JP4755746B2 - 半導体ウエハ表面の不純物測定方法及びそのための不純物回収装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体ウエハ、特にシリコンウエハのウエハ表面に付着し又はその表面の酸化膜又は窒化膜中に存在する不純物の種類やその量を測定するための半導体ウエハ表面の不純物測定方法及びそのための不純物回収装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造プロセスの間に受けた微粒子、金属不純物等の汚染物質に由来するウエハ表面の汚染は、結晶欠陥の発生、絶縁不良、配線腐蝕、動作不良、微小欠陥の発生、ソフトエラー等の種々の問題を引き起し、半導体デバイスの特性や信頼性に大きな影響を与える。
【0003】
このため、半導体製造プロセスにおいては、超高純度の試薬を用い、作業環境を高度にクリーンルーム化する等の汚染源を排除することも重要であるが、ウエハ表面の不純物を分析し、実際にウエハ表面がどのような不純物でどの程度に汚染されているかを調べて品質管理を行うことも、製品歩留りの向上を図り、品質のばらつき、耐久性の低下、誤動作の発生等を防止する上で極めて重要である。
【0004】
そこで、従来においても、ウエハ表面の酸化膜をフッ化水素酸蒸気で気相分解し、生成した分解生成物を純水、フッ化水素酸(HF)、フッ化水素酸+過酸化水素(HF+H2O2)、塩酸+過酸化水素(HCl+H2O2)等の回収液により回収して分析試料を調製し(気相分解法)、得られた分析試料を原子吸光分析、特にグラファイトファーナス原子吸光分析(GF-AAS: Graphite Furnace Atomic Absorption Spectrometry)により分析してウエハ表面の不純物を測定することが提案されている(例えば、特公平6-58,927号公報、特許第 2,604,037号明細書等)。この方法は、ほとんど全ての金属について高感度の分析が可能であり、しかも、オージェ電子分光分析、放射化分析、二次イオン質量分析等による他の分析方法とは異なって比較的簡便に半導体ウエハ表面の不純物を測定できるという優れた特長を有することから、半導体製造プロセスにおいてその品質管理に採用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、半導体デバイスの微細化、高集積化がますます進む傾向にあり、これに伴って半導体ウエハ表面の不純物測定に要求される分析感度についてもより高感度の分析が要求されるようになりつつあり、気相分解を利用した測定機器としてICP-MS、TRXRF等の高感度の機器も利用されつつあるが、ICP-MSは反応生成物によるマトリックス効果のため、また、TRXRFはシリコンウエハの珪素(Si)の妨害により、高感度の分析、特にアルミニウム(Al)、アルカリ金属の分析ができず、GF-AAS分析が重要となっている。
【0006】
そこで、本発明者らは、気相分解法を用いたGF-AAS分析による半導体ウエハ表面の不純物測定において、より高感度で不純物分析を行うための手法について検討を進めている過程で、意外なことには、ウエハ表面の酸化膜を気相分解するために用いるフッ化水素酸(HF)あるいは反応生成物であるヘキサフルオロ珪酸(H2SiF6)がGF-AAS分析の際にその分析感度を低下させる1つの原因になっていることを突き止めた。
【0007】
すなわち、気相分解法を用いたGF-AAS分析による半導体ウエハ表面の不純物測定においては、気相分解によりウエハ表面の酸化膜を分解し、生成した分解生成物を回収して分析試料を調製している。このため、このようにして調製された分析試料中には、必然的にフッ化水素酸(HF)及びヘキサフルオロ珪酸(H2SiF6)がある程度の濃度で存在することになる。
【0008】
しかしながら、本発明者らの検討結果によれば、分析試料中のある種の金属不純物、例えばナトリウム(Na)、カリウム(K)、銅(Cu)等についてはその影響が比較的少ないものの、他の特定の金属不純物、例えば鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)等については、調製された分析試料中にフッ化水素酸(HF)あるいはヘキサフルオロ珪酸(H2SiF6)が存在すると、その濃度に応じて、実際に分析試料中に存在する金属不純物濃度とGF-AAS分析で測定された金属不純物濃度との間に差異が生じ、結果としてこのGF-AAS分析における分析感度を低下させ、GF-AAS分析による不純物測定に限界が生じることが判明した。
【0009】
本発明はこの問題を解決したものであり、その目的とするところは、気相分解法を用いた原子吸光分析による半導体ウエハ表面の不純物測定において、より正確な不純物分析を行うことができる半導体ウエハ表面の不純物測定方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、原子吸光分析による半導体ウエハ表面の不純物測定においてより正確な不純物分析を行うことができる分析試料を調製するための不純物回収装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、気相分解装置内でフッ化水素酸を含む酸蒸気によりシリコンウエハのウエハ表面の酸化膜又は窒化膜を分解する気相分解工程と、上記気相分解工程の分解反応で生成した生成物を回収する回収液からなる液滴でウエハ表面を走査し、この液滴中に生成物を取り込む液滴走査工程と、この液滴走査工程で得られた生成物含有液滴をウエハ表面の所定位置に位置せしめ、この生成物含有液滴中の液体を蒸発せしめる液滴乾燥工程と、上記液滴乾燥工程で残留した残渣を有するシリコンウエハを気相分解装置内に収容し、ウエハ表面に新たに生成した酸化膜をフッ化水素酸を含む酸蒸気により分解する第二の気相分解工程と、純水、濃度1重量%以下のフッ化水素酸、希塩酸、又は希硝酸からなる溶解液の液滴でウエハ表面を走査し、この液滴中に上記第二の気相分解工程で生成した生成物と上記液滴乾燥工程で残留した残渣とを溶解して取り込み、分析試料として第二の生成物含有液滴を回収する第二の液滴走査工程と、この第二の液滴走査工程で分析試料として回収された第二の生成物含有液滴について、原子吸光分析により不純物分析を行う不純物分析工程とを有する、半導体ウエハ表面の不純物測定方法である。
【0011】
また、本発明は、シリコンウエハのウエハ表面の酸化膜又は窒化膜をフッ化水素酸を含む酸蒸気により分解する気相分解装置と、気相分解処理後のウエハ表面を回収液からなる液滴で走査し、気相分解処理の際にウエハ表面に生成した生成物を上記液滴中に取り込む液滴走査装置と、液滴走査により得られた生成物含有液滴を乾燥する液滴乾燥装置と、調製された分析試料を収容するための複数の試料容器を保持するコレクターユニットと、所定の位置から所定の位置までシリコンウエハを搬送するウエハ搬送装置とを備えており、上記本発明の方法を実行する原子吸光分析により半導体ウエハ表面の不純物測定を行うための不純物回収装置である。
【0012】
本発明において、気相分解工程でウエハ表面の酸化膜や窒化膜を気相分解するためのフッ化水素酸を含む酸蒸気は、フッ化水素酸単独の酸蒸気でもよく、また、フッ化水素酸と例えば硝酸、塩酸等の他の酸との混酸の酸蒸気であってもよく、ウエハ表面の酸化膜や窒化膜のみを分解して分析するという観点から、好ましくはフッ化水素酸である。この気相分解工程では、ウエハ表面の酸化膜や窒化膜がフッ化水素酸を含む酸蒸気と反応し、その反応生成物中に酸化膜中や窒化膜中に含まれる金属不純物やこれら酸化膜や窒化膜の表面に付着した金属汚染物が溶解する。
【0013】
また、本発明において、上記気相分解工程でウエハ表面に生成した生成物を液滴走査工程で回収するための回収液としては、不純物測定の対象金属として銅が含まれていない場合には、金属珪素(Si)と反応性がなく、気相分解工程での生成物を溶解し得るものであればよく、例えば純水、希塩酸、希フッ化水素酸、希硝酸等が好適に用いられ、また、不純物測定の対象金属として銅等の還元され易い金属が含まれる場合には、金属の再付着を防止するために、例えば過酸化水素、硝酸等の酸化剤を少量含有する酸の使用が好ましい。
【0014】
そして、この回収液からなる液滴を用い、ウエハ表面を走査して生成物を回収する際の液滴走査の方法については、液滴を液滴保持具で保持し、この液滴をウエハ表面に接触させた状態で、水平に設置されたシリコンウエハの表面をその中心から外周に向けて螺旋状の軌跡を描くように走査したり、あるいは、その左右方向に往復させながら上下方向に移動させ、次いで上下方向に往復させながら左右方向に移動させることにより上下左右往復の軌跡を描くように走査する液滴保持型の液滴走査装置(特許第 2,604,037号明細書参照) を用いて行ってもよく、また、ウエハ表面上に液滴を滴下し、シリコンウエハを種々の方向に傾斜させ、また、回転させることにより、ウエハ表面上の液滴が螺旋状の軌跡又は上下左右往復の軌跡を描くように走査する液滴滴下型の液滴走査装置(特開平8-233,7097号公報参照) を用いて行ってもよい。
【0015】
このように液滴中に生成物を取り込んで得られた生成物含有液滴は、先ず液滴乾燥工程でその生成物含有液滴中に含まれる液体を蒸発させて乾燥し、次いで得られた残渣を所定の溶解液に溶解し、GF-AAS分析に用いる分析試料とされる。ここで、生成物含有液滴を乾燥させ、次いで溶解液に溶解して分析試料とする方法については、下記の方法が挙げられる。
【0016】
すなわち、本発明の方法は、上記液滴乾燥処理で得られた残渣を有するシリコンウエハを気相分解装置内に収容し、ウエハ表面に新たに生成した酸化膜をフッ化水素酸を含む酸蒸気により分解する第二の気相分解処理を行い、次に、液滴走査装置により、第二の気相分解処理で生成した生成物を溶解できる純水、濃度1重量%以下のフッ化水素酸、希塩酸、又は希硝酸からなる溶解液の液滴でウエハ表面を走査し、この液滴中に第二の気相分解工程で生成した生成物や液滴乾燥工程で残留した残渣を溶解して取り込み、分析試料として第二の生成物含有液滴を回収する方法である。
【0017】
本発明において、上記残渣を溶解して分析試料を調製するために用いられる溶解液としては、少なくともフッ化水素酸による気相分解反応で生成した生成物を溶解することができ、最終的に原子吸光分析、特にGF-AAS分析において許容できる範囲のフッ化水素酸(HF)及びヘキサフルオロ珪酸(H2SiF6)の濃度がそれぞれ1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下の分析試料の調製が可能であればよく、具体的には、不純物測定の対象金属として銅が含まれていない場合には、純水、希塩酸、濃度1重量%以下(好ましくは0.5重量%以下)のフッ化水素酸、希硝酸等の酸が好適に用いられる。また、不純物測定の対象金属として銅等の還元され易い金属が含まれる場合には、上記純水又は酸溶液に過酸化水素等の酸化剤が添加された溶液が好適に用いられる。
【0018】
以上のようにして調製された分析試料は、原子吸光分析、特にGF-AAS分析により分析され、ウエハ表面に存在する金属不純物等の汚染物質の種類とその量が測定される。
【0019】
本発明方法を実施するために、好適には、ウエハ表面の酸化膜又は窒化膜をフッ化水素酸を含む酸蒸気により分解する気相分解装置と、気相分解処理後のウエハ表面を回収液からなる液滴で走査し、気相分解処理の際にウエハ表面に生成した生成物を上記液滴中に取り込む液滴走査装置と、液滴走査により得られた生成物含有液滴を乾燥する液滴乾燥装置と、液滴乾燥処理で得られた残渣を溶解液で溶解して不純物測定用の分析試料を調製する残渣溶解手段と、調製された分析試料を収容するための複数の試料容器を保持するコレクターユニットと、所定の位置から所定の位置までシリコンウエハを搬送するウエハ搬送装置とを備えた不純物回収装置が用いられ、この不純物回収装置により調製された分析試料がGF-AAS分析装置で分析され、半導体ウエハ表面の不純物の測定が行われる。
【0020】
ここで、上記液滴走査装置としては、好ましくは、コレクターユニットに保持された複数の試料容器と対をなし、下端には液滴の表面張力を利用してこの液滴を保持する液滴保持部を有すると共に上端には真空吸着面を備えたフランジ部を有する筒体で形成され、液滴走査時以外の待機時には試料容器の上方所定位置に位置してこの試料容器に汚染物質が入るのを防止する複数の液滴保持具と、この液滴保持具のフランジ部上面の真空吸着面に密着する真空吸着面を有する吸着部と、バキュウーム装置に接続されて上記液滴保持具の吸着部に真空吸着力を発揮せしめる真空路とを有し、液滴保持具を吸着して操作する保持具ハンドと、この保持具ハンドに取り付けられ、所定の回収液又は溶解液を所定量だけ上記液滴保持具内に供給する液供給具とを備えた装置が用いられる。
【0021】
また、上記コレクターユニットについては、好ましくは、複数の試料容器をその下方から保持する保持プレートと、この保持プレートの上方に所定の間隔を置いて着脱可能に配置され、保持プレート上に保持された試料容器の上方所定位置に上記液滴保持具を支持する支持プレートとを有するものであるのがよく、これによって、たとえ各試料容器の高さ寸法に誤差があっても、コレクターユニットに保持されて待機中の各液滴保持具の高さ位置が一定になり、これら各液滴保持具を保持具ハンドで確実に吸着して操作することができる。特に、試料容器がPFA製のバイアルである場合には、その成形上の問題から各バイアルの高さ寸法には若干の寸法誤差(±0.1mm)があるのが通例であり、コレクターユニットに25個程度までのバイアルをセットする場合には比較的同じ寸法のバイアルを選択して使用したり、あるいは、バイアルを装置に傾き無く配置する等の方法でこの寸法誤差を吸収できるが、30個を超えて例えば50個のバイアルをセットする場合にはこのような方法ではバイアルの寸法誤差やバイアルを装置に配置する際の傾き等を吸収するのが難しくなり、上記試料容器の保持プレートと液滴保持具の支持プレートとを有するコレクターユニットの使用が必要になる。
【0022】
更に、上記液滴保持具のフランジ部には、液滴保持具が試料容器の上方の所定位置に位置した際に、試料容器内へ通じる貫通孔を形成せしめ、生成物含有液滴を保持した液滴保持具が保持具ハンドの吸着部に吸着されて試料容器の上方所定位置に位置した際にこの吸着部に形成された真空路から上記貫通孔を介して試料容器内に陰圧を生ぜしめることができるように構成すれば、この液滴保持具に保持された生成物含有液滴を確実にかつ速やかに試料容器内に滴下することができ、これによって生成物含有液滴が試料容器内に収容されないという不測の事故を未然に防止することができる。
【0023】
ここで、上記本発明の方法を実施する場合には、生成物含有液滴を乾燥させる液滴乾燥装置としては、液滴走査でウエハ表面の所定位置、好適には中央位置に位置せしめられた生成物含有液滴をこのウエハ表面上で乾燥せしめるものであるから、好ましくは赤外線スポットヒーター等のスポットヒーターが用いられる。
【0024】
また、この本発明の方法を実施する場合において、液滴乾燥処理で得られた残渣を溶解液で溶解し、所定の分析試料を調製する残渣溶解手段は、上記気相分解装置と液滴走査装置とが担っており、気相分解装置においては、液滴乾燥処理で得られた残渣を有するシリコンウエハを気相分解装置内に収容し、ウエハ表面に新たに生成した酸化膜をフッ化水素酸を含む酸蒸気により分解する第二の気相分解処理が行われ、また、液滴走査装置においては、フッ化水素酸以外の溶解液からなる液滴でウエハ表面を走査し、この液滴中に上記第二の気相分解処理で生成した生成物と上記液滴乾燥処理で得られた残渣とを溶解して取り込む第二の液滴走査が行われ、この第二の液滴走査で得られた第二の生成物含有液滴がそのまま分析試料として用いられる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。図1及び図2に本発明方法を搭載した不純物回収装置が示されており、この不純物回収装置を用いて半導体ウエハ表面から分析試料が調製され、GF-AAS分析装置で分析され、半導体ウエハ表面の不純物の測定が行われる。
【0026】
この実施例の不純物回収装置は、シリコンウエハの表面の酸化膜をフッ化水素酸を含む酸蒸気により分解する一対の気相分解装置1a,1bと、気相分解処理後のウエハ表面を回収液からなる液滴で走査し、気相分解処理の際にウエハ表面に生成した生成物を上記液滴中に取り込む液滴走査装置2と、液滴走査により得られた生成物含有液滴を乾燥する液滴乾燥装置3と、液滴乾燥処理で得られた残渣をフッ化水素酸以外の溶解液で溶解して不純物測定用の分析試料を調製する残渣溶解手段と、調製された分析試料を収容するための多数のPFA製バイアル(試料容器)Bを保持するコレクターユニット4と、所定の位置から所定の位置までシリコンウエハを搬送するウエハ搬送装置5とを備えている。
【0027】
なお、図1及び図2において、符号6は不純物測定の対象となるシリコンウエハが平らにセットされるカセットステージであり、また、符号7は液滴走査の際に気相分解処理終了後のシリコンウエハを載置して回転するターンテーブルであり、更に、符号8は気相分解処理終了後にウエハ搬送装置5によって気相分解装置1a又は1bから移送され、上記ターンテーブル7上に載置されたシリコンウエハをこのターンテーブル7の中央にセットするためのセンタリング装置である。
【0028】
ここで、上記液滴走査装置2は、図3〜図5及び図7に詳細に示されているように、コレクターユニット4に保持された多数のバイアルBと対をなし、下端には液滴Dの表面張力を利用してこの液滴Dを保持する液滴保持部9aを有すると共に上端には真空吸着面を備えたフランジ部9bを有する筒体で形成され、液滴走査時以外の待機時にはバイアルBの上方所定位置に位置してこのバイアルB内に汚染物質が入るのを防止する多数の液滴保持具9と、この液滴保持具9のフランジ部9b上面の真空吸着面に密着する真空吸着面を有する吸着部10a、及び図示外のバキュウーム装置に接続されて上記液滴保持具9のフランジ部9b上面の真空吸着面と上記吸着部10a の真空吸着面との間に真空吸着力を発揮せしめる真空路10bとを有し、液滴保持具9を吸着して操作する保持具ハンド10と、この保持具ハンド10に取り付けられ、PTFE製チューブをローラーで扱いて液を送るペリスタポンプを有して所定の回収液又は溶解液を所定量だけ上記液滴保持具9内に供給することができる液供給具11とを備えている。
【0029】
また、上記コレクターユニット4は、図3、図4、図7、及び図8に詳細に示されているように、多数のバイアルBをその下方から着脱可能に保持する円盤状の保持プレート12と、この保持プレート12の上方にバイアルBの高さ寸法と略等しい間隔を置いて着脱可能に配置され、保持プレート12上に保持されたバイアルBの上方所定位置で液滴保持部9aがバイアルB内に位置するように各液滴保持具9を支持する円盤状の支持プレート13とで構成されている。
【0030】
なお、この実施例においては、円盤状の保持プレート12に3本の支持ピン14が互いに等間隔で立設され、また、支持プレート13には上記各支持ピン14に対応する位置にそれぞれ透孔15が開設され、各支持ピン14の先端部を透孔15内に嵌合することにより、保持プレート12とその上に配置される支持プレート13との位置関係が決まるようになっている。そして、上記支持プレート13は、上記3本の支持ピン14によりその水平が維持され、これによってこの支持プレート13に支持された液滴保持具9のフランジ部9b上面の真空吸着面が水平に保たれ、保持具ハンド10の吸着部10a の真空吸着面が液滴保持具9のフランジ部9b上面の真空吸着面に容易に密着できるようになっている。また、保持プレート12上に保持された各バイアルBの上端とその上方に位置する支持プレート13の下面側との間は、通常各バイアルBの成形時に不可避的に生じる高さ寸法の誤差を吸収できる程度の僅かな隙間が許容される。
【0031】
更に、この実施例においては、上記液滴保持具9のフランジ部9bには、液滴保持具9がバイアルBの上方所定位置に位置した際に、このバイアルB内へ通じる貫通孔9cが形成されており、生成物含有液滴Dを保持した液滴保持具9が保持具ハンド10の吸着部10a に吸着されてバイアルBの上方所定位置に位置した際に上記真空路10b から貫通孔9cを介してバイアルB内の空気を吸引し、このバイアルB内に若干の陰圧を生ぜしめることができるようになっており、これによって液滴保持具9の液滴保持部9aに保持された生成物含有液滴Dを確実にかつ速やかにバイアルB内に滴下できるようになっている。
【0032】
また、上記液滴乾燥装置3には赤外線スポットヒーター3aが設けられており、また、その近傍には赤外線スポットヒーター3aで温められて揮発した蒸気を吸引して排気するための局所排気口3bが配設されている。
【0033】
次に、上記実施例に係る不純物回収装置を用いてウエハ表面の不純物を測定する本発明の方法について説明する。
【0034】
本発明の方法において、不純物測定の対象となるシリコンウエハWは、先ず、カセットステージ6に平らにセットされる。次に、シリコンウエハWは、ウエハ搬送装置5により気相分解装置1a又は1bの密閉空間内に搬送されて平らにセットされ、この気相分解装置1a又は1b内に配置された蒸発用容器内のフッ化水素酸を揮発させ、この揮発したフッ化水素酸蒸気によりウエハ表面の酸化膜を分解せしめる(気相分解工程)。
【0035】
このようにして気相分解工程が終了した後、シリコンウエハWは、ウエハ搬送装置5により、気相分解装置1a又は1bからターンテーブル7上に移送され、センタリング装置8によりターンテーブル7の中央にセットされる。
【0036】
次に、液滴走査装置2の保持具ハンド10は、図4に示すように、コレクターユニット4の支持プレート13に支持された液滴保持具9の上方位置に移動し、ここでその吸着部10a の真空吸着面が液滴保持具9のフランジ部9b上面の真空吸着面に密着し、真空路10b を介してバキュウーム装置により吸引し、液滴保持具9を吸着し、次いでこの液滴保持具9をウエハ表面の中心位置まで移動させ、ここでペリスタポンプからなる液供給具11を駆動させて所定の回収液を所定量だけ液滴保持具9内に供給し、この液滴保持具9の液滴保持部9aに液滴Dを保持させる。
【0037】
そして、図5に示すように、液滴保持具9に保持された回収液からなる液滴DをシリコンウエハWのウエハ表面に接触させた状態でターンテーブル7を回転させ、同時に液滴保持具9をウエハ表面の中心から周辺に向けて移動させ、これによって液滴Dによりウエハ表面全面をその中心から周辺に向けて螺旋状の軌跡を描くように走査させる(液滴走査工程)。
【0038】
この液滴走査により得られた生成物含有液滴Dをウエハ表面の中心位置に滴下し、図6に示すように、液滴乾燥装置3の赤外線スポットヒーター3aをウエハ表面上の生成物含有液滴Dに向けて接近させ、所定の温度、通常60〜150℃、好ましくは80〜110℃に加熱し、生成物含有液滴D中の液体を蒸発させて乾燥せしめる(液滴乾燥工程)。
【0039】
上記液滴乾燥工程が終了した後、ウエハ搬送装置5でシリコンウエハWを再び上記気相分解装置1a又は1bの密閉空間内に搬送して平らにセットし、この気相分解装置1a又は1b内で揮発したフッ化水素酸蒸気により、ウエハ表面に新たに生成した酸化膜を再び分解せしめる(第二の気相分解工程)。ここで、この第二の気相分解工程で生成する生成物は、最初の気相分解工程が終了した後から液滴乾燥工程までの間にウエハ表面に新たに生成した酸化膜を分解させて生成するものであり、第一の気相分解に付されるシリコンウエハが有する最初の酸化膜の厚さにもよるが、第一の気相分解工程で生成する生成物の量に比べて通常1/10〜1/1000程度である。
【0040】
このようにして第二の気相分解工程が終了した後、シリコンウエハWは、ウエハ搬送装置5により、再び気相分解装置1a又は1bからターンテーブル7上に移送され、センタリング装置8によりターンテーブル7の中央にセットされる。その後、液滴保持具9に溶解液からなる液滴Dを保持した液滴走査装置2により、最初の液滴走査とは異なり、液滴Dでウエハ表面をその中心から半径数cm、好ましくは5cm程度の範囲で走査し、上記第二の気相分解処理で生成した生成物と同時に上記液滴乾燥工程で残留した残渣とを溶解しこの液滴D中に取り込む(第二の液滴走査工程)。
【0041】
この第二の液滴走査終了後、液滴走査装置2の保持具ハンド10に保持され、第二の生成物含有液滴Dを保持する液滴保持具9は、図7に示すように、コレクターユニット4の支持プレート13の元の位置に戻り、その液滴保持部9aがバイアルB内に位置するようにセットされる。そして、この際に、液滴保持具9のフランジ部9bに形成された貫通孔9cと保持具ハンド10の吸着部10a に形成された真空路10bとの間を導通させ、バキュウーム装置で吸引してバイアルB内の空気を吸引し、バイアルB内に若干の陰圧を生ぜして液滴保持部9aに保持された第二の生成物含有液滴DをバイアルB内に滴下させ、その後にバキュウーム装置による吸引を停止させて液滴保持具9を支持プレート13上にリリースする。
【0042】
このようにして各バイアルB4中に滴下された第二の生成物含有液滴Dは、そのまま分析試料とされ、GF-AAS分析等の原子吸光分析に供される(不純物分析工程)。このようにして調製された分析試料は、上述のように、第二の気相分解工程で生成する生成物量が最初の気相分解工程で生成する生成物量に比べて顕著に少ないので、第二の生成物含有液滴D(分析試料)中に含まれるフッ化水素酸(HF)及びヘキサフルオロ珪酸(H2SiF6)のそれぞれの含有量(以下、「HF含有量及びH2SiF6含有量」という)もこれに応じて少なくなり、シリコンウエハのサイズや液滴走査の範囲等にもよるが、この第二の生成物含有液滴D(分析試料)のHF含有量及びH2SiF6含有量は通常それぞれ0.05〜0.1%程度である。
【0043】
このようにして調製された分析試料は、グラファイトファーナス原子吸光光度計を用いたGF-AAS分析に供され、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、金(Au)、銀(Ag)等の不純物の定量が行われる。
【0044】
【実施例】
以下、試験例に基づいて、本発明を具体的に説明する。
【0045】
〔試験例1〕
高純度(不純物濃度:Al, Fe, Cu, Crがいずれも10ppt 以下)の38重量%フッ化水素酸(多摩化学工業製商品名:Tamapure AA 10 HF)と、Al, Fe, Cu, Crがいずれも10ppt 以下の超純水(多摩化学工業製商品名:Tamapure AA 10 H2O)と、Al, Fe, Cu, Crの各基準液(関東化学製;濃度 1000ppm)とを用い、表1に示す組成を有する試料を調製した。
【0046】
【表1】
【0047】
得られた各試料について、グラファイトファーナス原子吸光光度計(パーキンエルマー社製:5100型)を使用し、サンプル量20μl及び表2に示す分析条件でGF-AAS分析を行った。結果を表3及び図9にそれぞれ示す。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
表3及び図9に示す結果から明らかなように、銅(Cu)のGF-AAS分析の場合は分析試料中のHF濃度(HF含有量に相当)にほとんど影響されることなく吸光度が一定の値として測定されるが、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、及びクロム(Cr)のGF-AAS分析の場合には、HF濃度が増すにつれて吸光度が低下し、感度が悪くなり、この吸光度の低下の程度はHF濃度が0〜15重量%又は0〜10重量%程度までの範囲で顕著に現れることが判明した。
【0051】
〔試験例2〕
高純度のSiO2(不純物濃度:Al, Fe, Cu, Crがいずれも10ppt以下)と高純度のフッ化水素酸(不純物濃度:Al, Fe, Cu, Crがいずれも10ppt以下)とを使用し、高純度ヘキサフルオロ珪酸溶液を調製し、Al, Fe, Cu, Crがいずれも10ppt以下の超純水と、Al, Fe, Cu, Crの各基準液とを用い、表5に示す組成を有する試料を調製した。
【0052】
【表4】
【0053】
得られた各試料について、グラファイトファーナス原子吸光光度計(パーキンエルマー社;Analyst 700型)を使用し、サンプル量20μl及び表4に示す分析条件でGF-AAS分析を行った。結果を表5に示す。
【0054】
【表5】
【0055】
表5に示す結果から明らかなように、ヘキサフルオロ珪酸の場合も、銅(Cu)のGF-AAS分析の場合においては、フッ化水素酸の場合と同様に、分析試料中のヘキサフルオロ珪酸濃度(H2SiF6濃度;H2SiF6含有量に相当)にほとんど影響されることなく吸光度が一定の値として測定されるが、鉄(Fe)やクロム(Cr)のGF-AAS分析の場合には若干の感度の低下がみられ、また、アルミニウム(Al)のGF-AAS分析の場合にはH2SiF6濃度が5重量%以上になると測定不能になることが判明した。
【0056】
【発明の効果】
本発明の半導体ウエハ表面の不純物測定方法によれば、気相分解法を用いた原子吸光分析による半導体ウエハ表面の不純物測定において、より正確な不純物分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明方法を実施するための不純物回収装置を示す平面説明図である。
【図2】 図2は、図1の縦断面説明図である。
【図3】 図3は、図1のコレクターユニットとこのコレクターユニットに保持されたバイアル(試料容器)及び液滴保持具9を示す断面説明図である。
【図4】 図4は、図1の液滴走査装置の保持具ハンドがコレクターユニット上の液滴保持具9を吸着する際の状態を示す断面説明図である。
【図5】 図5は、図1の液滴走査装置の液滴保持具が液滴を保持してウエハ表面上を走査する状態を示す断面説明図である。
【図6】 図6は、シリコンウエハの中心部に滴下された生成物含有液滴を液滴乾燥装置の赤外線スポットヒーターで乾燥させる状態を示す説明図である。
【図7】 図7は、図1の液滴走査装置がその液滴保持具をコレクターユニットの所定位置に載置し、第二の生成物含有液滴(又は生成物含有液滴)をバイアル(試料容器)内に滴下させる際の状態を示す断面説明図である。
【図8】 図8は、バイアル(試料容器)内に滴下された生成物含有液滴を液滴乾燥装置の赤外線スポットヒーターで乾燥させる状態を示す説明図である。
【図9】 図9は、試験例1で得られたHF濃度と吸光度との関係を示すグラフ図である。
【符号説明】
1a, 1b…気相分解装置、2…液滴走査装置、3…液滴乾燥装置、3a…赤外線スポットヒーター、3b…局所排気口、4…コレクターユニット、5…ウエハ搬送装置、6…カセットステージ、7…ターンテーブル、8…センタリング装置、9…液滴保持具、9a…液滴保持部、9b…フランジ部、10…保持具ハンド、10a …吸着部、10b …真空路、11…液供給具、12…保持プレート、13…支持プレート、14…支持ピン、B…バイアル(試料容器)、D…液滴、W…シリコンウエハ。
Claims (5)
- 気相分解装置内でフッ化水素酸を含む酸蒸気によりシリコンウエハのウエハ表面の酸化膜又は窒化膜を分解する気相分解工程と、上記気相分解工程の分解反応で生成した生成物を回収する回収液からなる液滴でウエハ表面を走査し、この液滴中に生成物を取り込む液滴走査工程と、この液滴走査工程で得られた生成物含有液滴をウエハ表面の所定位置に位置せしめ、この生成物含有液滴中の液体を蒸発せしめる液滴乾燥工程と、上記液滴乾燥工程で残留した残渣を有するシリコンウエハを気相分解装置内に収容し、ウエハ表面に新たに生成した酸化膜をフッ化水素酸を含む酸蒸気により分解する第二の気相分解工程と、純水、濃度1重量%以下のフッ化水素酸、希塩酸、又は希硝酸からなる溶解液の液滴でウエハ表面を走査し、この液滴中に上記第二の気相分解工程で生成した生成物と上記液滴乾燥工程で残留した残渣とを溶解して取り込み、分析試料として第二の生成物含有液滴を回収する第二の液滴走査工程と、この第二の液滴走査工程で分析試料として回収された第二の生成物含有液滴について、原子吸光分析により不純物分析を行う不純物分析工程とを有することを特徴とする半導体ウエハ表面の不純物測定方法。
- シリコンウエハのウエハ表面の酸化膜又は窒化膜をフッ化水素酸を含む酸蒸気により分解する気相分解装置と、気相分解処理後のウエハ表面を回収液からなる液滴で走査し、気相分解処理の際にウエハ表面に生成した生成物を上記液滴中に取り込む液滴走査装置と、液滴走査により得られた生成物含有液滴を乾燥する液滴乾燥装置と、調製された分析試料を収容するための複数の試料容器を保持するコレクターユニットと、所定の位置から所定の位置までシリコンウエハを搬送するウエハ搬送装置とを備え、
上記液滴乾燥装置では、液滴走査により得られた生成物含有液滴中の液体をウエハ表面の所定位置で蒸発させ、
上記気相分解装置では、更に、上記液滴乾燥処理で得られた残渣を有するシリコンウエハのウエハ表面に新たに生成した酸化膜をフッ化水素酸を含む酸蒸気により分解する第二の気相分解処理を行い、また、
上記液滴走査装置では、更に、第二の気相分解処理後のシリコンウエハのウエハ表面を純水、濃度1重量%以下のフッ化水素酸、希塩酸、又は希硝酸からなる溶解液の液滴で走査し、この液滴中に上記液滴乾燥処理で得られた残渣と上記第二の気相分解処理で生成した生成物とを溶解して取り込み、分析試料として第二の生成物含有液滴を回収する第二の液滴走査を行うことを特徴とする、原子吸光分析により半導体ウエハ表面の不純物測定を行うための不純物回収装置。 - 液滴走査装置は、コレクターユニットに保持された複数の試料容器と対をなし、下端には液滴の表面張力を利用してこの液滴を保持する液滴保持部を有すると共に上端には真空吸着面を備えたフランジ部を有する筒体で形成され、液滴走査時以外の待機時には試料容器の上方所定位置に位置してこの試料容器に汚染物質が入るのを防止する複数の液滴保持具と、この液滴保持具のフランジ部上面の真空吸着面に密着する真空吸着面を有する吸着部、及びバキュウーム装置に接続されて上記液滴保持具のフランジ部上面の真空吸着面と上記吸着部の真空吸着面との間に真空吸着力を発揮せしめる真空路を有し、液滴保持具を吸着して操作する保持具ハンドと、この保持具ハンドに取り付けられ、所定の回収液又は溶解液を所定量だけ上記液滴保持具内に供給する液供給具とを備えている請求項2に記載の不純物回収装置。
- コレクターユニットは、複数の試料容器をその下方から保持する保持プレートと、この保持プレートの上方に所定の間隔を置いて着脱可能に配置され、保持プレート上に保持された試料容器の上方所定位置に上記液滴保持具を支持する支持プレートとを有する請求項3に記載の不純物回収装置。
- 液滴保持具のフランジ部には、液滴保持具が試料容器の上方の所定位置に位置した際に、試料容器内へ通じる貫通孔が形成されており、生成物含有液滴を保持した液滴保持具が試料容器の上方所定位置に位置した際に保持具ハンドの吸着部に形成された真空路から上記貫通孔を介して試料容器内に陰圧を発生せしめる請求項3又は4に記載の不純物回収装置。
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