JP4738631B2 - ねじ駆動式油圧プレス装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば材料の加工や成形に用いるプレス機械のアクチュエータとして好適なエネルギー効率の高いねじ駆動式プレス装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、金属材料のせん断加工、曲げ加工、絞り加工、鍛造や、ゴムタイヤの成形、プラスチックバスタブの成形等に油圧プレス機械が用いられている。一般に、油圧プレス機械の可動時には、電動モータで駆動される油圧ポンプは常に回転して作動油を送出しており、作動油が所定圧以上のときにバルブを介して油タンクに戻しており、そのため作動油の流動やバルブの動作によるエネルギー損が生じる。
【0003】
昨今、省エネルギー化を目指した油圧プレス装置として図5に示すようなものが研究、開発されている。この油圧プレス装置の油圧系は、油圧シリンダ31と、油圧シリンダ31に送り配管37を通じて作動油を送り、戻し配管38を通じて作動油を戻す油圧ポンプ32と、油圧ポンプ32を駆動するサーボモータ33と、送り配管37から分岐しパイロット操作逆止弁39を介して油タンク36に接続する配管39と、戻り配管38から分岐し逆止弁40を介して油タンク36に接続する配管40等とから構成されている。この油圧プレス装置において、油圧ポンプ32の吐出流量と吸入流量は当然同じであるが、油圧シリンダ31ではピストンを境にしてロッドを突き出す一端側の断面積とロッドのない他端側の断面積が異なるため、油圧ポンプ32から油圧シリンダ31に流入する流量と油圧シリンダ31から油圧ポンプ32に流出する流量は異なる。この流量差はパイロット操作逆止弁39から油タンク36に作動油を戻す、あるいは油タンク36から逆止弁40を通じて作動油を補給することにより解消する。なお、パイロット操作逆止め弁39は油圧シリンダ31のピストンを後退させるとき戻り配管38内の圧力が送り配管37のそれより高くなるために開いて、送り配管37から油タンク36に作動油を導く。制御系はパーソナルコンピュータ50を主制御装置とし、パーソナルコンピュータ50の指令に従いV/Fコンバータ51で速度、位置信号を、コントローラ52で方向信号を発生し、これら信号は比較器53、D/A変換器54、インバータ制御のサーボ増幅器33を通じてサーボモータ33に送られる。油圧シリンダ31のロッドの位置はパルススケール42により検出され、その検出信号は比較器53にフィードバックされ、またパルスカウンタ56によりカウントされる。このような油圧プレス装置においては、油圧ポンプのリークによるエネルギー損や、上記流量差の解消のために各種逆止弁及び油タンクを用いて作動油の流量を調整するエネルギー損が発生する。この油圧プレスのエネルギー効率は60%程度といわれる。また各種逆止弁は圧力により動作するため、時に振動など不安定動作を引き起こす。
【0004】
ねじ駆動式アクチュエータとしては、特開昭59−205002号公報に開示されたモーションゼネレータ装置がある。このモーションゼネレータ装置は、2つの油圧シリンダの組み合わせからなる。一方の油圧シリンダーは、ねじ駆動されるピストン前後に2つの液圧室を有している。他方の油圧シリンダーはピストン前後に2つの作動室を有し、一端から突出する出力ロッドを備えている。2つの液圧室と2つの作動室はそれぞれ配管で接続され、各配管から分岐してリリーフ弁を介して配管で接続する油タンクが設けられている。このモーションゼネレータ装置では、ねじ駆動の採用により油圧モータより省エネルギー化したとはいえ、図5に示す油圧プレス装置と同様に流量差が生じる。すなわち、一つの液圧室から一つの作動室に流入する流量と他の作動室から他の液圧室に流出する流量に差が生じる。この流量差をリリーフ弁、油タンクを用いて解消するためにエネルギー損が発生する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、図5に示す従来の油圧プレス装置では、油圧ポンプから油圧シリンダに流入する流量と油圧シリンダから油圧ポンプに流出する流量は異なり、この流量差を各種弁、油タンクを用いて解消するためにエネルギー損が生じるという問題があった。
【0006】
また特開昭59−205002号公報に記載のモーションゼネレータ装置では、一つの液圧室から一つの作動室に流入する流量と他の作動室から他の液圧室に流出する流量に差が生じ、この流量差をリリーフ弁、油タンク36を用いて解消するためにエネルギー損が発生するという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記問題を解決して、エネルギー効率の高いねじ駆動式油圧プレス装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するために、本発明のねじ駆動式油圧プレス装置は、作動油を満たす第1のシリンダチューブ内に第1のピストンを収納し該ピストンの一端から延びる第1の入力ロッドを前記第1のシリンダチューブの一端から突き出す入力側の第1のシリンダ、及びサーボモータにより駆動され、前記第1の入力ロッドを往復動する第1のボールねじ装置と、作動油を満たす第2のシリンダチューブ内に第2のピストンを収納し該ピストンの一端から延びる第2の入力ロッドを前記第2のシリンダチューブの一端から突き出す入力側の第2のシリンダ、及びサーボモータにより駆動され、前記第2の入力ロッドを往復動する第2のボールねじ装置と、前記第1、第2のシリンダと対をなし、作動油を満たすシリンダチューブ内にピストンを収納し該ピストンの一端から延びる出力ロッドを前記シリンダチューブの一端から突き出す出力側のシリンダと、前記第1のシリンダチューブの一端部と前記出力側のシリンダのシリンダチューブの一端部とを接続するアキュムレータを有する第1の配管、及び前記第1のシリンダチューブの他端部と前記出力側のシリンダのシリンダチューブの他端部とを接続する第2の配管と、前記第1の配管に接続され、前記第2のシリンダチューブの一端部と前記出力側のシリンダのシリンダチューブの一端部とを連通する第3の配管、及び前記第2の配管に接続され、前記第2のシリンダチューブの他端部と前記出力側のシリンダのシリンダチューブの他端部とを連通する第4の配管と、を備え、前記第1のシリンダを前記出力側のシリンダの出力ロッドの加圧用とし、前記第1のシリンダチューブの断面積から前記第1の入力ロッドの断面積を減じた面積と前記出力側のシリンダのシリンダチューブの断面積から前記出力ロッドの断面積を減じた面積との比と、前記第1のシリンダチューブの断面積と前記出力側のシリンダのシリンダチューブの断面積との比を、1:Nとして、両面積比を同一の比とし、前記第2のシリンダを前記出力側のシリンダの出力ロッドの送り用とし、前記第2のシリンダチューブの断面積から前記第2の入力ロッドの断面積を減じた面積と前記出力側のシリンダのシリンダチューブの断面積から前記出力ロッドの断面積を減じた面積との比と、前記第2のシリンダチューブの断面積と前記出力側のシリンダのシリンダチューブの断面積との比を、1:Mとして、両面積比を同一の比とする、ことを特徴とする。
【0009】
このねじ駆動式油圧プレス装置の作用について説明する。
(1)まず、出力側のシリンダの出力ロッドの送り用となる入力側の第2のシリンダを作動させる。すなわち、第2のボールねじ装置を駆動するサーボモータを正回転させ、第2のボールねじ装置により、第2のシリンダの入力ロッドを第2のシリンダチューブの一端側から他端側に前進させる。これにより、第2のシリンダ内の作動油はピストンに押されて、第2のシリンダチューブの他端側から流出し、第4の配管を通じて出力側のシリンダのシリンダチューブに流入し、ピストンを押して出力ロッドをその加圧方向に前進させる。同時に出力側のシリンダ内の作動油はシリンダチューブの一端側から流出し、第3の配管を通じて第2のシリンダのシリンダチューブの一端側に流入する。出力側のシリンダの出力ロッドが前進して加圧作用点より前の所定の位置に達した時、サーボモータをOFFとし、第2のシリンダの作動を停止する。この場合、第2のシリンダの断面積は第1のシリンダの断面積のN/M倍で、例えばN=10、M=0.5とすると、20倍になり、第2のシリンダにより第1のシリンダによるより20倍の速度で出力側のシリンダの出力ロッドを送ることになる。
(2)次いで、出力側のシリンダの出力ロッドの加圧用となる入力側の第1のシリンダを作動させる。すなわち、第1のボールねじ装置を駆動するサーボモータを正回転させ、第1のボールねじ装置により、第1のシリンダの入力ロッドを第1のシリンダチューブの一端側から他端側の方向に向けて前進させる。これにより、第1のシリンダ内の作動油はピストンに押されて、第1のシリンダチューブの他端側から流出し、第2の配管を通じて出力側のシリンダのシリンダチューブの他端側に流入し、ピストンを押して出力ロッドを加圧方向に前進させる。同時に出力側のシリンダ内の作動油はシリンダチューブの一端側から流出し、第1の配管を通じて第1のシリンダのシリンダチューブの一端側に流入する。出力側のシリンダの出力ロッドが前進して加圧作用点に達した時、サーボモータは回転を停止し、出力ロッドの推力を維持するためのモータ電流が流れる。第1のシリンダの入力ロッドはサーボモータのトルクに応ずる推力でピストンを押して作動油を加圧するので、出力ロッドの推力、すなわち、出力ロッドの出力は、パスカルの原理にしたがい、入力側の第1のシリンダのシリンダチューブの断面積と出力側のシリンダのシリンダチューブの断面積との比に応ずる推力が発生する。ここで例えば比を10とすれば、出力側のシリンダの推力は第1のシリンダに発生する力の10倍の力を発生することになる。
(3)出力側のシリンダによる加圧後、出力側のシリンダの出力ロッドを戻す場合、第1のボールねじ装置を駆動するサーボモータを逆回転させて、第1のボールねじ装置により、第1のシリンダの入力ロッドを後退させる。これにより、第1のシリンダ内の作動油はピストンに押されて、第1のシリンダチューブの一端側から流出し、第1の配管を通じて出力側のシリンダのシリンダチューブの一端側に流入し、ピストンを押して出力ロッドを後退させる。同時に出力側のシリンダ内の作動油はシリンダチューブの他端側から流出し、第2の配管を通じて第1のシリンダのシリンダチューブの他端側に流入し、戻される。
(4)出力側のシリンダの出力ロッドが所定の位置まで戻されたとき、第1のボールねじ装置を駆動するサーボモータをOFFにし、第2のボールねじ装置を駆動するサーボモータを逆回転でONにする。これにより、第2のシリンダの入力ロッドは後退し、第2のシリンダ内の作動油は第2のシリンダチューブの一端側から第3の配管を通じて出力側のシリンダのシリンダチューブの一端側に流入して、出力側のシリンダの出力ロッドを後退させる。同時に出力側のシリンダ内の作動油はシリンダチューブの他端側から流出し、第4の配管を通じて第2のシリンダのシリンダチューブの他端側に流入し、戻される。
【0010】
このように本発明のねじ駆動式油圧プレス装置では、作動油は入力側の第1、第2のシリンダ、出力側のシリンダ、第1、第2、第3、第4の各配管で形成される閉回路中で往復移動するのみで、図5に示す従来の装置のように、バルブを通じて油タンクに戻されたり、油タンクから汲み出されたりすることがなく、従来に比べてエネルギー効率を大幅に高くすることができる。この場合、第1の配管の経路に設けたアキュムレータにより、周囲温度や作動油の温度変化による作動油の体積変化を吸収することができる。また、この場合、入力側の第2のシリンダを出力側のシリンダの出力ロッドの送り用にして、第2のシリンダの断面積を第1のシリンダの断面積のN/M倍とし、例えばN=10、M=0.5とすれば、20倍となり、第2のシリンダにより第1のシリンダによるより20倍の速度で出力側のシリンダの出力ロッドを送ることができ、出力側のシリンダのストロークが長い場合でも出力ロッドを高速に送ることができる。また、入力側の第1のシリンダを出力側のシリンダの出力ロッドの加圧用にして、出力側のシリンダの断面積を第1のシリンダの断面積のN倍とし、例えばN=10とすれば、出力ロッドの出力に第1のシリンダに発生する力の10倍の力を発生させることができる。
【0011】
また、本発明のねじ駆動式油圧プレス装置では、ボールねじ装置はサーボモータにより駆動されるボールねじと前記ボールねじとはまり合う雌ねじを有するスライダーとを有し、前記スライダーが入力ロッドの突き出し部分に結合される形式が採用される。この形式により、ボールねじをサーボモータにより駆動すると、スライダーが前進又は後退し、このスライダーにより入力ロッドを加圧方向に前進又は後退することができる。
【0012】
さらに、本発明のねじ駆動式油圧プレス装置では、ボールねじ装置はサーボモータにより駆動されるボールねじを有し、入力ロッドの軸心に雌ねじが形成され、前記ボールねじが前記入力ロッドの雌ねじに嵌合される形式が採用される。この形式により、ボールねじをサーボモータにより駆動すると、このボールねじの回転により直接入力ロッドを加圧方向に前進又は後退することができる。
【0013】
なお、このねじ駆動式油圧プレス装置において、サーボモータの代わりにボールねじを減速機を介して回転させるサーボモータを用いることが好ましい。これによりトルクの小さいサーボモータを用いることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のねじ駆動式油圧プレス装置の実施の形態について図面により説明する。図1は実施の形態1のねじ駆動式油圧プレス装置(以下単に油圧プレス装置という)の機械的な構成を示す図、図2は該油圧プレス装置の制御ブロック図である。
【0015】
実施の形態1の油圧プレス装置1Aは、大別してマスターシリンダ2(第1シリンダ)及びスレイブシリンダ3(第2シリンダ)からなる一対の油圧シリンダと、両シリンダ2、3の各端を接続する2つの配管4,5と、マスターシリンダ2を往復動させるボールねじ装置6と、ボールねじ装置6を駆動する減速機付きサーボモータ7と、制御装置とから構成されている。なお、減速機付きサーボモータ7はそれぞれ別体の減速機とサーボモータを組み合せたものでもよい。またはサーボモータのトルクが十分大きければ、減速機を用いなくともよい。さらに詳細に説明すると、マスタシリンダ2は、作動油を満たすシリンダチューブ2aと、シリンダチューブ内に摺動自在に収納されたピストン2bと、ピストン2bの一端から延びシリンダチューブ2aの一端から突き出す入力ロッド2cとから構成され、一端側にシリンダチューブ2aの断面積からピストン2bの断面積を減じた断面積を有する小断面室2dが、他端側にシリンダチューブ2aの断面積を有する大断面室2eがピストン2bを挟んで形成される。スレイブシリンダ3は、作動油を満たすシリンダチューブ3a(別のシリンダチューブ)と、シリンダチューブ3a内に摺動自在に収納されたピストン3b(別のピストン)と、ピストン3bの一端から延びシリンダチューブ3aの一端から突き出す出力ロッド3cとから構成され、一端側にシリンダチューブ3aの断面積からピストン3bの断面積を減じた断面積を有する小断面室3dが、他端側にシリンダチューブ3aの断面積を有する大断面室3eがピストン3bを挟んで形成される。配管4はマスタシリンダ2一端側の小断面室2dとスレイブシリンダ3一端側の小断面室3dとを接続しアキュムレータ8を設けて、両小断面室2d、3dを作動液で連通している。配管5はマスタシリンダ2他端側の大断面室2eとスレイブシリンダ3他端側の大断面室3eを接続して、両大断面室2e、3eを作動液で連通している。ボールねじ装置6はボールねじ6aと、ボールねじ6aとはまり合う雌ねじ有しかつマスターシリンダ2の入力ロッド2cの突き出し部分と結合するスライダー6bを備えている。
【0016】
そしてマスターシリンダ2のシリンダチューブ2aの断面積から入力ロッド2cの断面積を減じた面積とスレーブシリンダ3のシリンダチューブ3aの断面積から出力ロッド3cの断面積を減じた面積との面積比を1:N(例えばN=10)とし、またスターシリンダ2のシリンダチューブ2aの断面積とスレーブシリンダ3のシリンダチューブ3aの断面積との面積比を上記と同じく1:N(N=10)とした。上記両面積比を同一にしたことに本発明の特徴がある。
【0017】
制御手段は、図2に示すように、減速機付きサーボモータ7のモータ回転速度、トルク、回転方向等の指令を出すコントローラ21と、該指令を増幅して減速機付きサーボモータ7を駆動するサーボ増幅器22とから構成される。サーボ増幅器22はサーボモータ7のエンコーダ23からの回転速度及びモータ電流によりフィードバック制御を行なう。ここではコントローラ21としてPC(パーソナルコンピュータ)を用いている。
【0018】
上記のように構成された油圧プレス装置の動作について説明する。コントローラ21から加圧指令が出された場合、該指令に従ってサーボモータ7が正回転し、ボールねじ6aがスライダー6bを前進させ、それにつれてマスターシリンダ2の入力ロッド2cが加圧方向(一端側から他端側)に前進する。この時、マスターシリンダ2の大断面室2e内の作動油はピストン2bに押されて流出し、配管5を通じてスレーブシリンダ3の大断面室3eに流入し、ピストン3bを押して出力ロッド3cを加圧方向(他端側から一端側)に前進させる。それと同時にスレーブシリンダ3の小断面室3d内の作動油はピストン3bに押されて、配管4を通じてマスターシリンダ2の小断面室2dに流入する。出力ロッド3cが作用点に達した時、出力ロッド3cはトルク指令値に応じた圧力を発生する。この油圧プレス装置をプレス機械の加圧アクチュエータとすれば、出力ロッド3cに取り付けられたポンチ9とそれに対向して設置されたダイ10との間で材料が加工されることになる。加圧時、サーボモータ7は回転を停止するが、圧力を維持するためモータ電流が流れる。
【0019】
スレーブシリンダ3の出力は、パスカルの原理にしたがい、マスターシリンダ2の発生する力のN倍、ここでは10倍の力が得られることになる。一方、コントローラ21から戻り指令が出された場合、サーボモータ7が逆回転し、マスターシリンダ2の入力ロッド2cは後退し、マスターシリンダ2の小断面室2d内の作動油は配管4を通じてスレーブシリンダ3の小断面室3dに流入してスレーブシリンダ3の出力ロッド3cを後退させる。同時にスレーブシリンダ3の大断面室3e内の一部の作動油は配管5を通じてマスターシリンダ2の大断面室2e内に戻る。
【0020】
以上のように、作動油はマスターシリンダ2、配管5、スレーブシリンダ3及び配管4で形成される閉回路中で往復移動するのみで、図5で説明した従来の装置のように、バルブを通じて油タンクに戻ったり、油タンクから汲み出されることがないので、省エネルギーを図ることができる。なお配管4の経路にあるアキュムレータ8は、周囲温度や作動油自身の変化による作動油の体積変化を吸収するために設けられる。
【0021】
油圧プレス装置1Aの実験機によりエネルギー効率を測定した。効率はモータのトルクを入力とし、スレイブシリンダーの出力ロッドの推力を出力とし、推力は出力ロッドにより押圧されるばねのたわみ量から求めた。測定の結果、80%以上のエネルギー効率が得られた。エネルギー効率は圧力が高くなるほど低下する傾向にある。
【0022】
図3を用いて、本発明の実施の形態2となる油圧プレス装置1Bについて説明する。油圧プレス装置1Bは、実施の形態1の油圧プレス装置1Aにおけるボールねじ装置6のスライダー6bに代えて、マスターシリンダ2の入力ロッド2cの軸心にボールねじ6aとはまり合う雌ねじ11を形成したもので、ボールねじ6aと入力ロッド2cを直接組み合わせたもので、その他の構成は油圧プレス装置1Aと同じである。油圧プレス装置1Bは、マスターシリンダ2、スレーブシリンダ3、スレーブシリンダ3、配管4、配管5、サーボモータ7、アキュムレータ8を備えている。実施の形態2の油圧プレス装置1Bにおいては、コントローラ21から加圧指令が出された場合、該指令に従ってサーボモータ7が正回転し、ボールねじ6a、雌ねじ12を介してマスターシリンダ2の入力ロッド2cが加圧方向(一端側から他端側)に前進し、コントローラ21から戻り指令により、サーボモータ7が逆回転し、マスターシリンダ2の入力ロッド2cは後退する。各シリンダ2,3の動作や作動油の挙動は実施の形態1の油圧プレス装置1Aと同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0023】
図4を参照して、本発明の実施の形態3の油圧プレス装置1Cを説明する。油圧プレス装置1Cは、概略、図3に示す油圧プレス装置1Bに加えて、大径の別のマスターシリンダ14を設けたもので、別のマスターシリンダ14によりスレーブシリンダ3のピストンを高速で送ることができるように構成した装置である。別のマスターシリンダ14は、作動油を満たすシリンダチューブ14a内にピストン14bを収納し該ピストン14bの一端から延びる入力ロッド14cをシリンダチューブ14aの一端から突き出して構成され、そして一端側にシリンダチューブ14aの断面積からピストン14bの断面積を減じた断面積を有する小断面室14dが、他端側にシリンダチューブ14aの断面積を有する大断面室14eがピストン14bを挟んで形成されている。ここでは、マスターシリンダ2はスレーブシリンダ3による加圧用に、そして別のマスターシリンダ14はスレーブシリンダ3のピストン3cの送り用に構成したものである。
【0024】
実施の形態3の油圧プレス装置1Cは、さらに詳しく説明すると、実施の形態2の油圧プレス装置1Cと同様、マスターシリンダ2及びスレイブシリンダ3と、両シリンダ2、3の各端を接続する2つの配管4,5と、マスターシリンダ2を往復動させるボールねじ装置6と、ボールねじ装置6を駆動する減速機付きサーボモータ7と、これら構成要素に加えて別のマスターシリンダ14と、マスターシリンダ14の小断面室14dとスレイブシリンダ3の小断面室3dと連通するために配管5に接続する配管15と、別のマスターシリンダ14の大断面室14eとスレイブシリンダ3の大断面室3eとを連通するために配管5に接続する配管16と、別のマスターシリンダ14の入力ロッド14cの軸心部に形成された雌ねじ18とはめ合うボールねじ17と、該ボールねじ17を回転駆動する減速機付きサーボモータ19とから構成されている。
【0025】
そしてマスターシリンダ2のシリンダチューブ2aの断面積から入力ロッド2cの断面積を減じた面積とスレーブシリンダ3のシリンダチューブ3aの断面積から出力ロッド3cの断面積を減じた面積との面積比を1:N(例えばN=10)とし、またスターシリンダ2のシリンダチューブ2aの断面積とスレーブシリンダ3のシリンダチューブ3aの断面積との面積比を上記と同じく1:N(N=10)として、両面積比を同一にする。また別のマスターシリンダ14のシリンダチューブ14aの断面積から入力ロッド14cの断面積を減じた面積とスレーブシリンダ3のシリンダチューブ3aの断面積から出力ロッド3cの断面積を減じた面積との面積比を1:M(例えばM=0.5)とし、またマスターシリンダ14のシリンダチューブ14aの断面積とスレーブシリンダ3のシリンダチューブ3aの断面積との面積比を上記と同じく1:M(M=0.5)として、両面積比を同一にする。
【0026】
実施の形態3の油圧プレス装置1Cの動作について説明する。まずスレーブシリンダ3のピストン送り用のマスターシリンダ14を作動させる。すなわち、サーボモータ19を正回転させ、ボールねじ17、雌ねじ18を介してマスターシリンダ14の入力ロッド14cを他端側から一端側に前進させる。この時シリンダチューブ14の大断面室14e内の作動油はピストン14bに押されて流出し、配管16を通じてスレーブシリンダ3の大断面室3eに流入し、ピストン3bを押して出力ロッド3cをその突き出し方向に前進させる。それと同時にスレーブシリンダ3の小断面室3d内の作動油は配管15を通じてマスターシリンダ14の小断面室14dに流入する。マスターシリンダ14が前進して加圧作用点より前の所定の位置に達した時、サーボモータ19をOFFとして別のマスターシリンダ14を停止する。ここでは別のマスターシリンダ14の断面積はマスターシリンダ2の断面積の20倍(N/M=20)となるので、別のマスターシリンダ14によりマスターシリンダ2によるより20倍の速度でスレーブシリンダ3の出力ロッド3cを送ることになる。
【0027】
次いでサーボモータ7を正回転させてマスターシリンダ2を作動させる。これにより、ボールねじ6a、雌ねじ12を介してマスターシリンダ2の入力ロッド2cが加圧方向に前進し、シリンダチューブ2の大断面室2e内の作動油はピストン3bに押されて流出し、配管5を通じてスレーブシリンダ3の大断面室3eに流入し、ピストン3bを押して出力ロッド3cを加圧方向に前進させる。同時にスレーブシリンダ3の小断面室3d内の作動油は配管4を通じてマスターシリンダ2の小断面室2dに流入する。出力ロッド3cが加圧作用点に達した時、出力ロッド3cはマスターシリンダ2の発生する力のN倍、ここでは10倍の力を発生することになる。
【0028】
一方、スレーブシリンダ3の出力ロッド3cを戻す場合、サーボモータ7を逆回転させる。これにより、マスターシリンダ2の入力ロッド2cは後退し、シリンダチューブ2の小断面室2d内の作動油は配管4を通じてスレーブシリンダ3の小断面室3dに流入してスレーブシリンダ3の出力ロッド3cを後退させる。同時にスレーブシリンダ3の大断面室3e内の作動油は配管5を通じてマスターシリンダ2の大断面室2eに戻る。
【0029】
スレーブシリンダ3の出力ロッド3cが所定の位置まで戻ったとき、マスターシリンダ2を駆動するサーボモータ7をOFFにし、別のマスターシリンダを駆動するサーボモータ19を逆回転でONにする。これにより、マスターシリンダ14の入力ロッド14cは後退し、シリンダチューブ14の小断面室14d内の作動油は配管15を通じてスレーブシリンダ3の小断面室3dに流入してスレーブシリンダ3の出力ロッド3cを後退させる。同時にスレーブシリンダ3の大断面室3e内の作動油は配管5を通じてマスターシリンダ2の大断面室2eに戻る。
【0030】
実施の形態3の油圧プレス装置は、スレイブリンダー3のストロークが長い場合に別のマスターシリンダ14により出力ロッドを高速で送ることができるので、油圧プレス装置を用いて行なう作業を短時間で終了できる利点がある。
【0031】
【発明の効果】
本発明のねじ駆動式油圧プレス装置によれば、ボールねじ装置により駆動される入力側の第1、第2シリンダと、これら第1、第2のシリンダからの作動油により動作する出力側のシリンダとを備え、入力側の第1、第2のシリンダから出力側のシリンダに供給する作動油の流量と出力側のシリンダから入力側の第1、第2のシリンダに戻る流量とを同一にするように、入力側の各シリンダ、出力側のシリンダのそれぞれのシリンダチューブ及びロッドのサイズ(断面積)を設定したので、作動油の経路に弁や油タンクのない、エネルギー効率の高い油圧プレス装置とすることができる、という効果がある。
また、このねじ駆動式油圧プレス装置では、特に、入力側の第2のシリンダを出力側のシリンダの出力ロッドの送り用にして、第2のシリンダの断面積を第1のシリンダの断面積のN/M倍とし、例えばN=10、M=0.5とすると、20倍となり、第2のシリンダにより第1のシリンダによるより20倍の速度で出力側のシリンダの出力ロッドを送ることができるので、出力側のシリンダのストロークが長い場合でも出力ロッドを高速に送ることができ、油圧プレス装置を用いて行なう作業を短時間で終了でき、また、入力側の第1のシリンダを出力側のシリンダの出力ロッドの加圧用にして、出力側のシリンダの断面積を第1のシリンダの断面積のN倍とし、例えばN=10とすれば、出力ロッドの出力に第1のシリンダに発生する力の10倍の力を発生させることができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1のねじ駆動式油圧プレス装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態1のねじ駆動式油圧プレス装置の制御ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態2のねじ駆動式油圧プレス装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態3のねじ駆動式油圧プレス装置の構成を示す図である。
【図5】従来の油圧プレス装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
1A〜1C ねじ駆動式油圧プレス装置
2 マスターシリンダ(第1シリンダ)
2a シリンダチューブ
2b ピストン
2c 入力ロッド
3 スレイブシリンダ(第2シリンダ)
3a シリンダチューブ
3b ピストン
3c 出力ロッド
4、5 配管
6 ボールねじ装置
6a ボールねじ
6b スライダー
7 サーボモータ
8 アキュムレータ
9 ポンチ
10 ダイ
14 マスターシリンダ
14a シリンダチューブ
14b ピストン
14c ロッド
15、16 配管
17 ボールねじ
18 雌ねじ
19 減速機付きサーボモータ
21 コントローラ
22 サーボ増幅器
23 エンコーダ
Claims (3)
- 作動油を満たす第1のシリンダチューブ内に第1のピストンを収納し該ピストンの一端から延びる第1の入力ロッドを前記第1のシリンダチューブの一端から突き出す入力側の第1のシリンダ、及びサーボモータにより駆動され、前記第1の入力ロッドを往復動する第1のボールねじ装置と、
作動油を満たす第2のシリンダチューブ内に第2のピストンを収納し該ピストンの一端から延びる第2の入力ロッドを前記第2のシリンダチューブの一端から突き出す入力側の第2のシリンダ、及びサーボモータにより駆動され、前記第2の入力ロッドを往復動する第2のボールねじ装置と、
前記第1、第2のシリンダと対をなし、作動油を満たすシリンダチューブ内にピストンを収納し該ピストンの一端から延びる出力ロッドを前記シリンダチューブの一端から突き出す出力側のシリンダと、
前記第1のシリンダチューブの一端部と前記出力側のシリンダのシリンダチューブの一端部とを接続するアキュムレータを有する第1の配管、及び前記第1のシリンダチューブの他端部と前記出力側のシリンダのシリンダチューブの他端部とを接続する第2の配管と、
前記第1の配管に接続され、前記第2のシリンダチューブの一端部と前記出力側のシリンダのシリンダチューブの一端部とを連通する第3の配管、及び前記第2の配管に接続され、前記第2のシリンダチューブの他端部と前記出力側のシリンダのシリンダチューブの他端部とを連通する第4の配管と、
を備え、
前記第1のシリンダを前記出力側のシリンダの出力ロッドの加圧用とし、前記第1のシリンダチューブの断面積から前記第1の入力ロッドの断面積を減じた面積と前記出力側のシリンダのシリンダチューブの断面積から前記出力ロッドの断面積を減じた面積との比と、前記第1のシリンダチューブの断面積と前記出力側のシリンダのシリンダチューブの断面積との比を、1:Nとして、両面積比を同一の比とし、
前記第2のシリンダを前記出力側のシリンダの出力ロッドの送り用とし、前記第2のシリンダチューブの断面積から前記第2の入力ロッドの断面積を減じた面積と前記出力側のシリンダのシリンダチューブの断面積から前記出力ロッドの断面積を減じた面積との比と、前記第2のシリンダチューブの断面積と前記出力側のシリンダのシリンダチューブの断面積との比を、1:Mとして、両面積比を同一の比とする、
ことを特徴とするねじ駆動式油圧プレス装置。 - ボールねじ装置はサーボモータにより駆動されるボールねじと前記ボールねじとはまり合う雌ねじを有するスライダーとを有し、前記スライダーが入力ロッドの突き出し部分に結合される請求項1に記載のねじ駆動式油圧プレス装置。
- ボールねじ装置はサーボモータにより駆動されるボールねじを有し、入力ロッドの軸心に雌ねじが形成され、前記ボールねじが前記入力ロッドの雌ねじに嵌合される請求項1に記載のねじ駆動式油圧プレス装置。
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