DVDなど光ディスクの高密度記録化の進展に伴い、再生だけでなく、DVD-RAMやDVD-RWなどの記録用DVDドライブが製品化されてきている。そして、その記録倍速は高速化の一途をたどっている。
このような記録用DVDドライブの記録倍速高速化に対応して、その光源として使用される半導体レーザの高出力化の要望が強く高まってきている。半導体レーザの高出力化の手段として、様々な提案がなされているが、活性層上部のクラッド層を加工して、垂直性・対称性の高いリッジ型ストライプを形成することが有効な手段のひとつとして挙げられる。なお、垂直性・対称性の高いとは、リッジの長手方向(ストライプ方向)に対して垂直な断面におけるリッジ側壁面(側面)のなす角度が、半導体基板表面に対してほぼ垂直に近いこと、対称性が高いとは、前記リッジの断面形状が左右対称の対称性がよいことを意味している。尚、本発明において、リッジストライプ方向に対して垂直な断面とは、リッジ長手方向を直角に横切る方向の断面のことを意味している。
リッジの長手方向(ストライプ方向)に対して垂直な断面におけるリッジ形状の垂直性・対称性を向上させ、電流分布形状と光分布形状が同等となるよう制御することで、高出力化の課題となるキンクレベルを向上させることができる。また、リッジトップ寸法をボトム寸法とほぼ同等にすることで、電流注入時の熱抵抗を減少させることができ、低動作電流を実現できる。
しかしながら、例えば発振波長650nm帯の可視光半導体レーザの場合、GaInP層の自然超格子(秩序化構造)形成を抑制するため、基板方位を(100)面から[011]方向に10°程度傾斜させたオフ角を有する半導体基板を用いることが一般的であり、ウェットエッチング技術を用いてリッジ型ストライプを形成すると、リッジの長手方向(ストライプ方向)に対して垂直な断面におけるリッジ形状は基板オフ角を反映して左右非対称となる。また、ウェットエッチング法ではエッチングマスクに対するクラッド層のサイドエッチング量が大きいため、リッジの長手方向(ストライプ方向)に対して垂直な断面におけるリッジ形状は、その壁面の垂直性の低い台形状となる。以上の点から、リッジの長手方向(ストライプ方向)に対して垂直な断面におけるリッジ形状の非対称性の改善、垂直性の向上は非常に困難であった。
近年、ドライエッチングとウェットエッチングを併用して、リッジ型ストライプを形成し、リッジの長手方向(ストライプ方向)に対して垂直な断面におけるリッジ形状の垂直性・対称性を向上させる技術が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。ドライエッチングは異方性エッチングが可能であるため、ウェットエッチングのみでリッジ型ストライプを形成する場合に比べて、リッジの長手方向(ストライプ方向)に対して垂直な断面において、垂直性・対称性が改善されたリッジ形状が得られる。また、ドライエッチング後のウェットエッチングにより、ドライエッチング時のプラズマにより生じたダメージ層の除去を行っている。
さらに、リッジの長手方向(ストライプ方向)に対して垂直な断面におけるリッジ形状の垂直性・対称性を向上させるために、ドライエッチングのみでリッジ型ストライプを形成する技術が提案されている(例えば、下記特許文献2参照)。この技術により、ドライエッチングとウェットエッチングを併用してリッジ型ストライプを形成する場合に比べ、リッジの長手方向(ストライプ方向)に対して垂直な断面において、対称性・垂直性がより改善されたリッジ形状が得られる。
ここで、特許文献1の実施例1と3に示された従来技術における半導体レーザ装置およびその製造方法について、図3、図4を用いて説明する。図3は特許文献1の実施例1と3に記載の半導体レーザ装置の構造、図4はその製作工程を示したいずれもリッジ型ストライプの長手方向に垂直な方向から見た断面図である。
図3および図4(a)に示すように、n型GaAs基板301上に、n型AlGaAsクラッド層303、量子井戸構造の活性層304、p型AlGaAsクラッド層305、p型AlGaAsエッチングストップ層306、p型AlGaAsクラッド層307、p型GaAsキャップ層309を有機金属気相成長法(以下MOCVD法)により、順次エピタキシャル成長させる(なお、図4では、図3のn型GaAs基板301、n型AlGaAsクラッド層303、量子井戸構造の活性層304に相当する層の図示を省略している)。その後、p型GaAsキャップ層309の表面上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィー技術により、フォトレジストのリッジ型ストライプパターン313を形成する。
ここで、AlGaInP系赤色半導体レーザ装置を作製する場合、p型クラッド層307とp型GaAsキャップ層309の間に、p型中間層(例えばp型GaInP中間層)を堆積する(図示せず)。
また、リッジ型ストライプパターン313はフォトレジストを用いて作成されているが、SiO2などの誘電体を用いてもよい。
次に図4(b)に示すように、ドライエッチング技術を用いて、p型GaAsキャップ層309および、p型クラッド層307を、p型クラッド層307の下に形成されたp型エッチングストップ層306の上50nm〜350nmの位置までエッチングする。
次に図4(c)に示すように、p型エッチングストップ層306に至るまでウェットエッチングを行い、p型AlGaAsクラッド層307とp型GaAsキャップ層309からなるリッジ型ストライプを形成する。
次に図4(d)に示すように、フォトレジスト313を除去した後、MOCVD法にてn型電流ブロック層310を堆積させ、ウェットエッチングにより電流注入領域の、すなわちp型GaAsキャップ層309面上の電流ブロック層を除去する。その後、再度MOCVD法にてp型GaAsコンタクト層311を形成して、半導体レーザウェハを完成させる(完成品は図3参照)。
上記の製造方法により、AlGaAs系赤外半導体レーザ装置、およびAlGaInP系赤色半導体レーザ装置について、リッジの長手方向(ストライプ方向)に対して垂直な断面における、比較的垂直性・対称性の改善されたリッジ形状が得られる。また、ウェットエッチングによりエッチング深さ制御、ドライエッチング時のプラズマダメージ層の除去が図れる。
次いで、前記特許文献1の実施例2に示された従来技術における半導体レーザ装置およびその製造方法について、図5、図6を用いて説明する。図5は特許文献1の実施例2に記載の半導体レーザ装置の構造、図6はその製作工程を示したそれぞれリッジ型ストライプの長手方向に垂直な方向から見た断面図である。
図5および図6(a)に示すように、n型GaAs基板501上に、n型AlGaAsクラッド層503、量子井戸構造の活性層504、p型AlGaAsクラッド層505、p型エッチングストップ層506、p型AlGaAsクラッド層507、p型GaAsキャップ層509をMOVPE法により、順次エピタキシャル成長させる(なお、図6では、図5のn型GaAs基板501、n型AlGaAsクラッド層503、量子井戸構造の活性層504に相当する層の図示を省略している)。その後、p型GaAsキャップ層509の表面上にAl2O3などの誘電体を堆積し、フォトリソグラフィー技術により、前記Al2O3などの誘電体からなるリッジ型ストライプパターン513をマスクとして形成する。
ここで、p型エッチングストップ層506は、レーザ光を吸収しないバンドギャップを有するInを含む層か、または量子効果が得られるように設計された層厚のInを含む層で、例えばAlGaInPもしくはGaInPである。
次に図6(b)に示すように、p型AlGaAsクラッド層507およびp型GaAsキャップ層509を、p型エッチングストップ層506に至るまでドライエッチングを行う。
ドライエッチングには誘導結合型プラズマ法(Inductively Coupled Plasma、以下ICP法)を用いており、p型エッチングストップ層506はInを含む層を用いているため、そのエッチングレートは、p型AlGaAsクラッド層507およびp型GaAsキャップ層509と比較して著しく低下する。そのため、ドライエッチングでは、エッチングストップ層506でエッチングを停止することができるとされている。
次に図6(c)に示すように、フッ酸を主成分とする薬液で前記Al2O3などの誘電体からなるリッジ型ストライプパターン513のマスクを除去した後、MOCVD法により、電流ブロック層510を形成する。次いで、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィー技術により、リッジ型ストライプ上に成長した電流ブロック層510の不要部分を除去した後、有機金属化学気相エピタキシー法(以下MOVPE法)にてp型GaAsコンタクト層511を形成し、半導体レーザウェハを完成させる(完成品は図5参照)。
ドライエッチングは物理現象であるスパッタが主要因であるため、材料によってエッチング速度に十分な差がつくような、十分に大きな選択性の確保が困難であるが、上記の製造方法では、Inを含んだエッチングストップ層を用いることで、ドライエッチングにおける選択性を確保しているとされている。これにより、ドライエッチングのみで高垂直性・高対称性のリッジ形成を実現している。
次に、特許文献2に示された従来技術における半導体レーザ装置およびその製造方法について、図7、図8を用いて説明する。図7は特許文献2に記載の半導体レーザ装置の構造、図8はその製作工程を示したそれぞれリッジ型ストライプの長手方向に垂直な方向から見た断面図である。
図7および図8(a)に示すように、n型GaAs基板702上にMOCVD法により、n型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層703、GaInP/AlGaInP多重量子井戸構造活性層704、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層707、p型GaInPヘテロ緩衝層708、p型GaAsキャップ層709を順次エピタキシャル成長させる。その後、SiO2膜を基板全面に成膜し、フォトリソグラフィー技術により、SiO2ストライプ713を形成する。
次に図8(b)に示すように、SiO2ストライプ713をマスクとして、ドライエッチング技術を用いて、p型GaAsキャップ層709と、p型GaInPヘテロ緩衝層708、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層707の一部をエッチングし、リッジ型ストライプを形成する。
次に図8(c)に示すように、MOCVD法で、SiO2ストライプ713をマスクとして、n型AlInP電流ブロック層705、n型GaAs電流ブロック層706を順次エピタキシャル成長させる。
次に図8(d)に示すように、SiO2ストライプ713を除去し、MOCVD法で基板全面にp型GaAsコンタクト層710を成長させる。最後に、p側電極711、n側電極701を形成して、半導体レーザ装置を作製する。
上記の製造方法により、ドライエッチングのみでリッジ型ストライプを形成することができ、リッジの長手方向(ストライプ方向)に対して垂直な断面において、対称性・垂直性の高いリッジ形状が得られる。
特開2003−69154号公報
特開2000−294877号公報
次に、AlGaInPリッジストライプ型赤色半導体レーザ装置を用いて、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の実施の形態は本発明を限定するものではなく、本発明の理解を容易にするために、単に本発明の実施の形態を例示するものである。本発明はすべてのリッジストライプ型半導体レーザ装置に適用可能である。
(実施の形態1)
図1は本実施の形態1におけるリッジストライプ型半導体レーザ装置の前記リッジのストライプ長手方向に対し垂直方向の断面図であり、図2Aはその製造工程を示す同様の断面図である。尚、本発明において、半導体レーザ装置の説明で、半導体レーザ装置の上方、下方、ないし上側とか下側とは、例えば図1を基準にとると、n側電極101の存在する側を下方ないし下側とし、p側電極112の存在する側を上方ないし上側と言う基準で呼んでいる。他の図面においても同様であり、各図に向かって図の上方が、半導体レーザ装置の説明において上方ないし上側であり、図の下方を下方ないし下側と呼んでいる。また、特に断らない限り、他の図面もすべて前記リッジのストライプ長手方向に対し垂直方向の断面図である。
まず図1および図2Aの(a)に示すように、n型GaAs基板102(厚さ400〜500μm)上に、MOCVD法(有機金属気相成長法)により、n型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層103(厚さ1〜2μm)、Ga0.5In0.5P活性層104(厚さ5〜6nm)、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第1クラッド層105(厚さ0.1〜0.3μm)、p型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106(厚さ8〜12nm)、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2クラッド層108(層厚0.9〜1.7μm)、p型Ga0.5In0.5P中間層109(厚さ40〜60nm)、およびp型GaAsコンタクト層110(厚さ0.1〜0.3μm)を順次形成する。次に、p型GaAsコンタクト層110上に、SiO2膜113(厚さ0.2〜0.6μm)をスパッタ法で形成する。
なお、用いるn型GaAs基板102は、例えば発振波長650nm帯の可視光半導体レーザの場合、Ga0.5In0.5P層の自然超格子(秩序化構造)形成を抑制するため、[011]方向に10°程度傾斜した(100)面を表面とする、いわゆるオフ角を有する半導体基板を用いることが一般的であるが、本発明においては、基板オフ角は特に限定なく使用できる。すなわち、本発明においては、基板オフ角の傾斜があっても、後述するようにリッジのストライプ方向に垂直な断面において、リッジ形状の左右対称性がほぼ保持され、また、後述するように、電流ブロック層の形成も問題なくなし得る。
また、活性層104は、GaInPを井戸層としAlGaInPを障壁層とする多重量子井戸構造の活性層であってもよい。
更に、p型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106は、GaInPを井戸層としAlGaInPを障壁層とする多重量子井戸構造のエッチングストップ層であってもよい。
また、この場合、p型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106は、レーザ光を吸収しないバンドギャップを有する層か、または量子効果が得られるように設計された層厚の層であればよく、例えばAlGaInPを用いてもよい。
次に、図2Aの(a)のSiO2 膜113を図2Aの(b)に示すように、フォトリソグラフィー技術とドライエッチング技術により、SiO2ストライプ114に形成する。
次に図2Aの(c)に示すように、SiO2ストライプ114をマスクとして、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2クラッド層108、p型Ga0.5In0.5P中間層109、およびp型GaAsコンタクト層110を、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2クラッド層108の途中までドライエッチングする。
ここで、ドライエッチングの量はリッジ高さの65〜95%の範囲、好ましくは80%〜95%の範囲で行う。この範囲であれば後述するリッジ裾部でのウェットエッチングによるサイドエッチング量のばらつきを抑制できる。ドライエッチングにより形成される第1の面の領域が少なすぎて、その結果ウェットエッチングすべき領域が大き過ぎる場合には、エッチング液の状態(濃度、温度等)によってエッチング量ばらつきが大きく左右され、後述する結晶面の影響が支配的でなくなるからである。なおここでドライエッチングの量とリッジ高さの上記数値範囲は、リッジ側面部におけるドライエッチングの量とリッジ高さの関係を指す。すなわち、一般的には図2Aの(c)に示すように、残存する第2クラッド層108のリッジより外側部分に残る部分(すなわち横に広がっている裾の部分)の厚みは、リッジ側面部から離れている部分の方がリッジ側面近傍より薄くなる傾向になる場合が多い。そこで、ドライエッチングの量をリッジ高さの65〜95%の範囲とする場合の基準となるリッジ高さは、第1のドライエッチ後側壁面121の上端から下端(ドライエッチ後底面122と接する部分)までの垂直距離を基準とした。
また、このような所望のドライエッチング量を得る方法として、時間制御によりエッチングを停止する方法と、基板表面に単色光を当てて、その反射光より得られた干渉強度と時間の関係からエッチング残厚を算出しながらエッチングを行い、所望の膜厚になったときにエッチングを停止する方法が挙げられる。
本発明で好適に採用し得る上記ドライエッチング技術としては、異方性のプラズマエッチングであればよく、ドライエッチングの例として、誘導結合型プラズマ(以下ICP)やエレクトロン・サイクロトロン・レゾナンス(以下ECR)プラズマを用いた方法などが挙げられる。また、エッチングガスとしては、SiCl4とArの混合ガスなどが用いられるが、SiCl4ガス成分の代わりに、塩素ガスもしくは三塩化ホウ素ガスなどを用いてもよい。
なお、本実施の形態1で用いたドライエッチング技術はICP(Inductively Coupled Plasma;誘導結合プラズマ)法で、エッチングガスとしてSiCl4とArの混合ガスを用いている。エッチングの条件として、混合ガス中のSiCl4の体積含有率は5〜12%、半導体基板を設置する下部電極の温度は150〜200℃、チャンバー内圧力は0.1〜1Pa、下部電極のバイアスパワーは50〜150W、ICPパワーは200〜300Wとするが、これに限るものではなく、適宜選定すればよい。
次に図2Aの(c)で得られた中間体の全面(リッジ側面も含む)に、図2Aの(d)に示すように、プラズマCVD法により、60nm〜400nmの厚みのSiO2膜115を成長させる。
ここで、本実施の形態1では、リッジ側壁保護層を形成するため60nm〜400nmの厚みのSiO2膜115を成長させたが、SiO2膜115の厚みは、これに限るものではなく、次工程におけるリッジ側壁面以外の領域のSiO2膜115除去するため、ドライエッチングの追加エッチングにより生じるサイドエッチング量、もしくは各工程で表面処理を目的として適宜行うフッ酸系薬液を用いたウェットエッチングの際のエッチング量に応じて、SiO2膜115の厚みは、これに限られず、適宜選定すればよい。
また、本実施の形態1で用いたSiO2膜115は、これに限るものではなく、側壁保護層として使用できる素材としては、その後の工程で用いるウェットエッチング薬液に対して高選択性(耐エッチング薬液性)を確保でき、AlGaInP系半導体層と中間生成物を形成しない、成膜時の膜厚制御性が高いといった性質を有する材料を用いればよく、具体例としては、SiO2膜のほかにSiNやAl2O3といった誘電体膜、GaAsやAlGaAsといった半導体層、前記のような性質を持つ金属膜および有機膜など適宜、リッジ側壁保護層としての役割を達成できるものなどが挙げられる。
なお、これらを成膜する手段の例として、CVD法(例えばプラズマCVD、常圧CVD、MOCVDなど)やPVD法(スパッタ、蒸着、など)が挙げられるが、本実施の形態では、高い膜厚均一性の成膜が可能であり、成膜が容易なプラズマCVD法が特に好ましい。なおCVD法とは化学気相成長法(Chemical vapor deposition)の略称であり、PVD法とは物理的蒸着法(Physical vapor deposition)の略称である。
また、本実施の形態1で用いたSiO2膜115は単層であるが、これに限定されるものではなく、必要に応じて複数の層から構成されてもよい。
次に図2Aの(e)に示すように、リッジ側壁面以外の領域のSiO2膜115をドライエッチングにより除去し、SiO2側壁保護層116を形成する。
ドライエッチングとしては、反応性イオンエッチング法(以下RIE法)、ICP法、ECR法など適宜リッジ側面以外の領域のSiO2膜115を除去し得るドライエッチング方法が採用可能である。また、エッチングガスとしてCF4とCHF3の混合ガスなど、CF系ガスが用いられる。
なお、本実施の形態1ではRIE法を採用しており、エッチングガスとしてCF4とCHF3とO2の混合ガスを用いている。また、ドライエッチング条件として、混合ガス中のCF4およびCHF3の体積含有率はそれぞれ1〜10%および30〜50%、圧力は40〜60Pa、ステージ温度は10〜20℃としたが、これに限るものではなく、適宜変更可能である。
次に、図2Aの(f)に示すように、酒石酸と塩酸と水との混合液である塩酸系薬液(薬液中の酒石酸の体積含有率は30〜50%、塩酸の体積含有率は15〜35%)を用いて、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2クラッド層108をp型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106に至るまでエッチングする。ここで、p型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106は塩酸系薬液に耐性があるため、この層の露出により基板表面に対して垂直方向のエッチングが停止する。
また、基板表面に対して垂直方向のウェットエッチング終了の判断は、半導体基板表面のエッチング領域における干渉縞の目視により行える。p型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106が露出すると、基板表面に対して垂直方向のエッチング速度が極端に低下し、基板表面の膜厚均一性が向上するため、エッチング領域の干渉縞の変化が停止する。従って、基板表面に対して垂直方向のエッチングが停止したことを確認できる。
なお、本実施の形態1では、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2クラッド層108をウェットエッチングする薬液として塩酸系薬液を用いたが、これに限定されるものではなく、SiO2側壁保護層116とp型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106に対して高選択性を有する薬液であればよく、例えば硫酸系薬液を用いてもよい。
ここでは、SiO2側壁保護層116は塩酸系薬液に大きな耐性があるため、リッジ側面でこの層が形成された領域はエッチングされず、リッジ側面トップ部(すなわち第1の面となる部分)にサイドエッチングは発生しない。
一方、図2Aの(f)に示すように、リッジ側面でSiO2側壁保護層116が形成されていない領域(リッジ裾部分)は等方的にエッチングが進行する。
ここで、ウェットエッチングにおいて基板表面に対して垂直方向のエッチングが停止した直後は、SiO2側壁保護層116が形成されていない領域のリッジ側面は、リッジのストライプ方向に垂直な断面の形状で曲線状の傾斜面となる。従って、SiO2側壁保護層116が形成されていない領域のリッジ側面(第2のリッジ側壁面119:リッジ裾部分)がほぼ直線状になるまで、そのままウェットエッチングを続行することが好ましい。第2のリッジ側壁面119(第2の面)が断面形状でほぼ直線状の傾斜面になるまで行うウェットエッチング工程部分を取り上げて、これをわかりやすいようにあえて「追加エッチング」と称しているが、上記ウェットエッチングをあえて2段階に分けて行う必要はなく、ウェットエッチングは、第2のリッジ側壁面119が断面形状でほぼ直線状の傾斜面になるまで行えばよい。尚、かかる追加エッチング量は、薬液の種類・混合比に応じて、適宜選定すればよい。
次に、図2Aの(g)に示すように、フッ酸系薬液を用いてSiO2側壁保護層116を除去する。
本実施の形態1では、SiO2ストライプ114の膜厚をSiO2側壁保護層116よりも100〜300nm大きく設定しているため、時間制御により前記フッ酸系薬液によるエッチングを停止することで、SiO2側壁保護層116のみを除去することができる。
ここで、本実施の形態1では、SiO2側壁保護層116除去にウェットエッチング技術を用いたが、ウェットエッチングに限定されるものではなく、側壁保護層を構成する材料に応じて、適宜ケミカルドライエッチング法(以下CDE法)などを選択するべきである。ここでは、側壁保護層を構成する材料に応じて、SiO2側壁保護層116を選択的に除去できるエッチング技術を採用すればよい。
次に図2Aの(h)に示すように、MOCVD法により、SiO2ストライプ114をマスクとして、選択的にn型Al0.5In0.5P電流ブロック層107を厚さ0.2〜0.4μm成長させる。続いて、MOCVD法により、SiO2ストライプ114をマスクとして、選択的にn型GaAsキャップ層111を厚さ0.1〜0.2μm成長させる。
なお、n型Al0.5In0.5P電流ブロック層107を成長させる前にリッジ側壁のダメージ層を除去するため、硫酸薬液で表面処理を行う。このとき、リッジ側壁は15nm〜40nm程度の範囲でエッチングされる。また、表面処理を行うための薬液は塩酸と水の混合液でもよい。
なお、先に、電流ブロック層は、「前記リッジ上の少なくとも一部を除いて形成された電流ブロック層」と表現している部分があるが、これは、前記リッジの上面には電流ブロック層が形成されていない場合か、又は、図示されていないが、ストライプ状に長く伸びた前記リッジの上面のうち、長手方向の両端部近傍は電流ブロック層で覆われていてもよいことを意味しており、むしろ、後者の場合が好ましい。
次に図2Aの(i)に示すように、フッ酸系薬液などによってSiO2ストライプ114を除去した後、蒸着法によりp側電極112、n側電極101を形成し、リッジストライプ型半導体レーザウェハを完成させる。p側電極112の材料としては、例えばTi / Pt / Auなどが挙げられ、また、n側電極101の材料としては例えばAuGe / Ni / Auなどが挙げられる。
なお、本実施の形態1ではn型Al0.5In0.5P電流ブロック層107を用いたが、SiNやSiO2などの誘電体膜であってもよい。この場合、n型GaAsキャップ層111の成長は不要である。
本実施の形態1にて形成されたリッジ型ストライプは高い垂直性・対称性を有し、ドライエッチングにより形成されたリッジ上端に近い方のリッジ側面(第1のリッジ側壁面118)とn型GaAs基板102表面とのなす角度は85〜95°の範囲とすることが可能である。尚、第1の面(第1のリッジ側壁面)118と第2の面(第2のリッジ側壁面)119の符号は図2Aの(g)、図2Bの(j)〜(n)のみに付与し、他の図においては、図が見にくくなるので符号の付与は省略している。またここでリッジ側面と前記半導体基板表面のなす角度は、図2Aの(g)、(h)、(i)に符号120で示した側の角度(言い換えればリッジ側面のリッジ内部側における半導体基板面とのなす角度)であり、これは前記第1の面118や前記第2の面119と半導体基板面とのなす角度、或いは第1の面と第2の面の間に第3の中間面が存在する場合には前記第3の中間面と半導体基板面とのなす角度についても、この定義が適用される。他の図面においては符号120を付すことを省略しているが、リッジ側面と前記半導体基板表面のなす角度は、同様の定義が適用される。そして、前述したように第1の面(第1のリッジ側壁面)118が半導体基板102表面とのなす角度はほぼ垂直、より好ましくは、85〜95°の範囲である。すなわち、上記範囲で90度より小さい場合には前記リッジ断面形状は順メサ形状であり、90度より大きい場合には前記リッジ断面形状は若干逆メサ形状となる。第1のリッジ側壁面118が半導体基板102表面とのなす角度がほぼ垂直とは、この両者の範囲を含む範囲内であることが好ましい。
一方、ウェットエッチングにより形成されたリッジ下端に近い方のリッジ傾斜面(第2のリッジ側壁面119)とn型GaAs基板102表面とのなす角度は、40〜65°の範囲となる。また、傾斜させたオフ角を有する半導体基板を用いた場合、リッジ下端に近い方のリッジ傾斜面(第2の面)とn型GaAs基板102表面とのなす角度は、リッジ側壁の両側でそれぞれ異なる。例えば、オフ角が10°程度のとき、該角度は一方で40〜50°、もう一方で60〜70°の範囲となる。この角度はリッジ裾部でp型第2クラッド層108である(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pの(111)面が主に露出していることに起因する。以下に理由を述べる。
まず、p型第2クラッド層108はn型GaAs基板102上にエピタキシャル成長しているので、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2クラッド層108とn型GaAs基板102との結晶方位はほぼそろっている。GaAs基板の(100)面が傾斜していない場合、(100)面と(111)面との角度は約50°程度になる。また、GaAsやSi単結晶の結晶構造(閃亜鉛鉱構造)において最も原子配列数の多い(111)面でのエッチング速度が最も遅く、リッジ裾部でウェットエッチングが進行するにつれて、この面のエッチング速度が支配的になる。本実施の形態1では(100)面は[011]方向に10°程度傾斜しているため、リッジの片側で露出する(111)面が約40°程度、反対側で露出する(111)面が約60°程度となる。以上のように本実施の形態1ではウェットエッチングにより形成された第2のリッジ側壁面119が主に(111)面であることがわかる。
このようにリッジ側壁面の大部分の面である第1の面は、半導体基板面に対しほぼ垂直な面であるが、基板面に接する裾部分の第2の面の前記基板面に対する角度が小さく緩やかになっているので、SiNやSiO2などの誘電体膜を電流ブロック層として用いた場合でも、リッジ裾においてSiNやSiO2などの誘電体膜から成る電流ブロック層を形成するための原料ガスがリッジ裾近傍において供給不足になることはなく、発光位置に近く、発振光に最も影響するリッジ裾部における電流ブロック層のカバレッジは向上する。また、前記追加ウェットエッチングを行うことにより、リッジ下端に近い方のリッジ傾斜面(第2のリッジ側壁面119)は、リッジのストライプ方向に垂直な断面形状においてほぼ直線状の斜面になり、従って露出している結晶面の数が曲面に比べて減少するため、エピタキシャル成長させたn型Al0.5In0.5P電流ブロック層107のリッジ裾における結晶性が向上する。
また、本実施の形態1にて形成されたリッジトップ部に、p型Ga0.5In0.5P中間層109、およびp型GaAsコンタクト層110が突出した庇状のオーバーハングは形成されない。そのため、n型Al0.5In0.5P電流ブロック層107成長時に、空洞が発生することはない。従来のウェットエッチング技術を用いたリッジ形成方法では、リッジトップ部にオーバーハングが形成され(例えば、図4(c)参照)、n型Al0.5In0.5P電流ブロック層107を形成する際に、オーバーハング直下に空洞が形成され、素子特性に悪影響を与える。
また、本実施の形態1では、ドライエッチングにより形成されたリッジ側壁面とウェットエッチングにより形成されたリッジ側壁面の境界が、すなわち第1のリッジ側壁面118と第2のリッジ側壁面119の境界部が、角度がついて、即ちこの境界部が屈折部となって第1のリッジ側壁面と第2のリッジ側壁面がつながって形成されるが、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2クラッド層108をウェットエッチングする際にSiO2側壁保護層116下に発生するサイドエッチング量と、SiO2側壁保護層116厚のばらつきにより、リッジ下端に近い方のリッジ傾斜面(第2のリッジ側壁面119)とその上のリッジ側壁面(第1のリッジ側壁面118)との間に、半導体基板表面とほぼ平行な面からなる例えば図2Bの(j)や図2Bの(k)(いずれも図2Aの工程(g)に対応する工程の図面)の符号117に示すようなリッジ外側に張り出すか、ないしは、リッジ内側に食い込んだ状態の、前記半導体基板表面とほぼ平行な面を有するステップ状の段差(段差ステップ面)が形成されることがある(第3の中間面の前記(b1)の段差ステップ面など)。また、傾斜させたオフ角を有する半導体基板を用いた場合、リッジのストライプ方向に垂直な断面形状において、リッジ両側でサイドエッチング量(サイドエッチングされる量のこと)がそれぞれで異なる。このとき、基板オフ角の増加に伴い、リッジ両側でのサイドエッチング量の差は大きくなる。従って、この場合、図2Bの(l)、図2Bの(m)、又は図2Bの(n)(いずれも図2Aの工程(g)に対応する工程の図面)に示すような段差ステップ面117が形成される。
ここで、図2Bの(j)、図2Bの(k)に示すように、段差ステップ面117の寸法a−a'、b−b'は、小さいほど好ましく、0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下であることが望ましい。なお、傾斜させたオフ角を有する半導体基板を用いた場合、図2Bの(l)、図2Bの(m)、図2Bの(n)に示すように、図における左右の段差ステップ面117の寸法c−c’とd−d’は、異なってくるが、いずれの段差ステップ面117においても上記寸法は小さいほど好ましく、0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下であることが望ましい。
本実施の形態1に示した構造において例えばストライプ方向と垂直な方向の設計上のリッジ幅(つまりリッジ上面と下面とが同じ幅と仮定する)を1.5μmとして、共振器内を導波するレーザ光の分布(Near Field Pattern、以下NFPと略記する)の強度最大部分を100%とすると、設計上のリッジ下端から0.2μm程度外側でNFPの強度は50%程度である。従って段差ステップ面の長さもこの範囲内(0.2μm以下)であれば、段差ステップ部に起因する屈折率の急峻な変化はレーザ光に対して大きく影響しないのである。ここで「屈折率の変化」とはp型第2クラッド層108とn型電流ブロック層107との間での屈折率差をいう。また、前記半導体基板表面とほぼ平行で、前記断面において、ほぼ直線状の段差ステップ面とは、具体的に例示すると例えば、図2Bの(j)、(k)、(l)、(m)、(n)に示すような段差ステップ117の面を意味するものである。以下、このような段差ステップ面を、単に、段差ステップ、あるいは、段差ステップ部と称することもある。
尚、段差ステップ117は、図2Bの(j)に示したものは、リッジ側面の外側に張り出した段差ステップ(左右の段差ステップの長さが同じ)であり、例えば、傾斜オフ角のない半導体基板を用いたとき、図2Aの(e)から(f)のウェットエッチングの工程で、そのサイドエッチング量(サイドエッチングされる量)が側壁保護層の厚さより小さい場合に発生し、一方、図2Bの(k)に示したような、リッジ内側に食い込んだ段差ステップ117(左右の段差ステップの長さが同じ)は、傾斜オフ角のない半導体基板を用いたとき、前記ウェットエッチングの工程で、そのサイドエッチング量(サイドエッチングされる量)が側壁保護層の厚さより大きい場合に発生する。
なお、傾斜させたオフ角を有する半導体基板を用いた場合、前記ウェットエッチングの工程で、リッジ形状は側壁保護層の厚みとリッジ両側でそれぞれ発生するサイドエッチングの量とによって以下のように変化する。図2Bの(l)に示したリッジ形状は、前記ウェットエッチングの工程で、リッジ両側でそれぞれ発生するサイドエッチングのうち、サイドエッチング量の大きい方(サイドエッチングされる量が大きい方)のサイドエッチング量が側壁保護層の厚さより小さい場合に発生する。一方、図2Bの(m)に示したリッジ形状は、前記ウェットエッチングの工程で、リッジ両側でそれぞれ発生するサイドエッチングの量がそれぞれ側壁保護層の厚さより大きい場合に発生する。さらに、図2Bの(n)に示したリッジ形状は、前記ウェットエッチングの工程で、リッジ両側でそれぞれ発生するサイドエッチングのうち、一方のサイドエッチング量(サイドエッチングされる量)が側壁保護層の厚さより大きく、もう一方のサイドエッチング量(サイドエッチングされる量)が側壁保護層の厚さより小さい場合に発生する。
尚、ここで図2Bの(j)、図2Bの(k)、図2Bの(l)、図2Bの(m)、図2Bの(n)は、それぞれ図2Aの(g)の工程に対応する工程での別の態様の図2Aの(g)と同様のリッジのストライプ方向に垂直な断面の断面図である。
リッジ外側に張り出すか、ないしは、リッジ内側に食い込んだ状態の、前記半導体基板表面とほぼ平行な面、言い換えれば、リッジ側面の外側に張り出した段差ステップ117、またはリッジ内側に食い込んだ段差ステップ117が存在する場合には、本発明ではこのような状態を、前記第1のリッジ側壁面118と第2のリッジ側壁面119は、第3の中間面の一つである段差ステップを介して接続していると表現している。
ここで、本発明者の実験から、本実施の形態1では、リッジのストライプ方向に垂直な断面において、前記半導体基板表面を下にして見た時に、前記第1のリッジ側壁面118と第2のリッジ側壁面119が接続する位置で、前記半導体基板表面とほぼ平行な直線(図2A(f)における直線z)上のウェットエッチング時のサイドエッチング量(サイドエッチングされる量)は、一定であるという知見が得られた。上述したように、これはウェットエッチング時に第2のリッジ側壁面119が(111)面にそろっていき、エッチング速度が一定かつ安定化することに起因する。従って、(サイドエッチング量)≦(側壁保護層厚)と設定すれば、第2の面のリッジ側壁面119がリッジ外側に張り出す形状をウェハー面内で安定形成できる。一方、(サイドエッチング量)>(側壁保護層厚)とし、第2の面のリッジ側壁面119がリッジ内側に食い込むようにすると、例えば図2B(k)に示したようなリッジが形成される。ここで、さらにウェットエッチングを続行すると、エッチング時間増加に伴い、前記第2のリッジ側壁面119の最下端末端がエッチングストップ層106に接する位置は変化しないが、図2B(k)の119の面が当該面に沿って斜め上方に延長され前記段差ステップ117は、エッチングにより、リッジ上端の方向に移動し、図2B(k´)に示すように、段差ステップ117の寸法は大きくなる。つまり、リッジ側壁面がリッジ内側に食い込むよう設定した場合、ウェットエッチング速度のばらつきにより、リッジ寸法の制御性・安定性が低下する。特にリッジにくびれができることにより、電流通路が狭められ、レーザ動作時の抵抗が増大してしきい値の上昇等の特性低下が起きやすい。また、図2B(k´)に示したようにこのくびれが存在すると電流ブロック層を形成する場合に、電流ブロック層がこのくびれ部分に埋まりきらず空洞ができてしまうおそれがある。従って、リッジ両側で(サイドエッチング量)≦(側壁保護層厚)とすることが望ましい。このようにするには、側壁保護層116の下端とエッチングストップ層106間の距離が短いほどウェットエッチングが短時間で停止するので、例えば、側壁保護層116の厚さに応じて側壁保護層116の下端とエッチングストップ層106間の距離を調整するか、側壁保護層116の下端とエッチングストップ層106間の距離に応じて側壁保護層116の厚みを調整することなどが挙げられる。
また、電流ブロック層にSiNやSiO2など誘電体膜を用いた場合、段差ステップ117の寸法a−a'、b−b'、c−c’、d−d’は、リッジ側壁面における電流ブロック層厚以下であることが望ましい。第1のリッジ側壁面118と、半導体基板表面とほぼ平行な面のなす角度はほぼ90°となるが、段差ステップ117の寸法に比べ、電流ブロック層厚が十分に大きいため、段差ステップ部における前記SiNやSiO2など誘電体膜を形成するための原料ガスの供給不足は起こらず、電流ブロック層のカバレッジは低下しなくなるので好ましい。
以上のように本実施の形態1によれば、p型第2クラッド層の一部を残すようにストライプ状のリッジをドライエッチングで形成した後、リッジの側壁をSiO2等で保護し、さらにp型第2クラッド層をウェットエッチングにより除去するようにしたため、高い垂直性・対称性を有するストライプ状のリッジを形成することができ、得られる半導体レーザ装置のキャリア分布形状と光分布形状の差が小さくなり、ホールバーニング現象が抑制され、キンクレベルが向上する。 また、リッジ高さを高くでき、GaAsキャップ層等にレーザ光が吸収されるのを防止し、活性層からの光の広がりが大きい高出力半導体レーザが得られる。また、リッジ部とその下層とがなす角度を低減してクラックの発生を防止できる。また、ウェットエッチングの際、(サイドエッチング量)≦(側壁保護層厚)と設定することにより、第2の面のリッジ側壁面119がリッジ外側に張り出す形状をウェハー面内で安定形成できる。このことにより、リッジにくびれができてレーザ動作時の抵抗が増大するのを防止でき、またリッジ裾部に空洞が生じて屈折率が大きく変動するのを防止できる。
(実施の形態2)
図2Eおよび図2Fは、本実施の形態2におけるリッジストライプ型半導体レーザ装置の製造工程を示す断面図である。本実施の形態2では、上述した段差ステップ117に起因する屈折率の変化を抑制し、かつ、リッジの寸法、形状を安定に形成することを目的とする。本実施の形態2では、図2Aの(b)に示すように、SiO2ストライプ114に形成する工程まで、実施の形態1と共通であるため、それ以降の工程について説明する。また、層構成についても実施の形態1と共通である。
SiO2ストライプ114を形成後、段差ステップ117による屈折率ステップの形成を抑制するため、続いてSiO2ストライプ114をマスクとして、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2クラッド層108、p型Ga0.5In0.5P中間層109、およびp型GaAsコンタクト層110を、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2クラッド層108の途中までドライエッチングする。この時、リッジ形状は一般的に、実施の形態1の図2Dのように第1のドライエッチ後側壁面121とドライエッチ後底面122から構成される。ここで、図2Dは、図2A(c)におけるリッジ及びその裾領域近傍125の拡大図である。このようなドライエッチングの形状を用いて、これに図2A(d)、(e)で示したように側壁保護膜116を形成して、ウェットエッチングする場合に、半導体基板表面を下にして見たときに、リッジ両側で(サイドエッチング量)≦(側壁保護層厚)と設定して、リッジ側壁面がリッジ外側に張り出すリッジを形成した場合、SiO2側壁保護層116下にサイドエッチングが発生し、ドライエッチング後底面122のSiO2側壁保護層116下の領域が、半導体基板表面とほぼ平行な段差ステップ117(第3の中間面のうちの(b1)の段差スッテップ面)となる(図2B(j)の段差ステップ117参照)。
また、前述したように、このような段差ステップ117の寸法(図に向かって横方向の寸法)は、小さいほど好ましく、0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下であることが望ましい。段差ステップ117が0.2μm以上であると、共振器内を導波するレーザ光のうち強度の弱い領域(強度が50%以下)内に屈折率が急峻に変化するため、この影響を受けてNFPが乱れやすくなる。NFPが乱れると、レーザ素子から出射される光の分布形状(Far Field Pattern、以下FFP)も変形してしまい、例えば、対物レンズ等を通して光ディスク上にレーザ光を集光した場合、真円形状にならず、ディスクからのデータ読み取りあるいはデータ書き込み異常が発生するおそれがある。ここで、(サイドエッチング量)=(SiO2側壁保護層116厚)とすることで、段差ステップ117の寸法を0μm、つまり段差ステップ117のないリッジ形成を行うことは可能である(図2Aの(f)、(g)参照)が、ウェットエッチング速度やSiO2側壁保護層116厚のばらつきにより、ウェハ全体で完全に段差ステップ117の形成を抑制することはかなり厳密なコントロールが要求される。また、傾斜させたオフ角を有する半導体基板を用いた場合は、半導体基板表面を下にして見たときに、リッジ両側で段差ステップ117の寸法が異なるため、一方側の段差ステップ117の寸法を0μmとしても、もう一方側で必ず段差ステップ117が形成されることになる(図2Cの(o)、(p)参照)。
そこで本実施の形態2では、SiO2ストライプ114をマスクとして、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2クラッド層108、p型Ga0.5In0.5P中間層109、およびp型GaAsコンタクト層110を、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2クラッド層108の途中までドライエッチングする際に、下記のドライエッチング条件を選定し、例えば、図2E(t−1)や図2F(u−1)に示すようなリッジ形状となるよう、ドライエッチングを行う。尚、図2E(t−1)の126の部分並びに図2F(u−1)の127の部分(リッジとその裾近傍部分)の拡大図をそれぞれ図2G、図2Hに示してある。
本実施の形態2では、上記ドライエッチング技術として、ICP法を採用しており、エッチングガスとしてSiCl4とArの混合ガスを用いている。リッジ裾部の形状が図2E(t−1)となるエッチング条件として、混合ガス中のSiCl4の体積含有率は5〜12%、半導体基板を設置する下部電極の温度は150〜200℃、チャンバー内圧力は0.3〜0.5Pa、下部電極のバイアスパワーは50〜150W、ICPパワーは200〜300Wとするが、これに限るものではなく、所望とする形状が得られるドライエッチング条件を適宜選定すればよい。また、図2F(u−1)となるエッチング条件として、混合ガス中のSiCl4の体積含有率は5〜12%、半導体基板を設置する下部電極の温度は150〜200℃、チャンバー内圧力は0.1〜0.3Pa、下部電極のバイアスパワーは50〜150W、ICPパワーは200〜300Wとしたが、これに限るものではなく、所望とする形状が得られるドライエッチング条件を適宜選定すればよい。
図2Gは、図2E(t−1)におけるリッジ及びその裾領域近傍126の拡大図であるが、半導体基板表面に対しほぼ垂直な第1のドライエッチング後の側壁面121とドライエッチング後の底面122の間に、第3の傾斜中間面となるドライエッチング後側壁面123を形成する。なお、第3の傾斜中間面となるドライエッチ後側壁面123は複数の面から構成されていてもよく、また、図2F(u−1)におけるリッジ及びその裾領域近傍127の拡大図である図2Hの第3の傾斜中間面であるドライエッチ後側壁面124のように、幅の小さな複数の面が集まった形状、つまり、曲面(断面図では曲線)となっていても良い。この第3の傾斜中間面であるドライエッチング後側壁面が複数個ある場合には、この第3の傾斜中間面であるリッジ側壁面と半導体基板表面のなす角度が、p型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106に近いほど小さくなるような形状である。曲面の場合にリッジ側壁面と半導体基板表面のなす角度とは、強いて言えば、前記断面図の当該曲線の曲線上の各位置における接線と半導体基板表面のなす角度がエッチングストップ層106に近いほど小さくなるような形状、言い換えれば、この曲線はリッジ内側方向に凸の曲線と言うことになる。
ここで、ドライエッチングの量はリッジ高さの65〜95%の範囲、好ましくは80%〜95%の範囲で行う。この範囲であればリッジ裾部でのウェットエッチングによるサイドエッチング量のばらつきを抑制できる。ドライエッチングにより形成される第1の面の領域が少なすぎて、その結果ウェットエッチングすべき領域が大き過ぎる場合には、エッチング液の状態(濃度、温度等)によってエッチング量のばらつきが大きく左右され、第2の面の結晶面の影響が支配的でなくなるからである。なおここでドライエッチングの量とリッジ高さの上記数値範囲は、リッジ側面部におけるドライエッチングの量とリッジ高さの関係を指す。すなわち、本実施の形態2では、図2Gや図2Hに示すように、リッジ側壁面と半導体基板表面のなす角度は、p型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106に近いほど小さくなる。そこで、半導体基板表面に対しほぼ垂直な面を形成するためのドライエッチングの量をリッジ高さの65〜95%の範囲とする場合の基準となるリッジ高さは、第1のドライエッチング後側壁面121における高さを基準とした。すなわち、ドライエッチングの量をリッジ高さの65〜95%の範囲とする場合の基準となるリッジ高さはリッジ上端からエッチングストップ層106表面に対して下ろした垂線の距離を基準とした。
そして、ドライエッチングの量はリッジ高さの65〜95%の範囲で行う。なおここでドライエッチングの量とリッジ高さの上記数値範囲および基準となるリッジ高さは実施の形態1と同様である。
本実施の形態2では、図2Gや図2Hに示すように、リッジ側壁面と半導体基板表面のなす角度は、p型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106に近いほど小さくなる。
また、このような所望のドライエッチング量を得る方法として、時間制御によりエッチングを停止する方法と、基板表面に単色光を当てて、その反射光より得られた干渉強度と時間の関係からエッチング残厚を算出しながらエッチングを行い、所望の膜厚になったときにエッチングを停止する方法が挙げられる。
なお、本発明で第1の面や第3の傾斜中間面をドライエッチングで形成する場合に、好適に採用し得るドライエッチング技術としては、上記のICP法に限られず、異方性のプラズマエッチングであればよく、ドライエッチングの例として、エレクトロン・サイクロトロン・レゾナンス(以下ECR)プラズマを用いた方法などが挙げられる。また、エッチングガスとしては、SiCl4とArの混合ガスなどが用いられるが、SiCl4ガス成分の代わりに、塩素ガスもしくは三塩化ホウ素ガスなどを用いてもよい。
続いて、図2E(t−2)および図2F(u−2)に示すように、図2E(t−1)および図2F(u−1)で得られた中間体の全面(リッジ側面も含む)に、プラズマCVD法により、60nm〜400nmの厚みのSiO2膜128および129を成長させる。
ここで、本実施の形態2では、リッジ側壁保護層を形成するため60nm〜400nmの厚みのSiO2膜128および129を成長させたが、SiO2膜128および129の厚みは、これに限るものではなく、次工程におけるリッジ側壁面以外の領域のSiO2膜128および129を除去するため、ドライエッチングの追加エッチングにより生じるサイドエッチング量、もしくは各工程で表面処理を目的として適宜行うフッ酸系薬液を用いたウェットエッチングの際のエッチング量に応じて、SiO2膜128および129の厚みは、これに限られず、適宜選定すればよい。
また、本実施の形態2で用いたSiO2膜128および129は、これに限るものではなく、側壁保護層として使用できる素材としては、その後の工程で用いるウェットエッチング薬液に対して高選択性(耐エッチング薬液性)を確保でき、AlGaInP系半導体層と中間生成物を形成しない、成膜時の膜厚制御性が高いといった性質を有する材料を用いればよく、具体例としては、SiO2膜のほかにSiNやAl2O3といった誘電体膜、GaAsやAlGaAsといった半導体層、前記のような性質を持つ金属膜および有機膜など適宜、リッジ側壁保護層としての役割を達成できるものなどが挙げられる。
なお、これらを成膜する手段の例として、CVD法やPVD法が挙げられるが、本実施の形態では、高い膜厚均一性の成膜が可能であり、成膜が容易なプラズマCVD法が特に好ましい。
また、本実施の形態2で用いたSiO2膜128および129は単層であるが、これに限定されるものではなく、必要に応じて複数の層から構成されてもよい。
次に、図2E(t−3)および図2F(u−3)に示すように、リッジ側壁面以外の領域のSiO2膜128および129をドライエッチングにより除去し、SiO2側壁保護層130および131を形成する。
ドライエッチングとしては、RIE(反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching))法、ICP法、ECR法など適宜リッジ側面以外の領域のSiO2膜128および129を除去し得るドライエッチング方法が採用可能である。また、エッチングガスとしてCF4とCHF3の混合ガスなど、CF系ガスが用いられる。
なお、本実施の形態2ではRIE法を採用しており、エッチングガスとしてCF4とCHF3とO2の混合ガスを用いている。また、ドライエッチング条件として、混合ガス中のCF4およびCHF3の体積含有率はそれぞれ1〜10%および30〜50%、圧力は40〜60Pa、ステージ温度は10〜20℃としたが、これに限るものではなく、適宜リッジ側面以外の領域のSiO2膜128及び129を除去し得るドライエッチング条件が採用可能である。
次に、図2E(t−4)および図2F(u−4)に示すように、塩酸系薬液を用いて、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2クラッド層108をp型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106に至るまでエッチングする。ここで、p型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106は塩酸系薬液に耐性があるため、この層の露出により基板表面に対して垂直方向のエッチングが停止する。
また、基板表面に対して垂直方向のウェットエッチング終了の判断は、半導体基板表面のエッチング領域における干渉縞の目視により行える。p型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106が露出すると、基板表面に対して垂直方向のエッチング速度が極端に低下し、基板表面の膜厚均一性が向上するため、エッチング領域の干渉縞の変化が停止する。従って、基板表面に対して垂直方向のエッチングが停止したことを確認できる。
なお、本実施の形態2では、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2クラッド層108をウェットエッチングする薬液として塩酸系薬液を用いたが、これに限定されるものではなく、SiO2側壁保護層130および131とp型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106に対して高選択性を有する薬液であればよく、例えば硫酸系薬液を用いてもよい。
ここでは、SiO2側壁保護層130および131は塩酸系薬液に大きな耐性があるため、リッジ側面でこの側壁保護層が形成された領域はエッチングされず、リッジ側壁トップ部(第1の面となる部分)にサイドエッチングは発生しない。
一方、図2E(t−4)および図2F(u−4)に示すように、リッジ側面でSiO2側壁保護層130および131が形成されていない領域(リッジ裾部分)は等方的にエッチングが進行する。
また、この時、リッジ両側で、リッジ側壁面(第2の面と第3の中間面)がリッジ外側に張り出す形状となるよう、サイドエッチング量と、SiO2側壁保護層130および131厚を調整する。ここで、リッジ側壁面がリッジ内側に食い込む形状とすると、実施の形態1の図2B(k)と同様のリッジ形状となる。
ここで、ウェットエッチングにおいて基板表面に対して垂直方向のエッチングが停止した直後は、SiO2側壁保護層130および131が形成されていない領域のリッジ側面は、リッジのストライプ方向に垂直な断面の形状で曲線状の傾斜面となる。従って、SiO2側壁保護層130および131が形成されていない領域のリッジ側面(第2のリッジ側壁面133および135)がほぼ直線状になるまで、そのままウェットエッチングを続行することが好ましい。第2のリッジ側壁面133および135が断面形状でほぼ直線状の傾斜面になるまで行うウェットエッチング工程部分を取り上げて、これをわかりやすいようにあえて「追加エッチング」と称しているが、上記ウェットエッチングをあえて2段階に分けて行う必要はなく、ウェットエッチングは、第2のリッジ側壁面135が断面形状でほぼ直線状の傾斜面になるまで行えばよい。尚、かかる追加エッチング量は、薬液の種類・混合比に応じて、適宜選定すればよい。
次に、図2E(t−5)および図2F(u−5)に示すように、フッ酸系薬液を用いてSiO2側壁保護層130および131を除去する。
本実施の形態2では、SiO2ストライプ114の膜厚をSiO2側壁保護層130および131よりも100〜300nm大きく設定しているため、時間制御により前記フッ酸系薬液によるエッチングを停止することで、SiO2側壁保護層130および131のみを除去することができる。
ここで、本実施の形態2では、SiO2側壁保護層130および131除去にウェットエッチング技術を用いたが、ウェットエッチングに限定されるものではなく、側壁保護層を構成する材料に応じて、適宜ケミカルドライエッチング法(以下CDE法)などを選択するべきである。ここでは、側壁保護層を構成する材料に応じて、SiO2側壁保護層130および131を選択的に除去できるエッチング技術を採用すればよい。
次に図2Eの(t−9)や図2Fの(u−8)に示すように、MOCVD法により、SiO2ストライプ114をマスクとして、選択的にn型Al0.5In0.5P電流ブロック層138を厚さ0.2〜0.4μm成長させる。続いて、MOCVD法により、SiO2ストライプ114をマスクとして、選択的にn型GaAsキャップ層139を厚さ0.1〜0.2μm成長させる。
なお、n型Al0.5In0.5P電流ブロック層107を成長させる前にリッジ側壁のダメージ層を除去するため、硫酸薬液で表面処理を行う。このとき、リッジ側壁は15nm〜40nm程度の範囲でエッチングされる。また、表面処理を行うための薬液は塩酸と水の混合液でもよい。
なお、先に、電流ブロック層は、「前記リッジ上の少なくとも一部を除いて形成された電流ブロック層」と表現している部分があるが、これは、前記リッジの上面には電流ブロック層が形成されていない場合か、又は、図示されていないが、ストライプ状に長く伸びた前記リッジの上面のうち、長手方向の両端部近傍は電流ブロック層で覆われていてもよいことを意味しており、むしろ、後者の場合が好ましい。
次に図2Eの(t−10)や図2Fの(u−9)に示すように、フッ酸系薬液などによってSiO2ストライプ114を除去した後、蒸着法によりp側電極140、n側電極141を形成し、リッジストライプ型半導体レーザウェハを完成させる。p側電極140の材料としては、例えばTi / Pt / Auなどが挙げられ、また、n側電極141の材料としては例えばAuGe / Ni / Auなどが挙げられる。
なお、本実施の形態2ではn型Al0.5In0.5P電流ブロック層138を用いたが、SiNやSiO2などの誘電体膜であってもよい。この場合、n型GaAsキャップ層139の成長は不要である。
本実施の形態2にて形成されたリッジ型ストライプでは、図2Iおよび図2Jに示すように、第1のリッジ側壁面121と第2のリッジ側壁面135の間に、第3の傾斜中間面である134および136が形成される。ここで、図2Iは図2E(t−5)におけるリッジ及びその裾近傍領域132の拡大図、また、図2Jは図2F(u−5)におけるリッジ裾近傍領域133の拡大図である。第3の傾斜中間面134は直線状、第3の傾斜中間面136は曲線状(リッジ内側方向に凸の曲線状)であり、それぞれリッジ外側に向かって斜め下方方向に傾斜している。従って、実施の形態1における半導体表面とほぼ平行な段差ステップ117と比較して、空間的に見た場合のリッジ裾部における材質の急峻な変化、つまり屈折率の急峻な変化を抑制でき、レーザ光のNFPの乱れを抑え、FFPの変形を防止することが可能となる。特に本実施の形態2によればリッジ裾部の幅が0.2μmを越える場合にも上記の効果を奏することが可能である。ここで、「リッジ裾部の幅」とは、例えば、図2Iに示した第1のリッジ側壁面121から第2のリッジ側壁面135がエッチングストップ層106と接する部分までの水平距離をいう。
ここで、本実施の形態2では、リッジ両側において、リッジ側壁面がリッジ外側に張り出す形状で、かつ、サイドエッチング量と、側壁保護層厚を調整し、(基板表面と平行な方向における第3の面のドライエッチング後側壁面寸法)≧(側壁保護層厚)−(サイドエッチング量)≧0とする必要がある。例えば、本実施の形態2の図2Gでは、(基板表面と平行な方向における第3の面のドライエッチング後側壁面123寸法、つまり[h−h’])≧(SiO2側壁保護層130厚)−(サイドエッチング量)≧0とする。また、基板表面と平行な方向における第3の中間面134寸法、つまりj−j’、k−k’寸法(図2E(t−5))は小さいほど好ましく、0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下であることが望ましい。この範囲内であれば、第3の中間面は発振光に対して悪影響を与えないからである。一方、(SiO2側壁保護層130厚)−(サイドエッチング量)≧(h−h’)≧0とした場合、リッジ側壁面がリッジ外側に張り出す形状にはなるが、図2E(t−6)に示すように、第3の中間面134と第2のリッジ側壁面135の間に、ドライエッチ後底面122の一部から成り、基板表面とほぼ平行な段差ステップ137が形成されてしまう。この段差ステップ137の長さが0.2μmを越えると上述したとおり、レーザ光のNFPの乱れに起因するFFPの変形を生じるおそれがある。従って、第3の傾斜中間面の基板表面と平行な方向における寸法や段差ステップ137の長さは0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下であることが望ましい。なお、図2Eと同様に、図2Fのものにおいても(図2H参照)、(基板表面と平行な方向における第2のドライエッチング後側壁面124寸法、つまり[i−i´])≧(SiO2側壁保護層131厚)−(サイドエッチング量)≧0とする。また、基板表面と平行な方向における第3の傾斜中間面136寸法、つまりl−l’、m−m’(図2F(u−5)や図2J参照)は小さいほど好ましく、0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下であることが望ましい。
また、傾斜させたオフ角を有する半導体基板を用いた場合、リッジ両側でサイドエッチング量が異なる。そのサイドエッチング量を考慮して、リッジ両側で、(基板表面と平行な方向における第3の面のドライエッチング後側壁面寸法)≧(側壁保護層厚)−(サイドエッチング量)≧0とし、リッジ側壁面がリッジ外側に張り出すリッジ形状とすることが望ましい。
なお、本実施の形態1、2では、基板方位が(001)面から[110]方向に10°傾斜したオフ角を有するn型GaAs基板102を用いたが、本発明は基板オフ角に関係なく適用できる。
(実施の形態3)
図2Kの(w−1)〜(w−6)および図2Kの(x)は、本実施の形態3におけるリッジストライプ型半導体レーザ装置の製造工程を示す断面図である。本実施の形態3は、n型GaAs基板102が、基板方位を(100)面から[011]方向に傾斜させたオフ角を有する半導体基板を用いる場合に限定される。実施の形態1で述べたように、オフ基板を用いると、例えば図2Bの(l)、(m)、(n)、および図2Cの(p)に示すように、必ず中間段差面117が形成される。そこで、本実施の形態3は、実施の形態1における中間段差面117の形成を抑制することで、中間段差面117と第2の面119との接続部近傍で発生する屈折率の変化を抑制し、さらに、寸法制御性、再現性良くリッジ形成することを目的とする。なお、本実施の形態3では、図2Aの(e)に示すように、側壁保護層116を形成する工程まで、実施の形態1と共通であるため、それ以降の工程について説明する。また、層構造についても実施の形態1と共通である。
図2Aの(e)に示すように、リッジ側壁面以外の領域のSiO2膜115をドライエッチングにより除去し、SiO2側壁保護層116を形成する。ここで、形成された前記リッジのストライプ方向に垂直な断面において、前記基板を下にして前記リッジを[01−1]方向から見たときに、リッジ両側に形成されたSiO2側壁保護層116のうち、リッジの左側に形成されたものをSiO2側壁保護層116αとし、リッジの右側に形成されたものをSiO2側壁保護層116βとする(図2K(w−1)参照)。
次に、図2Kの(w−1)に示すように、フォトリソグラフィー技術により、レジストパターン145を形成する。ここで、レジストパターン145の形状は、これに限定するものではなく、SiO2側壁保護層116αの全体もしくはリッジ下端に近い方の一部分を被覆し、SiO2側壁保護層116βの全体もしくはリッジ下端に近い方の一部分が露出していればよい。
次に、図2Kの(w−2)に示すように、フッ酸系薬液を用いて、SiO2側壁保護層116βを20nm〜50nmの厚みの分だけエッチングし薄膜化した後、レジストパターン145を除去する。ここで、エッチングによる薄膜化後のSiO2側壁保護層116βを、SiO2側壁保護層116γと呼ぶ。
ここで、本実施の形態3では、SiO2側壁保護層116βを薄膜化するため20nm〜50nmの厚みの分だけエッチングしたが、このエッチング量は、これに限るものではなく、次工程でp型第2クラッド層108の残りの部分をp型エッチングストップ層106に至るまでウェットエッチングする際、SiO2側壁保護層116αおよび116γの下に生じ、n型GaAs基板102の基板オフ角により決定されるサイドエッチング量に応じて適宜変えればよい。
また、本実施の形態3では、SiO2側壁保護層116βに対して、エッチング速度の小さいフッ酸系薬液、例えば、SiO2ストライプ114をエッチングする際に用いられる薬液に対して1/2〜1/10程度のフッ酸濃度の薬液を用いているため、時間制御により、SiO2側壁保護層116γを消失させることなく、SiO2側壁保護層116γの厚みを調節することができる。さらに、SiO2ストライプ114の一部がレジストパターン145から露出している場合、露出した部分のSiO2ストライプ114もエッチングされるが、膜厚をSiO2側壁保護層116βよりも100〜300nm大きく設定しているため、露出された部分のSiO2ストライプ114が消失することはない。また、前記フッ酸系薬液によるエッチングにより、SiO2ストライプ114に段差が形成されるが、SiO2ストライプ114が消失しなければ問題ない。
ここで、本実施の形態3では、SiO2側壁保護層116βの薄膜化にウェットエッチング技術を用いたが、ウェットエッチングに限定されるものではなく、側壁保護層を構成する材料に応じて、適宜ケミカルドライエッチング法(以下CDE法)などを選択するべきである。ここでは、側壁保護層を構成する材料に応じて、SiO2側壁保護層116βを選択的にエッチングできるエッチング技術を採用すればよい。
次に、図2Kの(w−3)に示すように、塩酸系薬液を用いて、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2クラッド層108をp型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106に至るまでエッチングする。ここで、p型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106は塩酸系薬液に耐性があるため、この層の露出により基板表面に対して垂直方向のエッチングが停止する。
ここで、本実施の形態3では、塩酸系薬液として、酒石酸と塩酸と水の混合液を用いており、薬液中の酒石酸の体積含有率は30〜50%、塩酸の体積含有率は15〜35%である。
また、基板表面に対して垂直方向のウェットエッチング終了の判断は、半導体基板表面のエッチング領域における干渉縞の目視により行える。p型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106が露出すると、基板表面に対して垂直方向のエッチング速度が極端に低下し、基板表面の膜厚均一性が向上するため、エッチング領域の干渉縞の変化が停止する。従って、基板表面に対して垂直方向のエッチングが停止したことを確認できる。
なお、本実施の形態3では、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2クラッド層108をウェットエッチングする薬液として塩酸系薬液を用いたが、これに限定されるものではなく、SiO2側壁保護層116αおよびγとp型Ga0.5In0.5Pエッチングストップ層106に対して高選択性を有する薬液であればよく、例えば硫酸系薬液を用いてもよい。
ここでは、SiO2側壁保護層116αおよび116γは塩酸系薬液に大きな耐性があるため、リッジ側面でこの層が形成された領域はエッチングされず、SiO2側壁保護層116αおよび116γが形成されている領域(第1のリッジ側壁面146)にサイドエッチングは発生しない。
一方、リッジ側面でSiO2側壁保護層116αおよび116γが形成されていない領域(リッジ裾部分)は等方的にエッチングが進行する。
ここで、ウェットエッチングにおいて基板表面に対して垂直方向のエッチングが停止した直後は、SiO2側壁保護層116αおよび116γが形成されていない領域のリッジ側面は、リッジのストライプ方向に垂直な断面の形状で曲線状の傾斜面となる。従って、SiO2側壁保護層116αおよび116γが形成されていない領域のリッジ側面(第2のリッジ側壁面147)がほぼ直線状になるまで、そのままウェットエッチングを続行することが好ましい。第2のリッジ側壁面147が断面形状でほぼ直線状の傾斜面、すなわち全体的に(111)面が露出するまで行うウェットエッチング工程部分を取り上げて、これをわかりやすいようにあえて「追加エッチング」と称しているが、上記ウェットエッチングをあえて2段階に分けて行う必要はなく、ウェットエッチングは、第2のリッジ側壁面147が断面形状でほぼ直線状の傾斜面になるまで行えばよい。尚、かかる追加エッチング量は、薬液の種類・混合比に応じて、適宜選定すればよい。
次に、図2Kの(w−4)に示すように、フッ酸系薬液を用いてSiO2側壁保護層116αおよび116γを除去する。
本実施の形態3では、SiO2ストライプ114の膜厚をSiO2側壁保護層116αおよび116γよりも100〜300nm大きく設定しているため、時間制御により前記フッ酸系薬液によるエッチングを停止することで、SiO2側壁保護層116αおよび116γのみを除去することができる。
ここで、本実施の形態3では、SiO2側壁保護層116αおよび116γの除去にウェットエッチング技術を用いたが、ウェットエッチングに限定されるものではなく、側壁保護層を構成する材料に応じて、CDE法などを選択するべきである。ここでは、側壁保護層を構成する材料に応じて、SiO2側壁保護層116αおよび116γを選択的に除去できるエッチング技術を採用すればよい。
次に図2Kの(w−5)に示すように、MOCVD法により、SiO2ストライプ114をマスクとして、選択的にn型Al0.5In0.5P電流ブロック層148を厚さ0.2〜0.4μm成長させる。続いて、MOCVD法により、SiO2ストライプ114をマスクとして、選択的にn型GaAsキャップ層149を厚さ0.1〜0.2μm成長させる。
なお、n型Al0.5In0.5P電流ブロック層148を成長させる前にリッジ側壁のダメージ層を除去するため、硫酸薬液で表面処理を行う。このとき、リッジ側壁は15nm〜40nm程度の範囲でエッチングされる。また、表面処理を行うための薬液は塩酸と水の混合液でもよい。
なお、先に、電流ブロック層は、「前記リッジ上の少なくとも一部を除いて形成された電流ブロック層」と表現している部分があるが、これは、前記リッジの上面には電流ブロック層が形成されていない場合か、又は、図示されていないが、ストライプ状に長く伸びた前記リッジの上面のうち、長手方向の両端部近傍は電流ブロック層で覆われていてもよいことを意味しており、むしろ、後者の場合が好ましい。
次に図2Kの(w−6)に示すように、フッ酸系薬液などによってSiO2ストライプ114を除去した後、蒸着法によりp側電極150、n側電極151を形成し、リッジストライプ型半導体レーザウェハを完成させる。p側電極150の材料としては、例えばTi / Pt / Auなどが挙げられ、また、n側電極151の材料としては例えばAuGe / Ni / Auなどが挙げられる。
なお、本実施の形態3ではn型Al0.5In0.5P電流ブロック層148を用いたが、SiNやSiO2などの誘電体膜であってもよい。この場合、n型GaAsキャップ層149の選択成長は不要である。
本実施の形態3にて形成されたリッジ型ストライプは高い垂直性・対称性を有し、ドライエッチングにより形成されたリッジ上端に近い方のリッジ側面とn型GaAs基板102表面とのなす角度、および、ウェットエッチングにより形成されたリッジ下端に近い方の第2のリッジ傾斜面とn型GaAs基板102表面とのなす角度は、実施の形態1にて形成されたリッジ型ストライプと同等となる。
また、本実施の形態3では、(SiO2側壁保護層116αの厚さ)=(SiO2側壁保護層116α下に発生するサイドエッチング量)、および(SiO2側壁保護層116γの厚さ)=(SiO2側壁保護層116γ下に発生するサイドエッチング量)とすることで、傾斜させたオフ基板を用いているにも関わらず、ドライエッチングにより形成されたリッジ側壁面とウェットエッチングにより形成されたリッジ側壁面の境界に第3の中間段差ステップ面等が形成されず、第1の面と第2の面とが直接接続される形状となる。ここで、オフ基板を用いる場合、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2クラッド層108をウェットエッチングする際に、SiO2側壁保護層116αおよび116γ下に発生するサイドエッチング量は、(SiO2側壁保護層116α下に発生するサイドエッチング量)>(SiO2側壁保護層116γ下に発生するサイドエッチング量)となり、基板オフ角の増加に伴い、この両者のサイドエッチング量の差は大きくなる。従って、基板オフ角に応じて、SiO2側壁保護層116αおよび116γの厚みを選定すればよい。なお、本実施の形態3において、SiO2側壁保護層116αおよび116γ下に発生するサイドエッチング量と、SiO2側壁保護層116αおよび116γの厚みのばらつきにより、第1のリッジ側壁面146と第2のリッジ側壁面147との間に、実施の形態1と同様な第3の中間段差ステップ面が形成されることがあるが、(SiO2側壁保護層116αおよび116γ厚)≧(サイドエッチング量)と設定すれば、図2Kの(x)に示すように、リッジ外側に張り出した形状の中間段差ステップ面152が形成され、第3の中間段差ステップ面152寸法n−n’およびo−o’が小さいリッジを、寸法制御性・再現性良く形成することができる。
以上、本発明によれば、SiO2側壁保護層116、130および131および116α、116γにより、リッジ側面のサイドエッチングを抑制しつつ、ドライエッチングに起因するプラズマダメージ層除去を目的としたリッジ形成を寸法精度良く行うことができ、リッジの長手方向(ストライプ方向)に対して垂直な断面において、左右対称性が均一なリッジ形状の形成が可能となる。加えて、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P第2クラッド層108のかなりの部分をドライエッチングしているため、リッジの長手方向(ストライプ方向)に対して垂直な断面において、高垂直性・高対称性のリッジ形状が得られる。これらの効果は、得られるリッジストライプ型半導体レーザ装置のキンクレベル向上、歩留向上に繋がる。
さらに、本発明によれば、ウェットエッチングにより、発光位置に近く、発振光に最も影響するリッジ裾部にほぼ直線状の傾斜面(第2のリッジ側壁面)が形成されている、つまり、露出する結晶面数(複数の異なる種類の結晶面が露出すること)を減少することで、リッジ裾部においてn型AlInPなど半導体層で構成された電流ブロック層の結晶性を向上できる。また、SiNおよびSiO2など誘電体膜により構成された電流ブロック層の場合にはそのカバレッジ性を向上できる。これらの効果は、レーザ光の水平放射角の均一化、閾値電流や動作電流の減少など半導体レーザ素子特性の改善に繋がる。
また、本実施の形態では、AlGaInP系の赤色半導体レーザ装置を用いたが、これに限るものではなく、本発明は混晶化合物半導体を利用したすべてのリッジストライプ型半導体レーザ装置で適用が可能である。なお、本発明に係るリッジストライプ型半導体レーザ装置には一つのストライプ状のリッジを有するタイプだけでなく、同一基板上に複数のストライプ状リッジを有するタイプ、またその中でも異なる波長のレーザ光を発するタイプ、例えば、赤外光と赤色光を発するタイプのレーザ装置が含まれることは言うまでもない。