、この発明の一実施形態について説明する。液晶表示素子の構成は第1の参考形態と同様であるのでここでは省略する。ただし、この一実施形態においては、配向膜3はたとえば膜厚が60nmのポリイミド系有機化合物からなる。また、この一実施形態においては、配向膜3および配向膜4のポリイミド系有機化合物として、AL1524(JSR製)を用いる。
【0045】
以下、この発明の一実施形態における配向膜3の形成方法について説明する。
【0046】
まず、画素電極15作製直後に、たとえば有機保護膜により、画素電極15の表面上に保護膜を形成し、画素電極15の表面を被覆する。ここで、有機保護膜はたとえばレジストからなる。これにより、金属自然酸化物などの成長、および有機物などの付着が抑制される。
【0047】
次に、たとえば有機アルカリを用いて、画素電極15上に形成された有機保護膜などを十分に剥離する。ここで、有機アルカリとして、剥離液ST−10(東京応化製)を用いた。なお、この剥離処理は、配向膜形成直前に行われる。
【0048】
次に、アクティブマトリックス基板2をクリーンオーブン中に搬入し、所定位置に載置する。次に、クリーンオーブン中に酸素を導入しながら高温酸化処理を行う。ここで、この高温酸化処理はたとえば温度200℃で、1時間保持することにより行われる。
【0049】
上述した処理により、画素電極15に対するポリイミドの接触角を、30度から5度以下まで低減できる。以下の工程は第1の参考形態と同様であるので説明を省略する。
【0050】
ベーク処理後に、触針式の段差測定機により配向膜3の膜厚分布を測定した。測定の結果、段差は有効面内において2nm以下であり、反射画素電極15面内においても2nm以下であった。すなわち、上述した処理により、配向膜3の均一表面粗さ(配向膜3の厚さ60nmに対する段差の割合)を、7%以下に制御できる。
【0051】
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0052】
上述の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
【0053】
また、上述した参考形態および実施形態においては、フレキソ印刷法により画素電極15上にポリイミドワニスを印刷し、配向膜3を形成する例について示したが、スピン塗布法により画素電極15上にポリイミドワニスを塗布し、配向膜3を形成するようにしてもよい。また、配向膜材料として、ポリイミド前駆体ワニスを用いるようにしてもよい。
【0054】
また、上述した第1の参考形態および第2の参考形態においては、真空チャンバー内において画素電極15に表面処理を行う構成について示したが、大気中において表面処理を行うようにしてもよい。
【0055】
また、上述した実施形態においては、この発明を反射型液晶表示素子に適用する例について示したが、半透過型の液晶表示素子に適応することも可能である。
【0056】
また、上述したそれぞれの参考形態および実施形態において示した塗れ性を向上させるための処理を、複数組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明による液晶表示素子の製造方法によればポリイミド前駆体あるいはポリイミド材(ワニス)などの画素電極表面に対する親和性を向上できる。したがって、均一性の良く、かつ接着性に優れた極薄の配向膜を、画素電極上に形成できるため、高品質な液晶表示素子を提供可能である。また、この発明の製造方法によれば、高品質な液晶表示素子を低コストかつ高スループットで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この参考発明の第1の参考形態による液晶表示素子の構成を示す断面図である。
【図2】 この参考発明の第1の参考形態による画素電極の上面図である。
【図3】 この参考発明の第1の参考形態によるフレキソ印刷法を説明するための略線図である。
【符号の説明】
1・・・アクティブマトリクス基板、2・・・対向基板、3・・・配向膜、4・・・配向膜、5・・・液晶層、6・・・スペーサ
Claims (5)
- 画素電極作製直後に画素電極表面に保護膜を形成し、配向制御膜を形成する直前で上記保護膜をすべて剥離し、上記保護膜が剥離された画素電極表面を熱酸化処理し、配向制御膜を形成する液晶表示素子の製造方法。
- 上記画素電極は、反射型画素電極である請求項1記載の液晶表示素子の製造方法。
- 上記画素電極上に形成された配向制御膜を加熱処理する請求項1記載の液晶表示素子の製造方法。
- 配向制御膜を形成する前段で、画素電極表面をUVオゾン処理し、配向制御膜を形成する請求項1記載の液晶表示素子の製造方法。
- 配向制御膜を形成する前段で、画素電極表面を酸素プラズマ処理し、配向制御膜を形成する請求項1記載の液晶表示素子の製造方法。
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