JP4171850B2 - 変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合ゾル及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2〜50nmの粒子径を有する酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイドの表面を、1〜7nmの粒子径を有する酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体のコロイド粒子で被覆することによって形成された、2.5〜60nmの粒子径を有する変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子のゾル及びその製造方法に関する。
【0002】
本発明のゾルは、プラスチックレンズの表面に施されるハードコート剤の成分として、その他種々の用途に用いられる。
【0003】
【従来の技術】
近年多用されるようになってきたプラスチックレンズの表面を改良するために、この表面に適用されるハードコート剤の成分として、高い屈折率を有する金属酸化物のゾルが用いられている。
【0004】
たとえば、特公昭63−37142号公報には、Al、Ti、Zr、Sn、Sb等の金属酸化物の粒子径1〜300nmの粒子を含有させたハードコート剤が記載されている。
【0005】
酸化タングステン単独の安定なゾルは未だ知られていないが、珪酸塩の添加によって得られるWO3:SiO2:M2O(但し、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウム基を表わす。)モル比が4〜15:2〜5:1であるゾルが、特開昭54−52686号公報に提案されている。
【0006】
特公昭50−40119号公報にはSi:Snのモル比が2〜1000:1であるケイ酸−スズ酸複合ゾルが提案されている。
【0007】
また、特開平3−217230号公報には4〜50nmの粒子径を有する原子価3、4又は5の金属酸化物のコロイド粒子を核としてその表面がWO3/SnO2重量比0.5〜100であって粒子径2〜7nmである酸化タングステン−酸化第二スズ複合体のコロイド粒子で被覆されることによって形成された粒子径4.5〜60nmの変性金属酸化物コロイドからなり、そしてこれら全金属酸化物を2〜50重量%含む安定なゾルが提案されている。
【0008】
また、特開平6−24746号公報にはZrO2/SnO2として0.02〜1.0の重量比と4〜50nmの粒子径を有するSnO2−ZrO2複合体コロイド粒子を核として、その表面を、0.5〜100のWO3/SnO2重量比と2〜7nmの粒子径を有するWO3−SnO2複合コロイド粒子で被覆した構造の粒子からなる変性されたSnO2−ZrO2複合体の安定なゾルが提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来の金属酸化物ゾル、特にカチオン性の金属酸化物ゾルをハードコート剤の成分として用いると、得られたハードコート剤の安定性が充分でないのみならず、このハードコート剤の硬化皮膜の透明性、密着性、耐候性等も充分でない。またSb2O5ゾルをハードコート剤成分として用いる場合には、Sb2O5の屈折率が1.65〜1.70程度であるから、レンズのプラスチック基材の屈折率が1.6以上のときには、もはやこのSb2O5ゾルでは硬化被膜の屈折率が充分に向上しない。
【0010】
上記特開昭54−52686号公報に記載の酸化タングステンのゾルは、タングステン酸塩の水溶液を脱陽イオン処理することにより得られるタングステン酸の水溶液に、珪酸塩を加えることにより得られているが、強酸性においてのみ安定であり、また、ハードコート剤の成分として用いる場合には、塗膜の屈折率を向上させる効果は小さい。
【0011】
上記特公昭50−40119号公報に記載のケイ酸−スズ酸複合ゾルは、ケイ酸アルカリとスズ酸アルカリの混合水溶液を脱陽イオン処理することにより得られているが、上記同様、やはりハードコート剤の成分として用いる場合には、塗膜の屈折率を向上させる効果は小さい。
【0012】
上記特開平3−217230号公報に記載の変性金属酸化物ゾルは安定であるが、屈折率が1.76であり、レンズのプラスチック基材の屈折率が1.65以上では、もはやこのゾルでは硬化被膜の屈折率が充分に向上しない。また、要求されるハードコート膜の性能、例えば耐擦傷性、耐水性、耐候性などの性能を十分に満たすことができない。
【0013】
上記特開平6−24746に記載の変性酸化第二スズ−酸化ジルコニウムゾルは屈折率が1.75〜1.77であり、レンズのプラスチック基材の屈折率が1.65以上のときには、やはり、このゾルでは硬化被膜の屈折率が充分に向上しない。また、ハードコート膜の耐水性、耐湿性能を十分満たしていない。
【0014】
本発明は、屈折率が高く(1.85以上)、耐水性、耐湿性能の良好な変性酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の安定なゾルを提供しようとするものである。
【0015】
本発明の更に他の目的は、プラスチックレンズ表面に施されるハードコート膜の性能向上成分として、そのハードコート用塗料に混合して用いることができる金属酸化物ゾルを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本願発明は請求項1として、2〜50nmの粒子径を有し、0.05〜1.0のZrO2/TiO2モル比、及び0.25〜10のTiO2/(ZrO2+SnO2)モル比となる酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子を核としてその表面を、重量比がWO3/SnO2として0.1〜100、SiO2/SnO2として0.1〜100であって粒子径1〜7nmである酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体のコロイド粒子で被覆されることによって形成された粒子径2.5〜60nmの変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子からなり、そしてこれら全金属酸化物を2〜50重量%含む安定なゾルである。
【0017】
請求項2として、下記(a)工程、(b)工程、(c)工程及び(d)工程:(a)工程:過酸化水素水及び金属スズを、2〜3のH2O2/Snモル比に保持しつつ同時に又は交互にチタン塩及びオキシジルコニウム塩の混合物水溶液に添加して、チタン成分、ジルコニウム成分及びスズ成分がTiO2、ZrO2及びSnO2に換算して0.05〜1.0のZrO2/TiO2モル比、0.25〜10のTiO2/(ZrO2+SnO2)モル比と、TiO2、ZrO2及びSnO2に換算した総濃度が5〜50重量%となるチタン−ジルコニウム−スズの塩基性塩水溶液を生成する(a−1)工程、(a−1)工程で得られたチタン−ジルコニウム−スズの塩基性塩水溶液を0.1〜100時間かけて50〜100℃の温度で保持して酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイドの凝集体を生成させる(a−2)工程、及び(a−2)工程で生成した酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイドの凝集体スラリー中の電解質を除去する(a−3)工程より成る酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子の安定な水性ゾルを製造する工程、及び
(b)工程:タングステン酸塩、スズ酸塩及び珪酸塩をWO3/SnO2重量比として0.1〜100、SiO2/SnO2重量比として0.1〜100の比率に含有する水溶液を調製する(b−1)工程、及び(b−1)工程で得られた水溶液中に存在する陽イオンを除去する(b−2)工程からなる酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体コロイド粒子の安定な水性ゾルを製造する工程、(c)工程:(a)工程で得られた酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体水性ゾルを金属酸化物(TiO2+ZrO2+SnO2)に換算して100重量部と、(b)工程で得られた酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体水性ゾルを金属酸化物(WO3+SnO2+SiO2)に換算して2〜100重量部とを混合する工程、及び
(d)工程:(c)工程で得られたゾルから陰イオンを除去する工程、から成る変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子の安定な水性ゾルの製造方法である。
【0018】
請求項3として、(e)工程として、(d)工程で得られた水性ゾルの水性溶媒を有機溶媒に置換する工程を(d)工程の後に付加する請求項2に記載の製造方法である。
【0019】
請求項4として、(c)工程で酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体水性ゾルと、酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体水性ゾルとを混合する温度が、0〜100℃で行われる請求項2又は請求項3に記載の製造方法である。
【0020】
請求項5として、(d)工程で、(c)工程で得られた複合ゾルを1〜10重量%濃度に調整後、陰イオン交換樹脂に通液する請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の製造方法である。
【0021】
【発明の実施の形態】
本願発明の変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子の安定な水性ゾルは、下記(a)工程、(b)工程、(c)工程及び(d)工程から製造される。
【0022】
(a)工程では核となる酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子の安定な水性ゾルが製造される。
【0023】
(a−1)工程で使用されるチタン塩としては四塩化チタン、硫酸チタン、硝酸チタン等が挙げられる。これらのチタン塩は水溶液で用いる事が好ましい。オキシジルコニウム塩としては、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム若しくはオキシ炭酸ジルコニウム等のオキシ無機酸ジルコニウム、又はオキシ酢酸ジルコニウム等のオキシ有機酸ジルコニウムが挙げられる。金属スズは粉末状又は粒状で用いることが出来る。例えばインゴットを溶融し噴霧凝固させて得られるアトマイゼーション法による金属スズ粉末や、インゴットを旋盤やヤスリ等により切削し製造されたフレーク状金属スズ粉末を用いる事が出来る。過酸化水素は、市販の35重量%濃度の水溶液を所望の濃度で用いる事が出来る。
【0024】
(a−1)工程ではチタン塩及びオキシジルコニウム塩の混合水溶液に、過酸化水素水及び金属スズを同時に又は交互に添加して、チタン−ジルコニウム−スズの塩基性塩水溶液を生成する工程である。攪拌機を備えた反応容器にチタン塩とオキシジルコニウム塩の混合物水溶液を入れ、攪拌下に過酸化水素水と金属スズを各々、別々の添加口から同時に又は交互に添加する。上記の混合物水溶液は、純水中にチタン塩とオキシジルコニウム塩を溶解する方法、チタン塩水溶液とオキシジルコニウム塩水溶液を混合する方法、チタン塩水溶液にオキシジルコニウム塩を添加する方法、又はオキシジルコニウム塩水溶液にチタン塩を添加する方法で得られる。(a−1)工程の塩基性塩水溶液、及び以下に続く(a−2)工程の酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイドの凝集体を含むスラリーは酸性であるため、それら工程で使用される反応装置はガラス製反応装置やグラスライニング(ホウロウ)製反応装置を用いる事が好ましい。
【0025】
過酸化水素水と金属スズのH2O2/Snモル比は2〜3に保持しつつチタン塩とオキシジルコニウム塩の混合物水溶液中に添加する。より詳しくは、過酸化水素水及び金属スズの添加すべき全重量部に対して1/3〜1/30重量部をそれぞれ分収して、チタン塩とオキシジルコニウム塩の混合物水溶液への過酸化水素水の添加と、それに続く金属スズの添加そして2〜20分間反応を行う一連の工程を、3〜30回繰り返す分割添加の方法が挙げられる。また、過酸化水素水及び金属スズの添加すべき全重量部に対して1/3〜1/30重量部をそれぞれ分取して、チタン塩とオキシジルコニウム塩の混合物水溶液への金属スズの添加と、それに続く過酸化水素水の添加そして2〜20分間反応を行う一連の工程を、3〜30回繰り返す分割添加の方法も挙げられる。
【0026】
この時に、初めに全量の過酸化水素を酸性のチタン塩とオキシジルコニウム塩の混合物水溶液に加え、これに金属スズを加えると過酸化水素の大部分が反応の初期に分解してしまい過酸化水素の量が不足し、また過酸化水素の分解反応は発熱反応のため危険であり好ましくない。H2O2/Snモル比が3を少し越えても反応は可能であるが、大幅に越えることは上記理由から好ましくない。H2O2/Snモル比が2未満では酸化不充分となるため好ましくない。過酸化水素水と金属スズの添加時間は、例えばチタン塩とオキシジルコニウム塩の合計モル数で1モルが溶存する混合物水溶液を用いた場合に、0.4〜10時間、好ましくは0.4〜5時間をかけて添加することが出来る。この添加時間が0.4時間以下では発熱反応が激しくコントロールが出来なくなり、また未反応の金属スズが残存し易くなるため好ましくない。また、10時間以上でも良いが経済的でないため好ましくない。
【0027】
(a−1)工程において生成するチタン−ジルコニウム−スズの塩基性塩は、チタン成分、ジルコニウム成分及びスズ成分を酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)及び酸化第二スズ(SnO2)に換算したZrO2/TiO2モル比が0.05〜1.0、好ましくは0.1〜0.5である。また、TiO2/(ZrO2+SnO2)モル比が0.25〜10、好ましくは0.4〜4.0である。
【0028】
TiO2/(ZrO2+SnO2)モル比が0.25未満でもチタン−ジルコニウム−スズの塩基性塩水溶液を作成できるが、カウンターアニオンのモル比が低下しコロイドが生成しやすく、また屈折率も低下するために好ましくない。またモル比が10を越えてもチタン−ジルコニウム−スズの塩基性塩水溶液を作成できるが、これを用いて製造した酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体ゾルの紫外線による変色の抑制効果が低下するために好ましくない。(a−1)工程のチタン−ジルコニウム−スズの塩基性塩水溶液中の(TiO2+ZrO2+SnO2)に換算した総濃度は0.5〜50重量%が好ましい。0.5重量%未満でも可能であるが、効率が悪く経済的でない。また50重量%を越える事も可能であるが、粘度が高く、攪拌しにくくなり、反応が不均一になるために好ましくない。
【0029】
(a−1)工程において水性媒体中での、チタン塩、オキシジルコニウム塩、金属スズ、及び過酸化水素水の反応は、30〜95℃、好ましくは40〜85℃で行われる。過酸化水素と金属スズとの反応は酸化反応であるため発熱反応となり、また過酸化水素の分解反応も同時に起こりこの反応も発熱反応であるため反応時の温度コントロールには注意が必要であり、必要に応じて冷却する事が出来る。反応温度は30℃未満でもよいが、発熱反応であるために過剰の冷却が必要となり、反応に時間が懸かり過ぎ、経済的でない。反応温度が95℃以上の沸騰状態では(a−1)工程で粗大なコロイド粒子が生成してしまうため好ましくない。
【0030】
(a−2)工程では、(a−1)工程で得られたチタン−ジルコニウム−スズの塩基性塩を加水分解する事によって、酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイドの凝集体を得る工程である。(a−2)工程においてチタン−ジルコニウム−スズの塩基性塩水溶液は、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、及び酸化第二スズ(SnO2)に換算した総濃度(TiO2+ZrO2+SnO2)が2〜15重量%に調製する事が好ましい。2重量%未満でも可能であるが、効率が悪く経済的でない。また15重量%を越える事も可能であるが、粘度が高く、攪拌しにくくなり、加水分解反応が不均一になるために好ましくない。また粒子径をコントロールするために予め塩基性物質を添加しpH調整してから加水分解を行うことが出来る。上記の塩基性物質は例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニウム、及びエチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン等のアルキルアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、及び第4級アンモニウム水酸化物等が挙げられる。そしてpHは1〜2に調製する事が好ましい。
【0031】
(a−2)工程において加水分解の温度は50〜100℃の温度が好ましい。50℃未満でもよいが加水分解に時間が懸かりすぎるために好ましくない。100℃を越えて行ってもよいが、オートクレーブなどの特殊な水熱処理装置が必要となり、また水熱処理により生成したコロイドの二次凝集体が強固になり、得られる酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体ゾルの透明性が低下するために好ましくない。
【0032】
(a−2)工程において加水分解に要する時間は0.1〜100時間が好ましい。0.1時間未満では加水分解が不充分となり好ましくない。また100時間を越えた場合は、一次粒子径が大きくなり、または強固な二次凝集体が形成されるために好ましくない。この(a−2)工程により得られる酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子の一次粒子径は2〜50nm(ナノメートル)である。
【0033】
(a−3)工程は、(a−2)工程で得られた酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイドの凝集体スラリー中から過剰な電解質(主にアニオン)を除去して、酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子を解膠させてゾルを得る工程である。過剰な電解質を除去することにより酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子が一次粒子に近い状態で分散したゾルを得ることが出来る。この洗浄は凝集沈降させ、上澄みをデカンテーションする方法、限外濾過法、イオン交換法などにより行うことができるが、多量の電解質を含む場合は限外濾過→注水→限外濾過の繰り返しによる洗浄方法が特に好ましい。
【0034】
(a−3)工程で得られるゾル中の酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子の粒子径は2〜50nmである。この2〜50nmは一次粒子径として求められる。一次粒子径とは凝集形態にある酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子の直径ではなく、個々に分離した時の1個の酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子の直径であり、電子顕微鏡によって測定することが出来る。この一次粒子径が2nm未満であると、これを用いて製造した酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体ゾルの粘度が高くなり、耐水性も低下するので好ましくない。また一次粒子径が50nm以上の場合は、これを用いて製造した酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体ゾルの透明性が低下するために好ましくない。
【0035】
酸化チタン(TiO2)は、紫外線吸収能を有しているため耐紫外線顔料やフィラーとして各種プラスチックス、繊維などに0.1〜10μm程度の粒子径のパウダーが添加され、使用されている。また、光学関連用途、例えば光学部材や透明性フィルムなどに塗布されるコ−ティング組成物にマイクロフィラーとして使用される酸化チタンは、一次粒子径が100nm以下、好ましくは20nm以下のゾルとして用いられている。一次粒子径が小さな酸化チタンは紫外線に対して非常に敏感になるため紫外線吸収効果が向上する反面、酸化チタンが紫外線により部分的にTiO2→TiOへの還元反応が起こり、濃青色に呈するという欠点を持っている。酸化第二スズ(SnO2)も一次粒子径が100nm以下、特に30nm以下のゾルになると紫外線により部分的にSnO2→SnOへの還元反応が起こるため褐色あるいは青緑色を呈するという欠点を持っている。
【0036】
酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体ゾルは、予めチタン塩とオキシジルコニウム塩の混合物水溶液に、過酸化水素と金属スズをH2O2/Snモル比が2〜3の範囲に保持しつつ添加、反応させてチタン−ジルコニウム−スズの塩基性塩水溶液を作成し、これを加水分解することより酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド水溶液が形成される。紫外線照射によってもそれぞれ単独の酸化物の時、又はそれぞれの酸化物が混合された時に比べてTiOやSnOへの還元が著しく抑制され、ほとんど変色しなくなる。
【0037】
電解質の除去、イオン交換、溶媒置換等の操作を行った後でもTiO2粒子、ZrO2粒子、及びSnO2粒子に分離する様な事はない。
【0038】
酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体ゾルは原子レベルで均一に複合(固溶)されているため、各種セラミックス用材料として用いた場合、焼結温度の低減や、酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ系のより均一な材料特性を供与することができる。
【0039】
(b)工程で使用される酸化タングステン(WO3)、酸化第二スズ(SnO2)及び二酸化珪素(SiO2)の複合体コロイド粒子を含有する安定な酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾルの製造方法は、ゾルの製造に用いられるタングステン酸塩、スズ酸塩および珪酸塩の例としては、上記アルカリ金属、アンモニウム、アミン等のタングステン酸塩、スズ酸塩および珪酸塩等が挙げられる。特に、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)、スズ酸ナトリウム(Na2SnO3・3H2O)及び珪酸ナトリウム(水ガラス等)が好ましい。また。酸化タングステン、タングステン酸、スズ酸、珪酸等をアルカリ金属水酸化物の水溶液に溶解したものも使用することが出来る。(b−1)工程の水溶液の調製方法としては、タングステン酸塩、スズ酸塩、珪酸塩の各粉末を水に溶解させ水溶液を調製する方法や、タングステン酸塩水溶液、スズ酸塩水溶液、及び珪酸塩水溶液を混合して水溶液を調製する方法や、タングステン酸塩とスズ酸塩の粉末及び珪酸塩の水溶液を水に添加して水溶液を調製する方法等が挙げられる。
【0040】
タングステン酸塩の水溶液は、WO3として0.1〜15重量%濃度のものが好ましいが、これ以上の濃度でも使用可能である。スズ酸塩の水溶液としては、SnO2濃度0.1〜30重量%程度が好ましいが、これ以上の濃度でも使用可能である。珪酸塩の水溶液としては、SiO2濃度0.1〜30重量%程度が好ましいが、これ以上の濃度でも使用可能である。
【0041】
(b−1)工程での水溶液の調製は攪拌下に、室温〜100℃、好ましくは、室温〜60℃位で行うのがよい。混合すべき水溶液は、WO3/SnO2重量比として0.1〜100、SiO2/SnO2重量比として0.1〜100が好ましい。
【0042】
(b−2)工程では(b−1)工程で得られた水溶液中に存在する陽イオンを除去する工程である。脱陽イオン処理の方法としては水素型イオン交換体と接触させる方法や塩析により行うことができる。ここで用いられる水素型陽イオン交換体としては、通常用いられるものであり、好都合には市販品の水素型陽イオン交換樹脂を用いることが出来る。アンバーライトIR−120Bのような強酸型のものが好ましい。
【0043】
酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾルに含まれるWO3、SnO2及びSiO2複合体コロイド粒子は、電子顕微鏡によって粒子径を観測することができ、その粒子径は1〜7nmである。このゾルのコロイド粒子の分散媒としては、水、親水性有機溶媒のいずれも可能である。この親水性有機溶媒の例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド、N,N′−ジメチルアセトアミド等の直鎖アミド類;N−メチル−2−ピロリドン等の環状アミド類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコール等のグリコール類が挙げられる。
【0044】
上記ゾルは、WO3、SnO2及びSiO2をWO3/SnO2重量比として0.1〜100、SiO2/SnO2重量比として0.1〜100の比率に含有する。
【0045】
上記ゾルに含まれるWO3、SnO2及びSiO2の合計の濃度は、通常40重量%以下、実用上好ましくは2重量%以上、好ましくは5〜30重量%である。
【0046】
上記ゾルはアルカリ成分を実質的に含有しないで安定に存在する事ができる。しかし、アルカリ成分を含有して安定化する事も可能である。そのアルカリ成分は、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属水酸化物、NH4、エチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン;ベンジルアミン等のアラルキルアミン;ピペリジン等の脂環式アミン;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンである。これらアルカリ成分をWO3、SnO2及びSiO2の合計量に対し約30重量%以下含有させる事ができる。また、これらは2種以上の混合して含有する事が出来る。上記ゾルは、1〜11のpHを示し、無色透明乃至僅かにコロイド色を有する液である。そして、室温では3ケ月以上、60℃でも1ケ月以上安定であり、このゾル中に沈降物が生成することがなく、また、このゾルが増粘したり、ゲル化を起すようなことはない。
【0047】
酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾルは、酸化第二スズと酸化タングステンと二酸化珪素が原子レベルで均一に複合(固溶)して得られた酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素からなる複合体粒子を含有する。従って、酸化タングステンゾル、酸化第二スズゾル及び二酸化珪素ゾルの3種のゾルを単に混合して得られるものではない。
【0048】
酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素の複合体ゾルは、酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素の複合体粒子は固溶体を形成している為に、溶媒置換によっても酸化タングステン粒子、酸化第二スズ粒子及び二酸化珪素粒子に分離する事はない。
【0049】
酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素の複合体ゾルは、酸化タングステン−酸化第二スズの複合ゾルに比べ、基材に被覆して被膜を形成した際に、耐水性、耐湿性、及び耐候性が向上する。
【0050】
(c)工程では、(a)工程で得られた酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体水性ゾルを金属酸化物(TiO2+ZrO2+SnO2)に換算して100重量部と、(b)工程で得られた酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体水性ゾルを金属酸化物(WO3+SnO2+SiO2)に換算して2〜100重量部とを混合する工程である。
【0051】
(c)工程では、(a)工程で得られた酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズの複合体コロイド粒子からなるゾルに、強攪拌下で(b)工程で得られた酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素の複合体コロイド粒子からなるゾルを添加することによって、変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズの複合体コロイド粒子からなるゾルを製造することも可能である。
【0052】
しかし、(b)工程で得られた酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素の複合体コロイド粒子からなるゾルに、強攪拌下で(a)工程で得られた酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズの複合体コロイド粒子からなるゾルを添加することによって、変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズの複合体コロイド粒子からなるゾルを好ましく製造することが出来る。
【0053】
この混合は0〜100℃の温度、好ましくは、室温(20℃)〜60℃で、5〜60分程度で終了させることができる。この混合によって得られるべき変性されたコロイド粒子のゾルが、上記トータルの金属酸化物としての合計2〜40重量%を含有するように、上記混合に用いられる酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾルの濃度及び酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体ゾルの濃度を上記混合前に選定してから、これら両ゾルを混合するのが好ましい。
【0054】
上記混合により、酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体ゾルのコロイド粒子表面を上記酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体のコロイド粒子で被覆し、酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズコロイド粒子を核としてその表面が酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体の性質を有するように変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合コロイド粒子を生成させることができ、そしてこの変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子が液状媒体に安定に分散したゾルとして得ることができる。
【0055】
本発明のゾルは、本願発明の目的が達成される限り、他の任意の成分を含有することができる。特にオキシカルボン酸類をTiO2、SnO2、ZrO2、WO3及びSiO2の合計量に対し約30重量%以下に含有させると更に改良されたゾルが得られる。用いられるオキシカルボン酸の例としては、乳酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、グリコール等が挙げられる。また、アルカリ成分としては、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属水酸化物、アンモニア、エチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン;ベンジルアミン等のアラルキルアミン;ピペリジン等の脂環式アミン;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンである。これらは2種以上を混合して含有することができる。また上記の酸性成分と併用することができる。これらをTiO2、SnO2、ZrO2、WO3及びSiO2の合計量に対し約30重量%以下に含有させることができる。
【0056】
上記混合によって得られた変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズコロイド粒子は、電子顕微鏡によって観察することができ、ほぼ2.5〜60nmの粒子径を有する。上記混合によって得られたゾルはpHが1〜11を有しているが、チタン塩、ジルコニウム塩等に由来するCl-、NO3 -、CH3COO-などのアニオンを多く含有しているために、コロイド粒子はミクロ凝集を起こしており、ゾルの透明性が低くなっている。
【0057】
上記混合によって得られたゾル中のアニオンを(d)工程の陰イオンを除去することにより、pH3〜11で、透明性の良い、安定な変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子のゾルを得ることができる。
【0058】
(d)工程の陰イオン除去は上記混合によって得られたゾルを水酸基型陰イオン交換樹脂で0〜100℃、好ましくは室温(20℃)〜60℃の温度で処理することにより行われる。水酸基型陰イオン交換樹脂は市販品を用いることができるが、アンバーライトIRA−410のような強塩基型のものが好ましい。
【0059】
(d)工程の水酸基型陰イオン交換樹脂による処理は上記(c)工程での混合によって得られたゾルの金属酸化物濃度が1〜10重量%で行うのが特に好ましい。
【0060】
(a)〜(d)工程により得られた変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体ゾルの濃度を更に高めたいときには、最大約50重量%まで常法、例えば蒸発法、限外濾過法等により濃縮することができる。またこのゾルのpHを調整したい時には、濃縮後に、前記アルカリ金属、アンモニウム等の水酸化物、前記アミン、オキシカルボン酸等をゾルに加えることによって行うことができる。特に、上記金属酸化物(TiO2とZrO2とSnO2)と(WO3とSnO2とSiO2)の合計濃度が10〜40重量%であるゾルは実用的に好ましい。
【0061】
上記混合によって得られた変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体ゾルが水性ゾルであるときは、この水性ゾルの水媒体を親水性有機溶媒で置換することによりオルガノゾルが得られる。この置換は、蒸留法、限外濾過法等通常の方法により行うことができる。この親水性有機溶媒の例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド等の直鎖アミド類;N−メチル−2−ピロリドン等の環状アミド類;エチルセロソルブ、エチレングリコール等のグリコール類等が挙げられる。
【0062】
上記水と親水性有機溶媒との置換は、例えば蒸留置換法、限外濾過法等によって容易に行うことができる。
【0063】
前記本発明による酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体のコロイド粒子によって表面が被覆された変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合コロイド粒子はゾル中で負に帯電している。
【0064】
酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子は陽に帯電しており、酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体のコロイド粒子は負に帯電している。従って、(c)工程の混合によりこの陽に帯電している酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子の周りに負に帯電している酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体のコロイド粒子が電気的に引き寄せられ、そして陽帯電のコロイド粒子表面上に化学結合によって酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体のコロイド粒子が結合し、この陽帯電の粒子を核としてその表面を酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体が覆ってしまうことによって、変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合コロイド粒子が生成したものと考えられる。
【0065】
しかし、酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合コロイド粒子のゾルと、酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合コロイド粒子のゾルとを混合するときに、WO3とSnO2とSiO2の合計量が、上記金属酸化物(TiO2+ZrO2+SnO2)100重量部に対し2重量部より少ないと、安定なゾルが得られない。このことは、酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体のコロイド粒子の量が不足するときには、この複合体のコロイド粒子による酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合コロイド粒子を核とするその表面の被覆が不充分となり、生成コロイド粒子の凝集が起こり易く、生成ゾルを不安定にするものと考えられる。従って、混合すべき酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体コロイド粒子の量は、酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合コロイド粒子の全表面を覆う量より少なくてもよいが、安定な変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズコロイド粒子のゾルを生成せしめるに必要な最小量以上の量である。この表面被覆に用いられる量を越える量の酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体コロイド粒子が上記混合に用いられたときには、得られたゾルは、酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体コロイド粒子のゾルと、生じた変性された酸化チタン−酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合コロイド粒子のゾルの安定な混合ゾルに過ぎない。
【0066】
【実施例】
A.酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾルの調製
(b−1)工程:珪酸ナトリウム水溶液(3号珪そう:富士化学(株)製、SiO2に換算して29.0重量%、Na2Oに換算して9.5重量%を含有する。)34.5gを水769.2gに溶解し、ついでタングステン酸ナトリウムNa2WO4・2H2O(試薬一級:WO3に換算して71重量%を含有する。)10.6gおよびスズ酸ナトリウムNaSnO3・3H2O(試薬特級SnO2に換算して56重量%を含有する。)13.5gを溶解する。
【0067】
(b−2)工程:これを水素型陽イオン交換樹脂(オルガノ製アンバーライトIR−120B)充填のカラムに通すことにより酸性の酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾル(pH2.05、WO3に換算して0.63重量%、SnO2に換算して0.63重量%、SiO2に換算して0.83重量%、WO3/SnO2重量比1.0、SiO2/SnO2重量比1.33、粒子径2〜3nm)1200gを得た。
【0068】
B.酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾルの調製
(b−1)工程:珪酸ナトリウム水溶液(3号珪そう:富士化学(株)製、SiO2に換算して29.0重量%、Na2Oに換算して9.5重量%を含有する。)23.0gを水776.8gに溶解し、ついでタングステン酸ナトリウムNa2WO4・2H2O(試薬一級:WO3に換算して71重量%を含有する。)14.2gおよびスズ酸ナトリウムNaSnO3・3H2O(試薬特級SnO2に換算して56重量%を含有する。)17.9gを溶解する。
【0069】
(b−2)工程:これを水素型陽イオン交換樹脂(オルガノ製アンバーライトIR−120B)充填のカラムに通すことにより酸性の酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾル(pH2.21、WO3に換算して0.85重量%、SnO2に換算して0.85重量%、SiO2に換算して0.57重量%、WO3/SnO2重量比1.0、SiO2/SnO2重量比0.67、粒子径2〜3nm)1169.3gを得た。
【0070】
C.酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合ゾルの調製
(b−1)工程:珪酸ナトリウム水溶液(3号珪そう:富士化学(株)製、SiO2に換算して29.0重量%、Na2Oに換算して9.5重量%を含有する。)52.8gを水761.8gに溶解し、ついでタングステン酸ナトリウムNa2WO4・2H2O(試薬一級:WO3に換算して71重量%含有する。)8.06gおよびスズ酸ナトリウムNaSnO3・3H2O(試薬特級:SnO2に換算して55重量%を含有する。)10.2gを溶解する。
【0071】
(b−2)工程:これを水素型陽イオン交換樹脂(オルガノ製アンバーライトIR−120B)充填のカラムに通すことにより酸性の酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾル(pH2.25、WO3に換算して0.45重量%、SnO2に換算して0.45重量%、SiO2に換算して1.22重量%、WO3/SnO2重量比1.0、SiO2/SnO2重量比2.7、粒子径2〜3nm)1251.9gを得た。
【0072】
実施例1
(a−1)工程:四塩化チタン(TiO2に換算して27.2重量%、Clに換算して32.0重量%、住友シチックス(株)製)587.5g(TiO2に換算して159.8g含有する。)とオキシ塩化ジルコニウム35.65g(ZrO2に換算して24.6g含有する。)、水708.55gを3リットルのジャケット付きガラス製セパラブルフラスコにとり四塩化チタンとオキシ塩化ジルコニウム混合水溶液1331.7g(TiO2に換算して12.0重量%、ZrO2に換算して1.85重量%)を作成した。この水溶液をガラス製攪拌棒で攪拌しながら60℃まで加温した後、冷却しながら35%過酸化水素水(工業用)194.5gと金属スズ粉末(山石金属(株)製AT−Sn、No.200)95.0gを添加した。
【0073】
過酸化水素水と金属スズの添加は始めに過酸化水素水38.9gを次いで金属スズを19.0gを徐々に加え、反応が終了するのを待って(5〜10分)過酸化水素水と金属スズの添加を繰り返す方法で5回分割添加を行った。反応は発熱反応のため金属スズの添加により80〜85℃になり反応が終了すると冷却のために60〜70℃に低下した。従って反応温度は60〜85℃であった。添加時の過酸化水素水と金属スズの割合はH2O2/Snモル比で2.5であった。過酸化水素水と金属スズの添加に要した時間は1.0時間であった。尚、反応により水が蒸発するので適量の補充を行った。反応終了後、淡黄色透明な塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液1605gを得た。得られた塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液中の酸化チタン濃度は9.96重量%、酸化ジルコニウム濃度は1.53重量%、酸化第二スズ濃度は7.51重量%、Zr/Tiモル比は0.1で、Ti/(Zr+Sn)モル比2.0であった。また(Ti+Zr+Sn)/Clモル比は0.53であった。
(a−2)工程:(a−1)工程で得られた塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液1605gに28重量%アンモニア水250g、水4244gを添加し、TiO2+ZrO2+SnO2に換算して5重量%の水溶液とした。この水溶液を95〜98℃で12時間加水分解を行い、一次粒子径4〜8nmの酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイドの凝集体を得た。
(a−3)工程:(a−2)工程で得た酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合コロイドの凝集体スラリーを限外濾過装置にて水約20リットルを用いて濃縮→注水→濃縮を繰り返し、過剰な電解質を洗浄除去、解膠させ、酸性の酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル5647gを得た。
(c)工程:Aの(b−2)工程で調製した酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合ゾル1200g(WO3+SnO2+SiO2に換算して26.6g)に撹拌下に、室温で(a−3)工程で調製した酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合ゾル2463.2g(TiO2+ZrO2+SnO2に換算して133.0g)を30分で添加し、30分間撹拌を続行した。得られた混合液は酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズコロイド(TiO2+ZrO2+SnO2)と酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合コロイド(WO3+SnO2+SiO2)の比は(WO3+SnO2+SiO2)/(TiO2+ZrO2+SnO2)重量比0.20、pH2.15、全金属酸化物4.36重量%であり、コロイド粒子のミクロ凝集による白濁傾向を示した。
(d)工程:(c)工程で得た混合液3663.2gにジイソプロピルアミンを5.3g添加し、その後水酸基型陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410)を充填したカラムに室温で通液することにより変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体水性ゾル(希薄液)3896.7gを得た。このゾルは全金属酸化物4.05重量%、pH9.47で白濁傾向を示すが、ついで80℃で1hr加熱熟成することによって透明性の良いゾルを3856.2g得た。
(d)工程で得られた変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル(希薄液)を、分画分子量10万の限外濾過膜の濾過装置により室温で濃縮し、高濃度の変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体水性ゾル525.7gを得た。このゾルは比重1.314、pH7.41、粘度25.4(B型粘度計No.1ローター)cpで安定であった。
上記の高濃度の変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル150.1gに撹拌下に、室温で酒石酸1.37g、ジイソプロピルアミ1.78g、消泡剤(サンノプコ社製SNディフォーマー483)1滴を加え、1時間撹拌した。この調整ゾルのpH7.02であった。このゾルをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール7リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合メタノールゾル138.4gを得た。このゾルは比重1.074、pH6.70(水との等重量混合物)、粘度3.0cp、全金属酸化物(TiO2−ZrO2+SnO2+WO3+SiO2に換算して)30.1重量%を含有し、水分0.76重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は8〜14nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.85であった。
【0074】
実施例2
(a−1)工程:四塩化チタン(TiO2に換算して27.2重量%、Clに換算して32.0重量%を含有する。住友シチックス(株)製)587.5g(TiO2に換算して159.8gを含有する。)とオキシ塩化ジルコニウム35.65g(ZrO2に換算して24.6gを含有する。)、水708.55gを3リットルのジャケット付きガラス製セパラブルフラスコにとり四塩化チタンとオキシ塩化ジルコニウム混合水溶液1331.7g(TiO2に換算して12.0重量%、ZrO2に換算して1.85重量%を含有する。)を作成した。この水溶液をガラス製攪拌棒で攪拌しながら60℃まで加温した後、冷却しながら35%過酸化水素水(工業用)194.5gと金属スズ粉末(山石金属(株)製AT−Sn、No.200)95.0gを添加した。
【0075】
過酸化水素水と金属スズの添加ははじめに過酸化水素水38.9gを次いで金属スズを19.0gを徐々に加え、反応が終了するのを待って(5〜10分)過酸化水素水と金属スズの添加を繰り返す方法で5回分割添加を行った。反応は発熱反応のため金属スズの添加により80〜85℃になり反応が終了すると冷却のために60〜70℃に低下した。従って反応温度は60〜85℃であった。添加時の過酸化水素水と金属スズの割合はH2O2/Snモル比で2.5であった。過酸化水素水と金属スズの添加に要した時間は1.0時間であった。尚、反応により水が蒸発するので適量の補充を行った。反応終了後、淡黄色透明な塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液1605gを得た。得られた塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液中の酸化チタン濃度は9.96重量%、酸化ジルコニウム濃度は1.53重量%、酸化第二スズ濃度は7.51重量%、Zr/Tiモル比は0.1で、Ti/(Zr+Sn)モル比2.0であった。また(Ti+Zr+Sn)/Clモル比は0.53であった。
【0076】
(a−2)工程:(a−1)工程で得られた塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液1605gに28重量%アンモニア水250g、水4244gを添加し、TiO2+ZrO2+SnO2に換算して5重量%の水溶液とした。この水溶液を95〜98℃で12時間加水分解を行い、一次粒子径4〜8nmの酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイドの凝集体を得た。(a−3)工程:(a−2)工程で得た酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイドの凝集体スラリーを限外濾過装置にて水約20リットルを用いて濃縮→注水→濃縮を繰り返し、過剰な電解質を洗浄除去、解膠させ、酸性の酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体水性ゾル5647gを得た。
(c)工程:Bの(b−2)で調製した酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾル1169.3g(WO3+SnO2+SiO2で26.62g)に撹拌下に、室温で(a−3)工程で調製した酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合ゾル2463.0g(TiO2+ZrO2+SnO2に換算して133.0g)を30分で添加し、30分間撹拌を続行した。得られた混合液は酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズコロイド(TiO2+ZrO2+SnO2)と酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合コロイド(WO3+SnO2+SiO2)の比は(WO3+SnO2+SiO2)/(TiO2+ZrO2+SnO2)重量比0.20、pH2.20、全金属酸化物4.39重量%であり、コロイド粒子のミクロ凝集による白濁傾向を示した。
(d)工程:(c)工程で得た混合液3632.3gにジイソプロピルアミンを5.3g添加し、その後水酸基型陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410)を充填したカラムに室温で通液することにより変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体水性ゾル(希薄液)4072.7gを得た。このゾルは全金属酸化物3.84重量%、pH9.37で白濁傾向を示すが、ついで80℃で1hr加熱熟成することによって透明性の良いゾル4037.5gを得た。
(d)工程で得られた変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体水性ゾル(希薄液)を、分画分子量10万の限外濾過膜の濾過装置により室温で濃縮し、高濃度の変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体水性ゾル520.8gを得た。このゾルは比重1.320、pH7.76、粘度73.6(B型粘度計NO.1ローター)cpで安定であった。
上記の高濃度の変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体水性ゾル160.3gに撹拌下に、室温で酒石酸1.48g、ジイソプロピルアミ1.91g、消泡剤(サンノプコ社製SNディフォーマー483)1滴を加え、1時間撹拌した。この調整ゾルのpHは7.40であった。このゾルをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール8リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合メタノールゾル150.5gを得た。このゾルは比重1.078、pH6.50(水との等重量混合物)、粘度3.0cp、全金属酸化物(TiO2+ZrO2+SnO2+WO3+SiO2に換算して)30.3重量%を含有し、水分0.43重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は8〜14nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.85であった。
【0077】
実施例3
(a−1)工程:四塩化チタン(TiO2に換算して27.2重量%、Clに換算して32.0重量%、住友シチックス(株)製)587.5g(TiO2に換算して159.8gを含有する。)とオキシ塩化ジルコニウム35.65g(ZrO2に換算して24.6g含有する。)、水708.55gを3リットルのジャケット付きガラス製セパラブルフラスコにとり四塩化チタンとオキシ塩化ジルコニウム混合水溶液1331.7g(TiO2に換算して12.0重量%、ZrO2に換算して1.85重量%)を作成した。この水溶液をガラス製攪拌棒で攪拌しながら60℃まで加温した後、冷却しながら35%過酸化水素水(工業用)194.5gと金属スズ粉末(山石金属(株)製AT−Sn、No.200)95.0gを添加した。
【0078】
過酸化水素水と金属スズの添加は始めに過酸化水素水38.9gを次いで金属スズを19.0gを徐々に加え、反応が終了するのを待って(5〜10分)過酸化水素水と金属スズの添加を繰り返す方法で5回分割添加を行った。反応は発熱反応のため金属スズの添加により80〜85℃になり反応が終了すると冷却のために60〜70℃に低下した。従って反応温度は60〜85℃であった。添加時の過酸化水素水と金属スズの割合はH2O2/Snモル比で2.5であった。過酸化水素水と金属スズの添加に要した時間は1.0時間であった。尚、反応により水が蒸発するので適量の補充を行った。反応終了後、淡黄色透明な塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液1605gを得た。得られた塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液中の酸化チタン濃度は9.96重量%、酸化ジルコニウム濃度は1.53重量%、酸化第二スズ濃度は7.51重量%、Zr/Tiモル比は0.1で、Ti/(Zr+Sn)モル比2.0であった。また(Ti+Zr+Sn)/Clモル比は0.53であった。
(a−2)工程:(a−1)工程で得られた塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液1605gに28重量%アンモニア水250g、水4244gを添加し、TiO2+ZrO2+SnO2に換算して5重量%の水溶液とした。この水溶液を95〜98℃で12時間加水分解を行い、一次粒子径4〜8nmの酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合コロイドの凝集体を得た。
(a−3)工程:(a−2)工程で得た酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合コロイドの凝集体スラリーを限外濾過装置にて水約20リットルを用いて濃縮→注水→濃縮を繰り返し、過剰な電解質を洗浄除去、解膠させ、酸性の酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル5647gを得た。
(c)工程: Cの(b−2)工程で調製した酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合ゾル1251.9g(WO3+SnO2+SiO2に換算して26.65g)に撹拌下に、室温で(a−3)工程で調製した酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合ゾル2463.3g(TiO2+ZrO2+SnO2に換算して133.0g)を30分で添加し、30分間撹拌を続行した。得られた混合液は酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズコロイド(TiO2+ZrO2+SnO2)と酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合コロイド(WO3+SnO2+SiO2)の比は(WO3+SnO2+SiO2)/(TiO2+ZrO2+SnO2)重量比0.20、pH2.20、全金属酸化物4.30重量%であり、コロイド粒子のミクロ凝集による白濁傾向を示した。
(d)工程:(c)工程で得た混合液3715.2gにジイソプロピルアミンを5.3g添加し、その後水酸基型陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410)を充填したカラムに室温で通液することにより変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル(希薄液)4067.2gを得た。このゾルは全金属酸化物3.88重量%、pH9.56で、白濁傾向を示すが、ついで80℃で1hr加熱熟成することによって透明性の良いゾル4048.6gを得た。
(d)工程で得られた変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル(希薄液)を、分画分子量10万の限外濾過膜の濾過装置により室温で濃縮し、高濃度の変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル477.0gを得た。このゾルは比重1.320、pH7.46、粘度18.3(B型粘度計No.1ローター)cpで安定であった。
上記の高濃度の変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル160.5gに撹拌下に、室温で酒石酸1.47g、ジイソプロピルアミ1.92g、消泡剤(サンノプコ社製SNディフォーマー483)1滴を加え、1時間撹拌した。この調整ゾルのpHは7.05であった。このゾルをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール8リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合メタノールゾル130.2gを得た。このゾルは比重1.076、pH6.32(水との等重量混合物)、粘度3.0cp、全金属酸化物(TiO2+ZrO2+SnO2+WO3+SiO2に換算して)30.5重量%を含有し、水分0.65重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は8〜14nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.85であった。
【0079】
実施例4
(a−1)工程:四塩化チタン(TiO2に換算して27.2重量%、Clに換算して32.0重量%、住友シチックス(株)製)587.5g(TiO2に換算して159.8gを含有する。)とオキシ塩化ジルコニウム35.65g(ZrO2に換算して24.6gを含有する。)、水708.55gを3リットルのジャケット付きガラス製セパラブルフラスコにとり四塩化チタンとオキシ塩化ジルコニウム混合水溶液1331.7g(TiO2に換算して12.0重量%、ZrO2に換算して1.85重量%)を作成した。この水溶液をガラス製攪拌棒で攪拌しながら60℃まで加温した後、冷却しながら35%過酸化水素水(工業用)738.0gと金属スズ粉末(山石金属(株)製AT−Sn、No.200)448.4gを添加した。
【0080】
過酸化水素水と金属スズの添加は始めに過酸化水素水41.0gを次いで金属スズを24.9gを徐々に加え、反応が終了するのを待って(5〜10分)過酸化水素水と金属スズの添加を繰り返す方法で17回分割添加し、最後だけ過酸化水素水45.0gを次いで金属スズを24.9gを添加し、トータル18回の分割添加で行った。反応は発熱反応のため金属スズの添加により80〜85℃になり反応が終了すると冷却のために60〜70℃に低下した。従って反応温度は60〜85℃であった。添加時の過酸化水素水と金属スズの割合はH2O2/Snモル比で2.5であった。過酸化水素水と金属スズの添加に要した時間は1.0時間であった。尚、反応により水が蒸発するので適量の補充を行った。反応終了後、淡黄色透明な塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液2266gを得た。得られた塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液中の酸化チタン濃度は7.05重量%、酸化ジルコニウム濃度は1.08重量%、酸化第二スズ濃度は25.13重量%、Zr/Tiモル比は0.1で、Ti/(Zr+Sn)モル比2.0であった。また(Ti+Zr+Sn)/Clモル比は1.06であった。
(a−2)工程:(a−1)工程で得られた塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液2266gに、水12810gを添加し、TiO2+ZrO2+SnO2に換算して5重量%の水溶液とした。この水溶液を95〜98℃で12時間加水分解を行い、一次粒子径4〜8nmの酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合コロイドの凝集体を得た。
(a−3)工程:(a−2)工程で得た酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合コロイドの凝集体スラリーを限外濾過装置にて水約20リットルを用いて濃縮→注水→濃縮を繰り返し、過剰な電解質を洗浄除去、解膠させ、酸性の酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル14780.4gを得た。
(c)工程:Aの(b−2)工程で調製した酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合ゾル1200g(WO3+SnO2+SiO2に換算して26.64g)に撹拌下に、室温で(a−3)工程で調製した酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合ゾル2607.9g(TiO2+ZrO2+SnO2に換算して133.0g)を30分で添加し、30分間撹拌を続行した。得られた混合液は酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズコロイド(TiO2+ZrO2+SnO2)と酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合コロイド(WO3+SnO2+SiO2)の比は(WO3+SnO2+SiO2)/(TiO2+ZrO2+SnO2)重量比0.20、pH2.50、全金属酸化物4.63重量%であり、コロイド粒子のミクロ凝集による白濁傾向を示した。
(d)工程:(c)工程で得た混合液3441.3gにジイソプロピルアミンを5.3g添加し、その後水酸基型陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410)を充填したカラムに室温で通液することにより変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル(希薄液)4473gを得た。このゾルは全金属酸化物3.57重量%、pH10.03で、白濁傾向を示すが、ついで80℃で1hr加熱熟成することによって透明性の良いゾルを得た。
(d)工程で得られた変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル(希薄液)を、分画分子量10万の限外濾過膜の濾過装置により室温で濃縮し、高濃度の変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル639.0gを得た。このゾルは比重1.210、pH7.72、粘度16.0(B型粘度No.1ローター)cpで安定であった。
【0081】
上記高濃度の変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル230.0gに撹拌下に、室温で酒石酸1.46g、ジイソプロピルアミ1.90g、消泡剤(サンノプコ社製SNディフォーマー483)1滴を加え、1時間撹拌した。この調整ゾルのpHは7.62であった。このゾルをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール8リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合メタノールゾル172gを得た。このゾルは比重0.992、pH6.53(水との等重量混合物)、粘度2.7cp、全金属酸化物(TiO2+ZrO2+SnO2+WO3+SiO2に換算して)22.5重量%、水分0.45重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は8〜14nmであった。
【0082】
このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.90であった。
【0083】
実施例5
(a−1)工程:四塩化チタン(TiO2に換算して27.2重量%、Clに換算して32.0重量%、住友シチックス(株)製)587.5g(TiO2に換算して159.8gを含有する。)とオキシ塩化ジルコニウム35.65g(ZrO2に換算して24.6gを含有する。)、水708.55gを3Lのジャケット付きガラス製セパラブルフラスコにとり四塩化チタンとオキシ塩化ジルコニウム混合水溶液1331.7g(TiO2に換算して12.0重量%、ZrO2に換算して1.85重量%を含有する。)を作成した。この水溶液をガラス製攪拌棒で攪拌しながら60℃まで加温した後、冷却しながら35%過酸化水素水(工業用)738.0gと金属スズ粉末(山石金属(株)製AT−Sn、No.200)448.4gを添加した。
【0084】
過酸化水素水と金属スズの添加は始めに過酸化水素水41.0gを次いで金属スズを24.9gを徐々に加え、反応が終了するのを待って(5〜10分)過酸化水素水と金属スズの添加を繰り返す方法で17回分割添加し、最後だけ過酸化水素水45.0gを次いで金属スズを24.9gを添加し、トータル18回の分割添加で行った。反応は発熱反応のため金属スズの添加により80〜85℃になり反応が終了すると冷却のために60〜70℃に低下した。従って反応温度は60〜85℃であった。添加時の過酸化水素水と金属スズの割合はH2O2/Snモル比で2.5であった。過酸化水素水と金属スズの添加に要した時間は1.0時間であった。尚、反応により水が蒸発するので適量の補充を行った。反応終了後、淡黄色透明な塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液2266gを得た。得られた塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液中の酸化チタン濃度は7.05重量%、酸化ジルコニウム濃度は1.08重量%、酸化第二スズ濃度は25.13重量%、Zr/Tiモル比は0.1で、Ti/(Zr+Sn)モル比2.0であった。また(Ti+Zr+Sn)/Clモル比は1.06であった。
(a−2)工程:(a−1)工程で得られた塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液2266gに、水12810gを添加し、TiO2+ZrO2+SnO2で5重量%の水溶液とした。この水溶液を95〜98℃で12時間加水分解を行い、一次粒子径4〜8nmの酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合コロイドの凝集体を得た。
(a−3)工程:(a−2)工程で得た酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合コロイドの凝集体スラリーを限外濾過装置にて水約20リットルを用いて濃縮→注水→濃縮を繰り返し、過剰な電解質を洗浄除去、解膠させ、酸性の酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル10924.6gを得た。
(c)工程:Bの(b−2)工程で調製した酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合ゾル1169.3g(WO3+SnO2+SiO2に換算して26.62gを含有する。)に撹拌下に、室温で(a−3)工程で調製した酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合ゾル1927.5g(TiO2+ZrO2+SnO2に換算して133.0gを含有する。)を30分で添加し、30分間撹拌を続行した。得られた混合液は酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズコロイド(TiO2+ZrO2+SnO2)と酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合コロイド(WO3+SnO2+SiO2)の比は(WO3+SnO2+SiO2)/(TiO2+ZrO2+SnO2)重量比0.20、pH2.18、全金属酸化物5.15重量%であり、コロイド粒子のミクロ凝集による白濁傾向を示した。
(d)工程:(c)工程で得た混合液3096.8gにジイソプロピルアミンを5.3g添加し、その後水酸基型陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410)を充填したカラムに室温で通液することにより変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル(希薄液)3487.4gを得た。このゾルは全金属酸化物4.58重量%、pH9.02で、白濁傾向を示すが、ついで80℃で1hr加熱熟成することによって透明性の良いゾルを得た。
(d)工程で得られた変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル(希薄液)を、分画分子量10万の限外濾過膜の濾過装置により室温で濃縮し、高濃度の変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル1042.5gを得た。このゾルは比重1.144、pH7.92、粘度55.9(B型粘度計No.1ローター)cpで安定であった。
【0085】
上記高濃度の変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル296.0gに撹拌下に室温で酒石酸1.35g、ジイソプロピルアミ1.76g、消泡剤(サンノプコ社製SNディフォーマー483)1滴を加え、1時間撹拌した。この調整ゾルのpHは7.16であった。このゾルをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール9リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合メタノールゾル218.3gを得た。このゾルは比重0.972、pH6.70(水との等重量混合物)、粘度3.4cp、全金属酸化物(TiO2+ZrO2+SnO2+WO3+SiO2に換算して)21.0重量%を含有し、水分0.36重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は8〜14nmであった。
【0086】
このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.90であった。
【0087】
実施例6
(a−1)工程:四塩化チタン(TiO2に換算して27.2重量%、Clに換算して32.0重量%、住友シチックス(株)製)587.5g(TiO2に換算して159.8gを含有する。)とオキシ塩化ジルコニウム35.65g(ZrO2に換算して24.6gを含有する。)、水708.55gを3リットルのジャケット付きガラス製セパラブルフラスコにとり四塩化チタンとオキシ塩化ジルコニウム混合水溶液1331.7g(TiO2に換算して12.0重量%、ZrO2に換算して1.85重量%を含有する。)を作成した。この水溶液をガラス製攪拌棒で攪拌しながら60℃まで加温した後、冷却しながら35%過酸化水素水(工業用)738.0gと金属スズ粉末(山石金属(株)製AT−Sn、No.200)448.4gを添加した。
【0088】
過酸化水素水と金属スズの添加ははじめに過酸化水素水41.0gを次いで金属スズを24.9gを徐々に加え、反応が終了するのを待って(5〜10分)過酸化水素水と金属スズの添加を繰り返す方法で17回分割添加し、最後だけ過酸化水素水45.0gを次いで金属スズを24.9gを添加し、トータル18回の分割添加で行った。反応は発熱反応のため金属スズの添加により80〜85℃になり反応が終了すると冷却のために60〜70℃に低下した。従って反応温度は60〜85℃であった。添加時の過酸化水素水と金属スズの割合はH2O2/Snモル比で2.5であった。過酸化水素水と金属スズの添加に要した時間は1.0時間であった。尚、反応により水が蒸発するので適量の補充を行った。反応終了後、淡黄色透明な塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液2266gを得た。得られた塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液中の酸化チタン濃度は7.05重量%、酸化ジルコニウム濃度は1.08重量%、酸化第二スズ濃度は25.13重量%、Zr/Tiモル比は0.1で、Ti/(Zr+Sn)モル比2.0であった。また(Ti+Zr+Sn)/Clモル比は1.06であった。
(a−2)工程:(a−1)工程で得られた塩基性塩化チタン−ジルコニウム−スズ複合塩水溶液2266gに、水12810gを添加し、TiO2+ZrO2+SnO2に換算して5重量%の水溶液とした。この水溶液を95〜98℃で12時間加水分解を行い、一次粒子径4〜8nmの酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合コロイドの凝集体を得た。
(a−3)工程:(a−2)工程で得た酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合コロイドの凝集体スラリーを限外濾過装置にて水約20リットルを用いて濃縮→注水→濃縮を繰り返し、過剰な電解質を洗浄除去、解膠させ、酸性の酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル10924.6gを得た。
(c)工程:Cの(b−2)工程で調製した酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合ゾル1251.9g(WO3+SnO2+SiO2に換算して26.65g)に撹拌下に、室温で(a−3)工程で調製した酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合ゾル1927.5g(TiO2+ZrO2+SnO2に換算して133.0g)を30分で添加し、30分間撹拌を続行した。得られた混合液は酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズコロイド(TiO2+ZrO2+SnO2)と酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合コロイド(WO3+SnO2+SiO2)の比は(WO3+SnO2+SiO2)/(TiO2+ZrO2+SnO2)重量比0.20、pH2.21、全金属酸化物5.02重量%であり、コロイド粒子のミクロ凝集による白濁傾向を示した。
(d)工程:(c)工程で得た混合液22666gにジイソプロピルアミンを5.3g添加し、その後水酸基型陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410)を充填したカラムに室温で通液することにより変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル(希薄液)3408.8gを得た。このゾルは全金属酸化物4.68重量%、pH9.35で、白濁傾向を示すが、ついで80℃で1hr加熱熟成することによって透明性の良いゾルを得た。
(d)工程で得られた変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル(希薄液)を、分画分子量10万の限外濾過膜の濾過装置により室温で濃縮し、高濃度の変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル3714.7gを得た。このゾルは比重1.140、pH7.62、粘度19.8(B型粘度計No.2ローター)cpで安定であった。
【0089】
上記高濃度の変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合水性ゾル214.6gに撹拌下に、室温で酒石酸1.29g、ジイソプロピルアミ1.67g、消泡剤(サンノプコ社製SNディフォーマー483)1滴を加え、1時間撹拌した。この調整ゾルのpHは6.60であった。このゾルをロータリーエバポレーターにて減圧下、液温30℃以下でメタノール9リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合メタノールゾル153gを得た。このゾルは比重0.966、pH6.47(水との等重量混合物)、粘度6.5cp、全金属酸化物(TiO2+ZrO2+SnO2+WO3+SiO2に換算して)20.6重量%を含有し、水分0.38重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は8〜14nmであった。
【0090】
このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.90であった。
【0091】
比較例1
特開平3−217230号公報に開示のゾルを用いた。即ち、7.2nmの粒子径を有する酸化第二スズのコロイド粒子を核としてその表面が、WO3/SnO2重量比5.12であって粒子径5nmである酸化タングステン−酸化第二スズ複合体のコロイド粒子で被覆されることによって形成された粒子径10〜15nmの変性された酸化第二スズのメタノールゾルを作成した。このゾルは比重1.096、pH8.34(水との等重量混合物)、粘度4.5cp、SnO2に換算して25.4重量%、WO3に換算して5.2重量%、WO3+SnO2に換算して30.6重量%、水分2.3重量%、イソプロピルアミン0.35重量%、ジイソプロピルアミン1.62重量%、酒石酸0.56重量%を含有し、このゾルの乾燥物の屈折率は1.84であった。
【0092】
比較例2
特開平6−24746号公報に開示のゾルを用いた。即ち、酸化第二スズのコロイド粒子と酸化ジルコニウムのコロイド粒子とがこれら酸化物の重量に基づいてZrO2/SnO2として0.03の比率に結合した構造と8.5nmの粒子径を有する酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子を核としてその表面が、0.92のWO3/SnO2重量比と5nmの粒子径を有する酸化タングステン−酸化第二スズ複合体のコロイド粒子で被覆されることによって形成された10〜15nmの粒子径を有する変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子からなり、そしてこれら全金属酸化物を30.4重量%含有するメタノールゾルを作成した。このゾルは比重1.088、pH7.94(水との等重量混合物)、粘度4.3cp、水分1.2重量%を含有し、このゾルの乾燥物の屈折率は1.78であった。
【0093】
(コーティング液の作製)
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン105.3重量部に0.01規定の塩酸36.8重量部を滴下し、その後24hr攪拌を行い、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物を別途調整した。これに実施例1〜2及び比較例1〜2のゾルを192.3重量部添加し、コート液を4つ調整した。
【0094】
(硬化膜の形成)
市販の屈折率nD=1.59のポリカーボネートの板を用意し、これにディップコートにてコーティング組成物を塗布し、120℃で2時間加熱処理し、塗膜を硬化させた。その後、温水60℃に浸せきし、取り出し水気を十分に拭い、スチールウールで数回膜を擦り、目視で観察し、その結果を傷つかない場合は(○)印で、やや傷つく場合は(△)印で、傷が入りやすい場合は(×)で下記表1に示した。
【0095】
【表1】
酸化第二スズコロイド粒子を核としてその表面を酸化タングステン−酸化第二スズ複合体コロイド粒子で被覆した変性された酸化第二スズゾル(比較例1)を用いる場合よりも、酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子を核としてその表面を酸化タングステン−酸化第二スズ複合体のコロイド粒子で被覆した変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体ゾル(比較例2)を用いる場合の方が耐湿性が向上されており、更に、酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子を核としてその表面を酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体のコロイド粒子で被覆されることによって形成された変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体ゾル(実施例1及び実施例2)を用いる場合は向上する。
【0096】
【発明の効果】
本発明によって得られる酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体のコロイド粒子によって表面変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズの複合コロイド粒子のゾルは無色透明であって、その乾燥塗膜は約1.7〜2.0の屈折率を示し、また、結合強度、硬度のいずれも高く、特に耐水性、耐湿性が大である。更に耐光性、帯電防止性、耐熱性、耐摩耗性等も良好である。
【0097】
このゾルは、pHほぼ1〜11において安定であり、工業製品として供給されるに充分な安定性も与えることができる。
【0098】
このゾルは、そのコロイド粒子が負に帯電しているから、他の負帯電のコロイド粒子からなるゾルなどとの混和性が良好であり、例えばシリカゾル、五酸化アンチモンゾル、アニオン性又はノニオン性の界面活性剤、ポリビニルアルコール等の水溶液、アニオン性又はノニオン性の樹脂エマルジョン、水ガラス、りん酸アルミニウム等の水溶液、エチルシリケイトの加水分解液、シランカップリング剤の加水分解液などの如き分散体と安定に混合し得る。
【0099】
このような性質を有する本発明のゾルは、プラスチックレンズ上にハードコート膜を形成させるための屈折率、染色性、耐薬品性、耐水性、耐湿性、耐光性、耐候性、耐摩耗性等の向上成分として特に有効であるが、その他種々の用途に用いることができる。
【0100】
このゾルを有機質の繊維、繊維製品、紙などの表面に適用することによって、これら材料の難燃性、表面滑り防止性、帯電防止性、染色性等を向上させることができる。また、これらのゾルはセラミックファイバー、ガラスファイバー、セラミックス等の結合剤として用いることができる。更に、各種塗料、各種接着剤等に混入して用いることによって、それらの硬化塗膜の耐水性、耐薬品性、耐光性、耐候性、耐摩耗性、難燃性等を向上させることができる。その他、これらのゾルは一般に、金属材料、セラミックス材料、ガラス材料、プラスチック材料などの表面処理剤としても用いることができる。更に触媒成分としても有用である。
Claims (5)
- 2〜50nmの粒子径を有し、0.05〜1.0のZrO2/TiO2モル比、及び0.25〜10のTiO2/(ZrO2+SnO2)モル比となる酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子を核としてその表面を、重量比がWO3/SnO2として0.1〜100、SiO2/SnO2として0.1〜100であって粒子径1〜7nmである酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体のコロイド粒子で被覆されることによって形成された粒子径2.5〜60nmの変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子からなり、そしてこれら全金属酸化物を2〜50重量%含む安定なゾル。
- 下記(a)工程、(b)工程、(c)工程及び(d)工程:(a)工程:過酸化水素水及び金属スズを、2〜3のH2O2/Snモル比に保持しつつ同時に又は交互にチタン塩及びオキシジルコニウム塩の混合物水溶液に添加して、チタン成分、ジルコニウム成分及びスズ成分がTiO2、ZrO2及びSnO2に換算して0.05〜1.0のZrO2/TiO2モル比、0.25〜10のTiO2/(ZrO2+SnO2)モル比と、TiO2、ZrO2及びSnO2に換算した総濃度が5〜50重量%となるチタン−ジルコニウム−スズの塩基性塩水溶液を生成する(a−1)工程、(a−1)工程で得られたチタン−ジルコニウム−スズの塩基性塩水溶液を0.1〜100時間かけて50〜100℃の温度で保持して酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイドの凝集体を生成させる(a−2)工程、及び(a−2)工程で生成した酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイドの凝集体スラリー中の電解質を除去する(a−3)工程より成る酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子の安定な水性ゾルを製造する工程、及び
(b)工程:タングステン酸塩、スズ酸塩及び珪酸塩をWO3/SnO2重量比として0.1〜100、SiO2/SnO2重量比として0.1〜100の比率に含有する水溶液を調製する(b−1)工程、及び(b−1)工程で得られた水溶液中に存在する陽イオンを除去する(b−2)工程からなる酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体コロイド粒子の安定な水性ゾルを製造する工程、(c)工程:(a)工程で得られた酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体水性ゾルを金属酸化物(TiO2+ZrO2+SnO2)に換算して100重量部と、(b)工程で得られた酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体水性ゾルを金属酸化物(WO3+SnO2+SiO2)に換算して2〜100重量部とを混合する工程、及び
(d)工程:(c)工程で得られたゾルから陰イオンを除去する工程、から成る変性された酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体コロイド粒子の安定な水性ゾルの製造方法。 - (e)工程として、(d)工程で得られた水性ゾルの水性溶媒を有機溶媒に置換する工程を(d)工程の後に付加する請求項2に記載の製造方法。
- (c)工程で酸化チタン−酸化ジルコニウム−酸化第二スズ複合体水性ゾルと、酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体水性ゾルとを混合する温度が、0〜100℃で行われる請求項2又は請求項3に記載の製造方法。
- (d)工程で、(c)工程で得られた複合ゾルを1〜10重量%濃度に調整後、陰イオン交換樹脂に通液する請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
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