JP4730487B2 - 変性金属酸化物ゾル及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属酸化物のコロイド粒子を核として、その表面を酸性酸化物のアルカリ塩、酸性酸化物のコロイド粒子又はこれらの混合物からなる被覆物で被覆して得られた粒子を含有する安定な変性金属酸化物ゾルとその製造方法に関する。
【0002】
本発明のコロイドは、プラスチックレンズの表面に施されるハードコート剤の成分として、その他種々の用途に用いられる。
【0003】
【従来の技術】
近年多用されるようになってきたプラスチックレンズの表面を改良するために、この表面に適用されるハードコート剤の成分として、高い屈折率を有し、ハードコート剤との相溶性が良い金属酸化物のゾルが用いられている。
【0004】
例えば酸化タングステン単独の安定なゾルは未だ知られていないが、珪酸塩の添加によって得られるWO3:SiO2:M2O(但し、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウム基を表わす。)モル比が4〜15:2〜5:1であるゾルが、特開昭54−52686号公報に提案されている。
【0005】
特公昭50−40119号公報にはSi:Snのモル比が2〜1000:1であるケイ酸−スズ酸複合ゾルが提案されている。
【0006】
特公昭63−37142号公報には、Al、Ti、Zr、Sn、Sb等の金属酸化物の1〜300nm粒子を含有させたハードコート剤が記載されている。
【0007】
また、特開平3−217230号には4〜50nmの粒子径を有する原子価3、4又は5の金属酸化物のコロイド粒子を核としてその表面がWO3/SnO2重量比0.5〜100であって粒子径2〜7nmである酸化タングステン−酸化第二スズ複合体のコロイド粒子で被覆されることによって形成された粒子径4.5〜60nmの変性金属酸化物コロイドからなり、そしてこれら全金属酸化物を2〜50重量%含む安定なゾルが提案されている。
【0008】
また、特開平6−24746号にはZrO2/SnO2として0.02〜1.0の重量比と4〜50nmの粒子径を有するSnO2−ZrO2複合体コロイド粒子を核として、その表面を、0.5〜100のWO3/SnO2重量比と2〜7nmの粒子径を有するWO3−SnO2複合コロイド粒子で被覆した構造の粒子からなる変性されたSnO2−ZrO2複合体の安定なゾルが提案されている。
【0009】
さらに特開平10−310429号にはTiO2−ZrO2−SnO2複合酸化物コロイドの安定なゾルが提案されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
これら従来の金属酸化物ゾル、特にカチオン性の金属酸化物ゾルをハードコート剤の成分として用いると、得られたハードコート剤の安定性が充分でないのみならず、このハードコート剤の硬化皮膜の透明性、密着性、耐候性等も充分でない。またSb25ゾルをハードコート剤成分として用いる場合には、Sb25の屈折率が1.65〜1.70程度であるから、レンズのプラスチック基材の屈折率が1.60以上のときには、もはやこのSb25ゾルでは硬化被膜の屈折率が充分に向上しない。
【0011】
上記特開昭54−52686号公報に記載の酸化タングステンのゾルは、タングステン酸塩の水溶液を脱陽イオン処理することにより得られるタングステン酸の水溶液に、珪酸塩を加えることにより得られているが、強酸性においてのみ安定であり、また、ハードコート剤の成分として用いる場合には、塗膜の屈折率を向上させる効果は小さい。
【0012】
上記特公昭50−40119号公報に記載のケイ酸−スズ酸複合ゾルは、ケイ酸アルカリとスズ酸アルカリの混合水溶液を脱陽イオン処理することにより得られているが、上記同様、やはりハードコート剤の成分として用いる場合には、塗膜の屈折率を向上させる効果は小さい。
【0013】
本願発明は特開平3−217230号公報や特開平6−24746号公報に記載された変性金属酸化物ゾルを、ハードコート膜に利用した際の性能、例えば耐擦傷性、透明性、密着性、耐水性、耐候性などについて、更に向上させる為のゾルであって、幅広いpH領域で安定な変性金属酸化物コロイドの安定なゾルを提供するものである。
【0014】
【問題を解決するための手段】
本願発明の第1観点は、2〜60nmの一次粒子径を有する、Ti、Fe、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Sb、Ta、W、Pb、Bi及びCeから成る群から選ばれた1種又は2種以上の金属の酸化物である金属酸化物のコロイド粒子(A)を核として、その表面をアルカリ成分含有五酸化アンチモンのコロイド粒子からなる被覆物(B)で被覆して得られた粒子(C)を含有し、且つ(C)を金属酸化物に換算して2〜50重量%の割合で含み、そして2〜100nmの一次粒子径を有する安定な変性金属酸化物ゾルである。
【0015】
第2観点は、被覆物(B)がアルキルアミンからなるアルカリ成分と、0.02〜4.00のM/Sb モル比(但しMはアミン分子を示す。)を有する第1観点に記載の変性金属酸化物ゾルである。
【0016】
第3観点は、被覆物(B)に更にアルキルアミン含有シリカを加えた第1観点又は第2観点に記載の変性金属酸化物ゾルである。
【0018】
観点は、核としての2〜60nmの一次粒子径を有する、Ti、Fe、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Sb、Ta、W、Pb、Bi及びCeから成る群から選ばれた1種又は2種以上の金属の酸化物である金属酸化物のコロイド粒子(A)を含有する水性ゾルと、アルカリ成分含有五酸化アンチモンのコロイド粒子である被覆物(B)を含有する水性ゾルとを、その金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合で0.01〜1に混合した後、その水性媒体を70〜95℃で加熱する事を特徴とする第1観点に記載の変性金属酸化物ゾルの製造方法である。
【0019】
観点は、核としての2〜60nmの一次粒子径を有する、Ti、Fe、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Sb、Ta、W、Pb、Bi及びCeから成る群から選ばれた1種又は2種以上の金属の酸化物である金属酸化物のコロイド粒子(A)を含有する水性ゾルと、アルカリ成分含有五酸化アンチモンのコロイド粒子である被覆物(B)として水溶性アンチモン酸アルカリ塩の水溶液とを、その金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合で0.01〜1に混合した後、その水性媒体を70〜95℃で加熱し、陽イオン交換を行う事を特徴とする第1観点に記載の変性金属酸化物ゾルの製造方法である。
【0022】
【発明の実施の形態】
ここで一次粒子径とは、粒子が単一粒子の状態で分散しているか、又はこれに近い状態をしているゾルを一次ゾルといい、この一次ゾル中の粒子を一次粒子と呼びそれらの粒子直径のことである。一次ゾル中の一次粒子がいくつか集合したものが二次ゾルである。本願発明で、核粒子(A)も、被覆に用いるコロイド粒子(B)も、変性された金属酸化物粒子(C)も、一次粒子径で表され、これらは(A)や(B)や(C)が凝集形態で測定された粒子径ではなく、(A)や(B)や(C)が個々に分離した時の1個の(A)や(B)や(C)の粒子の直径であり、電子顕微鏡によって測定することが出来る。
【0023】
2〜60nmの一次粒子径を有する金属酸化物のコロイド粒子(A)は、公知の方法、例えば、イオン交換法、解膠法、加水分解法、反応法により製造する事が出来る。上記のイオン交換法の例としては、上記金属の酸性塩を水素型イオン交換樹脂で処理する方法、あるいは上記金属の塩基性塩を水酸基型陰イオン交換樹脂で処理する方法が挙げられる。上記解膠法の例としては、上記金属の酸性塩を塩基で中和するか、あるいは上記金属の塩基性塩を酸で中和させることによって得られるゲルを洗浄した後、酸又は塩基で解膠する方法が挙げられる。上記加水分解法の例としては、上記金属のアルコキシドを加水分解する方法、あるいは上記金属の塩基性塩を加熱下加水分解した後、不要の酸を除去する方法が挙げられる。上記反応法の例としては、上記金属の粉末と酸とを反応させる方法が挙げられる。核の金属酸化物は、Ti、Fe、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Sb、Ta、W、Pb、Bi及びCeから成る群から選ばれた1種又は2種以上の金属の酸化物である。この金属酸化物のコロイド粒子(A)は原子価2〜6の金属の酸化物であり、それら金属の酸化物の形態として例えばTiO2、Fe23、CuO、ZnO、Y23、ZrO2、Nb25、MoO3、In23、SnO2、Sb25、Ta25、WO3、PbO、Bi23等が例示する事が出来る。そしてこれらの金属酸化物は単独で用いる事も、組み合わせて用いる事もできる。組み合わせとしては、上記金属酸化物を数種類混合する方法や、上記金属酸化物を複合化させる方法、又は上記金属酸化物を原子レベルで固溶体化する方法が挙げられる。例えば、SnO2粒子とWO3粒子がその界面で化学的な結合を生じて複合化されたSnO2−WO3複合コロイド粒子、SnO2粒子とZrO2粒子がその界面で化学的な結合を生じて複合化されたSnO2−ZrO2複合コロイド粒子、TiO2とZrO2とSnO2が原子レベルで固溶体を形成して得られたTiO2−ZrO2−SnO2複合コロイド粒子が挙げられる。上記の核に用いる金属の酸化物は、金属成分の組み合わせにより化合物として用いる事もでき、例えばZnSb26、InSbO4、ZnSnO3が挙げられる。
【0024】
本願発明では、金属酸化物のコロイド粒子(A)を核として、その表面を酸性酸化物のコロイド粒子からなる被覆物(B)で被覆して得られた粒子(C)を得る。その被覆物(B)に用いられる酸性酸化物は、酸化アンチモンが用いられる。
【0025】
この被覆物(B)は、アルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイドを好ましく用いる事が出来る。
【0026】
上記のアルカリ含有五酸化アンチモンコロイドは下記に示す方法(酸化法、酸分解法等)で得ることができる。酸分解法の例としてはアンチモン酸アルカリを無機酸と反応させた後にアミンで解膠する方法(特開昭60−41536号、特開昭61−227918号)、酸化法の例とアミンやアルカリ金属の共存下で三酸化アンチモンを過酸化水素で酸化する方法(特公昭57−11848号、特開昭59−232921号)や三酸化アンチモンを過酸化水素で酸化した後、アミンやアルカリ金属を添加する方法で得ることができる。
【0027】
上記のアルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイドのアルカリ成分の例としてはアルカリ金属、アンモニウム、第四級アンモニウム又は水溶性のアミンが挙げられる。これらの好ましい例としてはNa、K及びNH3、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n−プロピルアミン、ジイソブチルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンが挙げられる。特にアルカリ金属としてはカリウム、有機塩基としてはジイソプロピルアミンが好ましい。上記、アルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイド中のアルカリ成分と五酸化アンチモンのモル比はM/Sb25が0.02〜4.00が好ましく、これより少ないと得られたコロイドの安定性が乏しくなり、また多すぎるとこのようなゾルを用いて得られる乾燥塗膜の耐水性が低くなり実用上好ましくない。
【0028】
アルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイド粒子は、微小な五酸化アンチモンのコロイド粒子であり、その粒子径は電子顕微鏡観察により一次粒子径が1〜20nm程度であった。アルカリ成分としてジイソプロピルアミン等のアミン塩が好ましく、アミン/Sb25のモル比は0.02〜4.00である。
【0029】
上記の被覆物(B)には、アルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイド粒子に、更にアルキルアミン含有シリカ粒子を加える事が出来る。
【0030】
本願発明の変性金属酸化物ゾルの製造は第1方法として、核としての金属酸化物のコロイド粒子(A)を含有する水性ゾルと、被覆物(B)を含有する水性ゾルとを、その金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合で0.01〜1に混合した後、その水性媒体を加熱する方法である。例えば、金属酸化物のコロイド粒子(A)を含有する水性ゾルと、アルキルアミンをアルカリ成分として含有する五酸化アンチモンコロイド粒子(B)を含有するゾルとを上記割合で混合し、水性媒体を加熱する事により、コロイド粒子(A)を核としてその表面をアルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイド粒子(B)で被覆した粒子(C)からなる変性金属酸化物ゾルが得られる。
【0031】
また、上記製造の第2方法として、核としての金属酸化物のコロイド粒子(A)を含有する水性ゾルと、被覆物(B)として水溶性アンチモン酸アルカリ塩の水溶液とを、その金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合で0.01〜1に混合した後、その水性媒体を加熱し、陽イオン交換を行う方法である。この第2方法に用いられる水溶性アンチモン酸アルカリ塩の水溶液は、アンチモン酸カリウムの水溶液が好ましく用いることが出来る。例えば、金属酸化物のコロイド粒子(A)を含有する水性ゾルと、被覆物(B)としてアンチモン酸カリウムの水溶液とを混合し、加熱し、その後イオン交換を行い、アルキルアミン等のアルカリ成分で安定化させる事により、コロイド粒子(A)の表面にアルカリ成分含有五酸化アンチモンのコロイド粒子(B)が被覆された構造を有する粒子(C)からなる変性金属酸化物ゾルが得られる。
【0032】
また、上記第1又は第2の方法において、核となる金属酸化物のコロイド粒子(A)が酸性ゾルの場合は、被覆物(B)であるアルキルアミンをアルカリ成分として含有する五酸化アンチモンコロイド粒子または水溶性のアンチモン酸アルカリ塩とを、その金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合で0.01〜1に混合した後、その水性媒体の陰イオン交換を行い、得られたコロイド粒子を(A’)として、更に上記第1方法では(A’)を含有する水性媒体を加熱する操作を、上記第2方法では(A’)を含有する水性媒体を加熱し陽イオン交換し、更にアルキルアミン等のアルカリ成分で安定化する操作を行う事により、変性金属酸化物ゾルを得ることも出来る。
【0033】
この混合は0〜100℃の温度、好ましくは室温から60℃で行う事が出来る。
そして、加熱はオートクレーブを用い100℃以上で行うことも可能であるが、好ましくは70〜95℃で行われる。
【0034】
この混合によって得られるべき変性されたコロイド粒子(C)のゾルが、(A)成分の金属酸化物と(B)被覆成分の酸化物換算の合計が2〜40重量%含有するように上記混合に用いられる両成分の濃度を上記混合前に選定してから混合することが好ましい。
【0035】
本発明の変性金属酸化物ゾルは、本願発明の目的が達成される限り、他の任意の成分を含有することができる。特にオキシカルボン酸類を全金属酸化物の合計量に対し約30重量%以下に含有させると分散性等の性能が更に改良されたコロイドが得られる。用いられるオキシカルボン酸の例としては、乳酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、グリコール酸等が挙げられる。また、アルカリ成分を含有する事ができ、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属水酸化物、NH4、エチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン;ベンジルアミン等のアラルキルアミン;ピペリジン等の脂環式アミン;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンである。これらは2種以上を混合して含有することができる。また上記の酸性成分と併用することができる。これらを全金属酸化物の合計量に対し約30重量%以下に含有させることができる。
【0036】
ゾル濃度を更に高めたいときには、最大約50重量%まで常法、例えば蒸発法、限外濾過法等により濃縮することができる。またこのゾルのpHを調整したい時には、濃縮後に、前記アルカリ金属、有機塩基(アミン)、オキシカルボン酸等をゾルに加えることによって行うことができる。特に、金属酸化物の合計濃度が10〜40重量%であるゾルは実用的に好ましい。
【0037】
上記混合によって得られた変性された金属酸化物コロイドが水性ゾルであるときは、この水性ゾルの水媒体を親水性有機溶媒で置換することによりオルガノゾルが得られる。この置換は、蒸留法、限外濾過法等通常の方法により行うことができる。この親水性有機溶媒の例としてはメチルアルコール,エチルアルコール,イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド,N,N’−ジメチルアセトアミド等の直鎖アミド類;N−メチル−2−ピロリドン等の環状アミド類;エチルセロソルブ,エチレングリコール等のグリコール類等が挙げられる。
【0038】
【実施例】
A.金属酸化物のコロイド粒子の製造
(酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合ゾルの調製)
A−1
(a)工程:四塩化チタン(TiO2として27.2重量%、Clとして32.0重量%を含有する。住友シチックス(株)製)587.5g(TiO2として159.8gを含有する。)とオキシ塩化ジルコニウム35.65g(ZrO2として24.6gを含有する。)、水708.55gを3リットルのジャケット付きガラス製セパラブルフラスコにとり塩化チタンとオキシ塩化ジルコニウム混合水溶液1331.7g(TiO2として12.0重量%、ZrO2として1.85重量%を含有する。)を作成した。この水溶液をガラス製攪拌棒で攪拌しながら60℃まで加温した後、冷却しながら35%過酸化水素水(工業用)738.0gと金属スズ粉末(山石金属(株)製AT−Sn、No.200)448.4gを添加した。
【0039】
過酸化水素水と金属スズの添加ははじめに金属スズを24.9g、次いで過酸化水素水41.0gを徐々に加え、反応が終了するのを待って(5〜10分)金属スズと過酸化水素水の添加を繰り返す方法で17回分割添加し、最後だけ過酸化水素水41.0gを次いで金属スズを25.1gを添加し、トータル18回の分割添加で行った。反応は発熱反応のため金属スズの添加により80〜85℃になり反応が終了すると冷却のために60〜70℃に低下した。従って反応温度は60〜85℃であった。添加時の金属スズと過酸化水素水の割合はH22/Snモル比で2.0であった。金属スズと過酸化水素水の添加に要した時間は1.0時間であった。尚、反応により水が蒸発するので適量の補充を行った。反応終了後、淡黄色透明な塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液2266gを得た。得られた塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液中の酸化チタン濃度は7.10重量%、酸化ジルコニウム濃度は1.10重量%、酸化スズ濃度は25.2重量%、Zr/Tiモル比は0.1で、Ti/(Zr+Sn)モル比0.5であった。また(Ti+Zr+Sn)/Clモル比は1.06であった。
(b)工程:(a)工程で得られた塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液2266gに、水12810gを添加し、TiO2+ZrO2+SnO2換算で5重量%の水溶液とした。この水溶液を95〜98℃で12時間加水分解を行い、一次粒子径4〜8nmの酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化スズ複合コロイドの凝集体を得た。
(c)工程:(b)工程で得た酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化スズ複合コロイドの凝集体スラリーを限外濾過装置にて水約20リットルを用いて濃縮→注水→濃縮を繰り返し、過剰な電解質を洗浄除去、解膠させ、酸性の酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化スズ複合水性ゾル14780.4gを得た。
(d)工程:(c)工程で得た水性ゾル5647gにイソプロピルアミンを5.1g、ジイソプロピルアミン2.7gを添加した後、水酸基型陰イオン交換樹脂(アンバーライト410)を充填したカラムに室温で通液することにより酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾル(希薄液)6963gを得た。このゾルは全金属酸化物4.05重量%、pH9.47で、白濁傾向を示すが、ついで80℃で1hr加熱熟成することによって透明性の良いゾルを6950g得た。
(酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合ゾルの調製)
A−2
(a’)工程:ファウドラー型攪拌翼付きグラスライニング反応槽に水146kg、四塩化チタン(TiO2として27.89重量%、Clとして31.7重量%を含有する。住友シチックス(株)製)248.8kg(TiO2として69.39kgを含有する。)を仕込んだ後、攪拌下、炭酸ジルコニル25.5kg(ZrO2として10.73kgを含有する。)を徐々に添加、溶解させ、塩基性塩化チタン−ジルコニウム混合水溶液420.3kg(TiO2として16.51重量%、ZrO2として4.11重量%を含有する。)を作成した。この水溶液に冷却しながら金属スズ粉末(山石金属(株)製AT−Sn、No.200)41.5kgと35%過酸化水素水(工業用)71.4kgを添加した。
【0040】
金属スズと過酸化水素と添加を繰り返す方法で金属スズを5.1kg、次いで過酸化水素を8.8kgを7回分割添加し、最後だけ金属スズを5.8kg次いで過酸化水素9.8kgを添加し、トータル8回の分割添加で行った。反応は発熱反応のために過酸化水素の添加により70〜75℃になり反応が終了すると冷却のために55〜60℃に低下した。したがって反応温度は55〜75℃であった。添加時の過酸化水素と金属スズの割合はH22/Snモル比で2.1であった。過酸化水素水と金属スズの添加に要した時間は2時間45分であった。尚、反応により水が蒸発するので適量の補充を行った。反応終了後、淡黄色透明な塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液500kgを得た。得られた塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液中の酸化チタン濃度は13.88重量%、酸化ジルコニウム濃度は2.15重量%、酸化スズ濃度は10.54重量%、Zr/Tiモル比0.1で、Ti/(Zr+Sn)モル比2.0であった。また(Ti+Zr+Sn)/Clモル比は0.59であった。
(b’)工程:(a’)工程で得られた塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液500kgを水2200kgに添加し、TiO2+ZrO2+SnO2換算で5重量%の水溶液とした。この水溶液を95〜98℃で10時間加水分解を行い、一次粒子径4〜8nmの酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化スズ複合コロイドの凝集体を得た。
(c’)工程:(b’)工程で得た酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化スズ複合コロイドの凝集体スラリーを限外ろ過装置にて水約21m3を用いて濃縮→注水→濃縮を繰り返し、過剰な電解質を洗浄除去、解膠させ、酸性の酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化スズ複合水性ゾル2700kgを得た。このゾルは全金属酸化物5.5重量%、pH2.70、電導度1361μS/cmであった。
(d’)工程:(c’)工程で得た水性ゾルを2192kgに水1827kgを加え希釈し、ジイソプロピルアミン3.62kgを添加した後、水酸基型陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410)を充填したカラムに室温で通液することにより酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化スズ複合水性ゾル(希薄液)4200kgを得た。このゾルは全金属酸化物2.87重量%、pH10.04で白濁傾向を示すが、次いで80℃で1hr加熱熟成することによって透明性の良いゾルを得た。
【0041】
B.被覆物の調製
(アルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイドの調整)
B−1
500ミリリットルの4つ口フラスコに三酸化アンチモン(広東三国製、Sb23として99.5%を含有する。)を52.6g、純水444gおよびジイソプロピルアミン40.2gを添加し、スターラー攪拌下で70℃に昇温後、35%過酸化水素を53g徐々に添加した。反応終了後、ガラス濾紙(ADVANTEC製GA−100)にて濾過した。濃度はSb25として9.8重量%、ジイソプロピルアミンとして6.8重量%、ジイソプロピルアミン/Sb25のモル比は2.2、透過型電子顕微鏡による観測で一次粒子径は、1〜10nmであった。
(アルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイドの調整)
B−2
500ミリリットルの4つ口フラスコに三酸化アンチモン(広東三国製、Sb23として99.5%を含有する。)を87.6g、純水460gおよび水酸化カリウム(小宗化学製、試薬一級)39.2gを添加し、スターラー攪拌下で70℃に昇温後、35%過酸化水素を63.2g徐々に添加した。反応終了後、ガラス濾紙(ADVANTEC製GA−100)にて濾過した。濃度はSb25として15重量%、水酸化カリウムとして5.6重量%、K2O/Sb25のモル比は1.0であった。
【0042】
得られたアンチモン酸カリウムの水溶液を2.5重量%に希釈し、カチオン型イオン交換樹脂を充填したカラムに通液した。イオン交換後のアンチモン酸の溶液にジイソプロピルアミンを攪拌下で39.5g添加し、アルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイド溶液を得た。濃度はSb25として2.2重量%、ジイソプロピルアミンとして0.9重量%、ジイソプロピルアミン/Sb25のモル比は1.3、透過型電子顕微鏡による観測で一次粒子径は、1〜10nmであった。
(アルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイドの調整)
B−3
500ミリリットルの4つ口フラスコに三酸化アンチモン(広東三国製、Sb23として99.5%を含有する。)を56.9g、純水313gおよび85%リン酸15.3gを添加(P25/Sb25として0.15重量比)し、スターラー攪拌下で70℃に昇温後、35%過酸化水素を77.8g徐々に添加した。反応終了後、ガラス濾紙(ADVANTEC製GA−100)にて濾過した。濃度はSb25で13.2重量%、リン酸0.14重量%であった。得られた五酸化アンチモンゾルに更にジイソプロピルアミンを15.8g添加し、リン酸−アミン含有の五酸化アンチモンゾルを得た。濃度はSb25として13.2重量%、リン酸として2.0重量%、ジイソプロピルアミンとして3.3重量%であった。ジイソプロピルアミン/Sb25のモル比は0.80、透過型電子顕微鏡による観測で一次粒子径は、3〜12nmであった。
(アルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイドの調整)
B−4
500ミリリットルの4つ口フラスコに三酸化アンチモン(広東三国製、Sb23として99.5%を含有する。)を63.4g、純水412.2gおよび85%リン酸17.1gとジイソプロピルアミン45.2gを添加し、スターラー攪拌下で70℃に昇温後、35%過酸化水素を42.1g徐々に添加した。反応終了後、ガラス濾紙にて濾過した。濃度はSb25として12.1重量%、ジイソプロピルアミン/Sb25のモル比は2.1であった。得られた五酸化アンチモンゾルにジイソプロピルアミンを17.5g添加し、アルカリ成分含有五酸化アンチモンゾルを597.5gを得た。透過型電子顕微鏡による観測で一次粒子径は、2〜12nmであった。
【0043】
実施例1
A−1の(d)工程で得た水性ゾルにB−1で調整したアミン成分含有五酸化アンチモンコロイドを282gを攪拌下で添加し、その金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合で0.1に混合した後90℃で3時間加熱熟成した。
【0044】
得られた変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾル(希薄液)を分画分子量5万の限外ろ過膜の濾過装置により室温で濃縮し、高濃度の変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾルを2655g得た。このゾルは比重1.106、pH8.93、粘度6.5c.p.、金属酸化物に換算した濃度は11.3重量%で安定であった。
上記高濃度の変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾル885gをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール7リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合メタノールゾル333.3gを得た。このゾルは比重1.092、pH7.60(水との等重量混合物)、粘度3.4c.p.、金属酸化物に換算した濃度は30重量%、水分0.65重量%,電子顕微鏡観察による粒子径は5〜15nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.92であった。
【0045】
実施例2
金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合が0.1に混合される様に、実施例1のB−1成分のアルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイドを、B−2成分のアルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイド1272gに変更した以外は実施例1と同様に行った。
【0046】
得られた変性された高濃度の酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾルは比重1.108、pH8.24、粘度6.0c.p.、金属酸化物に換算した濃度は12.5重量%で安定であった。
上記の高濃度の変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾル800gをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール7リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合メタノールゾル333.3gを得た。このゾルは比重1.084,pH7.72(水との等重量混合物)、粘度4.7cp,金属酸化物に換算した濃度は30重量%,水分0.70重量%,電子顕微鏡観察による粒子径は5〜15nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.87であった。
【0047】
実施例3
金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合が0.1に混合される様に、実施例1のアルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイドを、B−3工程で調整したアルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイド213gに変更した以外は実施例1と同様に行った。
【0048】
得られた変性された高濃度の変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾルは比重1.092、pH7.80、粘度3.1cp、金属酸化物に換算した濃度は9.9重量%で安定であった。
【0049】
上記の高濃度の変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾル1010gをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール7リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合メタノールゾル333.3gを得た。このゾルは比重1.096、pH7.69(水との等重量混合物)、粘度4.3cp、金属酸化物に換算した濃度は30重量%、水分0.66重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は5〜15nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.87であった。
【0050】
実施例4
金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合が0.1に混合される様に、実施例1のアルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイドを、B−4工程で調整したアルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイド232gに変更した以外は実施例1と同様に行った。
【0051】
得られた変性された高濃度の酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾルは比重1.146、pH7.85、粘度7.0(B型粘度計No.1ローター)cp、金属酸化物に換算した濃度は15.6重量%で安定であった。上記の高濃度の変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾル641gをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール7リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合メタノールゾル333.3gを得た。このゾルは比重1.100、pH7.60(水との等重量混合物)、粘度5.6cp、金属酸化物に換算した濃度は30重量%、水分0.73重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は5〜15nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.87であった。
【0052】
実施例5
A−2の(d’)工程で得た水性ゾル9808gに、B−1で調整したアミン成分含有五酸化アンチモンコロイドを282gを攪拌下で添加し、その金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合で0.1に混合した後90℃で3時間加熱熟成した。
【0053】
得られた変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾル(希薄液)を分画分子量5万の限外ろ過膜の濾過装置により室温で濃縮し、高濃度の変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾルを2727g得た。このゾルは比重1.104、pH9.10、粘度7.0c.p.、金属酸化物に換算した濃度は11.0重量%で安定であった。
上記高濃度の変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾルをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール7リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合メタノールゾル988gを得た。このゾルは比重1.080、pH8.01(水との等重量混合物)、粘度5.0c.p.、金属酸化物に換算した濃度は30重量%、水分0.51重量%,電子顕微鏡観察による粒子径は5〜15nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.92であった。
【0054】
実施例6
金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合が0.1に混合される様に、実施例5のB−1成分のアルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイドを、B−2成分のアルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイド1272gに変更した以外は実施例5と同様に行った。
【0055】
得られた変性された高濃度の酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾルは比重1.100、pH8.76、粘度7.4c.p.、金属酸化物に換算した濃度は10.5重量%で安定であった。
上記の高濃度の変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾル2857gをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール7リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合メタノールゾル979gを得た。このゾルは比重1.074,pH8.28(水との等重量混合物)、粘度6.3cp,金属酸化物に換算した濃度は30重量%,水分1.10重量%,電子顕微鏡観察による粒子径は5〜15nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.92であった。
【0056】
実施例7
金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合が0.1に混合される様に、実施例5のアルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイドを、B−3工程で調整したアルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイド213gに変更した以外は実施例5と同様に行った。
【0057】
得られた変性された高濃度の変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾルは比重1.106、pH8.20、粘度5.6cp、金属酸化物に換算した濃度は10.9量%で安定であった。
【0058】
上記の高濃度の変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾル2752gをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール7リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合メタノールゾル995gを得た。このゾルは比重1.082、pH7.71(水との等重量混合物)、粘度8.4cp、金属酸化物に換算した濃度は30重量%、水分0.61重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は5〜15nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.92であった。
【0059】
実施例8
A−1の(d)工程で得た水性ゾルに、アンチモン酸カリウムの水溶液を188gを攪拌下で添加し、その金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合で0.1に混合した後90℃で3時間加熱熟成した。ついで金属酸化物に換算した濃度で1.5重量%に希釈し、水素型陽イオン交換樹脂に通液、カリウムの除去を行った。得られた酸性ゾルにジイソプロピルアミンを7.05gを強攪拌下で添加し、限外ろ過にて濃縮を行った。
ついで得られたゾル3100gをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール30リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合メタノールゾル1128gを得た。このゾルは比重0.984、pH7.51(水との等重量混合物)、粘度5.2cp、金属酸化物に換算した濃度は20重量%、水分0.60重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は5〜15nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。
またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.87であった。
【0060】
実施例9
A−2の(c’)工程で得た酸性ゾル1013gを、B−1で調整したアルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイド56gを水650gで希釈した液に攪拌下で添加し、その金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合で0.1に混合した後、水酸基型陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410)を充填したカラムに室温で通液することにより変性されたアルカリ性酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾル(希薄液)を得た。このゾルは金属酸化物に換算した濃度は3.57重量%、pH10.52であった。次いで90℃で1hr加熱熟成することによって透明性の良いゾルを得た。
【0061】
得られた変性酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾル(希薄液)を、分画分子量5万の限外濾過膜の濾過装置により室温で濃縮し、変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾル343.2gを得た。このゾルは、金属酸化物に換算した濃度は17.9重量%であった。
上記の高濃度の変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾル343.2gをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール7リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合メタノールゾル198gを得た。このゾルは比重1.078、pH7.67(水との等重量混合物)、粘度3.1cp、金属酸化物に換算した濃度は30重量%、水分0.5重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は5〜15nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.92であった。
【0062】
実施例10
A−2の(c’)工程で得た酸性ゾル1013gを、B−4で調整したアルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイドを46.0gを水940gで希釈した液に攪拌下で添加し、その金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合で0.1に混合した後、水酸基型陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410)を充填したカラムに室温で通液することにより変性されたアルカリ性酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾル(希薄液)を得た。このゾルは金属酸化物に換算した濃度は2.8重量%、pH10.62であった。次いで更にB−4で調製したアルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイドを23.0g加え、合計で(B)/(A)の重量割合で0.15に混合した後、90℃で1hr加熱熟成し、透明性の良いゾルを得た。
【0063】
得られた変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾル(希薄液)を、分画分子量5万の限外濾過膜の濾過装置により室温で濃縮し、変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾル643.0gを得た。このゾルは、金属酸化物に換算した濃度は10.0%であった。
上記の高濃度の変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合水性ゾル643.5gをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール9リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合メタノールゾル198.0gを得た。このゾルは比重1.020、pH7.88(水との等重量混合物)、粘度6.0cp、金属酸化物に換算した濃度は25.0重量%、水分0.55重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は5〜15nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.93であった。
【0064】
実施例11
ジルコニアゾル(日産化学工業製、NZS−30AD、ZrO2として30wt%)を322gを水1678gに希釈した。この希釈液に強攪拌下でB−1で調整したアルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイドを150g(Sb25換算で10重量%を含有する。)添加し、その金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合で0.15に混合した後、90℃で3時間加熱熟成した。得られた変性されたジルコニアゾルを水酸基型陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410)を充填したカラムに室温下で通液することにより変性されたアルカリ性ジルコニアゾルを得た。得られたゾルを分画分子量5万の限外ろ過膜の濾過装置により室温下で濃縮し、変性されたアルカリ性酸化ジルコニウムゾルを400g得た。このゾルは比重1.310、pH8.34、粘度3.0c.p.、全金属酸化物に換算した濃度は30.5重量%であった。
【0065】
上記の変性された酸化ジルコニウムゾル400gをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール5リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、メタノールで置換された変性された酸化ジルコニウムゾル380gを得た。このゾルは比重1.092、pH8.63(水との等重量混合物)、粘度2.1cp、金属酸化物に換算した濃度は30.5重量%、水分1.1重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は3〜10nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。
【0066】
実施例12
A−1の(d)工程で得た酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合ゾルに、B−1で調整したアルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイド(Sb25として9.8重量%)を282gおよびアミン含有活性珪酸のコロイド(SiO2に換算して3.0重量%)16.7gを強攪拌下で添加し、その金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合で0.1に混合した後、90℃で3hr加熱熟成した。得られた変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウムゾルをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール8リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、メタノールで置換された変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合ゾル1200gを得た。このゾルは比重1.050、pH7.37(水との等重量混合物)、粘度4.5cp、金属酸化物に換算した濃度は25.0重量%、水分0.41重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は5〜15nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。
【0067】
比較例1
実施例1記載の変性ゾルの代わりに特開平3−217230号公報に開示されている酸化タングステン−酸化第2スズ複合体粒子で被覆された酸化スズメタノールゾルを330g用いた以外は全て実施例1と同様に行った。
【0068】
比較例2
実施例1の(d)工程で得られたゾルをUFにておよそ10重量%まで濃縮した。ついで得られたゾル1000gに酒石酸4.0g、ジイソプロピルアミン6.0gを強攪拌下で添加し、ロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール20リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合メタノールゾル330gを得た。このゾルは比重1.098、pH7.47(水との等重量混合物)、粘度2.7cp、全金属酸化物30重量%、水分0.60重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は4〜8nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.85であった。
【0069】
(ゾルの耐光試験/変色試験)
実施例1〜12の変性された金属酸化物ゾルはゾルの状態では極薄いコロイド色を呈するが、ガラス板状で乾燥するとコロイド色を呈さず、無色透明であった。
【0070】
実施例1〜12と比較例1〜2のゾルをアプリケーターにてガラス板状に薄膜の状態でコーティングし、150℃で乾燥した後、これにUV照射装置OHD−320CM(オーク社製)で1時間紫外線を照射し、耐光性を試験した。紫外線照射前後の被膜の色の変化を目視で観察し、耐光性を判定した。変化が小さい段階を(ランクa)、それより大きいを段階を(ランクb)で表した。
【0071】
(コーティング液の作製)
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン105.3重量部に0.01規定の塩酸36.8重量部を滴下し、その後24hr攪拌を行い、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物を調整した。これに実施例1〜7、9、11及び比較例1〜2の変性された金属酸化物ゾルはそれぞれ192.3重量部、実施例8の変性された金属酸化物ゾルは290.0重量部、実施例10と12の変性された金属酸化物ゾルは232重量部をそれぞれ添加し、14種類のコート液を調整した。
【0072】
(硬化膜の形成)
市販の屈折率nD=1.59のポリカーボネートの板を用意し、これにディップコートにてコーティング組成物を塗布し、120℃で2時間加熱処理し、塗膜を硬化させた。
(耐湿性/耐水性試験)
上記硬化後、温水60℃に1時間浸せきし、取り出し水気を十分に拭い、スチールウールで数回膜をこすった。そしてコーティング膜の状態を目視で、傷の付き方が少ない段階を(ランクa)、それより多くなる順に、(ランクb)、(ランクc)、(ランクd)で表した。
【0073】
【表1】
Figure 0004730487
耐水性の評価において、比較例1で示される変性された酸化第二スズゾルよりも、比較例2で示される酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合ゾルの方が良く、更に実施例1〜12で示される変性金属酸化物のコロイド粒子の方が良いことがわかる。
【0074】
変色試験においても同様に、比較例1で示される変性された酸化第二スズゾルよりも、比較例2で示される酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合ゾルの方が良く、更に実施例1〜12で示される変性金属酸化物のコロイド粒子の方が良いことがわかる。
【0075】
【発明の効果】
本願発明はアンチモン酸アルカリ塩、アルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイド、更にそれらにシリカ成分を加えた被覆物による作用で、従来の金属酸化物コロイドの種々の欠点(分散性、耐候性、耐湿性、長期安定性、ハードコート剤との相溶性)を改善することができ、優れた変性金属酸化物を得ることができる。 本願発明の変性された金属酸化物ゾルをハードコート剤成分として用いると、従来の金属酸化物ゾルを用いたときに見られる紫外線照射による黄変や、耐水性、耐湿性、相溶性の問題を克服することができる。
【0076】
本願発明の目的は、耐水性、耐湿性及び耐候性能の良好な変性された金属酸化物のコロイド粒子の安定なゾルを提供し、プラスチックレンズ表面に施されるハードコート膜の性能向上成分として、そのハードコート用塗料に混合して用いることができるゾルを提供することにある。
【0077】
本発明によって得られる表面変性された金属酸化物コロイド粒子のゾルは無色透明であって、その乾燥塗膜は約1.80〜1.95の屈折率を示し、また、結合強度、硬度のいずれも高く、耐候性、帯電防止性、耐熱性、耐摩耗性等も良好である。また、特に耐候性、耐湿性が従来のものに比べ格段に向上している。
【0078】
このゾルは、pHほぼ2〜9において安定であり、工業製品として供給されるに充分な安定性も与えることができる。
【0079】
このゾルは、そのコロイド粒子が負に帯電しているから、他の負帯電のコロイド粒子からなるゾルなどとの混和性が良好であり、例えばシリカゾル、五酸化アンチモンゾル、アニオン性又はノニオン性の界面活性剤、ポリビニルアルコール等の水溶液、アニオン性又はノニオン性の樹脂エマルジョン、水ガラス、りん酸アルミニウム等の水溶液、エチルシリケイトの加水分解液、γ−グリシドキシトリメトキシシラン等のシランカップリング剤又はその加水分解液などと安定に混合し得る。
【0080】
このような性質を有する本発明のゾルは、プラスチックレンズ上にハードコート膜を形成させるための屈折率、染色性、耐薬品性、耐水性、耐湿性、耐光性、耐候性、耐摩耗性等の向上成分として特に有効であるが、その他種々の用途に用いることができる。
【0081】
このゾルを有機質の繊維、繊維製品、紙などの表面に適用することによって、これら材料の難燃性、表面滑り防止性、帯電防止性、染色性等を向上させることができる。また、これらのゾルは、セラミックファイバー、ガラスファイバー、セラミックス等の結合剤として用いることができる。更に、各種塗料、各種接着剤等に混入して用いることによって、それらの硬化塗膜の耐水性、耐薬品性、耐光性、耐候性、耐摩耗性、難燃性等を向上させることができる。その他、これらのゾルは、一般に、金属材料、セラミックス材料、ガラス材料、プラスチック材料などの表面処理剤としても用いることができる。更に触媒成分としても有用である。

Claims (5)

  1. 2〜60nmの一次粒子径を有する、Ti、Fe、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Sb、Ta、W、Pb、Bi及びCeから成る群から選ばれた1種又は2種以上の金属の酸化物である金属酸化物のコロイド粒子(A)を核として、その表面をアルカリ成分含有五酸化アンチモンのコロイド粒子からなる被覆物(B)で被覆して得られた粒子(C)を含有し、且つ(C)を金属酸化物に換算して2〜50重量%の割合で含み、そして2〜100nmの一次粒子径を有する安定な変性金属酸化物ゾル。
  2. 被覆物(B)がアルキルアミンからなるアルカリ成分と、0.02〜4.00のM/Sbモル比(但しMはアミン分子を示す。)を有する請求項に記載の変性金属酸化物ゾル。
  3. 被覆物(B)に更にアルキルアミン含有シリカを加えた請求項1又は2に記載の変性金属酸化物ゾル。
  4. 核としての2〜60nmの一次粒子径を有する、Ti、Fe、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Sb、Ta、W、Pb、Bi及びCeから成る群から選ばれた1種又は2種以上の金属の酸化物である金属酸化物のコロイド粒子(A)を含有する水性ゾルと、アルカリ成分含有五酸化アンチモンのコロイド粒子である被覆物(B)を含有する水性ゾルとを、その金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合で0.01〜1に混合した後、その水性媒体を70〜95℃で加熱する事を特徴とする請求項1に記載の変性金属酸化物ゾルの製造方法。
  5. 核としての2〜60nmの一次粒子径を有する、Ti、Fe、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Sb、Ta、W、Pb、Bi及びCeから成る群から選ばれた1種又は2種以上の金属の酸化物である金属酸化物のコロイド粒子(A)を含有する水性ゾルと、アルカリ成分含有五酸化アンチモンのコロイド粒子である被覆物(B)として水溶性アンチモン酸アルカリ塩の水溶液とを、その金属酸化物に換算した(B)/(A)の重量割合で0.01〜1に混合した後、その水性媒体を70〜95℃で加熱し、陽イオン交換を行う事を特徴とする請求項1に記載の変性金属酸化物ゾルの製造方法。
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